interview with D

 

 

土井先生におうかがいしたいのですが……



……え?
本気さ加減が見えない…?
ふうん…そうですか。


いや。
別に。
見えないと言われれば、仕方ないでしょう。
ほうらこうだ、わたしの本心はこんなだと、強弁するようなことじゃあない。


どれほど愛しいかとか、どれほど大切かとか?


ああ、いや。すみません、笑ってしまって。


どう答えれば満足なんです?
第一、言葉で答えられるようなことですかね?


そうですね…こういうわたしの態度が時々、彼を怒らせているのはわかりますよ。
うん…目に見えないものを、それなら言葉で証立てられると思うのは、やっぱり彼の若さなんだと、わたしなぞには思えてしまうんですけど。
少しね、少し、考えてもらえたら、わかるようなことじゃないですか?
彼は……わたしより七つも年下だ。彼と同い年の教え子だっている。その上、ご存知の通り、彼はわたしが敬愛している先輩の息子で…わたしの職場にも深い関係がある。
そんな彼と…わたしはこんな関係を持ち、しかも続けている…。

それでわかってくれとは言いませんが。
わたしはね、実は人一倍、波風の立たない人間関係というのを大事にする性質(たち)なんですよ。自分のつまらない欲望や感情より、表面的な調和を優先する…ある意味、臆病な人間なんです。
そういう…わたしのような人間が、あっちにもこっちにもしがらみを持った彼と…こんな関係を維持している…突き放しもできず、今も、その関係を切ろうともしていない…それがどういうことを意味するのか…
さあ見ろ、わかるだろと居丈高に言う気はありませんが、見る気さえあれば、見えるはずのものじゃないかと思うんですがねえ。


彼の言葉を真剣に受け止めていない…?


じゃあ、彼の若さも可能性も。彼自身の自由な感情も。
すべてを無視して、彼に寄りかかればいいんですか?
彼の言葉、それを振り回して彼を拘束すればいいんですか?
あやふやな未来と彼自身を、彼の言葉を人質に、縛り付ければいいんですか?
つまらない女のようなマネをわたしにしろと?


すいません、失言でした。


…寄り掛かってしまったほうが、楽ですよ…?
縛ってしまったほうが、一時は落ちついてみえるかもしれません…。

ああ、はいはい。わかりました。
降参しましょう。

前にも言ったことがある。

……………。

 

彼が死んだら、わたしも生きてはいない。


ああもうほんとに…これで勘弁して下さい。

 

 

いったいほんとに、ここの利吉は報われているのかと、
ウチの利土井を見てやきもきして下さっている
すべての利吉ファンに捧げます。
……ああもうほんとに……これで勘弁して下さい。

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