お花シリーズ - 南天2
「……!?」
突然、着信。
名前は……『司さん』。
僕は、震える手で通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
『……彩(あや)?……俺だ』
声に思わず頷きかけて……これが電話だった事に気付いて慌てて声を出す。
「は、はい。
……先生、どうしたの……?」
震える声を必死に落ち着けて問いかけると、先生の吐息が耳に入った。
『今日、生徒会の新年会で……次のメンバーの話になってな』
「う、うん」
『領真(りょうま)と真弥(まや)の名前と……お前の名前が挙がって』
納得のいく同級生の名前が挙がって相槌を打っていたら、不意打ちにびっくりした。
「うん……? 僕!? そんなっ、無理だよっ」
『大丈夫。 そんな大変な仕事でもないぞ』
無責任に笑う先生に、ちょっと腹が立つ。
「無理っ!絶対無理!!」
早口に、強い口調で、僕は断言してしまった。
途端、電話の向こうで、先生が沈黙する。
つ、強く言い過ぎたかな……折角先生が話題に挙げてくれたのに……。
『……俺に会う口実が出来ても?』
「………………っ!!」
言われてみれば、そうだ。
……そんなこと言われたら、心惹かれるじゃないか。
「…………イジワル」
呟いたら、先生は向こうで大爆笑した。
『あはは。 ……うん。で、話に挙がったせいで、声が聞きたくなったんだが……元気そうだな』
明るかった声の調子が急に優しくなって、ドキドキする。
「先生も、元気そうで、よかった……」
です、と続けようとして、止めた。
ここには僕しかいないから、敬語使う必要ないよね?
『……彩』
先生もそれに気付いたみたいで、低い……二人っきりの時の甘い声で僕の名前を呼んだ。
くすぐったくて、思わず首をすくめちゃう。
『彩』
もう一度呼ばれた。
その名前の意味が分かるから、余計にくすぐったくて……胸が痛くなる。
先生は、今、どんな顔でこの名前を呼んでるんだろう?
見たい……今すぐ飛んでいって、見られればいいのに。
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