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第32話 


  僕は本気だった。もう覚悟を決めていたんだ。

僕:「フザケンジャーはもうやめます。あとは……自分ひとりで、魔族と闘います。」
佐伯:「はぁ!? お前は何を言っているんだ。」
僕:「自分の宿命は分かっています。デーモンの息子であることも。淫夢から逃れることができないことも。これから一生、ことあるごとに魔族から付け狙われることも。でも……今日限りで、フザケンジャーを引退するって決めたんです。」
佐伯:「なんでまた……そんなこと……なにか気に食わんのか?」
僕:「……。いえ……この戦いが嫌になったわけではないんです。いつかは……ヘルサたん総統たちとも闘わないといけないかも知れないです。でも……今のままじゃ、このやり方のままじゃ、たぶんどうにもならなくなってしまうって気がしたんです。僕はクピドの矢で弱体化し続けていて、一方で敵はどんどん、常任天国軍団の数を増やしています。もちろん、それに付随して天国軍団になる女性も数を増やし、組織化がどんどん固まっていっています。敵は……どんどん強大になり続けているんです。」
ポッティ:「それが昔からの、ヘルサたん総統のやり方なのだよ。魔の者は人間以上に“失敗”を嫌う。失敗は魔力の激減に直結し、そのまま力関係に跳ね返る。魔界は一夜にして、上下関係が逆転しうる下克上の修羅の世界でもある。……だから、多くの魔王は、失敗には死を以てあがなわせる。だが、ヘルサたん総統は徹底して、部下の失敗を許し、次のチャンスを与え続けるのだ。反逆は許さないが、失敗は大目にみる。その代わりに、その失敗から学ばせ、試行錯誤させ、孤独にさせず、組織化を進め、人数とコミュニケーションのバランスを保って、配下の力を強化し、人数も増やし続ける……それが奴の強みにもなっている。失敗によって多くの魔力を失っても、それでも許し、時間をかけてでも取り戻して、そのうえでリベンジして勝つ。そうやって奴は強くなり続け、その組織も強化されてきて今に至っておる。」
僕:「だからこそです! だからこそ……今のままじゃ、もうあの連中に対して、打つ手はなくなっていると、僕ははっきりと感じ取りました。こっちがウカウカしているあいだに、敵はこっちの想像を超える強さと組織力統率力作戦力、ずる賢い戦法でどんどん追い詰めてきています。闘ってみて分かったんです。もうすでに、敵の組織的な力は、こちらの実力を遙かに上回ってしまっているのだと!」
佐伯:「だからってお前……」

 僕は一呼吸置いた。

僕:「それに引き換えなんですか!」
並木:「!」
僕:「フザケンジャーの組織力ときたら、拠点は喫茶店、戦闘員は僕ひとり……佐伯長官も時には闘ってくださいますが、ほとんど手を出さない。マスターは指南役はすれども、それ以上のことはしない。情報を統括する並木さんは女性で戦力にならない。メンバーは、たったこれだけなんですよ! 敵の組織がどんどん強大化しているのに、こっちはまるで進歩していないじゃないか! いまだにフザケンジャーのこのやり方、小規模なままチマチマと苦戦を続けるだけで、仲間を増やしたり規模を拡大させたりしないやり方が気に入らない!」
佐伯:「それは……」
僕:「分かっているんですよポッティ! 貴方は唯一神で、それこそ我々の想像を遥かに超えるお力をお持ちだ。色情の世界だけでなく、ありとあらゆる世界のいっさいをみそなわし、ときには大きな怒りを人間界に現し、さらにごく稀には異世界の住人たちにも干渉をする。しかし、神の干渉は、あまりに間接的に過ぎる!」
ポッティ:「……否定はしない。私は天界や霊界、魔界にも干渉はするが、ごく稀である。もっとも頻繁に干渉するのは人間界であるが、それもあくまで、直接ではないのだ。」
僕:「その間接的な干渉さえ、人間どもにとってはあまりに大きすぎる。自然現象をとおしてその怒りを表し、みずからの理想に合わぬ世界の方向性に対し、間接的に意思表示をしなさった。しかし……それだけでもあまりに強い力です! ……どうして! どうしてそれだけのお力を持ちながら、もっと直接、そのお力を使って我々をお救いくださらないのだ! なんでフザケンジャーが、こんなこじんまりとした小集団だけで闘わなければならないんだ! ポッティなら、もっとものすごい力をフザケンジャーに付与できるはずだし、ヘルサたん総統をはるかに凌ぐ組織力を持たせることも可能であるはず。でもわざとそうしていない。なぜだ!」
佐伯:「……それが、お前がフザケンジャーを引退する理由か。」
僕:「そうです。今のままのフザケンジャーでは、ヘルサたん総統を倒すことはできない。僕は……よく分からないけれども、夢の中に出てきたお坊さんと、どこかでつながっているような気がしています。数百年も前の杉戸村の伝説を救った高僧が、僕に、フザケンジャーとも佐伯仙術とも違う力を見せて、それで目覚めたんです。僕は、今のままではいけない。フザケンジャーの今の体制では、魔王に刃向かうこともままならない。僕は今のフザケンジャーの組織力が不満だ。新しい力、ヴァジュラの力で、自分自身に降りかかる魔族と闘います。でも、もうフザケンジャーはやらない。ポッティ、僕はこれでここを去ります。これからは、大勢のフザケンジャーをそのお力で連れ出してきて、強大な組織力でヘルサたん総統と闘ってください。僕は自分の戦いだけに専念していきます。さようなら!」

 僕はきびすを返した。

ポッティ:「お前は、フザケンジャーをやめることはできぬ。」

 静かだが、僕の脚をどうしても止めてしまうほどに、威厳のある声が後ろから投げかけられた。

ポッティ:「なぜなら、お前は、自分で、自分自身で、いまのフザケンジャーになることを、自ら望み、選んだからである。」
僕:「えっ! それはおかしいでしょう! あんたたちが僕をムリヤリ突然引き込んだんだ! もともと関係なかった僕をランダムに選んだって経緯だったはず!」

 初めての出会いの時は、確かにそうだったんだ。忘れてはいない。

ポッティ:「ふむ……」
僕:「僕がデーモンの息子だったからですか? それだけの理由であるなら、他にもデーモンの息子は存在するはず。僕でなければいけない理由はない。」
ポッティ:「いいや。お前でなければならないのだ。お前ひとりだけでなければならないのだ。」
僕:「なぜだ!!」
ポッティ:「本当は……人間に教えてはならないのだが……致し方ない。」
僕:「それだよ! ソコなんだよだから! あんたらの弱点は、その秘密主義にある! 本当は力があるのに出しもしない。本当のことを知っているくせに、掟だかなんだか知らないが秘密にしようとする。それでヘルサたん総統になんか勝てるか!!!」
ポッティ:「私は……自らの定めた掟に縛られている。そう言われても仕方はあるまい。魔族の中で、もともと神々の仲間だった者たちは、その掟を不服としたため、私の力で魔界に落としたこともある。その掟は……人間が、自分自身の力で、自分自身の努力と精神とで、私の理想へと自ら歩み寄るために必要不可欠なものなのだ。」
僕:「……この非常事態にでも、ですか。」
ポッティ:「この非常事態だからこそ! 私が直接手を出し力を出せば、取り返しのつかないことになる。だが……仕方ない、君には伝えなければならんだろう。しかしそれ以前に、お前はフザケンジャーの組織への不満と見せかけてはいるが、本当はそうではないだろう。」
僕:「うっ……」
ポッティ:「本当は、自分自身に嫌気がさしているだけではないか。ふがいない、無力で、クピドの矢に完全なる対抗策も見つけられないまま、怪人を前に逃亡せざるを得なかった自分に腹を立てている。そしてそんな自分から逃げようとしているようにしか見えん。」

 完全に、見抜かれていた。ぐうの音も出なかった。にげる? いや、でも……。一体僕にどうしろってんだ、何ができるというんだ!

 それに、ポッティは、僕が自分でフザケンジャーになることを選んだといった。そんなはずはない。承服できない。

ポッティ:「禁則事項だが……お前の過去の人生について、部分的にではあるが教えよう。それはお前の前世、さらにその前の一生について、そこから話さねばなるまい。お前は、前々世において……」
僕:「ちょっと待って。なんだよ前世とか前々世とか!」
ポッティ:「人間は、その一生の心と行いによって、死んだあとに霊界に行く、という話はしたはずだな?」
僕:「……はい。」
ポッティ:「さらに、その業が深ければ、色情の罪を犯せば色情霊に、殺人を犯せば修羅の霊になる。それは、色情の強欲が、自らを色情霊にするのだ。食への強欲が深ければ、その者は餓鬼霊となる。霊は、一定の満足感や、業が浅ければ、一定期間の後に、また人間界に誕生しに戻ってくる。これが輪廻転生というものじゃ。しかし、業が深すぎれば、色情霊はさらに色情地獄へと、深い闇に入り込んでいく。その色情地獄でさえも手に負えないほどの色欲あらば、それは魔のエネルギーとなって蓄積され、ついに色情魔界、つまりヘルサたん総統たちがいる世界へと送られていく。というより、人間界に転生するのではなく、魔界へと生まれ変わってしまうのだ。遠ざかるほどに救済から遠のく。その世界構造を決めたのも、この私である。」
僕:「それで……僕も生まれ変わる前があるってことなんですね?」
ポッティ:「よいか。お前は過去の生において、大きな過ちを犯した。お前は……前々生において、妻を死なせたのだ!!」
僕:「え……」
ポッティ:「手を下してはいないが、お前は妻を自殺に追いやった。当時のお前は領地でもそこそこの有力者。めとった妻に対しても、自分の意のままに動く召使いや道具程度にしか考えず、意に沿わぬ言葉、表情、態度など、妻が少しでも心に反感を抱いたとき、お前はそれを敏感に察知し、論を尽くして叱責し、使える権力をフル動員して、妻とその一族に嫌がらせをし続けた。そうやって、絶対に自分に逆らえないようにしながら、妻を精神的に追い詰め続けた。その結果……お前の妻だった者は、絶望して自ら命を絶ったのだ。……もちろん、転生は記憶を持ち越さないから覚えてはいないだろうけれどもな。」
僕:「そんなの……しんじられない……そんな……だって前々生ってかなり昔……」
ポッティ:「覚えておらんのは無理もない。そこを責めるつもりは今はもうない。あのときお前は、妻の死骸を前に、自分のしでかしたことを大いに悔やみ、泣き叫び、打ちひしがれ、何も手がつかないほどに苦しみ抜いた。自分が軽い気持ちで行ってきたことが積み重なり、本当は愛していた妻を、自分のせいで死なせてしまった。その哀しみと後悔、自責の念が、その後のお前の一生そのものだった。権力は失われていき、家も没落。お前は失意と自虐のうちに、子どもたちからも遠ざけられたまま、孤独死した。それが、お前の前々生の顛末じゃ。」

 そんなことを、僕がかつてしていたというのか。とても信じられない。

ポッティ:「自殺は罪である。だからその女は、地獄行きになる。しかし、事情が事情だけに、私は特別に、その女を恩赦し、軽い罰で済ませ、人間界への転生を図った。そのさいその女は、私に泣いて縋り、どうしても、どうあっても、絶対に叶えて欲しい願いがあると、狂ったように泣き叫びながら、懇願したのじゃ。もう、二度と、あの男と結婚するのはいやでございます、どうか、もう二度と、あの男との男女の縁を、決して結びたもうな、再転生するにあたり、またあの男と何らかのつながりができるくらいなら、百億劫の地獄の苦しみの方がマシでございますと。そこまで、どうしてもどうしてもと泣いて縋るほどに、お前との縁を拒んだのである。もとより、そのような悪しき行いをした男に、妻を授ける気は私にはなかった。女の願いも聞き、私は、その男の来世、つまりお前からみれば前世の男に対し、ある宿業因縁を与えた。それは、この私自身の手で、その男に対し、すべての女性との、性にまつわるあらゆる”縁”を、徹底的に、どんな小さなものでも、ありとあらゆるすべての縁を、完全に切ることである。あらゆる女性との縁を、私が自らの手で切っておいた。その結果、お前の前世は、いっさい恋人もできず、結婚もできない宿命を背負うこととなった。」
僕:「すべての女性との縁を徹底的に切る……それが天罰ですか。」
ポッティ:「罰というよりは、その男が自ら行ったことの結果なのだ。その男自身の手で、自分から作り出した宿業因縁なのだ。私は、その宿業因縁に従い、その男に、縁を切るという運命を与え、それを絶対的なルール、人間からみれば”呪縛”ともいえるルールを課したということになるな。」
佐伯:「へぇ。ちなみにそのルールを破ろうとするとどうなるんだぃ?」
僕:「……なんとなくわかります。ルールは、破れない……」

 記憶はない。でも、心の奥になにかが引っかかる。ズバリ何かを言い当てられている気がしてならない。

ポッティ:「すべての縁が切れている以上、恋人をつくろうとしても無駄じゃ。出会う異性はすべて、すでに”ほかの男”のものになっておる。今風にいうと、出会うすべての女性には彼氏がいる、とでもなるのかのう。ひとりの例外もなく、恋人か、あるいは、もうすぐ恋人になるであろうほかの男を強く恋い焦がれている女、にしか、その男は出会うことはできない。その男にとってみれば、まさに”ほかの男の呪縛”である。呪縛は私が決めたルールであるからして、絶対だ。ひとりの例外もなく、そいつは誰とも恋仲になることはできない。絶対にだ。そのうちにその男も結婚適齢期になるが、呪縛は絶対。彼氏がいる女ばかり、から、フィアンセいがいる女ばかり、既婚者ばかりということに変わるだけの話。縁が切れるとはそういうことなのである。見合い結婚などの縁談も偶然に偶然が重なって、決して成就しないように操作が施される。」

 似ている……デーモンの息子に与えられる運命に似ている!

ポッティ:「それでも、徹底的に縁を遠ざけ続けるのも、なかなかのエネルギーが必要でな。その男が一定年齢になったら、ほかの男の呪縛はわずかに緩める。」
佐伯:「えっ、じゃあ、彼氏のいない女と出会うことはあり得るってわけかい?」

 そこは……デーモンの息子とはちょっと違うかな。

ポッティ:「いや……あり得ても、その時にはその男は、すでにすっかり老いさらばえているのである。ほかの男の呪縛が軽くなる代わりに、”老いの呪縛”が絶対的なものになり、そのふたつが合わさってがっちり固めていくことになるので、結局その男は、恋人も妻も決してできはしない。考えても見ろ、若い時分には他の男の呪縛。老いては老いの呪縛で、その時には同世代はみんな結婚済みとなる。たまたま恋人のいない年下の娘が現れようと、その老骨にチャンスなどありはしない。それが道理じゃ。よいか。その呪縛=宿業因縁にもし逆らい、どうしても異性を恋い焦がれようとするは、唯一神である私のしたこと、神意に逆らうことである。それは大罪なのである。すなわち、ほかの男の呪縛があるにもかかわらず好きな人に近づいたり告白したりすれば、その女性はとても嫌なおぞましい思いをいたすであろう。嫌悪と憎悪が渦巻くであろう。その男はその女たちに嫌われ疎まれ、悪しき行いとして残っていくのである。付き合うも何も、呪縛によってすべてが門前払いとなる。宿業因縁があるにもかかわらず、人を愛すれば、そこに罪過が加わる。宿業因縁にさらに罪過を何度も何度も重ねれば、その男の人生はさらにままならぬものになっていき、どんどん苦境に立たされていく。人間関係も、仕事も、自分の経済事情も、何もかもが悪化する。罪過には罰を。」
僕:「罪過には……ばつ……」

 昔ある作家が、「罪」と「罰」とは対義語であるがなんでだろう、わかりかけてきたが何だか分からない、などということを書いていたのを思い出した。罪と罰はアンチノミーだ。罪は犯す側、罰は与える側。与えるは、世間様であり、世間様をとおして間接的に干渉するポッティにほかならぬ。

ポッティ:「ほかの男の呪縛も老いの呪縛も、絶対的なものとして、その男を一生、あらゆる縁から遠ざける。それにもかかわらず、愛を求めたり、結婚相手を求めたりし続けるような大罪を、不惑の年齢の老いたる者がなおも続けるような愚を犯し続ければ、いったいどうなることか。……それでも呪縛は絶対じゃ。ついには何も叶わず悪化に悪化を重ね、身も心も滅ぼしていくことになる。しまいには、精神をさえ病み、ゆえに仕事も収入も失って、なにもかもが壊れ果ててしまうことであろう。宿業因縁に反逆する罪過は、そのくらいに絶対的に人生を台無しにしてしまう。一刻も早く宿業因縁に気づき、恋愛も結婚もしようとしてはならないと心に誓い、自制してゆけば、罪過が重なることはなく、ただひとりで生きていくだけ。そこにはそれなりには幸福な人生も与えられるだろう。しかし、罪過を積み重ねれば、そのささやかな幸福も経済的基盤も、脳の異常とともに終焉の鐘を鳴らしてゆくこととなる。生涯にわたって抑うつを抱え込みながら、のこりの人生を惨めに暮らすしかなくなるであろう。そのくらいに、罪過の積み重ねのゆえに起こったことは、魂の奥深くにわたる、深いところに原因がある。抗うつ剤ごときで治るようなものではないし、長い長い期間、終わりの見えない闇を彷徨い続けることになる。死の淵にも何度も立ち、何度も入院する羽目に陥る。言葉も明瞭さを失い、手足が震えて階段の上り下りもできず字も書けなくなり寝小便をさえ垂らし、感情のコントロールもできずに狂ったまま一生を終えるかもや知れぬ。それを受け入れて生きていくほかはないのじゃ。その罪を犯した男が悪い。」

 そんな宿業因縁が、前世の僕を運命づけていたんだ。

ポッティ:「話を戻そう。妻を死なせ、かような宿業因縁を与えられた、その男は生まれ変わり、つまりはお前の前世の男は、非常に早いうちから、魂の奥底からの宿業因縁に気づいた。聡明で、自分の運命というものに思いを馳せ、立ち現れてくる現象を”自己を映す鏡”として受け取って観察・分析を続けた。結果、異性との縁が切れていることを、なんとなく悟ったのであろうな。そして、女性を決して愛することなく、出家をし、僧として修行を重ねた。その者は妻を持たず性的な行為も一切行わなかった(オナニーすらまったくしなかった)、そして法力を高め、日本各地を旅して定住せず、名を残すことを嫌いながらも、相当の高僧として自己を高めたのだ。……よいか、神谷達郎、お前が夢で見たその僧こそが、お前の前世なのだ!」
僕:「えええっ!?」
ポッティ:「その僧は300年ほど前、偶然杉戸村にたどり着いた。そしてこれまた偶然、ヘルサたん総統が操る土地神ヨウコヒメが村の女たちと魔族を暴走させているのを見た。そこで、その法力で魔の者どもを打ち払い、村を救ったのだ。その僧が生まれ変わった姿こそ、神谷君、君自身なのだ。君は彼の生まれ変わりなのだ。だからこそ、ヴァジュラの力を、伝授されるというよりは、魂の底から呼び戻している最中なのである。よいか神谷君、かの僧は死の間際まで、各地で魔族と闘うことで、覚えてもおらぬ前世の宿業因縁を解消させたのだ。本来なら君には、呪縛は課されなかったのだ。彼の功徳により、前世の宿業因縁は消えたのだ。だが……運の悪いことに、お前はデーモンの息子となって生まれてきてしまった。かるがゆえに、私は再び、お前と女性たちとの縁を切るほかはなかった。しかし、かの僧は死の間際、自分が転生したとしても、何らかの形で魔の者どもと闘うこととなることを悟っていた。どのような形になったとしても、転生した先で、再び魔の者を祓っていくのが自分の責務、ゆえに、転生したならば、魔の者との宿命の対決をさせていただきたいと、そう願いながら、彼は人生の幕を閉じたのだ。私はそれを聞き届け、その願いを叶えた。よいか、お前がフザケンジャーになることは、前世の自分自身、お前の魂自身が望んだことなのである。」

 しらなかった……

ポッティ:「本当は、現世に生きる人間は、その前のことについての記憶を持ってはならない掟。禁を破ってしまったが、仕方あるまい。いま君がフザケンジャーを離れても、宿命までは変えられない。ひとりで闘っていくといっても、結局は同じことになるのだ。自分自身で強く望んだことが、そのまま立ち現れてくる。だから、フザケンジャー以外の道はない。お前はヘルサたん総統と戦い、倒さなければならない。私にできる助力は、非常に限られている。だが、精一杯はやらせてもらおう。信用できぬかもしれんが、すべて本当のことである。ここにいてもひとりで闘う。私から離れても同じようにひとりで天国軍団や魔族たちと闘う。同じことじゃ。」
佐伯:「”ひとりでやる”ッてのも、その望みだったのか?」
ポッティ:「……。これ以上はいえぬ。おのずからそうなった、とだけ答えておこう。」
佐伯:「神谷の呪縛は解かれたって言っていたな。じゃあ、以前結婚していて縁を切るように懇願した女はどうなったんだ?」
ポッティ:「軽い地獄の刑を短期間終えて転生し、次の生には別の男と夫婦になり、苦労はしたが全うに生きた。そしてさらにその次にも生まれ変わり、いまも元気に暮らしておる。神谷君との縁も一度は切ったものの、もうその呪縛はないので、良き縁として戻してはある。ただし、彼はデーモンの息子ゆえ、その女と結ばれることはない。別の男と契ることとなるであろうな。それ以上は言わないで置こう。」
並木:「……。」

 外はすっかり暗くなっていた。

ポッティ:「お前の覚悟はようく分かった。そして、底に秘められた法力が覚醒し始めていることも。それは、神通力とは少し異質なもの。厳密に言えば、”パワー”ではない。神通力と魔力は、波形が真逆の”力の波”のようなもので、ぶつかり合えば相殺される、ゆえにパワーの強い方が相手を倒す。だが、その法力は、いわば心に働きかけ、心そのものが持つ浄化能力を呼び覚ますものじゃ。それは、かの僧が一生をかけて積み重ねた、然るべき道しるべなのだ。」
僕:「……。」
ポッティ:「どんなに苦しくてもいい。どんなに挫折したって構わない。いわんや、失敗の数々など、物の数には入らない。チマチマやって何が悪い。人生は積み重ねである。小さなことの積み重ねが、時間が経ってふり返れば、とてつもないものにできあがっているものだ。一生だけでなく、何度転生しても、その積み重ねは残るのである。これだけは覚えておけ。一攫千金で大逆転しなければ幸せになれないような世界を、私は幸福な世界とは認めない。相手を打ち負かすためだけに培われた知識など、無駄どころか有害なもの以外の何物でもありはしない。そのような理論派は切って捨て、関わってはならぬ! ……とにかく、お前は、その積み重ねをとおして、自分自身の宿業と向き合わなければならないと同時に、他者が積み重ねてしまっている宿業も、天国軍団という形で、地獄を見せられている、その他者たちをも、救済していく義務があるのだ。だから、フザケンジャーをやめることはできぬ。その法力をもっと使いこなせるようになることで、お前はもっと強くなる。そう……こんな”強化ベルト”なんぞ必要ではなくなるくらいにな。」

 ポッティは、用意してあったフザケンジャーの強化ベルトを自ら消滅させてしまった。これはクピドの矢の力、相手を好きになって弱体化してしまう作用を弱めるベルトだった。

僕:「あああっ! 強化ベルト! なんで!? もったいない!」
ポッティ:「クピドの矢は、人の心に直接魔力が作用するものであるからして、ヴァジュラの力も心に作用するもの、されば、強化ベルトのような付け焼き刃ではない形で、自分自身から、クピドの矢の呪いを浄化させる方が良いだろう。もう、あれは必要のないものだ。お前は先ほどの闘いで、自分の魂と、一瞬だが語り合うことができたはずだ。佐伯仙術、フザケンパワー(ポッティの授けたかりそめの神通力)、その他に、お前自身の本質を突く法力を、もっと練り上げるのだ。必ずその先に、クピドの矢を克服する手がかりがあるはずだ。」

 ”答え”は、自分で見つけろってことか。ポッティがこれ以上に干渉しないことにも、ポッティなりの理由があるのだろう。それなら、結局僕がやるしかない。ほかには、誰も同じことはできない。どんな宿業であれ、誰だって何かを背負っているもの。僕は僕の宿命を背負うしかない。

 僕よりも強い佐伯長官やマスターでも、ヘルサたん総統と闘うことはできないのだろう。まして、他の誰かが、代わりを務めることもできない。これは、僕にしかできないことなんだ。だれだって、内容はともかくも、かならず自分にしかできない何か、を持っている。それをただひたすら行うことで、誰かの救けになるということ。それを見つけ、試行錯誤しながらも、一本の道を歩くことが、人間というものなのかも知れないな。

 僕は一度決めた覚悟を再び捨て、ヘルサたん総統たちを倒さないかぎり、この闘いは終わらないことを、心の奥底に刻み込んだ。



######

カリギューラ女王:「ええい! いったいどうなっておるのじゃ!」
ヘルサたん総統:「落ち着きましょうよ。大丈夫、クピドの矢は、まだ敗北と決まったわけじゃない。いまでもフザケンジャーの心には、特に低年齢の女子たちに対する性的魅力が強くこびりついたままです。私の外見的特徴をもコピーした強化怪人、”じゅっさいん”なら、きっとフザケンジャーのこの弱点を突いて、魔界へと引きずり堕とすことができるわよ。」
カリギューラ女王:「しかし! 現に奴は、小中学生を集めた天国軍団を倒し、貴重な長身小5の常任天国軍団をも倒してしまっているのだぞ! 一体、あの力はなんじゃ!? 神通力ではない!」
フローリア将軍:「……あれが……ヴァジュラとかいうものの力……!?」
ヘルサたん総統:「……あの力……いや、力かどうかさえも分からない、一見得体の知れないもの。こっちの魔力が強くてもひるむことなく作用し、ことごとく跳ね返してしまう、ホウリキというものです。あれは……ええ、確かに覚えがあります!」
カリギューラ女王:「なんと! ヘルサたん総統、おぬしはあの力の正体を知っているというのか?」
ヘルサたん総統:「いいえ。正体は分からない。ただ、少し昔に、見たことがある……300年くらい前に、人間で同じようなことができた奴がいた。覚えているわ。」

 ヘルサたん総統は立ち上がった。

ヘルサたん総統:「あのホウリキの正体はなるべく早く掴んだ方がいいわね。そして対策は考えましょう。でも……現時点では、まだ圧倒的に我々の方が有利。豆腐ドゥーブツ公苑の件は、あくまで陽動作戦の一環に過ぎない。フザケンジャーを引っかき回して、そのあいだにポッティたちに知られないよう、強化を図っている。べつに今回の敗北は痛手ではない。」
カリギューラ女王:「はやく、それでも念のため早く、次の対策を打っておこうではないか。ええい、こうしてはおれぬ! 早く次の怪人を作ってしまおうではないか! いくらでも協力するぞよ!」

 カリギューラ女王は、自らカプセルに入ろうとするが、ヘルサたん総統はそれを止めた。

フローリア将軍:「カリギューラさま、まだかなりお疲れのご様子。今はカプセルには入らない方がよろしいかと存じます!」
ヘルサたん総統:「私も賛成よ。貴女の神通力の部分、魔力の部分のバランスが、著しく崩れていて、パワーが不安定になっています。もう少し休息しておいてください。然るべき時が来たら、新怪人作成のために、私から協力を要請しますので。」
カリギューラ女王:「ううむ……そうか……」
ヘルサたん総統:「念のため、石橋を叩いて、アリの一穴……ふふ、そういって余分なことをしたばっかりに、かえって墓穴を掘ってしまう魔王たちは少なからずいるわ。しかし私は違う! カリギューラ女王、貴女の不安定は、パワーの不安定だけでなく、精神の不安定をももたらし、組織に間接的なダメージとなります。どうか休息なさってください。」
カリギューラ女王:「う、む……わかった……」

 カリギューラ女王は再び寝室へと入っていった。

フローリア将軍:「……お気遣い、感謝致します。」
ヘルサたん総統:「べつに気遣ってなんていないわ。ふふ……アリの一穴の対策は、こういうところで発揮するものよ。ふふ……ふふふ……」
フローリア将軍:「……。」



######



 夜明けが近い。僕は一睡もしなかった。今のこの状態で淫夢を見るわけにはいかなかったからだ。そして、一日程度なら、徹夜しても大丈夫なように、ポッティが調節をしてくれたおかげで、眠気がなくて助かっている。

 起きている間中、僕は奥の部屋で座禅を組み、ひたすら考えた。また、法力をどうやって引き出すのか、爆発的なものとしてでもなければ、気まぐれに発動するのでもなく、佐伯仙術やフザケンジャーとの融合を果たしながら、より強い力にできないかと、呼吸を整えながらああでもないこうでもないと試行錯誤をくり返していた。

 そして、今僕を苦しめている最大の問題、クピドの矢の克服をも、これは試みるというよりは戦い続けるといった方がいいだろう。その苦悩もまた、こうして座っているあいだにも、しょっちゅう顔を出しては僕を苦しめる。

 恋心に弱いという精神の問題に入り込むため、調整は難航した。心なんて、簡単に強化できるようなものではない。あまい恋心にドキドキする心の誘惑をはねのけ、どうすればヘルサたん総統の鉄壁の組織力に対抗できるのかを考えながら、仙術神通力とヴァジュラの力の融和を図るという、3つのことを同時に行わなければならなかった。それはたいへん難しいことであった。

 つい負けそうになると、とたんにいやな幻影が、どんどん頭の中に入り込んでくる。

 気を抜けば、雪崩を打って心に、記憶に、精神に入り込んでくる、怒濤の快楽への甘過ぎる誘惑。クピドの矢は、誰にも何もされていなくても、放っておけば僕の心を掻き乱し、強い欲望の赴くままに、自分で精を抜き取ってしまおうとトイレに駆け込みたくなる。だが、もしクピドの矢の幻影で精を吐き出したとしても、すぐさま性欲はこみ上げ、トイレを行ったり来たりする羽目になるのは分かりきっている。

 そうして、どんどん魔族の誘惑と強欲から、ますます逃れられなくなっていくんだ。ガマンをしなければならない。

 もんもんとこみ上げる少女たちの裸体の幻は、次から次へと脳内を駆け巡っていく。振り払って精神統一をしようとしても、矢継ぎ早にジャマをしてくるので、考えはまとまらず、神通力とヴァジュラの拮抗もうまくいかないし、ましてやクピドの恋心を克服するなんて夢のまた夢である。

 薄暗い部屋で、しかも幻影相手では、目をつぶろうと耳を塞ごうと、何をしても無駄であった。僕は座禅のポーズを取っていながらも心は掻き乱され振り回され続ける。ペニスは激しく隆起し続け、一向に萎える気配を見せない。それがさらに、僕の孤独な修行をいちいち妨げ続けているんだ。

 とりわけ、10~14歳と年齢が限定された、若すぎる稚い裸体の群が、次から次へと脳内を駆け巡り、あられもない部位が次々と目の前に大きく差し出されては消えていく。毛の生えていないオンナのスジ、さらに内股がひらかれて、未発達な女性器官がさらに押し拡げられ、子どもなのにクリトリスがヒクついているのを目の当たりにしてしまったり、スベスベの生足が毛穴まで見えるくらいに近く、何本も僕の目の前に現れては消えていく。

 大小さまざまなおっぱいが、脳裏にちらついて離れない。まったくぺったんこで成長していない、しかし肌はもっちりしていて吸い付きが良く、一見男子とほぼ同じ上半身なのに、みずみずしい感触の良さは完全に一線を画している、そんな胸板の群。そして、押さない乳房は、乳首さえ膨らんでいない小さな体は、だんだん”成長”していって、どんどん胸の膨らみを覚え始める。14歳くらいになると、女の子によっては、かなり目立つくらいにまで乳房が膨らむ。それでいて、乳頭だけはまだまだコドモのままというギャップを、目の前に大きく見せつけられるんだ。

 さらに、脇の下、お尻、背中と、なによりコドモだからこそコドモっぽいあどけない顔が、次々とイタズラっぽく微笑みかけてくる。その年齢相応のかわいい童顔の群が現れるたびに、僕はその一人ひとりにときめいてしまい、その娘のことを好きになってしまう。彼女の目をじっと見つめ、逸らすことができない。僕は少女の幻影と見つめ合いながら、その子にむしゃぶりつきたい衝動に駆られ続けている。

 僕の周囲には、そんな小中学生の幻影が、もはや透き通りもせずに、何人も何人も次々現れ、取り囲んでいる。目の前にムリヤリ見せつけられてくる女体の部位は、幼いながらもしっかり異性的なのであり、その強調された女性性と未成熟さとの背徳的な欲情が、僕の心を掻き乱している。そうやって呼吸をつい荒くしてしまうさまを、周囲の少女たちはクスクス笑いながら見つめてくる。彼女たちは交代しながら、自分たちの肉体を惜しげもなく僕に見せつけ続けてくるのだった。

”ほら……わたしたちのカラダを見ながら、抜いちゃいなよ……くすっ……”
”トイレまでついてってあげるからね? おにいちゃんがオチンチンをしごいているところ、イクところ、全部最初から最後まで見ててあげるね。”
”私たちも見つめてるから、おにいちゃんも、私たちをずっと見つめていてね? スキ……おにいちゃんのこと、スキだから、もっと見られたいの……私たちの身体の全部をっ!”
「うぅ……」

 座ったまま、つい右手でペニスを掴んでしまう。

 い、いや! だめだッ!

 僕はとっさに手を離し、法界定印の手に戻した。だが、女の子たちの幻影の誘惑は止まらない。

 うふふ……クスクス……

 女の子どもたちのいやらしい笑い声が、部屋中にこだましている。幻聴なのだが、はっきりと聞こえる。そしてそのイタズラな笑い声の合間合間に、しきりに僕をオナニーに誘い、自分を見てとか、気持ちよさそうなココでしょうとか、好きですとか、あまい言葉を囁いてくるのだった。

 ううっ……くっそ……も、もぅ……ガマンできないっ!!!

 僕はついに立ち上がり、トイレに駆け込んでしまった。便座に座ると、いきり立ったペニスが跳ね上がっている。トイレにも容赦なくついてきた女の子たちは、目の前に次々とオンナを見せつけ、おっぱいを見せつけ、中学生の生足と小学生の生足の膨らみ方の違いが分かるように並んで立って比較させたりしてくる。

”ね……おにいちゃん、10さいと12さいのふとももって、けっこう大きさ違うでしょう?”
”でも、ほら、2人とも女の子の脚なんだよ? ぷにっぷにでスベスベで、とぉっても触り心地がいいんだよ? ほらぁ、ツルツルしてるでしょう?”
”さあ、いっぱいしごいて、私の脚も見て! 中学生の生足って、女らしく膨らんでるよね? もっともっちりして、おとなと変わらない内股になるんだよ? スゴイ気持ちよさそうでしょう?”
”よかったねおにいちゃん、10,12,14さいの子たちのふとももじっと見つめながらオチンチンしごけて。”

 僕は少女たちの脚の違いを凝視しながら、一心不乱にオナニーしてしまう。10歳の娘の脚は、ツルツルシコシコながら、まだまだ細くしなやかだ。それでいて、内股だけぷくっと膨らんで、きめの細かい肌触りや毛穴までハッキリ見えるように柔らかそうな部位が強調されている。12歳にもなるとさらに太く長く伸びていて、それでいてコドモらしい細長さは変わらない。たった2年でこれだけ成長してしまうものかと改めて驚かされる。

 そしてその隣に、14歳のふとももが並んでいて、格が全然違ってしまっていて、すでに完全に女の生足そのものであることを、間近で思い知らされてしまっている。

 僕は自分の手でペニスを高めながら、女の子たちの生足を凝視し、同時に、彼女たちの脚の付け根、さらにその先にあるオンナのスジから目を離せなくなる。成長するにつれ、スジ部分も大きくなっていて、14歳くらいになると陰毛があってしかるべきだがそれも完全に取り除かれ、コドモとオトナの両方の良い面を備えたタテスジに釘付けになる。

「うぅっ!」

”きゃ~ん いっちゃったねー!?”
”スゴーイ、私たちのカラダ見て、いい気持ちになっちゃったんだー?”
”ね、女の子のカラダって、魅力的でしょう、まだまだ見ててね?”
”くすくす、おにいちゃんがシゴき始めてからイクまでずーっと見ちゃった♪ おにいちゃん、めっちゃきもちよさそうだったよ?”

「はあっ……はあっ……」

 ペニスは萎えない。プロラクチンが働かず、性欲が抑制されない。射精したばかりなのに、まだすぐにでも出せそう、というより、立て続けで射精してしまいたい……この娘たちの裸を見ながら!

 僕は少女たちの乳房を凝視しながら、さらに右手を動かし続けた。しっかり張っている乳房から、まったく膨らんでいない小さな肩幅の少女まで、次々と目を移しては、個人差と年齢差のある成長の違いを見比べ、特に14歳のオッパイの魅力に取り憑かれながら、僕は一心不乱にペニスをしごいた。ああ、この娘たちが幻でなく、じっさいにこの胸で、ペニスを直接しごかれたら! この娘たちの肌に直接触ることができたら!

 きっと、中学生の、まだまだこれからもっと膨らんで行くであろうオッパイの肉を、無理にでも引き寄せてペニスを挟んでくれるだろう。そのままチッパイズリされて、僕はすぐさま射精してしまうだろう。きちんと膨らんで女らしさを十分醸し出している乳房と、それにまるでついて来られていない小さな乳首を凝視しながら、僕はまたもや射精してしまった。

 すると女の子たちは、脚を開いて、オンナのワレメをしっかり開くようにして、集団で僕に見せつけてくる。性欲も衰えず、精液も精子も急ピッチで溜め込まれて、まだまだいくらでも、この子たちをオカズに、直接凝視しながら出し続けることができそうだった。

 くっそ……このままではっ!

 僕は勇気を振り絞り、強い性欲に後ろ髪を引かれながら、トイレを飛び出した。

 少女たちは残念そうな声を上げるが、幻影なので僕を引き戻すことまではできない。彼女たちにできることは、また座った僕の周囲に群がり、魅惑的な部位を見せつけ続けながら、再び僕が快感への欲望に負けて、自慰行為を始めるよう促すことだけである。

 そのための声と視覚の誘惑は一晩中続いた。彼女たちはしつこくしつこく、お尻も生足もオンナも見せつけて止まない。そしてしきりに、自分たちの肉体を見つめながら、オナニーしてオナニーしてと、甘える声で懇願してくるのだった。

 僕は何度か誘惑に負け、トイレに駆け込んでしまう。しかし、なんとかしなければという思いと、誘惑に負けた自責の念から、再び座禅に戻って精神統一を図ろうとする。そんな僕に誘惑が続く。何時間もそんなやりとりが続いた。

 この幻影たちは、魔族たちが送り込んでいるものではない。魔族によって心を犯された結果、自分自身の心が作り出した幻なのである。だから彼女たちに魔力はなく、幽霊のように襲ってくることもできない。彼女たちにできるのは、僕の性欲を高め、耐えきれずにオナニーをさせようと誘惑することだけである。触れ合うことはできなかった。

 だから、この誘惑も、魔族が行っているというよりも、自分の心の声が、少女たちへの性欲をむき出しにする心が、意に反して勝手に作り出して行っているのである。そして、それを完全に冷たくはねのけるほど、僕は強くはないし、クピドの矢の呪いによって、その年齢の少女たちの肉体に異常なほど強い反応を示してしまうのである。

 この呪縛から解放されるためには、自分自身の心と闘わなければならない。呪縛……ああ、悪しき行いをして、来世で宿業因縁の呪縛を受けた男の話を思い出す。呪縛は、そのほとんどすべてが、魔族による恣意的なものを除けばすべて、自分自身の心と行いとによって生み出されたものなのである。

 そうだ……宿業因縁がありながら、それでも異性を求め、それでもすべての縁が切れてしまっていてはどうすることもできない。くり返すうちに、内向的な人間はうつ病になって身を滅ぼし、他罰的な人間はストーカーや異常性愛犯罪に走って、牢にぶち込まれたあげく一生を棒に振ることになる。どっちにしても破滅ではあるが、この異常性欲をむき出しにすれば、天国軍団だけでなく、その仲間に入っていない女の子までも、じっさいの性欲の対象にしてしまうのかも知れない。

 想像でやっているうちはいいが、想像と現実は違う。現実はもっと生臭いものだし、思っているほど相手は女性的ではない。現実はあくまで現実だ。幻影は美化されているだけであるし、想像もまた然り。そして、想像の産物である魔の者たちの感触もまた、現実のそれとはまったく別物なんだ。混同することによって、自分の欲望のために手段を選ばない鬼畜になれば、宿業因縁はさらに深まり、罰せられたまま一生を終えてもなお、地獄の罪、そして深い宿業を背負っての転生が待っている。さもなくば、修羅となって地獄へと突き進み、さらには魔界にまで入り込んでしまうことになる。

 奴らが狙っているのはそれなんだ。そして、ポッティはなんとかしてそれを食い止めようとしている。そのために動いているのがフザケンジャーなんだ。その使命を忘れてはいけない!

 そのためにも、クピドの矢で弱まった心を、なんとかして強固なものにしていかなければならないんだ。

 誘惑に負けている場合じゃあないぞ!

 なにか……なにか突破口があれば……! でも、魔法のような方法はない。そんなことでは勝てないんだ。精神力と日々の積み重ねしかない。

 さらなる問題は、これから先に現れるであろう敵たちも、どんどんクピドの矢を放ってくることだ。矢を受ければ、放った相手のことを好きになってしまい、なおかつその相手の属性(年齢や体型など)にも弱くなってしまう。僕がすっかりロリ属性を開発されているのも、少女たちにしこたま矢を受けたからなんだ。

 したがって、さらに別の年代や属性の女たちからの矢の攻撃を受ければ、その女たちに対しても弱くなってしまう。どんな相手でもときめいてしまうほどに弱体化してしまうことはマズイ。そうなる前に、クピドの矢を克服しなければ。

「むううん!」

 魂の底から這い上がってくるようなヴァジュラの感覚。僕の中に眠っている法力が、全身を覆っていく。これは魔法というより、長年の修行によって培われてきた、いわば心の力の具現化したものなんだ。

 まだ、まだだ。完全にはうまく使いこなせていないし、神通力との兼ね合いも取れていない。ヴァジュラの力はすぐに消え失せ、整った呼吸が佐伯仙術となって全身を駆け巡る。回復は続けられることにはつながったが、根本的な解決にはなっていない。

 日が昇り始めると、幻影は消えていた。ほんのわずかだが発動できたヴァジュラの力で、自分自身で作り上げていた幻影を消すことができたのか。だが、実戦で使いこなすレベルには、まだまだほど遠かった。クピドの矢の力は完全には消えておらず、おそらくまた、少女の敵が現れたときに心が掻き乱されてしまうだろうし、大人の女性に矢を放たれれば、大人まで好きになるだけだろう。

 難しすぎる。どうやって……克服したらよいものか。

”テレレ テレレ テレレ テレレ”

 あ、ポテトが揚がった。

 い、いや、これは警報音だ! ランダムにいろいろな音が出る警報音は、天国軍団の出現を察知して知らせるものである。

 すぐさま起き出してきた並木さんが、モニターを確認する。

並木:「天国軍団の出現を確認しました。敵は……4名。」
佐伯:「4人だと? ずいぶん少ないな。」
並木:「強い反応を示しています。天国軍団の魔力とは思えない……」
佐伯:「なっ、なんだと!?」
ポッティ:「おそらく4人とも常任天国軍団だろう。常任同士が群をつくるのはめずらしい。気をつけるのだ。常任天国軍団は、必ず大勢の天国軍団を従えているもの。小隊が4グループあると見た方がいい。」
並木:「どこかに潜んでいるのかしら……4人以外の天国軍団は確認できません。……あっ、場所と詳細が分かりました。」
僕:「どこですか?」
並木:「場所は北方の僻地に開かれている無人農園、”ねぎ地獄フカヤ”です。一般の人に農地を解放してスペースで区切って、自由に作物を育てることができる人気の農園ですね。普段から管理人の布河谷さん(87)はほとんど姿を現しませんが、早朝なのでなおさら人はいないですね。……常任天国軍団どもは、フカヤで一般人たちが大切に育てているネギを4人集団で手分けして、片っ端から引っこ抜いて回っているらしいです。」
佐伯:「なんだと! なんて悪いコトをしている奴らなんだ! 許せん!」
僕:「しょーもな~……」
佐伯:「さあフザケンジャー! 出動だ!」
僕:「え~……また電車ですかぁ?」
佐伯:「特別に新幹線を使うことを許す。鈍行はめったに走らないからな。ミニ新幹線を乗り継いでから、自転車を借りて2時間ほど。そうすると無人農園ねぎ地獄フカヤに着く。」
僕:「え゛っっ!!! 最寄り駅ないんですか!!??」
佐伯:「ない! なあああい!!! なにせ極北の僻地だからな。地獄の名前は伊達じゃあねぇぜ!」
僕:「自転車で2時間て……ぜっっったい行きたくないです!!!」
佐伯:「ゆけ! フザケンジャー! 常任天国軍団どもを撃退するのだ!」
僕:「いやあああああ!」
佐伯:「あと並木クン、パジャマ姿でモニターするのは早朝だから仕方ないが、す●っこぐ●し・ねこの着ぐるみパジャマはどうかと思うぞ。黄色いな。」
並木:「うっさい! コロす!(かああっ///)」

 ねぎ地獄フカヤにたどり着いたころには、すっかりお昼12時を回ってしまっていた。お腹空いた。どんだけ時間かかったんだよ。

 だが、常任天国軍団どもは、花見で使いそうな青いシートの上で待機していて、その場から逃げるようなことはなかった。

「あ゛~……やっと来た~……」
「何時間待たせるんだよぉ~」
「もうめんどくさー」
「……すいません、ココに来るまでに数時間はかかるので。僕も自転車のこぎすぎで疲れました。」
「ちょっと休も?」
「……そうっすね」

 どういうわけか、軽装の常任天国軍団たちは、すぐさま襲いかかってくるのでもなく、日よけの麦わら帽子も脱がずにぐでーっとブルーシートの上で横になっていた。全員20代の若い女性たちであった。シートのすみっこには、4人分の長靴とゴム手袋が落ち着いた感じで揃えて置いてある。こいつら、長靴とゴム手袋を身につけて、朝っぱらからネギをひっこ抜いて回ってたんか。

 自転車で2時間かかった僕もヘトヘトだったので、ちょっと休ませてもらうことにし、シートの上に大の字になって寝っ転がった。

「で、お姉さんたちなにしてたんスか?」
「上からの命令で、フザケンジャーをおびき寄せるために、常任天国軍団4人でここのネギを全部抜いてたんだよ。さすがにこのだだっ広い農園のネギを抜くのはしんどいわー」
「ねー。つかれたー……」
「僕も自転車で疲れましたよ……もう少し休んでからにしましょう」
「そうねー」
「あー……天気いいねー。雲がきれいだー……」
「そうですねー……」

 のどかな農場の一角。どこか遠くで豚が鳴いている。ブヒヒ、ゴッゴッと声が時々届いてきた。

「あーねー、豚が鳴いてるよー」
「のどかだねー」
「ところでさあ、豚って、ピッグって言うじゃない? なんで豚肉はポークって言って名前が変わるんだろ・・・」
「ブタが生きているときはピッグで、死んだら戒名がポークなんじゃね?」
「なんだそりゃ。。。」

 どっかで聞いたようなハナシだな。

 そのまま小一時間、僕たちは寝っ転がって休んだ。青空の中を、雲がゆったりと同じ方向に進んでいくのを目で追い続けた。てか何やってんだ僕ら。
















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