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頭の中で警鐘が鳴り響く。
目の前の悪魔の姿に、目を奪われてはいけない。と。
目の前の悪魔の言葉に、耳を傾けてはいけない。と。
わかりきったことだ。
悪魔は嫌悪すべきもの。
存在を認めてはいけない。
なのに、なぜ、こんなにも心震えるのか。
姿を見るだけで、表現できないほどの様々な感情が胸のうちに膨らむ。
この、今生まれたばかりの白い悪魔に、心乱される。
天使が、悪魔を求めてはいけない。
役目を放棄してはいけない。
神の命を全うすることが、存在意義であり、何よりもの喜び。
だが実際は、彼の名を叫び駆け寄りたいと願う私と、それを押し留める私がせめぎ合う。
吹き荒れる感情の嵐を振り払うように、私は刃を振るう。
漆黒の鎌が空気を切り裂き、見えない風が刃となって白い悪魔を襲う。
向こうもかつては智天使と呼ばれていた存在。
中級悪魔ならば一刀両断されるであろう攻撃も流されて終わる。
想定の範囲内。
隙を縫うように、距離を縮める。
至近距離で視線が合う。
もう一人の私が悲鳴をあげる。
何故だ、と。
何故、君と刃を交わさねばならないのかと。
選んだのは、私だろうに。
彼をこの手で滅ぼす事を選んだのは、他でも無い私自身。
冷静に諭す私の言葉は、虚しく心に霧散するだけで、嵐は一向に止む気配がない。
その間も、何度も白い刃を避け、同じ回数だけ黒い刃を向けた。
まるで、クルクルと、歪んだワルツを踊っているようだと思った。
一つでも音を外せば、待つのは消滅。
そんな紙一重の状況の中、向かい合う白い悪魔は、私を真っ直ぐに見ていた。
穏やかな微笑み。
昔と変わる事のない、余裕さえ感じるそれが、徐々に腹立たしく感じ始める。
だが、同時に、喜びも覚えるのだ。
彼の瞳を独占しているのは、私だけなのだと。
今この瞬間だけは、彼の事のみに思考を使う事を、許されるのだと。
警鐘が大きくなる。
早く排除しろと、悪魔を滅せよと、神が声なき声で私を導く。
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