2011/07/14/04


フランスの作った夕食は、本当に俺の好物ばかりだった。
そして当たり前のようにどれも美味しい。
奴はテーブルに並べられた料理を頬張る俺を見て、嬉しそうににこにこ笑っている。
……これじゃフランスの誕生日というより、まるで俺の方が祝われているみたいでなんだか気が引けたが、俺が祝ってやるのはこれからだ。
日本に言われたとおり、プレゼント……つまり俺自身を飾るリボンはちゃんとポケットの中に忍ばせてある。
プレゼントは夕食の後に渡すと言ったのは自分自身だが、そのときが近づいてくると徐々に緊張が高まった。
どんなタイミングでプレゼントの話をしたらいいだろう。
いやその前にリボンを巻かなきゃいけないし、すぐに準備できるものでもない。
シャワーを浴びたあとにでも風呂場でこっそりリボンを巻くしかないよな……。
このあとのことを考えると余計緊張してきた。
俺はいつもよりも時間を掛けてゆっくり食事を済ませ、ソファに座ってまだあれこれ考えごとをしていると、後片付けを終えたフランスがリビングに戻ってきて隣に座るなり早速プレゼントの話を始めた。

「で、お前の誕生日プレゼントってなに?」

「……そんなに焦るなよ。シャワー浴びて、……部屋で待ってろ」

「えっ」

俺の答えにフランスは酷く驚いた様子で変に裏返った声を上げた。
そんな反応をされると自分のやろうとしている恥ずかしいことを強く意識してしまって、頬が熱くなり羞恥心が一気にこみ上げてくる。
部屋で待ってろなんて言われて、フランスは俺のプレゼントをどんなものだと想像しているんだろう。
ちら、とこっそり目線だけ奴に向けると、らしくなく顔を真っ赤にして汗をだらだら流していた。
俺の方からこういう、……誘うみたいなことを言うのは確かにそんなに頻繁にあることじゃねーけど、それにしたってこいつがこんなに動揺するほどのことじゃないと思うのだが、この反応を見るに俺からの「プレゼント」がなんなのか、もしかしたらフランスは想像がついているのかもしれない。
考えてみればこの「俺がプレゼント」の案をくれたのは日本だ。
それもニジゲンでは鉄板のプレゼントとか言っていたから、俺よりニジゲンに詳しいフランスも知っている可能性は高い……よな。
今さらそのことに気付いて、俺まで頬が熱くなっていく。
「俺がプレゼント」なんてばかみたいなことをしようとしているのがフランスにばれているのだと思うと、恥ずかしくて死にたくなったがシャワーを浴びて部屋で待ってろとまで言ってしまった以上、プレゼントの変更なんてできるわけもない。
照れ隠しに 「わかったらさっさとシャワー浴びてこい」 とソファのクッションをフランスに向かって思いきり投げつけると、奴は慌ててバスルームに飛び込んだ。
ドアに当たって跳ね返ったクッションはフローリングの床に落ちて、所在なさげに転がっている。

せっかくリボンを買ってきたが、やっぱりこんなみっともないことはやめようか、と火照る頬をテーブルにくっつけて溜息を吐いた。
いやいや、……でもフランスがプレゼントの内容に気付いたとは限らない。
さっきのシャワーを浴びて云々の科白だって、普通なら単純にベッドの誘いだと思うはずだ。
……多分。
それにあいつは俺がプレゼントを用意してることを全然想定してなかったみたいだしな。
予想外のプレゼントなんだから、そう簡単に想像がついてたまるか。
とにかくここまできたらもう引けない。
ドキドキとうるさく鳴る心音を聞きながらフランスがバスルームを出るのをじっと待っていると、緊張のためか手のひらがじっとりと汗ばんで全身がじんわり熱を帯びていく。
……なんだか落ち着かない、変な気分だ。
誰かの誕生日にプレゼントを渡すのに、こんなに緊張するのは久しぶりだ。
ソファに寝転がってどうにか昂ぶる気持ちを落ち着けようと何度も深呼吸を繰り返していると、やがてバスルームの扉が静かに開いてそのかすかな音にさえ大きく心臓が跳ねた。
慌てて上体を起こしてフランスの方に顔を向けると、奴は妙にそわそわした様子で言った。

「えっと、……じゃあ、……へ、部屋で待ってる、から」

「ぅ、……あ、あぁ…」

二人して微妙に目線を逸らしてそう言ってフランスは足早に二階に上がっていき、すぐに奴の姿は見えなくなった。
フランスの足音が聞こえなくなるまで俺はなぜか息まで止めてしまっていたらしく、緊張しすぎだ、と自分自身に呆れてはぁ、と大きく息を吐く。
俺とあいつが……まぁ、……世間的には恋人と呼ばれる関係になってもう百年も経つし、セックスだって数え切れないくらいしたってのに、……なんなんだよ、まるで今日初めてするみたいなこのいたたまれない感じは…!
つーか、俺よりずっとこういうことには慣れてていつも余裕ぶってるくせに、なんであいつまであんな不自然な反応してんだよ、俺まで余計に緊張するだろうが!
……でも俺があいつの誕生日に会いにきたのは本当に久しぶりだし、その上プレゼントを渡すのがシャワーを浴びてから部屋で、なんて意味深なことを言われたら……フランスがあんなおかしな反応をするのも無理はないのかもしれない。
ただでさえ俺から誘うみたいなことを言うのはめずらしいし、今まで何度もスルーされ続けた誕生日に朝早くからやってきて、しかもやけに乗り気な態度だからきっと戸惑っているのだろう。
……まずい…………マジで緊張してきた……。
夕食のあととかシャワーのあととか、変に引き延ばすようなもったいぶった態度を取ってしまって、焦らされたことでフランスが「プレゼント」に過剰な期待をしてしまっていたらどうしよう。
いざ渡す段になって「プレゼントは俺」と言ったとき、あからさまにがっかりされたりしょっぱい顔をされたらちょっと……いやかなり立ち直れない気がする。
日本はやけに自信満々にフランスは喜ぶと言っていたけれど、自分で少しばかりプレゼントのハードルを上げてしまうような態度をしてしまっただけに不安だ。
でもまぁ、今さらこんなことで悩んでもしょうがねえ。
もう別のプレゼントに変更はきかねえし、喜んで受け取らねえならプレゼントはなしだ!
そうだ、わざわざ用意したプレゼントを喜ばないならくれてやる必要なんかないもんな。

そうと決めるとちょっとだけ気が楽になった。
フランスと入れ替わりで入ったバスルームで全身をくまなくきれいに洗い、脱衣所に用意してあったせっけんの匂いがするバスタオルで全身の水分を拭き取る。
いつもならシャワーを浴びたあとはバスローブ一枚でフランスの部屋に向かうのだが、今日はこれから面倒な準備をしなければならない。
脱いだジャケットを手に取り、ポケットの中に入れておいた持参してきたリボンを一つ取り出すと、まずは腰から下をリボンで巻いて肌を隠していった。
尻から腰の辺りまでを巻いたところでちょうど最初の赤いリボンがなくなったので、次は青いリボンを身体に巻きつけていくが青いリボンも胸より下の辺りでなくなってしまった。
なんだか中途半端な状態で、これじゃ余計格好悪い。
買ったリボンを全部使うつもりはなかったけど、念のためと思って三色とも持ってきていたのだが……結局全色使うはめになるとは思わなかった。
仕方なく最後の白いリボンで胸元から首まで隠して、持ってきたリボンを全部使い切ってようやくプレゼントの包装(というべきなんだろうか)が終わった。
ほとんどやけくそになって全身にリボンを巻いてみたが、一体どんなもんかとおそるおそる脱衣所の鏡を覗き込むと、リボンでぐるぐる巻きになっている自分の姿が映っているのを見て、あまりにも恥ずかしすぎる格好に死にたくなる。
三色のリボンで巻かれたみっともない格好に、やっぱり「俺がプレゼント」なんてやめておいた方がいいんじゃないだろうか、と脱衣所で頭を抱えてしばらく悩んだ。
こんなんで喜ぶのってただの変態じゃないか? ……と思ったけど、あいつは純然たる変態だ。
それならこんなのでも、やっぱり喜ぶのかもしれない。
どうしよう、やめようか、いやでも……とぐるぐる考えて、最後に俺の背中を押したのは 「フランスさんが喜ぶこと間違いなしですよ」 という日本の言葉だった。

日本があそこまで自信満々に言うのだから、きっとフランスにも悪い反応はされないはずだ。
……くそっ、もういい、どうにでもなれってんだ!
さすがにこの格好のままフランスの前に出る勇気はなかったので、ミイラ男みたいに全身に巻きつけたリボンを隠すように上から服を着てようやく準備が整うと、俺はバスルームを出てフランスの寝室へ向かった。
奴の部屋が近づくたびに、心臓が口から飛び出しそうなくらいにどくんどくんと激しく脈打っている。
呆れられたり引かれたりしないか不安でしょうがなかったが、まぁフランスとの長すぎる付き合いを考えるとこれまでにも呆れられたり引かれる要素はもっとたくさんあったはずだと開き直って、大きな深呼吸を一つすると覚悟を決めて乱暴にドアをノックした。

「開いてるよ」

中から返った声は少し上擦っているように聞こえた。
そういえばフランスと恋人として付き合って、初めて抱き合った日の夜もこんな感じだったな、とずいぶん昔のことを思い出して頬が熱くなる。
つーか、お前までそんなに緊張してんのはなんでなんだよ、とますます動悸が速まってしまう。
それでもここで引くわけにもいかず、そっとドアを開けて寝室に入ると室内はベッドサイドのわずかな明かりが灯されているばかりで、フランスはバスローブだけを身に付けた格好でベッドに腰掛けていた。
ゆっくりベッドに近づいていくと奴は顔を上げ、俺がきっちり服を着込んでいることに気付いてあからさまにがっかりした表情で首をかしげている。

「あれ、……寝るんだよね? まさか帰るの?」

そんなわけあるか、と思ったが、、フランスのこの心配はもっともだ。
いつもなら今日みたいに泊まっていく夜は、シャワーのあとはシャツ一枚だとかフランスと同じでバスローブだけだから、きちんと服を着ているのを見たら帰るのかと思われてもしょうがない。
服を着ているのはただ単にリボンだらけの恥ずかしい格好を少しでも隠しておきたいからなのだが、そんな事情はフランスの知ったことじゃないしな。
不安そうに情けなく眉尻を下げている奴を、早く安心させてやろうと素っ気なく答えた。

「帰らねえよ……家に帰るならわざわざお前んちでシャワーなんか浴びるか。つか、泊まっていくって言ったろ…」

「そ、そうだよな! ……でも、それならなんで服着てんの?」

フランスは俺の答えにわかりやすくぱっと表情を輝かせてそう問うが、俺はそれを無視してベッドの前までずんずん進むと奴の隣にどっかと腰掛けた。
ぴったりとくっついたフランスの腕がほんの少し強張った感覚が、直に触れている俺の腕にも伝わってくる。
急に密着するように隣に腰掛けた俺の考えが読めなくて、どう反応していいのかわからないらしい。
俺はベッドサイドの照明にそっと手を伸ばして限界まで光量を抑えるが、それでもお互いの顔がちゃんと見えるくらいの明るさだ。
いっそ電気をすべて消して部屋を真っ暗にしてしまえば、リボンで巻いた恥ずかしい格好を見られずに済むが、それじゃプレゼントの意味がない。
フランスは酷く緊張した様子で俺の次の行動を待っているし、この際多少部屋が明るいのは我慢することにして思いきって口を開いた。

「……今日はお前の誕生日だからな、……プレゼント、やる」

「うん、……プレゼントって?」

プレゼントと言いながら手には何も持っていない俺を見て、フランスは不思議そうに問う。
どうも奴の様子を見るに俺のプレゼントがなんなのか気付いてないようだ。
そのことには安堵したが、とうとうこの瞬間が来てしまったことにこれ以上もないほど心音が高鳴り全身に汗が滲む。
ただでさえ二度お預けを食っているのだ、焦らされればその分フランスの期待も大きくなるだろう。
恥ずかしいのは最初だけだと腹をくくると、俺は奴から目線を逸らしてぼそぼそと呟くように言った。

「……プレゼントは、服の下に隠した。さ……探していいぞ…」

「えっ? 探すって、……ぬ、脱がせていいの?」

思いがけない俺の言葉にフランスはますます動揺したように声を震わせ、そういう反応をされると俺も余計に恥ずかしくなる。
頭の中が羞恥心でいっぱいになって、黙ってさっさと言うとおりにしろ、と奴の髪を引っ張って声を荒げた。

「そうしないと探せないだろっ、いらないなら別に探さなくていいんだからな!」

髪の毛を強く引っ張られているにもかかわらず、フランスは 「いらなくないです!」 とだらしなく頬をゆるませて声を上げる。
そして髪を掴んでいる手をそっと解いて俺の身体をベッドに倒し、上から覆い被さると先に邪魔になるジャケットを脱がせて腰のベルトを引き抜いた。
あっというまにスラックスまで脱がされて、フランスの指は手早くシャツのボタンを外していく。
上のボタンを二つほど外したところで、シャツの下に見えるのが俺の肌じゃないことに訝しげに眉をひそめ、開いた胸元から覗くリボンを摘んで俺を見下ろしている。

「……イギリス、これなに? こんなの巻いて苦しくねえの?」

まだそのリボンの意味がわかっていないのか、不思議そうな顔をしてボタンをすべて外しシャツを脱がせていった。
身につけていた服を全部脱がせ、上から下までリボンで全身ぐるぐる巻きになっているのを見たフランスは、驚いたように青い瞳を見開いて俺の顔を覗き込んできた。
服の下にあるのはリボンで巻かれた俺の身体だけで、他にプレゼントらしきものが見当たらないことに最初は訝しげな表情を浮かべて首をかしげていたが、すぐにこのリボンはラッピングなのだと気付いたらしく、奴はニヨニヨ笑いながら言った。

「プレゼントって、……もしかしてリボンで巻いてあるお前のこと?」

「み、見ればわかるだろっ……いちいち訊くな!」

改めて言われると恥ずかしくてしょうがないし、抑えていた羞恥心がどんどん膨れ上がっていく。
固く目を閉じて顔を背けていると、フランスは酷く穏やかな声音で言った。

「ふーん、そっか……。本当にもらっていいの?」

「べっ、別にいらねえならいい…」

日本の言葉に乗せられて、ばかなことをしている自覚はある。
俺がフランスに同じことをされたらどん引きだ。
こいつが全身にリボンを巻いた姿で俺の前に現れようものなら、服を着る時間すら与えずに家から叩き出すかもしれない。
……こんなことをしてる俺のことを、フランスは一体どう思っているんだろう。
怖いような気持ちで、目を閉じたままシーツをきつく握り締めフランスの返事を待っていると、奴は俺の手に自分の手を重ねてぎゅっと強く握った。

「いらないわけないだろ? ……すごく嬉しいよ」

とろけるような甘い声音でそう言われておそるおそるフランスを見上げると、柔らかく微笑んでいる奴の表情はどうしようもなく優しい。
自分がプレゼントだなんてくだらないことをして、呆れられたりからかわれたりしたらどうしてやろうかと思っていたが、そんな心配なんかする必要もなくフランスは喜んで俺のプレゼントを受け取ってくれた。
心音が高鳴り、じわじわと胸を満たす温かな感情に自然と瞳が潤む。
フランスが俺のばかみたいなプレゼントを当たり前のように受け取ってくれたことを、俺は泣きたくなるくらいに嬉しいと思っているのだ。
こいつは普段おちゃらけているように見えるが、ここぞというときはしっかり決めやがるんだよな。
かっこつけやがって、とちょっとむかつくけど、……フランスのそういうところが好きだ。
結局俺がこんな恥ずかしいプレゼントにすると決めたのは、フランスが受け取ってくれるか不安だとかなんだかんだ思いつつ、心の底ではきっと喜ぶはずだと確信していたからに他ならない。
そもそも本気で「喜んでくれないかも」なんてそんな心配をしていたら、俺は何がなんでももっと別のプレゼントを用意しただろう。

これだけのことでフランスが俺を好きで、俺はフランスが好きなのだということを実感する。
……くそ、なんだか耳まで熱くなってきた。
もう余計なことを考えるのはやめだ。
とにもかくにもあとはこの邪魔なリボンさえ解いてしまえば、やることはいつもと一緒なんだからな!
俺は手を伸ばしてフランスの頬を両手でそっと包むと、耳の脇から指を差し込んでさらさらと柔らかい髪を梳くように撫でる。
そしてそのまま奴の顔を引き寄せると、自分から唇を擦り合わせてキスをした。
するとさっきまで戸惑っていたのが嘘のように、フランスは俺の身体を抱き直して深く唇を重ねる。
すぐに奴の舌が口内にもぐり込んできて食むように唇を吸い上げられ、何度も角度を変えて口付けられて俺は早くも頭の芯が痺れたようにぼんやりとしてしまう。
髪を撫でていた手を奴の頭の後ろに回して縋り付き、触れ合う唇の感触に夢中になってキスに応えた。
ようやくフランスが身を起こし長い時間塞がれていた唇が解放されると、情けないことに俺はすっかり息が上がってしまっていた。

「リボン、ほどいていい?」

「……受け取る気があるならさっさとほどけ」

荒く乱れる呼吸を漏らしながらフランスを睨み付けると、だらしなく表情をゆるめて頷いた。

「うん、じゃあ遠慮なく」

このばかはさっきからにやにやしっぱなしで、こっちまで恥ずかしくなる。
でもフランスの指がリボンを引いて結び目を解き、器用にするするとほどかれて胸元までが露わになると、やっとプレゼントの中身を受け取ってもらえたような気がして嬉しかった。

「ずいぶん厳重に巻いたなぁ」

奴はおかしそうに笑って、リボンの下に現れた素肌に唇で触れやんわりと歯を立てられた。
次に胸元を覆っていたリボンも少しずつほどかれていき、つるつるしたサテン生地のリボンが熱を帯びた皮膚に擦れる感覚がくすぐったい。
リボンが擦れるたびに肌がじわじわと疼いて、堪えきれずに甘ったるい呼吸が零れてしまう。

「……プレゼントのリボンほどくのに、こんなにドキドキするのって初めてかも」

まだなにもしてないのに興奮気味にフランスは言った。
早々に呼吸を乱しているのは俺だけじゃなかったことに安堵しながら、さっさとリボンを解いて好きにしてくれりゃいいのにともどかしい気持ちでいっぱいになる。
フランスの手でリボンがほどかれていくと徐々に肌が露出していき、胸を隠すように巻き付けられていたリボンがわずかに乳首を擦る感覚にぞくりとした震えが走る。
わざとかってくらいゆっくりとリボンを解いて、必要以上に時間を掛けてやっと二つ目の青いリボンが全部ほどかれた。
まだ二つ目か、と俺が溜息に似た呼気を漏らしていると、フランスが顔を胸元にずらしリボンで擦るように触れられたせいでぷくりと膨らんだ乳首を口に含んで、そこにちゅうっと吸い付かれた。
そのまま舌先で硬くなった乳首をこね回すように転がされ、空いている手がもう片方の突起を指で挟んで摘み上げられる。
舌と指でくにくにといじられてあっけなく硬く尖ってしまったそこに思いきり吸い付かれて、その強い刺激はダイレクトに下肢に響いた。

「ん、……ぁっ」

思わず喉の奥から掠れた声を上げてしまい、こんなところに触れられて快感を覚えている自分が酷く浅ましい質のような気がして、とっさに口を閉じる。
でも乳首がこんなに感じるようになったのは、セックスのたびに今みたいにこいつがしつこくいじったり舐めたり吸い付いたりしたせいであって、もともと敏感だったとかそんなんじゃないんだからな!
おかげでちょっと触れただけですぐ勃つようになっちまって、シャワーを浴びるときとかに目に入ると恥ずかしくてしょうがないが、あんまり触るなと言ってもフランスがかわいいと飽きもせずに触ってくるから、今じゃもうあきらめて好きなようにさせている。
そうして乳首をかわいがられているうちに俺の下肢はどんどん熱を帯び、リボンをきつく巻いたために膨らみ始めた性器が押さえつけられているの状態なのが少し苦しくなってきた。
乳首はもういいから、さっさと下のリボンもほどけよばか!
しかし俺のそんな願望とは反対に、フランスはなかなか最後のリボンを取ろうとしない。
やがて俺の方が焦れてしまって早くほどいて欲しいとねだるように腰を揺らすと、奴は胸から顔を上げ薄く笑って再び俺の唇にキスをした。
唇を擦り合わせながらフランスの手が下肢に巻いたリボンの隙間からもぐり込んできて、奴の指が直に下肢に触れる。
指先でくすぐるように性器を撫でられて、待ちわびていた直接的な刺激に身体はますます熱を上げてしまいリボンの締め付けがより窮屈になると、俺はついに我慢できなくなって自分でリボンをほどこうと下肢に手を伸ばしたが、その手をフランスに掴まれて止められた。

「俺のプレゼントなんだから、お兄さんに全部ほどかせてよ」

「っ、だったら早くしろよ、ばかっ…」

もっと強い刺激を求めて、はふはふとみっともないくらいに息が上がる。
ちゃんと触って気持ち良くして欲しくて奴の首元に縋り付くように腕を回し、互いの身体を密着させて下肢をフランスの性器に押し付けると巻いたままのリボンがめくれて、過敏な皮膚が擦れる感覚にたまらない快感を覚えた。
早く、と何度も急かしてようやくフランスは最後のリボンに手を伸ばし、すべてをほどいて下肢が露わになると俺のものは恥ずかしいくらいにがちがちになって、腹に付きそうなほど硬く反り返っていた。
まだ触られたわけじゃないってのに、こうも簡単に反応してしまう自分の身体に呆れてしまう。
こんなんじゃエロ大使なんて不本意なあだ名で呼ばれても文句も言えねえじゃねーか。
……こういうときだけ素直な自分の身体に舌打ちしたい気分だったが、フランスが喜ぶなら今日くらいはいいか、と思うことにする。
フランスはほどいたリボンをベッドの脇に寄せて、改めて俺の身体をじっと見つめると嬉しそうに笑って言った。

「イギリス、プレゼントありがとな」

「……返品なんかきかねえからな」

漏らした吐息混じりの声音は自分でも驚くくらいに甘ったるく掠れていて、それを聞いたフランスはさらに表情をゆるめて大きな手のひらで俺の張り詰めた性器を握って性急な動きで擦り上げ始めると、もう声を抑えることもできなくなる。
俺のものはすぐにフランスの手の中でびくびく震えて先走りを溢れさせ、もういってしまったみたいにとろりとした粘液がいっぱい零れて、フランスの手と俺自身を濡らしてぬるぬると滑る。
フランスが手を動かすたびに下肢から響くいやらしい水音にさえ感じてしまって全身が熱くなった。

「ん、っ…はぁっ、ぁ、あっ……フランスっ」

奴の柔らかな金髪を掴んで抱き寄せると、まだ腰にゆるく巻き付いたままの赤いリボンに俺の零した白濁で染みを作る。
俺のを擦り上げながらフランスの唇が耳元に押し当てられて、熱にとろけた甘い声音で問う。

「きもちよさそうだね、イギリス。……もっといいことしていい?」

「……うん、…」

耳たぶにやんわりと噛み付いて、顔を上げたフランスの青い瞳は欲望に濡れていて、そんな目で見つめられたら今の俺に頷く以外の反応なんてできるわけがない。
俺が掴んだことで少し乱れた長い髪をかき上げる仕草はどうしようもなくエロくて、胸がうるさいくらいにドキドキと高鳴る。
フランスは俺が頷くのを見て幸せそうに笑うと、俺の両足の膝裏を手のひらで押さえて大きく左右に広げた。
いつもフランスのものを受け入れているところが全部見えるような格好に、羞恥心以上に興奮を覚えてしまう。
そればかりか奴の目の前に晒された尻の穴まで、早くいれて欲しいと言わんばかりにひくひく動いているのが自分でもわかって、恥ずかしくて死にたくなった。

「ふ、フランス…!」

「うん、……ちょっと冷たいかもしれないけど、我慢しろよ」

そう言って奴はベッドサイドのキャビネットからローションのボトルを取り出すと、ぬめる液体を直に俺の尻や股間に垂らしていく。
たっぷりと垂らされたローションであっというまに下肢がどろどろになって、フランスの指が後ろに宛がわれるとほとんど抵抗もなくその指を咥え込んでしまった。
ローションでぬるぬる滑る指は一気に奥まで突き入れられ、俺の中をいやらしく動き回る。
指の腹で中の敏感な粘膜を擦られるとびくびくと全身が震えた。

「あん、ぁっ、やだ、指っ…」

指だけじゃ足りない。
早くフランスの熱いものをいれて欲しくて無意識のうちにねだるように腰を振ると、奴もいつもより余裕がないのか中を慣らすのもそこそこに指を引き抜き、すぐに熱く屹立した性器が尻の割れ目に擦り付けられた。
ローションまみれの尻肉を両手で掴んで後孔を広げられ、そこに硬い熱塊の先端が押し付けられたかと思ったら、何度も入口のあたりを擦るように滑っていく。
じわじわと全身を巡る快感にすっかり理性のとろけた俺は、もどかしい刺激に焦れて早く、だとかいっぱい奥までいれて欲しい、だとか素面ではとても言えないようなことをうっかりいろいろと口走ってしまっていた。
フランスのもので奥まで深々と貫かれ、ローションのぬめりでいとも簡単に全部咥え込んでしまう。
馴染んだ熱塊の感覚に、フランスの形に広げられた肉壁が悦んでるみたいにきゅうきゅうと締まって、そのきつい締め付けに奴も息を詰めて呻くような声を漏らした。
少しの間動きを止めていたが、やがてフランスが抽送を開始するとベッドがぎしぎしと大きく軋んで、中の柔肉を擦り上げる熱に甘い快感が沸き上がる。
激しく出入りするフランスのものを奥まで全部受け入れ俺もそれを思いきり締め上げると、絞られた肉襞を割り開くように強く突かれて気持ち良すぎてどうにかなりそうだった。

「フランス、……いい、そこ、……もっとしろよっ…」

甘えるような声音で言った俺に、フランスも呼吸を乱して答える。

「ん、…俺もすごくいいよ、イギリスの中、ぬるぬる滑ってきもちいい…」

「ばかっ……ぬるぬるすんのは、てめえのだろっ…」

どっちでもいいようなことを言い合って唇を重ねると、掴まれた尻を手のひらで揉みしだかれながら何度も最奥まで突き入れられ、後孔をめいっぱい開かれて俺はフランスの熱を受け入れた。
しばらく触れられていなかった乳首も、内壁を擦られる刺激に比例するように硬く尖ってじんじんと疼いて、フランスも色づいたそれに気付くとまた口に含まれてしまった。
全身のあちこちから快感の波が押し寄せてきて、俺はもはやフランスの名前を呼んで縋り付くのが精一杯だった。
俺がプレゼントなんだから俺の方がこいつにいろいろしてやるべきだったのかもしれないが、結局普段と同じようにフランスにいいようにされている。
それがちょっとむかつくけど、いつも以上に肌に触れる奴の手指は優しかった。
おまけに達する間際に 「あいしてるよ、ずっと傍にいて欲しい」 とか真顔で恥ずかしいことを言われて、やっぱり素直に頷いてしまったのは気持ちいいことをされて頭がまともに働いてなかったせいなんだからな!
一度だけじゃ全然足りず、激しいセックスに俺の身体にわずかばかり絡みついていたリボンはくしゃくしゃになって、中も外もフランスの放ったもので汚された。
誕生日だからっていつもしないような体勢で何度も抱き合ったから、終わった後は身体がだるくてしょうがなかった。
二人並んで疲れた身体を横たえていると、ベッドの端に寄せられていたリボンを見てフランスは 「あ」 と声を上げる。

「暗くてよく見えなかったけど、俺んちの国旗の色じゃん。イギリスってば……!」

「ちっ、ちげーよばか! これは俺んちの色だろーが、勘違いすんなよ!!」

「えー、同じじゃねえか」

素っ気ない俺の答えにもフランスは酷く上機嫌に笑った。
フランスは終始嬉しそうににこにこ笑っていて、元手のかかってないお手軽なプレゼントにもかかわらずずいぶん喜んでくれたことに俺も嬉しくなって、シャワーも浴びないまま奴に身を擦り寄せて眠りについたのだった。





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