アナライズ・ミー/03


もういっそのこといつもみたいに手や指や唇や舌で全身を蕩かせて、何も考えられなくなるくらい思い切り抱いて欲しいとさえ思う。
けれどこれ以上は体調の良くないフランスに強いる行為ではないことは、イギリスもちゃんとわかっているのだ。
このままこうしていてはいずれ体内に燻る欲望を抑えられなくなるに違いなく、それを自分の意志でコントロール出来る今のうちに引くしかない。

離れがたい気持ちを無理矢理抑え、触れ合わせていた唇を離して身を起こす。
するとフランスの手のひらがするりとイギリスの脇腹を滑り、後ろに回されるといきなり両手で尻を鷲掴みにされて、思わずびくん、と腰が揺れた。
慌てて彼の肩を掴んでぴったりとくっついた身体を引き剥がそうとしたが、達したばかりの疲労感で上手く力が入らない。

「フランスっ、…も、放せ」

「いや」

微笑むフランスの表情は酷く淫靡なもので、彼のこういういやらしい顔が密かに好きでたまらないイギリスは、どきどきと心音が早まるのを感じた。
…が、いや今それどころじゃねえだろ、ときめいてる場合か! とすぐに我に返る。

「…、いやじゃねえよばか! さっき一回出したんだから、もういいだろっ」

何とか起き上がろうと身をよじると、腰に回された腕と尻を掴む手のひらにぎゅ、と力が込められる。
フランスの体温が高いせいで、その熱で互いの身体が密着していることを嫌でも意識させられてしまう。
彼の唇が首筋に触れ、軽く歯を立てられてあちこちに紅色の痕を残していった。

皮膚に強く吸い付かれるだけでイギリスの身体がびくびくと震え、再び下肢に覚えのある熱が集まり始める。
体内に燻るじりじりとしたもどかしい熱は快感の芽だ。
フランスとするセックスは気持ちいいことばかりで、彼に触れられるとイギリスの身体は無意識のうちに続く行為を待ち望むように粟立つ。
いつもならそれでも構わないのだが、今日はせっかく俺が我慢しようとしてるんだから空気読めよばかフランス、そう言おうと口を開くと、彼は小さく笑ってこちらを見上げた。

「一回じゃ足りないなぁ………ねえ、もう少しお兄さんに付き合ってよ」

甘ったるく誘う声と劣情に濡れた瞳に、溶けかけた理性は簡単に脆く砕ける。
これだけでも陥落するには十分だったけれど、尻を揉みしだく酷く卑猥な手の動きにも翻弄され、イギリスは小さく喘いで背を反らせた。
尻肉を広げられフランスの指先が後孔の周辺の皮膚をゆっくりとくすぐり、時折悪戯するように少しだけ中に指を差し込まれる。
その僅かな刺激にさえ入口が物欲しそうにひくひくと蠢いて、そこを弄られたことでイギリスは咄嗟に彼の手を押さえた。

「ちょっ、お前、具合悪いくせになにする気だよ…!」

「なにってそりゃあ……なぁ……この状況ですることって言ったら一つしかなくない? 常識的に考えて」

暗に行為の続きを仄めかすフランスの科白に呆れながらも、身体はそれを期待しているかのように甘く疼いた。
イギリスの身体はすでに抵抗する力を失っていて、彼が肌に触れるたびに勝手に反応してしまい言うことを聞いてくれない。
全身を浸蝕しつつある欲望に身を任せるのは簡単なことだが、相手は一応病人であるし、このまま流されてなるものかという意地もまだ残っている。

「お前病人だろうがっ! 常識的に考えたら寝てるべきだろ!」

「うーん、そうなんだけど……こっちは元気みたい」

はは、と笑ったフランスが下肢を擦り付けてきて、そこはいつのまにか熱を取り戻している。
先ほどの一回じゃ足りないという科白は、どうやら本気で言っていたらしい。
そればかりか後ろに宛がわれた指で敏感な皮膚を撫でられるのと同時に、下肢が密着しているせいで二人の性器が擦れ合い、その微弱な快感にたまらず腰を揺らしてしまう。
その様を見て彼は熱で潤んだ瞳を細めて、囁くように言った。

「イギリスだって本当はしたいんでしょ…? 物欲しそうな目で俺を見てたの……、知ってるよ」

「み、見てねえよ、ばかぁ!」

抱いた劣情をあっさりと見抜いたフランスに図星を指され、イギリスは真っ赤な顔を隠すように俯くが、逆に下から見上げている彼と目が合ってしまい余計に頬が熱くなった。
せっかく我慢しようとしているのだから、こんなふうに煽るようなことばかりするのは本当にやめて欲しいと思う。
熱があって具合が悪いくせに、この男は何故こうもやる気になっているのか、自分が風邪を引いたときのことを思い返すと、とてもこんな行為をする気力も体力もなかっただけに不思議で仕方がない。

薬を飲んで落ち着いたにしてもこれだけ性欲を持て余しているということは、見た目ほど体調は悪くなかったのだろうか。
こんなに元気ならわざわざパリまで様子を見に来て、あれこれ世話を焼いたりして損したんじゃないか、と内心で舌打ちするが、先ほどから互いの性器が擦れ合っていることでイギリスのそこも再び緩く勃ち上がっていた。
それを見たフランスはイギリスの性器に指を絡ませ、湿った音を立てながら扱き始めた。

「フランスっ、…だめ、もう…!」

「お兄さん今お前とすっごくしたいんだけどなぁ……だめ?」

「…ぅう…」

俺だってしてえよバカ! つーかこんなんじゃもう帰るに帰れねえじゃねえか、バカ、フランスのバカ。
そんなことをぼんやりと考えながら、結局イギリスはさっきと同じように出来るだけ彼に負担を掛けないよう、早く行為を終わらせることを選んだのだった。

「俺がするから……、お前は大人しく寝てろよ」

イギリスは腰を浮かせて尻を掴んでいたフランスの手を乱暴に払いのけると、自らの指で後孔を広げ硬く屹立した彼の熱塊を入口に宛った。
普通なら人の手に触れない場所に直に彼の体温を感じたことで、ぞくりと背筋が震える。
ベッドではイギリスが主導権を取ることはあまりなく、こんなふうに自分から行動を起こすのはめずらしい。
フランスはイギリスが動きやすいようにさりげなく身じろいで、上に乗った細い身体を抱え直した。

「…なーに、今日は随分積極的じゃねえの、お前」

フランスの体調を気遣っての行動だということをわかっているくせに、気が付かないふりをして普段と変わらない意地の悪い科白を吐く。
それは 優しいんだな、 とか 可愛いことしてくれるじゃねえか、 とか思ったことを素直に口にすると、イギリスの頭の中は羞恥でいっぱいになってしまって、何も出来なくなってしまうのを知っているからだ。

「うるさいばか! 病人は黙って寝てろっ」

しかしいつも通りにからかうように言ったその科白も気に障ったらしいイギリスは鋭い視線で睨み付け、後孔に宛がったフランスのものを支えていた手でその根元をぎゅうっと強く握った。
すっかり屹立していたものを握り潰された痛みに、フランスはこれまで聞いたこともないおかしな悲鳴を上げた。

「ちょ、痛い、痛いって! 黙って寝てるからもっと優しくしろよ!」

「……、……わかってる…」

フランスのを握っている手を緩め、今度は手のひらで包むように優しくやわやわと擦り上げる。
痛みを感じるほど強く握ったせいで少しだけ萎えたそこは、緩急をつけたイギリスの性急な手の動きですぐに硬く張り詰めていった。
手中のものを扱き、尖端から僅かに白濁が滲むのを見て、もう一度口に咥えて舐りたい衝動に駆られるが、それをしゃぶるかわりにフランスの唇に食むように柔らかく噛みついて、ちゅ、と音を立てて何度も甘く噛んで吸い付いた。

「ん、…っん…ふぁ、…」

キスの合間に零れるイギリスの声は快楽の色に染まっていた。
フランスの性器を愛撫しながら、早くこの凶器のような熱で疼く肉襞を思い切り擦り上げ中を満たして欲しい、と絶対に口には出せないような願望が理性を灼く。
そんなことを考えるようになるなんて、浅ましい欲求を抱く自分自身が恥ずかしくてたまらないのに、心の深部ではそれを望んで止まない自分がいる。

フランスと触れ合うことは嫌いじゃない…、どころかむしろ好きだし、度重なる行為で彼に触れられるたびに過敏に反応してしまうようになった身体は、時に疎ましく思うほどだ。
自分が感じやすい質なのかフランスがこういうことに長けているのか、その両方なのかはわからないが、フランスの体温と肌の感触にイギリスの身体はいちいち快感を拾い、おかしくなるくらいに感じてしまう。
毎回こんな調子だから自分の身体だというのに、思い通りにならないことがもどかしくてならないこともままあるが、それも決して嫌ではないのだ。

しばらくキスと手指での手淫を繰り返していたイギリスは、熱の籠もった吐息を漏らしてようやく腰を浮かせると、彼の性器を手で支えその先端を広げた後孔に擦り付けた。
互いの熱が馴染むのを待ってから大きく息を吐いて、出来る限り力を抜いてフランスの熱を体内に受け入れようとする。

「え…おま、いきなりかよ?!」

小さく収縮する後孔に先端がほんの少しだけ埋まったところで、酷く焦ったような彼の声が聞こえた。
その反応も無理はない、きちんとした準備もせずに入るわけがないのだから。
いつもはフランスの手で時間を掛けて全身とろとろに蕩かされて、気が付いたらさほど苦痛もなく奥まで彼の熱を咥え込まされている。
それくらいイギリスもわかっているが、さすがに自分の指で後ろを掻き回し、柔らかくなるまで解すなんて真似はとても出来ない。

しかもフランスの目の前でそんなことをするくらいなら、多少の痛みは我慢した方がずっとましだ。
そんなふうに思っても、フランスの熱を押し当てられた入口はそれを飲み込もうとひくついているが、それだけでは本来異物を受け入れる器官ではないそこには入らない。
こんな状況になって初めて、普段フランスが自分の身体を気遣って優しく抱いてくれているのだと知る羽目になるなんて、恥ずかしいことこの上なかった。

「…お兄さんはもうちょっとやらかくしないと入んないと思うけどなぁ…?」

「うるせえよ!」

フランスの忠告も聞かず、荒い呼吸を吐いてイギリスはゆっくりと腰を落としていくが、ろくに慣らしてもいないのだからやはり上手く入ってくれない。
動くたびに引き攣れるような痛みと内部を圧迫する苦しさに苛まれ、まだ先が入っただけのところでついに止まってしまった。
こんな中途半端な状態ではお互いに辛いのに、イギリスはそれ以上動けなくなってしまい、身体を支えるためベッドに付いた膝もがくがくと震え始める。
見かねたフランスに腰を抱えられ、彼の胸に少しだけ体重を預けるように寄りかかると苦しさはだいぶ楽になった。

「だから入んないって言ったろ? ほら、ちょっとだけお兄さんに任せてみな」

苦笑混じりの声にかーっと頬が熱くなる。
羞恥が勝りフランスを受け入れるための準備が出来ないせいで、彼に余計な負担を掛けていることにも気付かされた。
恥ずかしがってる場合じゃねえ、早く何とかしてやらないと、と気ばかり焦って、イギリスは上体を起こしたフランスの頭を枕に押さえつける。

「いいっ、いいからお前は寝てろって言ってんだろ!」

ええー、と情けなく眉尻を下げたフランスを見下ろし、片手で後孔を広げると先端だけ入った熱をもっと奥まで受け入れるため、腰を揺すって少しずつその質量を馴染ませていく。





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