アナライズ・ミー/04
そうしてゆっくり、ゆっくりと進めていく行為に、フランスは結構な我慢を強いられていた。
イギリスが自分の体調を気遣ってくれているのはよくわかるし、その気持ちはとても嬉しいと思う。
だからこそ大人しくされるままに任せていたのだが、ここまで焦らされると(イギリスにそんなつもりがないことはわかっているが)さすがにフランスの方も限界だった。
「ね、少し力抜いて…」
額を抑えていたイギリスの手を外し、身体を起こしたフランスの唇が耳の皮膚を掠める。
彼の手のひらが濡れたイギリス自身を握り込んで擦り上げ、もう片方の手で柔らかな袋を揉みしだかれると、直に与えられる刺激は身体が覚えていて、馴染んだ感覚とこの先の行為への期待で胸が震えた。
今日くらいはちゃんと最後までしてやりたかったけれど、自分の辿々しいやり方じゃそれが叶わないことに不満げに呟いた。
「んっ、ん、…俺が、するって言ったのに…」
「ごめんな、ちゃんと風邪治ったら…いっぱいしてくれる?」
どうしてこの野郎はこう恥ずかしいことを平気で言えるのか、やっぱりこいつは変態だ、とかあんまりなことを考えているわりに、彼の言葉にイギリスは頬を真っ赤に染めてこくりと頷いていた。
イギリスのその反応にフランスは嬉しそうに表情を緩ませて、ちゅう、と唇に吸い付かれる。
すぐに舌が差し込まれ口内の粘膜を擽られると、目を閉じ自ら舌を絡めてキスに応えた。
青い瞳に見つめられ、唇を重ねて舌を擦り合わせ、長い指で肌をまさぐられ、体内に彼の熱を迎え入れることの一つ一つが、イギリスの身体にも精神にも抗い難い快感を強烈に残していく。
ベッドの上ではらしくなく甘えるようにフランスに縋り付き、キスやそれ以上の行為をねだるようになったのも、彼がいつもとはギャップのありすぎる素直なイギリスの態度を、揶揄することなく思い切り甘やかしてくれるせいだ。
良くも悪くも数えるのも面倒なほど長い付き合いで、敵対していた時期も決して短くはないのに、フランスはいつだって自分を気に掛けているし、気まぐれに彼の胸に身を預ければ何も言わずに抱き締めてキスをくれる。
我ながらやっかいな性格をしていることはわかっているし、人付き合いも上手くいかないことの方が多いのに、そんな自分に愛想を尽かすこともなく暇さえあればちょっかいをかけてきて、どんな傍若無人な態度で接してもフランスだけは許してくれるから、彼の隣は居心地が良くて安心出来た。
ずっと守って大切にしたかった相手は離れていってしまったのに、なんでよりにもよって昔からいけ好かない変態野郎が、こいつだけは何があっても絶対俺の傍にいてくれるのだと確信出来る相手になってしまうのか、世の中上手くいかないものである。
けれどフランスがいつか自分に愛想を尽かして、離れていくことを想像すると心の深部が冷えていくのを感じる。
生まれたときから長すぎる年月をともにしてきたし、親しい国がいないイギリスの家にたびたび訪れいちいち構っていたのはフランスだけだった。
それだけでイギリスにとってフランスは特別な存在で、今さら彼が離れていってしまったら、きっと自分の精神の一部は乾いてひび割れてしまうに違いない。
普段は嫌いだ何だと文句ばかり言っているけれど、結局イギリスはこの男から離れられないのだ。
フランスから与えられる温もりも優しさも快感も全部知ってしまった今、それを自ら手放すことなど出来はしないと自覚もしている。
イギリスはふう、と長く息を吐き、彼の表情を覗き込むようにして目線を合わせた。
「なぁ…身体、平気か…? お前、手も舌も全部、すげえ熱いぞ……しんどくないのか…?」
フランスが自分から離れていくことを想像して、少しだけ怖くなったイギリスは 体調が悪いときくらい優しくしてやってもいいよな、別にこんなときまで冷たくして嫌われたらいやだとか断じてそんなんじゃねえ、 と誰に言うでもない言い訳を内心でしながら、彼を気遣うように心配そうに問う。
するとめずらしいイギリスの科白に驚いたのか、青い瞳をしばたかせて 大丈夫、 と短く答えると、もう一度唇を重ねて性器に触れていた指を動かした。
下肢を包み込むフランスの手は酷く熱くて、指の腹で尖端の括れを弄られるととろりと先走りが溢れ出て、ぴくん、と小さく肩が揺れる。
零れた白濁を彼の熱を咥え込んでいる後孔に塗り付けられ、徐々にぐずぐずと蕩け始めた入口は細かな収縮を繰り返し、ようやく半分ほど収まった。
フランス自身が中に浸蝕していく感覚に、全身から力が抜けていく。
脱力して重くなったイギリスの身体をどうにか支えようとフランスが体勢を変えると、彼も意図していなかっただろうが腰を突き出すような格好になってしまい、自らの体重で下肢が沈み一気に根元までイギリスの体内に押し込まれてしまった。
「ぁん、……あ…フランス…っ、…」
急に奥まで貫かれて、目を伏せたイギリスの唇から甘い吐息が零れる。
身体中が熱くて繋がったところから熔けていきそうな錯覚を覚えて、フランスの胸に倒れ込むように凭れ掛かった。
顔を埋めた彼の胸から聞こえる明らかに早い心音に、自分だけがこんなふうに熱くなっているわけではないことを知ると、嬉しさで胸が甘く疼く。
フランスの熱をすべて受け入れてしまうと、さっきまでの苦痛が嘘のようにイギリスの内部は柔らかく解け、緩やかに波打った。
「うわ、……お前の中、すっごいきもちいー…」
「んあっ、ァっ……そ、そんなことっ……いちいち言うな、ばかっ」
うっとりと濡れた声音で囁いたフランスの科白に、ますます身体の芯が疼いてどうしようもなく煽られた。
フランスが手を貸してくれたおかげか、後孔を開かれた痛みが薄れたことで少し余裕が出来たイギリスは、体内に脈打つ熱が次第に馴染んでくるとふいに身体を起こし、緩い動作で自分から腰を揺らし始めた。
今日はなるべく彼に負担を掛けないようにしてやりたかったのに、ほとんど何も出来なかったからこうすることでほんの僅かでも楽をさせてやろうと思ったのだ。
フランスを見下ろすイギリスの瞳には暗い欲望の色が翳り、動くたびに肉壁が絡みつくように収縮し、中で擦れるのがおかしくなりそうなほど気持ちいい。
しかしイギリスの遠慮がちな動きでは物足りなくなったのか、フランスは繋がったままで上半身を起き上がらせる。
「……?! なに…」
快楽に溶け、霞掛かっていた意識が引き戻されると、さっきまで見下ろしていたフランスの顔がすぐ正面にあった。
涼しげな青い双眸に間近で見つめられたことで、イギリスは赤い顔を隠すように彼の肩口に顔を埋めて背中に腕を回し縋り付く。
まるで子供みたいなその仕草にフランスも思わず笑みを零すと、イギリスの腰を両手で支えて後孔に捻り込むように中を突き上げ始めた。
「や、…んっ…、ぁっ、あッ…、…」
フランスの律動に合わせて腰を揺らすと、動いた分だけ鋭い快感が湧き上がり、熱を受け入れた入口は激しく収縮する。
閉じようと狭まる内部を強引に開かれ、そのまま強く突き上げられるとフランスの熱はぬるぬると滑り、その浸蝕を止めることも出来ず奥深くまで咥え込んでしまう。
ゆっくりと緩やかだった抽挿が徐々に速度を上げ、彼の硬く張り詰めた肉塊で熱く蕩けた肉襞を思う様擦り上げられる。
「ふ、らんす、……おまえの、…熱いっ…」
熱があるためか中で感じるフランスの性器はいつもよりずっとずっと熱い。
思わず漏らした言葉に、彼が小さく笑う気配がして耳たぶに甘く噛みつかれた。
イギリスの意志とは関係なく身体が勝手に反応し、熟れて綻んだ内壁は体内を出入りするものを不規則な動きできゅう、と繰り返し締め上げた。
それにはフランスも相当きたらしく、僅かに眉を寄せた彼の表情は酷く艶めかしいもので、それを見ただけでイギリスの性感は余計に過敏になる。
無意識でも自分が締め付けるせいで、狭くなった中を貫く熱塊の動きはより力強いものに変わる。
「ひ、ぁっ…やだ、それ…! そんなにしたら、俺、…っ」
「だってイギリスのここ、めちゃくちゃきついんだもん……お兄さん食い千切られそう…」
「ばかぁっ、一回死ねよへんた……、あぅ、…んんっ」
明かりをつけたままの室内は、赤く色づいていやらしく乱れるイギリスの姿態を余すところなく照らしている。
抑えられない甘くねだるような色を滲ませた嬌声に、聴覚からも犯されていくようだった。
中を掻き回すフランスのものが前立腺をぐり、と押し上げ、その強烈な感覚にイギリスはびくん、と大きく身体を揺らす。
「ああ、…や、だ、…こんな、きもちいいの、やだっ」
「…なんで? きもちいいの、いや?」
優しく問う声にイギリスは夢中で首を振る。
縦ではなく横にだ。
言葉と態度は矛盾していて、フランスは笑いながらもう一度問う。
「…きもちいいの、いやなの?」
気持ちいいことは好きだけれど、それをフランスから与えられるのは恥ずかしくてみっともなくて情けなくて仕方がない。
お前なんか嫌いだと日頃散々喚いているくせに、理性が溶ければ残るのは本能だけで、イギリスの心に深く根差した彼への恋情が隠せなくなるのが嫌なのだ。
けれどフランスは誰よりもイギリスの心情を理解している。
イギリスが隠しているつもりになっているだけで、きっとフランスには自分の気持ちなど丸わかりなのに違いない。
「い、いやじゃ、ねえけど、……いやだっ」
麻痺しかけている思考回路では思っていることを上手く言葉にすることが出来なくて、また矛盾した言葉が口をついて出る。
どっちだよ、と笑ったフランスはイギリスの鼻先に口付けると、向かい合って正面からじっと見つめ合った後、唇を笑みの形に歪めた。
「お前って……ほんとかわいいのな…」
熱に潤んだ青色の瞳が細められ、しみじみと呟いたフランスの口調は酷く優しいものだった。
彼が本心からそう言ってくれているのがわかるから、胸がきりきりと切なくなる。
女の子を口説くみたいにそんなことを言われても嬉しいわけがないのに、イギリスの心臓は破裂するんじゃないかと思うほど早く脈打って、身体は燃えるように熱くなった。
「ね、…なんで今日来てくれたの…?」
フランスはイギリスの中を押し広げ、とろとろに蕩けた肉襞を抉りながら続けて問うが、後孔に咥え込んだ質量で思い切り中を掻き回される刺激と内部を灼く熱に意識は浚われて、もはや言葉にして答える余裕なんかない。
もっとも心配で様子を見に来たなんて本当のことは、恥ずかしくてとても言えやしないのだけれど。
答える代わりにフランスの耳朶に齧り付き、続きを促すように指を彼の髪に絡めた。
「今言えないなら後で聞かせてよ…」
どうしてもイギリスがわざわざ訪ねてきた理由が聞きたいらしく、フランスは急に動きを止める。
あと少しでいきそうなのに、中途半端な状態で放り出された身体は熱を溜め苦しいばかりだ。
本当に言うかどうかは別として、今は彼が望む言葉を伝えなければ楽にはなれない。
「わかった、…言うっ、言うから……早く…っ」
根を上げたその言葉にフランスは酷く嬉しそうに微笑んで、再度腰を動かすとイギリスの中を突き上げ擦り上げる。
フランスの熱が何度も敏感な肉壁を滑り、奥深くにあるしこりを押し上げられると、繋がったところがどうしようもなく疼いて堪えきれない快感の波が押し寄せてくる。
中から半分ほど引き抜かれたのを惜しむように思い切り締め上げた次の瞬間、狭まった肉壁を最奥まで穿ち、僅かに息を詰めたフランスの精液がたっぷりと体内に吐き出された。
「あっ…や、フラン、スっ…もう、…も、出るッ……、ん……ぁあっ!」
彼が達したことで中でびくびくと震える性器の感覚に、耐える間もなくイギリスはフランスに縋り付いたまま背をしならせて達し、限界まで張り詰めていた性器からは勢いよく白濁が飛び散り互いの腹を濡らす。
注がれた精をすべて内部で受け止めたイギリスが固く閉じていた目を開けると、力尽きたようにフランスはいきなりベッドの上に倒れ込んだ。
彼の腰に跨るようにして乗っていたイギリスも、一緒にベッドに引き倒される。
「ちょ…おい…、フランス…?」
「……ごめ……おにーさんもう限界………ちょっとだけ寝させて……」
「寝……ってこの状態でかよ?! せめて抜いてから寝ろよばかぁ!!!」
抗議も虚しく、彼は早くも静かな寝息を立て始めた。
自分からしたいだの何だと言い出したのに、やはり体調が良くないせいだろうか、すっかり体力を消耗したらしいフランスはイギリスの身体を腕に抱いたまま寝入っている。
いつもなら一度繋がったくらいで起き上がれなくなるなんてことはないので、やっぱりちょっと無理させたかな、と彼の顔を覆う髪をよけてやると、穏やかな寝顔が眼前に晒された。
自分が訪ねてきたときは寝ているだけで苦しそうだったのに、今は熱で頬が赤らんでいること以外、フランスの表情は普段と変わらないように見える。
このままゆっくり眠ればきっと明日には良くなっているだろう、と深く安堵したイギリスは、彼の胸に寄り添うように額を擦り付けた。
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