ピクシー+エルフ+エルフィン5
 

 役割分担ができているパーティは常に強敵だ。通常RPGでも補助攻撃で弱体化され続けて攻撃役に敗北というケースは少なくない。こういう場合の鉄則は、補助攻撃や回復役の敵から倒すことだ。これらの役割を先に倒してしまえば、残りは案外弱いものだ。今回のフォーメーションも、いかにも完璧に見えるけれども、その完全性はハイピクシーやエルフィンの補助攻撃に多くを負っている。つまり彼女たちから先に倒してしまえば、残りのエルフたちを倒す手がかりも見えてくるというものだ。

 彼女たちを倒すまで、ひとまずエルフは無視しよう。補助攻撃で厄介なのは、どちらかというとエルフィンよりもハイピクシーの遠隔魔法攻撃だ。魔法だから一応バリアを貼ることはできるが、ハイピクシーの魔力は高く、人間ごときで守りきれるものではない。

 魔法というものを粒にたとえれば、効果が強力な魔法は粒が大きく、魔力が大きな粒は勢いがある。僕のバリアというのはこれを通さないフィルターのようなもので、小さな粒は通してしまうことがある。また、あまりに勢いがある粒は捕らえることができずに突き抜けてしまう。大量の魔法を浴びせかけられればこのフィルターも疲弊し、ついには破れてしまう。だから、強力で魔力も強大なハイピクシーたちの度重なる連続魔法攻撃に、ジワジワ追いつめられ、催淫を始めさまざまな効果がこの体にあらわれてきてしまっているのだ。

 今のうちに魔法の源泉そのものを断っておかなければ、いつかはバリアが完全に突破され、一気に強い効果を身に受けることになるだろう。そうなる前にハイピクシーたちを先に倒しておきたい。

 僕は意識を集中し、大量の魔力を使って自分の体を空中に持ち上げるイメージで重力に逆らい始めた。上にあがればそれだけ地に引っ張る力が強くなる…その分多くの魔力で重力に逆らわなければならない。舞空術はたいへんなエネルギーを消耗する。魔法防御しながらの舞空術は、やはりかなりきつい。が、自分の魔力を考えれば、ハイピクシーたちのところまで上がっても十分魔法防御でき、かつ攻撃を加えるだけの余力がありそうだ。この調子なら何とかなる!

 僕が舞空術で近づいてきたのを認めたピクシーたちは、おたがいに顔を見合わせてうなずいた。こちらの攻撃に何か返り討ちにする奥の手があるのだろう。ハイピクシーたちと何度も戦ってきたおかげで、彼女たちの連携もなかなかのものであることは知っている。ここはウラをかかなければやられる。全員まとめての愛撫攻撃や魔法攻撃は無理だな。彼女たちは塔の上空四方に広がっていて、愛撫の射程距離に入らないし、魔法攻撃を仕掛けても彼女たちの鉄壁のガードで(そもそも人間の魔力では妖精には太刀打ちできない)ほとんど効果を期待できない。それなら…イチかバチか、あれをやってみるしかない。

 僕は舞空術でハイピクシーたちと同じ高さに到達すると、直立不動のまま瞳を閉じた。ピクシーたちは残りの魔力を他のエネルギーに体内で変換させる。そこに魔法の波動を感じた。ハイピクシーたちがPVの遠隔操作版、プレジャーサンダーを魔法の力で繰り出そうとしているところだった。たしかに、彼女たちの丁度真ん中にいる僕を一気に狙い撃ちし、精力を最後まで削り取る大技となれば、プレジャーサンダーが一番適しているだろう。予測できる行動だ。僕としてはその上を行かなくちゃな。

 「きゃははは! ここまできたことは褒めてあげるけど、そのあとのことを考えていなかったようね!」「まんまとわたしたちの必殺魔法に掛かりにきてくれたって感じね。」「もうどうすることもできないでしょう。砲弾はロックオンされちゃったし!」バリバリバリ! PVの超強力版が、雷の玉となってハイピクシーたちの前に四個生成される。魔力が注入されてどんどん巨大に、そして内部の圧力も見る見るうちに強まっていく。コイツが猛スピードで僕に向けて発射されようとしている。

 「さあ、一度に150回はイッてもらうわよん♪ 妖精の増幅魔力全部を使って作り出された、通常プレジャーボルトの数百倍の威力を持つプレジャーサンダー、しかも四人分、ショック死しちゃうかもね!」「かわいそうかわいそう! きゃははは!」「逃げることはできないよ! どこに行ってもロックオンされちゃったんだから追いかける! 無限の快楽の淵に溶けて流れ落ちるのは確実だね☆」「でもー♪ ここまで粘ってきたあなたにトドメを刺すのは〜、…やっぱりこのプレジャーサンダーこそふさわしいッ!」

 「…プレジャーサンダー…しかも数百倍の……」もし失敗してこの大技を身に受けてしまえば、おそらくイクとかそれどころの騒ぎじゃなく、僕の全身の神経は脳神経からすべて完全に破壊されちまうだろうな。チャンスは一度きりだ。僕は呼吸を整えた。

 「イッちゃえーーー!!!!」ドギュアァァァァアアン! プレジャーサンダーの大玉が、轟音とともに僕の前後左右から一斉に放たれた。今だ! 僕は残りの魔力を結集させて具現させたある物体を頭上高くに掲げた! この世界は精神世界、思ったものを取り出すことができるッ! その物体がスゴイ物であればあるほど多くの魔力を必要とするが、”これ”は僕の残り全魔力を傾けても惜しくない究極の宝石だ!

 「なっ…!」僕に向けて放たれたはずの雷電の球は、僕が頭上に掲げた宝石のほうへ軌道修正する。どんなにロックオンしても、こいつの力には抗うことができない! 光の玉はいっせいに宝石に吸い込まれた。

 ゴオォッ! 一箇所に集められた光の玉は、真っ赤な宝石の一点から、超強力な光のスジとなってあさっての方向に放たれる。同時に手に持っていた赤石が崩壊し、消滅した。強烈なレーザーは直径一センチ程度の穴を塔の壁に空け、外へと突き抜けていった。

 「…!」「…!」「…!」「…!」「…!」「…!」

 妖精たちは何が起こったのか理解できずに唖然としている。

 「…どうやら成功したようだ。今のはエ●ジャといってな、光や魔力を吸い込むと内部で何億回も反射をくり返して、エネルギーが増幅され、一点から放出する宝石なのだよ。つまり、PVの何百倍のパワーがこの赤石のなかでさらに増幅され、一点から猛烈な破壊力を持ったまま放出されたということだ。火山がそこにあれば一気に噴火させるくらいにな。そのエネルギーは塔の壁を突き破ってどっかに行っちまった。魔法に守られていた壁なんざ簡単に穴を空けて飛び出す。これがどういうことか分かるよなあ。」

 僕は魔力が切れて地上に降りた。落ちないように調整しながら下降し、足をつけるころにちょうど魔力がゼロになった。妖精たちが青ざめている。特にハイピクシーたちが頼りにしていた魔法の力を、妖精たちはすべて出し切り、枯渇してしまっている。彼女たちの増幅された全魔力は、光の帯となって外に逃げてしまった。フォーメーションを組んでも、もういっさい魔法は発動しない。それなら、この妖精10人、3人バージョンを連続3回くり返すのと大して変わらなくなる。今までにも多様な戦闘は経験済みだ。

 「…勝負あったようだ。」あとは魔法抜きの実戦だけで戦えばいい。実力勝負ってやつだ。それにしても、赤石から放たれたレーザーが万一僕に当たっていたらと思うと、やはりこれは賭けだったな。ぞっとするぜ。

 「お…おのれええええ!」「おまえなんか魔法なしでやっつけてやるううう!!!」ハイピクシーたちが一斉に襲い掛かる。…魔法を失ったハイピクシーなど敵ではない。そういうのをただのヤケクソというのだ!

 僕は後ろに手をやってアナルを守った。怒った小妖精が狙うのはまず僕のお尻だからな。アナルをガードされた妖精たちは四人一斉に他の部位に飛んでいく。行き着く先は、予想どおり僕の股間だ。ペニス周りに三体、もう一匹が玉袋に張り付いた。そのまま一斉に揉みしだき攻撃。柔らかい女体が思い思いに蠢いてペニスを悦ばせる。

 僕は妖精たちを引き剥がそうとしたが、どこにそんな力があるのか、彼女たちは絶対離さないと頑として頑張りぬいている。下腹部に鈍い快感が広がって思わず脱力しそうになった。が、アナル攻撃がないだけずっとましといえる。快感ダメージにはなっているものの、エルフのオンナなどに比べればまだ軽い。これならなんとか耐えられそうだ。

 それに、ハイピクシーたちのこのポジションは、もう一つ僕にとって大きなメリットがある。そのことに経験豊かなエルフもいち早く気付いていた。「ちょ…おま…落ち着けッ!」エルフがピクシーたちを制止する。だが、ピクシーたちはエルフの制止も聞かずにひたすら僕の股間を責めあげ続けた。

 僕はその間にエルフたちに立ち向かう。ペニスはハイピクシーたちに覆われて使い物にならないので、両手だけが頼りだ。片手の指でオンナをこねくり回し、もう片手は女体を満遍なく滑って敏感なところを巧みにくすぐってやる。妖精相手に全体攻撃は無謀すぎるので、ここは一人ずつじっくり責めてやる。

 しなやかな愛撫攻撃は着実に敵精力を削って行った。相手にとってみれば一気に大ダメージをこうむるほどではないものの、じわじわとパンチが効いていって、気がついたらイク寸前にまで高められている状態だった。目の前のエルフが反撃のチャンスもなくオルガスムに溺れた。

 ピクシーはキレやすく、怒らせると暴走するが、逆にそれを利用して勝利を掴む作戦だってあるんだ。たしかにペニスはピクシーたちの猛威にさらされ続けることにはなるが、アナルさえ守ってしまえば彼女たちの攻撃は大したことがない。むしろその小さな体が貞操帯となって、股間の感じやすいところをずっぽり覆ってくれているのだ。したがって他の妖精からの快感攻撃から身を守ることができる。挿入は不可能だし、さすろうが何しようがピクシーの体がコーティングされている状態なので性感には結びつかない。これでは他の妖精は僕に大ダメージを与えることができず、一方的にこちらの愛撫攻撃を身に受けるしかなくなってくる。閉ざされた塔の中では逃げることもかなうまい。

 それにいち早く気付いたエルフがピクシーたちをなだめて引き剥がそうとしたが、怒りに我を忘れている小妖精は何も考えずにペニスと玉袋にしがみ付き、頑として離れないのだった。他の妖精はなすすべもなく、せいぜい僕の全身をスベスベの手で撫でさすってピクシーの攻撃を補助するのみであるが、その応戦も僕に致命的なダメージを与えるには至らない。こちらの愛撫攻撃のほうが勝っており、精力消費もこちらは微々たるものなのに相手は感極まっている。人数が多いので時間はかかるが、この調子ならほぼ一方的に倒していくことができるであろう。

 エルフが僕の背中にぴったり張り付いてペニスをしごこうとしたが、しごく手はピクシーの体をさするのみで、全然気持ち良くない。そうこうしているうちに二人目のエルフを倒し、僕はくるりと身を翻して背中のエルフに愛撫攻撃を始めた。

 指だけで妖精を倒そうとしている僕の攻防が時間のかかるものであることを察知したエルフィンたちは、僕に群がって攻撃をしてもほとんど効果がないので、僕の近くで自慰行為にふけり、淫気で毒してハイピクシーの快感を高める作戦に出た。彼女たちは電動マイバイブをオンナに差し込み、はげしくよがりながら体中から強い花の香りを放出し続ける。周囲がピンク色に染まって視界が悪くなるほどだった。

 そうこうしているうちにも三人目のエルフを倒した。股間に張り付くピクシーの汗がぬるぬるしてきたが、この程度の攻撃なら何度も受けてきている。まだ十分戦えそうだ。残るはエルフィン。

 「これはどうですか?」淫気を発しながらエルフィンがピクシーごとパイズリ。おしとやかな物腰と口調だったが、エルフィンはエルフィンで必死で戦っていた。上目遣いが本気だ。圧迫のある豊かな乳房が淫気と共にペニスを上下し、柔らかく形を変えながらいやらしい動きを繰り返している。なりふり構わずおっぱいがピクシーの体ごとペニスをこすり上げていた。しかしその刺激も、やはりピクシーの体が邪魔して大してダメージにならない。もしこの淫気の中エルフィンのやさしいパイズリがダイレクトに包み込んでいたら、精力の激減は避けられなかっただろう。肌が直接こすれあうことがないからこそ、圧迫が弱いピクシーを補助する程度の攻撃で済んでいるのだ。

 しかしそれでも、充満した彼女たちの花の淫気が僕を蝕み、追いつめていくのも確実だ。このまま体内を催淫毒が駆けめぐり続け、徹底的に弱体化させられていけば、ピクシーの包み込み攻撃にさえ悶絶して子種を提供してしまいかねない。エルフィンを後回しにしたのはこの花の淫気があるからなのだ。早い段階でエルフィンを攻撃していれば、それだけ早く大量のフローラルポイズンを身に受けてしまう。後回しにして、一気に倒しておくのがいい。今がそのチャンス!

 僕は群がるエルフィンに百烈愛撫をくりだした。彼女たちの乳房を中心に一気に勝負を決めようとする。あえてオンナに手を伸ばさないのは、僕が立っていて彼女たちがひざまづいてパイズリ体勢に入っているからというだけではない。ダメージと放出される淫気のバランスをとるためだ。軽い攻撃ばかりでは毒が回ってイッてしまうし、かといって強すぎても大量の花の蜜が放出されて逆効果だ。一番短く、それでいて淫気の効果が少ない攻撃で倒していくほかはない。

 激しい攻防の末、エルフィンたちを倒す。エルフィンたちは指先と乳房で懸命に僕を責めたが、ピクシーガードが功を奏してイクことがなかった。あとはこちらの素早い動きで、三人まとめて一気に乳房を攻撃。エルフィンが武器としていた形のいい器官は、同時にダメージを受ける愛撫の射的となっていた。彼女たちを倒してもまだ精力には余裕があった。

 残るは…ハイピクシー、いや、魔力を失ったから催弱なただのピクシーたちだった。彼女たちを引き剥がしては舌でオンナを転がして平らげていく。一匹ずつ着実に快感攻撃に晒して行った。引き剥がされてはじめて、彼女たちは事の重大さに気付いたものの、時すでに遅く、ピクシーたちは僕の攻撃になすすべもなく、ついに全員が倒されてしまった。戦いが終わったとたん、密閉されていた塔の空間が開ける。窓があらわれ、出口の扉もあらわれる。エルフィンの淫気がかすれながら外に出て行き、ついに消えていった。体の中の毒も浄化されていく。

 塔の真中に大きな柱があらわれた。戦闘中は消されていて、それが終わったから出現したのだ。ドアがある。柱は中が空洞になっていて、塔の天井まで伸びている。これが出口に繋がっているのか。ドアの前に立つと自動的に開いた。中は広いエレベーターになっている。ここから上っていけば次のステージ、というわけか。空を超えるような高さだからな。階段じゃあ無理がある。

 僕が乗り込むと、ドアが閉まって自動的に上がり始めた。真中に椅子があり、端っこに大きな液晶テレビが置いてあった。何も仕掛けがないことを確認の上、僕は椅子に座った。随分体力を使ってさすがに疲れた。その体をやさしく包み込む、すわり心地のよい椅子だった。

 ぴんぽ〜ん!「このエレベーターは、光速で動いております。時空を超えるため、周囲の空間が歪むことがありますが、エレベーター内部は安全です。到着時間は、ただいまより6時間56分後の予定でございます。」げっ…! そんなに時間かかるの? 自動ナレーションによるとあと7時間このなかにいないといけない。椅子がセットしてあるはずだ。妖精ステージそのものが一つの世界になっていて、その世界そのものをこえてもとの迷宮塔に戻る必要があるから、相当時間が掛かるというわけか。

 ぴんぽ〜ん!「ご退屈なさらぬよう、当エレベーターでは映画がご用意してございます。テレビのスイッチを入れるとお好きな映画を見ることができるようになっておりますので、ご自由にご覧下さいませ。」みると、テレビの横に棚があり、HD内蔵のビデオデッキがあった。映画はこのなかにおさめられているらしいな。まぁ退屈しのぎに久しぶりに名画でも見さしていただくとするか。やっぱりホラーがいいな。どれどれ…

 『はざーでぃあん 〜吸血鬼とゾンビの月夜の宴』おっ、これはよさそうだな。ゾンビとヴァンパイアの饗宴か。こういうの大好き♪ リモコンでこの映画を選択してみる。見たことのない映画だな。この世界のオリジナルかな。…待てよ? 安全かどうかっての確認しなかったな。まぁ見てみて危険だったらすぐにスイッチを切ればいいか。映画が始まる前にダイジェストが流れる。見所の紹介はテレビの洋画劇場みたいだ。

 「姉さんが死んだ。結婚が決まり、式を挙げる一ヶ月前のでき事だった。一晩のうちに生気尽き果て、変わり果てた姿で見つかったのである。首筋にはふたつの小さな穴が開いていたが、村の医師は心臓発作と診断した。姉さんは近くの墓地に埋葬される。亡霊騒ぎなど色々いわくのある広大な墓地だった。死因に納得が行かない僕は満月の晩に一人墓地に忍び込む。そこで、夜な夜な死してなお死にきれずに男を求めて墓地をさまよう、若い娘のゾンビたちが土から這い上がる。淫気漂う中で群がられる少年。快感の中で何度も射精しながらも、アンデッドの謎を解くべくペニス一本で立ち向かう。満月にだけ出現する幻の古城には大量の女ゾンビやコープス、ネクロマンサーたちの淫乱な化け物がたむろしていた。その頭領である女バンパイアの淫靡な誘惑に、果たして僕は耐え切れるだろうか!? 出し尽くして冥界送りになるのが先か、アンデッドの謎を解いて吸精鬼を封印するのが先か。15歳の僕の初めてのいやらしい冒険物語!」

 …ちょっと待て。やっぱり「ないと・めあ」が用意した映画だ。見るからにいやらしい映画じゃあねえか。僕はとっさにリモコンを操作、映画を中断した。危ない危ない、次のステージに行く前に興奮しきりで弱体化してしまっては、あるいは自分で高めておいて出す寸前で騙されて次のステージに着いてしまっては、折角妖精ステージをクリアしたのに水の泡ではないか。もっとマトモなホラー映画はないのか。

 『怨霊の館♪』…。音符が気になるが、ダイジェストだけでも見てみよう。

 「山奥のハイキング。道に迷ってさまよう6人の若い男たち。暗くなったとき、幸運にも広大な洋館を見つけた。廃墟のようだった。緊急ということで一晩泊めてもらうことになったが、それが運のつきだった。扉が閉ざされ、出られなくなった青年たちに、昼夜問わず若い女の色情霊たちが襲い掛かる。お札で結界になっている奥の部屋に逃げ込み、館の秘密を知る。外に出るには、ここにいるすべての性霊、集まりに集まってしまった300人の娘たちを満足させなければならない。食料などの関係からタイムリミットは7日。極上の性感を与えてくる性霊たちを相手に、体力が尽きないよう気をつけながら、一人あたり一日7〜10人を悦ばせなければならなくなった。果たしてこのパーティはペースをうまく配分して、怨霊の館から脱出できるだろうか。」

 …。だめだ。このエレベーターに用意されているのは全部エッチな内容だ。ここで僕を欲情させる罠だったんだ。こうなりゃ絶対見るものか。僕はテレビのスイッチを切った。

 …。

 …。

 ………。

 …。

 ・・・・・・…。

 あと6時間半か。眠ろうったって、ここじゃあムリだよな。もともと夢の世界、寝てるんだし。魔法でもなければ睡眠状態にはならん。

 あー退屈だ。

 …。

 しょーがない。ダイジェスト見るだけな。本編前にスイッチ切るぞ。

 『呪いの絵』これはどんなのだろう。絵だからもしかしてだいじょうぶかな?

 「妖しげな骨董屋の女主人から裸婦の美術絵を買った。格安で、見ただけでどこかひきつけられる色気を感じたからだった。持ち帰って裸婦を見てオナニーして寝る。異常はその日の夜から始まった。夜な夜な絵から妖しい裸婦が飛び出し、僕の精を奪っていく。日を追うごとに呪いの効果が強まり、ポスターからも、テレビからも、漫画からも、二次元に映る美女はすべて現実世界に飛び出して僕と交わるようになってしまったのだ。ついに耐え切れずに絵を返そうとしたが骨董屋は移転してしまっていて捕まらず、捨てても絵だけが戻ってくる。たまらずに親しくない友人に譲るも、呪いの効果は持続。写真やアルバムの女学生までその当時の美しいままで襲い掛かって来る。ついにはテレビに映った裸婦像に魅了され、魔界の浴場に引き込まれてしまうのだった。」

 スイッチを切る。ホラーはだめだ。アクションな感じにしよう。ミリタリーな大脱出物語みたいな。『決死の大脱出!』これだな。

 「長期休暇を使ってバカンス! 南の島で5日間滞在の旅。僕のほかにもこの時期いっぱい観光客がきているが、若い水着娘がほとんどだという。一応の施設も整っていて、一度船でたどり着くと絶海の孤島だから外界と完全に切り離されてしまう。この誰にも邪魔されない点が若い女性に受けて大人気とか。実際行ってみると男性客は自分だけだった。ナンパは趣味ではないが、アツイ水着を拝みながら逆ナンなんてされちゃったりして。鼻の下伸ばしながら期待している僕を置いて、船が出て行く。5日経たないと船は来ない。こうして気ままな孤島生活が始まった。早速期待どおりの逆ナンが始まり、僕はすぐにモテモテになったが、話がどうもできすぎている。旅の精はカキ捨てったって、抜かれすぎな感じだ。ここにきただけでいきなりこんなに言い寄られるはずがない。3日目から異変が起こる。娘たちが目の色を変えて僕にセックスを迫る。このままでは身が持たない。この謎を探るべく動き出した僕に立ちはだかるセクシーな美少女たちに、人間とは思えない美しく妖しい化け物が混じるようになっていた。5日経っても迎えの船はない。僕は果たしてこの絶海の孤島から無事脱出できるだろうか。」

 …。却下。次! これで最後にしよう。エロに全然関係ない、神秘的なものとかがいいな。『超霊界 〜死後をさまよう天国と地獄』ン。これだ。さすがに霊界物語な感じでエロはないだろう。本人も大往生済みだし。

 「死んだらどうなる? 願望どおりの世界がキミを待っている! 天国と地獄、キミならどっちを選びます? 天国は文字通り天国。でも…どんな願望も度を越せば地獄だょ! 死神ちゃんの手違いで霊界に迷い込んでしまった青年が、心の底に隠れていた願望が実現する展開に戸惑います。下半身すっぽんぽんの72人のパイパン美少女たちがずっとついてきて、スキあらばすぐに抜かれる天国そのもの。もちろん地獄にも落ちちゃいます。問答無用の逆レイプ、搾精地獄にあえぎながら深みに嵌っていく主人公。魔界に落ちる寸前で神界に助けられますが、そこで待っていたものは女神さまの神々しい肉体だった。魂燃え尽きるピンチで手違いが明らかになりますが、果たして現世に帰ることができるかにゃ?」

 …これは最悪だ。結局何もかもエロに結びついていた。一時間経っても到着しないところを見ると、これを見てオナニーしても精力が回復するだけで罠にはならなそうだし。仕方ないので用意された映画を見ながら孤独な時間を過ごした。

 本当に7時間。やっとエレベーターは次元を超え世界を越え、元の迷路状になっている魔族の塔にたどり着いたのだった。壁がおどろおどろしい。久しぶりに見た感じで、どこか懐かしい淫靡な壁だ。

 目の前に扉がある。カードキーを入れる見慣れたタイプだ。カードを差し込むと扉が稼動し始めた。「ピピピ。認証完了。では問題です。『母』につく枕詞は”たらちねの”ですが、では『女学生』につく枕詞は?」「”萌え制服の”。」

 ピンポンピンポ〜ン! 正解のチャイムが鳴ると扉が開いた。ふっ、この俺様にゃ簡単すぎる問題だぜ。僕は悠々と階段を登って行った。

 ……やばい…、もしかして俺……染まってる??

妖精シリーズ クリア

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