キョンシー2―2


 今の状況のままでは、一方的に攻撃を受け続けてしまう。敵の動きはあまりにもすばやく、強力で、それでいてテクニックに長けており、アンデッドだけに魔力も計り知れない。キョンシーたちは絶えず超高速で動いており、捕まえることはおろか、目で追うこともできないでいる。そして僕の全身を責め続ける手首から先だけが実体化して、それ以外はものすごいスピードで見えなくさえなっているのだ。

 ローションの雨は絶え間なく降り続いている。キョンシーたちのスベスベの手はますますにゅるにゅる感を増し、どこを触られても大ダメージを受けてしまうほど甘美でしなやかな攻撃力を誇っていた。このままでは一方的に抜かれてしまう。

 なんとかして敵の動きを止めなければならない。捕まえようにも、体術では敵にまったく歯が立たない。その姿さえ見えないのだからどうしようもない。それなら、敵の動きを封じるバインド系の魔法が一番いいだろう。

 ただ、魔法のロープで手足の動きを封じたり、魔法の鎖で全身をがんじがらめにしたりというのは通用しそうにない。高度な技ではあるが、敵は魔力も相当なものであり、その肉体を動けなくする魔法であっても、簡単に打ち破って拘束を解いてしまうだろう。魔法のロープで縛っても、強い力で引きちぎられてしまうようなものだ。

 しかも同時に3人も縛って厳重に拘束するほどの、高度な魔法なんて、僕には発動できそうもない。失敗する確率が高く、たとえ成功してもすぐに破られてしまうのが火を見るよりも明らかとあれば、バインド系といっても簡単には相手に通用しそうにない。

 それなら、からめ手でいくしかない。魔法と同時に、催眠を使おう。アンデッドにどれだけ通用するかわからないが、魔法をただ物理的作用として使うのではなく、精神に作用するものとして使うんだ。

 僕は小声で呪文を詠唱しながら、片手を上に上げた。手のひらに魔力が終結する。同時にふたつのことを考えることの難しさを実感する。が、やらなければいけない。

 「テイプバインド!」半透明の魔法の帯が3つ、キョンシーたちの足元に向かう。短い包帯のように魔法の帯は彼女たちの両足首に絡みつき、きゅっと締まって自動的に結ばれる。バインド系の魔法の中でも一番簡単な奴だ。

 「はうあ!」「あいやー!」「ちょっ…」キョンシーたちはバランスを崩した。突然自分の足に包帯が絡みついたかと思うと、開かれた足が無理に閉ざされ、足首で縛られてしまったのだ。転ぶのが当然ともいえる。

 が、さすがに体術王キョンシーだけあって、そんな中でも何とかバランスをとり、誰も転ばなかった。脚を閉じた状態で、僕の周りに突っ立っている。その動きは完全に封じられた。歩けない以上もはや高速移動で目くらましをして一方的に攻撃することができなくなっている。

 が、問題はここからだ。彼女たちならすぐにこのバインドを解くだろうし、たとえ手足までがんじがらめにしてもそれを破るし、破らない状態であってもそのまま十分な攻撃力で動き回れるはず。どっちにしろ、これだけではダメだ。

 「ふぬぬ…」キョンシーたちは無理に足を開き始めた。アンデッドだけにその力はすさまじい。伸縮性に優れ、しかしゴムの1000倍以上の力がある魔法のバインドであっても、彼女たちはものともせずに足を開いた。このままさっきみたいな高速移動だってできそうな勢いだ。「…こんなモノで私たちを拘束できるなんて考えが甘いネ。」「お返しにこのチンケな包帯を足首につけたままこの生足でかわいがってやるね!」「覚悟するよろし。」

 僕は上に上げていた片手を強く下におろした。さらに大量の魔力があふれる。彼女たちの足首を取り巻く包帯が、さらに収縮して、いっそう強く脚を閉じさせようと引っ張る。これでかなりの魔力を消費した。

 「ふん。本当に甘く見られたものね。」「こんなもの…」「キョンシーの力見せてあげるネ!!」キョンシーたちは魔力を放出し始めた。次の瞬間、小さくパキンと音がしたかと思うと、彼女たちの足首に巻きついていたバインド魔法がもろくも崩れ去ってしまった。こんなことに魔力を使わなくても巻きつかせたままで十分戦えたが、僕にキョンシーの有り余る魔力を見せつけたいがために、あっさりとバインドを破壊して見せたのだろう。

 このチャンスを待っていた。僕はひそかに貯めていたもう片方の手の魔力を放出した。これは精神に影響する魔法で、物理的作用は引き起こさない。僕は目を閉じた。

 一秒間に十数回点滅する光が全身から放出される。魔力は洗脳の光となって、キョンシーたちの視覚から脳に到達した。強い光と影は精神に強い作用を及ぼす。しかも、それが魔力に基づく光で、術者のメッセージがこめられていればなおさらだ。

 「あぐ…」「こ、これは…」「ばかな…体が…重い…」キョンシーたちは立ったままゆっくり肢体をくねらせ、手足をゆっくり動かしている。どうやら魔法は成功したようだ。

 詠唱魔法のほうは、あくまでカモフラージュだ。テイプバインドを発動させ、そこにそれなりの量の魔力をつぎ込みながら、キョンシーたちの足を強く拘束してみせる。すると彼女たちは、それが僕の渾身の魔法だと思い込み、拘束を受けたまま余裕で動いて見せたり、さらに一瞬で打ち破って見せたりして、自分たちの魔力の優位を見せつける。そしてそれで、僕の全身全霊の魔法拘束攻撃を簡単に打ち破って完全に魔法勝負に勝利したと思い込む。

 そこが狙い目だった。勝ったと思わせた一瞬に、心理的な隙ができる。アンデッドでも意識がある以上、脳の作用については一定の法則がある。元人間だけに、つけ込むのは簡単だった。

 勝ったと思わせた瞬間に、点滅する強い光を見せ、そこに「体が重くなる」暗示をこめて脳に叩き込んでやったんだ。安心しているところに洗脳光線は耐えられないだろう。…こっちも同時に二つの魔法、詠唱魔法と無詠唱魔法を出して、魔力は枯渇してしまったが。

 とにかく、キョンシーたちの脳は、自分の体が異常に重くなったと感じている。本当に彼女たちの体重が数万倍になったわけでもないし、重力が急激に肥大化したのでもない(そんなことになったら僕のほうが一瞬でつぶれちまう)。が、彼女たちの脳がそのように思い込んでしまい、手を持ち上げることさえままならない状態になっているのだ。さすがにキョンシー自身が強力なだけあって、ゆっくり動くことはできるが、一歩進むのに数秒以上かかる状態では、逃げることも叶わないしあっさり捕まってしまうだろう。

 ようは敵の動きを封じればいいんだ。まったく身動きが取れなくなるように物理的に拘束する必要はない。たとえ思い込みであっても、彼女たちの動きが鈍ければ、少なくとも一方的に責めまくられないですむ。

 キョンシーたちは、とてつもない怪力とすばやい動き、鍛え抜かれた体術が得意だ。だからこそ、自分の体の動きが鈍くなっていることが信じられない様子だった。自分の手足が思うとおりに動かないことが信じられなかった。

 「ぐっ…コイツ、一体なにしたか! 体が重さでどんどん下に引っ張られるヨ!」「信じられない…キョンシーの動きを封じられるなんて!」「絶対何かのトリックね! どんな拘束でも力づくで打ち破れるはずなのに!」

 キョンシーたちは力を振り絞って、見えない拘束を引きちぎろうとしているみたいだった。彼女たちは自分の周りに見えない魔法の糸が絡んでいて、それで下に引っ張られて自分の動きが鈍くなっていると思い込んでいるようだ。

 だが、実際には力がなくなったわけでも、体に重力がかかっているわけでもない。脳がそのように処理をしてしまっているだけなのだ。もちろん、見えない糸なんてものも存在しない。勝手に手足が重くなっているように感じているだけなのだ。

 こちらの作戦は完全に成功した。敵は完全に狼狽し、思うようにならない自分の肉体に困惑の度合いを深めている。反撃するなら今しかない。

 が、3人いっぺんに相手するとなると、いかに敵の動きを封じて一度に数ターンはこちらの自由にできるとはいっても、やはりきつい。ここは石橋を叩いて渡る精神で、一人ずつ着実に倒しておこう。どうせ敵たちはほとんど動けないんだ。待たせていても補助攻撃ひとつできないし、逃げることもかなうまい。放っておいて大丈夫だ。

 僕は残りわずかな魔力で指先にバイブをかけ、キョンシーの一人に向き合って両手をオンナに伸ばした。表面から会陰、お尻の穴周辺まで数本の指がまさぐりながら、微振動で女体の奥にまで快感を与えてやる。それでいて長い指は容赦なく膣にねじ込まれ、半ば乱暴に、それでいて甘美に、絶妙なテクニックで内部の性感帯を余すところなく責め立てた。

 「あふうう! はゎ…は、離すネ!」キョンシーはゆっくり手を伸ばし、僕の手をがっしりと握ってオンナから引き離そうとしてきた。が、こちらのテクニックも相当なもので、キョンシーが受けたダメージも決して小さくはないようだった。どうしても彼女の手に力が入らない。快感で脱力し始めているんだ。ここでしこたま相手の精力を奪って、挿入でトドメを刺すことにしよう。

 「ふん。」僕の手を軽く握るだけの、そんな弱々しい女の手を振り払うのは簡単なことだった。右手はしっかりオンナ内部をかき回したまま、左手だけでキョンシーの両腕を簡単に振り払った。

 「!」「!」「!」キョンシーたちは目を丸くした。そしてお互いに顔を見合わせると、やがてニヤリと不敵な笑みを浮かべた。僕の攻撃を受けているキョンシーだけは目を細めて顔を上気させているが、その視線ははるかに鋭くなった。

 「…なるほど、催眠術か。」「それでなぞが解けたね。」「!」キョンシーたちは不敵な笑みを崩さず、落ち着きを取り戻した様子だ。「…ばれてしまった…。」

 どうしてばれたのだろう。…いや、ばれないはずはないのだ。彼女たちが渾身のアンデッドパワーでもって体を動かそうとしても、強烈な重力がかかって(というふうに彼女たちは感じている)ほとんど動かせないのに、つまりその体は数十トンは軽く越える状態となっているのに、僕がほんの軽い力でその手を振り払ってしまった。

 だから、実際の重さは前と変わらず、重力負荷もかかっていない。もし実際にキョンシーたちに強い重力をかけるとなると、僕の魔力では到底足りないくらい大量のMPを消費するし、魔法としても相当に高度なものとなる。まして、キョンシーたちの膨大な魔力と魔法防御を打ち破って術をかけるなど絶対に無理だ。

 本当は軽いのにキョンシーたちにとって重く感じているのだから、つまりは「思い込み」にすぎないということになる。僕が軽々と彼女の手を振り払ってしまったことによって、この重さの原因が単なる思い込み、催眠術の仕業だということがばれてしまったわけだ。

 しかし、仮にばれてしまったからといって、それがなんだというのだ。催眠術の恐ろしいところは、自分が術にかかっていることを知っていながら、自分ではどうにもできないところにある。アンデッドといえども脳が働いている以上は、同じように「わかっていながら」術に逆らえないもどかしさを味わうことになるはずである。

 催眠術にかかって、たとえば笛が鳴ったら手を上げるよう操作されれば、「絶対手を上げるものか」と思っていても条件反射的に手を上げてしまう。そういうものなのだ。だから、キョンシーたちが術の秘密に気づいたからといっても、やはり彼女たちは自分の体を思うように動かすことができない。

 「おるあああああ!」ここで全員まとめて百烈愛撫攻撃だ。疾風のごとく愛撫の手が、キョンシーたちの乳房を直撃する。巨大なだけに狙いも定めやすい。感じるツボを心得た指さばきが、3体のアンデッドを悶絶させた。それでも彼女たちは、僕の手から逃れることも、すばやく振り払うこともできない。

 「くっ…はあ…」「くやしいある…みえて…いるのに!」「からだ…思うように動かないね。」キョンシーたちはなすすべもない。この疾風の拳であらかた敵の精力を奪って、挿入で止めを刺すのがいいだろう。カウンター攻撃に気をつければ、ほとんど一方的に攻撃を仕掛けられる。あとひとがんばりだ。

 「でも…」「からくりがわかれば無問題ね。」「ふふふ…」さすがに強力なキョンシーだけあって、精力値も半端ではないし防御力もある。簡単には果ててはくれなそうだ。それどころか、彼女たちはここまで一方的に攻撃されているのに、まだ不敵な笑みを崩していない。快感に顔を赤らめながらも、なおまだ秘策を秘めているといった感じだ。

 僕はいつでも後ろに飛びのくことができる体勢をとりながら、ねっとり3体を責める戦法に切り替えた。相手がまだ奥の手を残しているのに余裕で責めを続けるほど僕は愚かじゃない。ゆっくりローション上を滑る手つきは、それでも彼女たちの興奮度を高め、ダメージをじわじわ大きくしていっている。敵がうまく動けない以上、つかず離れずの位置で攻撃を続ければ、この調子なら勝てるかもしれない。

 「!」突然一体のキョンシーが僕の目の前に立ちはだかった。僕は何かされると思って後ろに飛びのいた。いつでも敵を避ける用意をしておいたから、抱きしめられたりつかまったりなどという愚かな状態にはならない。

 「半歩下がっても無駄ね。」キョンシーの目が一瞬赤く光った気がした。僕はとっさに目をそらす。背中がぞっとする。以前バンパイアやブライドと戦ったときにも目が赤く光ることがあった。それはアンデッド技の真骨頂のひとつ。魅了の視線だ。キョンシーにも当然使えるのだろう。

 が、この技は相手の目を凝視しなければ通用しない。光ったと思った瞬間目を反らしたから、技にはかかっていないようだ。

 しかし、あの一瞬だけでも敵の目を見てしまったから、多少の影響はあるのかもしれない。あの瞬間背筋がぞっと凍りついたのもそのためだろう。といっても、今後敵の目を見ずに戦えば済む話だ。何のことはない。キョンシーの奥の手はこれだったのか。

 よし、これなら勝てる。僕は彼女たちの目を見ないようにしながら再び百烈愛撫をくり出そうとした。

 「あっ!」さっきとは別のキョンシーが前かがみになって僕の顔を覗き込んだ。えっと、今僕は何をすればいいんだっけ。しまった、目を反らすんだ!

 チカッとキョンシーの目が光った。一秒ほど遅れて僕は目を反らした。背中に氷が当てられたような強い寒気を覚える。えっと、今一体なにが起こったんだろう。

 「くすくす…お前ももうおしまいある。」「な…んだと…!?」「3×4÷2は?」「…え?」「計算してみるよろし。」「えーと…」

 3かける4だから、えっと、なんだったっけ。九九で覚えたはずなのにド忘れている。さんし…さんし…さんし…うー…さんし…いらっしゃい…。と、とにかく、3を4倍すればいいんだから、3たす3で6、これにあと2回3を足すんだな。6たす3で、7、8、9。9にもう一回3をたすんだから、えっと、…んー…10…11…12…

 「わかった! 12だ!」「おっと残念。」「ぜんぜん違うね。」「えっっ!!」「それをさらに2で割るよろし!」「はうあ…」

 あーーー…割り算ってどうやるんだろう。12を…二つに分けるん…だよ…なあ…あれ?

 「ちょっと待て。何をやってるんだ僕は。」「無理もないある。いまお前は極度に思考が鈍っているね。」「なっ…」「思考速度が極端に低下し、単純な計算でも満足にはできなくなている。」「記憶も上手には引き出せない。つまりバカになってるある。」「…。」

 あ、わかった。12個をふたつに分けて、6個にすればいいんだ。…! 何でいまさら計算の続きなんか…!

 だめだ、本当に思考が鈍っているらしい。さっきの赤い光のせいか。「これでおあいこね。」「私たちの視線は魅了じゃないよ。瞬間催眠ね。」「…!」「お前は魔力をほとんど使い果たして私たちを催眠にかけたみたいだけど、そんな芸当私たちなら一瞬ある。」

 なんてことだ、僕は簡単に、一瞬目が合っただけで、催眠にかけられてしまったというのか。「はじめの催眠は思考スピードを極端に落とす催眠。これによってお前は、次のキョンシーの視線をかわすのが一瞬遅れたある。」「そして私が放ったのは、体の力が時間を追うごとに抜けていく催眠ね。そろそろ立っているのもつらくなっているはずね。」

 たしかに体に力が入らない。膝ががくがく笑っている。手を持ち上げようとしても筋肉が動こうとせず、うまく動かせなかった。

 「そして最後は…」最後のキョンシーが目を光らせながら、僕の顔に近づいてきた。「目はあけたままにするよろし。」そしてキョンシーは僕の唇を奪い、僕の目を見ながら唾液を吸った。僕は間近でキョンシーの目を見ながら、彼女の唇の柔らかさを存分に味わった。

 「最後のは少し多く魔力を使う。でもキョンシーなら簡単ね。」「う…うう…」何か大事なものを、どんどん忘れていっているような気がする。思考がどんどん鈍っていった。

 「たしかにお前の催眠は強力。簡単には抜け出せそうにないね。…それも時間が経てば消えるはず。」「それでも、お前のほうがもっと強い催眠にかかってる。この勝負決まったも同然ね。」「特に最後のは飛び切り強力よ。」

 僕は力が抜けて思わずその場に崩れ落ちそうになった。「おっと、まだ倒れるのは早いある。」キョンシーたちが僕の周りを取り囲み、そのしなやかな手で僕の肩を支えてくれた。おかげで倒れることはなかったが…

 「あ…ああっ!」キョンシーたちの手のひらが僕の肩を覆っている。そのスベスベしたやわらかい感触は、僕の血を電撃のように逆流させ、じわっと心地よさが駆け巡る。

 「最後の催眠は強力。女の肌の感触を数倍心地よく感じる。」「脳が必要以上に柔肌の感触だけに反応する催眠ある。これで女の体のどこもかしこもに対して必要以上に感じることになる。」「しかもキョンシーの肌は普通の女体とは比べ物にならないくらい極上。お前に耐え切れるとは思えないね。」

 肩をつかまれているだけで、まるで初めて女性に触れられたみたいに電撃が走る。いや…ひょっとして本当に初めてなのではないかとさえ思えるようになってきた。いままでずっと女たちと戦ってきたはずだが、こんな風に肩をつかまれたことがあっただろうか。いや、あったはずなのだが…これまでの戦いがどんなのだったか、あまり思い出せなくなってきている。

 「さあ、思考も記憶も相当に低下してるお前は、この世界に足を踏み入れて始めて交わった相手を思い出すことができない。」ああ…そういえば、ずっと前にここに来たときに初めて戦ったのが誰だったか、僕の童貞を奪ったのが何者だったのか、まるで思い出せない。

 「思考が低下するということは、それまでのテクニックも攻撃力もみんな忘れることと同じ。魔法だってもう使えない。」「そのうえ、女性の肌に過敏に反応するようになっては、防御力もたかが知れることになる。」「もちろん、これはすべて催眠。時間が経てばだんだん元に戻るね。実際に経験が記憶から抜け落ちてレベルが下がたわけではないからね。」「だから、総勢力だけは高いままで、なかなか射精にはいたらない。」「…。」

 「そこで脱力の催眠ある。反撃を抑えておけば、精力が高くてもそのうちイクね。三重の催眠に苛まれたお前はもう、攻防すべて奪われ、なすすべもないある。」「私たちはもうローションでまみれてる。たっぷりかわいがってやるね。気持ちよくなるよろし。」「その前に…見るね。」

 キョンシーたちは手を伸ばして僕の肩を支えながら、自慢の巨乳を上下に揺り動かした。キョンシーは手を使わずにおっぱいだけを左右別々に上下させることができる。むにむにとやわらかそうに動く乳房が6個、僕に向けて大きく蠢いている。

 手のひらの感触も、大きな乳も、くびれた腰やてかてか光るきめの細かい肌も、むっちりしていながらすらりと伸びたふとももも、毛の生えていないオンナ表面も、どこもかしこも初めて見たときのような美しさとなまめかしさを具えていた。「ああ…」強い欲動が全身を突き抜けた。

 「お前の性的な記憶はほとんど残っていない。だから、私たちの肢体は初めて見るときの新鮮な驚きと感動にあふれているはず。しかも極上のキョンシー!」「うああ…」股間が激しく疼いた。

 「ふふふ…」キョンシーの一人が僕の腕をがっしりつかみ、しっかり固定した。脱力していることもあって、僕は一切抵抗できない。足は完全に脱力してぶらぶらしているが、キョンシーはその体をたった一人で支えている。残り二人は不敵な笑みを浮かべたまま僕にさらに近づいてきた。

 「これはどうね?」「あああっ!」二人のキョンシーは僕の左右にぴったりはりつき、ふとももを僕の足にむにっと押しつけてきた。その生足の感触は、ずっと味わい続けてきたはずなのに、まるで初めてのときのような新鮮すぎる感覚だった。シコシコする柔らかい足がみっちりと僕の足に密着している。

 「さらにこうしてやるね。」左右のキョンシーが腕を組んできた。正面で支えていたキョンシーは手を離す。きめの細かい女性特有の腕のぷるんとした感触が僕の腕に刻みつけられる。これも初めての感覚だった。左右から密着している心地よさ。女の人の肌触りってこんなに心地よかったんだ。

 「次はこうある。」正面にいたキョンシーが後ろに回る。彼女も催眠術がかかっているのでゆっくりしか動けないが、それで時間がかかる分、僕は左右からの女体の感触を長く味わうことになった。後ろに回ったキョンシーは自分のヒップを僕のお尻にむにゅっと押しつけてきた。「女のお尻はすごくやわらかいね。」「うああ…」

 やわらかさだけではない。直接こすれあう肌触りが、通常の何倍も心地よく感じている。僕の精力がどんどん減少していく。催眠にかかる前なら、こんなにはダメージを受けなかったはずだが、今となっては、体内の性感神経が過敏になり、初めての滑るような肌触りに脳天がしびれる。

 まるでセックスのことを何も知らない男が、女に触ったことも見たこともない多感な青年が、いきなり強力な女モンスターに密着されているようなものだった。もし精力が人並み外れていなければ、これだけで射精してしまっていたかもしれない。

 「これでどうか!!」突然3人は全方向から僕に抱きついてきた! 3方向から女体に包まれる。胸もふとももも腕も、すべてが僕を包んでくれた。ペニスは柔らかいキョンシーの腹部に密着している。

 そして彼女たちはぎゅっと密着したまま、自在に乳房だけを動かしてきた。大きな乳首のくすぐったい感触が僕の上半身をかわいがる。僕はキョンシーたちに包み込まれたまま、ただ力を抜いて、通常の数倍の肌触りを楽しむほかはなかった。肌の細胞に食いつかれているような、それでいてローションのおかげか滑らかに滑っていく肉体が、僕の全身を包みながらしっかりと快感を刻み込んでくる。

 女性特有の腕もわき腹もおなかも、すべてが心地よかった。その上強力な武器となっている手のひらや甲、指先、乳房や太ももが、容赦なく僕の体をすべり、その独特の心地よい肌触りを送り込み続けている。それでも、まだまだ射精には程遠いくらいに精力は残ってしまっている。

 「肉体が自動回復してるか。」「さすがにこのステージに来られるだけのことはあるね。精力も相当量に上っている。」「ふふふ…その分、射精までの間を長く楽しめるある。」「くすくす…」

 自分のレベルが恨めしい。とっくに果てていてもおかしくないのだが、この肉体変化はあくまで脳の思い込みであって、体そのものは高レベルのままなのだ。魔力が枯渇しているので効果は低いものの、精力は回復し続けている。一定以下になると自動的に回復されるようにしてあったのだった。といっても特別な儀式や魔法を使ったのではなく、それだけのレベルになってくると自動的にそういう体になってしまう。

 達人はその体を戦闘向けに自動的に改造されるというが…今の僕がまさにそうだった。セックスバトルに最適な肉体が、これまでの戦いで作り上げられてしまっている。当然、精力も相当に高い。そもそも密着されただけで出してしまうようなレベルではないのだ。それだけに、なまの女体の感触に長く悶絶させられる羽目になっているわけだ。

 「さあ、どんどん激しくしてくアル!」僕は仰向けに押し倒された。もはや体に力がまるで入らず、なすがままになっていた。すかさず僕の顔の上にキョンシーの乳房が乗せられた。おっぱいは顔面をすべり、巧みに頭の下に入り込むと、ぐいっと頭部を持ち上げた。僕はキョンシーの任意で動くおっぱいを枕にして寝かされる格好となった。

 別のキョンシーがにゅるんと僕の上にのしかかってきた。3人目は僕のふとももにまたがっている。「キョンシーの女体を存分に味わうよろし。ローション踊りね!」

 「はうああ…気持ちいい…」僕は思わず悶絶のため息を漏らした。ニュグニュグと音を立てながら、キョンシーの裸体が僕の上で前後に大きく滑りまくっている。体をくねらせるようにして、仰向けの僕に満遍なく柔らかい肢体を押しつけこすりつけ、滑りまわっている。

 プルプルの大きな乳房がすばやくグラインドしながら、ローションに空気を含ませて僕の体を《洗って》くれている。おっぱいは僕の首も肩も、胸もわき腹も、おなかや腰、(キョンシーのまたがっていない左足の)ふとももや脛、足の裏にいたるまで、満遍なく滑ってはスベスベとなでさすり、柔らかさを刻みつけながらしっかりくすぐり性感を刺激する。

 その上彼女の腕やおなかや舌やふとももが、乳房の攻撃をサポートするように柔肌の感触を僕に刻み込む。ペニスにも容赦なく女体が押しつけられ、ぐにぐにと滑り続けている。

 乳房を枕にさせているキョンシーは僕の首筋をなでたりキスをしたり、頬をさすったり、美しい顔を傾けてやさしく「なあに?」といわんばかりに微笑んできたりしている。無言ではあるが、女性らしい優しさで「気持ちいいの?」と確認してくれているみたいだった。それでいてうごめく枕は僕の理性をとことんまで削り取っていった。

 僕の右足にはりつき、にゅるにゅるのオンナ表面をこすりつけ続ける美女キョンシーは、恍惚の表情を浮かべながらも、しっかりと表面のなまめかしい感触を僕の右足に刻みつけ、ふとももを両手で愛撫しながら時折玉袋をさすってくれたりした。

 ローションのいやらしい音が響き渡る。大きく激しく動き回るキョンシーは、催眠のせいで高速でローション踊りをすることはできないものの、逆にゆっくりねっとりした動きで存分に女体を刻みつけることによって、僕の精力を確実に削り取っていった。魔力が枯渇したあとの自動回復ごときで追いつくものでは到底ない。

 さらにローションの雨は容赦なく僕たちの上に降り注ぐ。彼女たちのもち肌はさらに攻撃力を増し続け、その一方で僕の女肌に対する耐性はどんどん低下していく。僕は枕の美女のやさしい目を見つめながら、上に乗って大きく動くキョンシーに精を削られるに任せるしかなかった。

 何とかして脱出しなければという思いはあったが、どうすれば脱出できるか、反撃の方法はあるか、そんなことは一切考えられなくなっていた。思考力が著しく低下しているために、頭を使って脱出する方法など考えもつかないことなのだった。退路は完全に封鎖されていた。

 催眠で攻撃されるなど、キョンシーの長年の経験の中では、飽きるほど味わってきたのだろう。そしてとっくの昔に、対処方法を編み出し、男を手篭めにしてきたんだ…ちょうど今の僕のように。

 「存分にキョンシーの体、味わったか。」「そろそろ本領発揮ね。」そ、そんな…これでもまだ本領ではなかったというのか。「これから一気にお前をイかせてあげる。覚悟するよろし。」

 キョンシーたちは持ち場を離れ、僕の股間に群がり始めた。そして… ぐにい! 「うああ! 柔らか…!!」

 キョンシーたちは3方向から、大きな乳房でペニスを包んできた。仰向けでいきり立っている棒を中心に、3方向からの谷間が押し寄せ、すっぽりと3人の乳房の中にペニスが挟みこまれてしまった。上半身をぐいぐい引き寄せて、弾力のある乳の感触を強く強くペニスに押しつける。

 おっぱいは手を使わずに自在に動かすことができる。ゆっくりと3人の乳が上下に動き始めた。するとペニスは3人の胸の谷間をあちこち行ったりきたりしながら、3人分のパイズリに挟まれ翻弄され、柔らかくしごきあげられた。

 キョンシーたちは一斉に僕を見て、妖しくも癒されるような妖艶な笑みを浮かべた。「気持ちいいか?」「このたっぷり魔力を秘めたおっぱいをたっぷり味わうよろし。」ペニスはあちこちに振り回されながらも、ひっきりなしに満遍なく、根元から先っぽまで、やさしく心地よくしごきたてられている。そのすべりのよさは、ローションのせいだけでなく、キョンシー独特の乳房の妖気によるものでもあった。「この膨大な魔力の出所は、永年におよぶ男たちの精ある。お前もその中の一人となるね。」「さあ、私たちの谷間の中から噴水を吹き上げて見せるよろし!」

 「うあああ〜…」乳房の動きが少しずつ早くなっていく。特に魔力の集中した乳房は、あまり催眠術の影響を受けていないのか、あるいはこれで十分に重力を受けた(と思っている)状態なのか。手も使わず、内部に筋肉があるわけでもなく、もっぱら魔性のパワーだけで、上下に激しく動いては棒を心地よくこすりあげてくれる。

 もちろん左右のおっぱいが別々に動く。挟まれたペニスは左右交互のしごきあげ攻撃に悦び、ぴくぴくと快感に打ち震えている。キョンシーたちの乳首も、ペニスの敏感なところを容赦なくくすぐっているし、胸の大きな肉は玉袋までも滑って、中に溜まった精子を押し出そうといやらしくうごめいている。

 「ほれほれ。まだ出さないか。」「すでに一秒で平均四回上下しているよ。こんなにこねくり回されて、もうイキそうあるね。」「キョンシーのトリプルパイズリは無敵。さっさと出すよろし。」「ああっ!」

 ペニスは3人の乳房に埋没してしまってこちらからは見えない。が、先っぽから根元まで快感一色に染め上げられながら、ぶるぶるとあちこちに動いてはキョンシーたちのおっぱいに包まれている感触だけは伝わる。

 キョンシーたちは乳房だけを激しく動かしながら、空いた手で玉袋や会陰、お尻の穴、内股をスベスベの手でなでさすった。さらにその手は上半身にも容赦なく伸び、わき腹や乳首など、男の感じるところはすべてかわいがられた。

 「さあっ、出してしまえ!」ひときわ強く全方向からおっぱいがペニスを圧迫する。膨らんだ乳首がカリの敏感なところにぴったり当たり、小刻みに乳首だけが上下左右に猛スピードで動く。おっぱいの圧迫・締めつけと、敏感なところへのピンポイント攻撃で、残りわずかとなっていた精力は完全に削りきられてしまった。

 「んあっ!」白濁液が勢いよく、キョンシーたちの乳房の中央から飛び出した。脈打つたびに鉄砲のように濃い体液が上に吹き出し、また飛び出しては、重力に従って下に落ちてくる。溜まりに溜まっていた精液は一分近くも噴水を続け、その間もゆっくりやさしくうごめくパイズリが射精を助けてくれていた。

 何も考えられなくなっていた僕は、ますます思考が停止した。射精するときの絶頂感と、何もかもがどうでもよくなるような開放感に酔いしれていた。噴出した精液はローションからも浮き上がり、濃く粘ついたまま大きな乳房の上に落ちていった。文字通り胸に命の花が咲いた状態だ。

 にちゃあ…キョンシーたちのおっぱいがペニスから離れた。体液とローションで、名残惜しそうに糸を引く光景がなんともいやらしかった。「たっぷり出したね。」「そろそろ催眠も解ける。」「今度は動きの鈍いキョンシーではなく、スピード100%の体術を受けてみるよろし。」

 お互いの催眠が解ける頃には、僕のほうは別の変化が起こっているだろう。もはや射精するだけの存在となり、快感を味わう以外何もない、死にも等しい状態が訪れるのだ。だが、死が永遠の消滅であるのなら、これからの状態は、永遠の性感が残る。相手は星の数ほどいる。この世界で、僕は女たちと交わりながら、人間としての生を捨て、その代わりに至高の永遠を手にするのだ。

 キョンシーたちのほうが早くスピードを取り戻した。仰向けで脱力している僕の股間に猛スピードの6本の手が襲い掛かる。射精直後の強烈な女手の快感によってペニスは無理やり立たされ、そのままスベスベの手のひらの中で爆発させる。それでも枯渇せず、それどころかますます射精したがるペニスに、だんだん変えられていくのがわかった。

 敗北感よりも、もうすぐ訪れる最高の状態に胸を躍らせるのだった。

###ゲームオーバー###

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