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くのいち1−6


 決めた!

 屋外ではなく、和室で戦う。

 大立ち回りの利く屋外では、どうしてもくのいちのほうが有利になる。体術に優れ、大規模かつ素早い動きを、力強く取ることのできる相手だ。こっちは、そんなに身軽というわけではない。すると、矢継ぎ早の俊敏攻撃で、広すぎる空間を自由に動き回れてしまう彼女のほうに、軍配が上がりやすい。

 こんなところで、地の利を利用されて敗北を喫するわけにはいかない。ここは少しでも、敵側に有利な地形条件を与えないことが大切だ。

 とはいうものの、屋内での戦闘は、僕の側に有利に働くというわけでもなさそうだ。このステージに付属しているあらゆるものについて、女忍者は熟知しているに違いない。どんなものを使っても、どんな場所を用いても、きっとむらさきしのめのほうが知り尽くしていて、上手に利用してくるに違いない。

 それでも、僕はずっと狭い通路のようなステージで闘うことが多く、比較的狭い場所のほうがやりやすいのも確かだ。

 和室のような狭い場所なら、寝技で闘い、その中でくのいち淫法に負けないような攻防を展開することも可能だ。広い庭では素早い忍者の動きも、限られた和室内ならその動きを見切ることだってできる。やはり、この広い空間を使うより、あえて”自分が今までやってきた範囲”に絞ったほうが、少しでも自分の百戦錬磨を転用できるというわけだ。

 僕は走り出す。一瞬、追いかけっこだと思って僕を追い始めるしのめだが、先回りして僕を捕まえようとしたのか、しゅっと身を隠し、背後から迫ってくるようなことはなくなった。

 このまま一方向で逃げ続ければ、確実に彼女に先回りされ、捕まってしまうだろう。

 もちろん、このまま逃げ続けるつもりは毛頭ない。また、敵が隠れているということは、岩陰や木の上あたりから突然、僕の背後に舞い降りてくるという展開も読めるので、僕はあえて、だだっ広い庭で、何も周囲にない場所を選んで走り続ける。これによって、和室にたどり着く前に敵に捕まるという失態を犯さずに済む。

 むらさきしのめはアホの娘だが、さすがに真っ向から僕を追いかけて捕まえる気はないらしい。こちらからの逆襲に、一応は警戒しているようだ。もっとも、正攻法で追いかけてくるなら、当然僕だって逆襲するつもりなので、彼女の行動は正解である。

 和室にたどり着いた。

 何か所かある出入口。

 一応、くのいちの居住地という設定になっているらしく、生活に必要な一式はそろっていた。とはいっても、形だけ整えてあるようで、実際には使われていないのはすぐにわかる。むらさきしのめは、本当にこの日本家屋に住んで暮らしているのではなく。別世界からこの五重塔にワープしてきただけなのだから。

 女子の一人暮らしに特有の雰囲気がない。どちらかというと、客人を招くためだけにあつらえられているような感じだった。プライベートな空間が存在せず、台所やら客間やらはあっても、個人的な部屋のようなものは見当たらなかった。

 いや……警戒はしておこう。

 忍者の庭園にある家屋なんだ。忍者屋敷。当然、どこかしこにおかしな仕掛けがしてあるに違いない。

 たとえば……

 家屋の中心に位置する客間。その片隅に床の間があり、掛け軸が垂れている。

 あれだ。忍者屋敷なら、この掛け軸をめくると、秘密の通路が……ないな。

 じゃ、その横にある木の壁を押すと、ぎいっと開いて、回転扉になっており、秘密の通路が現れ……

「むぎゅ……ぷぎゅ……」
「!?」

 たしかに、この回転扉は、外から見ると普通の木の板の壁で、まさか手で押すと中心が回って開閉される仕掛けがあるとはわからない。その奥に秘密の隠れ場所があって、何かがあれば飛び出して客間の敵を討つ。そんな特別な、忍者屋敷ならではの仕掛けがあるとは、すぐにはわからない。

「あれ……おかしいな。てっきり回転扉がぐるっと回って中に入れる仕掛けになっていると思ったんだが。」

 ぎいっ! ぐぐぐ! ぎいっ!

「ぐ……ぐるじい……やめ……」
「へんだなあ。おかしいなあ。半分近く開くのに、回転しないぞこの回転扉。あれえ?」

 ぐいぐいと、力任せに押し続ける。

 この回転扉の奥は、数十センチ四方の小さな空間になっていて、忍者一人が隠れられる仕掛けになっているみたいだ。もし万が一、ここに誰かが隠れている状態で、回転扉を外から回そうとしても、その人の体が引っ掛かって、扉は回転しない。木の壁に押されて、その忍者は押しつぶされる結果となる。

「ふん! ふん! 回転扉なんだから、回転しろー!!」足でぐいぐいと扉をムリヤリ押し続ける。
「むぎゅぎゅぎゅ……ひゃめれ〜……」

 だめだなあ。

 どうしてもこの扉、回転しないや。しかたない、あきらめよう。はっはっは。

「ぶはあ! ぶはありん! ……ぜえぜえ、苦しかった〜」
「おおおおおおお! む、むらさきしのめ!! よもやそんなトコロに隠れておったとは! たばかったぬぁ!!?」
「ばかー! ぜったい知ってたくせに!!!!」

 バカにバカと言われると腹が立つ。

 だが……探す手間は省けたようだ。

 僕がこの家の中に入ったことを見届けたむらさきしのめは、先回りして客間に忍び込み、この床の間の回転扉の仕掛け部屋から飛び出して、背後から捕まえようとしていたらしい。

 その前にたまたま、床の間の仕掛けに気づき、開けようとしたら、ぎゅみっと弾力が木の板を跳ね返してきたので、ちょっとだけ懲らしめてやったんだ。

「おのれー……」
むらさきしのめは身構えた。背後から卑怯討ちができずに返り討ちにあったことが、頭にきているらしい。そんなこと言っても、こっちも負ける気はないのでね。僕も身構える。さて……やはり和室なら、寝技が一番いいだろう。

 ふっ

「!!」

 とつぜん視界から彼女の姿が見えなくなったと思ったら、次の瞬間、ぐっと全身に重しがのしかかったようになった。

 素早い動きで、彼女は僕の動きを制し、体位戦で主導権を握る動きに転じたのだった。

「しまった……!」

 立ち上がろうと力を込めたが、すでに時は遅かった。

 僕はバランスを崩し、和室の畳の上にしりもちをついてしまった。立ち上がろうとしたり、次の動きに転じたりしようとする前に、むらさきしのめは僕にのしかかり、ぐっと瞬間的に体重をかけてくる。

 その勢いに負け、僕は後ろに手を付き、しりもちをついたまま足を開く格好になる。

 ぐにゅう!

「うっ……くそ!」

 ペニスが急激にやわらかい肉厚に包まれ、直後に急激な締め上げにさらされる。

 瞬時の出来事ゆえ、すぐさまむらさきしのめの姿を見ることはできなくなった。だが、彼女が体位を決め、がっちり僕に挿入を果たすと、そのあられもない姿がはっきりと目に映るようになった。

 しりもちをつき、股を開いて、手を後ろについた体勢のまま固定された僕は、その股の間に入り込んだむらさきしのめの挿入攻撃を回避することができなかった。もとより、目にもとまらぬ早技で一瞬で挿入を果たしてくるくのいちの挿入攻撃を、よけることなど不可能ッ! 

 僕の股間に背中を向けた態勢で、瞬時にして彼女はペニスを飲み込んでしまった。ちいさなかわいらしいお尻が僕の下腹部に直接当たり、鍛えられたみずみずしい肌触りがぷにっと柔らかくつぶれる。

 僕に上半身を預けるようにして、生足を僕の開いた足にぴったりと吸い付け、背中と太ももの肌がこすれるようにしながら、彼女は小刻みに体を上下させ始める!

「ぅあ……」
 
 心地よい快楽が性感ダメージとなって僕を襲う。

 僕と同じ方向を向いての座位。いわゆる乱れ牡丹の体勢だ。おしり、背中、太ももの肌をしきりにこすり付けつつ、ごくわずかな筋力の負荷だけで跳ね上がるように全身が上下し、しかもそのスピードが人間業ではない。僕の身体に当たる部分の筋肉は使わず、柔らかさだけを強調する動きをとる場合、使う筋肉はごく小部位なので、その部分だけは強い負担がかかる。それでも疲労も痛みもなく、リズミカルにズンズンと上下し続けることができるのは、鍛錬の行き届いた忍者の証でもあった。

 くのいちの本番攻撃は、強豪忍者でも数コスリと持たない威力を持っている。並大抵の男では、挿入した瞬間に、その鍛え抜かれたオンナの具合に酔いしれ、やわらかで心地よいけれどもどこまでも締まりつける勢いに負け、その場ですぐに射精を始めてしまう。さらに彼女が特殊な絞め技を使えば、ペニスは悲鳴を上げる気持ちよさに根底まで浸され、急激に締まる力技にとことんまで追い詰められてしまうという。くのいち淫法の代表的な大技、筒枯らしだ。

 弱い男では、一瞬にして絶頂に追いやられてしまうが、あまりにも締まる力が強すぎるために、尿道を精液が通ることさえもできずに、玉袋から出てきた体液は押し戻され、さらに脈打って吐き出そうとするがそれも押し戻され、何分でも何時間でも、絶頂時の多幸感が持続して、いつまで経っても射精し終わることなく、延々と脈打ち続けてしまうという。

 しかも、猛スピードでこれらの技も体位も難なくやってのけるのは、1秒でも早く射精に至らしむという、くのいちならではの掟のようなものがあるためだ。

 くのいちは、熟練した男忍者でも手籠めにできるよう、たとえ一瞬の勝負であっても、その精を抜き取る訓練を重ね、その技術はすでに完成されている。敵の城に忍び込み、大将や王子にまみえて、瞬時に精液を子宮に収める訓練もされており、厳重な警戒態勢が敷かれていても、ものの数秒で精液を奪い取る、なんて訓練までされているのだ。

 こうなった以上は、この乱れ牡丹のまましっかり応戦して、逆転勝利を狙うしかない。

「ふ……」

 ぎうううう!!!

「ぬおおお……」

 来た! これがくのいちの必殺技のひとつ、地獄の筒枯らしだ。ま、まけるか……

 僕は必死で踏ん張り、なんとか大ダメージには至らずに、むらさきしのめの攻撃を耐え抜いた。だが、少なからぬダメージが股間に直撃する。ペニスがオンナに包まれている感触など、いくらでも味わっているはずなのに、まるで性に敏感な少年が初めて名器に入れられてしまったみたいに、きゅんと気持ちいい波が股間を痺れさせ、神経を伝って脳に直撃すると、射精せよという司令となってペニスに跳ね返ってくる。その指令に全身の力と精神力で抵抗することで、性感ダメージをできるだけ小さく留める。これまでの攻防で身につけてきた戦い方だ。

 正攻法での戦いにおいて、くのいち淫法は、一発で僕をノックアウトするほどには至っていない。だがそれでも、少なからぬダメージにつながることは確かで、そういつまでも耐えきれるものでもない。なるべく時間をかけずに勝負を決めないと。

 敵は短期決戦のエキスパートだが、同時に長期持久戦でも威力を発揮する。敵に捕まって性感拷問にかけられても、ネをあげないよう、鍛えられてもいるから。

 それでも、この強豪に打ち勝たなければ、先の道はないんだ。僕は腰をくねらせるように上下させ、妖しい動きと力強い突き上げを併用させて、しのめのオンナを責め立てた。こちらも数えきれないほどの闘いを潜り抜け、勝利をつかんできた身だ。乱れ牡丹での反撃の仕方もよくわかっている。

 愛撫攻撃の併用はもちろん欠かさない。右手でオンナ表面やクリトリス、下腹部の性感神経をまんべんなくかわいがる。同時に左手で彼女の乳房を責め苛み、上半身も下半身も、ペニスと両手で同時攻撃だ。僕の手は、ほとんど同時に両乳房を愛撫することができる。右乳と左乳、右乳首と左乳首、片手で次々と順番に揉んだりこねたり弄ぶのだが、素早くランダムに移動するため、女体にとっては同時におっぱいすべてをかわいがられているような錯覚に陥るというわけだ。

 だが、こちらが想定したほどのダメージにはつながっていないようだ。

 やはり、くのいちは性感刺激に耐性がある。並の防御力ではなく、ちょっとやそっとの攻撃ではノーダメージに終わってしまう。

 それもそのはず。彼女は物心ついてから、先輩くのいちたちの地獄のしごきをくぐり抜けてきたんだ。大勢の女たちに全身ありとあらゆる気持ちいいところをかわいがられ撫でさすられ、くすぐり抜かれ、様々な大きさや形状、機能を有したハリガタを用いてオンナ表面も内部奥底までも刺激され続け、それでも絶頂を許されず、耐え抜かなければならなかったんだ。快楽に対して強い防御力を誇り、我慢を重ねてきた結果身についた高すぎる精力は伊達ではない。

 だから、ペニスの堅い反撃にもめげず、上下感じやすいところをすべて同時に責めまくられても、彼女は快楽を感じにくいよう、きちんと防御できているんだ。

 鉄壁の防御、高い精力。そして……鍛え抜かれたテクニック。やはり、性のエキスパートである女忍者は一筋縄ではいかない。

「ふふふ……これ見て?」

 むらさきしのめが畳の一部をかりっと引っ掻いた。そこに小さな小さな隠しスイッチがあったようで、一見すると絨毯の毛羽のようにしか見えないひもを引っ張ると、部屋のあちこちでガタガタと音がし始める。畳の上なのに毛羽があるのはおかしいと気づいた頃には、この和室の忍者カラクリがすでに発動してしまっていた。

「こ……ッ、これは!」

 ふすまや障子などで囲まれた部屋。それらを開ければ、廊下や庭に出られるが、肉弾戦が開始された時にはすでに、きっちり全部閉められていた。僕が途中で逃げださないようにという作戦だと思っていたが、どうやらそれは見当外れだったらしい。

「ふふ……この和室は、伽で殿方をイかせるためだけに作られてあるッ! すべての仕掛けが、射精を促すための特別あつらえなのですっ!!」

 なんてことだ……

 周囲のふすまも障子も、パタパタと裏返るように変化していく。それらの戸は2重構造になっていて、スイッチによって、障子ふすまの内部に隠された”もう一つの壁”が姿を現すようになっているんだ。

 それらのもう一つの壁とは、すなわち”鏡”なのだった!

「あははっ、どうですか? 私たちのつながっている姿、みぃんな丸見えなんですよぉ?」
「ぅあぁ……!!」

 360度、視覚攻撃が始まる!

 どこを見ても、結合しているいやらしい僕たちの姿が、鏡に映し出され、丸見えだ。

 むらさきしのめの、若くてきれいな肉体が、おっぱいも太ももも女性器でさえも、鏡にしっかり映ってしまっている。彼女のかわいくも白くしなやかな裸体が、余すところなく僕の目に飛び込んでしまった。

 目をつぶりながら闘えるほど甘い敵ではない。僕は彼女の姿をしっかり目に焼き付けながら闘わなければならなくなった。

 さらに、僕たちが動いている姿が、どこを見てもしっかり映ってしまっていて、気恥ずかしいやら、興奮するやらで、僕の防御のタガがじわじわ外され始めているのがわかる。

 AVを見ているみたいに、いままさに致している姿を、自分の視覚にフィードバックされる。しかも無修正だ。そんなあられもない痴態を見せつけられながら、同時に、まさにその快感の坩堝が、ペニスそのものに襲い掛かっている。ビデオを見ながら想像してしごくのと違って、本物の肉体の感覚が、結合している姿そのものが、股間に快楽となって押し寄せる!

 見られているというような錯覚に陥り、脳裏に焼き付く。

 鏡に映し出された彼女の肉体を見るにつけ、すべすべの肌触りは、触り心地よさそうという期待感を僕に抱かせる。しかも、その期待どおりに、僕に擦れていく少女の背中やお尻や太ももの感触が、ダイレクトに全身に浴びせかけられてしまっていた。

 あえて目にしても意識せず、攻撃を加えることだけに集中していた僕の意識は、鏡に映されるという単純なカラクリだけで、まんまと打ち破られてしまった。

 僕は今まさにかわいい女の子とセックスしているんだという、当たり前ながら忘れようとしていた現実をまざまざと見せつけられ、どうしても意識せざるを得ない状況に追いやられている。

 こんな単純な仕掛けだけで、僕の精神的な防御を取り除き、性的な攻撃による快感ダメージを大きくする効果があるなんて。

 僕たちは鏡に取り囲まれた状態で、引き続きこの体位で闘わなければならなかった。むらさきしのめのほうは、こんな視覚攻撃など慣れているのか、責める手を緩めず、ひたすらリズミカルに上下してペニスをオンナでしごき続け、ときおり、筒枯らしの大技を出して僕に痛恨の一撃を与えてくる。

 防御体制はできているので、瞬時にしてイキ果てることはなかったものの、この和室で闘い続けるのが非常にまずいことは、誰の目にも明らかだ。しかし抜け出すことはできなかった。万一無理に体勢を変えて逃げようとしても、今度は背後から手コキされ、僕はペニスがしごかれているしなやかな女手を鏡に見せつけられながら、情けなくも精液を吐き出してしまうことになっただろう。このままどちらかが絶頂するまで、戦闘を続けるほかはない。

 とにかくこっちも、仕上げに入るだけだ。僕はさらに激しくオンナを突き上げながら、鉄壁の防御を破ろうと懸命に愛撫の手を速めた。

 性感にあえぐことはシノビとしての恥とでも思っているのか、少女は声もなく耐え続けた。が、着実にダメージは与えられており、彼女のたっぷりあったはずの精力も、僕の熟練の技の連続を受け、次第に苦境に立たされていった。

「ぐっ……そんな……この私が……はぁうっ!!」

 ついに悩ましい声をくぐもらせたかと思うと、忍者のガードが崩れたのか、一気に大ダメージを負い、むらさきしのめは全身を駆け巡る快楽に対処しきれなくなる。

 ここで一気に仕上げだ! 僕の快感攻撃に、くのいちは徹底的に追い詰められる。アクメを押さえつける修行くらいは積んでいるはずだが、それを打ち破る最後の一撃の方法も、悪いが僕だって知っているんだ。

「とりゃあああああ!!!!」
「はあぁあぁん!!!」

 ついに彼女は、自身の肉体に反射的に訪れてしまう絶頂の波を、抑えておくことができなくなった。生理的な反応である絶頂を、理性と訓練で完全に制御することはできなかった。くのいちといえども、ガマンには限界があったというわけだ。

 むらさきしのめはイッた。

「ぐっ……こうなったら最後の大技、分身の術!」

 そんなことを言いながらも、むらさきしのめは消えていった。なぁにが分身だ。何も起こらないではないか。

 きっとこれだけのドジ萌え娘なんだ、きっとどこかで、何食わぬカオをしてふたたび登場してくるんだろうなあ。まったく……

 戦闘を終えた僕は、ゆっくり立ち上がり、日本家屋を脱出した。再び広大な庭園に出てくる。

 残り精力は……

 まずい……10分の1以下に減ってしまっている。この五重塔では回復ができず、ほとんどそのまま次の戦闘に入る仕掛けだ。この残り精力では、あまりにも心もとない。このまま次の部屋で闘うとしても、次の敵は……むらさきしのめの3倍の力か3人分ということになっている。

 周囲を見回す。忍者庭園は変わらない。どこかに、次のステージの出口があるはずなんだが……

「ふっふふふ……」
「!!!?」

 どこからともなく、少女たちの笑い声が聞こえてくる!

「この忍者ステージは、この広い空間で連戦するのですぅ!」
「むうっ!!」

 つまり……次の部屋に行って闘うのではなく、この場でこのまま、次の敵が襲いかかって連戦、ということか。少しの休むヒマも与えてはくれないらしい。

 この状態で、どうやって精力を温存させながら、さらに強い相手どもに打ち勝てばいいのか。

「これがくのいち忍法最高の秘技! 分身の術です!」
「あっ!」

 そこには、複数のくのいち少女たちの影が、僕の前で腕を組み、立ちふさがっていた。分身……つまり、こいつらはむらさきしのめの分身体とでも、いうのだろうか……徐々にシルエットが明かされるにつれて、少女たちの姿が見えてくる。

「こ……これは……」



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