お花シリーズ - 雪の花1

「また降って来たなぁ」

 のんびりとソファに寛ぎ、妹の淹れたコーヒーを啜りながら、面白くも無いテレビを眺める、そんな午後3時過ぎ。

 窓から眺める外は雪が積もっており、さらに降り出した雪がその上に積もろうとしている。

 本当はこの暖かい室内で眠ってしまいたいが、未だ大掃除真っ只中で、一息ついたら今度は書庫の整理をしなければならない。

「今日明日と降り積もるらしいよ。窓拭きはそれ以降ね」

 妹の言葉に、司は眉を顰めた。明日、窓拭きができなければ、役目は間違いなく自分に回ってくるのだ。

 週末以外ほぼ毎日大学に泊り込んでいる卒論〆切前の 弟とは違い、高校教師の司はすでに終業式が終わっている。

 補習講師も外れている上に顧問をしている生徒会も活動が無く、学年会議も年明けに持ち越しで冬休み同然だ。

 当然、大掃除の労働力としてしっかりカウントされている。

 ちなみに、家の家事全てを取り仕切る妹は大学2年生で、既に冬休みに入っていた。

「アイツ、今日帰ってこれるのか?」

「さぁ……電車は止まったみたいだけど。チェーン、持ってってるかしら?」

 弟のことを差して言った代名詞。勿論、妹には通じる。

 伊達に20年以上兄弟をやっているわけではないのだ。

「一応、車を買った時に一緒に買って……トランクに入れたはずだがな」

「ダメだったら、お兄ちゃん迎えに行ってあげてよ」

「ったく、めんどくせー」

 ぼやき、頭を掻きつつ、司は立ち上がる。

 テレビを消してカップを流しに置くと、書庫へと足を向けた。どうせハタキで叩いて終わりだ。

「ちゃんといらない物捨ててよ!」

「…………」

 さすが兄妹。考えはお見通しで、しっかり釘を刺されてしまった。

 仕方なくゴミ袋を手にして外に出ようとした瞬間、司の携帯電話が彼の足を止めた。


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