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姉3


 横になって闘う。これが僕の選択した道だ。かなり勝率の低い、危険極まる戦法。それをあえて選ぶことは、大きなリスクを取ってでも姉に勝ちたいと、強く願ったからである。

 この残り精力で、しかもあの姉相手に、いきなり挿入戦というのは、無謀とも言える作戦だ。強化されているだけではなく、姉のオンナは僕にとって、これまでにない快楽の坩堝であることは明らかだ。僕のペニスの一番感じやすいところを確実に付け狙って、最高級とも言える締まりの中で、イかせ果てるまで着実にピンポイントで絞り上げてくるだろう。

 もし、中学時代や高校時代の僕が、生足にあこがれるばかりだった僕が、いきなり挿れてしまうとすれば、その瞬間のあまりの気持ちよさに、根元まで入らないうちに脈打たせてしまったに違いない。そうはならない自信があるのは、これまで培ってきた経験とレベルがあるおかげだ。

 でも、精力値はかなり心許ない状況でもある。だから賭なんだ。あえて挿入に誘い込み、そこを逆手にとって、大きく逆転しきってやるんだ。そうすれば、こちらの高い攻撃テクニックを駆使して、姉にとって思わぬ快楽を味わわせ、一気に絶頂まで持ち込める可能性は、きっとあるんだ。

 僕はやわらかな床に横になった。

 姉は嬉々として、僕の上にのしかかろうと密着してくる。ここまで計算どおりだ。彼女はなんとしても、僕の上になって、しっかりと下腹部を押さえながら、騎乗位での挿入に持ち込んでくるだろう。しかしその前に確実に、彼女は自慢の肌を僕に密着させ、中高生時代にあこがれていた姉さんの肌触りを、存分に刻みつけてくるはずだ。勝負はまず、そこからだ。

 姉さんは僕に寄り添うように寝そべって、スリスリと生足を僕の両脚に絡めてきた。うぁ……思った以上に……心地よい。シコシコ吸いついてくる太ももの柔らかな感触が、ぴったり僕の脚を滑っていく。細めながら、背が低くて短い太ももながら、女性的な肉付きと滑らかさはきちんと身についているのが分かる。

 これが……あこがれていた姉さんの脚の感触なんだ。

 性に目覚めて以来ずっと、より成長の速い姉の身体。とりわけ、その生足を凝視する機会がほぼ毎日のようにあり、夜な夜なオカズにしてきた。素足特有のやわらかで滑らかそうな感触を想像して抜いてきた、あの太ももなんだ。それが今、現実のものとなって、じっさいに僕の脚をじかに滑っている。

 しかし……その想い出と感触にほだされたら負けだ。僕の隙を見て必ず、姉は僕にのしかかり、適度に体重をかけて抱き込んでくるだろう。姉は背が低いので、彼女の頭部は僕のミゾオチの少し上くらいか、胸板あたりに来るはずだ。そしてその細い腰回りや、出っ張りの控えめな乳房の感触まで味わわせ、さらに僕を魅了してくるだろう。

 そこで僕が後手に回れば、彼女はたちまち、女性上位で挿入してくる。根元まで飲み込み、その快感に震えている間に、彼女はガバッと身を起こして、騎乗位に切り替えてガンガン全身を上下させてくるに違いない。残り少ない精力を一気に絞り取り、そのまま精液を自分の子宮に全部、残らず飲み込んでしまう気だ。こっちの世界では妊娠は起こりえないからだ。

 僕は姉の生足の感触に耐えながら、なんとかして、彼女が上にのしかかってくるのを阻止しようと躍起になった。

 隙あらば彼女は、すぐにでも乗っかってこようと、さらに身をグイグイ引き寄せてくる。そのまま身体を滑らせながら、するりと上になってくる気満々だ。僕はそれを阻止しながら、逆にこっちが主導権を握る隙を探し続けた。

 時間はない。密着すればするほど、女体の、とくに姉のみずみずしい肌触りの餌食になり続けるからだ。しかし当然、彼女はなかなか、その隙を見せてはこない。

 姉の肌細胞が、僕よりはるかにきめ細かく、文字どおり吸いつくように滑っていく。ピッタリと密着し、移動するごとに、その肌細胞が名残惜しそうに僕の表皮を引っ張り、むちっと剥がれては次の部分に吸いついてくる。それが手も脚も腰もお腹も、胸も、どこもかしこもがそうなっているんだ。

 あこがれのおねえちゃんの肌触りを感じた弟は、その感触に悶えながら、全身に襲いかかる肌触りの快楽が股間へと流れていくのを感じざるを得ない。まだ直接はペニスに攻撃を受けてはいないが、それは僕の感情を高め、弱体化を進めてから、あくまでオンナを駆使して射精させにかかるつもりだからだ。そのくらい分かっている。

 その手には乗るもんか。僕はグイッと身を翻し、逆に彼女の上にのしかかった。よし、上に乗れる隙を突けたぞ。僕の方が身体が大きいので、上になることができれば、そのままマウントを取れる。

「うっくそ!」
「ふふっ……アンタの考えなんて、浅いよ!」

 姉は腰をひねり、僕が正常位に持ち込んでこようとするのを、ぎりぎりかわしてしまった。せっかく体勢逆転の上、正常位に持ち込もうとしたのだが、その作戦はすでに相手に見抜かれていた。

 何度か正常位に持ち込もうと上にのしかかっては腰を突き出したが、どうしても姉に寸前でかわされてしまう。あと少しのところで、挿入に持ち込めない。その代わりに、ペニスがオンナ周囲や腰回りなどにスリスリとこすりつけられる分だけ、こちらに一方的にダメージが来る。

「だぁめ!」

 姉さんはシュルッと横にずれ、僕の下から脱出してしまう。そしてまた、さっきと同じように、姉ならではの肌触りをこすりつけ続けてくるのだった。こっちが焦れば焦るほど、姉は時間をかけて闘おうとしてくる。くっそ……やっぱり劣勢だ……。

 姉さんはスッと下方へと身をかがめてくる。彼女の狙いは、僕の股間に集中され始める。まずい……いきなりの挿入戦で勝敗をつけようとする僕の読みが見抜かれたために、正常位でも騎乗位でもオンナに挿れて決着をつけることを、彼女は拒絶したのだった。

 その代わりに、姉さんは仰向けの僕の股間に、さまざまな部位をこすりつける戦法に切り替えてきた!

 まずは脇の下の餌食になった。ペニスは、ツルツルの脇の下に包まれ、挟み込まれてしまった。この世界では首から下に毛は生えないので、太い脇毛も、毛根からまったく存在していない。そのために、やわらかで心地よい感触だけがペニスを包み込む。そして姉が腕をきつく閉じれば、やわらかな締め付けがそこに加わる。

 スリスリと滑らせながら、姉さんはペニスを脇の下でこすりあげてくる。腕の感触も滑ってくる。さっきまでさんざん、僕の全身に浴びせかけた姉さんの肌触りが、今度はじかにペニスを覆い尽くし、こすりあげ、ひたすら快楽一色に仕立て上げてくる。全体から股間一点へと、きめ細かな肌触りが攻撃対象を変えたのだ。

 こちらが反撃する前に、姉は体勢を変えてしまう。僕が起き上がるのを阻止しようと上方へのしかかってきたかと思うと、姉さんは太ももの間にペニスを挟み込み、左右交互に滑らせてモモズリを開始した。

「うああ……」
「ホラ、これ効くでしょ。クスクス……」

 くっそ……負けるか……

 僕が抵抗・反撃に転じようとすると、また姉は下方へと体を滑らせ、控えめな乳房表面でペニスをグニグニと滑らせながらこすってくる。ペニスは僕の腹部へと大きく反りながら、裏スジを中心に、乳房のやわらかな圧迫と、こすりつけ攻撃に苦しめられた。ちいさめのオッパイなのに、それでもその膨らみはしっかりと、ペニス全体で感じ取ることができた。

 乳首がコリッと裏スジを撫でていく。かと思うと、あの吸いつく肌触りでスベスベとペニスがこすられ続けている。だめだ……反撃しようとすれば、また太ももに挟み込まれてしまう。なんとか体勢を立て直すんだ。

 僕が体をねじり、姉の攻撃からペニスを守ろうと動いた瞬間、姉さんはガバッと身を起こした。

 し、しまった!

「この瞬間を待ってたんだよ!」

 起き上がろうと手をついた僕の身体の背後に素早く回り、姉はオッパイを僕の背中に密着させた! やわらかな膨らみが背中から腰にかけてじんわりと拡がっていく!

 何もかも、計算ずくだったのか!

 僕はまんまと、姉に”背後を取られて”しまった! このことが意味するものは、たったひとつである。

 姉の両手がペニスに伸びてくる。そして片手が亀頭先端を付け狙うように、集中的に手のひらでこすりあげ、もう片手で根元をしごき、さらに玉袋をくすぐってくる。亀頭先端はずっとひっきりなしに刺激され続け、根元と玉袋は交互にかわいがられる状態だ。

 背後からの手コキ攻撃と、壁際に追いやられての奉仕フェラ体勢。このふたつは、セックスバトルだけが物を言うこの塔の世界では、タブーに近いほど、取ってはならない体勢なんだ。一方的に精力を吸い上げられ、激減させられてしまうマウントだからだ。

 だが、姉の狡猾さは、僕の想像以上だった。

 姉さんは僕の亀頭や尿道口、裏スジのヒダといった、一番感じやすい、気持ちいい場所を的確に知り尽くしていた。これはきっと、僕がオナニーしている現場をそっと見ていたのかも知れない。自分自身でかわいがるときに、どうしても弱点を責めるから。自分で玉袋をカリカリとくすぐっていたことも知っていたのだろう。

 それもそのはず。彼女はわざと肌を露出させ、僕の想像力をかき立てることに腐心していた。だから、僕が姉のどんな部位に弱いか、姉のどんなところに魅力を感じるかも分かっていたし、僕の性的なクセも熟知していたことになる。自分で一番感じるポイントを連日いじっていれば、それを見ていた姉も、的確にその場所を責めてくるに決まっている。

 しかも、自分の手ではなく、あくまでやわらかで細い、姉自身の女手でしごかれ刺激されている。自分からではない刺激は、想像を絶する気持ちよさであることは、これまでの闘いでも十分に思い知らされていた。

 指先で尿道口をこじ開けるようにこすり、さらにその指がつつっと裏スジのヒダの部分をぐにぐに刺激。そしてまた、手のひら全体で亀頭を包んでこねくり回すようにこすり立ててくる。ふにふにした弾力を持つ手のひらの感触が、先っぽばかりに集中している。

 そしてもう片方の手で根元から中間をしごき上げて、性器に挿れているのと同じような快楽に晒してくる。そうしてすぐさま、玉袋攻撃を欠かさず入れてくるのだ。

 手の担当パートは変わらないが、多彩な刺激こすり攻撃が続き、ただでさえ少ない精力が、どんどん消費されてしまっている。なんとか、この状態から脱出しないと、姉さんの手の中で爆発してしまいそうだ!

「へへへっ……これ、スゴイ感じるでしょ。」
「うああ! ダメっ、姉さん、やめ……」

 姉は指先で尿道口から裏スジヒダまでにかけて、コチョコチョと素早くこねくり回してくる。きゅんとくすぐったい心地よさが、ペニス先端から奥へと強く突き抜けていく。焦りも募っていく。

 ピッタリと密着され、後ろから強く抱きしめられている状態で、ひたすら一方的に、憧れの姉のなまの手でペニスをかわいがられ続け、僕は前屈みになりながら、どうすればこの体勢から脱出できるかだけを考えた。

 すると、姉が手を動かすことに必死になりすぎていて、ときおり彼女のお腹が僕の腰元から離れていく瞬間があることに気づいた。これだ。これしかない。

 僕は、彼女が少し離れた隙を突いて、ぐいっと腰を突き出し、上半身を起こした。自分の尻で彼女のお腹を押し返すと、すんなりと膝をついて立ち上がることができる。その勢いで体を回転させ、僕は姉の手コキ攻撃から難を逃れることができた。

「なっ……」

 だが、そこに待っていたものは、姉さんの小さくてやわらかなお尻だった。

 僕が姉の手をほどいて脱出を図った瞬間に、彼女の方も俊敏に僕から離れ、くるりと体勢を反転させていたのだった。ということはつまり……彼女は”僕が立ち上がって自分の方に向き合ってくる”ということを、あらかじめ想定済みだったということだ!

 毛の生えていないツルツルの、しかし確実に多くの男根を果てさせてきた熟練の、20代の若いオンナが、ペニス先端にあてがわれている。僕は体勢を立て直したばかりで、反撃に出る余裕がない。

 彼女が背後から手コキ攻撃をしてきたときに、瞬間瞬間にできていた”隙間”は、じつは彼女がわざと作り出していたものだった。僕がその隙を突いて脱出を図ろうとすることを、はじめから分かっていたんだ。そして、その動きを僕が採った瞬間に、彼女は計算どおり、自分も向きを変えて、後背位で挿入戦に持ち込むつもりだったんだ。何手も先を読まれてしまっている!

 ぐにゅにゅにゅ……

「はぅああ!」
「ほぉら……ねえちゃんの、禁断の部位が、弟のおちんちんに深く入っていくよぉ~?」

 根元までオンナがペニスを包み込んだとき、僕はすんでのところで脈打ちそうになってしまう。

 予想はしていたんだ。

 強化されているというだけではない、弟のペニスを一番感じさせることができる形状と締まり方を、姉のオンナは完備していた。さっきまでのやわらかでしなやかな指使いとほとんど変わらない、ピンポイントでペニス先端の感じるところだけを、無数のヒダがぐっちゅぐちゅにこねくり回していて、さらに射精へと追い込もうと蠢いているッ!

 かてて加えて、やわらかで肉厚な強い圧迫が、ペニス全体に加えられている。その締まりの感触だけで、僕はどんどん精力を消費していった。

 反撃しなければ。反撃。とにかく反撃だ。

 バックでの攻撃は、背後の自由があるかぎりは、こちらの不利にもならない。僕は彼女の腰回りをマッサージするように愛撫し、ときおり力を加えながら女体内部へと圧迫を強めていく。こうすることで、彼女のガードを緩め、自然と挿入時の快楽刺激が女体にダイレクトに伝わるようにしてやる。

 そして、渾身のガマンを力ませながら、僕は腰を前後させてオンナとクリの全てを気持ちよくさせていく。これまでのレベルと高い攻撃力が、強化されているとはいえ素人の姉さんには、少なからぬダメージとなって返っていく。僕にとってもっとも感じる形状のオンナは、また、彼女にとってみれば、もっとも感じるペニスである筈なんだ。

 その予想は当たり、姉は、いくら力ませても自分の身体の奥底まで染み渡ってくる性感のダメージに、驚きのカワイイ声を上げた。ガマンしようとしても無駄さ。僕はこうやって、女体の自然なガードさえも外せるんだ。つまり一番感じるようなマッサージの方法を心得ているんだ。大ピンチであることに変わりはないが、ひょっとすると大逆転の一縷のチャンスがあるかも知れない。

 ……しかしやはり、姉のオンナは容赦なく、強烈な攻撃力を誇っていた。相手の精力をがっつり削り取ることには成功しているものの、その前に、すでにペニスは限界に達してしまっていた。きゅ~んきゅ~んという、あの射精直前の多幸感が、何度も押し寄せてきている。

 僕は踏ん張りきって、その多幸感を抑えつけ、姉への反逆の突きをくり返している。だが、そうすればするほど、次の多幸感の波はさらに強く鋭く押し寄せてくるのだった。

 こ、この体勢のままでは、勝てない!

 僕はうっかり、動きを止めてしまった。ピストンを続ければ、このバックの体位のまま、精液を姉の膣内にぶちまけてしまう可能性が非常に高かった。

 だがそれは、姉にとってみれば、僕の中にはっきりと現れた”隙”でしかなかった。

「私の勝ちだねっ。」

 ぐいい!

 バックからペニスを引き抜いた姉さんは、僕に向き合って、ぶつかるようにしなだれかかってくる。イク直前にさらされ、快楽を堪えることで手一杯の僕は、膝を立てて安定した体勢であるにもかかわらず、姉の強い激突をはねのけることさえできなくなってしまっていた。

 衝撃によって、僕のバランスは崩れ、つい尻餅をついてしまう。こうなってしまっては、完全に姉のペースだ。

 仰向けに倒された僕は、起き上がる余力もない。そこをわざと付け狙って、姉さんは僕の腰にのしかかった。そして、いやらしいガマン汁を吐き出し続けているペニスに、再びしつこくのしかかり、亀頭先端を割れ目の中にいざなっていく……。

 男を射精させれば自分の勝ち。そういう価値観の持ち主だ。どうすれば相手の男性が完全敗北するのか、姉は熟知している。体勢の持って行き方は、まさに狡猾そのものだった。完全に形勢は逆転する。

 騎乗位かと思われたが、姉はあえて全身を上下させず、根元までペニスを飲み込んだまま、僕のお腹の上に乳房をかぶせるようにして、上からぴったり密着してきた。

「くすくす……がんばってごらんよ。ねえちゃんのナカであと何秒耐えられるか、測ってあげるね。」
「ぅぐぁぁ……」

 脈打つ直前の強いくすぐったさがペニスを襲う。姉はあえて動かず、しかし膣内部では小刻みに蠕動するヒダが無数に絡みつき、締まる感触だけでペニスの先端から根元までをまんべんなく気持ちよくしてくれている。

「いーち……にーい……さーん……ほら、もっとがんばりなよ……よーん……」

 姉さんは、わざと胸板を僕の腹部からみぞおちあたりで滑らせながら、腰は上下させない。ここで彼女が激しくペニスをしごけば、もう一秒と持たずに射精してしまうことを分かりきっているんだ。

「ごーぉ……ろーく……なーな……」

 ううぐぐっ……お尻の奥まで、律動の準備が完全に整ってしまった。密着女性上位から逃れることもできず、ただカウントの甘い囁きに脳を痺れさせるほかはなかった。

「はーち……ふふっ……はーち、はーち、はーち♥」
「うわああ! そんなのないよおねえちゃん!!!!」

 びゅる! びくびくん! どばあ! びゅばあああ!!!

 姉の締まりが強すぎて、律動も一筋縄ではいかなかった。締まる膣の圧迫を押しのけるように、ペニスがムリヤリ律動して、それに合わせて大量の体液が、オンナの中に絞り出されていくような感覚だった。

 長く長く続く射精。姉のカウントが10以上かかったとしても、終わる気配を見せないくらいに、ドクンドクンと白濁液はペニスからじかに膣内に吐き出され続けている。それでもついに、脈打ちの激しい動きの方が優るようになると、体内に残っていた全ての生殖細胞が、一粒残らず吐き出されていくようになった。あとは自然の摂理に任せるまま、強すぎる快感と脱力のまま、長い時間の射精が続くばかりだった。

 2分近くかけて、一滴残らず絞り取られた僕は、そのままぐったり気を失ってしまった。

 中高生の時からあこがれていた姉の、魅力しかない肢体の全てに敗北し、あのころ思い描いていた姉に対する想像以上の快楽を味わわされ、僕のバトルはここで終了となってしまった。姉さんに上から抱きしめられながら、僕はこれまでにない天国に包まれていく。想い出に潜む欲望の全てが満たされた瞬間であった。

 暗転から瞬時。

 僕は自分の置かれた状況を、すべて理解する。ここは……姉の妄想世界、彼女は映画のように、ストーリーを頭の中で詳細に組み立てて、これを再現しながら自分を慰め、絶頂していく。

 そして彼女の性癖から、「男を射精させたら自分の勝ち」という価値観でしか構成されないストーリーでもある。その設定や結末なども、お話の世界である以上、あらかじめ僕の脳の中にもインプットされている。肉体改造も進み、永遠に”イク直前の多幸感”から脱出できなくなっている。そんな中で、姉の妄想を間近で見せつけられることになる。こうなってしまった以上、もう僕にはどうすることもできない。

 ふわふわした床。昔の防音壁のように、規則正しく小さな穴の空いた壁。天井にはカメラ兼スピーカーが設置されている。それだけしかない、まったく無機質な部屋だ。余計なモノは「実験」の妨げになるので、極力省いてあるのだろう。

 そこに連れてこられたのは、ひとりの全裸の男性であった。

 彼は見た目からすぐ分かるような、若くない男だった。45,6歳くらいだろうか。それほど太っておらず、髪にもわずかに白髪が交じっただけの、初老というには少し早い年代だった。

「君には感謝しているよ。」
「ムリですって……こんなの……」

 スピーカー越しに会話がやりとりされている。

「独身で性経験がない、なおかつ性欲がほとんどゼロになっている中年男は、そうそう見つかるものではないからな。」
「ですから……これは薬の影響で……」
「そう! 君のように、薬の副作用で性欲がほぼ完全に削られている状態こそ、この”実験”には必要不可欠なサンプルなのだ。さあ……始めようか。」
「待ってください! こんなの仕事じゃないですよ!」
「何を言うか。いいか、この実験が成功すれば、我が社の最大プロジェクトが成功することになる。どの企業も達成できていない、完全無欠のセックスアンドロイドが完成するのだぞ!」
「こ、ここまでするのですかっ!」
「もちろんだ! すでにQ社とF社が同種のアンドロイドを販売し、多額の利益を上げているんだ。そこに追いつくため、追い越すためには、奴らの性能を遙かに上回る快楽装置が必要不可欠なのだ。……時間がない。始めるぞ。」

 ぷしゅっ

 ひとつしかない扉に、ひとりの女性が入ってきた。彼女も全裸だった。女性はターゲットを見つけると、にっこり微笑み、すぐにその表情は好色不敵な妖しい笑顔に変わっていく。この女性……いや、こいつは人間ではない。人間と瓜二つに製造された、完全なマシーン、ロボット、アンドロイドなのだ。もはやそれらの区別もつかないほどに、高い完成度を誇っている。

 1~2メートルの幅しかない、狭い部屋で、周囲には何もない。そこに裸の男女が二人きりにされ、たえずモニターされている。

 僕はこの女性型ロボットの姿を見ただけで、激しく精液を吐き出してしまう。だが、この映画の登場人物たちには、僕の姿は見えない。

「くすくす……ね、えっちしませんか? いますぐここで……ねぇ……」
「……。すみません。やっぱりダメです。」

 若い娘……作り物と分かっているけれども、もはや人間の女性とまったく変わらない構成になっている。いやそれどころか、どんな若娘の肌や器官よりも、女性的に優れて完璧に製造された肉のロボットだ。

 人造ではあるが、やわらかくきめの細かい肌触りは完全に再現されており、その強化されたみずみずしい滑らかさは、本物を凌駕してしまっている。そしてその”彼女”が欲情して、自分に迫ってくるのだ。本来なら、すぐにでもペニスが反応してしまうだろう。たとえ40代の男性であってもだ。

 年代的にいえば、自分の娘と変わらない、とされてもまったく不思議ではない。この男性は未婚だったが、このくらいの娘さんがいてもおかしくはない。つまり、擬似的に父娘の間でのセックスを”実験”させられていることになる。

 しかしながら、間近に迫る若い裸体を見ても、彼のペニスはまるで反応しなかった。精神系の薬物は、これほどまでに性欲をがっつり削り取ってしまう副作用がある。性欲不全なのだ。

「だからこそ君を選んだのだ。相手が作り物と分かりきっていて、さらに性欲ゼロの状態。監視までされている羞恥心。いいかね。こういう”悪条件”であっても、確実に射精に持ち込める実験なんだよ。我が社の技術、QにもFにも具わっていない、最新の技術の粋をたっぷり味わってくれ。」

 女性型ロボットは男性のそばまで来て、じっと彼を見上げ、見つめている。男性が欲情して、彼女に抱きつき、キスをすれば成功だ。だが、どうしても彼にはそういう気分が起こらない。いつもガッカリしたような心境のままだからだ。

 ありとあらゆるものが期待外れに終わり、すべてにおいて八方塞がりになってしまった上、長期化し、さらに加齢が災いすれば、誰であれ、このような状況に陥る。脳がガッカリしか感じられなくなり、”後頭部が乾き切る”ような感覚に襲われる。それに対抗する薬物は、じわじわとしか効果が出ず、その前に性欲は完全に枯れてしまうのだ。

 彼は、このプロジェクトの大まかな内容を聞かされてはいた。しかし、自分が実験台になることまでは把握しておらず、とつぜんこの部屋に、服を取られた状態で入れられたのだった。だから、この相手が作り物であることも分かっている。そして、そのぬくもりややわらかで心地よい肌触りのことも、理論上では確かめていた。書類には、30歳バージョン、22歳バージョン、17歳バージョン、14歳バージョン、12歳バージョンの5種類のセックスアンドロイドが開発されていると書かれてあった。

 この男性の前に立っているのは、肉体的に大人になった、22歳女子大生バージョンだ。

 それでも、薬の副作用、抑うつ感情、監視されているという事実、そして、しょせんはニセモノという感情が先に立ち、彼は、間近で完熟した乳房を見ても、そこから性衝動へと発展させることがなかった。

 この企業は、他社と同様に、男性の性的欲求を満たすためだけの女性型ロボットを開発していたのだ。その最終検証段階というわけである。

 肌のきめの細かさ、年齢など体型の差別化、人肌とまったく変わらないぬくもり装置、そして精を絞るための最大限の快感を生み出す膣能力を、このロボットも具えている。ただし、それだけのことなら、同業他社とほぼ変わらず、差別化は図れない。他の会社のロボットも、同じくらいの機能は十分開発されていた。

 初めはゴムのようなシリコンの塊だったセックス人形も、人工知能搭載のロボット化し、自分から動いて誘惑し、男性を積極的に欲情させ、射精に持ち込んで満足させるほどに、技術は進歩し続けていた。それらはすぐに商品化され、本物の女性に相手にされなかった多くの男たちの救済ビジネスになった。批判もあったが、結局需要は高まる一方で、どの企業も開発にしのぎを削っている段階だった。

「やっぱり無理です。実験の中止を要請します。」
「分かってないね。ここまでなら、QFともに完成させてしまっているんだよ。商品化もできている。だが、うちのはその技術を遙かに上回るのだ。そう、君のように性欲がまったくない状態に置かれた男でさえ、この最新型になら必ず手を出す。かならず、だ!」

 実験は中止されない。

 だが女性型ロボットは、あえてムリヤリ男性に抱きついてきたり、その滑らかな肌を押しつけこすりつけたりせず、彼の前でじっと待っていた。設定次第では積極的になることもできるが、実験段階では、わざとそうしないようにプログラムされている。

 それは、あくまで男性の方から、このロボットに性欲をかき立て、彼の側から積極的に「抱きたい」と思わせるようでなければ、実験の成功とは呼べないからである。

 ……こんなところにも、姉さんの性癖がしっかり現れている。

 だが男性は、ふっと目を逸らし、ときおり本能に近い情念でちらっと女性ロボを見るが、それでも結局、欲動に結びつかない。彼の経験、それにまつわる思考の沈痛が、すべての扉を、みずから妨げているんだ。開けば済む扉さえ、鍵がかかっていると思い込み、固く閉ざされていると信じ切ってしまっている。いつ誰に何をどうしたところで、いかなる快楽も喜びもこの世界には……少なくとも自分にはあり得ないのだ。頭を乾かせるこの思考が、いつも強迫的にこびりついて離れない。

「くすくすっ……そろそろ、かな~?」
「!?」

 なんとも言えぬ甘い香り。それはこの女性ロボの毛穴から噴き出し続ける、微細な蒸気だった。また、壁に空いた穴からも、同じ蒸気が噴出している。人工物なので毛は生えていないけれども、顕微鏡で見ればはっきりと、極小の穴が肌細胞部分に開けられているのだ。そこから、催淫効果のある芳香をたえず発散し続けているのである。

「うあ……これはっ……」

 男性が辺りをキョロキョロと見回し始め、明らかな狼狽の色が見え始める。

 僕には……彼に何が見えているのかをはっきり感じ取ることができている。それを凝視しながら、僕のペニスは激しく脈打ち続ける。誰にも触れられていないペニスは、イク直前の快楽にひっきりなしに包まれてしまっているので、四六時中休むことなく絶頂し続けてしまっていた。

 スピーカーからはもう、何も音声は届いてこない。もう、上司の余分な言葉さえ必要はなかった。彼自身、自分の身に何が起こっているのかを、身をもって体感しているからである。

”他社にはない性欲増進システム”

 これが、この会社が売りにしようとしている悪魔の装置の内容だ。

 仕組みは単純かも知れないが、それを現実にロボットに搭載させることは、他のどの会社もやっていないことだった。ひょっとしたら、技術的には他社も”開発中”なのかも分からないが、この企業がそれを先んじて行っている、と見ることもできる。

 狭い部屋に充満していく催淫ガス。男性はそれを吸い続け、またその全身に粒子を浴びることで、全身の皮膚や眼球、耳の穴からも、どんどん催淫物質が取り込まれていく。血中濃度が高まって全身に行き渡ると、薬で削られていた性欲減退の副作用も、徐々に影を潜めていく。

 そしてついに、副作用による性欲減退の状態は解除された。厳密にはもちろん、解除ではないのだが、ムリヤリ減退状態が元に戻された、というほうが理にかなっている。催淫物質はあくまで、補助的な役割に過ぎないものだった。年齢や病気などで低減された性欲を、もともと備わっていた、男性としてのあるがままの溌剌とした状態に戻しただけのことである。

 それはたとえば、朝に起きたときに自然と勃起現象が起こるのと同じメカニズムである。それがそのまま性的衝動に結びつくのではなく、たいていは単純作業をこなすうちに消え去っていくものである。

 しかしながら朝立ちは、年齢とともに衰えを見せ、さらに抑うつならなおさら、まったく生じなくなってしまう。それを、この薬剤は以前の姿に戻していくよう作用する。それは一時的なものであり、効果はごく短期間に留まる。強く長く効く薬物は危険すぎるのだ。

 それでも、この40代の男性の性欲を、とりあえずは年齢どおりの状態に戻すことにだけ成功した。これは、彼の減退状態が著しいために、催淫ガスの効果をもってしても、”若者と同じ”だけの性欲ビンビンに戻すには及ばなかったということである。マイナス面が大きすぎて、効果は相殺されてしまった。けれどもそれで十分でもあった。

 実験に使われるべく選ばれたこの男性は、その相殺も込みで、格好の材料なのだ。催淫ガスは、商用利用として完全実装するには問題が大きい。密閉された部屋でなければならず、上手に口、肺、目、肌などから吸収される必要もある。このガスだけで”他社にはない性欲増進システム”を実装させるのには無理があった。開発側もそんなことは百も承知だ。

「んあっ! な、なにっ……」

 男性はさらに驚き慌てふためく。ぼんやり見え始めていたものが、はっきり見えてきたのだ。だが、彼は身動きを取ることができなくなっていた。

 彼は突っ立ったまま、手も脚も動かさない。しかし表情だけはめまぐるしく変わり、外部から照射され観測されたモニターから、心拍数の急激な上昇を確認できる。彼の身に何が起こったのかを、僕は分かっていた。その結果、僕自身もまた、さらなる天国を感じ、射精の脈打ち速度を急激に跳ね上がらせていく。

 特殊な電波が、この人造女性から発せられていたのだ。

 それはこの男性の脳波に著しく干渉する効果があった。これこそが、”他社にはない性欲増進システム”の本当の正体、売りとする根幹部分なのである。

 傍目から見れば、彼はただ立ったまま、何も動いていない。しかし、彼自身の主観は、まったく違ったものになっている。

 彼は、狭い部屋空間にいながら、その穴だらけの白い壁を見ることができない。その穴から噴霧される催淫ガスのことも、目の前に置かれたロボットのことも、ほとんど認識できなくなっていた。

 彼の目に映るのは、深い闇であった。上もなく下もなく、彼の足下の床もない。男性が驚き慌てふためいたのは、いきなり床が抜けて、宇宙空間のような無重力の中に身を置かれたと錯覚したからである。床が抜けて深い闇の中に立っているのに、落ちて行くことがなく、ぐらぐらと揺れるように浮かんでいるように感じているのだ。

 立ち位置がまったくつかめない。掴まるところもなく、無重力の中でフワフワと浮かんでいるばかりである。それを彼自身がどうすることもできない。

 そして……

 暗闇の中に浮かび上がってくるのは、無数の女体の群であった。すべて衣服を身につけていない若娘の身体だ。暗闇には奥行きが示され、遠近法によって、女体の大小がはっきりわかる。それによって彼は、何百メートルも先に、何千人とも数えきれぬほどの娘たちの裸を見いだす。

 全身が映し出されている場合もあれば、おっぱいだけ、生足だけ、性器だけ、お尻だけというふうに、一部の性的なパーツのみが現れる場合もあった。それらが押し寄せるように、彼の周囲に纏わり付いている。そして、その背後には、大勢の女子たちの姿や性的パーツがずっと先まで拡がり、彼の欲情を待ち構えているのだった。

 前後左右上下、どこを見回しても、若々しくハリのある裸の娘たちしか目に飛び込んでこない。暗闇の無重力にしたのは、彼女たちの姿ばかりを目に焼き付けさせるためである。

 電波幻覚攻撃は、視覚だけに留まるものではなかった。触覚もまた、一部を除いて完全に再現できるものだった。

 つまり、彼が手を伸ばせばすぐに、女子たちの乳房や生足、お腹や首筋、柔らかな髪に触れることができるということである。そして、彼女たちの方からも、その男性に好きなだけ触り、身体を押しつけこすりつけることができるということでもあった。

 すぐさま、男性の前後に娘たちの若い肌が強く貼り付いてくる! 幻影でありながら、完全にそのみずみずしい肌触りを、彼に感じさせることができるのだった。そして、それを見ている僕自身にも、同じ肌の感触がムニッと吸いついてくる。その感触だけで、僕の絶頂はさらに早まってしまうのだった。

 幻影として彼の脳に送り込まれている女性たちは、作り物でありながら、”実在する人物”でもあった。会社側が全国の大学を数年にわたって極秘調査し、スタイルの良い美人どころ、こじんまりとして可愛らしい娘たち、そういう選りすぐりのモテる女子大生のデータばかりを集め、合成した幻覚である。つまり、この男性に纏わり付き、惜しげもなく性的なパーツを露出させている娘たちは、現実にいる(いた)女子大生の姿そのものであり、彼女たちの感触そのままなのである。

 前後から挟み込まれ、抱きしめられる男性。彼の両手は他の女子大生たちに掴まれ、右手は数人の乳房に抱き寄せられているし、手のひらは女子大生のおっぱいをしっかり揉まされている。彼の左手は複数の生足に挟まれ、その手のひらは敏感な女性器表面を滑らかに触らされている。

 彼の両脚には、何本もの太ももが纏わり付き、スリスリとこすれている。幻影なので重なることができ、現実には無理な体勢、彼の両脚の全てに女子大生の生足が隙間なくあてがわれてこすれていく感触を再現できた。そして同時に、彼の脚に跨がり、ツルツルのオンナ表面を悩ましくこすりつけ、腰をくねらせて興奮する女子大生もいた。それらは全て同時に行われた。

 全身への波状攻撃はさらに積もり重なっていく。前後に長身女子大生が彼をサンドイッチしているにもかかわらず、その脇の下はくすぐられ舐められ、両乳首も同様に指と舌で弄ばれている。彼のお腹にも、何人分もの乳房がグニグニと貼り付き、そのやわらかに跳ね返す弾力を押しつけている。彼の背中にも、大勢の若娘のお尻がぽよぽよんと跳ね返り続けていた。

「うあああ……」

 これだけのことをされ、なおかつ薬によって性欲減退が封じられてしまっていては、勃起しない者はいない。40代であろうが関係ないし、抑うつであっても興奮してしまうだろう。彼もまた、はち切れんばかりにペニスを隆起させ続けていた。

 しかし、僕がその感触に酔いしれて射精し続けているのとは対照的に、実験台の男性には射精が訪れない。

 それも計算ずくの幻覚攻撃なのだ。

 視覚も触覚も本物とまったく同じように再現されていながら、そしてその肌の滑りは当然、ペニスにも容赦なく襲いかかっていながら、その幻覚は、ペニスへの刺激をいっさい感じさせないように作られていた。

 太ももが滑ろうとも、おっぱいが押しつけられようと、お腹の肉が当たろうと、”ペニスは何も感じない”のである! 股間部分だけが、その天国の感触から抜けてしまっている。実際、彼のペニスをしごこうとする幻影もいなければ、口に含む者もいない。ただ幻影同士重なりながら、ペニス部分にも自然と当たりこすれている”はず”の動きでしかなかった。

 これだけの天国にさらされていながら、ペニスへの性的刺激はいっさいないのである。玉袋にもアナルにさえも刺激がない。そこだけは誰も指一本触れていないのと同じ状況になっていた。それも会社側の計算どおりなのである。

 彼は腰を前後にくねらせ、纏わり付く女子大生たちの幻影で性欲を満たそうとし始める。もはや理性的な思考は途切れ、ただ目先の、射精への欲求だけに支配された状態になる。包茎ペニスの先には、次々と性欲の証、ガマン汁がしたたり落ちていた。

(カウパー反応が規定量を超えた。よって行動を開始する。)

 それはこのアンドロイドが発した”思考”である。口に出してはいない。が、監視モニターには現れている。幻覚を見せ、相手が完全に性欲のトリコになるのを確認してから、いよいよ抜きにかかる。彼女はそのようにして作られた人工物なのである。そのAI思考は、ただ男性の精を抜き取ることだけに限定してプログラムされていた。

 彼女の心の声は、僕にもはっきり聞こえた。姉の映画世界なので、その先の展開も分かっている。

 男性の前に、AIロボが姿を現した。幻覚に苛まれたために、彼は位置を見失い、狭い実験室に入れられていることさえ忘れてしまうほどだった。そこへ現れたロボットを、彼は最高に魅力ある女子大生としか思えなかった。

 はじめのうちは、人間女性と瓜二つに作られているこの人造物を、この男性はやはり「ツクリモノ」としか考えることができなかった。だから、初めからこのメカを抱く気にはなれないでいた。しかしいまや、彼はこの対象を人工のモノと認識することができず、本物の女子大生としか感じなくなっていた。そして、彼女だけが、自分の股間の欲望を満たしてくれることも、彼は瞬時にして理解した。

「うゎああっ!」

 もはや男性の勢いは衰えなかった。彼は実際には実験室の中にいるので、足を進めようとすれば簡単に動かすことができる。実験室の中で彼は歩き出し、このロボにしっかりと抱きついた。”彼女”はすぐさま後ろにゆっくり倒れ、彼ののしかかるに身を任せている。

(挿入意思を確認。生殖器部分を解放する。)
これも彼女の思考だ。

 ロボットのオンナ部分が大きく開く。10センチ以上の大きな穴がロボットの股部分に拡がる。軽い空気の吸引だけで、ペニスはその場所に自動的に吸い込まれていく。

 根元部分までしっかり吸い込んだことを確認したロボットは、穴を急激に塞いだ。するとペニスは、一気に強いオンナの締まりにさらされていく。

「はうああ……気持ちいいっ!!」
「ねえ……もっといい気持ちになってくださいね? ナカにそのまま出して構いませんから……」

 ロボットは囁くように男性に語りかける。それもプログラムのうちだ。すっかり興奮した男性は、正常位で大きく腰を振り始めた。彼はすでに、自制が利かなくなっている。

 ロボットのオンナは、まさに女子大生の膣を模して完璧に作られたものであり、若い締まりも、ペニス先端の敏感な部分をしっかり探り当てて刺激する能力も、ぬりゅぬりゅと滑って行く潤滑効果も抜群だった。その全身の肌触りも、本物の女子と同じ感触が完璧に再現されている。男性は、自分の娘くらいのアンドロイドに対して、必死で腰を振り続けた。ただ自分の快楽のために、我を忘れて。

 散々、催淫ガスと幻覚攻撃で興奮させられた男性は、極上の締まりとしごきを持つ女子大生のオンナにまったく抗えない。ほんの十数秒で、彼は完全に高められてしまった。

「うぐ!」

 びゅっ……びゅっ……

 数秒間の天国。

 腰を振っている間にむき出しになってしまった亀頭先端から、やや老いた生殖細胞が吐き出されていく。しかしもちろん、その精子は確実に、相手の女性を妊娠させる十分な能力を持っていた。にもかかわらず、精を吐き出させるに至った膣は、あくまで造られたものであり、言うまでもなく着床は決して起こらない。ただ、ロボットの内部に設置された体液格納タンクに吸い上げられていくばかりである。

 彼にとっては数秒間の射精であるが、僕はその間じゅうも、一秒も休まずペニスを脈打たせ続けていた。

「あふ……」

 通常、この年代の男性なら、一時的に興奮したとしても、一回出してしまえば、もう精根尽き果てる。一回の射精で、お尻の奥がツンと痛み、それ以上の興奮は出てこない。若い時分のように、連続射精もできなければ、一日に数回などと精を吐くこともできなくなる。

 ちゅうっ

「むぐっ!?」

 射精の律動が終わった途端に、男性はロボットにキスされた。その唾液には、大量の催淫成分が含まれている。また、挿入時にも、潤滑剤に含まれた催淫剤が、ペニスから体の芯まで染み渡っていく。催淫ガスは会社側が用意した補助的な役割であり、その薬効の本領は、まさにロボットとの行為の最中にこそ発揮されるものであった。

 強い薬効を持った唾液が彼の口から摂取され、股間からも吸収されている。若者なら、ペニスを萎えさせることも叶わなかっただろう。

 しゅるっ!

「な、なんだ……っ!? 腰が……」

 細い管のようなものが、彼の腰とお尻の下に巻きついた! これはロボットの体側面から飛び出した、やわらかいワイヤーだった。ほんのわずかに伸縮はするけれども、決して切断もできなければ引っ張りきることもできない素材でできていた。

 これが2本、彼の腰上下部分に巻きついたことにより、彼は正常位の体勢のまま、挿入を解くことができなくなった。彼の腰はロボットにぴったり密着し、ピストンのために上下するくらいはできたが、それ以上に腰を引いて挿入から脱出、つまりペニスを引き抜くことができなくなったのだ。同時にロボットは彼の背中に抱きついて、正常位の体勢のまま、ぎゅっと下へと抱き込んでくる。上半身の密着からも逃れることができなくなっていた。

 彼はもがいて、挿入から脱出しようと試みたが、上にも下にも、右にも左にも、どうしても抜け出せない。やわらかな体温あるボディは、人間女性とまったく同じだが、彼女は相手の重さを感じ取れない。男性をすっかり自分の真上に乗せ、全体重をかけさせてもケロリとしている。

 彼女の”触手”は2本だけではなかった。さらに別の部分から、細い管が伸びる。それはワイヤーよりもかなり細いので、短時間でスムーズに、男性のアヌスの奥まで入り込んでいった。その管からも、容赦なく催淫液が送り込まれる。そして、その触手先端は、彼の前立腺周辺でヴヴヴヴとバイブ振動し、股間の奥の気持ちいい部分を容赦なく刺激し続けた。

「あひい! 出ないって! もう……うぁあ!!」

 悶絶する中年男性。だが、ペニスを萎えさせないための工夫は、まだまだいくつも具わっていた。

 ロボ大生のオンナが電動し始める。膣全体がバイブし、ペニスを根元から先端まで、さまざまな振動に晒していく。周波数を変幻自在に変えて、いちいち新鮮な刺激を送り込んでくる。

 さらにオンナ全体が激しく蠕動し、強く締めながらも、もにゅもにゅと男性のペニスを揉みしだいていく。その速度もさまざまに変化し、揉むスピードを変えることで、やはり新鮮な快楽をペニスに与えることができた。そしてオンナ部分が内部で自動前後し、男性側が腰を振らなくても、ピストンしているのと同じ動きを取ることができた。

 そして極めつけは、裏スジの敏感な部分に密着する膣ヒダが先鋭化し、やわらかなブラシのように作用し始めたのだ! ビュイイインと内部で回転しながら、密集したブラシ突起が、ペニス先端の一番感じるポイントを、次々と無理にでもこすりあげていく!

「ひいい! あひい! んああ!」

 前立腺とペニスのダブル攻撃で、萎えかけたペニスは、さらに勢いを取り戻した。そして、強制的にかき立てられた性欲を、ロボットならではの膣攻撃で、遠慮なく精液として絞り上げようとしてくる。勝手に前後してペニスをしごきながら、ヒダのブラシは亀頭を狙い撃ちし続けた。

 ビクン! ぴゅ……ビクビクン!!

 激しい脈打ち。しかし、精液そのものは出し切ってしまったようで、ほとんど出てこない。ただ律動ばかりするのみだった。それでも、人間離れしたオンナの快感攻撃には太刀打ちできず、男性は激しく絶頂させられてしまった。

 もちろん、それとまったく同じ快感刺激を、僕自身も受けている。だから、僕は彼以上にずっと激しく、白濁液を放出し続けていた。快感で頭がいっぱいになる。

 男性の方は、さすがに疲れ切っていた。お尻の奥が疲弊し、痛みが激しくなる。しかし、催淫剤に鎮痛効果が加わっているので、彼は悶絶するほどの苦しみを味わわずに済んだ。

 そのことは逆に、彼を徹底的に追い詰める結果となった。

 どうしても年齢的な限界があって、膣が蠢こうとも電動しようとも、ペニスはすっかり萎えきってしまう。薬効はやはり強すぎてはいけないのだ。

 しかしロボットは……というより会社の実験サイドは、決して諦めはしない。

 ペニスが膣内で萎えたことを感知したロボは、再び彼に幻影電波を送る。あの美しく、また可愛い女子大生たちの群を登場させる。彼女たちは男性の全身にはりつき、おっぱいや生足を滑らせ、全身のあちこちをくすぐり撫でさすり、そしてどこもかしこもを舐め回す。今度は、お尻の穴を舐める感触まで伝わるようになっていた。玉袋も数人の手に揉まれながら、何本もの指先でくすぐられ続けている。

 脇の下も、足の裏も、足指も、容赦なく女子大生たちの手や舌の餌食になった。彼のくすぐったいところ、感じるところは、ペニス以外のすべて、余すところなく快感一色にさらしあげた。視覚攻撃にも余念がなく、彼は目の前に、大小さまざまな若い乳房、毛穴が見えるほど近い太ももや内股、そして毛を処理しきったオンナが目の前に押し拡げられる。見せられ、触られ、また触らされながら、彼女たちは男性を、よってたかって勃起させようと躍起になった。

 執拗に視覚と触覚に訴えかけられ、男性は、やっとペニスを少しばかり隆起させた。ロボの膣内でペニスが膨らむ。だが、その半立ちのペニスでも容赦なく、人工膣はペニスを責めまくった。男性は、全身を女子大生たちに包まれかわいがられながら、アヌスも玉袋もペニスも快感攻撃にさらされ、さらに精を奪おうとする刺激を強められてしまう。

 男性は正常位の体勢のまま身動きが取れず、しかし幻覚として女子たちの身体を触り、生足をスリスリとこすりあっている。若い娘たち、しかし女性としては十分に成熟した大学生くらいの年代の女子たちに包み込まれ、おとなの感触にほだされて、そこへ人工膣の容赦ない攻撃が加わっているのだ。

 疲れ切った男性であっても、だんだん高められていく。一時間以上かかって、やっとペニスは激しい脈打ち反応を示した。しかしもはや、体液はまったく出なくなっていた。

 これが……会社側の恐怖の実験内容である。若くなくなった男を、しかもセックスへの欲求がゴッソリ削られた状態であっても、それでも何度もイかせることができるくらいに、セックスアンドロイドの精度を上げれば、そのロボは高値で販売・量産も可能となる。他社には決してできないことだった。

 僕は女子大生たちのおとなの感触をフルに味わいながら、同時にロボ膣の人間離れした快楽装置に犯され続けた。男性が味わっている感触は、ソックリ僕にも伝わっているんだ。だから僕は、肉体改造された状態でこの天国を味わい続けているので、もはやなにも思考できないほどに精を奪われ続けているのだった。

 実験台になった男性は、何度も長時間にわたって、この異性ロボに悩まされた挙句、無理にでも射精させられている。気を失うほどの苦痛に苛まれたとき、彼は実験から解放される。過ぎた快感は苦しみと激痛に変わる。これが自然の摂理だ。それをいかに打ち破れるかが、会社サイドの狙いでもあった。摂理を超える快楽を生み出せるほどに、会社の利益は跳ね上がるんだ。

 そういう”設定”は、やはり姉さんらしい残虐なる勝利宣言であった。姉さんはそこまで男を射精させ尽くすことに、至高の満足を見いだすのだ。僕はそれに付き合わされる形で、しかし決して苦痛に陥ることなく、永遠に”実験”をくり返させられることになる。

 ロボのオンナの感触が、姉のそれとほとんど同じ(ただしロボならではの付加機能あり)と気づいたころには、僕は完全に理性を失ってしまっていた。

 開発中のロボにはさまざまな年代層が用意されている。実験台になる男性は全て中年の抑うつだが、やり方は同じ。ただ、中学ロボなら14歳くらいの少女たちの幻影を見せられ感じさせられ、おとなロボなら、やはりおとなの女性の幻影を見せられ感じさせられる。僕への実験は、永久に終わることがない。

 何人もの40代男が実験に参加させられていく。同じシチュながら、決して飽きることなく、僕は一緒に精を吐き出し続けるばかりなのであった。



###ゲームオーバー###




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