カゴが欲しいとワガママを口走るレイヴンを宥め(本当は宥めてなどなく強硬手段で黙らせただけ)合成屋を後にしたユーリだったが、口を尖らせつつもレイヴンが後ろを付いて歩いていることに若干安堵していた。

(よし、ちゃんと店出てんな)

 これ以上幼い日の憧れをぶち壊されてたまるか。
 …なんて口に出せるわけがない。特に本人の前で漏らしでもしたら、どんな風に調子に乗ることか――考えただけでウザいことこの上ない。


 大体なんなんだ、この落差は。
 川に落ちた自分を颯爽と救い出した時の、あの姿。
 鎧下だけの姿でずぶ濡れの上、顔全体を覆い隠すカゴ。
 そもそも、材質や形状からして水を含んで邪魔だったろうにカゴを被り続けた一徹さは、どんな事情からきていたのだろうという疑問はさておき。
 そんな変質者極まりない格好であるにもかかわらず、助け出された自分がヒーローを見たようにして憧れたのは……多分、自分を支えて揺ぎない腕だとか、ぴったり張り付く布一枚で隔たるだけで伝わった硬い胸板だとか、頬に張り付いた髪を梳いた指の優しさだとか…そういうものだったろう。
 意識と視界が朦朧としていた分、冷えた肌に伝わる体温やそれに付随する安心感のほうがより鮮明で忘れられない。
 もちろん今だってそういう姿を見せることはある。
 昔憧れた要素が全く滅び果てたわけではなく、14歳年上の大人の分別を垣間見せることもあるし、ユニオンの幹部を務めていただけあって頼れるところもあったりもする。
 だというのに、この日常はどうだ。
 さっきだって散々ヤダヤダと駄々捏ねやがって、それがあの昔憧れた男の……。
 と、ユーリは半無意識で振り返り、顔を見て――。


「な、なによう青年!なんでそんな大きな溜息?!」
「…………」


 なにを血迷って、鼻に目隠し巻いてやがるこのおっさん。
 鼻声で文句を垂れつつ、頬を膨らませ唇を尖らせるレイヴンに近寄り、ユーリは無言で黒い布を解く。
 ユーリの手の中で―― 一条の布がビン!と鋭い音を立てた。


「え…、ちょ、青年!ギブギブギブ!!喉に巻かないで絞めないでおっさん死んじゃうゴメンなさい何かわかんないけどゴメン!!!」

 思い知れオレの積年のあれこれを!!




ネタ元:「ぽっぽ」マイさま


〜〜〜〜〜

・↑を献上しましたらば、とんでもないもの(別窓注意)をご下賜くだされました。
 しばらく独占状態でごめんなさい!
 ユーリの呆れた顔とか、口を尖らせたおっさんとか……柚守は萌え幸せすぎてどうしようかと思いま、す(継続)
 相方に「ああちくしょう、○ねばいいのに!」と言われたのは定番ですww
 弊サイトは、カゴ仮面を 大変に応援 しています。
 ユーリにも頑張って欲しいです。主に子守…おっさん番的な意味で(あれっ?!)

  
 カゴ仮面推進委員会 ただの会員:柚守。