ドッペルゲンガー1−3
 

 自分に負けない。大切な事だ。そして一番難しい事でもある。ここは昔ながらに、努力と根性で乗り切ってみよう。

 「ふん!ふん!ふん!」

 僕は力一杯にペニスを出し入れし、オンナをかき回した。努力とか根性とか、あんまり馴染みがなかったから、突然『今までの自分にはない動作パターン』をすれば、相手は面食らい、それが勝機になるかも知れない。

 「…。なるほど。考えたね。自分がして欲しい事を相手にするんじゃなくて、その逆を選ぶってのは。なんでも力ずくなんて、君らしくないよ。」「ならドッペルゲンガーはおれさまの行動が読めないだろう。」「おれさまだって。無理してるね。でも残念でした。作戦は失敗だよ。」

 「なんだとう!」僕はドッペルゲンガーの髪の毛を無理に引っ張った。「…我ながら情けないね。どうせ努力とか根性とか男らしい攻撃でなんとかしようと思ってるんだろうけど。ちっとも根性じゃないしね。」「ぬぅぅ…」

 「慣れない事はしない方がいい。慣れない事をするんだったらよく計算して準備してからするもんだ。しかも奥の手を隠しつつね。今の君にはそれがない。だから努力も根性もない。」「てめえ…」

 「分かってないなあ。自分で望まない攻撃パターンってのはね、つまりは相手を感じさせる事のできない攻撃って意味なのさ。」「くっ…」「そして、逆を見せたって事はさらにその逆を行けば君の快感ポイントに辿り着けるって意味になる。」「う…」「逆の逆、それがボクの反撃さ。」

 ドッペルゲンガーは僕にしなだれかかり、ぎゅっと全身を抱き締めて来た。僕は思わずそれに合わせて、上体を後ろに倒そうとした。

 「!」いつの間にか位置がずれていて、僕の上半身はほとんど寝る事無く鏡の壁に突き当たった。

 挿入したまま、ドッペルガンガーはさらに体重をかけ、僕を壁に押し付ける。鏡の壁と女体に挟まれて、座位のまま身動きが取れない!

 ドッペルゲンガーは僕に頬擦りをしながら、全身をゆっくりなまめかしく動かして来た。

 「君は、包まれるのも好きだけど、ゆっくりねっとり『挟まれる』のも好きなんだ。壁際とかの狭い所で密着して、優しく優しく蠢かれると感じる。」「はう…」「結局アンタは、女に優しい愛撫と包み込まれる安心感を求めてたって事だ。望み通りにしてあげる。」

 絶妙な動き。上半身が上下にゆっくり僕を包み込むように蠢いていながら、腰部分はなまめかしく回転するように蠢く。激しさこそないが、安らぐような感覚が、僕の心のタガをどんどん外しにかかっている。

 「一ついい事を教えてあげる。セックスの快感は只の刺激じゃない。心の充実がカギなのさ。」「はうっ!もう…」

 僕はドッペルゲンガーを強く抱き締めた。僕が求めてたものが今ここで実現してる。その充実感が脳天をしびれさせて、全身の力がどんどん抜けていく…

 「さあ、このまま出してもいいのよ?全部、受け止めてあげる…」

 甘い声でドッペルゲンガーが囁く。かすれたような優しい声が、トドメとなった。

 最後は、ドッペルゲンガーの柔らかい唇と舌先を僕の唇に受け入れながら、快感の結晶をオンナに放出した。キスの最中だったのでイク時の声がくぐもった。

 全身の力が抜けたままだ。安心感と充実感が脳を完全に支配している。気持ちの満足がセックスの満足になる。それにもっと早く気付いていれば、勝てたのかも知れないけど…

 でも、負けてもここには望み通りの物が揃ってるんだ。永遠の快楽装置に囚われるのも、幸せかも知れない。あんな現実なんかに比べれば。

###ゲームオーバー###

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