Tweet


ナメてる戦隊フザケンジャー!


第2話 神谷の受難



 いつもどおりの日常。近所の知り合いの喫茶店の手伝いをしながら、適当に過ごしている。

 とくに生きる当てがあるわけでもない。将来の展望があるわけでもない。適当に学校に通い、それも休みがちで、こうやってアルバイトにいそしみながら、そのバイトだって何か目的や目標があるわけでもなく、気のいいマスターのところで無駄話をしながら、その場その場を楽しく過ごしている感じだ。

 「神谷君、もっと自分のことも考えた方がいいよ?」

 マスターは幼い頃から良くしてくれた人生の先輩だ。学校の教師のことはどうでもいいが、この人だけには頭が上がらない。尊敬している。

 そんな人が僕のことを時折心配して、進路のこととか、学校にちゃんと行くこととか、時々言ってくれている。それでも、どういうわけか、自分がこの先どうしたらいいかなんて皆目見当もつかないし、とにかくやる気が起きないのだった。

 今日も学校をサボって、喫茶店『キノコぐんぐん伝説』に入り浸っている。バイトの身だが客はなく、仕事があるわけでもない。夕方から夜にかけてぽつぽつと常連が来て、無駄話をしながら日銭を稼いでいる感じだ。

 店が流行らないのは、おそらく看板の名前に問題があるのだろう。

 マスターはとても人柄もいいし、こっちが煮え切らない態度を取ったり悪い気持ちを持ったりすれば容赦なく叱ってくれる人だ。僕のことをどうにかしないと、しっかり先のある生活を送らせてやりたい、なんて考えているのだろう。

 どうにかしないとってのは分かっているけれども、どうしてもそういう気持ちになれないでいる。居心地がいいのか、結局数ヶ月、『キノコぐんぐん伝説』に入り浸っている状態だった。

 カランカラン。店のドアが開いた。

 「あー…、いらっしゃいませー」僕は力なく声をかけた。見ない顔だ。

 20代後半くらいか、背の高い、目つきの鋭い、スポーツマンぽい男だった。

 男はぞんざいに座ると、僕をひと睨みして、手招きをする。こんな時間に客なんてほとんどなかったから、僕もかったるそうに彼のテーブルの所まで足を運び、嫌々注文を聞く形になった。

 「コーヒー!」男はぶっきらぼうにそう言い、黙ってしまった。終始こちらには顔を合わせず、黙って腕組みをしている。

 「コーヒーですね。少々お待ちください。」僕はマスターに注文を伝えると、さすがに客のいる前で別のテーブルでだらんとしているわけにも行かないので、カウンターのそばに立ち、男の様子を見ておくことにした。

 コーヒーはすぐに出る。僕はそれを運び、「おまたせしました」と適当に言うと、がちゃっとコーヒーを男の前に出した。

 男はギロッと僕を見上げる。あー、常連でもない客の扱いなんて慣れてないし、面倒な対応をして、何か言われるのか。かったるいなあ。どうせ態度が悪いとか文句を言うつもりだろう。はいはい、「申し訳ありませんでした」とくり返しときゃあいいや。

 「…キミ、学校は?」「はあ?」「今日は平日だろう?」

 なんだこいつ?

 きょうび高校に通わないでアルバイトしている17歳なんて珍しくもないだろうに。勝手に学校に行っていないのはおかしいなんて決めつけやがって。

 …いや、僕の場合はたしかに今は学校にいないとおかしいんだけどね。

 「サボりかい?」「ええ…まあ…」男はびっきらぼうでありながら、どこか上品さがあって、精悍な中に優しさを秘めてもいるような、穏やかな語り口だった。

 「…神谷達郎。学校がいやになったのは、半年前の失恋が原因。初めて好きになった女に彼氏がいたから。…ふっ。」

 「なんだよアンタ。」僕もさすがにゾッとした。この男、僕を知っている!? 恐怖と反感で、ついつい突っかかってしまう。

 「神谷君!」奥からマスターが顔を出す。顔をフルフルと振って、これ以上何も言うなとジェスチャーで合図を送る。

 「マスターはな、初めての客に君が怒られることを通して、君を成長させようとしていたんだよ。外に出てこないで奥からじっと様子を見て、な。でも俺は怒らなかった。失礼な対応をするのは分かっていたからね。」

 「何者なんだアンタ。」

 「…また会うことになる。」男は無表情のままコーヒー代をテーブルに置くと、そのまま店を出て行ってしまった。

 「…知っている人かい?」マスターが心配そうに出てくる。

 「全然知らないです。」でもそれなら、どうして僕のことを知っているのだろう?

 「気をつけな。」「はい…。」

 気にはなったが、それ以上考えても仕方がないので、結局その場をやり過ごすことになった。

 次の日はバイトも休みだった。学校にあんまり行っていないと不登校とか言われるし、ちょくちょく行って適当に過ごして帰る。そうやって周囲もごまかしている自分が嫌いだった。

 だらだら過ごしている日中はことさらに長く感じられた。

 やっと放課後になる。家に帰っても誰もいない。両親とも仕事で海外だ。することもない。

 僕はまた、マスターのところに自然と足を運ぶしかなかった。

 あの道をまっすぐ進めば『キノコぐんぐん伝説』の看板が見えてくる。

 …あそこへ行って、それでどうしよう?

 僕自身、このままじゃあダメだって分かってるし、近いうちにマスターからも怒られて出入り禁止になるのも分かっている。このまま学校もサボりがちで、喫茶店に入り浸っているようであれば、マスターなら厳しく僕を追い出し、真人間に戻そうとするだろう。僕もできればそうありたいが、めんどくさいというか、胸にこみ上げるなんだかいやあな感覚が抜けきらないで、結局それに負けてしまい、ついついバイトと称してマスターのところに来てしまうのだ。

 僕もマスターもこのままではいけないと分かっているから、出入り禁止になるのも時間の問題だった。いつ言われてもおかしくないし、言われても納得がいく。そろそろ限界か。

 そう思ったら、なんだか足が重くなった。途中にある公園に入り、ベンチに腰掛けてふうっとため息をついた。

 「神谷君だね?」「!」

 突然名前を呼ばれて、周囲を見渡す。だが、公園には人影はまったくない。

 「気のせい…か?」

 「ここだよ。君を呼んだのは私だ。」

 「え?」もう一度周囲を見渡す。すると、白い布が飛んでいるのが見えた。でも人は見あたらない。

 「!」一瞬、心臓が止まりそうになった。

 白いハンカチのような物体は、風に飛ばされているのではない。そもそも風なんて全然吹いていない。それなのに、その白い布はいつまでもその場に、空中に浮かび続けているのだった。

 よく見ると、それはハンカチと言うより、ハンカチで作ったテルテル坊主のようなものだった。

 「うわああ! オバケ!」僕はベンチから転がるようにして逃げだそうとした。

 だが、テルテル坊主の目が光り、恐怖で頭がいっぱいなのに、腰が抜けたのか、身動きひとつ取れなかった。体だけがガクガク震える。

 「神谷達郎。君はフザケンジャーレッドとなって、ヘルサ一味と戦うのだ!」

 「…え?」

 突然周囲が白い光に包まれた。何も見えなくなり、何も聞こえなくなった。

 数秒経過しただろうか。まばゆい白色光が薄らいでいき、視界が徐々にはっきりしてきた。

 「なっ! こ、ここは…」

 僕は公園に確かにいたはずだった。だが、今僕は全然違うところにいる。

 外にいたはずなのに、白い壁に囲まれた室内にいる。目の前にテーブルがあり、その椅子に座っていた。

 壁際には妙な機械が立ち並び、ピコピコ音を立てて何かを計算している。

 「また会ったな、神谷君。」「!」

 部屋に誰かが入ってきた。男女二人だ。

 「あっ、アンタは…!」背の高い男の方は、間違いない、つい昨日『キノコぐんぐん伝説』で僕に話しかけた男だった。

 「俺は佐伯翔。28歳。よろしく。」

 「…。」

 佐伯と名乗る男の隣に、生足露出型のきわどいレオタード姿で、なおかつスタイルのいいお姉さんが立っている。

 「私は並木美世。24歳。」そう言って彼女はにっこり笑ったが、どこかよそよそしいままだった。

 「さっきは驚かせて済まなかった。」

 僕の真横に、白いテルテル坊主が浮かんでいる!

 「ひゃああ!」またさっきのオバケだ! 今度こそ、僕は心臓が止まりそうになって、気を失ってしまうのだった。

 …。

 …。

 …。

佐伯:「おいおいポッティ、また驚かせやがって。気を失ったじゃないか。」

ポッティ:「はっはっは。まさかここまで驚くとは。」

並木:「そりゃあ驚くわよ。テルテル坊主が宙に浮いて言葉を話すんだもの。」

 うーん…

 倒れたのは一瞬な気がする。

 僕は机に突っ伏していた。

 ばっと起き上がると、佐伯と並木、そして変なテルテル坊主がまだいた。

ポッティ:「別に怖がらなくてもいいんだ、神谷君。」

僕:「ひっ…」

佐伯:「大丈夫だ。こんな格好しているけど、一応これでも神サマなんだから。」

僕:「え…」

ポッティ:「私の名はポッティ。この世界の秩序を司る唯一神じゃ。」

僕:「…。」

佐伯:「驚くのもムリはないが、本当に神なのは確かだからな。どっちにしても悪い奴じゃあない。」

僕:「えっと…」

 たしかに、テルテル坊主は僕に危害を加えるわけでもないし、年上の男女はごくごく普通にこのテルテル坊主と話をしている。一応、大丈夫、なのかな。。。

佐伯:「あらためて。よろしくな、神谷君。」

僕:「はあ…」

 でも、何がどうなっているのかは、まだいっこうに分からないままだった。

僕:「あの…」

ポッティ:「皆まで言うな。君がなぜここにいるのか、事情もすべて説明しよう。」

僕:「はあ…」

ポッティ:「さっきも言ったとおり、君はこれからフザケンジャーレッドとなって、ヘルサ一味と戦うのだ。以上。」

僕:「…?」

佐伯:「それじゃあわかんないよ。」

ポッティ:「そうかね。じゃあ、もう少し詳しく説明しよう。いいかね、今世界は危機に瀕しておるのだよ。」

僕:「…。」

ポッティ:「世界を危機に陥れている悪い集団があって、そいつらの侵略を阻止しなければならない。それを君にやって欲しいんだ。ていうかやるんだ。」

僕:「あの…。」

 絶対怪しい。何かの宗教かな。世界の危機だなんて。まずい連中に拉致されてしまった。何とかして逃げ出さないと、洗脳されるとか、ろくなことにならない。世界じゃなくて、僕がピンチだ。

ポッティ:「わけあって、唯一神である私はヘルサどもに手を出すことができない。だから、人間の危機は人間である君が救わねばならない。」

 か、帰りたい。。。

 このテルテル坊主だって何かのトリックで、僕をだまそうとしているんだろう。

ポッティ:「ヘルサ一味は世界中を引っかき回し、堕落させようと画策している。悪魔の侵略をここで何としても食い止めなければならないんだ。」

僕:「いや、その、そういう悪い組織とかがあるんだったら、警察とかが何とかすべきです。じゃ、僕は帰りますんで。」

ポッティ:「そういうわけにはいかないのだよ。警察では対処できない。何しろ相手は本物の悪魔、しかも魔界にいて、遠隔操作でこの世界を手中に収めようとしているのだからな。」

 いよいよだ。何かの狂信教団か、頭の狂った連中だろう。どっちにしてもこれ以上関わるのはまずい。

ポッティ:「悪魔だなんて信じないという顔をしておるな。じゃが、こうしてここに唯一神だっているんだから、悪魔がいるのは不思議でもないのではないかね?」

僕:「いい加減にしてください! どうせその布もトリックで、僕をだまそうとしているんでしょう!」

佐伯:「やれやれ。頭から信じてないぜ。まあ、当然っちゃ当然だがな。」

 信じられるわけがないだろう。

佐伯:「しょうがない、美世、あれを見せてやれ。」

並木:「了解。」

 並木は壁の機械をアレコレ操作した。すると天井からスクリーンが降りてきて、何か映像が映し出された。部屋が暗くなる。

 そこに映されていたものは、夜の公園だった。人気はなく、ひっそりと静まりかえっている。

 ああ、この公園は、『キノコぐんぐん伝説』に行く途中にある、僕がこいつらに拉致された公園だ。

 ざっざっざっ…

 誰かが入ってきた。男性だ。サラリーマン風の男だな。

 男はソファに座ると、公園が禁煙であるにもかかわらずタバコをくゆらせ始めた。いるんだよな、仕事に疲れたからといって何でも許されると思っている中年が。

 「ねえ・・・」

 そこに一人の女がやってきて、男に話しかける。男は顔を上げ、怪訝そうに女を見ていた。

 女は黙って男の隣に腰をかける。スカートの短い、足のすらりとした美人だった。

 男の隣で、女は自分のスカートをみずからまくり上げ、生足とパンティを男に見せつけた。

 「おいおい、なんのつもりだよ?」男は苦笑しながら女を見る。

 「私たちといいコトしない?」

 「ハッハ、おじさんはお金もないしがない男さ。誘うならもっとマシな…」

 数人分の人影が見える。薄暗いので、正確に何人いるか分からない。全員がミニスカートで、ツルツルの生足を男に見せつけていた。

 「なっ、なんなんだお前たちは。」

 さすがに恐怖を感じたのか、男は立ち上がってその場を離れようとした。だが、逃げようとした先にも女がいて、男の行く手を阻む。 「ひいっ、やめろ!」男が悲鳴を上げると同時に、女たちは一斉に男に群がった。背広をはぎ取り、慣れた手つきであれよあれよと男を裸にしていく。

 そこに映し出されたのは、全裸で立たされたままの男に群がる美女たちの宴であった。

 前屈みになってペニスを奥へ引っ込めようとする男。その後ろにぴったりはりついて、後ろからペニスを掴んでムリヤリしごきたてる美女。左右にもはりつき、男の体を、上半身と下半身とお構いなしに撫でさすっている。それ以外にもあちこちから手を伸ばし、男の頭、首筋、乳首、腕、脇腹、玉袋、内股、ヒザの裏やふくらはぎまで、彼の体中にしなやかな女手が這い回っている。

 「うぐっ、やめ…あふっ!」

 「気持ちいいですか?」

 「精液出しちゃってくださいよー」

 「ああっ!」

 股間に群がっていた無数の女手の間から、汚らしい汁が勢いよく飛び出した。情けないサラリーマンの裸体がぶるるっと震える。

 「ふふふ…しばらく抜いてませんでしたでしょう? すっごい濃い…」「し、仕事が忙しくて…」「じゃあ、もっともっとすっきりして、何もかも忘れてしまいましょう。」

 女たちが離れる。数日ぶりの射精なのか、男の足下がおぼつかない。表情もぐったり、虚ろになっている。

 い、一体この映像は…!?

 はっ、きっと狂信集団の誘いの手口なんだな。入信すればこんないい思いができますよと謳って、スケベ心を出して入ったとたんに全財産を奪われ、エッチな思いはいっさいなし、それどころか徹底的な禁欲と折檻が待っているってオチだ。その手には乗るか!

 とはいっても、群がる美女たちの手コキと愛撫の姿を見て、ペニスはズボンの中ではちきれそうになってしまっている。

 女性経験のない僕には刺激の強すぎる映像だった。

 ダメだ、だまされてはいけないと思いながらも、一方で本当にこんなコトが実現したらと思って期待してしまう自分がいる。ああ情けない。

ポッティ:「本番はここからだ。見ていたまえ。」

 ポッティに促され、僕は宴の続きをついつい食い入るように見つめてしまう。

 「もももももー!!」

 「なっ!」映像の中の男の叫び声と、僕の叫び声は同時に発せられた。

 どこからともなくあらわれたその女は、一目見て、人間の風貌ではなかった。

 いや、たしかに人間の姿形をしているのだが、体が真っ青で、青白く禍々しい光を全身から発しているのだ。サラリーマンの体まで青い光を反射して青ざめてしまっている。

 「もももー!」

 見てくれはたしかに美しい女性だ。顔立ちも整って、背が高く、すらりとしていて、それでいて生足はシコシコしてやわらかくて、肌のきめはあまりにも細かい。

 だが、人間の女性にしては少し大柄で、全身が真っ青、ペンキでも塗ったみたいになっている。そして、その背中からは、真っ黒い羽が生えているのだ。

 忽然と姿をあらわした怪物女は、たしかに空を飛び、空中からあらわれたのである。

 はじめから全裸の怪物女は、慌てふためく男に強制的に抱きつき、ぎゅっと力を入れて離さなかった。

 「あ! …あふ・・・はぅ!」

 次の瞬間、女のふとももの間から、さっきよりも濃く粘ついた男の体液が飛び出すのが見えた。

 「あが! があっ!」続けざまに精液が足の間から飛び出している。

 男のペニスが化け物の生足の間に挟まれているのだ。

 女は高速でふとももを左右にこすっている。するとペニスは女の足ですばやくしごかれ、ひっきりなしに刺激されていることになる。

 男の顔は彼女のおっぱい上部に埋まっている。痙攣しながら、だらしないよだれを垂らし、萎えることなく精液が飛び出し続けていた。

 男の射精って、こんなに何回も続けられるんだ…。

 「も、もう・・・やめ・・・」イキ続けながら男が情けない声で懇願する。

 「ももももー!!」女は顔をぶるぶる振って拒否を示すと、足をこすりながら腰を前後させ、さらに激しくペニスを足のやわ肌の餌食にし続けた。

 射精が全然止まっていない。さすがに恐怖を僕でさえも覚えた。

 「ごぼぼ…」ついに男は白目をむいて、女に抱かれたままアワを吹いて気絶してしまった。こうなってはさすがに射精はできない。

 化け物女は男の体を引き剥がすと、ゴミを捨てるみたいに男を地面に振り捨てた。枯渇したサラリーマンは紙きれのように倒れ込み、ぴくりとも動かない。

 美女の集団と青い女は、蜘蛛の子を散らすようにざっといなくなってしまった。

 そこで映像は終わりである。

僕:「…。」

ポッティ:「今のが、『スマタ怪人ふとももん』だ。」

佐伯:「あいつは、男のチンコを足で挟んで、スマタで射精させる怪人だ。並の男なら今見たとおりの結果になる。」

僕:「…。」

 とても信じられない光景だった。どんなことが行われたのかさえ、よく分からない。

ポッティ:「信じられないかも知れんが、今起こったことは現実だ。あの青い化け物が、魔界から送り込まれた異形の怪人だ。ああいうのが夜な夜な出没し、男を襲っては精を抜き取っているのだ。」

僕:「…。」

ポッティ:「今の映像で分かるとおり、敵の悪魔集団、ヘルサとカリギューラのグループは、俗に“淫魔”と呼ばれる悪魔なのだ。」

僕:「淫魔…サキュバスとかの?」

ポッティ:「そう。男の夢の中にあらわれ、射精させる悪魔の仲間。サキュバスは夢だけでなく、気に入った男は現実の夜にあらわれて精を抜き取るぞ。そして、カリギューラやヘルサは、サキュバスよりもずっと上位の、魔王クラスの淫魔なのだ。」

僕:「…。」

ポッティ:「奴らは人間にセックスの快楽をたたきつけ、享楽的に堕落させることで、秩序も道徳もすべて破壊させ、人間界を魔界に作り替えようと企んでおる。悪魔の魔の手はすぐそこに忍び寄っている。」

僕:「そんな…。」

ポッティ:「本来なら、私の力で魔界にバリアを張り、めったに淫魔どもの侵略がなされないよう厳しく管理しておったのだが。敵もあの手この手で人間界に入り込んできおる。」

佐伯:「ああ。実は18年前、俺もその戦いに巻き込まれたんだ。まだガキだったけどな、女と強制的にセックスさせられ、こってり絞られながらも、何とかあのときは淫魔ども、カリギューラを撤退させることができたんだ。…ま、おかげで俺はすっかり女嫌いになっちまったけどな。」

ポッティ:「…。」

佐伯:「はじめ俺がポッティに会ったときもそりゃあ驚いたさ。でも、戦いが本当で、続けていく内に、いつのまにかお互いに信頼し合っていた。しばらくお別れで、18年ぶりの再会だったが、やっぱりアンタは変わってねえなあ。」

ポッティ:「…。おぬしは変わったのお。」

佐伯:「人間は早く成長すんの!」

ポッティ:「そうじゃのお。で。一度は回避した危機が再び訪れたのじゃ。18年前はカリギューラ一人が相手じゃったが、今度はヘルサという大淫魔がついておる。こやつもなかなか奸智に鋭い魔王じゃ。カリギューラと手を組んで、18年前とは別の方法で侵略を始めておる。」

佐伯:「本来淫魔ってのは、力が強い奴ほど魔界から出られなくなっている。ポッティのフィルターにひっかかっちまって、人間界には移動できないのだ。」

ポッティ:「ヘルサの奴も考えたものだ。堕天使を使うとは。」

僕:「…。」

ポッティ:「堕天使というのは、神の力を持ちながら魔族である者をいう。ワシの仕掛けたバリアは神族を通してしまう。だから、魔力を神通力でコーティングして堕天使にしてしまえば、バリアをすり抜けて人間界に来ることができてしまう。今までも似たような侵略はあったが、やはり魔力を完全にコーティングできずに、失敗してきたものだが、今回のヘルサの技術は完璧じゃ。」

佐伯:「聞いた話だが、大昔の侵略の場合、堕天使を使うといっても、魔族の体に神族の力をコーティングしただけのもので、肉体そのものは魔の属性だったために、たいていはバリアを通り抜けられない。抜けられたとしても魔力はセーブされ、ポッティにすぐ撃退されていたというわけだ。」

ポッティ:「ところが、ヘルサは魔族の体を使わなかった。奴は機械技術のエキスパート。魔に属さぬ物質を使って肉体を作り上げ、そこに神通力でコーティングした魔力を注入して擬似的な生命を与え、“怪人”を作り上げた。そのため、怪人は魔界を抜け、人間界に侵略できてしまったというわけだ。」

佐伯:「ま、詳しいことはあとからいろいろ説明する。とにかく、怪人とその仲間たちが人間界で悪さをしているのは分かっただろ?」

僕:「…。」

 あまり要領を得ているわけではないが、危機感はひしひしと感じた。明らかに人間とは違う、もっと恐ろしいモノが、たしかに身近なところに出没している。

ポッティ:「このピンチを救うために、佐伯翔君にもう一度立ち上がってもらおうと思ったのだが、向こうが組織戦ならこっちも同じようにチームで戦う方がよいということになってな。このたび『ナメてる戦隊フザケンジャー』を組織することになったのだよ。」

僕:「そこがよく分からないんですけど。」

佐伯:「フザケンジャーは、人間界に送り込まれた怪人とその配下“天国軍団”を撃退する組織だ。名前は天国となっているが、その実は恐ろしい化け物集団だ。それに、当の本人たちにとっては地獄だからな。」

ポッティ:「カリギューラやヘルサ自身はワシのバリアを抜けられないため、怪人を人間界に送り込んでくる作戦をとった。同時に、人間の女性を洗脳し、天国軍団を組織しておる。実のところ、魔族なのは怪人だけで、天国軍団はもともと人間の女性なのだよ。」

僕:「えっ…じゃあ…。」

並木:「そ。彼女たちの意志とはまったく関係なく、魔の光線を浴びて心を失い、自分が何をしているのか分からずに魔族の命令に従って、ああやってムリヤリ男の精を絞っているの。いいえ、もしかしたら、心のどこかでは分かっていて、おぞましいのに、体が操られて声も出せず何もできずに苦しんでるのかも知れないわ。だとするとますます許せない。」

僕:「…。」

 たしかに恐ろしいことだ。体全体が操られ、または洗脳され、完全に魔族の言いなりになって、したくもないおぞましいセックスをムリヤリさせられて、泣くことも叫ぶことも表情に出すことさえできず、狂うこともできない。そんな状態が続いているとすれば、何と残酷なことだろう。

ポッティ:「ヘルサのことだ、完全に脳を支配する方法よりも、手っ取り早く体を乗っ取る方法を使うだろう。その苦しみといったらない。だが、不幸中の幸い、もし彼女たちを救うことができれば、天国軍団の戦闘員だった頃の記憶はすべて消去することもできる。また、そういう方法で戦うのが我々の流儀でもある。」

佐伯:「こちらの調べで分かったことは、怪人は絶頂すると魔力が拡散して元の土塊だかなんだか、無害な物質に戻っちまう。そして、天国軍団の戦闘員も、イかせれば呪縛が解かれ、特別な方法によって記憶を消すこともできることが分かった。」

僕:「特別な方法?」

ポッティ:「絶頂時に、ある種の電撃を女体に流すのだ。ほんの一瞬でいい。そうすれば魔族の呪縛からも忌まわしい記憶からも解放はされる。…戦闘中の狂わんばかりの苦しみまでは救えんがな。」

佐伯:「その電流は怪人にも効くぜ。普通の責めではビクともしなくても、その電流で責めれば感じさせることができる。そうすれば戦闘員を助けるだけでなく怪人を倒すことにも結びつく。」

ポッティ:「直接カリギューラやヘルサに手を出せない以上、敵が疲弊するまで、あるいは作戦自体を無効にする方法が見つかるまで、人間界に出没した怪人や天国軍団を、その都度叩いていくしか方法がない。」

佐伯:「その電流を具え、怪人や戦闘員に対抗する技術と組織こそ、フザケンジャーなんだ。そして君は、そのフザケンジャーのリーダー、フザケンジャーレッドに選ばれたのだよ。」

僕:「ちょっ! 大体のお話は分かりましたけど、なんで僕なの? おかしいじゃないか。僕をここに引き込むときも、何も説明せずに戦うのだーとか何とか命じて強制的に連れてきて。」

ポッティ:「安心せい。デ●ジマンの戦闘員引き込みも同じくらい強引だったから。犬がいきなり戦えと言ってきてムリヤリ引き込んだだけだったし。そのうちの一人は宇宙刑事だったし。それと一緒じゃ。」

僕:「…。」

佐伯:「ちなみに俺がフザケンジャーの司令長官。君の戦いをモニターで見ながらアドバイスや指示を出し、怪人などの出没情報を集めて、発見したら君を送り出すのが役目だ。あと、フザケンジャーのために武器になったり防具になったりする道具とかも開発しているぞ。」

並木:「私は通信士。フザケンジャーのコンピューターを扱い、佐伯さんの補佐をするのが役目。」

僕:「そもそもフザケンジャーってなんなんですか。そんな変な名前もなんかイヤだし。」

佐伯:「そうかね? ぴったりの名前だと思うんだけど。『早漏戦隊すぐイクばふーん』の方がよかった?」

僕:「もういいです…。」

ポッティ:「よいか神谷君。敵が男を射精させればさせるほど、世界の秩序は崩れ、人間たちは徐々に堕落していく。君の任務は、男たちの射精被害を拡大させないようにし、怪人と天国軍団をイかせて倒すことなのだ。いうまでもなく、君の方が女たちの体でイキまくっていてはなんにもならん。気絶するまで抜かれれば、もはや人類の堕落は食い止められん。こちらの組織の脆弱さを証明するようなものだからな。がんばって怪人たちを絶頂させるのだ。」

僕:「イヤです。帰ります。他の人を当たってください。」

 セックスに興味はあるものの、こんな戦いになるのはイヤだし、あんな怖い怪人を相手にヤるのはもっとイヤ。勝てる自信なんてあるわけない。こちとら童貞で、もっとロマンティックなエッチがしたいんだ。つきあってらんない。

佐伯:「人類の命運がかかってるんだぞ。」

僕:「だからー! 他にもいっぱい強引に連れて来れる奴はいるだろう?」うんざりしてきた。

ポッティ:「おぬししかおらんのだ。」

佐伯:「フザケンジャースーツを開発したのも、すべて君に合わせてあるんだ。」

僕:「…はじめから、僕しかいなかったんですか?」

ポッティ:「そうじゃ。…厳密には、他といってもフザケンジャーとして戦える適性というのがあってな。それに合致した者でなければ、フザケンジャースーツは着せられないのだ。」

僕:「…。じゃあ、一回だけためしにやってみます。イヤだったらすぐやめますからね!」

佐伯:「おおっ、やってくれるか! これで人類にも希望が見えてきたぞ!」

 そんな大げさな…。

佐伯:「じゃあさっそく、このリストバンドを着けてくれ。」

 僕は佐伯に渡された赤いリストバンドを右手首にはめた。

佐伯:「それを身につけたまま、こうやってポーズを取って、『ナメてる戦隊フザケンジャー』と叫ぶ。やってみろ。」

僕:「な、なめるせんたい…」

佐伯:「恥ずかしがってないできちっとやれ!」

僕:「なっ! 偉そうにいうな!」

佐伯:「俺は総司令官だ。人類のためだ。指示には従ってもらう!」

 くっそ、もうヤケだ!

 僕はいわれたとおりのポーズを取った。右手に握り拳を作って胸の前に、左手は水平よりやや斜め上に指先まで伸ばしてびしっと構える。

僕:「ナメてる戦隊!」

 次に右手と左手を逆にし、左手は握り拳で胸の前、右手はびしっと指先まで伸ばす。

僕:「フザケンジャー!」

佐伯:「違う違う! 左足を7センチ前に出した状態で、両手の伸ばしの時は斜め上40度だ!」

僕:「なっ、ナメてる戦隊・・・」

 数回だめ出しを喰らい、練習しながら、何回かやって、何とか正しいポーズが取れたらしい。

 キュルルルル…!

 突然僕の全身が赤く光り出した。

 バシュッ!

 次の瞬間、僕の全身は真っ赤な全身タイツに包まれた。仮面から足下まで、脱ぐことができない完全に閉じたスーツだった。

佐伯:「射精すると自動的にスーツは外れてしまう。なるべくイかないように注意しろ。あと、勝ってフザケンジャーレッドから神谷に戻るときは、どっかでチンチンしごいて抜いてくればいい。」

僕:「えっ…じゃあ、これって射精しないと戻れないの?」

佐伯:「まあな。」

 もう嫌だ。腹が立つというより死にたい。

僕:「どうしてくれるんだ!」

佐伯:「心配すんな。戦いは近い。」

僕:「くっ…」

佐伯:「まあ落ち着け。せっかくフザケンジャーになったんだし、機能を説明しといてやる。まず、その全身タイツは伸縮性に富み、決して蒸れることのない通気性も抜群の新素材だ。動きもいいだろう?」

 僕は飛び跳ねたり体を動かしたりしてみた。なるほど、跳躍力も上がっているし、バク転だって普通にできる。

佐伯:「運動能力も高まるよう設計されているんだ。それだけじゃあない。普通の生地以上に、性的刺激を受けにくい状態になっている。上半身は女の胸や舌による攻撃から身を守ってくれるし、下半身は女のスベスベしたふとももの柔らかい感触を半減させる。あと、股間部分は勃起にも耐えられるように伸縮性を高め、なおかつ生地をゴム以上に厚くしてある。これによって、女の手や舌の攻撃、あるいはマ●コで締め上げられても、ダメージを軽減させることができる。」

並木:「…あ。」

僕:「はう・・・」

 佐伯の話を聞いているだけで、不慣れな僕はついついみんなの前でペニスを膨張させてしまった。羞恥心でますます死にたくなった。

 すると、股間部分が盛り上がり、キリッといきり立ってしまった。

佐伯:「丁度良かった。どうだ、ぴったりフィットしてるだろう? 勃起した時は、ここの部分がチンコにぴったりはりついて、コンドームをかぶせたみたいになるんだ。しかも生地が厚くガードも堅い。勃起力も高まり、なおかつ肉棒の固さ以上にスーツの生地が硬くなって攻撃力を上げている。それでいて生地は滑らかで衣擦れの心配もなく、挿入には支障がない。さらに、膣の感触をじかに味わわないよう、性感神経をしっかりガードしてくれる優れものだ。これなら、天国軍団、つまり女の集団に男一人で飛び込んでもひけは取らないし、あのサラリーマンを瀕死に追い込むような怪人ともしっかり戦えるというわけだ。」

僕:「ちょっと待って。今一人って言わなかった?」

佐伯:「ああ。一人だよ?」

僕:「そんな! 戦隊だろう? 僕がレッドでリーダー役なんだろ? ブルーとかグリーンとかがいて初めて成り立つんじゃないの?」

ポッティ:「それがのお。なかなか適合者が見つからなくて。ブルー候補は西町に在住の青木とめ吉さん97歳、現在家から出ることがなく、ヘルパーさんを呼んでいるお方。イエロー候補はアルゼンチンで一週間前に生まれたロバート君0歳、将来はきっと好青年じゃ。」

佐伯:「ちなみに俺はブラック候補だったけどね。」

僕:「だったらアンタが戦ったらいいじゃないか! もうヤダー!」

佐伯:「そんなこと言ったって。俺女キライだし。」

並木:「あたし女だし。」

ポッティ:「ワシ唯一神だし。」

僕:「ぐっ・・・こいつら・・・」

 かんべんしてくれ・・・

佐伯:「というわけで、今戦えるのは、レッド、君しかいないのだよ。あっはっは。」

僕:「あっはっはじゃねーよ!」

佐伯:「まあまあ。武器もいっぱいあるから。まず…」

 ビーッビーッ!

 突然、壁の機械から警告音が鳴り響いた!

並木:「佐伯総司令長官! 敵反応です!」

佐伯:「むっ! よし分かった、さっそくフザケンジャーを派遣しよう!」

僕:「ちょっ、いきなりかよ! まだ心の準備が! それに僕はやっぱりやめ…」

ポッティ:「君はフザケンジャーレッドとなってヘルサ一味と戦うのだ!」

僕:「だから強引すぎるっつーの! とにかくイヤだからね!」

佐伯:「射精しないと元に戻れないし。」

僕:「うっく…」

佐伯:「ヤルしかないだろ。」

僕:「くそ・・・」

並木:「敵反応の位置情報を掴みました。クラムボム公園です。」

佐伯:「よし、レッド、出撃だ!」

僕:「…。」

 クラムボム公園。つまり、『キノコぐんぐん伝説』に行く途中にあって、僕がこいつらに拉致された現場である。そういえば、さっき見せられた映像の公園もクラムボムだったな。かぷかぷ笑っちまうよ。

佐伯:「いいか神谷君、そのスーツは攻撃も防御も女を悦ばせ快感から身を守るためにしつらえてある特殊タイツだ。それを身につけていれば、たとえ美女軍団に囲まれても、簡単にはイかないようになっている。だが、君は残念ながら童貞ばりばり伝説だ。」

僕:「余計なお世話だ。悪かったな。」

佐伯:「今回ばかりは、『悪い』と言わざるをえないな。何しろ彼氏がいるくらいで、それ以上何もできずに失恋してしまうくらいだからな。ウブというか甲斐性なしというか。しかもそれで半ば登校拒否に陥るくらいだし。」

僕:「ぐああ! 古傷を引っかき回しやがって!」

佐伯:「古傷と言うほど古くないだろ。十無は20年だし。」

 それを言うな。

佐伯:「とにかく女体にまったく慣れていないというのは不利にしか働かない。気を抜けば天国軍団に抜かれてしまうだろう。そうなれば自動的にコスチュームは解かれ、生身になってしまう。いいか、魔性の者相手に射精すると、プロラクチンというホルモンの分泌が抑えられる。そうなると性欲減退の機能が働かなくなり、男でも何度でもイクことになってしまう。結果、連続で気を失うまで射精させられ、快楽の中で強烈な“種”を蒔くことになるのだ。」

僕:「種?」

ポッティ:「世界を堕落させ、人間を快楽の虜にしていく魔性の種だ。目には見えないが魔のエネルギーに満ちたミクロの種が空気中にばらまかれていく。それが蔓延するようになれば、人間の精神に悪影響を及ぼし、だんだん性に奔放になっていくのだ。その結果社会のしくみまで変わってしまい、人間は快楽の淵へと堕落してしまう。魔族が狙っているのはそれなのだ。」

佐伯:「君が種をまき散らすことになれば、もはや奴らに抗する勢力は皆無となってしまい、多くの男性が精を奪われ自動的に種をまき散らし、やがて世界は魔族の手に落ちてしまう。それを阻止することこそ、フザケンジャーの使命なのだ。とにかく、射精はしないこと。してしまったら、すぐにフザケンジャーのポーズを取って、再びスーツを身にまとうのだ。決して女の色香に惑わされ、快楽の虜になってはいけない。」

僕:「ちょっと待って。一度射精してスーツを解かれても、もう一度フザケンジャー! ってやれば元のレッドになるんだろ? ならそんなに心配しなくてもリベンジできるんじゃ?」

佐伯:「いや、そう簡単には行かないだろう。こちらがポーズを取って元に戻れるという情報が敵に伝われば、相手は容易に君をねじ伏せ、身動きが取れないようにしてくるはずだ。何しろ立った体勢で左足を前に突き出して手を水平に動かし、なおかつ正しい角度でなければ発動しないのだからな。騎乗位で責められていてはもうどうにもならないだろう。さらに、その手首のリストバンドを奪われてしまえば一巻の終わりだ。イクのを避けるのが賢明というもの。射精はガマンするのだ。」

僕:「なるほど…思った以上にきついかも。」

佐伯:「レッドのそのスーツを信頼して、快感に負けずに戦い、武器をうまく使えば、きっと乗り越えられる。身体能力も上がるし疲労も軽減される。あとは君の精神力が鍵なんだ。がんばってくれ。」

僕:「あれ…。いつのまにか僕、出動することに決定してるんですけど?」

並木:「選択の余地はないわ! まさに今、学校帰りの高校生二人が、16人のOL天国軍団に襲われつつあるところなんだから。」

ポッティ:「たまたま近くの職場にいた美人OLが洗脳され、公園に集められたようじゃ。被害が拡大する前に、直ちに出動して、青年二人を救うのだ!」

僕:「救うったって…。そもそもここはどこなんですか? 何も知らされないまま拉致られたんですよ?」

並木:「この基地はクラムボム公園の地下にあるわ。部屋を出て右にあるハッチを開ければ外に出られるから。」

僕:「なんと。。。」

 ここはあの公園の地下だったのか。なら出動と言ってもすぐ先だな。

佐伯:「さあ、レッド、今こそフザケンジャーとしての最初の任務を果たすのだ。行け! いや、イクな!」

僕:「どっちだよ。」

 僕は部屋を出てハッチを開けた。敵からは見えないような、公園のトイレのさらに裏側の、人目につかないところに出た。

佐伯:「聞こえるか神谷君。」

僕:「!」

佐伯:「そのスーツに通信機能が備わっている。我々はモニターを見ながら武器の説明をしたり指示を出したりするから、しっかり戦ってくれ! 健闘を祈る! さあ急ぐのだ!」

僕:「本当に今回だけですからね! 終わったらやめさせてもらいます!」

 そう言いながら僕はトイレを回り、敵がいる公園中央部に走っていった。

 一方、その頃。

 「なっ! なんなんだよお前らっ!」

 二人は並んで肩を寄せ合い、やや高めの声ですごんで見せた。だが、その肩はお互いに震えつつ、奇妙な期待感と入り混じっていて、複雑な立ち位置になってしまっていた。

 そんな制服男子二人の周りを、大人の女性の集団がぐるりと取り囲んでいる。人気のない公園で、どこかから集まってきたOL集団16人が、男子高校生二人を完全に包囲してしまっていた。

 その中の、27歳リーダー格の女が、すでに全裸になっている。

 青年たちの股間はすでにはちきれんばかりになり、制服のズボンを押し上げてしまっていた。

 友達の手前、ペニスを立たせてしまうのは羞恥であったが、すでに相手も立ってしまっているという奇妙な安心からか、お互いに自分の体の反応を止められなくなってしまっていた。

 成長し、セックスへの興味も強い多感な少年たちで、男同士ときおり女の話やスケベなネタを言い合って笑うことがあったものの、いざ大人の女性の裸を前にすると、性欲の疼きと相まって、かえって恐怖を増長させてしまうのだった。

 「どお? 興味はあっても、本物を目の前にするのは初めてでしょう?」リーダーの女は得意そうに笑ってみせる。

 エロ雑誌やインターネットなどで女の裸を見たことはある二人だったが、なまで全裸の女性を見たのは、たしかに初めてであった。

 二人の前に、やや背の低い熟したお姉さんが全裸で立ち、その三人の周囲を、逃げ場を塞ぐように大人の女たちが取り囲んでいる。

 彼女たちはぴっちり制服のOLたちや、私服だが仕事用のしっかりした洋服、さらにはお尻をぴちっと包み込んだ黒スーツのレディたちである。

 すべて同じ職場の女性というわけではなく、あちこちのオフィスからまるで呼び出されたみたいに、このうらさびしい公園に、男の子二人を付け狙って集まってきたみたいだった。

 彼女たちの視線は、高校生の目と股間に集中している。その好色な美しい顔立ちは、男の子たちに戦慄を覚えさせながら、しっかりと性的興奮をかき立てることを忘れなかった。

 「…やべーよ。」「ああ、にげなくちゃ・・・」ぼそぼそと二人は言い合っていたが、もはや足がすくんで逃げるダッシュに踏み切れなかった。あるいは、危険な匂いを察知していながら、大人の女性たちの迫り来る状況に酔い、心のどこかで強い期待が働いて、足が動かないのかも知れない。

 「さあ、大人の階段をのぼらせてあげる。いらっしゃい。」女たちは高校生のズボンを脱がすように促す。逃げ場のない状況で、下半身を露出するように要求しているのだ。

 当然男子高校生たちはこれを拒否した。「どうして? ソコが苦しいんでしょう? ぽろっと出しちゃえばいいのに。」「うっく…」

 女たちは徐々に、青年たちを囲む輪を縮めていった。そして同時に、ぴっちりスカートやズボンを脱ぎはじめ、ストッキングを乱暴に引き裂いて、生足とパンティを男の子たちの前に露出していった。

 一気に全部脱ぐのではなく、一人、また一人と、ゆっくりじらすように、生足を露出させていく。じわじわと性欲を高め続け、限界になるまで、男の子たちを誘惑し続けているのだ。

 そうやって、彼らがみずからズボンを脱いで、自分からペニスを女たちの前に差し出すよう促しているのだ。

 上半身はぴっちりスーツなのに、下は白いショーツだけという、倒錯したいやらしい格好の女たちが迫ってくる。知識だけで経験のない男の子たちに、この刺激が耐えきれるものでないことは言うまでもない。

 二人は示し合わせることさえせずに、黙ってズボンとトランクスを脱いでしまった。

 その頃には、大人の女性たちの甘い息づかいがかかりそうなくらい、輪は縮まっていた。ふたりに対して16人が群がっているため、一重の輪では足りず、2,3の輪でぐるりと男の子たちを取り囲んでしまっている。全員、若い男の股間に視線が集中していた。

 「うふふ。やっと脱いでくれたね。」「こっちの子はまだ皮を被っているね。」「あら、こっちも亀頭剥けかけでおいしそうだよ?」

 全裸のリーダーが、ゆっくりと股間に手を伸ばす。

 「ね。女の人にオチンチン触られたことある? …当然無いわよねえ。」

 きゅっ。突然27歳のやわらかい手が、右側の高校生のペニスを握りしめた。優しく包み込む生手の感触は、未経験の青年たちにとって、あまりにも甘美な、耐えがたい心地よさだった。

 滑らかな手の感触がツルツルで、そんな女の人に手を握られたこともないのに、それがいきなり手を通り越してペニスを直撃したのである。耐えられるはずもなかった。

 「あ!」男の子は小さな悲鳴を上げると、感極まってリーダーの手の中で精液を爆発させてしまう。

 「クスッ。初めてだったから、女の手のやわらかさに耐えきれないのね。かわいい…」

 もはやリーダーも何もなかった。もう片方の男子も別の女のすべすべの手に撫でさすられ、あっという間に射精してしまっていた。

 これを合図に、取り囲んでいた女手の群れが、男子高校生二人の下半身に一斉にはりついてきた。

 ペニスも玉袋も、内股もふとももも、ヒザの裏もふくらはぎも、横尻やアナル周辺でさえ、大人の女の生手の餌食となり、白魚のような指先にくすぐられてしまう。

 射精しても性欲は減退せず、腰から下すべてを美女集団にかわいがられ続けて、何度でもイキ続ける。いくら出しても萎えない恐怖が青年の頭の中で駆けめぐり、反射的に逃げだそうとしてわずかに筋肉が動いただけで、生足とパンティが男の子の足に絡み付き、その恐怖心でさえ性的な刺激によってムリヤリ削り取られてしまう。スベスベのふとももや、男の横尻にはりつくショーツの生地の質感は、高校生にとっては我を忘れるほど魅力的な刺激に満ちあふれていた。

 リーダー格の女はただ、真っ先に全裸になって男の子たちを勃起させる役割に過ぎなかった。本来彼女たちは対等な雌奴隷集団であり、天国軍団という使い捨てでしかない。高校生を蹂躙してしまえば、誰に指示を出すでもなく、女たちに入り混じってペニスをしごき、生足をこすりつけて酔いしれさせ、いくらでもイクことのできるペニスをこれでもかと刺激し続けるばかりである。

 その一方で、彼女たちは本来、そのほとんど全員、彼氏持ちか、既婚者であった。ボウイ将軍が選んだ美女OLばかりがあちこちから集められたので、つまり選び抜かれた大人の女性たちである。当然男がいるのが当たり前だった。

 彼女たちは、自分が何をしているのかを良く理解していた。見ず知らずの、年下の青年たちに、自分から服を脱いで誘い、破廉恥な行為にふけっているのだ。

 それが耐え難いおぞましさと恐怖に満ちあふれているのは言うまでもない。

 だが、行動も言動も表情も息づかいでさえ、もはや自分の思い通りにはならなかった。誰かに操られているようで、叫ぶことさえ叶わない。内心は地獄の苦しみである。たとえ生理が来ていても、妊娠していても、お構いなしであった。

 やめたいのにやめられない。勝手にしゃべり、勝手に動いていく。ある者はこれは夢だと自分に言い聞かせ続け、別の者は自分が勝手に動いている状況を前にして恐怖が恐怖を呼び、狂いそうなパニックに陥っている。だがもちろん、気が触れることさえ魔族によって禁じられているのである。あきらめた女もいて、目の前の性行為を愉しもうとさえしてしまう。そんな自分が情けなくもあったが、もはやどうしようもない。

 全員、みずからの本来の意志とはまったく関係なく肉体が反応し、すでにそのショーツは全員びしょびしょに濡れそぼってしまっていた。

 「さあ、全員の中で射精するのよ。そうしたらふとももん様の足をたっぷり堪能させてあげる。」女たちは愛液滴るショーツをさえ次々と脱ぎ始めた。

 「そこまでだ!」

 そこへ赤い全身タイツを身にまとった男が、チンチンをフル勃起させたまま走ってきた。そこにいた誰もが、ついに頭のおかしい変態野郎のお出ましだと思った。餌食になっている少年たちでさえ。

 エーエー、僕もそのことは百も承知ですよ。もうかなりヤケクソである。

僕:「天国軍団だな。…今助けてやる。まずはその男を解放しろ。」

女:「…なんだお前は? 我々の計画を邪魔するつもりか? …いや、それとも、お前も私たちの手で抜いてもらいたいのか。それなら混ぜてあげるけど?」

僕:「悪いが前者だ。お前たちの陰謀、絶対阻止してみせる。」

 僕は片足を上げてポーズを取る。

僕:「ナメてる戦隊フザケンジャーレッド、見参!」やってて恥ずかしくてたまらないが、ヤケクソになっているので、逆に何でもできる気がした。

女:「フザケンジャー…ポッティの手の者か。」

 女たちは男の子たちを取り囲んでいた輪を解き、一斉に僕に向き合った。男子高校生たちは抜かれすぎてふらふらだったところで解放されたため、その場に崩れ落ちてしまう。

女:「やれやれ。ポッティが何かをしているという情報に基づき、ボウイ将軍から警戒するよう言われていたが、出てきたのは全身タイツでチンチンを立たせた、とんだ変態野郎だったとはな。」

僕:「僕もそう思う。って、余計なお世話だ!」

女:「まぁいい。お前にも天国を見せてやろう。私たちの手と体で抜きまくってあげる。イキ続けて、世界をヘルサたん総統閣下のものにするため、種を吐き出し続けるがいい!」

 突然女たちの服装が変わった。男を蹂躙し、誘惑して精を抜き取る「人間女性モード」から、敵と見なした男を徹底的に射精させて倒してしまおうとする「戦闘員モード」に切り替わったのである。

 全員きわどい黒の下着姿になった。

 乳房の大半を露出させつつ、きわどい乳首周辺のみ、黒い吸着型のブラジャーがはりついている。特殊シリコンで作られたやわらかい素材で、女の肌と同等あるいはそれ以上の弾力と滑らかさを演出しつつ、そこに魔力も影響して、しっかり吸いついた後は乳房が重力で垂れることがないよう、形のいいままおっぱいを自動的に寄せ上げて谷間を強調、なおかつ乳首のポッチを浮かび上がらせ、さらには自分の意志で変幻自在におっぱいを動かすことのできる機能も備わっている。これによって、ブラジャーを剥がすことなく、おっぱいの感触をいっさい損なわず、パイズリ時は手を使うも使わないも自由となって、両手でペニスを愛撫しながら、同時に変幻自在に根本を谷間でしごくことも可能になっている。あらゆるサイズのおっぱいに対応する魔性のヌー●ラであった。

 下もこれまた特殊シリコンの黒パンティであり、しなやかな小三角形で股間部分に黒く貼りついている。女性器とその周辺のみを覆い、横尻横腹は丸出し、毛の生えていないアナルも臀部のワレメもばっちり露出、それでいてやはり魔性のパワーによって、ヒップが持ち上げられ寄せ上げられ、垂れることなく女性らしいふくらみをきゅっとキープしていた。女のやわ肌を完全再現したパンティであり、そこにペニスをこすりつけて射精にいたらしむことも可能。さらに、女性器部分はいつでも開閉でき、パンティを脱ぐことなく挿入までできる。挿入時は黒いパンティが肌色となり、裸同然に見えるようにするニクい演出だ。

 かような変身を遂げた天国軍団の戦闘員たちは、首から下のあらゆるムダ毛が痛みを伴わずにすっかり抜け落ち、全身余計なシミやアザや傷跡もなくなり、ぽつぽつ毛穴もしっかり引き締まって目立たなくなる。エステに通いつめるのと同等の、磨き抜かれた肌を手に入れるのである。きめの細かさも通常の二倍となり、しっとりした美しい肉体を持つことになる。下着以外のところは完全に露出され、白や褐色がかった裸の肉体が敵の前にありありと見せつけられる。もちろん生足であり、靴下もなく、かかとが半分見えるような黒いシリコン製ローシューズや、足首やふくらはぎを引き締める黒いハイヒールを履いていた。この靴も特殊で、固い地面や小石やガラス片を踏んでもいっさい痛みもなく運動能力も高めておきながら、やわ肌の質感を決して失わない優れモノ。靴のまま足コキ攻撃をしても、しっかり女の足でスリスリされているのと同じ感触をもたらすことができる。指の感触まではっきりと感じさせることができる魔性の力だ。

 頭部は耳と髪の毛がすっぽり入るよう黒いシリコン生地で包まれ、目の部分は黒いゴーグルで覆われ、鼻と口と頬だけが露出されている。

 ぱっと見、戦闘員個人の識別はつかない。顔も髪型も隠されていて、後はそれぞれ背の高さが違う、年齢が微妙に違う、体つきが違う、おっぱいの大きさが違うといった特徴で識別できる程度であった。もちろんそれぞれに名前があるわけでもなく、みんな同じ格好で没個性化させられている。

 これらの黒いコスチュームから、女体に向けて絶えず魔力が送り込まれており、彼女たちの肉体的能力(セックス力と運動能力)を高めつつ、性欲を増強させ、魔族の命令に絶対的に忠実に動くよう常につき動かされる。目を隠しているだけに戦闘員っぽさも十分だった。

 人間女性モードの時は、魔族の命令に従って、ターゲットの男を誘惑し、骨抜きにして、射精させ脱力したところで、彼の身を怪人に受け渡し捧げることが主な任務である。そのほかにも、諜報、隠密行動、情報収集、力仕事などの雑用もこなさせられる。

 戦闘員モードは、ポッティが動くことを想定した結果設けられたものであり、このモードとなった時は半ば魔族化させられ、もっぱら“敵の男ども”を射精させ籠絡することに特化している。強烈な性欲の疼きに全身を支配されており、しかもこの疼きを解消するためには、敵の男を射精させるか、敵の男の快感攻撃に負けて絶頂させられるかのいずれしかない。敵を射精させることができた時、“ご褒美“として狂わんばかりの快楽が下着から女体へともたらされる。一瞬にして数回絶頂するが、あまりに強烈なので、ほとんど表面的な反応はない。声も出さずのけぞったり体をこわばらせたりもできずに、脳が強烈な快感に犯されるのである。その天国が一瞬、戦闘員にもたらされる。

 肉体的反応というより、ほとんどが精神的な反応である。そのため、この至高の絶頂感覚は、戦闘員たちを疲れさせることもなければ、その後の戦闘に影響をもたらすこともない。何度でもこの感覚を味わうことができ、何度でも味わいたいと願う。どんどん深みにはまっていくのだ

 戦闘員たちは、その至高の天国を求めて、さらに敵の男を射精させようと躍起になってくる。天国軍団は、男に天国を味わわせるためだけではなく、自分たちも天国を味わうのである。

 逆に、敵の男の攻撃によって絶頂してしまった場合、快感は通常と同じだが、それ故に激しい肉体的反応を伴う。声を上げびくんとのけぞり、普通にイクのである。その結果、魔族の呪縛が解けてしまい、コスチュームが消えてしまって、魔性の天国を与えられることがなくなるという厳罰を受けるものの、同時に魔族の支配からも解放されるのである。

 このように、計算され仕組まれた16人の戦闘員たちが、裸同然の露骨にいやらしい格好となって、フザケンジャーレッドを取り囲んでいるわけである。

僕:「えっと…なんなんですかこのド変態女集団は。クレイジー極まるんですけどー。下着姿なのに顔隠してるしー。コワいんですけどー。けっ●う仮面ですかコノヤロー」

佐伯:「それが天国軍団の正式なコスチュームだ。気をつけろレッド。その格好になった天国軍団の戦闘能力は、元の女性のおよそ二倍だ。つまりそいつ一人で女二人分のセックス力を備えている。さっきのOLと同じと思ってはダメだ。もはや中身は魔性の女そのもの。警戒せよ。」

僕:「警戒ったって・・・どうするんだ?」

佐伯:「敵の快感攻撃に耐え、射精しないようにするんだ。そしてこちらからも性的な攻撃を加えて、一人一人着実にイかせて倒せ。」

僕:「そんなムチャな。この高校生と同じ、僕も素人だし経験ゼロだし、女手にアソコ握られただけで出しちゃうよ。どうやってイかせたらいいかわかんないし。」

佐伯:「大丈夫だ。さっき説明したとおり、そのスーツは女からの快感を軽減させる特殊素材でできているし、防御システムもばっちりだ。それに、いくつもの武器を搭載してある。それを駆使して全員を倒すのだ。運動能力も高まっているし。」

僕:「武器ってどうやるの?」

佐伯:「武器の名前を言えば自動的に発動する。滑舌が悪いとダメだぞ。それと、そのスーツで快感攻撃をくり出せば、自然と特殊な微弱電流が女体に流れるようにできている。それは女体の性感神経をダイレクトに刺激しつつ、脳の一部の記憶域に影響し、おぞましい記憶を消し去る力もある。つまりそのコスチュームで女をイかせれば、彼女たちが戦闘員だった時間帯の記憶も消すことができるんだ。そうでなければ、もともとただの人間の女だった天国軍団の心を助けることはできないだろう。」

僕:「…。」そうだった。彼女たちは本当に本意でこんな格好して魔族に従っているわけではない。催眠に近い状態で洗脳され、体を乗っ取られ、それでいて自分のアイデンティティだけは残されている中途半端な状態で、ムリヤリセックスに参加させられたり戦わされたりしているに過ぎないんだ。おぞましい経験は消えなくても、せめてその記憶を奪ってあげないと。

佐伯:「戦う前にその男の子たちを解放しよう。フザケンジャービームだ。」

僕:「えっ…」

佐伯:「エネルギー充填の速度の関係で、およそ5秒に一発しか撃てないが、その手から特殊電流のビームを放つことができるんだ。それは男性の記憶、魔族と関わった記憶だけを消すことができ、女に対しては絶大な快感ダメージを与えることができる。まずはそのビームで敵の人数を減らしていくんだ。」

僕:「分かった。…フザケンジャービーーーム!」

 ポーズを取ると、パワワワッと七色のビームが手から発せられた。それは倒れ込んでいる高校生たちに当たり、気を失っている彼らの記憶から、さっきの恐ろしい体験を消し去ることに成功した。

 5秒経って。「フザケンジャービームっ!」

 今度は天国軍団めがけてビームを発射。

女:「ひゃあああ!」言語能力までは失っていない戦闘モードの女二人にビームが当たる。すると、彼女たちの全身の性感神経が、微弱電流によってまんべんなく刺激される。それは全身くまなく極上のテクニックで愛撫されつつ性感ポイントにダイレクトに合致するような挿入ピストン攻撃を受けたのと同じくらいの快感を、女たちに与えることができた。

 女二人はその場に倒れ込み、元の服を着た状態で気を失ってしまった。絶頂させることができたのだ。

 おそらく彼女たちは同時に記憶も奪われ、戦闘員だった経験は表面上「なかったこと」になる。そうするしかないが、これで解放ということになる。

 あと14人。5秒後にさらにビームを発射した。

僕:「フザケンジャービーム! …。…。フザケンジャービーム!」

 僕はどんどん怪光線を女たちに当てていく。

女:「おのれ!」天国軍団は僕を取り囲み、反撃の体勢に入った。

僕:「フザケンジャービーム! …。…うっ!」

 ビームを撃ってから次のビームを撃つまでに5秒はかかる。その合間を付け狙って、一人の女がペニスをいきなり口に含んできた!

 女の人に触ったことも、手を握ったことも、ましてやちんちんを触られたこともない僕が、いきなりフェラチオされてしまった。

佐伯:「いかん、レッド、すぐにそいつの口から脱出するんだ!」

 ひざまずいた体勢で、女はぷるぷるの唇でペニスをしごきながら、風俗嬢顔負けのテクニックで亀頭から根本までを丹念にナメ上げていく。もちろんその技術はもともと彼女が身につけていたものではなく、戦闘員が戦闘モードになったときにコスチュームによって自然と身についてしまう魔性のテクニックである。

 生身の僕なら咥えられた瞬間射精していただろう。

 フザケンジャーレッドのコスチュームは、佐伯さんが言っていたとおり防御にも優れている。全身タイツではありながらまっすぐ前方にペニスが立つようになっていて、勃起した肉棒は容易に女の口の中で滑らかにしごかれていく。だが、同時にペニスは分厚くて硬いゴムのコンドームに包まれているのと同じ状態で、生地が女体に痛くこすれることもなく、こちらの快感ダメージも相当に軽減される。女の口と舌にさらされているのに、快感はずいぶん少なかった。

 ただ、そうは言っても、こちらは経験のない高校生。しかも相手は人間の女性の二倍のテクニックを身につけた魔性の女戦闘員だ。いくらダメージが軽減されると言っても、じわじわ奥からこみ上げてくる性感刺激は徐々に強まる一方だ。

佐伯:「レッド、コスチュームは万能ではない。快感をわずかでも通さなければ勃起もなくなって反撃が難しい上、敵は魔族、たとえ鉄の鎧で身を包んでも女の肌の感触を感じさせる力を持っている。そのままでは射精してしまうぞ。早く脱出するんだ。」

僕:「そ、そんなこと言ったって!」滑らかに吸引している女の口は、僕が腰を引いても、体をひねってペニスを引き抜こうとしても、奥の奥までちゅううっと吸いついてきて離れてくれない。それでいてリズミカルに根本から先端までやわらかい唇でしごかれまくり、ひっきりなしに快感を強制的に送り込んでくるのだ。

 しかも、僕の真後ろに27歳のレディがはりつき、おっぱいを押しつけこすりつけながら、同時に僕の退路を断ち、腰をたくみに使って、引こうとしている僕の腰をムリヤリ前方に押し出してくる。そこに女の口が肉の筒となってペニスをむさぼり、ぬめった舌がちろちろとあちこちを丹念にナメしゃぶってくるのだ。

佐伯:「離れた敵ならビームで倒せるが、接近戦でのビームは危険だ。性感神経を刺激する電流が暴発する可能性がある。そうなればレッド自身も無事では済まないだろう。…ここはビームではなく、フザケンフィンガーだ!」

僕:「ふ、フザケンフィンガー!」

 僕が叫ぶと、両手の指先が細かく振動し始めた。

佐伯:「今の君の指先は、熟練AV男優のフィンガーテクニックの8倍の快感攻撃力を持っている。電流とバイブの力で女体を攻撃せよ!」

僕:「よし!」

 僕は全裸よりもいやらしい格好をした下着美女軍団の体を、次々と触っていった。

 乳房、内股、オンナ表面、脇の下など、敏感に感じるところを指先でくすぐり、愛撫し、こすりあげていく。シリコンブラから完全に浮き出ている乳頭を親指と人差し指でつまんでこねくり回したりもした。

 それはただの性的な刺激にとどまらなかった。指先の細かい振動が、彼女たちの性感神経の奥までジンジン響いている。さらに、佐伯翔の制作による微弱電流機能が、彼女たちの体内に流れ込み、全身の性感神経をくまなく刺激していくのだ。それは、もともとただの人間の女性である天国軍団戦闘員には、一瞬で絶頂してしまうほどの強烈な刺激であった。

 「ひゃう!」「あふ!」「やん!」女たちは僕の攻撃を受け、次々に倒れ込んでいく。絶頂を迎えた女はコスチュームも消えて、もとのスーツ姿や私服姿に戻っていく。記憶も消され、ただのOLになっていくのだ。

 もっとも、天国軍団の記憶を消すことはできても、魔族に洗脳されてから絶頂させられ、気を失って、しばらくして気がつくまでの時間は、彼女にとって空白の時間となる。そのあいだ何をしていたのか、どうして自分がこんなところで他の女たちに混じっているのか、まったく皆目見当もつかない状態で投げ出されることになる。しかも、仕事などを放り出して働かされたあげくしばらく気絶するのだから、そのダメージは完全には払拭できないのだ。

 魔族もひどいことをするものだ。いや、魔族だからこそ、そんなことも平気で行うのだろう。僕はそんなことを思いながら、次々と戦闘員をイかせ続けた。

 ぐちゅ!

 突然ペニスが熱い感触に包まれた。OLの大人のオンナが、突然バックでペニスを飲み込んできたのである。

僕:「あ、あが!」

佐伯:「い、いかん! レッド、すぐに離れろ!」

僕:「あああ!」全身にとろけるような感触が響き渡る。あまりの熱さと心地よさに、我を忘れてしまっていた。

 戦闘員の性器と結合してしまっている! これまでにない、強い締め付けと心地よいやわらかさが、いっぺんにペニス全体に襲いかかっている。

 いかにこのスーツが快感をセーブするように作られていても、それは所詮、分厚く硬いコンドームで防御しているくらいの効果しかない。半減以下のダメージではあっても、これまで本番なんてしたこともないペニスに対しては、射精に十分すぎるくらいの感触であった。

 たぶん僕に恋人がいて、1,2回抜いておくなどの処置をせずにいきなり入れてしまえば、このうえない快感で我を忘れて、表面にあてがったり途中まで入れている段階でイッてしまったに違いない。

 天国軍団のオンナは魔族によって強化されている。それに加えて、敵はこれでもかと腰をくねらせてペニスを揉みしだきながら、ずちゅずちゅと前後に動いてペニスをいきなり膣のヒダできつくしごき上げてきたのだ。

 耐えきれるはずはなかった。

僕:「…あ。」

 びゅく!

 快感で何もかも忘れ去った僕に多幸感が覆い被さる。射精の感覚で頭の中が真っ白になった。

 その瞬間、赤い全身タイツが消え失せ、僕はもとの神谷達郎になってしまっていた。

僕:「うわああ!」

 とっさに僕は全力でペニスを引き抜き、もんどり打って地面に転げ、女性器の呪縛から身を引き剥がした。フザケンジャーレッドではなく、生身の神谷の体で、天国軍団の責めに耐えきれるはずもなく、あっという間に絶望的に連続射精させられてしまうことは、直感的に理解できた。その恐怖が僕をつき動かし、とっさに脱出することができたのだった。

僕:「ナメてる戦隊フザケンジャー!」僕はふたたび正確にポーズを取って変身、赤い全身タイツに身を包むことができた。

佐伯:「あ、危ないところだった! よかった、君が機転を利かせて脱出し、ふたたびフザケンジャーになることができて。」

 通信機能から佐伯さんの声が響く。指令本部でも戦慄したらしい。

佐伯:「気をつけろ! 射精したら変身が解けてしまうのだぞ! そうなれば、童貞野郎の君では魔の軍団や怪人には太刀打ちできん! 絶対射精するな!」

僕:「そ、そんなこと言ったって…。」

佐伯:「ぐむう。戻ったら特訓だ。それより、今は天国軍団を倒すことが先決だ。今の君の状態では、挿入して戦うのはムリだ。ここはひとまず、残り6人の天国軍団を、ビームとフィンガーで倒してしまえ!」

僕:「…。」自分でもそうするしかないのは分かってる。

 僕はふたたび彼女たちに対峙し、フザケンジャービームを放っていった。

 何人かがビームの餌食となって倒れる。だが、2人の天国軍団戦闘員が残り、僕にまとわりついた。僕は彼女たちに責められないように腰を引いたりして応戦しながら、フザケンフィンガーで応戦した。

 一人は乳首とオンナを同時に責められ、あっさりと絶頂を迎える。

 残り一人となった戦闘員は、何とか僕のペニスを膣におさめようと、しきりに押し倒そうとしてくる。倒れずに踏ん張った僕に立位で挿入しようとしつこくしがみついてきた。油断すれば挿入させられ、ふたたび敗北してしまう。

 僕は必死に指先で彼女の全身をまさぐり、特殊な電流を送り込み続けた。

 「あぐ…」戦闘員はついに耐えきれなくなり、その場に崩れ落ちた。

僕:「はあっ、はあ…」全員をイかせて倒したあと、僕は相当の運動量にゼエゼエと荒い息を吐いていた。飛び回り転げ回り、さらにその上で一回射精しながら再戦を挑んで、16人の年上の女全員をイかせたのだ。スーツの機能にほとんどを負っていて、運動量が相当であってもスーツの力がサポートしているので、死ぬほどではないものの、それでも相当の運動量だった。

佐伯:「よし、これでひとまずは引き上げだ。本部に戻るのだ。」

僕:「…。」

佐伯:「ッと、その前に、まずはどこかで適当に抜いて、レッドのスーツを解除してこい。」

 僕は公園のトイレに駆け込み、個室に入る。

 天国軍団の滑らかな裸体の群れを思い起こし、フェラチオされたり手コキされたり、果ては挿入で責められたりといったシーンを思い起こした。そうして自分の股間を手でしごき始める。

 さすがにスーツで守られているため、普段のオナニーのような快感は簡単には得られなかったが、それでも、これまで大人のOL集団に群がられて気持ちよくさせられた経験などなかったため、すぐに快感が押し寄せた。 あとは、並木さんだったか、彼女のきわどいレオタード姿が妙にいやらしかったのを思い出していた。

僕:「ああっ、並木さん!」僕は天国軍団の中に並木さんが混じっていて僕を責めているという妄想に身を任せ、彼女の生足やぴっちり乳房のふくらみを思い出しながら一心不乱にペニスをしごいた。男好きのする体だった。そんな彼女が有無を言わさず僕にはりついてペニスをしごきたてている。そんな空想と軍団との戦いの記憶が入り混じって、ますます高められていった。

僕:「うっふ!」精液がにじみ、スーツを汚す。が、スーツには瞬間的に清浄する機能が備わっているみたいだ。たぶん淫毒の愛液を染みこまされても大丈夫なように設計されているのだろう。どんなに射精しても、次の瞬間には装置が作動して、しめった股間部分は瞬間的に乾きキレイになっていく。

 その上、スーツはあっさりと解け、僕は生身の神谷に戻っていたのだった。

 僕はそそくさとトイレを出て、裏側のハッチを開けて中に入っていった。

僕:「…。」

佐伯:「…。」

並木:「…。」

 戻ったはいいが、みんな無言だった。

佐伯:「…あー、俺が言い忘れてたのがいけなかったんだけどさ。」

僕:「?」

佐伯:「そのー、なんだ…。自分で抜いて元に戻る際にだな。」

僕:「…。」

佐伯:「後頭部にあるスイッチを押して、その…言いにくいんだけど、”通信機能”を切ってくれないかな?」

僕:「…あっ!」

並木:「・・・あと、私をオカズにはしないでね。」

僕:「ああああ!」

 死にたい。いっそ殺して。死んだ方がマシだ。本気でそう思えた瞬間だった。

 オナニーしている一部始終と、僕が並木さんの名前を連呼しているシーンは、本部のモニターから筒抜けだったのだ。

 こんな辱めを受けることになろうとは。死んでしまいたい。




######


カリギューラ女王:「ええい、なんなのじゃ! あのおかしな赤い変態仮面野郎は!?」

 天国軍団とフザケンジャーレッドとの戦いを、魔性のモニターで見つめていたカリギューラ女王が奇声を発した。

ヘルサたん総統:「おそらく、ポッティが差し向けた“正義のヒーロー”ってところかしらね。おもしろくなってきたわ。」

カリギューラ女王:「うぬう! おもしろがっている場合ではあるまい! さっそくあのポッティの奴めが嗅ぎつけおった。」

ヘルサたん総統:「くすっ。大丈夫よ。我々が人間界でメカニック・ヘル計画を実行すれば、ポッティが何かしてくることくらい、想定済みなのよ。人間界で魔族の不穏な動きがあればすぐに手を打ってくる。それを見越した上での計画でなければ意味がないわ。」

カリギューラ女王:「おのれ…今度こそ、ポッティの奴めを撃退し、我らの完全勝利を果たすのだ!」

ヘルサたん総統:「まぁそういきりたってもしょうがないわ。総統もそうだけど、女王たるもの、もっと堂々と毅然たる物腰であるべきね。」

カリギューラ女王:「ぬううう! これが落ち着いていられるか! 18年前の怨みは忘れぬ!」

ヘルサたん総統:「だからこそ、落ち着いて侵略すればいいのよ。大丈夫、ポッティは我々にも我々の組織にも、直接手を出すことはできないことは知っているでしょう?」

カリギューラ女王:「…。」

ヘルサたん総統:「おそらく奴は、何らかの方法で選出したあの男に特殊なスーツを着せ、そこに神通力を流し込んで強化しているのね。年齢や風貌から言って佐伯翔ではなさそうだけど、佐伯もどこかで一枚かんでいると見た方が良さそうね。」

カリギューラ女王:「うむ。ところで、ヘルサたん総統。一枚噛むとは、何を一枚噛んでおるのじゃ? ガム?」

ヘルサたん総統:「看板よ。芝居で一枚の看板に役者一人分書くところから転じたの。」

カリギューラ女王:「へえ。」

ヘルサたん総統:「ポッティが直接手を出せないからこそ、人間の男性に戦闘を委託し、そいつを強化して我々に対抗しようとしている。だが、奴にできるのはそこまで。我々のように強固な組織や集団を作ることはできない。何しろ世界を統べる唯一神の存在を軽々と人間界全体に知らしめることなんて、彼にとってはあってはならないことだからね。」

フローリア将軍:「…。」完全にカリギューラ女王の質問を軽く流して闇に葬ったな、と彼女は思った。

ヘルサたん総統:「せいぜい数名程度を巻き込むくらいしか、ポッティは対抗手段をとれない。それに対して、我々の方は、どんどん組織を拡大し、臨時の天国軍団から、徐々に完全洗脳された常任の天国軍団が拡大していく。怪人の数も増える。さすればより多くの男、何万人もの男たちが日夜絶頂し続け、精を我々の体に放つことになる。」

カリギューラ女王:「常任の天国軍団?」

ヘルサたん総統:「ええ。今はまだ、その場に居合わせた美しい娘の精神を乗っ取り、その体を操る一時的なもの。洗脳にも時間がかかるのよ。だから、彼女たちはもとの意識を保持したまま“いやなこと”をさせられているという感覚に陥っているわ。でもね、これも拡大し、回数も増えるに従って、本人が”このまま何もかも忘れて快楽に浸って楽しもう”と考えるようになる。そうすれば、一時的な天国軍団の戦闘員から、身も心も魔族に魂を売った本物の戦闘員に生まれ変わることになる。それこそが常任というわけ。」

カリギューラ女王:「なるほど。」

ヘルサたん総統:「それでね。何万人もの男たちが魔の女の体で射精すれば、その精子には微量の“種”が付着して、微粒子化して空中にばらまかれるの。それはあなたもよく知っているわよね。」

カリギューラ女王:「うむ。もともとは私が発明した原理だからな。種となった精が大気にばらまかれ、それを吸い込んだ生物が徐々に色欲を高めていく。そうしてそこから新たなる射精が生まれ、さらに多くの種が発散していくわけだな。」

ヘルサたん総統:「そういうこと。佐伯翔の時は、一回の射精でばらまかれる種の量が半端ではなかったけど、今度の作戦では、それができない代わりに、数万人の男たちの精に少しずつの種をのせて空気中にばらまいて、同じ効果を得る方法をとる。」

カリギューラ女王:「くっくく…そうなれば大気の色は徐々に桃色となり、男も女もセックスに狂うようになる。社会制度も法律もすべて、これを奨励し、さらには強制するようになる。身も心も人間どもは我々の奴隷となるのじゃあ!」

ヘルサたん総統:「その通りよ。そして、ポッティごときの作れる小さな組織程度では、一日に何千カ所、世界中で繰り広げられる我々の性の饗宴を食い止めることなどできはしない。もし食い止めるとすれば、ポッティ自身がすべての力を解放して、みずから実力行使に出て、結果、人間界を火の海にしてしまうか、さもなくば、我々の組織を、今の初期の段階でことごとくしらみつぶしにして壊滅させ続けるか、どちらかしかないというわけ。」

カリギューラ女王:「前者はあり得ぬ。人間界を火の海にして滅ぼしてしまっては、元も子もないではないか。」

ヘルサたん総統:「そう。だからこそ、奴が取れる手段はひとつしかなかった。その結果登場したのが、あの、ふざけんじゃあとかいう赤い全身タイツの変態仮面野郎だったというわけ。奴はあの赤い人を使って、我々の出先の組織をしらみつぶしに壊滅させていく腹づもりなのね。」

カリギューラ女王:「うぬ。それなら、あの変態仮面を倒してしまえば、ポッティが次の男を正義の味方に仕立てる前に組織を大きくできるな。」

ヘルサたん総統:「ええ。しかも、フザケンジャーレッドを我々が倒せば、ポッティはそれ以上に強力なスーツや人材を用意しなければならず時間もかかるから、奴が次を用意する頃には、我々の組織もいい加減強大かつ広範になっている。そうなれば、いかに強力なヒーローを作り上げても、我々の組織を壊滅させることはできなくなる。攪乱作戦や陽動も得意だし、あちこちで事件を起こし続ければ追いつかない。つまり、実質、あの赤い変態野郎が、ポッティの最後の切り札というわけ。」

 ヒーローもエライ言われようだな、とフローリア将軍は密かに思った。

ヘルサたん総統:「気をつけるべきは、まだ我々の人間界での組織力が初期の段階であり、ごくごく小さいということ。その間に壊滅させられ続ければ、いろいろとまずいことになる。早い段階でフザケンジャーを倒しておく必要があるんだけど、あの戦いを見て分かったわ。とくに注意は必要ないみたい。」

フローリア将軍:「はい。それは分かります。あの男の戦い方はまるで素人。セックスなどまったく体験したことのない、未熟な少年と思われます。」

カリギューラ女王:「しかも、あのスーツ以外神通力は与えられていないようじゃ。佐伯翔の時のような強力なパワーは感じられなかった。」

ヘルサたん総統:「これからボウイ将軍に命じて、現地であの男の素性を調べさせるけど、あたしの見る限り、フローリア将軍の言うとおりあの男はまったくセックスを知らない童貞野郎、それもまだ若く、性欲盛んで多感な年頃ね。おそらくは15歳から17歳といったところかしらね。快感に対する耐性もできていないし、スーツの力を借りてこれを駆使しているに過ぎず、その動きからしても、まるでテクニックがなっていないわ。どこの馬の骨かは知らないが、我々の女力の前にはまるで無力よ。」

カリギューラ女王:「ならば。奴の素性が分かった時点で、私の淫呪をプレゼントしてやろう。夜な夜な淫夢に苛まれて、夢精し続け、体も精神も弱体化させる。そこにヘルサたん総統の天国軍団やメカニック怪人を送り込めばよい。いかに強力なポッティのスーツに身をまとっていても、中身がボロボロなら、ひとたまりもなく射精させることができよう。」

ヘルサたん総統:「そうね。いいと思うよ。ただし、ポッティの方もそれに対しては黙っていないはず。淫呪を和らげる処置くらい施してくるわ。」

カリギューラ女王:「もちろん分かっておる。だが毎晩のこととなれば、徐々に心も崩れよう。さすれば心に隙ができ、淫夢も過激さを増していくはず。そうなればこっちのものじゃ。」

ヘルサたん総統:「そうしていただければ。内側と外側から女まみれにして、おいしく精をいただきましょう。ポッティが選ぶということは、それなりに精液にも“素質”があるはずだからね。」

フローリア将軍:「それに、奴が射精したとき、一瞬でしたが、赤いスーツが解けておりました。もちろん、その一瞬で奴の顔は割れ、こちらの写真にも収められております。」フローリアは、モニターから抽出した少年の顔写真を提出した。

ヘルサたん総統:「ええ。ということは、奴は射精すればスーツの防御がなくなり、むき出しの素人少年童貞変態野郎に戻るということ。そうなれば天国軍団でも怪人でも、その男を気絶させるほどに射精させて再起不能にできるわ。一度でも射精させることができれば、あとはふたたび変身される前に組み伏せ、一気に連続射精に追い込めば済む。そして、レッドは素人で、天国軍団に挿入しただけでイッてしまうほど弱い。…つまり、我々の敵じゃあないってこと。」

カリギューラ女王:「うむ。じゃがポッティのことだ、念のために警戒しておくに越したことはないな。」

ヘルサたん総統:「その通り。こちらとしてもしっかり手は打っておかなきゃね。…フローリア将軍。伝令お願い。」

フローリア将軍:「かしこまりました。…伝令。フザケンジャーレッドの正体を探れ。手段は問わぬ。奴の素性と本名、居所を掴むのだ。」

カリギューラ女王:「…。」

フローリア将軍:「…。」

カリギューラ女王:「…。」

フローリア将軍:「ええい! ボウイ将軍! 聞いておるのか。”ラジャー”とか”らじゃりますた”とか何とか言ったらどうなのだ!?」

ヘルサたん総統:「あー、ボウイは無口な女でな。よほどのことがない限り何も言わん。大丈夫、ちゃんと伝わっているから。何しろお前の声は神界にまで時空を超えて届けることができる力を持っておるからのお。」

カリギューラ女王:「とにかく、一刻も早くフザケンジャーレッドの素性を探るのじゃ。どんな手を使っても、早く危機の芽は摘んでおかんといかん。相手はあのポッティだ。油断はならぬぞ!」

 フローリア将軍は、カリギューラ女王の言葉をそのまま伝えた。人間界で彼女の声を聞いたボウイ将軍は、さっそく行動に移るのだった。


######




 ふたたび舞台は人間界。

 フザケンジャーの基地。

 戦いが終わった僕たちは、誰一人しゃべらなかった。無言の重圧というか、全員が発する重苦しい空気が、基地全体を包み込んでしまっている。

 だが、そのオーラの理由はそれぞれ別個であった。

 並木さんは、さっきの僕の破廉恥な行動を目の当たり耳の当たりにして、強い嫌悪感でじとっと僕をねめつけると、決して目を合わせずに針のむしろのような空気を僕に送り込んでくる。

 佐伯さんは、僕の戦い方に不満があるらしく、押し黙ったまま、僕の方を向いて腕組みをして目を閉じていた。が、完全に心の目で僕を睨みつけているのが分かる。

 ポッティは何を考えているのかは分からない。表情のないてるてる坊主で、これまた何も言わずに空中をぷかぷか浮かんでいる。

 僕は。そんな連中を睨みつけていたがそれすらもばかばかしくなって、さっきの戦いの滑稽さとオナニーを見られた羞恥と、変な連中に関わった自分への嫌悪で、仁王立ちしたままぼやっと2人と1匹(?)を白々しい目で見回していた。

 誰も口を開かないまま小一時間が経過。

 やがて、立っているのに疲れた佐伯さんがどかっと椅子に腰を下ろした。が、ずっと無言のままだ。

ポッティ:「…このモンタージュ画像は、あのドイツ人とドうイツジン物だっ!」

僕:「…。」

佐伯:「…。」

並木:「…。」

ポッティ:「う゛っ…。外した…。」

 そんなのが映像化したら、次の瞬間隕石が堕ちる画面で人類滅亡シリーズとなって●コ●コ動画にアップされるぞ。またポッティか。

ポッティ:「うーむ。何か言わんと始まらんぞ。」

僕:「…。」

佐伯:「…。」

並木:「…。」

ポッティ:「…うんぽっぽー」おどりながらくるくる回る唯一神。

並木:「…ぷっ」

佐伯:「それが唯一神の台詞かよww」

 だが、重苦しい空気は、一瞬にして吹き飛んでしまった。

 なんだようんぽっぽーって。ウンコなのか。それウンコなのか。下品すぎる。唐突すぎる。なんなんだ。

 とにかく、僕はもう、これ以上こいつらに関わるのはいやだった。喫茶店『キノコぐんぐん伝説』に佐伯が偵察にきて、変なてるてる坊主に不思議な力で拉致されて、それから変な女たちと破廉恥な“戦い”をさせられて。あまつさえ恥ずかしい自慰行為を、しかもオカズにした女に見られた。もう最悪だった。

佐伯:「まぁ、とにかく、神谷君はもっと鍛える必要があるな。女にしっかり慣れて、次の戦闘ではあっさり射精してしまわないようにせねば。まずはエロビデオを見てもカウパーを漏らさないこと。簡単に興奮したらイクのもあっという間だからな。それと、もっと刺激に強くなることだ。早漏じゃあ、フザケンジャーはつとまらんぞ。戦いの合間を縫って、さっそく特訓せねばな。」

僕:「………な…」

佐伯:「ん?」

僕:「勝手に決めんな! もう嫌だ! こんなのやってられねーよ! この戦い、これを限りに降ろさせてもらう! ジジイでも赤子でも代わりを連れてくればいいだろ!」

佐伯:「なんだと!? 人類の危機に直面し、君に命運がかかってるんだぞ!」

僕:「どうでもいいよ! 自分の今さえ良けりゃあ、後はどうなっても知らないね! どうせ未来なんてロクなんじゃあない。どうせならこのまま、その魔族の言う快感の世界にでもなっちまえよ!」

佐伯:「お前…自分が何を言っているのかわかってんのか?」

僕:「ああ! こんなクソつまんねー世界はさっさと崩壊して、いくらでも快感に浸れる世界になった方が楽しいじゃん!」

佐伯:「てめえ・・・」

ポッティ:「落ち着くのだ佐伯長官。…。いいかね神谷君。奴らがしていることは、人間を堕落させ、セックスの虜とさせ、理性も生の喜びも奪い、ただ目先の快楽にふけるだけの動物のような存在へと隷従させることなのだよ。そんなものがもはや人間と呼べるだろうか。」

僕:「知らないね。僕だってもう、人間失格だからな。」

佐伯:「ふん。学校をサボって知り合いの喫茶店で無為無益に過ごしてりゃあ、人間失格かもな。将来も何も考えず、自分を大切にしようともしない。そんな奴に他人を大切になんてできるはずもねえ。あーあーポッティ、人選を誤ったな。」

ポッティ:「そうではないぞ佐伯長官。」

僕:「ぼ、僕だって! 好きであそこに入り浸ってるわけじゃあない。…もう、何もかもがイヤなんだよ。挙げ句の果てには、こんな変な集団に捕まって!」

ポッティ:「…。…神谷君。毎日は楽しいかね?」

僕:「ふん。」

ポッティ:「もし生きていて楽しくないなら、それは誰のせいだ?」

僕:「しらねーよ。運命なんだろ。どうせ。さもなくば世界が僕に敵対しただけ。それなら僕は世界が滅びればいいと思う。」

佐伯:「いい加減にしろよ小僧…!」

ポッティ:「まぁまぁ。そうかね。自分がその境遇にあるのは、世界の自然的自動的な流れのせいかね。」

僕:「けっ。」

 どうせ言いたいことは分かっている。何もかもを僕のせいにして責めたて苦しめるだけなんだ。

ポッティ:「ま、君がそんな目にあったのは、運命を決めたこの私のせいなのだろうな。君は、誰を好きになっても、誰を本気で愛しても、その相手には必ず彼氏がいて、さらに年を取っていくとその相手には必ず夫がいるようになる。別に君がえり好みしていなくてもそうなる運命だ。そのように私が決めたのだからな。」

僕:「えっ…。」

ポッティ:「そうやって君はこれから先、一生独身を貫き通すことになる。さみしく満たされないまま死んでいくだろう。その運命を決めたのは、唯一神であるこの私だ。私の決定は絶対であり、どんな行動を取っても決して覆せないし、私もこの決定を変える気はない。」

僕:「なっ…。」

 僕は絶句した。予想外の答えが次々と返ってくる。

ポッティ:「君の周りには、彼氏持ちで絶対に奪えないような深い愛と絆で結ばれている女か、結婚していてこれまた深い愛と絆で結ばれて絶対に離婚させることができない女、この二種類の女性しかいない。それ以外の出会いは、この私が厳格に禁止した。だから君は、そのような女性以外と一生出会うことは絶対にないのだ。老いてしまっても、どこへ旅しようと、それは決して変わらない運命だ。」

僕:「うう…。」

 いきなりそんなことを言われ、僕は絶句してしまう。

ポッティ:「なぜだと思う? なぜそのようにしたかと思う?」

僕:「…。」

ポッティ:「君は遅めの初恋でクラスメイトに思いを寄せた。だがその女にはすでに恋人があり、高校を卒業してすぐに結婚する運命となっておる仲だ。決して君の望みは叶わないようになっておる。そうして、君は深く失望し、学校にもろくに行かずに喫茶店に入り浸るようになってしまった。そのようにしたのもこの私なのだ。なぜだか分かるか?」

僕:「ううう・・・」

 本当の話なのだろうか。とても信じられない。

ポッティ:「それはな。君の精の質の問題なのだよ。」

僕:「せい?」

ポッティ:「左様。君の精液は特殊でな。人間の男性の精液が、女の淫魔どもの重要な滋養であることはすでに説明したかと思うが。ごくごくまれに、特殊な血液型以上にまれにだが、その淫魔どもを格段に喜ばせる精を秘めた男性がこの世に現れるのだよ。精液が滋養となるのは確かだが、それはすなわち魔族女の魔力を高める効果があるということ。淫魔は、男の精を吸うごとに強力になっていく。そして、その特殊な精液は、数千人分の精液を一度に受け取るのと同じくらい強力なのだよ。それが君の精液なのだ。」

僕:「えええっ!」

ポッティ:「だから、君が女とセックスをして、たとえ子作りのためと言っても女体で射精させることはきわめて危険なのだ。もし魔族の誰かが君の精液の性質に気づき、これを奪おうとしてきたらどうなる? 魔族が君の精の性質に気づくのは、女体で射精し、なおかつ妊娠させた瞬間なのだ。特別な着床の現象を察知することによって、魔族は君の精液のパワーを知ることになる。そうなれば、あの手この手で君の精を吸い取り奪い取り、魔族の強化を図ってくるだろう。それこそ、君の妻や娘を淫魔化して絞ったり、世界中のあちこちで女を操って精を奪い取って魔族に提供させようとしてくるはずだ。その上、夢でも現実でも淫魔を送り込んできて、女体の虜にさせ、ついには魔界に引きずり込んで、直接高等魔族に精を連続で永久に絞られ続けることになる。それは魔界の力を極端に強化せしめ、我々にとって脅威となってしまうことを意味する。」

僕:「…。」

ポッティ:「それを避けるためには、君が膣内でナマで射精し、妊娠させてしまう可能性を完全に0にしなければならない。着床さえ起こらなければ、魔族が君の精液の特殊性に気づくことはない…ただし精液のサンプルを採取されて分析されるなどという場合は別だがね。とにかく、妊娠そのものがあってはならず、その可能性の芽を絶対に摘み取らなければならないのだ。そのためには、君が出会う女性が絶対に君を相手にしないようにする必要がある。したがって、彼氏がいる女性、結婚している女性にしか、君が出会わないように、私が運命を決めて配慮したというわけだよ。」

僕:「そんな…一生彼女ができない運命なんて…一生絶対結婚できないなんて…。」

ポッティ:「君には申し訳ないと思っている。その特異体質は完全に偶然から生まれ出るものであり、確率的にはきわめて低いが、これまでもなかったわけではない。やはりその都度、私は同じ運命をその男に与え、一生独身を貫かせた。そうしなければ、その男は魔族によって必ず悲惨な目に遭い、より過酷な運命に見舞われることになるからな。」

僕:「魔族に見つかった男はどうなったの?」

ポッティ:「それは悲惨だったよ。妻も、性交が可能な年齢になった実の娘たちも、妹も姉も母も、友人も町の女も、すべての女がその男に迫り、襲い、精を抜き取っていく。その精はすべて、裏で操っている魔王のもとに送り届けられた。その男に迫る女たちは若返り美しさを増し、さらにはその男さえも若返って絶倫となり、寝ても覚めても四六時中射精することができる体にさせられた。夢の中では世界中の女や淫魔がその男に天国を与え、さらには夜な夜な下級淫魔たちを送り込んでは精を抜き取っていく。ついに射精が止まらなくなった男は精神も崩壊し、快楽づけになったまま魔界に連れ込まれた。魔界にて永遠の生を与えられ、どこまでもいつまでも魔王にエネルギーを提供する道具へと貶められた。途中で気がつき私も手を出したのだが、その頃にはその男はすでにセックスの虜、止めることはできなかったのだよ。」

 ポッティに表情はなかったが、無念さも伝わってくる。

ポッティ:「唯一神と言っても、万能ではない。とくにこの人間界においては、さまざまな制約がある。もしその制約を外せば、簡単に人間の世界はもろく崩れ去ってしまうからな。やれることは限られている。…君の精の性質も、元に戻してやることはできぬ。もちろん、完全に偶然性にゆだねられた体質である以上、そのような体で生まれてくることを阻止することもできない。せいぜい、人間の縁、出会いを操作することで、その男の着床を阻止することくらいしかできない。」

僕:「そんな…」

佐伯:「考えてもみな。永遠に射精しかできない“肉のかたまり”にさせられるのと、結婚はできないもののそれ以外についてはまっとうな人生であるのと、どっちがマシなのか。俺も今の話は初めて聞いたが、どう考えても後者の方がマシだろう。自分で射精させることもできるし、中出しさえしなければいいのであれば風俗でも何でも満足する方法は現代ならいくらでもある。ま、そもそもそういうことがキライになっちまえば話は早いし。」

僕:「くっ…」

佐伯:「それに、君はもう俺たちをはじめ、天国軍団や“メカニック・ヘル”に関わりを持っちまった。…あ、メカニック・ヘルってのは奴ら悪魔組織の呼称な。この戦いに参加している限り、女には不自由しないだろう。ただし射精は許されないがね。そんなの自分でしごけば済むし。」

僕:「気安く言わないでくれ! もういやだ!」

並木:「…神谷君…さっきのことはもういいから、落ち着こうよ。」

僕:「…並木さん…」

並木:「あーでも、オカズはダメだからね。あと触らないで。近寄らないで。じろじろ見ないで。」

 全然「もういい」じゃないじゃん。あー、これでもう並木さんとのラブロマンスの可能性は完全に0。これも着床を避ける仕組まれた運命だとでも言うのだろうか。

並木:「運命には逆らえない。きっと、君が私たちの仲間になるのも運命なのよ。」

僕:「とにかく! 僕は今回限りで降ろさせてもらう。」僕はリストバンドを外し、佐伯に投げつけた。

僕:「もう関わりを持たないでくれ。さよなら!」僕は基地の外に出ようとした。

佐伯:「もう遅いと思うよ?」

僕:「ああ?」

佐伯:「君は戻ってこざるを得なくなる。一度射精して素顔を敵にさらし、敵に顔を見られてるしなあ。」

僕:「…どういう意味だ?」

ポッティ:「夜の夢に気をつけなさい。詳細は後日説明しよう。」

僕:「…?」

 僕はそのままきびすを返し、ハッチを開けて外に出た。

 するとハッチは跡形もなく消え失せてしまった。この公園に基地があることも敵にばれたと言うことかな。それで移転したのかも知れない。あるいはまだ見つかっていないけど、見つからないようにしているのか。

 ま、僕にとってはどうでもいいことだ。金輪際、あのおかしな連中には関わらないのだからな。

 それでも、敵に顔を見られているというのはちょっと気になる。向こうから何かを仕掛けてくるということだろうか。

 そうなったら、もう僕は無関係だと言って説得しよう。僕に襲いかかってもメリットはないって分かれば、敵は新たなポッティの手の者を探して身を引くだろう。別のフザケンジャーを探し始めるだろう。

 どうでもいいや。

 僕は家に帰り、冷蔵庫にあるものを適当に食べると、無気力なまま眠ってしまった。


前へ      次へ


メニューに戻る(ノーフレーム用