スプレーはどうにか手を伸ばして取れそうな位置にある。多分掃除娘からも同じような位置にあるだろう。あるいは、わずかに掃除娘寄りなのかもしれない。とにかく力づくで手を伸ばしても取れるか取れないか分からない情勢で、掃除娘のほうがスプレーのありかを確実に分かっているのであれば、ただ闇雲に手を伸ばしただけでは不利になる。それで彼女のほうが先にスプレーを取ってしまったら一巻の終わりなのだ。
それなら別の手を使うしかない。僕はいくつか覚えた初級魔法で応戦してみることにした。まだ魔力も精神力もそれほど強いわけではないから、何でも思ったとおりの結果を出せるわけではないが。この異世界ではある程度の精神の力があれば魔法だって使える。鍛錬を積み重ねれば強化も可能だし、高度な呪文だって使えるようになるんだ。
とにかくあれこれ試してみよう。まずは一定時間相手の動きを遅くするスローダウンだ。僕は呪文を唱えた。何とか効果はあったようだが、持続時間はたったの10秒。これではなんの意味もないな。次に直接ホイホイの粘着を無効化するよう魔力を注ぎ込んでみた。こちらは反応なし。やはり高度すぎる操作のため、まだ僕には使えないみたいだ。
「んしょ、んしょ…。」掃除娘は懸命に手を伸ばしている。その手はもう少しでスプレーに届くみたいで、あと一息の雰囲気だ。早くなんとかしないと脱出されてしまうぞ。
それなら、こちらの力を数倍にする呪文だ。10秒でいいから、剛力を得る。僕はパワーアップの魔法を使った。すると力が2倍になる。10秒間、倍の力になるのがやっとだ。力づくで手を伸ばしてスプレーを取りにかかった。スプレー缶の一部に指先は届くものの、完全に奪うには全身を動かさなければいけない。二倍の力を得たくらいでは、ホイホイの粘着力に抵抗できるものではなかった。この方法もダメだ。
こうなったら、無理にでも粘着液を焼ききってしまおう。僕は魔力を一点に結集させ、マジシャンズレッドの呪文を唱えた。細い糸のような熱線が僕の体の下を通り抜ける。魔法なので術者に熱は伝わらない。数千度の炎の糸が僕の体の下を通り抜けて、ホイホイを切断した。これで抜けられるか?
だが、一瞬は溶けて切れるものの、粘着液はすぐに冷え固まり、ふたたびくっついて僕の体を捕えて離さない。完全に焼ききるほどの高熱・広範囲の炎系魔法は危険だ。この方法でも脱出は難しそうだ。
そうこうしているうちに掃除娘のほうは、スプレー缶に手が届いたようだ。もう時間がないぞ。この方法は失敗だったかな…。戦慄が走る。
これでだめならもう、勝ち目がない。僕は最後の賭けのつもりで、アイス系の魔法を使ってみた。ぴゅううう…「ひえっ!」炎系と違って、こっちは冷たさが伝わってくる。ヘタをするとこっちの体が凍っちまう。とにかく粘着液を凍らせ、衝撃を与えて粉々に砕くことができれば成功だ。
パリィン! 軽い音がしたかと思うと、いとも簡単に粘着液が割れてしまった。体の下が氷点下になったとたん、その部位は乾燥したみたいになり、少し動いただけでホロホロと崩れ落ちるのだった。
僕はすかさず起き上がり、掃除娘が掴んだスプレーを取りあげた。氷系の魔法は有効だった。凍らせると固まるどころか、水分がなくなって簡単に朽ちてしまう構造だったんだ。取りあげた小さなスプレーには「ひんやりスプレー」と書いてあった。
「…なぁんだ。特殊な液かと思ったら、気化熱で対象を凍らせるだけの簡単なスプレーじゃん。なるほど、このホイホイは低温にすれば脱出できるってわけだな。」「はうあ…しまった…」掃除娘はまだ脱出できないでいる。
「…ン? ポケットにもうひとつスプレーがあるな。」「あっ! それはだめ! 絶対使っちゃダメ!」「なんで?」「だって、それはホイホイの粘着力を何十倍にもして、石膏のように固めてしまう危険なスプレーだから!」「ふうん。教えてくれてありがとう。」「あ!」
やっぱりコイツはアホだ。僕は『危険』と書かれた方のスプレーを掃除娘の周囲に吹き付けた。そのとたん掃除娘は完全に身動きがとれなくなった。周囲を指先で触ってみると、なるほどセメントのように硬くなっている。これじゃあ指一本動かせねぇな。もし掃除娘が先に起き上がって僕にこのスプレーを使われたらと思うとゾッとする。
とにかく、だ。このホイホイ合戦を制した者が結局セックスバトルを制する。相手は完全に身動きが取れなくなり、最後まで一方的に責められるからね。掃除娘はいまや、敗北したみたいに体が動かないでいる。さて。どうやってかわいがってやろうかねえ。
そうだなあ…。これまでコイツの道具攻撃には散々な目に遭ってきたからな。ここは逆にこっちが道具攻撃でいたぶって、今まで掃除娘がしてきたことを存分に反省させてやるのがいいと思われ。
僕はバイブレーターを思念した。思ったとおりのものを取り出せる世界だ(ただし高度なものを出現させるにはそれだけ魔力が必要)。簡単なバイブ程度なら十分取り出せる。
簡単な構造のローターがあらわれた。うん、これで十分だ。僕はその小さな器具を掃除娘のオンナに挿入し、おもむろにスイッチを入れる。「にゃああっ!! やめれええ!」掃除娘は悶絶している。だが身を捩じらせることもできないので、ダイレクトに受ける機械的な振動は女体にはかなりきついはずだ。
僕はもうひとつローターを思念した。そしてアナルに入れてスイッチを入れる。こっちは少し高度なヤツで、自動で数種類の振動に切り替わるスグレモノだ。やっぱりオシリはこうでなくちゃ。
「ひゃああっ! だめえ、抜い…てえっ! んに゛ゃ!!」「はっはっは、どうかね掃除娘クン。御自分が得意の道具にいたぶられる気分は。」オンナのなかで刺激を加える単調な振動と、これに似合わずアナルのほうでは絶妙なタイミングで大きく小さく切り替わる複雑な振動がうまくマッチして、相乗効果で女体の奥深くに埋没したすべての性感神経までが共鳴し、彼女の精力を徹底的に削り取っている。もはや掃除娘は声すらも出なかった。
「あが…が…」やがて彼女は、震えることも許されずに機械にイかされてしまった。一方的な攻撃で脱出できなくなり、あっけなく勝敗がついてしまった格好だ。
どうせ掃除娘は小一時間動けない。僕は低温スプレーを吹き付けて彼女をホイホイから引っ張り出してやる。石膏化しても構造は同じだから、冷やせば剥がれるのだ。ホイホイなどという物騒なものはたいへん危険なので、魔法で全体を凍らせて完全に無効化しておく。
「さて。恒例のお仕置きタイムといきたいところだが、動けない女の子にえっちないたずらをするのはさっき存分にやってしまったから、どうしようかねえ。」「じゃあ解放で。もう十分いじめたでしょ。だから…」「だあっ! だめだめだめえ!」僕は掃除娘の顔のまん前でぷるぷると首を横に振った。だんだん楽しくなってきた。お仕置きタイムはこうでなくちゃ。
「いいこと思いついた。」「絶対悪い事だ! ろくでもないに決まってるぅ!」「何を申すか掃除娘。もっときれいな女にしてやろうという僕の親切心が分からぬか。」
僕は思念して大きめのスプレー缶を取り出した。でもスプレーではなく、泡状のムースが出る。「脱毛クリームというのを知ってるかね。キミのことだからせっせとスネとかを剃っているんだろうけど、これはそんな手間なしに塗るだけで毛穴の奥からすべての無駄毛を根こそぎ溶かしてしまうすぐれた製品であります。普通のクリームは表面だけだけど、これは奥まで染みこむ強力タイプでござい。」「あ、私それ嫌〜い。ものすごく沁みるんだもん。」「うんうん。沁みるよなあ。痛いよなあ。そりゃあ毛を溶かす刺激物がたっぷり含まれてるから当然だよなあ。てか肌の質が合わないんだなあ。」「私デリケートなの。デリケートに扱ってね。お願い。」「だあっ! だめだめだめえ!」
と、いうわけで、僕は動けない掃除娘の全身に薬剤を塗りたくっていった。「あだだだだ…沁みてきた! やめ…」痛みをこらえようにも身動きが取れない。スネは戦闘前ということでキッチリ剃ってきたようだが、目に見えない毛穴の奥では毛根が残っているから、そこに染みこんだ薬剤が沁みるらしい。かなり痛いだろう。
腕も同じだ。背中にもうぶ毛はある。武士の情けで、首から上はカンベンしてやる。脇の薬剤が効いてきたとき、掃除娘は苦悶の表情を浮かべた。ここは異世界だから、沁みるといっても泣き叫ぶほどではない。大怪我をするような事態に巻き込まれても案外平気だったりするのだ。それでも毛を抜くのは痛いだろう。
で。問題は、だ。やっぱりアソコの毛だよなあ。一番太くてぎっしりで、しかもデリケートだ。ここはお仕置きタイム、やっぱりキッチリ処理をしておくか。そんなハズカシイ格好ではふたたび生えてくるまで僕の前に姿は現せまい。ふっふっふ…
僕は念入りにアンダーヘアに薬剤を塗りたくった。「ぴぎゃあ!」股間はびりびりした強烈な刺激で、熱を帯び赤くなってきている。現実世界でこんなことをしたら気絶ものだな。一本一本抜くのも拷問さながらだ。異世界ゆえ痛みは相当に軽減されてはいるものの、やはり相当の痛みのようだ。ガムテープとどっちが痛いかなぁ。人の痛みは分からんなあ。
少し時間をおいて、僕は彼女の体を丹念にふき取ってやった。浮き上がった毛が面白いようにふき取られていく。最後に水をかけて乾いたタオルで拭いて仕上げ、と。全身赤くなった掃除娘の裸体が情けなく横たわっていた。薬剤はなくなっても、肌に合わない薬剤のためかひりひりした痛みはしばらく続いているみたいで、掃除娘は羞恥と痛みで顔まで真っ赤だった。
「これで裸の中の裸となったわけだな。因幡の白兎状態だ。こんな姿じゃあ、しばらく僕の前に姿は現せまい。」「てめえ…」「ガムテープにしなかっただけありがたいと思いなさーい。僕は優しいんだ。はっはっは。」
悔しがってもまだ掃除娘は動けない。向こう数時間は痛みに悶絶することになるだろう。こうやって戦闘に負けると罰を受けることをしっかり覚えさせれば、余計な戦闘を避けることができるというものだ。僕はうめいている掃除娘を背にふたたび歩き出して行くのだった。
(掃除娘5 クリア)