イングリッシュ・ローズ/04


ただでさえ狭い個室に二人も入れば余計に狭くなり、自然と互いの身体が密着する。
するとフランスはらしくなく慌てた様子で、少しでも俺との間に距離を取ろうと身体を引いた。
その逃げるような態度に苛ついて、奴が身を引いたのを追うように正面から抱きついてやった。

「ええっ…ちょっ、なに?! 何なのこれ?!」

何をびびっているのか、明らかに動揺している奴の僅かに掠れた声に、俺は笑いを噛み殺して答える。

「もう時間も遅いし、こんなとこ誰も来ねえよ。お前が大人しくしてりゃすぐ済むんだからさ…、じっとしてろよ」

言いながらフランスの太腿に手を滑らせると、奴の身体がびくり、と強張り、まだ少し上擦った声で問う。

「もしかして用って、……そのー……そういうこと?」

「…、だったら何だよ。お前が一ヶ月も放っとくから悪いんだろ………それに…、お前だって…」

フランスの足下に跪いた俺は太腿に触れていた手を少しずつ上に移動させ、ズボンの上から奴自身を手のひらでさすると、そこはすぐに熱を帯び反応する。

「…っ…、イギリス、待っ…ちょっと待った、なにこれ何かの冗談?」

どうにか引き剥がそうとフランスは俺の両肩を押すが、その手にはほとんど力が入っていない。
嫌がっていると言うより、俺からこういう行動に出ることなどこれまでなかったから酷く戸惑っているらしく、もともとないに等しい理性と本能の間で揺れているであろう奴の複雑な表情を見ていると、ますますいろいろしてやりたくなってしまう。

いつもと立場が逆になって、俺の身体を好き勝手に弄っているときのこいつの気持ちが初めてわかった。
俺が触れることで戸惑う様も狼狽える様も、見てるとすっげえ楽しいじゃねーか。
素早くフランスのベルトを外しズボンの前を開いて、躊躇うことなく直に指を絡めて緩く扱いてやると、何度か擦っただけで簡単に硬く勃ち上がっていく。

「おい…、これでも冗談だと思うか?」

「え、ええええちょ、なにお前酔ってんの?」

「酔ってねえよバカ」

劣情を滲ませた奴の掠れた声を聞いただけで身体の奥に燻る熱が煽られてしまい、手のひらと指を使って全体を擦りながら先端をぱくりと口に含んだ。
舌で丁寧に舐めて、指と唇で擦るとその摩擦で唇も舌も熱くなって、余計に興奮した。

「あーあ……、もう……」

俺が自分から誘うような真似をするのも、こうして口でするのも初めてだったから、ようやく俺が本気なんだと気付いたらしいフランスが、溜息混じりの声音で小さく呟くのが聞こえた。

「ん…、んっ…、ふ、ぁっ」

ゆっくり頭を前後に動かしてフランス自身をしゃぶっていると、喉から喘ぎに似たくぐもった声が漏れる。
こいつもしばらくしていないのか、咥えたそれはすでに限界まで張り詰めていて、先走りを零し始めている。

(もうこんなになるくらい溜まってるくせに…、なんで来ないんだよバカ野郎!)

いや別に待ってたわけじゃねえけど、俺がこんなことする羽目になったのはこのバカが来ないからであって、……くそ、噛み千切ってやろうかこれ。
けれど口内で力強く脈打つ熱は今にも弾けそうになっていて、少しでも早く楽にしてやりたくなり、俺は根元を扱いていた手の動きを早める。

尖らせた舌先で先端の窪みをなぞり、抉るように擽って時折軽く歯を立てた。
根元から先に向かって擦り上げるたびに舌の上に苦い味がじわりと広がって、俺は僅かに眉根を寄せたが構わずに括れたところにきつく吸い付いた。

狭い個室の中に二人分の乱れた呼吸と、淫猥な水音が響く。
その音が耳に届いて鼓膜を震わせると、身体はどんどん熱くなり俺はここがトイレであることも忘れて、夢中で口での愛撫を続けた。

するとふいに頭上から小さく呻くような吐息混じりの声が聞こえた直後、突然ぐい、と咥えていたものが喉の奥まで突き入れられて、フランスの手のひらが俺の後頭部を押さえ固定する。
乱暴な動きでその張り詰めた肉塊が口腔内を出入りし、ぬるりとした口内の粘膜の感触を楽しんでいるかのようだった。
それを何度か繰り返すと、ほどなくしてフランス自身が俺の口内で弾け、熱い体液が勢いよく迸る。

「ん、…ッ…、んぅ……!」

俺の頭を押さえ付けているフランスの手は少しも弛まず、咥えた尖端から白濁がどろりと溢れるが、顔を逸らすことも出来ないためそれを飲み下すしかない。
後頭部を押さえていた奴の手が頬に滑り、ようやく解放されてゆっくりそこから口を離すと、飲み込みきれなかった残滓が唇から顎に伝っていく。

「…大丈夫?」

気遣うように声を掛け、俺を見下ろしているフランスをトロリと蕩けた瞳で見上げると、奴の指が口元を拭い上半身を支えるようにして引き上げられた。
少しだけ汗ばんだ額に張り付いた前髪を分け、フランスの唇が優しく触れる。
奴の唇は額からこめかみ、頬へと徐々に下りていき、最後に俺の唇に触れて、そのまま身体をそっと壁に押さえ付けられた。

「……ん、…」

触れるだけのキスを何度も繰り返したあと、吸い上げるようにして深く唇を重ねられる。
口内を舐め回るフランスの舌の感触に身体から力が抜けていって、何とか身体を支えようと俺は奴の背中に腕を回してしがみついた。

さっきまでおもしろいくらい戸惑っていたのが嘘のように、急に積極的になったフランスに俺はひくり、と喉を引き攣らせる。
奴は俺の唇を甘噛みしながら、大きな手のひらを下肢に伸ばしてベルトを外し、ズボンからシャツを引き抜いた。

前を開いたズボンと下着を一緒にずり下げると、熱を帯びて勃ち上がりかけていた俺自身に長い指を絡ませて緩く擦られる。
耳朶に軽く噛み付かれるのと同時に俺自身の先端に爪を立て、まるで精液を搾ろうとするみたいに、根元から先に向かって扱き上げられた。

「お前…俺の咥えただけでこんなんなってんの?」

「うる、せえっ、……、ぁ、んっ、ん…」

フランスの背中に回した腕に力を込めるが、それだけでは身体を支えることが出来なくて、いよいよ立っていられなくなった俺の膝ががくり、と折れた。
奴は俺の腰を腕で支えて持ち上げ何とか立ち上がらせると、その腰に回された手が下に滑り尻の割れ目を広げるように撫でていく。

この先の行為を予感させるその指先の動きに、俺は少し焦った。
無理矢理トイレに連れ込んだのは俺の方だが、それはこいつが疲れてるだの早くしろだのいちいち急かすからであって、俺だって本当はちゃんと部屋で手順を踏んでするつもりだったのだ。
もう時間も遅くて人気が少ないからといっても、いつ人が来るかわからないのだ、ここでこれ以上するのはまずいだろ常識的に考えて。

「ちょ……、おい! お前が変態なことは知ってるが、いくら何でも…こ、こんなとこでする気じゃねーだろうな…?!」

下肢にある手を押さえ不満げな口調でそう問うと、返事の代わりにフランスの長い指が俺の顎を捉え上に向かせる。
そうすると自然と目が合って…… あ、 と思ったときにはもう、奴の顔がぼやけるくらいの至近距離にあった。
唇に温かくて柔らかいものが触れて、またキスをされているのだと気付いた俺はつい目を閉じたりなんかしてしまったが、さらに強く壁に身体を押さえ付けられた僅かな痛みで我に返る。

フランスの身体を押し返そうとしても、奴の手から与えられる緩やかな愛撫と啄むような優しい口付けに、身体の芯が甘く痺れるばかりでまるで力が入らない。
それでも奴の長い髪を掴んでどうにかフランスの頭を引き剥がすと、何とか唇だけは自由になったが押さえ付けられたままの身体は思うように動かせなかった。

「っ…フランス…、…待てって!」

「えー…だってお前が誘ったんじゃん、どうせならお兄さんベッドでちゃんとしたかったのになぁ」

「だったら今から部屋に行けばいいだろっ、てか別に誘ってねえ! もう放せばか!」

「んー、そうしたいけど……それは無理かなー……ほら」

ぐい、と腰を押しつけられて、フランスの下肢が再び熱を帯びているのに気付く。
一度出してやったばかりなのに、どうやらこいつも久しぶりであまり余裕がないらしい。

「…、…っ…」

「ね…、お前が大人しくしてればすぐ済むんだから……じっとしてろよ」

さっき俺が言った科白をそのまま返され、耳の皮膚を擽る声に抗えず、俺は諦めたように浅く息を吐く。
フランスの言動から察するに、 何だ、俺にあ、飽きたってわけじゃなかったのか、 とか思うと何だか胸の奥が熱くなって、強張っていた身体から力が抜けてしまった。

「ここ、…壁に手をついて」

耳元で囁かれ言われるままにのろのろと後ろを向いて、今まで背を預けていた壁と向き合って手をつくと、尻の割れ目を撫でていたフランスの指が明確な意図を持った動きに変わる。
そこを押し広げ奥まった後孔が冷たい空気に晒されると、開かれた秘部に僅かに濡れた硬い指が触れて静かな水音が響いた。
入口の周りをなぞっていく指の動きはやけに性急で、耳元に響くフランスの呼吸音も短く荒い。

(くそっ…俺よりこいつの方がよっぽど欲求不満なんじゃねーか…!)

そんなふうに心の中で毒突いてみても、俺だって似たような状態なのだからお互い様だ。
指先で入口の皮膚を何度もつつかれて俺の背中がひくり、と反ると、そのままフランスの指が内部に差し込まれ、中の浅いところをぐりぐりと刺激される。

「ぅあ…、はァっ、あっ」

くすぐったいようなむず痒いような、何とも言いようのない感覚に頭の中は真っ白になって何も考えられなくなっていく。
フランスは挿し入れた指を狭い内部で器用に動かし、少しずつ馴染ませ解していった。

それと同時に空いている手を俺の脚の間から前に伸ばし、勃ち上がりかけていたそこを握られ数回軽く擦られただけで、一気に下肢が熱を持ち壁に付いた手のひらはじっとりと汗ばんだ。
次々と与えられる快感に脚が震え、身体を支えていられなくなった俺は手をついていた壁に縋り付く。

「ふ、…、ぁあ…っ…」

俺自身の尖端から白濁の雫が滴りだし、フランスがそれを指先に絡めてきつく擦り上げると、堪えきれずに甘い吐息が唇から零れた。
けれど入口だけを擽られる感覚は物足りないだけで、身体の熱ばかりが煽られるようでたまらなくもどかしい。

執拗に指で弄られ、異物を受け入れることに慣れた後孔は耐えきれずに弛んで、俺の意図とは無関係に中を犯すフランスの指をもっと奥へと飲み込もうと蠢動する。
ようやく奴が指を抜いたときには、固く閉じていた内壁は柔らかく蕩け忙しなく収縮を繰り返していた。
息を吐く間もなく、今度はフランスの指が三本まとめて差し入れられて、もう痛々しいくらいに反り返っている俺自身を擦り上げながら、後ろに当てがった指を小刻みに動かして中へと浸蝕させていく。

根元から強く扱かれている先端からは溢れ出た先走りが零れ落ち、フランスはそれを指先で掬うと潤滑油代わりに後孔の奥に塗りつけた。
汗と零れた精液でヌルヌルと滑る俺の中の肉壁を広げるようにして、奥まで入った指が何度も抜き挿しされると、襞が波打つように奴の指を締め付けてしまう。

フランスの腕が俺の身体を後ろから抱きしめるように回されて、絞られた中からゆっくりと指を抜き取り、代わりに広げられた後孔に熱く昂ぶったものが押し当てられた。
それは少しずつ内部を開き俺の中に入ってくるが、すでに足を支えることもままならずただ立っていることすら辛くて、俺の身体は痙攣するみたいに細かく震え出してしまう。

「やっぱ立ったままは…ちょっとしんどいなー。なぁ、大丈夫か?」

そう言ってフランスは先端部分だけ入ったところで動きを止めると、宥めるように耳や首筋にキスを落としながら、俺自身をきつく擦り上げる。
大丈夫じゃねえよばか、と言ってやろうと口を開いた瞬間、尖端にぐり、と爪を立てられその刺激で後孔が弛緩した一瞬に、フランスは根元まで一気に俺の中を貫いた。

「いっ、…や、…ぁぅっ…!」

フランスを罵る言葉の代わりに、口から零れたのは情けなく掠れた声。
狭い場所で不自然な体勢のせいか多少の痛みは伴ったけれど、行為に慣れた身体はすぐに順応し捻じ込まれた熱塊を受け入れる。
フランスは片手で俺の頬に手を添え、首を捻るようにして振り向かせると、唇に優しく噛みつくようにキスをした。

そしてゆっくりと腰を回して中を掻き回され、そのたびに俺の喉からは短い悲鳴に似た喘ぎが呼吸と一緒に吐き出される。
次第にそのフランスの緩やかな動きに、すっかり柔らかく蕩けた肉襞が酷く疼くことに焦れて、無意識のうちに俺は腰を揺らしてしまっていた。
生理的に溢れた涙で視界も滲んでいたが、これ以上我慢出来ないと言わんばかりのねだるような目線だけ後ろに向けると、それに促されてかフランスは一度身体を引いて俺の中を強く突き上げ始めた。

「ひ、ぁっ、…あー…っ」

激しく突き入れられるたびに縋り付いていた壁に衝撃が走って、ガタガタと耳障りな音が響く。
何度も腰を打ち付けられ、抑えられずに甘ったるく響く高い声を上げると、ふいに背中から抱きしめる腕に力が入りフランスは俺の耳元に唇を寄せて、吐息で皮膚を擽るようにして囁いた。

「ごめんね…、俺も…、あんま余裕ない、かも」

一ヶ月ぶりに聞いた、奴の低く掠れた声。
そんなのを聞かされたら、フランスが触れているところと繋がっているところがどうしようもなく熱くなっていく。

フランスの熱を締め付ける肉襞が思う様擦り上げられ、背筋にゾクゾクと震えが走った。
こうなるともうわけがわからなくなって、体内に感じる熱さと銜え込まされている馴染んだ質量は、ただ俺の理性を浚うばかりだ。

「フランスっ、ぁ、あ…っ」

身体の芯が圧迫されるような苦しさの中で、快感の波が押し寄せてくる。
後孔を広げるようにして抽送を繰り返されると、受け入れた箇所はひくひくと波打ってフランス自身を締め付けた。

「お前ん中、…相変わらずきついのな」

「へ、んなこと言うな、ばかっ……、俺…もう、…ん、ぁっ…、…や、あっ!」

フランスの馬鹿が恥ずかしい科白を吐いた直後、そのまま奥まで貫かれ、俺は背を反らせて堪える間もなく小さく身体を震わせて達してしまった。
それから少し遅れて、フランスも俺の中で吐精したのを感じて、中を濡らす奇妙な感覚に固く目を閉じる。

「………、…」

ぬるり…、と体内に収まっていたものが抜き取られても、今までフランスを受け入れていた最奥がまだ甘く痺れていて。
開いたままの後孔がヒクついて、中に出された白濁がトロリと垂れ落ちた。





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