ドッペルゲンガー１（ないと・めあ）

ドッペルゲンガー１－１
　

　階段を上る。もうここが何階だかも分からない。大分上の方まで攻略している筈だが、全然出口が見えて来ない。一体、最上階まで後どれ位あるんだろう。

　「！」

　扉を開けるとまず驚いたのが、壁一面にずらりと並んだ等身大の鏡だった。ずっと奥まで鏡が置いてある。こんな階は初めてだ。

　ありがたい事に天井や床等には鏡が付いていないので、よく遊園地にあるような鏡張りの部屋になっては居なかった。あんな風に自分の姿が一杯映って位置が掴めなくなったら厄介だった。

　僕が鏡に映るのは精々自分が通った時の左右の鏡位だ。後は普通の迷路だ。でもきっと、この鏡には何か秘密があるに違いない。僕は警戒しながら先に進んだ。

　おっと、ここは行き止まりか。目の前に大きな鏡の壁が立ち塞がっている。引き返す事にしよう…

　「うん？」鏡に映っている自分の姿に違和感を覚えた。どこからどう見ても僕が映っているんだけど、何かが違う。薄暗いので良くは確認できない。

　僕は鏡に近づいて自分の姿を観察し始めた。右手を上げる。鏡の僕もちゃんと手を上げる。触ってみる。硬い。うん、この鏡は何の変哲もない、ごくありふれた鏡だ。

　…でも何かが違う。なんだろう？

　「…。…！こ、これは…！」

　よ～く見て、やっと気付いた。たしかに僕の姿が間違いなく映っているんだけど、それは僕じゃなかった！体全体が丸みを帯びている。肌がきれいで透き通った感じ。唇の肉付きがよく、その手も柔らかさを保っていた。何より、二つの突き出た胸が、あるべき所にある筈のモノがない事が、僕でない事を証明していた。

　そう、鏡に映っていた僕は、女だった。てか気づけよ自分＿|￣|○

　あわてて自分の体を見回す。鏡の魔法か何かで女にされちゃったんじゃないかと心配になった。でもそれは大丈夫だった。たしかに実物の僕は男だ。でも鏡に映っている僕は女性だ。なにかヤバイ！

　敵の予感がして、僕はその場から離れた。元来た道を引き返す。

　「！」

　左右の壁に自分が映る。その姿は、やっぱり僕だけど、性別だけ違う。女になった自分が、男の僕に合わせて走っている。立ち止まると、鏡に映った女性も立ち止まる。

　だめだ、鏡に映ったままだと、どこへ行っても追い付かれてしまう。どこか自分が映らない所に逃げ込まなければ…。でもこの階は至る所に鏡が置いてある。逃げるのは不可能だった。

　覚悟を決めて、僕は敵と思われる「女性の僕」に向き合った。右手を上げる。女も手を上げる。

　…。鏡に映っているのが女の自分という以外は、何も変わっていない。只僕の行動を映すだけだ。だが鏡に女になった自分を映している時点で、この鏡は普通じゃない、なにか魔法めいた力が働いているようだ。恐らくこれが敵なのだろう。一体こいつはどんな行動を取るというのか。

　僕は思い切って先手を打ってみた。自分の胸を両手で鷲掴みにし、揉みしだいてみる。自分で自分の胸を揉んでみても、男なら全然気持ち良くはない。しかし、映っている女にはダメージが行っているのではないか。

　案の定、鏡の中の女性は顔を上気させ始めた。只この程度の攻撃では鏡の化け物を倒す事はできそうもない。何か別の手が必要だ。

　と、鏡の中の女性が僕と違う動きをし始めた。「彼女」は自分の胸を揉むのをやめてしまった。

　「…ついに本性を現したな、化け物め！」

　女は黙ったまま、両手の指を組み、自分の下腹部で握り締めた。

　「！！！」

　僕は自分の意思に反して、自分の両手を組み、ペニスを自分の手のひらで包み込んでいた！そうか、鏡の女性が動いたように僕も動いてしまうのだ。女性は両手を揺り動かし、ペニスをしごく仕草をした。それに合わせて僕の両手も動いてしまう。

　「くそ…」僕は完全に操られている。

　しかし、自分の手でしごくだけなら、それ程感じてはいない。相手への胸もみ攻撃がほとんどダメージにならないのと一緒だ。僕は余裕の笑みを浮かべた。このままオナニー合戦をしていても決着は着かないだろうし、相手もそれ以上の事はして来なさそうだ。それなら敵として相手にしなければいい。

　一定時間が過ぎると、僕は自由になった。僕は鏡に映る女性の姿を無視して先に進む事にした。

　「無駄だよ…」鏡の中から声がした。こいつ…話せるのか。「ボクからは逃げられない。」「！」また体の自由が利かなくなった。一定時間毎に交代でお互いに操れるらしい。僕は無理やり鏡に向き直させられた。

　「そっちこそ無駄だよ。僕を引き止めて置いた所で、結局お前は鏡の中。手も足も出せないじゃないか。オナニー合戦しててもお互いに決着は着かないだろう。僕はこんな所で遊んでいる暇はないんだ。」

　「クスクス…手も足も出せないだって？オナニー合戦は只の余興さ。」

　体に自由が戻って来た。僕は訳の分からない恐怖に襲われて走り出した。だが鏡の女はどこまでも付いて来る。

　ピタッ。僕は走るのをやめさせられた。

　「手も足も出せるよ、ボクは。」…ヤバイ。嫌な予感がする…「さあ、こっちへおいで。もっと鏡に近づいて。」「彼女」の言葉通りに僕は鏡に近付いて行く。鏡の中の女が鏡面に近付くように歩けば、僕の体も自動的に鏡に向かって歩いてしまう。

　ついに僕は鏡の目の前に立たされてしまった。

　ぬっ。鏡から手が出た！ヤツが鏡から出ようとしている。その手は僕の手を掴んだ。

　「くっ！」体に自由が戻って来た。僕は「自分」につかまらないように後ろに飛びのいた。だが…

　ガシィッ！後ろから柔らかい腕に羽交い絞めにされた！しまった、後ろの鏡ッ！

　「気付くのが遅かったね。ボクは前方だけに映ってるんじゃないんだよ。」「てめえ、一体何者なんだ！僕の姿を真似てないで、本性を現せ。」「クスクス、ボクは君さ。只性別が違うだけのね。女版の君だよ。」

　鏡から肉感が浮き出て来る。敵がどんどん出て来ているんだ。背中に胸の感触が伝わる。僕は力を振り絞って羽交い絞めを解き、敵に向かい合った。敵はもう完全に外に出ていた。

　「始めまして。どうだい？…自分に向き合った感想は？」「…。アンタは誰なんだ…」「言っただろう？ボクは君さ。ま、正確には君に完全に同化していた状態と言うべきか。」

　この化け物は、相手を完全にコピーする事ができる。ドッペルゲンガーだ。だが、その相手に変身するのではない。ドッペルゲンガーの本体は完全な無だ。コピーする相手そのものとして生まれ、その相手として過ごし、死ぬ存在。コピーされた相手は、ドッペルゲンガーによって排除されてしまう。交代させられてしまうんだ。

　この塔のドッペルゲンガーは、それに加えて特別な魔法をかけられて強化されている。相手を完全にコピーする上に、性別だけ女性にする力がある。こうして、女版の僕ができ上がったという訳だ。

　いや待てよ、たしかに相手は化け物だが、能力や精力は僕そっくりに作られている。むしろ僕そのものだ。という事は、魔物としては弱いのではないか？相手が人間なら、人間としての力を超えないのなら、僕だってこれまで沢山ヒューマン・タイプを相手にして来たし、モンスター・タイプよりは弱いのではないか。もしかしたら、楽勝かも知れない。

　「なんだかんだ言っても、コピーした相手は僕、つまり人間だ。それ以上の能力ではない。もっと強い奴をコピーして置くんだったな。倒させて貰うよ。」「クスクス…そう簡単に行くかな？ボクは君なんだよ？君と同じ能力を持っている。教えてあげるよ、自分自身を超える事がいかに難しいかをね。」「…。」

　僕達は向き合った。顔立ちも、性格も、口調も、僕に瓜二つだ。それでいて相手は女だ。なんだか奇妙な感じ。まるで…

　「言って置くけど、ボクは別に水をかぶって変身した訳じゃないからね。」「！」これから言おうとしていたギャグを読まれたっ！思考まで僕と一緒なのか。なんか最悪だ。

　「それじゃあ、始めるとしようか。」「準備はいつでもいいぜ。」

－ＦＵＣＫ　ＹＯＵＲＳＥＬＦ！！－

　僕はドッペルゲンガーを抱き締めた。そのまま横になり、前戯を始める。ドッペルは僕の首筋に手を回し、僕にほお擦りをする。体全体をゆっくりくねらせ、すべすべした女性の肌を満遍なくこすり付けて来る。僕は彼女の下腹部に手を伸ばした。

　「！」巧みにドッペルは逃げてしまった。いや、ここで僕が愛撫攻撃に転じる事は分かっていたんだ。

　「じゃあ、今度はボクの番だ。君の弱点は全部まるっとお見通しなんだよ。」

　ドッペルは僕の背後に回り込んだ！背中に胸の感触が這い回る。そのまま後ろから右手でペニスをしごかれる。さらに首筋や耳にキスし、息を吹きかけ、軽く噛んで来たりした。首筋へのほお擦りも忘れない。

　「くうっ！」「どうだい？気持ちいいだろ？お前はそうやって、背中から包み込まれるのが好きなんだ。激しいセックスより、女の肌に密着していて包み込まれた安心感が欲しい。できれは数人の女性に包み込まれていたい。そうだろ？」「ぅ…」

　「その上全身を女の肌がゆっくりねっちり這い回ると感じるんだよな？ゆっくりなまめかしい動きの方がいいんだろう？それから首と耳が弱いんだよな。後ろからこうやって女の声で囁かれるのもたまらない…。」

　そ、その通りだ…

　「それから『女の手』が好きなんだよ。男のごわごわした手じゃなくて、すべすべで、やわらかくて、しなやかで、吸い付くような手のひらと指先。そんな手でペニスを触られたいってずっと思ってたんだろ？良かったじゃないか、この塔でそれが実現して。」

　僕はドッペルの囁きに脳天がしびれる思いだった。なんて巧みに甘い声で囁きやがるんだ！

　「アソコの嗜好も知ってるよ。亀頭の先より、カリの付け根の方が感じる。それから、玉袋への同時愛撫も気持ちいい。玉袋も、奥の付け根辺りを、…こうやって、ワキワキと指先で愛撫するとたまらない。そうだろう？あんた、オナニーする時はいつもそうしてるもんね。女の人にそうされたいって、そう思ってたんでしょ？」

　「うっ…はぁ…」なんてこった、敵は僕の弱点を知り尽くしている。セックスの時こうされたいと願望している事を悉く実行して来る。只の愛撫なのに僕は大ダメージを受けてしまっている。

　まずい、このままでは一方的にイかされてしまう！どう反撃すればいいんだ。きっと生半可な攻撃では相手には通じない。自分という敵がこんなに強力だったとは…

　ドッペルは離れた。僕の上半身を起こし、目の前に腰を下ろした。そのまま抱きかかえられる。顔に胸が押し付けられた。そして彼女はいきり立った僕のペニスを飲み込んで行った。胸の位置がどんどん下がり、僕の腹の辺りに落ち着いた。僕は座ったまま足を投げ出し、敵は両足を僕の腰に巻き付けて固定した。

　敵の顔が僕の胸にうずめられ、乳首にキス。両手は僕のわきの下から背中に回っている。僕の背中は鏡の壁に寄りかかっている。

　「当然、本番も密着度の高い座位がいい。激しく上下しなくていいから、その代わり全身を強く抱きしめてほしい。君はそんな事を夢見ていたんだろう？」

　ドッペルのオンナが僕のペニスを包み込み、前後左右からムニムニと揉んでいる。動きは決して激しくないが、ゆっくりでなまめかしい細かい動きが、僕の精力を確実に削っている。それも、感じやすいカリの部分が集中して締め付けられ、揉みしだかれているのだ。

　僕はドッペルの頭にあごを乗せた格好で、なすすべもなく身を任せていた。囁きながらドッペルはぎゅ～っと僕の上半身を抱き締める。技巧ばかりのテクニックよりずっと感じる。

　「くううっ」「…そう、君はそうやって、自分が感じるツボをかわいがって『欲しい』と夢想していた。ああされたいこうされたいって『願望』だけは人一倍だったね。よかったね、それが実現しているじゃないか。君は何もしなくても、女の人達にタダで自分の思い通りの事を『して貰える』。ここで射精しちゃえば、これからもそれが続く。永遠の天国だ。」

　「はぁはぁ…ま、負けるものか…」

　「…お前はこの塔に来てから、沢山の女性を抱いて来た。女達は、お前の望むように行動しようとしてくれる。なんて都合のいいシチュエーションだろう。でも、お前は薄々気づいている筈だ。塔に入る前の、身勝手な願望だけじゃあ、ここからは出られないんだぜ？」

　「…。」

　「お前はセックスを自分の為だけのものとして考えていた。自分の快感しか頭になかった。違うか？」「…その通りだと思う。」「だけどそれだと自分は満足させられるけど、相手を満たす事はできない。つまり勝負に負けるってのはそういう事さ。」

　「そうだ、僕はこの塔で、相手をイかせる事を考えるようになった。そうしないと出られないからな。」「…だがしょせん、相手に快感ダメージを与えるのも『自分が外に出る為』なんだな。結局自分の事だけが大事なんだな。」

　ドッペルはさらに強く締め付ける。

　「ち、違…」「どう違うんだよ。実際ボクに抱きしめられて抵抗できないし、その癖頭の片隅ではボクを倒すべくイクのを我慢しようとがんばってる。今セックスしている相手の事なんか考えてない。」「…。」「しょせんお前などその程度だったんだ。さあ、それならいっそ、この塔で永遠の快感を『与えて貰う』事だな。」

　グリグリ…ドッペルの体が妖しくグラインドし始める。

　「…ち、違う！ここで負ける訳には行かない。この勝負に勝つ事が自分自身に勝つ事だっていう、その意味がやっと分かった。いや、それ所かこの塔から出る事も同じ事なんだ。」

　自分の欲望だけじゃセックスはうまく行かない。これがこの塔を脱出する鍵でもあるんだ。ドッペルは僕の事を熟知しているからこそ、警告したに違いない。

　「じゃあ、証明してみせろよ。お前がボクを倒す事で。」

　「…やってやるさ。」

－選択肢－
ドッペルゲンガー１－２　高度なテクニックで倒す！
ドッペルゲンガー１－３　根性と努力で責める！
ドッペルゲンガー１－４　自分に打ち克つ！(｀･ω･´)ｼｬｷｰﾝ

メニューに戻る（ノーフレーム用）