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 さくさくと、雪が軽やかな音を立てる。
 真っ白な粉雪。溶けることを知らない、天界の雪。
 人目を避けるように奥まった場所で、ユーデクスは一人、雪と格闘していた。
 さらさらした粉雪を、ゆっくりと積み上げ、慎重に固める。
 色白な指先が、器用に造形を整え、線を描き、その形を作っていく。
 冷たさは感じない。
 地上に降りている天使ならいざ知らず、天界から殆ど出たことのない彼は、雪を……その冷たさを知らない。
 故に、雪が冷たいという認識も、感覚も鈍い。
 だからこそ、こんな風に、凝った雪像も、時間をかけてじっくりと作ることができた。
 一つ一つ心を……祈りを込めるように、丁寧に手を加えて。
 孤独で静かな世界の中、無言で自分とほぼ同じ背丈の、等身大のオブジェを作っていく。



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