呪いのエロビデオ 前編

 

 「お届け物です。」

 ある日の事、僕の所に荷物が届けられた。ミカン箱位の小さな荷物だ。

 差出人は…知らない会社だ。えーと…、あ、そうだ、以前ある通販会社にある物を注文してたんだった!それが今日届いた訳か。

 僕が注文したのはオナニーグッズ。ダッチワイフの一種で、「ローションや他の道具なしに"それ"だけで満足できる新開発!本物そっくりの超特別製シリコン素材の全身と、ナマを超えたアソコの感覚をお楽しみ下さい。」ってキャッチフレーズに惹かれて注文したんだった。この箱が多分その通販会社の商品なんだろう。

 …。

 でも、注文したのはリアルドールのような本物の女性そっくりの全身を持ったドールの筈だよなあ…。素材は空気を入れる風船タイプじゃないから、こんなに小さい訳がない。変だ。

 とりあえず開けてみよう。

 箱を開けると、体長50センチ位のフランス人形一体と、何もラベルの付いていないビデオテープ一本が入っていた。

 騙されたと思った。

 たしかに人形はふにふにしていて柔らかいし、スカートをめくって中を覗くと本物みたいにあつらえたオンナも見える。が、シリコン製の素材で、ローションも何もなしに使えそうな物でもなかった。試しに指を入れてみても、大して締め付けては来ない。

 これだから通販は…。安かったとはいえ、とんだ欠陥品をよこしたものだ。

 まぁそれでも、一応は試してみるか。今日は一日休みだし。

 僕はズボンを脱いで、フランス人形の服を脱がせた。体はグニグニしてる。でも、女性特有のあのしっとり感やスベスベ感には程遠かった。等身大だとばかり思っていたから、抱きしめるのもうまく行かない。

 とりあえず人形の太ももを両側から押さえ込んでペニスを挟み、上下させてみた。柔らかい感触ではあったが、あまり気持ちはよくない。とりあえず半立ち状態にして、人形のアソコにペニスを押し当ててみた。

 が、オンナは硬く閉ざされ、ペニスを受け入れてはくれない。やっぱり潤滑油みたいのは必要なんじゃないかなあ。

 誇大広告もいい所だ。何が「ローションなしで満足できる」だ。これならもっとお金を貯めてリアルドールを買った方がましだったかもな。そう思うと何だか悲しくなって、人形を脇に追いやり、この道具を使うのをやめた。

 …。

 付属品に、ラベルの付いていないビデオテープがある。エッチなビデオか、それとも取扱説明書か何かかな。取り扱い説明のビデオなら、それに従ってこの人形を使えば「満足できる」かも知れないな。でも只のエッチビデオだったら、これでガマン汁でも出して潤滑油にしろってオチか。バカにしてやがるぜ。

 いいや、一縷の望みをかけてこれを見てみよう。

 僕はビデオをセットし、スタートボタンを押した。

 ザ〜〜〜〜…

 暫く砂嵐が続く。10秒、20秒、30秒…流石に一分近くなると相当イライラして来る。なんだよ、空ビデオか。

 いや、空のテープなら、砂嵐にもならないよな。

 僕は段々腹が立って来た。通販は便利だけど、たま〜にこういうハズレがあるんだな。

 ぶつっ。突然画面が暗くなった。あ〜これで終わりか。僕がストップボタンを押そうとリモコンを握り締めた時、画面が変わった。

 テーブルの真ん中に鏡が置いてある。小さめの三面鏡だ。でも、普通三面鏡を食卓みたいなテーブルには置かないだろ…

 ふと三面鏡に人影が写る。が、鏡には誰も映らない。

 ブツリ。画面が突然切り替わり、薄暗い石の壁が映し出された。壁の所々に赤いしみがついている。ブツリ。また画面が変わった。

 今度は、全裸の女性が湯船に浸かっている映像だった。やっとエロい部分になったのかな…

 が、僕の顔は次の瞬間凍りついた。その女性、北欧系の顔立ちで日本人とは明らかに違う婦人の入っている湯船は、血のように真っ赤だったからだ。

 ブツリ。また画面が変わる。錆びた鉄でできた小さな人形が映し出された。人形は蓋のようになっていて、その扉を開くと、中に鋭い針が沢山飛び出ていた。

 この話…どこかで聞いた事が…この人形も見た事があるようなないような…

 ブツリ。ブツリ。次々と画面が変わり、さっきから映し出されている鏡や血の風呂や鉄人形が次々映し出される。

 そうこうしている内に、テープはまた砂嵐に戻ってしまった。

 なんなんだよこれ!僕はストップボタンを押して、なぜか背筋が薄ら寒くなる気配を覚えながら、テープを巻き戻し、取り出して無造作に投げ出した。

 まったく、人形は使い物にならないし、テープは不気味だし、一万円出して損した。

 とりあえず人形とかは邪魔になるだけだ。しまっちゃおう。僕は人形とテープを箱に収めると、蓋を閉め、上から洗濯物の塊をどっさり置いた。

 プルルルルル…電話が鳴り出す。誰からだろ。

 「もしもし?」「…。」「もしもし?」

 イタ電か?こんな時に嫌な事は重なるものだな。

 「…テル?」電話の主は、機械的な音声で何かを囁き出した。声の主からして少女のようだったが、機械的にウェーブがかかっていて定かではなかった。

 「ネエ、シッテル?テツノショジョ。シッテル?チノオフロ。ムスメタチガ、ミンナ、コロサレタ。シッテル?」

 「はぁ?誰だよ!ヘンな電話するな!」

 「…ミタモノハ ムスメタチニ フクシュウ サレルデ アロウ!」突然、さっきのような少女のかわいらしい声から、どす黒い低い大声に変わり、その声が僕を震え上がらせた。

 僕が何かを言おうとしても、恐怖だか緊張だかで声が出ない。そうこうしている内に、電話は切れてしまった。

 僕は得体の知れない恐怖感に襲われながら、受話器を置いた。

 鉄の処女…、そうだ、昔ヨーロッパで、自分の美の為に領地の娘達を殺して血の風呂に入った女王がいたって聞いた事があるぞ。

 そう言えばさっき見たビデオもそんな感じの内容だったな。

 あーもう、やめやめ!そういうホラーっぽいの苦手だし、いたずらも只のいたずら、ビデオも内容も偶然だ。もう考えるのよそう。この事もきっぱり忘れよう。

 その夜。

 僕は眠りに就こうとしたが、何故か中々寝つけない。布団の中で悶々としていた。

 時々ビデオの事を思い出しては、かき消していた。そんなの気にするから寝付けないんだ。

 僕は考えるのをやめ、力を抜いた。

 ガサガサッ!部屋の隅から聞いた事のない物音が聞こえた。僕はむくりと起き上がり、電気をつける。辺りを見回すが、何も変化はない。気のせいだったか。

 ガサガサッ!今度は僕の目の前で異変が起きた。隅に置いてあった洗濯物の塊が蠢いているんだ。

 僕はどきりとして、洗濯物を注視した。洗濯物の塊は上下に動いている。いや、洗濯物が動いているのではなく、あの忌まわしい人形の入った箱の蓋が動いているんだ!

 僕は恐怖で声も出せず、体も動かす事もできず、そのまま腰を抜かしたようになった。そして只箱の方を見つめるだけだった。

 やがて洗濯物は押しのけられ、箱の蓋が開いた。中から小さな手が伸び、"それ"が顔を出した!あのフランス人形だ。人形が勝手に動いて、箱からまさに出ようとしている!

 叫べるんだったら、いくらでも叫んでいただろう。逃げられるんだったら、どこまででも走り抜いただろう。でも僕はもう上半身だけ起こして両足を開いて投げ出した格好で、トランクス一丁で、下半身に布団をかぶって、只そのまま身動きが取れないでいた。全身から嫌な汗がじっとりと滲み出る。

 人形は自力で箱を抜け出した。その形相は、昼間のような端正な顔立ちのフランス人形ではなく、髪の毛を昼間の倍近く伸ばした、おどろおどろしいものだった。昼間つけていた服は、僕が脱がしてそのままだった。

 ズル…ずる…。人形は床の上を這いながら、こちらに近づいて来る。気を失いそうな恐怖の中で、僕は成り行きを見守るしかなかった。

 人形は僕の布団に手をかけると、それを僕の足元の方にずらした。トランクスと足が露出される。人形は僕の両足の間に入った。そして僕のトランクスに抱きついて来た。

 僕はもう恐怖で頭がおかしくなりそうになってる。ペニスにシリコンが触れても、縮み上がったままだった。

 人形が勝手に僕のトランクスを下ろす。生きているみたいに動く人形が、僕を全裸にしてしまった。が、もちろんペニスは萎えたままだ。コレがオナニーグッズである事も完全に忘れ去り、不可思議な現象を目の当たりにして声も出ない有様だった。

 人形が萎えたペニスに抱き付いて来る。もちろんそんな事で立つ筈もない。人形は特殊シリコン製で、柔らかくできていたが、柔軟なゴムのようでもあり、それが押し付けられてもびくともしない。それは昼間も実証ずみだし何より現在の恐怖でそれ所じゃなかったのだ。

 その上人形の体型は、まるで三歳児のようだった。胸もなく、全身が小柄で、腰のくびれもお尻のふくらみもない。申し訳程度に付いているオンナは挿入不能状態。これで興奮といっても、僕にはその手の趣味はないしな…

 信じられない光景でも、暫く続くと慣れて来るのかも知れない。僕は少しずつ落ち着きを取り戻していた。いや、僕は明らかに安心し始めていた。こんな事が起こる筈もない、起こる筈のない事が目の前に起こっている、つまりこれは夢なんだ。そう気づき始めた(言い聞かせてた)からだ。

 夢なら、勝手に人形が動くのも分かる。本当は僕はぐっすり寝ているに違いない。そう思うと、どんどん気持ちが楽になって行った。でもその割には、体は動かないままだ。寝ているから体を動かすってのが鈍いのかな。

 「…そんな体型じゃあ、立つものも立たんよ。」僕は大分落ち着きを取り戻したお陰で口が利けるようになってた。どうせ夢ならもっと楽しませて欲しいと思った。

 すると、人形の体型が見る見る内に変わって行った。幼児のようなずん胴がどんどん引き締まって行く。胸はどんどん膨らみ、腰に括れができると同時に腰周りが丸みを帯びて行く。足もぷにぷに状態だったのがひざの辺りが引き締まって来て、太ももにも張りが出て来た。お尻にも女性特有の丸みとふくらみで突き出始めた。ふくらはぎや足首がどんどん細くなって行く。

 まるで、とてつもないスピードで人形が「成長」しているみたいだった。子供から、8歳位、9歳位、10歳位、と、数秒で一年成長しているような姿だ。

 人形は「成長」しながらまた僕に抱き付いて来た。今度は、夢だと固く信じようとしていて、そのつもりで楽しみたいと思い始めていたから、人形の動きに応える事ができた。

 人形は昼間みたいな只のシリコン人形の感触ではなくなっていた。その感触、しっとり感、触れられては僕の肌を跳ね返す弾力、本物の女の子の様だった。そうだ、最初からそんな人形だったら、騙されたとか思わなかったのにな。

 人形の胸はAカップ位に膨らんで、僕のペニスを上下に成長したばかりのその胸でさすって来た。これが中々気持ちいい。14,5歳位の子といけない遊びをしてるみたいだった。

 さらに胸が膨らむと、ペニスは胸の谷間にどんどん吸い込まれて行くようになった。人形の顔は、白人女性のような端正な顔立ちになっている。髪の毛の長さも元のセミロング位になり、美しさを増していた。

 が、サイズ自体は変わらない。体が大きくなる訳ではなかった。幼児体型だったフランス人形が、大人の白人女性と同じ位の体型に変わっただけ。背の高さは相変わらず50センチ位だった。

 十分成長した時、ペニスは両胸に包み込まれ、なまめかしくパイズリされている。胸がペニスの下半分を挟み込んで、上下にしごきたてている。50センチの状態で僕のペニスをすっぽり包むバストは、等身大に直せばかなりの巨乳という事だ。

 僕は人外の存在とエッチしているという興奮も手伝って、ペニスをいきり立たせていた。

 十分ペニスを立たせると、人形はパイズリをやめ、足を投げ出している僕の胸にしがみ付いて来た。そのまま腰を落とすと、ペニスは人形のオンナにあっさりと飲み込まれてしまった。ローションなしでも満足できる、つまり生きた人形が濡れてくれるから、という訳か。これが現実だったらなあ。

 人形は上半身を倒し、手を後ろについて、手で上半身を支えながら腰を前後左右になまめかしく動かした。ペニスはこねくり回され、今まで味わった事のない夢心地の刺激を送り込まれる。

 段々腰の動きはリズミカルに、そして素早くなって来た。人形は巧みに手と上半身を前後に揺り動かして、ペニスを出し入れする。そのしごきのテクニックと極上の感触が、僕をどんどん高めて行く。

 僕は快感に呻きながら、どこか違和感に包まれていた。夢…?いや、このリアルな状態、部屋の明かり、意識の状態、外でかすかに鳴いている虫の音。夢にしては外部の情報が細か過ぎる。

 ま、まさか、これは夢じゃなくて、現実なのか?

 僕は全身に広がる快感に身を捩らせ始めた。いつの間にか体の自由が利いている。一生懸命に体を動かして僕を悦ばせる人形を、きつく抱きしめた。この感覚も、夢にしてはできすぎている!

 だが、もう何も考えられなかった。僕は必死で腰を突き上げ、手を後ろに付き、半座位で結合したまま只快感を求めていた。人形の動きがどんどん早くなって行く!ペニスはかき回されたりしごかれたりして、発射寸前にまで高められていた。

 「シャセイ、スルノカ?」

 初めて人形が口を開いた。その冷たい声にヒヤリとし、さっきまで快感の事だけを考えていた体がこわばった。まるで冷水を浴びせかけられたみたいに、身も心も凍り付いてしまった。

 「シャセイ スレバ フクシュウ ハジマル…」その低い声は、あの電話の声そのままだった。

 これは、夢なんかじゃない!はっきりそう確信した。射精をすれば、僕は復讐される…。この言葉が真実であるように思えた。そして、このままイッてはいけないと直感した。

 だが、さっきの冷水状態で、再び僕は後ろに手をついて上半身を起こして足を前に投げ出し、生きているみたいに動きながら僕と結合してペニスをむさぼり続けている人形を見つめている、この体勢から動けなくなった。

 金縛りに遭ったみたいに、僕はこの格好のまま人形の動くに任せるしかなかった。

 イッてはいけない!絶対にイッちゃダメだ!生存本能がそう警鐘を鳴らしているのを直感した。

 だが、人形の動きはますますなまめかしく、激しくなって行くばかりだ。さっきまで快感に身を任せていただけあって、大分精力を消費していた。ガマン汁が溢れ、人形のオンナに少しずつ垂れ流している。

 僕は何とかこの恐怖の状態から脱出しようと、力んで見たり声を出そうとしてみたりしたが、何も変わらない。とにかくこのまま人形に射精するのだけは避けなくては!僕は懸命に踏ん張り、人形の快感攻撃に耐え続けた。

 人形は円を描くように腰をグリグリ回転させ、また素早く上下に動かし始めた!回転と上下の腰ひねりで交互に責められ、僕はなすすべもなく限界に近づいて来た。元々エッチには慣れていないんだ。

 愛液とガマン汁でグショグショと下腹部が音を立てる。時折人形が震え、それがペニスにバイブ効果を付け加えた。

 もう我慢の限界だった。一度は冷水状態で興奮度も落ちていたが、その後の巧みな責めで、再び寸前まで高められていた。下半身から全身にくすぐったさが広がって行く。じわじわと痺れるようなこの感覚は、射精寸前の独特の感覚だ。

 キュウウ!ひときわ強く膣が締まる。その勢いで僕は何も言わずに、言う暇さえなく、人形の中に精液を放出した。すると人形のオンナが蠕動を始め、射精が完了するまで搾り取るような動きをして来た。

 僕は頭の中が真っ白になって、我慢に我慢を重ねて溜め込んでいた精液を人形に残らず提供してしまった。

 僕は段々力が抜けて行き、同時に頭がボンヤリして来るのを感じた。後ろに突いていた手はもはや上半身を支え切れなくなり、僕は仰向けに寝てしまった。人形はまだ結合したままだ。

 「ムスメタチノ ウラミ フクシュウ スル。…ネムレ。」「ま、待ってくれ、それは何百年も前のヨーロッパの話で、僕には関係ない、殺さないで…」「シ ヨリモ オソロシク ソシテ カンビナ フクシュウダ…ネムレ。」「た、助けて…」

 もう懇願しても、許して貰える気配はなかった。人形がネムレ、と言う度に、僕はどんどん睡魔に襲われ、体が重くなり、眠りの世界に落ちて行くのだった。これから、僕は何をされるのだろう…

 …。

 ……。

 目の前がぼやけている。白くかすみ、何も分からない。

 段々、視界がはっきりして来た。朦朧とした意識もそれに合わせてはっきりして来た。

 気が付くと僕は薄暗い石畳の上に全裸で寝かされていた。体は…しっかりしている。動けない訳でもない。起き上がってみる。愕然。この部屋は牢獄だった。目の前に鉄格子があり、しっかり鍵が閉まっている。

 ここは一体どこなんだ!僕はどうなってしまったんだ。

 とにかく何とか脱出しなければ。僕は壁を触ったりして、突破口を探し始めた。ここがどこだか分からないのに、大声を出すのは危険だ。

 鉄格子の嵌った小さな窓から外を見る。まるで中世のヨーロッパのお城のような建物の中みたいだ。あの人形の言っていた数百年前の世界なのか。

 さらに部屋を調べてみる。

 「!」

 部屋の片隅の石は特殊な造りになっている。強く押すと、ゴリゴリ音を立てて、石の壁の一部が動いた。どうやらここだけ回転扉になっているみたいだ。

 扉を開いて、奥を見やる。暗くて通路の先は分からない。でも、ここを通るしかなさそうだ。

 通路を通って行くと、途中に鉄格子でできたドアを見つけた。中を覗いてみると、あのビデオに映っていた鉄の人形や、三角木馬、鉄球等の拷問道具が並んでいた。ここで娘達が拷問され、血を絞り取られたというのか。女王がその血の風呂に入って美しくなる為に?馬鹿げてる!血で美容になる筈がないじゃないか。

 さらに奥に進むと、鉄の扉があった。扉には鍵はかかってなかった。扉を開けると、とても広い部屋に出た。ふわふわした生地の赤い絨毯が敷き詰められていて、天井には豪華なシャンデリアが飾られている。舞踏会とかを開く部屋だろうか。

 バタン!

 大きな物音と共に、あちこちから若い女性が大勢入って来た。若草物語で見るようなタイプの、中世風の質素な服装やメイド服に身を包んだ娘達が、数十人、あるいは百人以上、四方のドアや二階、さっき僕が通って来た道からもどんどん入って来た。

 僕は驚き、逃げようと走り出した。しかし、出入り口すべてから次々と入って来て、窓からも入って来る娘達にあっという間に囲まれてしまった。脱出できそうなすべての場所から娘達が入って来る為、僕は完全に逃げ場を失っていた。

 まるで人数に合わせて大広間が広がって行くみたいに、何百人といるような状態でも、ギュウギュウ詰めにはならない。それ所かかなりスペースに余裕があった。

 「い、一体、どうしてこんな事を?」「お前は、私達の復讐の道具だ。」日本語で答えが返って来た。

 「待ってくれ、僕は何も悪い事はしていない。たしかに血の風呂とかは気の毒だけど、もう数百年も前のでき事なんだ。僕には関係ない。」

 「関係などどうでもいい。お前は復讐の道具に選ばれたのだ。」「…一体、今更何を復讐するんだよ!」

 「私達は、生きる喜びも快楽も味わう事無く、女王によって理不尽に殺された。だから、今から快楽を味わうのだ。私達の最大の関心は、男を知る事だ。だから、お前にその道具になって貰う。」

 「どうして僕なんだよ。罪はないだろ?」

 「よくもそんな口が利けたものだ。お前は私達の呪縛を快楽の道具にしたではないか。私達の念である人形を欲望の道具にしたではないか。その精を人形に注いだではないか。だからその続きをここでして貰う。」

 「だけど、そんなの復讐にはならないだろ?恨むならその女王とやらを恨めばいいじゃないか!」

 「お前達は、私達の事など知らずに、後世をのうのうと生きている。私達が若くして死んだのに、お前達は豊かに暮らしている。それが憎い。だから、ここで永遠に私達の快楽の道具になる事が、復讐なのだ。」

 「そんな…!理不尽だよ。」「私達の死も理不尽であった。とかく世は理不尽なものである。」「…。」

 「お前の体は、もはや私達の物だ。見よ、その体を。私達を永遠に満足させ続けられるように、その精を永遠に放出できるようになった。永遠に老いもせず衰えもせず、疲れる事もない。その絶倫を与えてやった。それを私達の為に使え。」

 たしかに、何だか体にはエネルギーが漲っている感じだ。さっきの重い石の回転扉も難なく開けたし。でも理不尽なのには変わりない。

 「そんなのいやだ!元に戻してくれ!僕はあんたたちには関係ない!復讐なんてお門違いだ!帰してくれ!」僕は大声で懇願した。

 「…。よかろう。」

 一瞬の安堵だった。

 「ならば、お前が『快楽の道具』ではない事を証明して見せよ。私達に性の悦びをもたらさない者である事を証明して見せよ。お前のオトコが私達に応えなかったら、それを認めてやろう。」

 「えっ…!」

 娘達は、一斉に服を脱ぎ始めた。スレンダーな子からグラマーな子、背の高い子、低い子、年齢も奉公に出されたばかりに見える娘から女盛りに見える女性までさまざまあった。あっという間に、娘達は全裸になった。

 「さあ、私達を見よ。目を逸らすな。オトコが私達を見ても反応しないような、清らかな禁欲の純潔精神がお前にあるのなら、姦淫を禁じた神の掟に従う聖者なら、お前を解放しよう。」

 そ、そんな…

 風通しのよい部屋でも、人の熱で部屋の中は温かくなっている。そして女性の甘いニオイが部屋中に充満していた。彼女達はもうセックスの準備が整っていて、発情のしたたりがオンナから溢れていた。その芳香が僕を惑わせる。

 彼女達は立ったまま何もしない。只、たった一人の男性である僕をじっと見つめていた。数百人の視線を一挙に集めている。僕に、というより、僕のペニスに視線が集中している。ペニスが反応して、勃起してしまったら、今度こそ脱出できなくなる。目を逸らしてはいけない、目をつぶってもダメなら、女体の群を見るしかない。360度どこを見回しても、個性的な娘達の裸体が目に飛び込んで来る。近くから遠くまで、若い女のみずみずしい体がひしめいていた。

 かなりキツイ。これで勃起しないようにするのはかなりの試練だ。

 でも、それが脱出の為の唯一の手段なら、禁欲だか純潔だか知らないが貞操自粛!

 僕は周りを見渡しながら、大小さまざまのオッパイを見つめた。いけない、女性の魅力ポイントの一つでもある胸を見るのは危険だ。僕は視線を落とした。

 「!」

 金髪の毛でもあるかと思ったら、全員下の毛を余さずキレイに処理していて、オンナが丸見えになっていた。ピクッ、と、ペニスが反応してしまう。

 いけない!僕はとっさに視線を上にやった。「目を逸らしてはいけない!」そう言われたのでまた僕はまっすぐ視線を降ろした。

 「さあ、そろそろお前もオスの本性を出すがよい。」娘達がジリジリにじり寄り始めた。その距離は僕と数センチ位の差。ちょっと動くと触れ合ってしまいそうだ。「それはずるいよ!見るだけだろ!近づいたり触ったりは反則じゃないか。」僕は叫んで抗議した。

 「…。よかろう。全員下がれ。」

 娘達は僕の半径1メートルを空けて後ろに下がった。僕の周りに丸い空間が広がる。

 「それで、いつまで僕は純潔でいればいいんだ?まさか永遠なんて言わないよな。ちゃんとやってくれよ。」「分かっている。後30分耐え切れたら解放してやろう。」

 30分か。短いようで長いな。でも、ここで誘惑に負けたら生きて帰れなくなる。何としても堪え続けなければ。

 只見ているだけだと、時間はゆっくり流れる。でも、必死に勃起を堪えている為、ゆっくりに思えた時間もいつの間にか過ぎ去って行く。早いと思えばゆっくりになり、ゆっくりかと思えばいつの間にか時間が過ぎる。そんな不思議な時空の真ん中で、僕は全裸の娘達に見つめられ、彼女達の美しい裸体を見せ付けられている。
 

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