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「……俺にできるのは、待つことだけだ。
 お前の帰りを神に祈りながら、な」
「神、か……」

 珍しく少し考え込む仕草をしたオーギーはふっと笑った。

「オーギー?」
「なぁ、祝福してくれないか?」
「はぁ!?」

 突然何を言い出すのか。
 ロイはあきれ返る。

「俺は聖職者じゃないぞ。
 大体、出陣式で正式なものをして貰うんだろう?」
「気持ちの問題だって。
 お前から、欲しいんだ」

 そう言われても、ロイ自身きちんとした祝福をうけたのは成人の義くらいで、きちんとしたやり方も、文言も覚えているわけではない。
 それでも、彼が……大切な者が望むのならば。
 ロイは机に置いてあった己の神望星を手にし、オーギーの前に立つと、記憶を頼りに聖書の一説を読み上げる。

「強くあれ。雄雄しくあれ。
 恐れてはならない。おののいてはならない。
 あなたの神、主が、あなたの行く所どこにでも、あなたとともにあるからである。

 主の僕として試練に立ち向かう者、オーガスト=ノイマンに、より一層の加護と導きを与えたまえ」

 目前で頭を垂れて祈る騎士の姿は、まるでよく出来た彫刻のようだと、ぼんやりとロイは思う。
 同時に、熱心なその姿に言いようの無い愛しさが込み上げて。

 お前の行く所どこにでも、せめて心だけでもはともにあるようにと。

 ロイは、星を握り締め、思いを込めてその額に口付けを落とす。

「必ず、帰ってこい」

 震える声は、きっと、武者震いが移ったのだ。
 そう自分に言い聞かせ、ロイは無理矢理笑みを作る。
 目を目一杯見開き驚きを隠せない、最愛の『親友』に、ロイは気まずさを誤魔化すように言う。

「待ってるからな」

 その言葉に、オーギーの驚きの表情はどこか照れたような、はにかむ表情に変わる。
 そして、彼は笑って言った。

「最高の祝福だ」



 end...



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