= 2 =
「……俺にできるのは、待つことだけだ。
お前の帰りを神に祈りながら、な」
「神、か……」
珍しく少し考え込む仕草をしたオーギーはふっと笑った。
「オーギー?」
「なぁ、祝福してくれないか?」
「はぁ!?」
突然何を言い出すのか。
ロイはあきれ返る。
「俺は聖職者じゃないぞ。
大体、出陣式で正式なものをして貰うんだろう?」
「気持ちの問題だって。
お前から、欲しいんだ」
そう言われても、ロイ自身きちんとした祝福をうけたのは成人の義くらいで、きちんとしたやり方も、文言も覚えているわけではない。
それでも、彼が……大切な者が望むのならば。
ロイは机に置いてあった己の神望星を手にし、オーギーの前に立つと、記憶を頼りに聖書の一説を読み上げる。
「強くあれ。雄雄しくあれ。
恐れてはならない。おののいてはならない。
あなたの神、主が、あなたの行く所どこにでも、あなたとともにあるからである。
主の僕として試練に立ち向かう者、オーガスト=ノイマンに、より一層の加護と導きを与えたまえ」
目前で頭を垂れて祈る騎士の姿は、まるでよく出来た彫刻のようだと、ぼんやりとロイは思う。
同時に、熱心なその姿に言いようの無い愛しさが込み上げて。
お前の行く所どこにでも、せめて心だけでもはともにあるようにと。
ロイは、星を握り締め、思いを込めてその額に口付けを落とす。
「必ず、帰ってこい」
震える声は、きっと、武者震いが移ったのだ。
そう自分に言い聞かせ、ロイは無理矢理笑みを作る。
目を目一杯見開き驚きを隠せない、最愛の『親友』に、ロイは気まずさを誤魔化すように言う。
「待ってるからな」
その言葉に、オーギーの驚きの表情はどこか照れたような、はにかむ表情に変わる。
そして、彼は笑って言った。
「最高の祝福だ」
end...
<< back || Story || next >>