色情霊1−5
 

 相手の実体が見えないのでは攻撃のしようがない。ここは…精神統一して、霊の本質を見極めよう。

 目に見えるものがすべてじゃない。僕は目を閉じた。そして精神を集中させた。そのまま一歩、前に歩み出る。幽霊にしがみ付かれていた筈なのに、体は素直に動いてくれた。目を閉じたまま、その場に座り込み、胡坐をかいた。手を丹田のあたりに納め、呼吸を整える。幻影を振り払い、幽霊の本体を倒す為に。

 「はあっ」粗い息遣いが目の前に繰り返される。

 僕は思いっきり深呼吸していた。精神統一の為に。考えるな、感じるんだ。いや、感じちゃダメか。感じないで感じるんだ。何言ってんだ僕は。何だか段々訳が分からなくなって来た。ってか、さっきからため息みたいな息遣いの音はなんだ?

 目を開けてみる。視界がピンク色に染まった。「こ、これは…」

 さっきからのハアハアという音は、幽霊が吐きかけていたピンク色の息だったのだ。僕は魅惑の吐息を直に大量に吸い込んでしまっていた。

 僕はまた金縛りにあった。いや、もしかしたらこの成分が金縛りを呼び起こしているのかも知れない…

 何よりも、多分さっきは薄い淫気を吸って金縛りにあった為に何ともなかったのだが、今度は濃い淫気を吸い込んでしまったのだ。

 いや、さっきの淫気も結構効いていたのだ。だから幽霊のなまめかしさに勃起したんだった。そして今度はもっと強い攻撃!

 僕は幽霊に魅了されてしまった!彼女の肩、髪の毛、どんな細かい所にも、女の色香を感じずにはいられない。胡坐をかいて座ったまま、身動きがほとんど取れなくなってしまった。

 いや、こんな時こそ、精神統一だ!目を閉じて集中するも、充満する女の色香に心をかき乱されてしまう。セックスの快感の事しか頭になくなっていく…

 むちゅっ

 下半身がヌメヌメした筒に包み込まれた。全身に望み通りの快感が走りぬける。幽霊が挿入して来たのだ。

 どんな状態か、見てみようとしたが、なぜか目が開かない。瞑想のポーズのまま、僕は完全に身動きが取れなくなっていた。

 小指を動かそうとしてみたが、今度は動かない。どんなにがんばってもダメだった。さっきまではちょっとした吐息攻撃だったから、金縛りも解き易かった。でも今度は、連続してピンクの吐息を吹きかけられ、しかも深呼吸して何度も体の奥までそれを吸い込んでしまっている。

 目も開けられず、外で何が行われているのかも分からなくなっている。体も動かせない。そして快感だけが暗闇の視界の中送り込まれて来る。

 挿入されているのは感覚から分かる。オンナの蠢きが、ペニスをしごく動作が、僕の下半身をむさぼっている!僕はまったく身動きが取れない。

 オンナの中でペニスがこねくり回されている。もう感覚自体がなくなって、快感しか感じられなくなっていた。キュッキュウウ…ひときわ締め付けられ、でも僕は悶える事さえできないでいた。

 ヌムヌムヌムヌム…突然もの凄いスピードでオンナがペニスをしごき始めた!まるでフィニッシュ前の手コキのようなスピードだ。こんな速さは今まで味わった事がない。本当に、一体どんな攻撃をしているんだ!

 好奇心が、金縛りを打ち破った。僕は目を開ける事ができた。そして体も動かせた筈だが、目の前の状況に釘付けになり、それ所ではなかった。

 胡坐をかいた僕のペニスをむさぼっていたのは、さっきの妖艶な幽霊の姿ではなかった。いや、コレもあの幽霊の一部なのだろう。だが全身ではなかった。

 胡坐をかいた下半身に乗っかって激しく蠢いていたのは、女性の腰の部分だった。おへそから上、両足の付け根から下は消えていて、まさに腰の部分だけがペニスに張り付いて、宙に浮かんだ状態で激しく上下し、僕のペニスをもの凄いスピードでしごき立てていたのだ。

 これが色情霊の本質だったのか?性欲だけの存在、つまり性器だけの存在!霊的意思によって他のパーツが幻影として作り出され、僕を魅惑していたのか?僕が目を閉じていたから、相手は本質を見せてくれたのか。

 それとも、挿入攻撃に必要なパーツだけを実体化させて、後は消しているだけなのか。

 本質なのかどうか、それはもうどうでもいい。激しい快感に、僕の精力は僅かになっているんだ。

 僕は思わず幽霊のわき腹を両手で掴み、何とか激しい動きを止めようと力を入れた。が、すぐにおへその辺りも消え、僕の手は空を切った。

 残るは、青白く光る性器部分、つまりお尻部分だけだ。その柔らかい弾力をがっしりと掴み、何とか抑えようと踏ん張った。ここは消えない。ここで攻撃しているのだから当然か。

 僕は両手に力を入れ、動きを止めようとした。だが、機械のように素早く上下する腰を止める事はできなかった。おへそ部分が消えた分、動きはますますスピードを上げている!

 僕は彼女の腰を掴んだまま、胡坐をかいて腰をくねらせた。もうイキそうだ。まるで、自分の手で『腰部分』を素早く上下させて、自慰で射精しようとしているみたいな錯覚に陥る。さっきの魅了の効果はまだ途切れてはいない。

 ぷるぷるぷる…

 腰はぐにぐに動き、そして大きく震えた。イッたのではない、止めを刺そうとペニスをこねくり回しているんだ!

 「うあああ!」腰はくるりと向きを変えた。弾力のあるお尻が丸見えになる。そして、上下運動をやめて、箒でゴミを掃きだすようなグニグニした仕草で、前後になまめかしく動いて来た。

 お尻がペニスの周りをスリスリと愛撫する。もう、耐え切れなかった。

 「う!」僕は胡坐をかいたまま、思いっきり射精してしまった。それでも暫く腰の蠢きは止まらず、射精し切るまで離してくれなかった。

 「…」僕は中に溜まっているものをすべて吐き出すと、完全に脱力してしまった。

 腰から足が生え、おへそ、オッパイ、両手、そして顔があらわれた。やっぱりあの幽霊だ。

 幽霊は脱力して仰向けに倒れた僕を上から見下ろし、ふわりと宙に浮いた。僕の真上に浮かんでいる。そのまま高度を下げ、僕の上にのしかかって来た。また視界がピンク色に染まると、不思議と性欲がぶり返して来た。

 それを見計らって、幽霊はさらにペニスを飲み込んだ。僕のおなか辺りにおっぱいを擦り付けながら、あわおどりの要領で体を前後させ、挿入しては離し、また挿入するを繰り返す。完全にのしかかっている筈なのに、重さを全然感じない。

 「男子禁制」の立て札は立派な警告だった。迷い込んだ男は、ひとしきり射精させられ、射精しても次々と不思議な霊力で立たされ、延々と精を提供させられる事になるんだ…

 でも、それでも天国に一番近い墓地なのかも知れない…

###ゲームオーバー###

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