お花シリーズ - すすき1

 朝一番。日直になっている僕は、まだ誰もいない教室に鞄を置くと、丁度15分経った頃を見計らって職員室を目指す。

 駅のホームで見つけた大好きな先生が、丁度職員室に着いた頃に。



 僕の名前は嶋津彩(しまづ あや)。女の子みたいな名前だけど、れっきとした男。僕が通っているのも男子校だ。

 僕の性別を勘違いしたお父さんが付けた名前で、それを教えたら先生は、見た目も可愛いから良く似合ってるって、嬉しいのか嬉しくないのか解らないコメントをくれた。

 『先生』というのは、僕の高校の国語の先生で生徒会の顧問もしている、笠寺司(かさでら つかさ)先生のこと。

 背が高くて、モデルみたいにかっこよくて、花言葉について詳しいとっても優しい男の人。

 最初はただの憧れだと思っていたけれど、先生を見ると、とっても嬉しくなるのと同時にドキドキして、胸が苦しくなってくるのを先輩に話したら、『それは 恋だよ』って言われてしまった。

 男なのに、男の人に恋するなんておかしいよね。

 けど、僕が補助役員として所属している(無理矢理させられたんだけど)生徒会の先輩たちは、みんな恋人が男の人で、『養子縁組』という同姓の結婚をした人が二人もいたりする。

 男子校だからそういう風習というか……まぁ、男が恋人ということも珍しくないらしい。

 そして、そんな先輩たちだから、僕が気持ちを打ち明けた時、誰も笑わずに真剣に聞いてくれて、アドバイスまでもらっちゃった。

 皆、顔も頭も良くて学校のアイドルだから、それを知ったときは凄くびっく りしたけれどね。



 そして、開き直った僕は先生に少しでも好きになってもらえるように、日々頑張っているのだ。


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