愛・おぼえていますか/05


胸だけに与えられる刺激で中途半端に煽られた身体は熱く疼き、我慢出来ずに下肢をフランスの腰に擦り付けると、彼は瞼や頬や唇に何度もキスをくれる。
その皮膚を擽る柔らかな感触に肌は粟立ち、触れた箇所から全身に熱が伝染していくようだ。
早くもあと少しで擦り切れる寸前だった理性を繋ぎ止めるのは、僅かに残された自尊心だけで、快感を求める言葉を吐き出しそうになるのを必死で堪える。

「イギリス…、ここ、もう辛いんじゃないの?」

小さく笑ってそう言ったフランスは下肢に手のひらを滑らせ、緩く勃ち上がりかけていたそこをそっと握り込んだ。
口に出せない願望が何なのかをわかっていてあえてそう問う彼に、早く触れられることを望んでいるイギリスに逆らう術などあるはずもない。
迷うように目線を方々に彷徨わせた後、問いの答えは言葉にする代わりに首を縦に振ることで示した。
フランスは大人しく自分に従うイギリスを見下ろし満足気に微笑むと、 じゃあ腰浮かせて、 と耳たぶにキスをしながら小声で囁く。
言われた通りに僅かに浮いた腰の下に腕を回し、手早くベルトを外して引き抜くと、下着ごとまとめてズボンを引き下ろした。
煌々と明かりがついたままの部屋で見られている羞恥心に、思わず露わになった下肢を隠すように立てた両膝を擦り合わせるが、本気で抵抗する気はなかったので彼の手が膝にかけられると、閉じた両脚はあっさりと左右に開かれる。
フランスは広げた足の間に身体を割り込ませ、そのまま直にイギリスの性器に指を絡ませ擦り上げ始めた。
するとそこは待ち望んでいた刺激にすぐに素直な反応を返してしまい、あっけなく硬く張り詰めていった。
尖端から溢れた先走りが湿った音を立てるのが聞こえると、いつもより細い指先に握られる感覚は明らかに普段と違っていて、さっきフランスが言っていた いつもと違って興奮しちゃうかもよ? という科白が頭の中を巡り、全身がかぁっと熱くなる。
淫猥な水音を立ててイギリス自身を擦り上げる手は止めないまま、彼は耳に唇を押し当てるようにして問う。

「ねえ、口でしていい?」

「…ぇ、……あ…?」

聞いておきながら、イギリスの答えを聞く気はなかったのだろう、フランスは下へ身体をずらすと手で触れていたそこにちゅ、と口付け、全体を丁寧に舐めて緩い刺激を与えていく。
僅かに引き攣った内股を宥めるように撫でられ、根元や尖端をところどころ甘く噛んで吸い上げられた。

「ぁ、あっ…、だめだ、そんなの…っ」

薄く開いた瞳に映るのは、すっかり熱を帯びて屹立した自分の性器を咥えて舌を這わせているフランスの姿で、幼い顔をした彼にそんなふうにされるのはなんだかとてつもなく犯罪じみたことをしているようで耐えられない。
力の入らない手で彼の髪を引くと、イタリアが結わえた赤いリボンが解けてさらさらと長い髪が散らばった。
なんとか下肢からフランスの顔を引き剥がそうとするが、その制止はあまりに弱々しくただ彼の髪を撫でているだけで、フランスは構わずに口での愛撫を続ける。

「やだ、…やだって、……ん、ぁっ、…っフランス…」

今のフランスにこんなふうにされるのは恥ずかしくて仕方がない。
けれども意志に反して普段のイギリスからは想像もつかないような、甘く掠れた声ばかりが次々に口から零れ落ちた。
ろくに抗えないのは本気で嫌だとは思っていないからだと自覚はあるが、自分だけが甘ったるく快感に濡れた声を上げ、されるままにフランスを受け入れるのはみっともなくて情けないと思うのに、彼に触れられるとそんなことを考える余裕など簡単に溶けて消える。
フランスはイギリス自身を手で支えて根元を扱き、尖端の射精口を舌先で抉ると小さく震えて張り詰めていたそこは、指で軽く擦られただけで僅かな痛みを伴うくらい敏感になっていた。
溢れ出る白濁を舌で掬って強く吸い上げられると、もっとして欲しいとねだるように腰を浮かせてしまい、彼の口内で自分自身が勢いを増しますます熱を帯びていくのを感じる。
少し汗ばんだ肌を指先で撫で、イギリスの性器を執拗に舌と歯で嬲って、先端からトロトロと零れる蜜をいやらしい音を立てて強く吸われた途端、身体がびくん、と大きく跳ねた。

「…ふっ……、ぁあ…ッ!」

容赦なく攻め立てられ、久しぶりの行為にこれ以上もなく性感を煽られたイギリスは、我慢出来ずに感じきった声を上げるのと同時に、彼の口内で弾けた性器から白濁の蜜が放たれる。
吐き出したばかりの精液と、フランスの唾液でべとべとに濡れた性器は、達したばかりなのにまだ足りないとばかりに震えていた。
はぁはぁと荒い呼吸を吐いて彼に目線を向けると、イギリスが吐精したものを飲み下したらしいフランスが手の甲で濡れた唇を拭うのが見えて、全身と頭の中が沸騰したように熱くなる。

「…きもちよかった?」

微笑って問うフランスの表情も熱に蕩けて、幼くかわいい顔には艶が混じり妙な色気を醸し出している。
こいつこんなガキの頃からこーいう顔すんのかよ、エロすぎだろバカ、とか思いながらも、初めて見るその表情にきゅうっと胸が締め付けられ、再び体内にじわりと火が付いた。
乱れた呼吸を繰り返すイギリスを見下ろしていたフランスは、髪を撫でたりまなじりにキスをしたりして、落ち着くのを待ってからぽつりと呟く。

「…お前さー、最初はいつも嫌がるけどホントは好きだよな」

彼の言っている意味がどういうことかよくわからず、目線を上げて問い返す。

「……な…にが、だよ」

「何って…、俺とのセックス……っていうか、俺?」

「……っ…そ、そんなわけあるかばかぁ!!」

あまり表に出したことのない核心をついたフランスの科白に、イギリスの頬に一瞬で朱が散り、咄嗟に否定するような言葉が口をついて出た。
実はイギリスはフランスに対して長年恋情を募らせてきたけれど、はっきり言葉にして彼に好きだと伝えたことはない。
自分が言いたかったことを先に言われて、後出しのように 俺も、 とは言いたくなかったからだ。
しかし言葉にして伝えていなくても、イギリスの態度を見ていればわかると言わんばかりに、彼はあれこれ世話を焼いて甘やかしてくれるので、散々自分の身体をいいようにされても腹が立つどころか自らも求めてしまい、それが当たり前になっていることに酷く羞恥を感じた。
今だって心も身体もフランスに触れられることを期待して、続く行為を想像するだけで肌は過敏なほど反応してしまっているのだ。
フランスはそれに気付いているからこそ、自意識過剰とも思えるようなことが言えるのだろう。
彼に対する感情がしっかり見透かされていることが恥ずかしくて、イギリスはいつも本当の気持ちとまるで逆のことを口走ってしまう。

「べっ別に俺はお前のことなんか、全然、なんとも、思ってないんだからな!」

「…嘘」

それが本心ではない答えだと知っている彼は小さく笑ったかと思うと、いきなりイギリスの尻の肉を掴んで左右に押し広げ、晒された後孔に指を当てた。
敏感なところに触れられ一瞬イギリスの身体が強張るが、そこはすでに零れた白濁で濡れていて、フランスの指は内部の襞の僅かな抵抗にあっただけでじわじわと沈むように中に埋め込まれていった。
熱い肉壁を擦り上げられる感覚に背筋がぞくぞくと震え、指を突き立てられている後孔はヒクヒクと蠢き、少し力を入れられるだけで誘い込むように奥まで咥え込んでしまう。

「あ、ァ…フランスっ…、だめ、…まだ…」

「だめ? でも好きだろ、こうされんの…」

熱の籠もった声音でそう言ってイギリスの内部を擦ってやると、肉襞がぎゅうっと収縮してフランスの指を締め付けた。
狭いそこを広げるように何度も抜き差しを繰り返し、十分に入口が柔らかくなったのを見計らって一気に三本の指を中に滑り込ませる。
普段ならもう少し慣らしてからでないと三本も入らないのだが、今のフランスの指は細く繊細な形をしているためか、イギリスの後孔は難なくそれを受け入れた。

「…っ、ぁ、…や…!」

ねじ込むように奥まで咥え込まされると、びくん、と身体が大きく跳ねて、行き場なくシーツの上を彷徨っていた手がフランスの腕を掴んだが、力の入らない手は簡単に払われてしまう。
挿れられた指が中を軽く突き上げ始めると、そのやけに性急な動きにイギリスはたまらず逃げるように腰を引いた。

「フランス…! ちょっ…、待て、いつもみたいに…、もっとゆっくりしろよ、ばかっ」

「ごめんな、……なんか身体が若いせいか、今日お兄さん全っ然余裕ないみたい」

苦笑いを浮かべたフランスは本当に切羽詰まった声でそう言ったが、それでもイギリスに余計な負担を掛けまいと丁寧に中を開いていく。
片手でイギリスの腰を抱えて逃げられないように抑え込むと、指の付け根まで一気に中へ突き入れては引き抜き、また奥まで挿し込むことを繰り返した。
内部を擦る彼の指は少しずつ速度を上げてイギリスの後孔を出入りし、与えられる快感に肉襞が収縮して指が抜けそうになるたびにきつく絞られ、フランスの指を締め付ける。

「ん、…あッ…、ぁ、はっ…」

「ね…、きもちいいならそう言って……悦くないわけないよなー? …ほらイギリスの、また勃ってる」

「…んなこと、…いちいち言うなっ…」

指で中を擦られるのが気持ちいいことも、そのせいで達したばかりの性器がまたも熱を帯び、頭をもたげ始めていることも自覚はあるのだ。
それを口に出して言われるのはたまらなく恥ずかしいことなのに、彼がわざわざそれをするのは過剰に恥ずかしがるイギリスの反応を見て楽しみたいだけなのだろう。
まったくとんでもなく悪趣味な奴だと思う。
…そんな奴にこんな行為を許している自分こそ、きっともっと悪趣味なのだろうけど。
差し込まれた指はそれぞれが好き勝手にばらばらに動いていたが、ふいにぬるりとそれらがすべて抜き取られて、今まで中を満たしていたものが出て行ったことが少し物足りなく感じられた。
それは自分の身体が一番感じているらしく、締め付けるものがなくなった後孔は浅ましいくらいに口を開けてヒクついている。
その様子をじっと眺めていたフランスは、溜息に似た吐息を漏らしてしみじみとした口調で言った。

「イギリスってさー…本当にエロ大使だよね。お前にふさわしすぎるだろ、その名称」

この状況で否定は出来ないが、他の誰に言われてもお前にだけは言われたくない。
そう反論しようにも硬く屹立した彼の熱が尻の割れ目に当てられ、後孔を広げるようにして中に入り込んでくると、言い返すこともままならず開いた口からは短い喘ぎが零れただけだった。

「なっ、……ァ、あ!」

腰を浮かされ左右に大きく開かれた両脚の間から、自分の中にフランス自身が入っていくのが見える。

「…………!」

己の体内にフランスの楔を穿たれる様はとても直視出来るものではなく、イギリスは咄嗟に顔を背け目を固く閉じた。
目を閉じたまま堪える以外にどうしようもなくて、汗ばんだ手は無意識に乱れたシーツを握り締める。
やがて先端の太い部分が柔らかく解されたイギリスの中に収まってしまうと、フランスは短く息を吐きグッと一気に奥まで貫いた。

「ひァ…っ、んっ!」

喉の奥から息を詰めたような悲鳴が漏れて、思わず縋るようにフランスの背中に腕を回すと、しがみついた彼の背はいつもと違って薄く頼りない。
固く閉じていた瞼を開けてフランスを見上げると、彼は目元を真っ赤に染めて乱れた呼吸を漏らし、熱に蕩けた青色の双眸がイギリスの姿態を見つめている。
あぁ、こいつすっげえやらしい顔してんじゃねーか、これを見られるのがこの一回きりなんてマジでもったいねえ……イクときの顔とかどうなんのかな、早く見たい、かも…。
イギリスの頭の中はそんなことばかりがぐるぐると回り、期待に震える胸を落ち着かせようと小さく息を吐くと、甘く濡れた吐息が零れた。
それを吸い取るように彼の唇が重なり舌を絡め取られ、口内を貪りながら中に突き立てた熱を馴染ませようと、ゆっくりと腰を揺すって突き上げられる。
するとそれに応えるかのように、フランスを銜え込んだ後孔がもっと奥へと飲み込もうと蠢動し、肉壁がうねりきつく締め付ける。
少しずつ中を出入りする肉塊の動きが徐々に早まっていき、抉るように最奥まで掻き回すように突き入れられた。

「力抜いて…、ほら、息吐いて」

「ふ、らん、す…、…ンっ…、ぁ、あ…ッ」

中を突かれるたびにイギリスは身悶えるように全身を震わせた。
蕩けきった肉襞をフランスの性器で力強く擦られる熱さと快感にばかり意識を浚われ、もう何も考えられない。
ついさっき彼が言っていたエロ大使とかいう不本意な呼び名を撤回させることも、とっくに頭の中から吹き飛んでいた。
フランス自身が体内を出入りする感覚とその熱に与えられる強烈な快感は、理性を保っていられないくらい気持ちいい。
それは性行為自体を好む彼が経験豊富で上手いからなのか、互いの身体の相性が良すぎるのか、両方なのかはわからないけれど、こうして触れ合っていると自分はこの男に愛されているのだと実感出来て、している間も終わったあとも心も身体もこれ以上ないほど満たされる。
そんなことは本人には恥ずかしくてとても言えやしないが、イギリスはフランスとのセックスがたまらなく好きで、先ほど彼が言っていた 「俺とのセックス……っていうか、俺?」 という科白は一分の狂いもなく図星をついていた。





06→