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 眩いほど白い、美しい天使。
 羽毛のように柔らかで手触りの良い、真っ白な髪。髪の色と同じ色の長いまつげが、象牙のように白くて滑らかな肌に薄い影をおとす。整った鼻梁は天使らしい完璧な美しさで、表情を消して黙っていると、無機質で冷酷な人形のようにも見えるかもしれない。実際は、いつだって穏和な笑みを浮かべて、その色素の薄い瞳に、天使では異質な黒色を持つ自分を映してくれるのだが。
 いつも様々な話を聞かせてくれる形の良い唇は、今は薄く開いて、規則正しいリズムで寝息の旋律を歌っている。
 ふわりと鼻を掠める友の気配に、自然と顔が綻ぶ。
 ユーデクスの胸の内に溢れてくる、言いようのない喜びと感動。

 どれだけ見ても、見飽きない友。
 同時に創られた片割れ。
 同じ力を分け合った半身。
 もう一人の自分。

 この天使が、自分の領域に存在していることが、嬉しくて嬉しくて仕方がない。
 まるで生まれたての人形のように意思が曖昧で、言葉も碌に話せないユーデクスは、それでもこの胸の内の、熱く高鳴る気持ちが【愛しい】という物だという事はわかった。
 許されるなら、このままずっとこうして隣りで眺めていたい程に。
 ずっと、この誰も邪魔できない領域で、二人きりで過ごしていたい程に。

 ふと、ベッドの上に仰向けに横になる友を見て、ユーデクスは気付く。
 そういえば、人間はベッドの上で毛布やシーツを被って寝るらしい。
 天使に布や衣服等で体温調節をする必要はないが、どうせなら、真似てみよう。
 ユーデクスは立ち上がると、ふわりと柔らかなタオルケットを作り出す。
 少し悩むように立ちすくんで、結局彼は、それをアイゼイヤの胸から下の部分を覆うように掛けた。
 頭から掛けて、愛しい顔が見られないのは嫌だと思ったのだ。

 満足したユーデクスは、再び床に膝をつき、友の顔を眺めだす。
 まだまだ、目覚める気配はなさそうで、もう少しこの時間を過ごせると思うと喜びに頬が緩む。
 ユーデクスは、初めての激しい感情を胸の内に遊ばせながら、穏やかな微笑みを浮かべ、アイゼイヤが目覚めるまでその姿を眺め続けたのだった。



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