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ダンサー1-9


 「…。」

 僕はダンサーと距離を取った。ハワイアンのなまめかしい腰使いから目を逸らし、ダンサーの体全体を遠くから眺めるようにして、その肢体の魅力にほだされないよう注意しながら、体を止めてじっと待つ。

 「どしたの? 踊らないの?」ダンサーが近づいてくるが、さらに後ずさって、僕は直立不動のまま、ダンスの音楽をただ聴くばかりとなった。

 もちろん、こうやって逃げ続けていれば、彼女の方もしびれを切らして、一気に僕を押し倒してくるだろう。そうなる前に、相手の隙を見つけて、仰向けに寝かせることができなければ、こっちに勝機はない。…こっちから仕掛けるしかないな。

 「あっ! あんなところに十無手作りのチキンゴロゴロ特製ふわとろチーズオムライスが!」「そんなもん食えるかー!!!!」ひ、ひどい…

 今だ! 隙あり!

 僕は彼女の膝に足をかけて折り曲げ、バランスを崩させると、一気に仰向けに押し倒した。このまま上に乗ってしまえば正常位に持ち込まれるから、僕はくるりと体勢を素早く変え、シックスナインの向きになって彼女の上に乗っかった。これでマウントポジションは完璧だ。

 ダンサーの足を開いてオンナをあらわにする。クリトリスをむき出しにするように押し開いて舌先でねぶり立て、同時に両手指先でオンナ表面と内部を徹底的にかわいがり始めた。

 未発達ながら締まりは強く直情的で、大の大人でも持ちこたえられないほど強化されているのは間違いなさそうだ。そんなのに入れてしまっては、僕の精力だって持ちこたえられる自信はない。それでも、快感の構造はそれほど大きくは変わらないみたいだ。

 僕は特に感じやすいところを探り当てると、表面や周囲を魔の指先でくすぐり撫でさすってかわいがりながら、右手左手の指を何本もオンナにねじ込み、内部の敏感なところばかりを執拗に責め立てた。

 周辺を優しくくすぐるサワサワとした補助愛撫と、内部で暴れ回る変幻自在な指の直接攻撃で、ダンサーの股間に大ダメージを与えてやる。「ひゃあああ!」ダンサーはもくろみ通り大いに感じ、大量の愛液を噴き出させた。これなら短期決戦も可能だろう。

 ダンサーはあくまで、ハワイアンのゆったりした音楽のリズムに忠実だ。シックスナインの体勢にあるということは、弱体化した股間が彼女の目の前に差し出されているということ。

 ダンサーは顔を持ち上げ、僕のお尻に手を回すと、ぐっと下に押しながら小さなペニスを口に含んできた。

 「むうっ…」かわいらしい声を立てながら、いやらしい舌のねっとりとした動きがペニスをとろけさせていく…

 あくまで表面の動きはしっとりと緩やかだ。ぷにっとした唇で、先端から根元までを優しくゆっくりしごきながら、しかし貪欲に僕の股間に顔をねじ込んで、ペニスを喉奥深くまで飲み込んでは、また先端まで唇を戻す動作を、何秒もかけて繰り返すのだ。

 手に力を入れると、さすがにダンスで鍛えているだけあって、どうしても僕のお尻は彼女の口元へと引き寄せられてしまう。彼女が僕のお尻を押す力はそれほどに強かった。

 そうやって、自分から頭部を持ち上げながら、なおかつ僕のお尻を下に押しながら、ゆったりと唇が棒をしごいていく。あくまで優しくじっくりと…しかし吸引と窄める力はかなり強烈だ。

 「うっふ…」股間に繰り広げられる女の子の口の暴力に、僕は悩ましいため息をついた。こっちが熟練のテクニックでオンナを集中攻撃しているのと同様に、彼女もまた、強化された口と叩き込まれた舌のテクニックで、ペニスばかりを集中して攻撃してくる。どっちの技術が上か、どっちの耐久力が上か、その総合力で、勝敗は決まる。

 それなら、やはり僕の方に分があるに決まっている。相手は強化されたといっても、テクニックを教わったといっても、それを実戦で用いながら身につけ強めたわけではない。こっちは誰に教わるでもなかったが、現場の実戦だけを通してレベルを上げ、百戦錬磨の域に達しているんだ。

 もちろん、その差を埋めるほどの、ペニスの弱体化はあるし、相手の口の質もフェラに強くなるように強化されている。こっちはコドモの時の、女体に耐性がなく、性感にあまりに敏感な、皮をかむった小指サイズの貧弱ペニスだ。それに対し、相手の唇はぷるんと膨らみ、その柔らかい感触と小さな赤い舌は、すでに大人の女性のそれをもしのぐほどに質感を増しているんだ。

 だから、テクニックの差でこっちが余裕で勝てる、というほどの開きがあるわけではない。気を抜けばこっちが口腔内で精液を爆発させてしまうことになる。

 しかしそれでも、どちらかというと、こっちのテクニックで相手に与えるダメージの方が、向こうのフェラチオ攻撃をしのいでいると言えそうだ。このまま続ければ、たぶん僕が勝てるだろう。

 舌と唇でクリトリスをこれでもかとしゃぶりつくし、吸いまくる。素早い動きでじゅるじゅると翻弄すれば、敏感な部分がピンポイントでかわいがられて、ダンサーのオンナは大量の液体を噴水のようにあふれさせて悦んでくれる。そこへ、両手指先のばらばらな動きで、くすぐりながら敏感な部分だけをしっかりとこねくり回し続けるんだ。

 股間のすべての性感帯が同時に極上のテクニックで責め立てられ、ダンサーは我を忘れて腰をくねらせている。しかし、そんなことで攻撃の手を緩めるほど、僕は優しくはない。ガンガンスピードを上げて感じさせまくってやる。

 「!」ペニス先端に強烈なくすぐったさが襲いかかった!

 いきなりダンサーの舌が暴れ出し、包皮にくるまれていた亀頭に直接刺激を加えてきたんだ。皮の中に舌をねじ込み、回転させるように舐めながら、皮を無理矢理に押し広げていき、その内部に隠された敏感すぎる亀頭が、ダイレクトに女の子の舌にゴリゴリ舐め尽くされてしまっている!

 ダンサーの舌は音楽のリズムを完全に無視して、ものすごい勢いで暴れ回り、亀頭先端ばかりを集中攻撃してくる! 皮の中にねじ込まれたまま、亀頭全体を柔らかい舌が強く押しつけられてグリングリン這い回っている!

 それでいて、口と手の動きはあくまで、ゆったりとなめらかなまま、数秒かけて出し入れされている。そのギャップが、亀頭と肉棒に感じる性感のダブルパンチを引き起こし、ペニスに大ダメージを与えているんだ。

 お互いの口と舌が、相手の性器を責めまくる。テクニックはこっちが上だが、もはや彼女の口の中で気持ちよくもがいているペニスは、精力も激減し、いつ子種を吐き出してもおかしくない情勢にまで追い詰められてしまった。

 だが、追い詰められているのは彼女も同じだった。僕はさらに舌と手の動きを早め、右手を素早くクチョクチョ出し入れして激しく腕を動かし、絶頂させるべくとどめの攻撃に入っている。

 敵も同じ気持ちだろう。舌先は暴れながら、根元までペニスを飲み込んだタイミングでは、先端を喉奥深くまで飲み込み、強く強く吸引しながら、先端を喉で締め上げる。そしてゆっくりと先端へと唇を移動させたタイミングで、外からは見えないが、皮をこじ開ける暴舌が亀頭にこれでもかと攻撃を加える。

 もはや制御が利かない。僕はダンサーに無理矢理お尻を押されなくても、勝手に腰が動いてしまう。ゆったりとした音楽に合わせながら、静かに腰を落として彼女の口の中にペニスをねじ込んでは、ゆっくり腰を持ち上げて離れていく。イラマチオ攻撃で敵にダメージを与えることにもつながったが、それ以上に彼女の唇と舌と吸引が、ペニスをとことん快楽に苦しめ続けるのだった。

 柔らかい内頬が先端にぐりぐりこすれ、ついに僕は脈打ち直前の多幸感を味わう羽目になった。くっ…このまま…負けてなるものか! 僕は愛液をすすりながら、一心不乱に指と舌でオンナをかわいがり続けた。

 こしょこしょこしょ…

 「むううっ!!」いきなりお尻がくすぐられる。いたずらな少女の手は、僕のお尻、アナル、そして玉袋を、両手で手早くくすぐってきたのだ! 快感が倍増し、僕はまた脈打ちそうになってしまった。絶体絶命だ。

 細い指がお尻の穴にねじ込まれ、前立腺に達すると、一気に内部からかき回してきた! 暴れる舌先がさらに強く亀頭ばかりをねぶり倒す! あああっ…もう…限界だっ!

 ごぼお!

 精液が勢いよく彼女の口の中で爆発する! その直後、ダンサーも全身を震わせて絶頂を迎えた。あと一歩のところで、僕の方が先に射精してしまった。僅差で敗北を喫してしまったのだ。

 「ああっ…」強烈な快楽の前に何もかもを捨て去った射精だった。出し尽くすまで何も考えられず、イキ終わってから、今更のように「しまった」という思いが頭をもたげる。だが、何もかも、もう遅かった。

 あと少しで勝てたのに…残り少なくなっていたままの精力で挑んだ相手は、あまりにも強大だったのだ。

 その「惜しかった」という気持ちが、ずんと僕の心に重くのしかかる。そのタイミングで、大勢の若い娘たちがどっと押し寄せてきた。全裸の、クラスメートやアイドルなど、顔を見知った女性たちだ。小学生時代の同級生が、中学時代や高校時代、大人になった同一人物が、同じ人が何人も、それぞれの年齢で揃っている。

 肉体の急激な改造。性欲が頭をもたげ、股間の奥がくすぐったくなってくる。それでも、心は暗くうち沈んだままだった。

 体の快楽と、心の沈滞が僕の中に奇妙に同居している。その矛盾した状態が、僕を引き裂き続けた。

 ペニスは激しく隆起し、全身が性欲に苛まれる。しかし、美少女たちの群れを前に、激しい情欲に満たされて彼女たちに飛び込む気には、どうしてもなれないのだ。勢い、どうしても僕は彼女たちのなすがままに、全身を脱力させて従う格好になる。それでも、なにもかも無気力なのだ。

 この人たちは…みんな、現実ではそれぞれの生活がある。恋人や夫や子供たちとむつまじく暮らし、自分の夢や希望に向かってがんばっている、充実した毎日を送っている娘たちだ。いわゆるリア充であり、僕とは完全に、住む世界が違うんだ。

 長生きすると、分かってくることがある。

 自業自得。自分の為してきたことは、自分に返ってくる。善いことをすれば、善い結果がある。悪しきを為せば、悪の帰結がある。夢に向けて努力すれば、希望を持って周囲に働きかければ、たしかにやった分だけのことはある。だから、みんなが希望を持って、毎日を生きることができるんだ。

 だが、その一方で、前世まで含めた自分の行い、罪、業、因縁のたぐいが魂に刻まれていれば、いかなる働きかけも、努力も、善も、何もかもが、偶然に妨げられたり、何らの反応もなく虚しく消え、かき乱され、振り回され、ただ時間を奪われ自由を奪われ忙しいだけで何らの張り合いも見返りもなく、うち捨てられて、そのままになる。

 善いことは、善い結果を返すのはたしかだ。だが、そこには、業因縁の深さに応じて、結果に対して「天引き」されるのだ。だから、業因縁が深いものは、やればやるほどどんどんマイナスになっていくのだ。

 それが、人生における、リア充と、そうでないものとの決定的な「格差」を生み出していく。この世界はたしかに、リア充のために建設され、維持されている。業因縁の浅いものこそ、この世を愉しむ権利が与えられる。そうでない者どもは、先に「借金」を返し、来世に希望を託すほかはない。

 もちろん、そうしたものだけが人生の価値ということでもない。恋愛や結婚やお金や夢や希望…世の栄華とされるものだけに価値があるわけでもない。天引きがひどいなら、ひどいなりにすでに満たされている部分に目を向け、欲張ることなく、現実の外に楽しみを求め、出来事に動じることなく、心を静かに保ち滅却し、ただただ、借金を無心で返済し続けるのみ。

 リア充がさらに幸せになれるよう助力することこそ、最大の返済になるだろう。

 そんなことを考えながら、僕は大勢の女性たちにもみくちゃにされ、体の快楽に埋め尽くされて、精液を吐き出し続ける。本来なら、とっくに理性が失われ、我を忘れて肉欲に溺れ続けていたことだろう。だが、今はとても、そんな気分ではない。体のくすぐったさを味わいながら、心は沈みきってしまっていた。

 もう、返済の機会さえもないのだ。コピーとはいえ、彼女たちは夢という形でこの光景を目の当たりにしている。目覚めた時には忘れてしまうように設定されているが、心の奥底では、信じられないことをしているというおぞましい思いでいっぱいのはずである。心から操られているから表面化しないだけなのだ。

 快楽のために、しかも目先の肉欲のために、ほかの世界で充実している彼女たちが犠牲にされている。それを僕自身がどうすることもできない。むなしさと気持ちよさの共存がひしめき合っている。

 この魂は永遠に拘束され、来世で返済することも、魂の業因縁を解消することもできない。ただ快楽だけがそこにある。

 いずれはこの精神も、快楽に負けて、高揚し、この気分の沈んだ状態さえもなくなって、永遠の快楽に溺れるようになるのだろう。だが、その時こそ、僕は自分が人間をやめた瞬間なのだと、覚悟するほかはないのだった。



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