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ナメてる戦隊フザケンジャー!


第1話 危機再び!



 ここは魔界の最奥部。魔物でさえ滅多に立ち寄らない、氷漬けの極寒の地である。そこに暖房設備の整った小さな小さな家があった。…物語は、この小さなあばら屋からスタートする。

フローリア:「…カリギューラ様。」

カリギューラからの返事はない。

フローリア:「カリギューラ様。…カリギューラ様!」

カリギューラ:「…そんな大声を出さずとも聞こえておる。今度は何だ。」

フローリア:「…まだ寝ていらっしゃるのですか。あれからもう20年近くも経ちますよ。」

カリギューラ「あのときのことは言うな! たった20年ではちっとも腹の虫が治まらぬ! ぬぐぐ…また思い出してしまったではないか! ぐやじい〜〜!!」

フローリア:「…。」

カリギューラ:「私は待ったのだ! 待ち続けたのだ! それこそ気の遠くなるような時間を! 何千年という時間をだ! やっと種が蒔けると思った矢先に、ポッティのやつめ…! 邪魔しおって! もういやじゃ! こんな屈辱、立ち直れぬわ!」

フローリア:「…だからといって、十数年もふて寝しっぱなしで、悔し涙を流しながらBLEA●Hを読まなくたっていいじゃないですか。 」

カリギューラ:「この話は完全に収拾がつかなくなって未だにずっと続いておる。とにかくこれを読むと現実を忘れることができるのじゃ。もういいから放っておいてくれ!!!」

フローリア:「いえ、それが…。お客様です。」

カリギューラ:「何だと?」

フローリア:「ですから、お客様が訪ねていらっしゃっていますので。」

カリギューラ:「…私はもう誰とも会いたくない。むろん、フローリア、おまえともだ。帰ってもらえ。おまえも帰れ。」

フローリア:「しかし…」

カリギューラ:「くどい! 誰とも会いたくないと言っておろうが!」

フローリア:「…お客様はヘルサ様なのですが…」

カリギューラ:「なっ、何だと!?」

 カリギューラはがばっと起き上がった。顔色が一変している。

カリギューラ:「あのちんちくりん女魔王か!? なぜあやつがここに来るのだ! やつの居城はここからは8000光年は離れておるではないか!」

フローリア:「あの…カリギューラ様、ここは以前の広い邸宅ではなくて、カリギューラ様の隠れ家ですので…その…声は家中に筒抜けになるので。」

カリギューラ:「あっ…」

 フローリアの後ろから小さい女の子がぴょこんと姿を現した。

ヘルサたん:「口は災いの元。ちんちくりんで悪かったわね。」

カリギューラ:「へ、ヘルサ…おぬし、いつからここにいた!?」

ヘルサたん:「んー、フローリアちゃんがブリチンがどうのとか言っているあたりから、勝手にお邪魔しちゃった。てへ☆」

カリギューラ:「うぐぐ…な、なぜ、私の隠れ家に…しかもどうやって…?」

ヘルサたん:「全く、カリギューラちゃんったら、例の計画が失敗したからって、こんなところに引っ込んじゃって。雪女でさえ凍える絶対零度の世界だから、誰にも見つからないと思ったんでしょうけど、おあいにくさま、魔王クラスならみぃんな知ってるわよ? カリギューラの計画が失敗したのは噂になっているし、マンガを読むための隠れ家がここにあることもみんな知ってるよ?」

カリギューラ:「ぬうう…。そ、それで、こんなところに何の用なのじゃ。私はもう誰にも会いたくないのだ。わざわざこんな遠くまで遊びに来る酔狂につきあってなどおれぬわ。悪いが帰ってくれ。」

ヘルサたん:「あら。私の開発した瞬間移動装置を使えば、距離なんて関係ないわ。何千億光年離れていようとも、的確に目的地に一瞬でワープできる。…もっとも、人間界などの異世界に行くことはこの装置では無理だけどね。それに、あたしはここに遊びに来たんじゃないよ。人間のマンガには興味ないし。」

カリギューラ:「ではなぜ…」

ヘルサたん:「その前に。二人とも、あたしのことはヘルサでもヘルサ様でもなくて、ちゃんと『ヘルサたん』って呼んでって何度か言ってるじゃない。この呼び方が一番気に入ってるし、キャラにも合ってるんだから。これは絶対守ってね☆」

カリギューラ:「くっ、なにがタンだ、そんなちゃらちゃらした子供っぽい言い方など…」

フローリア:「か、カリギューラ様、今はこのお方に口答えは…」

カリギューラ:「うっ…。そ、そうであったな。わかった、以後気をつける、へっ…ヘルサたん。」

ヘルサたん:「うん。それでよし☆」

 ヘルサ、もとい、ヘルサたんは、カリギューラの居城からも隠れ家からも遠く離れた、魔界の一角に居城を構えている魔王クラスの淫魔だ。魔界の中でもトップクラスの実力者であり、遠くまでその名がとどろく強力な魔王である。彼女は元々ロリキャラが好きで、自分自身の姿を幼いままとどめている。その魔力も相当であり、種の計画に力をつぎ込む前のカリギューラと互角であった。

 また、ヘルサたんはシステマチックなものが好きで、機械をいじったり、発明をしたり、自分の周囲を魔物の組織で固めて体系化したりして、どんどん勢力を拡大していった。今や彼女の組織は魔界でも指折りとなっている。

 種の計画にほとんどの魔力を費やし、敗北しふてくされた燃えカスである今のカリギューラでは、どう逆立ちしてもヘルサたんの実力の足元にも及ばないのが現状だ。カリギューラが種に魔力を費やしている間、ヘルサたんの方は徐々に勢力を拡大し、組織を大きくしていった上、自分自身の魔力もどんどん蓄積していったからである。

 元々、カリギューラとヘルサたんとはほとんど交流がなかった。数百年〜数千年に一度くらい、ちょっとした挨拶で顔を合わせたり、一言二言、言葉を交わす程度だった。もちろん、ヘルサたんはカリギューラが壮大な計画を実行中であることは知っていたし、カリギューラもヘルサたんが魔界でも相当な勢力を誇る存在であることを知っている。お互いに一目をおいている間柄であった。

 しかし、今や形勢は全く違っている。ヘルサたんがその気になれば、カリギューラを一瞬で吹き飛ばせる…そのくらいに差がついてしまっていた。

ヘルサたん:「あのね、用というのは、カリギューラちゃんにとっても決して悪くない話よ。…いよいよあたしの計画を実行に移すから、カリギューラちゃんに手伝ってほしいの。」

カリギューラ:「手伝うだと? この私がか!?」

ヘルサたん:「うん。あたしの計画を実行するためには、どうしてもカリギューラちゃんの力が必要なのよ。お願い、手伝ってよ。」

カリギューラ:「くっ。おぬしも知っておろう。今の私はもはや魔力を使い果たした抜け殻。計画失敗のショックでふて寝を十数年も続けている、ただの燃えカス、負け犬よ。そんな私など…」

ヘルサたん:「うん、しってるよ☆」

カリギューラ:「ぐっ、おのれ…」

ヘルサたん:「自分で言っておいて人に言われたからって怒んないでよ。で、用事というのは他でもないわ。…いよいよ、人間界に乗り込もうと思うの。」

 ヘルサたんは真顔になった。

カリギューラ:「な、なんだと!?」

ヘルサたん:「人間界を性と退廃の世界にし、ポッティの支配から解放して我ら魔族の配下とする計画。快楽を好きなだけ堪能できる真の楽園に、世界を変革するわ。名付けて《メカニック・ヘル計画》!!」

カリギューラ:「なっ…」

ヘルサたん:「はっきり言って、カリギューラちゃんの種の計画よりも数段優れ、計算され尽くした計画だよ。今度は絶対に成功する。あなたと全く同じ理想を、今度はあたしが実現させてみせる。どお? 決して悪くない話でしょ?」

カリギューラ:「ぬぬ…しかし…」

ヘルサたん:「時間は数千年もかからない。そうね、100年以内に成功させてみせるわ。ただし、そのためには、カリギューラちゃんのような回りくどい方法ではなく、直接人間界に干渉しなければならない。」

カリギューラ:「そうだ! そんなことをすれば、すかさずポッティが動く。だから私は直接対決を避け、水面下で計画を進めたのだ。そのために時間がかかった。おぬしはポッティと直接対決をするつもりか。人間界が火の海になるぞ!」

ヘルサたん:「大丈夫よ。そんなことはしないわ。堂々と人間界に侵略しながら、同時に唯一神と直接対決をしない方法があるの。組織的に動く方法よ。人間界には、私の組織を移す。そしてどんどん魔界から補充していく。あたしは魔界にとどまり、組織だけを動かす。そうすれば、人間界の表面に現れるのは組織だけ、しかも魔界からいくらでも補充される組織だから、ポッティも、組織には攻撃できても、あたしに直接攻撃を加えることはできない。そして、組織が強固であれば、人間界への侵略も成功する。組織が中心で、システマチックに動くヘルサたんの計画ということで、組織名をメカニック・ヘルとし、計画もそれにちなんでつけられたというわけ。」

カリギューラ:「そ、そんなにうまくいくのだろうか。」

ヘルサたん:「組織といっても単純な形式よ。魔界からの指令に基づき、《メカニック怪人》と配下である《天国軍団》が実行役。そのほかに偵察や補助として、私の配下のボウイをつける。組織の本拠地は固定せず、怪人ごとに流動化させる。それぞれの組織自体は怪人が中心となるのよ。そうすれば、人間界を火の海にしたくないポッティは直接強大な力を使うわけにはいかず、戦うとしてもいくらでも補充がきく怪人が相手になるだけだから、直接対決にはならない。いい考えでしょ?」

カリギューラ:「うむむ…そんな方法が…」

ヘルサたん:「あたしの方法なら、怪人と天国軍団で世界の男たちを虜にすることができる。魔の者と交わった男が放った精を、あなたのいう「種」と同じ原理にすることによって、女たちも徐々に性欲の虜となっていく。これによって、初めのうちは世界の秩序を乱す破廉恥な犯罪者集団とされていた「メカニック・ヘル」も、徐々に認められるようになり、法や道徳の変更がなされ、メカニック・ヘルの指示通りに人間どもが動いていくようになる。同時進行で人間たちの肉体を改造し、大気を淫気で染めていけば、カリギューラちゃんが理想としたのと全く同じ世界ができあがるのよ。」

カリギューラ:「…確かに、それなら人間界の侵略も可能かもしれぬ。」

ヘルサたん:「そこでカリギューラちゃんにお願いしたいのよ。」

カリギューラ:「お願い、だと?」カリギューラはいぶかしげに訊ねた。

ヘルサたん:「そう。私の頭脳と作戦、統率力と支配力、そして技術と組織力があれば、世界をセックスで蹂躙し、我らのものへと堕落させることができる。…足りないのは、これを実行するために必要な“資金”、つまり魔力よ。」

カリギューラ:「…。」

ヘルサたん:「あたし一人の魔力では限界がある。実行に必要な装置は作れるけど、これらを稼働させるのに膨大なエネルギーが必要なの。そのエネルギーを提供して欲しいのよ。」

カリギューラ:「エネルギー…。しかし私は…もう…」

ヘルサたん:「嘘はダメよ。」

カリギューラ:「!」

ヘルサたん:「カリギューラちゃん、あなたの魔力はもう、ほとんど回復しているはず。」

カリギューラ:「ぅ…」

 カリギューラはたじろいだ。

ヘルサたん:「18年前のこともあって、たしかにあなたの魔力は一時、地に落ちた。…普通なら、完全回復までに数千年を要する。」

カリギューラ:「分かっておるではないか! 私はたしかに、魔王の名を恣にするほどのパワーを持っていた。…これでも元神族なのでな。お前とは生まれも違う。だが、私はそのパワーのすべてを投げ打って、“種”の計画にすべてを賭けたのだ。そして…夢やぶれた。いまやこのカリギューラなど、歴史に名ばかりを残す“元魔王”に過ぎぬ。魔力など残っておらぬわ!」

ヘルサたん:「…それで、こんな辺鄙なところで、ひっそりとマンガばっかり読んでいたというわけね。」ヘルサたんの声が低くなり、その目が赤く一瞬光った。

カリギューラ:「…ああ。そうだとも。だから私ではお前に協力したくてもすることはできない。帰ってく…」

 ドオン!!!

 部屋が衝撃で響き渡った。壁そのものがビリビリと震え続ける。側近たちは、しばらくの間、何が起こったかも理解できずにいた。

フローリア:「…ああっ!!」フローリアが驚愕の叫び声をあげた。

 どこから取り出したのか、ヘルサたんがドス黒いサーベルで、左から右へとカリギューラに斬りつけ薙ぎ払っているところであった。

 カリギューラの体は真っ二つにならなかった。彼女の右手が、ヘルサたんのサーベルをとっさにがっしり掴み、剣を素手で止めたためである。

カリギューラ:「…き、貴様…何をするっ!」

ヘルサたん:「あら。これでもあたし、渾身の魔力で斬りつけたんだけど?」

カリギューラ:「!」

ヘルサたん:「おかしいわねえ。もしカリギューラちゃんが下級サキュバス以下の力しか残ってないのなら、今ごろあなたの体は真っ二つどころか、粉になって消えているはずよ。」

カリギューラ:「…。」

ヘルサたん:「魔王クラスの剣のパワーとスピードと衝撃なのに、そのスピードを見切り、片手で受け止めて平気なのは、その身にたっぷり、魔王クラスのエネルギーを秘めているからだよね? しかも●解以上の力を持つあたしの剣を素手で掴んで止めて、血一滴も流れないなんて。」

カリギューラ:「うう…。」

 ヘルサたんはサーベルをしまった。

ヘルサたん:「たぶん、あなた自身気づいていなかったんじゃあないかな。…すでに以前とほとんど同じ魔力が回復してしまっていることに。ずっとじっとしていて銀●や絶●先生やブ●ーチばっかり読んでいたら、いつのまにか治っていたみたいね。」

カリギューラ:「ケ●●軍曹も捨てがたいぞ。」

ヘルサたん:「どうでもいいわ。」

カリギューラ:「なんだとッ!」

ヘルサたん:「あのカエルはやる気がないだけ。侵略なんてもっと簡単なのよ。ドロ●へーちょをうまく洗脳してコキ使うだけで…」

カリギューラ:「…興味がないわりにはずいぶん詳しいな。」

ヘルサたん:「う゛っ…。ま、まあ…コホンコホン、それは置いといて。」

カリギューラ:「…。」

ヘルサたん:「とにかく、これでカリギューラちゃんに魔王としての力があることは証明された。…協力してくれるわね?」

カリギューラ:「…それでも断る、と言ったら?」

ヘルサたん:「あなたは断らないわ。」ヘルサたんはパッチリした瞳でにやりと笑った。

カリギューラ:「…ふん。仕方ない。力が戻ったとあらば、再びポッティの奴めに目にものを見せてやりたくなるというもの。やるしかあるまい。」

フローリア:「…カリギューラさま…」フローリアが複雑な表情でカリギューラを見た。

カリギューラ:「そうと分かれば。…ふんっ!」

 瞬時にして、周囲の人物の回りに球形バリアが張られた。強大なエネルギーが周囲を満たす。

カリギューラ:「ふはははは! 今よりここが我が城じゃあ!」

 ぶわあああ!

 風とも爆発ともつかぬ強力なエネルギーが、カリギューラの小屋ごと周囲数千キロメートルを吹き飛ばした。

 そして、数キロにもおよぶ巨大な城が、一瞬にして出来上がったのだ。絶対零度の、何もない、不毛の氷の地獄は、地平線をはるかに超える領域にわたって、草花咲き乱れる常春の領土となった。

ヘルサたん:「…へえ。さすがね。」ヘルサたんはバリアに守られて無事。

ヘルサたん:「あの、誰も寄せ付けず、誰も寄りつかない、絶対永遠の氷土を、広い範囲にわたって、しかも一瞬で、暖かく豊かな場所に変えてしまうのね。すごいと思うよ。」

カリギューラ:「ふん。これが本来の私の力じゃ。ああ、気分爽快じゃ。こんなにもエネルギーがあふれ、大仕事ができるのだから!」

ヘルサたん:「そうね。立派だわ。じゃあ、ここをさっそくあたしたちの居城にするよ。」

カリギューラ:「何? 別の場所に本部があるわけではないのか?」

ヘルサたん:「まだ何も準備してないの。ね、いいでしょ。ここを使っても。」

カリギューラ:「ぐむう…まあ、仕方あるまい。」

ヘルサたん:「じゃあ、さっそく、城を少し手直しするね?」

カリギューラ:「好きにせい!」

ヘルサたん:「じゃあ、中心の天守閣は…この場所にこのくらいの広さで…製造機と転送機をつけて…。あと、開発室と、寝室と…。」

カリギューラ:「マンガ図書館を忘れるなよ。」

ヘルサたん:「城が大きすぎるわね。そうそう、配下の控え室と、生活スペースね。地下に制御ルームとか入れとくか。あとは、対侵入者用のワームホールと、迷路回廊。強力な牢獄。そんなところね。」

カリギューラ:「マンガ図書館だぞ!」

ヘルサたん:「あっ、忘れてた。食堂も用意しなくちゃ。」

カリギューラ:「マンガ…。」

ヘルサたん:「設計はだいたいOKね。…えい☆」

 城が一瞬で消えた。かと思うと、次の瞬間には、100メートルくらいの小さな二階建ての城ができ上がった。

カリギューラ:「…なんだこれは。」

ヘルサたん:「城よ。というより、人間界侵略本部作戦事務所ね。」

カリギューラ:「なんでこんなみすぼらしいのかと聞いておるのだ!」

ヘルサたん:「あのねえ。お城は大きくて高けりゃいいってもんでもないでしょ。機能的で合理的で、かわいらしい方がいいわ。」

カリギューラ:「ぐぬぬ…」

ヘルサたん:「それに、見方によってはかなりの豪邸よ。贅沢言わないの!」

カリギューラ:「うぬぅ…仕方ない。」カリギューラは城に向けて歩き出した。

ヘルサたん:「待って! そっちじゃないよ! 入り口はこっち!」

 ヘルサたんは、近くにある大木に触れた。すると、木に大きな穴があき、中に光の空間が出現した。

カリギューラ:「…そんな所を入るのか!?」

ヘルサたん:「そうよ。正面入り口はトラップ。入ったら最後、異空間に飛ばされて、永遠の快楽地獄が待っている。魔王クラスでもしばらくは抜け出せないほど強力よ。侵入者があったときには、当然正面から入ってくるはずだから、本部にはたどり着けず、異界で記憶の海をさまよって、永遠に快楽の中で絶頂し続けることになる…男も女もね。」

 ヘルサたんは木の穴をくぐった。ボウイがそれに続く。渋々だが、カリギューラたちもそれに続いた。

 木の穴から、たしかに城の天守閣に続いていた。そこは20メートル四方くらいの大広間であった。

カリギューラ:「ほおほお。これはなかなか。」

ヘルサたん:「いい造りでしょ。まさに指令本部、作戦事務所にふさわしい。」

 広い部屋の奥は一段高くなっており、玉座が二つ設置されている。入り口の左右によく分からない巨大な機械が設置されていた。

 玉座の前方は広く空いているが、その左右には事務机と椅子が1セットずつ置いてある。

 壁は七色に光り、おどろおどろしい雰囲気と清潔さを醸し出していた。

カリギューラ:「うむうむ。気に入ったぞ。…で、マンガ図書館はどこじゃ?」

ヘルサたん:「ないよ、そんなの。」

カリギューラ:「ぬゎにいいいい!!!!」

ヘルサたん:「これから忙しくなるわ。うつつを抜かしてる暇はないの。分かった?」

カリギューラ:「お、おのれえええ。」カリギューラはわなわなと震えている。

ヘルサたん:「さ。ここからが本番のスタートよ。この作戦の総責任者、総統はこのあたし。ただいまより、ヘルサ総統…んー、違うな、やっぱりヘルサたんという呼称は捨てがたい。むむむ☆ …うん、やっぱり”ヘルサたん総統”にするわ。」以後、私のことはヘルサたん総統と呼ぶこと。

カリギューラ:「うぬぬ・・・ふざけおって。」

ヘルサたん総統:「あら。あたしは大まじめよ。あと、カリギューラちゃんは私の配下ではないわ。」

カリギューラ:「当然だ!」

ヘルサたん総統:「あくまであなたとは“同盟関係”。手を組んでいるだけのつながりであって、上下関係ではない。そこははっきりさせておきましょう。そこで今後、あなたのことは”カリギューラ女王”と呼ばせてもらう。」

カリギューラ女王:「女王、か。…。ぬっふふ、悪くはないのう。」

ヘルサたん総統:「ただ、同盟関係を結んでいる間は、あなたの配下は私の命令にも従ってもらうわ。いいわね?」

カリギューラ女王:「む。それには異論はない。」

ヘルサたん総統:「決まりね。それから、私の所のボウイと、あなたの所のフローリアは、ただいまから将軍です。ボウイ将軍は現地勤務兼スパイ役、フローリア将軍はこの場所で、私たちの代わりに人間界に声を届ける指令役ね。」

フローリア将軍:「…かしこまりました。」

ヘルサたん総統:「幹部は以上よ。雑用は私の組織から数名取り寄せれば十分でしょう。」

カリギューラ女王:「そんなこじんまりな組織でよいのか?」

ヘルサたん総統:「十分よ。侵略の実行はあくまで現地、人間界で行う。指令と作戦、怪人の製造と送り込みの仕事しかないのだから、ここはシンプルにするの。ここで複雑なヒエラルキーを作れば変な派閥ができてやっかいだし。」

フローリア将軍:「…。」

カリギューラ女王:「うむ。まあ良かろう。作戦の中心はお前だ。任せることにしよう。」

ヘルサたん総統:「決まりね。じゃあ、これから作戦の大まかな流れを説明します。」

フローリア将軍:「あの・・・ヘルサたん総統。」

ヘルサたん総統:「なんだ、フローリア将軍。」

フローリア将軍:「ひとつおたずねしたいことがあります。」

ヘルサたん総統:「ほう。申してみよ。」

フローリア将軍:「なぜ、カリギューラさ、カリギューラ女王様の協力が必要なのでしょうか。」

ヘルサたん総統:「どういう意味だ?」

フローリア将軍:「膨大な魔力ということなら、ヘルサたん総統でも十二分にまかなえるはずだからです。」

ヘルサたん総統:「…。」

カリギューラ女王:「な、なんじゃと!?」

フローリア将軍:「このアホはごまかせても、私はごまかされません。ヘルサたん総統閣下でも軽々とこの氷土を常春の国に変え、広大な城を一瞬で築き上げる力がある。何をなさるつもりかは存じ上げませんが、魔王二人分のパワーなど必要ではないでしょう。」

ヘルサたん総統:「…くっくくく…フローリア将軍、なかなか鋭いな。気に入ったぞ。」

カリギューラ女王:「…てか、今お前、私のことをアホって言わなかった?」

フローリア将軍:「言っておりません。言うわけないじゃあないですか。長年つきしたがってきたこの私めが。」

カリギューラ女王:「そ、そう、だよねえ・・・はっははは…気のせいじゃったか。」

フローリア将軍:「気のせいですよ。アホめ。」

カリギューラ女王:「…。」

ヘルサたん総統:「では答えよう。たしかに魔力そのものは、カリギューラ女王の力などなくても、私一人で十分だ。」

カリギューラ女王:「なっ…!!? は、話が違うではないかっ!」

ヘルサたん総統:「いいえ。私が欲しいのは、カリギューラ女王の魔力ではなく、その中に潜んでいる“神の力”のほう。」

カリギューラ女王:「!!」

フローリア将軍:「…やはり…」

ヘルサたん総統:「さっきも言ったように、あたしの侵略方法は、現地で戦闘員を調達して“天国軍団”を結成し、あくまで現地の組織で動かしていくというもの。だが、それだけではパワー不足となる。そこで怪人を作って現地組織の中心とする必要があるのだが。残念ながら、人間界では怪人を作ることができないんだ。」

カリギューラ女王:「…。」

ヘルサたん総統:「怪人はここで製造し、人間界に送り込む必要がある。」

フローリア将軍:「魔界ならではの制約…」

ヘルサたん総統:「そう。一定以上の魔力を持つ魔族は、ポッティの設けた安全網によって、幾重にもバリアが張り巡らされ、魔界を飛び越えて人間界に行くことができなくなっている。バリアをすり抜けることは、力の上でも技術の上でも絶望的だ。当然、我々魔王クラスの者やその幹部も、ただですり抜けることができない。」

フローリア将軍:「それで…我々の力に目をつけたと…」

ヘルサたん総統:「ああ。力の弱い魔族を大量に送り込んでも、ポッティにつぶされてしまうし、おそらくは人間の力だけでも壊滅させられてしまうだろう。怪人レベルのモンスターさえ送ることはできない。行くことができるのは、神の力を持つ魔族に限られる。それが、元神族であるあなたたちというわけ。」

カリギューラ女王:「なるほど、そういうことであったか。」

ヘルサたん総統:「相当に力をセーブすれば、魔族化した神族なら人間界に行くことができるだろう。フローリア将軍、あなたも一度それで佐伯の所に出向いたよな?」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「実は、このボウイも元神族、堕天使だ。だから現地にスパイとして送り込むことができる。力はほとんどセーブされるけどな。だから、ボウイを動かして人間界の侵略はできない。強力な力を持つ怪人をあらためて作らなければならないのだ。」

カリギューラ女王:「じゃが、ここで強力な怪人を作っても、神の力100%にでもしないかぎり、力をセーブせずに送り込むことなど不可能ではないのか。魔力をいっさい混ぜない怪人は、100%神族であり、したがって自己を省みずに我らに立ち向かってくるようになる。命令するなど不可能だ。」

ヘルサたん総統:「だからこそ“協力”が必要なの。これからしっかり説明するわ。全員起立! 構え!」

 ヘルサたん総統とボウイが立ち上がり、右腕を左肩に添えるようびしっとポーズを取った。カリギューラ女王もフローリア将軍もこれに従った。というより、ついつい同じポーズを取ってしまったと言うべきか。

ヘルサたん総統:「今後、正式な仕事や作戦の時はこのような礼をして気を引き締めていただきます。では、侵略の概要を説明する。」

 まず、ボウイ将軍の力をセーブして人間界に送り込む。その際、彼女にはほとんどパワーがなく、せいぜい「姿を消す」能力が残るだけで、ほとんど人間の女性と変わらなくなってしまう。彼女の役割は、スパイ活動とその情報を指令本部に伝えること、および送り込まれた怪人や天国軍団に指示命令を出し、統括すること。実質上の、現地責任者だ。

 たしかに、現地では怪人のほうがボウイの力をはるかに上回ることになるが、怪人は将軍に逆らえば自動的に消滅するように設計されるため、決して逆らわず、忠実である。

 フローリア将軍は、ボウイ将軍と緊密に連携を取りながら、ヘルサたん総統やカリギューラ女王の指示を正確に伝える。彼女は声のエキスパートであり、声だけを、ポッティのバリアをすり抜けて人間界に一定時間送り届けることができる。また、総統と女王の補佐を行う。

フローリア将軍:「私が現地でスパイをするのではダメなのですか? 工夫次第でお互いに同じことができると思いますが。」

ヘルサたん総統:「おそらくポッティは我々の動きを遅かれ早かれ察知するだろう。あなたが現地にいれば、いずれ再び出会ってしまうが? それでもいいのなら。」

フローリア将軍:「う・・・うぅ…。けっこうです。」

 さらに現地で、人間の女性を洗脳し、天国軍団を組織する。疑似異空間である「夢幻時空」の応用で、美女たちを魔界から自由自在に操ることができる。その都度の具体的な指示は、ボウイ将軍および怪人が行う。彼女たちは怪人や将軍の手足となって働かされる。もちろん、魔界からのエネルギーを受け、擬似的な魔族として動くことになるため、彼女たちで射精した人間男性は、世界をピンク色に染めていくことになる。

 魔界から強力な怪人が送り込まれていく。怪人が中心となり、天国軍団と一緒に人間界で男たちを襲って、その精を抜き取っていくのが主な仕事である。

ヘルサたん総統:「その際、カリギューラ女王が用いていた“種”のシステムとほとんど同じ技術を使わせてもらう。ただし、種を佐伯翔のような一人の男性に植え付けて、その精を世界に発散させて人間界を魔界化させるのではない。種はあくまで怪人と天国軍団が握っており、彼女たちで射精した男の精を世界に発散させ、そこに種の一部を上乗せして世界にばらまいていくのだ。」

カリギューラ女王:「そ、そんなことができるのか?」

ヘルサたん総統:「ああ。ただし。あなたがやっていたほど強力な効果はない。あのころ佐伯翔の一回の射精は、世界を魔界化する淫乱のパワーを相当に発散させることができた。今回の作戦では、その数億分の1の効果しかないだろう。だが、それを日々何千何万人と、世界各地で射精させ続け、さらにそれを数十年も続けたらどうなる?」

カリギューラ女王:「効果は同じ!」

ヘルサたん総統:「そういうこと。種の技術は私も分かっているから、この状態を作り出すことは容易だ。だが、天国軍団だけでは人間の警察力や法治で押さえつけられてしまうだろうし、何よりポッティが黙っていない。だからこそ怪人が必要なのだ。セックスの力が格段に優れ、中〜上級魔族と同じ魔力を持つ、性のエキスパート怪人がな。こちらのセックス力が高い女で男をイかせれば、種の効力は格段に高まる。天国軍団の女でイクより怪人の体で射精した方が、より多くの種を世界にばらまけるというわけだ。」

 じわじわと怪人を増やし、人間界に送り込みつつ、人間女性の天国軍団化(洗脳)もどんどん進める。佐伯翔一人に射精させるのではなく、人間男性万人の精を奪っていくことで、人間界を快楽の園に変えてしまうのである。そうなれば魔界と人間界との境界もなくなり、バリアが意味をなさなくなって、行き来も自由、晴れて女王や総統が人間界の支配者、ひいてはポッティの神界へ攻め込む足がかりとなって、すべての世界の王となるのである。

 人間界が崩れれば、人間界の基本方針を決めたポッティの神界も骨抜きになる。というより、快楽を是とする世界が大半となって神界が孤立するから、ポッティはもはや反論することもできず、快楽の園を認めざるを得なくなる。そうなれば、人間界も魔界も神界も快楽に溺れ、快感を徹底的に肯定する世界のみになる。そうなれば、神界を蹂躙するのはたやすいという理屈であった。

カリギューラ女王:「それで。肝心の所だ。どうやって怪人を現地に送り込むのだ。私の力が必要と言っても、やはり限りがあるぞ。それに、結局私は今や魔王。神の力などと言っても、魔力にほとんど汚され、おぬしとほとんど変わらなくなっておるのだぞ?」

ヘルサたん総統:「人間界には成分献血というのがあるらしいわね。血液の中で一部成分を分離させ抽出し、残りを体内に返す。」

カリギューラ女王:「…?」

ヘルサたん総統:「もしそれと同じことが、魔力と神通力の間でもできるとしたら?」

カリギューラ女王:「できるのか?」

ヘルサたん総統:「ええ。この装置を使えば、ね。」

 右側にある大きな機械は、人が入れるカプセルのようになっていて、隣に大きなガラスのカプセルもある。ここにカリギューラが入り、パワーをまずは丸ごとどんどん吸い取っていく。一度カプセルに移された魔力は分離され、神の力だけを抽出して、魔力はカリギューラに返される。そんな装置だった。

カリギューラ女王:「なるほど。これを使えば、元神族である私の神の力を取り出せるというわけか。じゃが、その力を怪人に注入すれば、魔族に敵対する存在になる。それはどうするのだ?」

ヘルサたん総統:「それはね…」

フローリア将軍:「…コーティング。」

ヘルサたん総統:「そう、コーティングよ。さすがフローリア将軍ね。ますます気に入ったわ。つまり、私の魔力を、あなたの神通力でコーティングする。細かい話は抜きにするけど、私の魔力を細かい粒子状に丸めて、その周りをあなたの神通力で薄くコーティングする。そのパワーを怪人に注入するわけ。その機能も、右側の装置には備わっているわ。 カリギューラ女王の仕事は、このカプセルの中に一日3時間入り、神通力を抽出すること。あたしはそこに魔力を提供して、コーティングを完成させる。」

カリギューラ女王:「それなら、私の魔力も一緒に採取して、私の魔力を私の神通力でコーティングした方が良くないか?」

ヘルサたん総統:「それだと、あなたの魔力がどんどん減ってしまうわ。それに…」

カリギューラ女王:「そこは心配なかろう。我が魔力はほぼ無尽蔵。それはさっきお主たちにも見せた通りじゃ。」

フローリア将軍:「違うのです、カリギューラ女王カス様。」

カリギューラ女王カス:「今絶対カスって言ったよね? カスって言ったよね?」

フローリア将軍:「言ってません。」

ヘルサたん総統:「あなたの魔力100%の魔力と言うことは、怪人はあなたの言うことは聞いても、あたしの言うことを聞かなくなる可能性があるの。やっぱり、どっちの言うことも聞いてもらわなくちゃ、ね。」

カリギューラ女王:「な、なるほど、そういうことか。納得した。」

フローリア将軍:「(ぼそっと)…カス。」

ヘルサたん総統:「フローリア、頭脳明晰で勇気のあるお前を買っているが、あまり出過ぎた考えは起こさぬことだ。くくく・・・」

フローリア将軍:「・・・申し訳ございません。」

カリギューラ女王:「?」

 フローリアは危惧していた。この方法には、何か危険な香りがする。ヘルサたん総統の配下にもなったわけだが、彼女はやはりカリギューラが心配であった。主導権が完全に向こうに回ってしまっている。できるだけ条件をこちらに有利になるようにしておきたいと思ったが、そのことごとくをヘルサたん総統に見破られているみたいだった。

 怪人を作るに当たって、カリギューラの影響力をほとんど奪われてしまうことは、フローリアとしても心配だった。おそらくそのコーティングの方法であれば、人間界へのバリアを通り抜ければ神通力は必要ではなくなる(むしろ妨げにさえなるだろう)から、通り抜けたとたんに神通力のコーティングは外されるだろう。その結果、魔力はヘルサたん総統のもの100%となり、カリギューラ側からの統制は利かなくなるはずである。

 何とかしてごまかして、わずかでもいいから、カリギューラの魔力部分を混ぜることができないか考えていたところへ、カスが露骨に自分の魔力を入れろと言ってしまったので、これ幸いとばかりに、ヘルサたん総統に言いくるめられてしまい、カリギューラの魔力を混ぜる方法を完全に絶たれてしまったわけである。

 しかも、フローリアのそうした考えでさえも総統に読まれてしまっているみたいだった。まずいことになった、と彼女は思った。

ヘルサたん総統:「あなたの神通力でコーティングされた怪人の魔力は隠される。そうすれば、強力なパワーを秘めたまま怪人を人間界に送ることもできる。いい考えでしょう?」

カリギューラ女王:「すばらしいぞ。さすがはヘルサたん総統じゃ。さっそく協力しようではないか!」

ヘルサたん総統:「その怪人を製造する装置が、この広間の左側にあるわ。」

 左側の装置は、機械と言うより巨大な箱に近かった。レバーがついていて、これを引くと箱の扉が開き、中から怪人があらわれるしくみだ。

 怪人は魔力の影響を受けていない物質から作られる。それぞれに特殊な能力や得意技を持った美しき悪魔が製造される。そこに、神通力でコーティングした魔力が注入され、絶対的な忠誠心をすり込んで、神の皮を被った魔族として生まれるのだ。主体的な意志はなく、あくまで組織のために忠実に動く人形のようなものである。機械的に作られる存在ということで、怪人はメカニック怪人と呼ばれる。着ぐるみの中に人がいるわけではない。中の人などいない。

 右側の装置で分離される神通力の量にも限りがあるため、怪人は量産できない。その分、しっかりと怪人をヘルサたんが設計して人間界に送り込み、存分に力を発揮するようになっている。

ヘルサたん総統:「あとは、ポッティの動向に注意しながら、この司令部で統括管理し、人間界をピンク色に染め上げるようにしていけばよい。初めのうちは人間どもも警戒するが、種が世界にばらまかれる量が多くなれば奴らの心も変わっていく。文化も政治も法律も変わり、悪魔に種を提供することを容認するようになり、さらには推奨するように変化していくだろう。そうなれば、もはや怪人を送り込まなくても、待っているだけで自動的に人間界は我らのもの。くっくくくく・・・」

カリギューラ女王:「おおおっ! それこそ我の望んだ理想世界! 二人で築いて憩うぞ、すばらしき理想の人間界を! ふはははははー!」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「以上で基本方針の説明を終わる。何か質問は?」

カリギューラ女王:「おお、そうじゃ。…この機械はなんじゃ?」

ヘルサたん総統:「勝手に触っちゃダメだよ? それはね、ヘルサ空間発生装置。怪人のパワーを3倍にはね上げ、より気持ちよく男から精を奪うためのもの。もし佐伯のように濃い精を持っている男が見つかれば、そこに引きずり込んで、疑似異空間で徹底的に絞るの。あなたの夢幻時空に近いわね。」

カリギューラ女王:「なるほどのお。考えつくしてあるわ。ふははは、すばらしい!」

ヘルサたん総統:「他には? …ないわね? じゃあ、以上で説明を終了する。これより、メカニック・ヘル計画を本格始動させる! 全員起立! 構え!」

 今度はカリギューラたちも進んでポーズを取った。

 いよいよ、悪魔の計画が指導してしまった。カリギューラ女王はカプセルに入り、ヘルサたんがコーティング技術を施していく。そして、あらかじめ設計してあった、はじめの怪人が、製造機の中で胎動を始める。ボウイは人間界に飛び、フローリアが側面の机に向かって座り、装置の様子を呆然と眺めていた。彼女だけが、一抹の不安を残していた。
 


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