ヤンデレのお兄さんに死ぬほど愛されて眠れないイギリスの話/04
咥えられる部分まで一気に含んで口内の出し入れを繰り返すと、徐々にフランスの性器が硬く張り詰めていく。
その思ったよりも早い反応に、奇跡の力の影響で勃たなくなったんじゃないか、なんてそんないらない心配をしてしまった自分が恥ずかしくなったが、それ以上にこうして触れることで彼がちゃんと感じていることに安堵した。
フランスのものが反応を示すと、そのことに身体の芯が再びじりじりと疼きだしてしまい、あっけなく燃え上がりそうになる自分自身に焦りを覚える。
イギリスが彼とベッドを共有するときは、ほとんどがセックスすることが前提だった。
そういうときはこんなふうに口や手だけで済ませることの方が少ないのだし、身体が勝手に続く行為を期待してしまうのも仕方がないことだ。
ともかく自分の方が我慢できなくなる前に早くいかせて終わらせようと、イギリスは焦る気持ちのまま根元を支えていた手のひらで強く扱く。
咥えていた先端にやんわりと歯を立て吸い上げると、フランスがかすかに笑う気配がした。
「ずいぶん慣れたよな、……なんか…変な感じ」
ほんの少しだけ掠れた色のある声が聞こえたのと同時に、いつものように優しく髪を撫でられる。
さらさらと髪を梳く彼の指の感触が気持ち良くて、ついフランスの科白を聞き流しそうになったが、変な感じってなんだよ、と睨み付けるように目線だけ上げると、彼は目元を朱に染め酷く嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。
快楽を滲ませたいやらしい表情ととろけた瞳に見つめられたら、余計にイギリスの身体の熱は上がってしまう。
(さっさと……出せよ、ばかっ)
そんなことを考えながら手のひらで嚢を揉み潰すように転がして、すっかり硬く反り返ったものを舐っては噛み付いた。
ただフランスをいかせることだけを考えて、必死で手指と舌を動かす。
先のくびれたところに舌を滑らせきつく吸い付くと、口内の熱がひくりと震える。
「っ、イギリス…」
その直後フランスが息を詰め、濡れた声音で短く名前を呼ばれた直後、奥まで咥えていた尖端からどろりとした精液が溢れ出した。
未だ熱く震える性器を口に含んだまま、喉に叩き付けられるように吐き出された白濁をすべて飲み下す。
「ん、…んぅ…っ、ふあっ」
零れる精を余さず受け止め、ようやく彼のものから口を離して顔を上げた。
荒い息を吐いてべたべたになった唇を拭い、じわりと熱を帯びた身体をどうにか落ち着けようと深呼吸を繰り返す。
こんな状態ではとてもすぐには眠れないけれど、時間が経てば身体の熱もいずれ引くはずだ。
約束どおりお互いに一度出したのだから、あとはベッドに横になり睡魔に意識を委ねればいい。
「……おい、着替えたら寝るぞ。…仕方ないから今日はここで寝かせてやるけど、…大人しく寝ろよ」
釘を刺すように素っ気なく言って乱れたシーツを直していると、いきなり背後からフランスの手が伸びて、逃げる間もなくぎゅう、と身体を抱き締められた。
そのままベッドの上に倒され、そればかりかあっという間にパジャマのボタンを外されて、彼の手のひらが汗で湿った胸元を這い回り、ズボンの中にまで手を差し込まれた。
それに驚いたイギリスはびくん、と大きく肩を揺らしてフランスの手を掴んで止める。
「…フランス、…やめろ…!」
「なんで?」
「なんでって、お前な…、一回出したら終わりだって言ったろ! 明日は仕事があるし、……とにかく、今日はそういう気分じゃ、…」
フランスはイギリスの顎を軽く支えて後ろに向かせると、続く言葉を遮るように唇を重ねた。
唇を擦り合わせるキスにぞくりと背筋が震え、少しだけ力の抜けた身体はあっさりと仰向けに返されて、ベッドの上に縫い付けられる。
すぐに我に返って身をよじりなんとかフランスの下から抜け出そうとするが、その動きを封じるように体重を掛けイギリスの下肢にぐい、と彼の腰が押し付けられた。
力任せに押さえ付けられた下半身はぴったりと密着し、互いの性器の感触がはっきりとわかる生々しい感覚に思わずもがいていた動きを止めた。
そのわずかな隙を見逃さなかったフランスはイギリスの身体を押さえ込み、ベッドに沈ませると無言のまま刺すような鋭い視線で見下ろしている。
正面からぶつかった彼の視線に、抵抗することも目を逸らすことも出来ず小さく息を飲む。
フランスと恋人になって、こんなふうに自分の意志を無視されたのは初めてだった。
そのことに少し腹は立ったが彼がこんな行動を取るのはイギリスの奇跡の力が原因で、今回ばかりはフランスはなにも悪くないのだ。
それをわかっているからこそどこにこの感情をぶつければいいのか、やり場のない気持ちを抑えるようにイギリスはシーツに皺がつくほどきつく握り締める。
けれども彼はそんなイギリスの心情などお構いなしに、脱力した両足を開いて抱え上げた。
フランスがこの先の行為までするつもりなのだと気付いて、思わず全身を強張らせる。
いつもならここまできたら無意味な抵抗などやめて身を預けてしまうのに、自分で彼をこんなふうに変えておきながら今のフランスと抱き合うことには気分が乗らなかった。
「やめろって、…フランス!」
少し、…本当に少しだけ泣きそうになって、ようやく発したのは情けなくも弱々しい制止の声だった。
するとイギリスのその反応に、フランスは傷ついたように表情を歪めてぽつりと呟くように言った。
「だめなんて、今まで言ったことなかったじゃねえか。…イギリス、……俺のこと、好きじゃなくなった? 俺はお前のことでいっぱいになるくらい、……あいしてるのに」
「なんでそうなる…! そういうことじゃねえよっ、ばかぁ!」
確かにこれまでフランスにベッドで誘われて断ったことはなかった。
だからといって一度断っただけでなぜそんな結論になるのか、それはあまりにも短絡的な考えではないか。
今までベッドに誘われて断らなかったのはこうしてこちらの言い分も無視して一方的に誘うのではなく、ちゃんとイギリスがその気になるように上手く誘導してくれたからだ。
もちろん日頃からムードなどお構いなしにいきなり抱きつかれたりキスをせまってきたりすることもあるが、そういうことをするのは翌日が休日や急ぎの仕事がないときで、それならまぁいいかな、とイギリスが流されるように応じてしまうことをわかっているときだけだ。
今みたいにイギリスの気持ちを察しようともせず、答えに困る言葉で追い詰めるようなことは言わない。
今のフランスに話が通じないのはわかっていたが、ここまで酷いと本当にどうしていいのかわからない。
奇跡の力を使うにあたり、こんな一面があってもいいよな、と深く考えずにあれこれおかしな性格付けをしたのが災いしてしまったらしい、と今さら後悔した。
とはいえイギリスのことをものすごく愛してる、という希望どおりなのは間違いない。
奇跡の力で変わったフランスが、他の何ものも目に入らないくらいイギリスのことを好きなのは実によくわかるが、これではまるでそれ以外の感情をなくしてしまったかのようだ。
こんなフランスは想像していたのとは違う、と違和感を覚える一方で、彼がただひたすらに自分だけを見て求めてくれることを心の片隅では嬉しいとも思っているのだ。
これまでに見たことがないほど仄暗く澱んだ彼の青い瞳をおそるおそる見つめ返し、初めて見るフランスの表情と言動にドキドキと心音を跳ねさせている自分がいる。
なによりこんな思い詰めた表情で 愛してる なんて言われたら、抗うことなんて出来はしない。
フランスに愛されているという事実は、イギリスにとってどうしようもなく嬉しくて手放したくない大切なものだ。
そんな思いから強く拒否できずにいると、ふいにフランスの顔が眼前に近づいてそっと唇を触れ合わせる。
シーツの上に投げ出されていた手に互いの指を絡めるように繋がれると、離したくないのだと言われているような気がして、皮膚をくすぐる温かな熱にイギリスの胸は幸せな気持ちで満たされていった。
その感情に触発されたのか、無理矢理抑え込んだ身体の芯を疼かせる快感の芽はゆるやかに全身を巡っていく。
繰り返される優しい感触のキスに流されるように、とうとうイギリスは硬くしていた身体から力を抜いた。
こうなってしまったら仕方なしに応じるよりも、自分も楽しんだ方がいいに決まっているし協力してやった方が早く済む。
それに先ほど触れられたことで煽られた体内の火種も、すでに抑えきれないほど大きく育ってしまっている。
指に絡んだフランスの手をぎゅ、と強く握り返すと、彼が動きやすくなるように膝を立て足を大きく開いた。
その反応ですぐにイギリスの意図を察したらしいフランスは、濡れた指先を後孔に滑らせ周辺の皮膚を広げるように動かし始める。
くすぐるように敏感な箇所を撫でられるうちに、そこが浅ましく収縮を始めるのにさほど時間は掛からず、彼の指を迎え入れようと吸い付くようにひくついた。
「こんなにゆるくして、やらしいなぁ……もういれてほしい?」
からかうような口調だったが、その声は熱のこもった余裕のないものだった。
いれたいのはお前の方じゃねえか、と言いたいのを抑えて、イギリスは上擦った声で 「聞くな、……ばかっ」 と答えるのがやっとだった。
するとフランスは虚ろな瞳を潤ませ、じっとイギリスを見つめている。
そして軽く唇を吸って口付けると、世界会議の場でも聞けないような真剣な声音で囁いた。
「……言って。俺のをいれてほしいって」
「っ、…言えるか、……ばかぁ…」
フランスと抱き合うことすら恥ずかしくてならないのに、口に出してねだるなんて羞恥心で押し潰されて死んでしまう。
けれども密着した互いの身体は酷く熱くて、内部の疼きはますます耐え難いものになっていくのを止められない。
言葉の代わりに彼の肩口に顔を埋め、すっかり熱くなった下肢を擦りつけるとかすかにフランスが笑う気配がした。
ようやく浅く出入りし始めた指のもどかしい感覚に、早くいれて欲しいと言ってしまいそうになるのを歯を食いしばって必死で堪えた。
徐々に深くまで挿し入れられ、無意識に中を滑る指をきつく締め付けてしまい、余計に我慢が出来なくなる。
何度か内壁を擦り上げ、掻き回すように体内を探っていた指が引き抜かれ、代わりに熱く滾った肉塊が押し当てられた。
馴染んだ熱の感覚に、これから与えられる快感を待ち侘びるようにイギリスの胸はドキドキと甘く震えた。
そのままぐ、と先端が後孔を割るように押し入ってくると、すっかり柔らかく解けたそこは忙しなく蠢いて奥まで飲み込もうとする。
「あんまり慣らしてないのにもう入っちゃいそう…。俺と会わない間に、……誰か他の奴としたんじゃないだろうな」
「…んなわけあるかっ…!」
「本当に? じゃあなんでこんなに簡単に入っちゃうんだよ」
恋人として付き合い始めて十年、こんなことを月に何度も繰り返していればイギリスの意志とは関係なく、身体は順応するし慣れもする。
会わない間に他の奴と、なんて疑うようなことを言っているが、ほんの三日前にもそのくだらないことを訊いているフランス自身と抱き合ったばかりなのだ。
奇跡の力のせいで記憶がおかしくなっているのか知らないけれど、普段よりすんなり受け入れられたのもそのせいだ。
それなのに何が他の奴としただ、てめえのせいだろばかじゃねえのこのクソ野郎が! と内心で毒づくが、彼の熱を受け入れたところからじわじわと快感が全身を巡り、もはやそれを言葉にする余裕はない。
は、は、と短く息を吐くばかりのイギリスから答えが返らないことに、フランスは不満げに眉をひそめる。
「…お前さぁ……ほんとに俺だけ? 今まで何人とこういうことしたの」
「くだらねえこと訊くなっ、大体そんなこと……お前に関係ねえだろ! こんなときにそういう、…つまんねえこと訊いてきたのはてめえが初めてだよ、バカ!」
何人もなにも、イギリスはこんなことはフランスが初めてだったし他の相手との経験なんてほとんどない。
けれども彼は自分とは真逆でベッドを共にした相手なんてそれこそ数え切れない人数だろうし、イギリスはその大勢の中の一人にすぎない。
イギリスにとってのフランスは初めてで唯一の相手だけれど、彼にとっての自分はそうではないのだ。
別に今さらフランスの過去の相手に嫉妬したりだとかそんな面倒な感情は抱かないが、こっちだけが「お前が初めてでお前だけだ」なんて言ってやるのは癪だし、長く生きているだけに大した経験もないのは我ながら情けないと思ったりもしているので、ちょっとくらいは見栄を張りたくもなる。
そんないらないプライドが顔を出し、余計なことを口走ってしまったのは自分だけが彼のことを好きみたいで、少し悔しい気持ちもあったのかもしれない。
とっさに出た言葉とはいえ、それがフランスの怒りの導火線に火を点けてしまったらしいことはすぐに気付かされた。
「ふーん……デリカシーがなくて悪かったな。でも俺にはつまんねえことじゃないし、……むしろ大事なことなのにな」
フランスは繋がった箇所の熱さとはまるで正反対の醒めた口調で言って、大きく開かれた両足を押さえたままいきなり腰を動かし自らの熱をイギリスの中に押し込んだ。
フランスはそれほど力を入れていないのに、イギリスの後孔は待ち侘びた質量を喜ぶように簡単に彼のものを奥まで咥え込んでいく。
「んっ、……ぁっ、あっ」
「俺だけだと思ってたのに。……なんか、……裏切られた気分」
「あ…? なに、…」
「ずっと前から俺のこと好きだって言ってたくせに、こういうの……俺じゃなくてもいいんだ?」
「そっ、…んなこと、…」
フランスの熱が容赦なく奥まで入ってくる圧迫感に身を震わせ、首をゆるく左右に振って彼の言葉を否定するが、その反応は余計にフランスの機嫌を悪くさせてしまったらしい。
こちらを見下ろす双眸は酷く冷たい色をしていて、刺すような視線にぞくりと背筋が震えイギリスは張らなくていい見栄を張ったことを後悔した。
目を逸らすことも出来ずに見つめ返していた彼の醒めた瞳が、ふいに波面のように揺らめき不安げな色が混じる。
「…本当に、俺のこと好き?」
この状況でそれを訊くのか、と呆れたが、付き合い始めてからも言葉にして自分の気持ちをフランスに伝えたことは数えるほどもない。
独占欲から来ているのだろう彼の科白の一つ一つはイギリスの自尊心をくすぐり、密かに嬉しいと思ってしまっているが、一方ではいちいち自分の言葉をネガティブに捉えるこのフランスは、なんとも面倒くさくて鬱陶しい。
いつものように素っ気なく答えたら、今日はそれを照れ隠しであることを汲み取ってはくれず、火に油を注ぐようなものだろう。
感情を素直に伝えるのは苦手だけれど、イギリスはゆっくり息を吐いて答えた。
「…好きじゃなかったら、……こんなことするか…」
「嘘つき。俺じゃなくてもいいくせに」
「なんだと、…!」
思いがけない科白が返り思わず目線を上げると、抱え上げられた両足を膝裏からすくい上げるようにシーツに押しつけられ、身体がくの字に曲がる。
そのまま上から覆い被さるようにフランスのものが突き入れられて、一気に最奥まで貫かれた。
少し苦しいけれど深く繋がる体位で、こうして抱き合うのは彼の熱をより感じることが出来て好きなのだけれど、今日はいつもよりずっと乱暴に、無理に開かれた後孔はぎちぎちとフランス自身もきつく締め上げてしまっている。
「っ、…フランス、……いてぇ、ばかぁ…」
「痛いのが好きなんだろ?」
冷たい言葉とともに挿入の衝撃で萎えてしまった性器を握られ、手荒く扱かれた。
普段は壊れやすい殻を丁寧に剥がすような、優しくて甘やかな愛撫をしてくれるから、こんなふうに雑なやり方でされたことはなかった。
乱暴にして欲しいという望みどおりのはずなのに、こんなのは違うという苦しい気持ちでいっぱいになる。
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