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| >つづき/08 フランスと本当に恋人同士になりたいし、そのために自分にできることはこの一週間に全部やると決めたのだ。 ひそかに深呼吸をしてフランスの答えを待っていると、彼はイギリスをじっと見つめて口を開く。 「お前がそういうこと訊くのってめずらしいな。でもそれくらい、イギリスなら知ってると思ってたんだけどなー。付き合い長いんだしさ」 「お前の好みなんか知るわけないだろ。いつも連れてる相手が違うんだからな」 相手が違っていても、みんな髪色や瞳の色が同じだとか、髪型や雰囲気が似ているだとかそういうわかりやすい共通点があるならまだわかりようもあるが、毎回違うタイプの女性……ときには男性と一緒なのだ。 イギリスにしてみれば誰彼構わず尻を撫で回すような変態野郎の好みのタイプなど、いかに付き合いが長くてもまったくわからない。 するとイギリスの素っ気ない答えに、フランスはなぜかほんの少し寂しそうに眉尻を下げて笑って答える。 「まぁ、俺はみんなを愛してるからね。美しかったりきれいだったりかわいかったりすればより好きだし、みんなそれぞれ違った魅力があるからいいんじゃねえか。俺はね、どういうタイプがいいとか、そういう枠には囚われたくないわけよ」 「……ようするに誰でもいい節操なしってことじゃねえか」 みんなを愛してるだとかそれぞれ違った魅力があるからいいだとか、格好いいことを言っているようにも聞こえるが、簡単に言えば節操なし以外のなんでもない。 さらに言うと誰でもいい節操なしのこの男が、自分には手を出そうとしなかったのだと思うと酷くおもしろくない気分になった。 眉をひそめて返したイギリスの言葉にフランスは左右に首を振る。 「そんなことねえよ。みんな愛してるけど、やっぱりその中で一番ってあるからさ」 「……一番って、……本命ってことか?」 「そ。魅力的な子はいっぱいいるけど、俺にとってはずっと一番かわいいと思う子がいるんだよ」 「…………そ、うか」 そんな話は聞いたことがない。 誰でもいいなら自分が入り込める余地もあるだろうと思ったのに、本命がいるとなるとそうはいかない。 それに「ずっと」というからには、彼がその相手を好きになったのは今日や昨日の話ではないのだろう。 つまり今イギリスが使った妖精の秘薬の効果は無関係で、フランスの一番はイギリスではないということだ。 結局彼の意識を自分に向けられるのは、たった一週間で終わりらしい。 なんだやっぱりこんなオチか、とイギリスは肩を落とす。 フランスと恋人になれるかもしれないなんて、そんな都合のいいことがあるわけなかったのだ。 胸が苦しくなって思わず溜息を漏らすと、イギリスの心情を知らないフランスは「どんな相手か知りたい?」などと嬉しそうに笑って言う。 傷口に塩を塗るような彼の言葉にますます胸が痛んだ。 「……別に興味ねえよ、てめえの好きな奴のことなんか」 きっとイギリスとは正反対の、きれいで素直でかわいらしい相手なのに違いない。 改めてフランスが自分と恋人になる可能性を否定するような、そんな話は聞きたくない。 けれども彼は自慢したいのかなんなのか、興味がないというイギリスの言葉にも構わず話を続ける。 「いいから聞けって! ……そいつは眉毛がばかみたいに太くて料理がどうしようもなくへたで、すぐに殴ったり蹴ったり髪を引っ張ったりしてきてすごく暴力的なんだけど、そうやって手が出るのは照れ隠しだってわかってるし、……そこがかわいいの」 フランスは一気にそう言って、ニヨニヨ笑いながらイギリスの肩を抱く手に力を込めた。 お前のことだ、と言わんばかりの科白と行動に心音が一瞬で高鳴る。 「……誰に言ってんだ」 もしかして、と期待する気持ちを抑えて確認するように問うと、空いた手でぷにぷにと頬をつつかれた。 「バッカだなぁ、お前だよ。極太眉毛で料理がドへたの乱暴者なんて、お兄さんの知り合いにはお前しかいねえだろ?」 返った言葉にイギリスはかっと頬が熱くなるのを抑えきれなかった。 「な、……う、うそつけ!」 「なにがうそなんだよ、お前まさか自分の眉毛も料理も普通だなんてずうずうしいこと思ってんの?」 「そっちじゃねえ! い、一番、……って…」 イギリスの問いにフランスが微笑って頷いたのを見て、胸の中があたたかい感情で満たされる。 しかしもしかしたらこれも妖精の秘薬による影響なんじゃないかと思えて、喜ぶ気持ちは少しだけしぼんだ。 数多くいる魅力的な相手の中で、彼が本当にイギリスを一番かわいいと思っていて、本命と呼べる存在だったなら今までそんな素振りを一切見せないなんて考えにくい。 イギリスが一番だなんて、秘薬の力でそんなふうに思い違いをしているのに違いなかった。 けれども今はそれでもいい。 重要なのはその思い違いを真実にすることだ。 フランスの反応に一喜一憂している場合ではない。 イギリスは小さく嘆息して、彼に睨み付けるような目線を向けると不機嫌な口調で答える。 「なんだよ、一番とか言うわりに一つも褒めてねえじゃねえか」 「えー? 全部褒めてるだろ、そういうとこがかわいいって」 「それはばかにしてるって言うんだよ!」 この男はこれで本気で褒めているつもりなのだから呆れる。 ぽこぽこ怒ったイギリスを見て、フランスは声を上げて笑っている。 「そんなに怒るなって。もし他にも眉毛の太い料理下手な乱暴者がいたとしても、俺が好きになるのはお前だけなんだからさ」 ぎゅっと肩を抱き寄せられてはっきりとそう言われ、火照った頬がより熱くなるのを感じた。 それにしても妖精の秘薬はすごい効果だ。 今までイギリスの性格を最悪だとか大嫌いだとか言っていたフランスが、逆にそういうところがかわいいだなんてありえないことを言い出したのだ。 |