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獰猛で荒々しい動きに合わせ、白金の髪が踊る。
汗に濡れたそれが視界をさえぎり頬を叩くのを鬱陶しく感じつつも、デウスはそれ以上に今組み敷いている獲物を蹂躙する方を優先する。
そして彼は、鬱陶しさから来る苛立ちさえぶつけるようにますます動きを乱雑に、横暴に激しくしていった。
「……ぐ、ぅッ……かはっ……ぁ、あ……」
愉悦というにはあまりに恥辱と憤怒に満ちた表情を浮かべ、呻く様な声を上げる男……否、魔人。
艶やかな漆黒の髪。その隙間から生える歪に曲がった赤い角と、人間ではありえない長い耳。
無気味なほど白い肌には、まるで絵画のように複雑な文様が描かれている。
真っ白な背から生える大きな蝙蝠を思わせる漆黒の翼は歪な方向に折れ曲がっており、とても飛べるような状況には見えない。
そして露にされたその全身が、赤や白の様々な液体で淫靡に濡れそぼっていた。
劣情を煽るその姿の中にあって尚、光を失わない深紅の中に浮かぶ深い闇を凝縮した高貴なる宝石のような瞳。
それは、溢れんばかりの憎しみと怒りを乗せて、己を組み敷く男を睨みあげる。
さすが魔王の名を冠するだけはある。陵辱されても尚、全身から立ち上る純然たる濃厚な闇の気配は、近づくだけで耐性の無いものは瞬時に飲み込まれ、塵へと化すだろう。
だが、彼を組み敷くどう見ても人間にしか見えないデウスは、全く意に介した風なく、荒々しい動きを続ける。
前髪も含め、肩上ほどまでの長さで無造作に切りそろえられた、白金の絹糸のような髪。
魔を退けると言われる宝石、翡翠を埋め込んだような、智に溢れた美しい瞳。
肌は透き通るように白く、まるで白磁のような滑らかさがある。しかし、その白さは魔人の持つそれとは違い、透明度のある、儚い雰囲気さえ齎す柔らかいものだ。
デウスはその綺麗な翡翠色の瞳を凶暴な色に輝かせ、いっそ清清しいほどの鮮やかな笑みを浮かべて嗤った。
「どうした? もう抵抗しないのか、サタン」
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