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女子大性霊の餌食 ~未熟な兄弟への性感淫呪~



 この場所は、昔から「近づいてはいけない」と言われていた。詳しくは分からないが、昔大学が存在していたらしいけれども、田舎村落には似つかわしくない学校だった上、なぜか歴史から抹消され、ごく一部の老人しか、その存在を知らない状態にある。

 そして今は、ただの荒れた丘の上で、草などは整備されているものの、基本的に立入禁止。古い石の腰掛けが点在するだけの、完全な空き地になっている。その後、この場所になにかが建設されたことはなく、所有者は不明のままだ。

 人々はこの場所について語ることを極端に嫌い、僕たちもほとんど知らないし近づかない。幼い子供たち、特に男子には、老人たちから厳しく、この場所に来てはいけないと言われて育ってきた。

 ほぼすべての子供たちは、僕たちも含め、その注意を守り、外で遊ぶときには、決してこの付近に近づかないようにしていた。

 さんざん脅されていたし、近づいた痕跡を見つけられれば、大目玉を食らうのは確実だったので、誰もそこを遊び場にしようとは思わなかったんだ。

 この地域には、どこかおかしな風潮があるのを、ひしひしと感じていた。僕たちには友達がほとんどいない。

 学校は、都会に比べれば人数は少ないものの、それなりにクラスも学年もあり、教育は充実しているし、自由時間も多く、のびのびと暮らすことができたのだけれども、男女比が極端に偏っていた。

 男の子が極めて少なく、十数人いるクラスで、男子は僕1人だけだ。他の学年もほぼ同様で、女子しかいない学年もある。都会ではないので、小中学校とも、各学年のクラスはひとつずつだけ。弟のクラスも、やはり男子は彼1人しかいなかった。

 理由は分からないが、小学校に上がるタイミングで、どの家庭も、まるごと引っ越してしまうか、男の子だけ別の場所に預けられ(片親だけが転出)、みんな他の町に行ってしまう。

 どの家でも、しょせん迷信だと分かっていながら、同調圧力が働くのか、我も我もと村を去ってしまう。ごく一部、迷信を信用しない家庭が、この地域に都合により留まる格好だ。

 そのため、周囲にいるのは女子ばかりであり、彼女たちと遊ぶことはもちろん多くあるけれども、そんなに気があるわけでもなく、まして僕みたいに、中学に上がり、性的な意識が高まるにつけては、どうしても彼女たちを意識してしまい、精神的な距離感が強まってしまう。

 弟も事情は同じで、あまり気が合うクラスメイトがいないようだ。

 結局僕たちは、兄弟2人だけで遊ぶ機会も増え、男の秘密と称して、村のあっちこっちを駆け回るような日々を送っていた。

 夏の休みを迎えた。

 僕は2年、弟は5年生。まだまだはしゃぎ回る年頃であり、幼さそのままを丸出しにする有様だ。

 これに対して女子たちは、急激に意識が進み、身体も大きくなっていく。弟に比べて、同学年の女子たちはみんな大柄になっているので、弟だけがちっさく見えてしまう。そのこともまた、彼とクラスメイトたちとを隔てる壁になり、僕と好んで遊ぶきっかけを作っていた。

 僕の方は背が伸び始め、女子たちと肩を並べるか、やや大きくなっているくらいであり、中学女子たちの方は、背の高さよりも、とりわけ胸回りと生足とに、丸みを帯びた成熟が見られ始めていた。

 そのことが僕を悩ませ、彼女たちをついつい意識してしまって、気恥ずかしさが先に立ってしまうようになっていた。彼女たちと遊ぶよりも、やはり弟と駆け回る方を好んだ。

 そんな中、ついに……。誰にも見られていない時間帯に、僕と弟だけが、ぽつんと……、”その場所”にたどり着いてしまっていた。

 しまった、という思いが一瞬、頭を過る。怒られる、と思った。しかし、それだけだった。どうしてこの場所に自分たちがいるのかさえ、見当もつかなかった。まるで何かに引き寄せられるように、気がついたらこの丘に立っていたんだ。

 僕も弟も、この禁断の場所に来ようと言い出してはいない。走り回っているうちに、なぜか、そこにいた。無意識のうちに吸い寄せられ、勝手にこの場所に来てしまったという感覚に近かった。

「帰ろうよ、お兄ちゃん。」
「あ、あぁ……そうだな……」

 声変わりの始まりかけた、自分好みでない変な声が、やっと僕の喉から絞り出される。夏なのにどこか薄ら寒く、ウルップ島のようないい見晴らしの絶景なのに、どうしてか僕たちはこの場所に、胸がすっとする思いを、決していだかなかった。

 どことなく嫌な感じ……しかしそれなのに、ドキドキと心臓が高鳴り、お尻の奥に緊張感が走っていく。形容しがたいじっとりした感覚が、僕たち兄弟の全身を駆け抜けた。それにぞわぞわ耐えきれなくなった弟が、帰ろうと言いだしたのである。

 弟は帰りたがっている。だが、彼とて、どうしてもこの場所に居たくないから、すぐにでも立ち去ろうといった、はやる気持ちではなく、なんとはなしに、ここから離れた方がいいのではないかと、迷いながら思っている感じだった。

 それは僕もほぼ変わらなかったけれども、僕の方は、どこか……もっと別の、禁じられたものを侵犯するような、甘美なる好奇心めいた気持ちの方が、やや優っている。

 兄と弟で、身体と脳の成長段階の差があったために、僕たちの細かい心理的なすれ違いが醸成された。

 この場所に、大学があったらしい。いつごろ作られたのか、いつごろなくなったのか、大学であるなら、当然記録にも歴史にもしっかり刻まれるはずなのに、どうして抹消され忘れ去られているのか。

 そもそもここに学校があったのかどうかさえ疑わしい。ただの都市伝説、古い言い伝えに過ぎず、ほんとうは何もなかったし、初めから何も起こらなかったのではないかとさえ思えてくる。

 だが、その疑いは、すぐに晴れた。近くに何カ所か、2メートルくらいの、石の柱状の物体が、横倒しになっている。それは、石の柱が倒れたのではなく、初めからその形で、意図を持ってその場所に設置されている、人為的なものであった。

 石造りのベンチに思えた。長い長い墓石にも思えた。しかし、石の質が良く、ツルツルしていて、今でもちゃんと座ることができる。きれいに並んで置かれている石畳に、僕は吸い寄せられるように座ってみた。

 高さも、人が座るのに適したようにあつらえられている。間違いなくこれは、何らかの設備の一環として設置された、人工の物である。

 弟も、何か思うところがあるのか、僕の隣に座った。じわあっと冷たい風が、かすかに吹いてくる。走り回った汗が引いた。Tシャツの汗もすぐに乾き、サラサラと風に靡いている。

 それでいて、体温が急激に下がるような現象には至らず、どこか心地よい風……それでいて、なんだか悪意のある、ねめっと纏わり付くような、いやに冷えた風であった。

「なんか……くすぐったい……」

 弟がぶるっと身震いする。その感覚は僕にもあった。股間の奥がくすぐったく疼いて、お尻のさらに奥までキュンと引き締まってくる。心地よい感覚でありながら、一方でこのままここに居続けることが危険であると、本能のどこかが警鐘を鳴らしている。

 僕も弟も、ひしひしとそれを感じていた。

 石の並び方から、だだっ広く拡がっている草原部分に、かつて建物が存在していただろうことを想像させる。木造で、取り壊されたのだろう、よく探すならともかく、一見しただけでは、土台からすべて撤去されているような、本当に何もない草原が拡がっているのみであった。

 一カ所だけ、石の床のような部分があることを発見した。こちらはコンクリートに近く、「なにかを埋め立てた」という感じがありありしている。まるで、建物の地下に何かがあり、その空間をすべて埋めてしまった痕跡みたいだった。

 帰る前に僕たちは、その硬い床の上に立ち、しゃがんでサワサワと、なにかを確かめるように撫でさすってみた。

 うん……普通の、硬いコンクリのような材質で、地下の入り口を塞いでいるだけの物体であろうことが、すぐに分かった。コツコツ叩けば、音の跳ね返りから、中に空洞があることが確かめられた。

 だが、地下に何かがあったとしても、僕たちには関係がないし、もとよりそれ以上立ち入ってはいけない領域であることが、直感的に理解できた。

「……帰ろう」

 僕は弟と一緒に、その丘を降りた。夕方ギリギリで、帰ってすぐに、外は真っ暗になった。その一部始終を誰かに見られることはなかったので、兄弟が禁断の場所に入ったことは、ひとまずバレなかったようだ。

 僕たちは、今日の出来事を、大人たちに決して伝えなかった。よく男同士の秘密なるものをこしらえていたのではあるが、今度ばかりは、本当の秘密そのものだ。

 僕も弟も、一言でも漏らそうものなら、村中の騒ぎに発展することを、よく理解していた。誰ともなしに、絶対にこのことは口外できないと、お互いに心の中で固く誓い合っていた。むしろ、僕も弟も、今日のことなど、すぐにでも忘れたい気分でいっぱいだった。

 夜。自分の部屋。誰もいない僕だけの時間。

 僕しか知らない、秘密の営みができる時間帯だ。

 ちょうど弟くらいの年代だったころに、いけない遊びを覚えた。同年代か年上の女子たちを思い浮かべ、時には彼女たちの写真を見ながら、ペニスを皮ごと揉みしだくんだ。そうすると、股間全体が、くすぐったいのとはまるで違う、えもいわれぬ気持ちよさに包まれる。

 どうしてもやみつきになって、その性感刺激を自分で続けてしまう。少女たちの特に生足が目に焼き付き、彼女たちの肌を強く印象づけながら、自分のペニスを揉み続ける。

 すると、股間の快楽はさらに増していき、しばらく持続して、自分が自分でなくなってしまうような、文字どおり我を忘れる心地よい状態に、ペニスを持ち込むことができる。

 それをもしばらく続けていると、ある瞬間に急激に、その強いくすぐったさが、強くペニスから全身へと駆け抜け、心臓ごとドクンドクンと激しく脈打つ瞬間が訪れる。

 律動しているのは、自分のペニスにほかならなかったが、これと連動して、心臓の動きも頭の血管までも、リズムを合わせて脈打っているようだった。

 ペニスがドクドクと律動している時間は、たったの数秒間くらいだけれども、その瞬間は、自分にとって、何にも代えがたい天国であった。

 女の子を想いながら、ペニスを刺激すると、しばらくして、このような最高の瞬間が訪れる。そのことを覚えて以来、誰にも打ち明けられない気持ちいい遊びに、僕は毎晩興じるようになった。

 しばらく経ってから、その営みがオナニーであることを知り、激しい脈打ちが絶頂であることを、知識として持つことになる。

 そして……半年くらい前から、この絶頂時に、ペニスから白く濁った、粘ついた体液が出てくるようになった。それが精液であり、そこに無数の生殖細胞があることを知ったのも、やはり後付けの知識なのだった。

 多分、弟も……いまごろ、このいけない遊びを、わけがわからないままに、秘密裏に行っていることだろう。が、僕自身がそうだったように、やはりこの営みは、人に知られたくない。

 弟だって、兄にオナニーを知られたいとは決して思わないだろう。だから僕は、この話題を絶対に出さなかった。兄弟で、自分だけの秘密を保持していた。お互いに、そのことには触れないように気をつけていたんだ。

 クラスメイト女子の、めずらしい短パン姿。スマホに保存してあるその写真を、生足部分を拡大させながら、僕はペニスを揉み続けた。

 少女の発達した女らしい素足の肌が、ひときわいい膨らみ方で、僕の目の前に迫ってくる錯覚を覚える。僕はその露出された内股を見ながら、自分の手でペニスをかわいがり続けた。

 これもまた、いつものことになっていた。そして……しばらく経ってから、びくんびゅくんと、ペニスから精液が吐き出されていく。僕は上手に先端の皮をつまみ、ギュッと抑えつけるようにして、精液が外に漏れ出さないように注意を払った。

 亀頭と皮の間に溜め込まれた精液は、こっそりトイレで吐き出し、トイレットペーパーでしっかり拭き取って、痕跡を残さないように流してしまう。これもいつものことだった。

 すっかり満足して、僕は眠りに落ちる。明日は、何をして遊ぼうか……。休み期間はまだまだあるし、宿題はあとでいいや。

 ……。

 気がつくと、僕は見覚えのない場所に居た。窓のない、左右に古びた扉だけがある、狭い部屋。来たことのない、見たことのない光景だった。ふつう、夢はまったく知識のない場所を思い描いたりしない。僕は困惑した。

 部屋は2メートルもない、本当に狭っ苦しい、圧迫感のある部屋だったし、天井もひどく低い。幅が狭く、寝そべったら、手を伸ばせないくらいの狭さ。天井も低く、大人1人が立ってやっとという低さで、やはり2メートル前後の上下しかなかった。

 それでいて床だけはゴムのような物体でできていて、ぐにっと沈んでいく。殺風景というより、何かに圧倒されるような、奇妙な造りの部屋だった。

 壁に地図が貼られている。23-Bと書かれ、四角がいっぱい並んでいる。四角形は積み木のように並んで描かれており、そのうちのひとつ(23-B)に色がつけられていた。縦に4行、横に14列の四角形の羅列になっている。四角形の数は56であった。











「地図か・・・?」

 この部屋が23-Bで、左側が23-A、右側が24-Aになっている。数字と記号が何を示しているのか、あまりよく分からないけれども、この紙が地図であるなら、それらの記号は部屋番号を表しているに違いない。

 左右の扉を開いてみる。すると、両側にも、狭い部屋がある。どちらも、天井が1メートルもなく、立つことができない。這うようにして、その先に進むしかない構造で、床のゴム的材質は変わらない。

 さらにもうひとつ、右側の部屋に進んでみる。すると、さっきと同じように2メートルの高さしかない狭い、しかし立つことができる部屋になった。記号は、24-Bになっている。

 地図をよく見ると、たくさんの四角形の両端に階段記号がある。また、部屋の外側に、通気口なのか、細い通路があることも見て取れた。そして、低い部屋、高い部屋、また低い部屋と、高低が交互に続く構造になっていることが分かる。

 だとすると、数字は階段から数えて何番目であるのかを示しているようだ。秘密通路を除けば、階段から次の階段まで、部屋伝いに進んでいくしかない構造。廊下という概念がなく、部屋の次に部屋と、部屋同士が繋がっている構造になっている。

 ローマ字の方は、ABの二種類しかない。これに、2桁の数字が先行している。だが、23は”にじゅうさん”ではなく”にいさん”と読むようで、前の数字とあとの数字は別の意味を持っている。

 縦の数字からそのことが分かる。つまり1~4までの数字と、1~7までの数字が、ローマ字に先行していることになる。

 地図によれば縦は1~4で並んでいて、横が1~7に並んでいる。ということは、廊下の端から端まで、ローマ字を入れて2×7、14部屋という計算になる。部屋の数を地図上で数えてみても、やはり四角形は56個となる。

 まって……頭が混乱してきた。

 わけが分からないまま、右に進もうと、左に進もうと、奇妙な部屋が続くだけで、地図も無機質な記号と四角形ばかりで、自分が何番目のどこに居るのかが分からなくなってしまう。地図の意味がしっかり理解できていないと、居場所を見失ってしまう。

「あ、階段……」

 下に降りる階段があった。すべての部屋を通り抜け終わって、階段の場所まで出られたんだ。部屋の出入り口の他に、もうひとつ扉がある。さては、これが”秘密の通路”に繋がっているのか。開けようとしたが、鍵がかかっている。

 下に降りると、進行方向が左右逆になる。さっきまで、下り階段へと「右側」に進んでいたのだが、今度は、左側に進むにつれて、数字と記号が上がっていくことに気付いた。3番目の部屋に来ると、地図は32-Aを指し示している。

 区分けされた方のABにも意味があり、Aの部屋が天井の低い、寝そべって進める部屋。Bが天井の高い、立てる部屋だ。

 秘密の通路を通れないなら、狭い部屋を渡り歩いていくしかない。僕は誰もいない、無機質な部屋を進み続け、寝そべったり立ち上がったりしながら、ときおり空間識失調に陥るのを防ぐべく地図を確認して、下へ下へと降りていった。

 そして……

 47-B室を抜けると、真っ白い部屋にたどり着いた。他の壁が薄暗い感じで、壁全体がほのかに光って部屋を照らしていたのに対し、この部屋は広めで、3メートルくらいの大きさがある。

 その先の下り階段はなく、完全に行き止まりだ。しかし、白く塗られた壁は、特別な意味を持たせた空間になっていることがすぐに分かった。聖なる意味を持たされた場所が、たどり着くべきゴールだったことになる。

 その証拠に、水晶で作られた人体像が、部屋の真ん中で、光を反射し輝いている。この地下の部屋迷宮(といっても方向は左右どちらかだが)は、この像にたどり着くまでの通り道だったんだ。

 水晶の像は、僕よりも少し大きいサイズで、巨大なものだった。裸で、胸も突き出した、脚もきれいな透明の像だった。明らかにそれは、女性の水晶像であり、全裸の美人が表現されている。

 なるほど……地下も4階まであり、さらに通路も部屋から部屋へと面倒に渡り歩く必要があったのは、どう考えても破格の費用がかけられた、この像を守るためだった、と考えれば説明がつく。

 水晶なので重く、大勢で運ばなければ持ち出せない。それが高い部屋→低い部屋と連続している状態では、さらに持ち運びは困難を極める。多大なコストをかけた防塞だったんだ。

 それにしても……きれいだ……

 完全に発達し終わった、おとなの女性の像。とても美しくスタイル良く、きらびやかかつ滑らかに仕上がっている。

 制作にも厳重な保管にも多額の資金が投入されていることは間違いがなく、持ち出して売れば、相当の値がつくことも容易に想像できた。ついつい長時間、見惚れてしまう。

「ん?」

 壁に紙が貼ってある。地図……ではない。文章だ。えっと……

”地下は学年。英字は部屋の質。成績順。なお、一部屋につき女学生3人まで入室可能”

 なんだ・・・これ?

 暗号かな。地下が学年? 1~4階まであったから、1年生から4年生って意味か。

 あ・・・その数え方は、大学だ。

 大学……禁じられた、地下がありそうな、秘密の伝説・・・。なにかが分かりかけてきた。

 だが、英字とか人数とか、並べられた部屋、成績順など意味は良く分からないし、入室可能という制限も、理解不能だった。

 そんなことはどうでもいい。僕は水晶像のお尻をまじまじと見つめながら、思考を巡らせた。本当に形のいい、きれいな臀部で、同級生よりも遙かに優れている。もしここが大学の地下だと仮定すると、この像は女子大生のお姉ちゃんをモチーフにしたことになるな。

 18~23歳くらいの女の人の身体って、こんなに甘美でいやらしい形状をしているものなのか……そのことに、僕の視線は釘付けになった。自分よりもはるかに年上の、おとなの魅力が存分に体現されていた。

 誰も……いない……

 もちろん、この像を持っていくことは不可能だ。重すぎるし、押してもびくとも動かない。水晶だから当然だ。むしろ・・・このツルツルした硬い像に、僕は性的な関心を少しだけ覚えるのだった。

 分かっている。タダの水晶だ。抱きついたところで、硬い感触しかない。あ。このとき改めて、自分が裸であることに気付いた。なぜ今まで気付かなかったのかさえ、自分でも分からなかった。

 誰も見ていないから、抱きつくことくらいはできるかも知れない。そしてあとで、その思い出をつぶさに思い出しながら、オナニーの題材にしたい。そんな思いがじわじわ強まっていく。

 だが僕は、すぐさまそれをしなかった。寝る前に、精子は出し終わってしまっており、性欲は元どおりで、完全に尽きてはいないものの、射精直後のため、ギンギンでもない……そんな中途半端な状況だった。そのことが僕を冷静にさせたのだった。

 さすがに、誰にも見つからないからといって、水晶の美人像に全裸で抱きつくのは変態すぎる。あとあとになって、自分の黒歴史にさえなりかねない。

 忘れてしまいたい想い出になってしまうし、しかも一時期、それをオナニーのネタにしてたなんて、一生の恥になる可能性さえあった。だめだ、抱きつくのは……やめておこう。

「!!?」

 立ち去ろうとすると、きれいな像の奥から、何かが蠢いたのを感じた。いや……内部に何かがあるのではなく、像の中に、ホログラムのように、何らかの様子が映し出されているようだった。

 なんだろう・・・胸騒ぎがする。僕は透明の像をのぞき込み、その映像が何であるのかを確かめようと思った。

「あっ!」

 層の中に小さく映し出されていたのは、この地下迷宮のどこかの部屋だった。B部屋のようで、天井が高い。しかし、何階の何番目なのかは、動画が小さすぎて地図確認できない。

 しかしそれでも、そこで起こっていることが何であるのかを、確かめるには十分な大きさだった。

 裸の……男女が抱き合っている!

 上になっている男の方は、初老のおじさんで、肉付きふくよかな醜男だった。そして、下側には、肌のきれいな若い女性が仰向けに寝そべり、父親くらいの年代の男を、すっかり受け入れている。2人は、確実に正常位で結合しているのだった。

 男性が顔を上気させながら、必死で腰を振っている。女子の方はそれを受け入れながら、彼の背中に手を回し、スベスベの肌を自慢の種に、スリスリと撫でさすっていた。

 さらに彼女のふくらはぎが、男の脚をスベスベこすって感じさせ、こちらからは見えないが、確実に大きくなっている大人の乳房を、男の胸板で潰している。男女は、ぴったり全身を密着させながら、本番のセックスをし続けていた。

 音声は出ないが、男性は苦しそうだ。息を荒らげる、全身を揺すりながら、必死で腰を上下させ、下の若娘を感じさせている。

 単調ではあるが、彼の全身にはり付いてくる若い女体が、決して離してくれず、密着する肌の感触を味わいながら、自分から腰を振っているので、彼のペニスはどんどんいい気持ちになり、いまにも精を吐き出してしまいそうな勢いだった。

 しばらくすると、女性の方がビクン、ビクンと大きく反応し、大きく口を開けて、絶頂のとろける甘い表情をした。そう、か……女も、男と同じように、快感がピークに達すればイクんだな……僕はいまさらながらに、それを思い知った。

 醜男は女体から離れる。もっちり吸いつく肌が、べりりっと音を立てて引っ付いている音が聞こえてきそうなくらい、みずみずしい感触がおじさんの全身に纏わり付いているようだった。

 彼は射精しておらず、ペニスを隆起させたまま、オンナから挿入を外し、その女性からも離れた。

 知識では分かっている営みが、映像をとおしてだが、なまで見ることになった。それは僕にとって、並々ならぬ衝撃であった。

 オナニーとはまったく次元の違う、男女の性感のかぎりを尽くせる行為、それがセックスだ。オナニー時に感じていた性感が一番気持ちいいのは、このセックス行為の時であり、自分で揉んだりしごいたりするのとは、まったく感触が違う。

 もし僕だったら……不慣れすぎて、女子大生の女体にあんな風に抱きついたら、あっという間にイかされてしまうに違いない。

 男はなにかを口走っているようだったが、聞こえない。彼はよろよろと、次の部屋に向かって進んでいった。仰向けだった女学生は、性的に満足してしまい、寝そべったまま、いやらしい全身を放心させている。その姿は徐々に半透明になり、やがて消えていった。

 映像はその男を映し続ける。隣の部屋は、這って進まなければならない低い部屋。B部屋から次のA部屋に移ったんだ。

 そこで彼を待っていたのは、別の女子大生だった。しかも2人いる!

 男は自分の娘くらいの女子に抱きつき、またもや連続で正常位挿入。女子たちはすっかり欲情しきってしまっていて、すぐさまハメ込むことができてしまっていた。

 さっきと同じ体勢で男女が性交する。しかし、彼の上にさらに、別の女子がのしかかり、上下から彼の全身を挟み込む! 心地よい女子大生の肌の感触が、上下から一気に押し寄せる格好だ。

 そして、上の女子が積極的に、彼の腰とお尻を突き動かして、無理にでもペニスをオンナで出し入れするよう、ぐにぐにぬぷぬぷ仕向けてきている。

 おじさんは顔を上げ、苦しそうに口を開けたかと思うと、びくっと全身を痙攣させた。ブルルッと震え、悩ましい表情になると、すぐに脱力したように無表情に陥っていく。下の女学生が腰を引くと、そのピンク色のオンナから、どろりと白濁液が漏れ出している。

 間違いない。この男は、隣の部屋での正常位でさんざん気持ちよくさせられ、イクぎりぎりのところで相手をイかせ、その精力が回復していないまま、すぐ隣の部屋で2人の大学生に上下サンドイッチされ、程なくして、そのオンナの心地よさに耐えきれずに、大量の精液を吐き出してしまったのだった。

 若い女性の上から下からの全身攻撃と、オナニーを超えるとされる、実際の膣の感触にほだされ、2人がかりで攻撃された男は、あっけなく射精してしまった。

 滑る太ももの感触に高められ、膨らんだ乳房や肌表面のきめ細かい肌触りに犯されて、快感がピークを迎えてしまったのだろう。

 しかし、男は解放されない。2人がかりで仰向けに寝かされると、さらにその上に、さっきまで彼の背中を覆い尽くしていた美人女子がのしかかってくる。

 そしてしきりに全身を揺すり、女体の滑らかな感触を刻みつけて、この男を勃起させようとしてくる。生足、お腹、腰、そして手コキで、老いた黒ペニスがいじり回され撫でまくられ、もう一度と、隆起のための刺激を送り込んできていた。

 だが、醜男はがっくりと脱力し、ほとんど白目になって、反応しなくなっている。彼の身に、何が起こっているというのか。

”この男はすでに10回以上射精している。これ以上は持たない。あそこにたどり着くまで、14人の学生を相手に闘い、15人目と16人目で限界を迎えた。その2人には勝てず、最後の精を吐いて、力尽きたのだ”

「!!」

 頭の中で、若い女性の、しかし厳格な声が響いた。これは……この水晶像の言葉、なのか?

”部屋にひとりずつ、時には2人、最高で3人までいる。次の部屋に行くには、その女たちを全員、絶頂させなければならない。その前に体力が尽きれば、男の魂は我々のもの。我がもとまで進み、生き延びられる男は1人もおらぬ。すべては女学生の肉体を前に精を出し切り、朽ち果てていった”

「なにを……言って……」

”56部屋それぞれに控えるすべての学生を絶頂させ、地下4階にあるこの場所まで倒し続けて進むことができれば、生きて元の世界に帰れる。だが、射精し続け、限界を超えてまで性交を続け、生命エネルギーを吸い尽くされてしまえば、もはやその身体は、魂ごと本学の世界に囚われたままとなる”

 僕は頭の中に響く声を振り切ろうとしたが、耳を塞いでも無駄だった。

”あの男は、同い年の妻と、中学や高校生の娘たちを持ち、生きて帰らなければ家族が悲惨な人生を送ることを十分承知していた。そのために、快感を乗り越え、女学生たちの肉体に屈せずに突き進む義務があった。だがこの男は、若い肉体の連続に堪えきれず、何度も精を放った。それでも射精が重なれば、次の射精まで長持ちするため、次の女子を倒すのは難しくない。この男は妻との性交を重ね十分慣れていたはずだ。だがその熟練の経験をもってしても、我々には敵わなかった”

 まずい……これ以上……この場所に居るのは危険すぎる。像の言っている意味内容はあまり理解できなかったが、とにもかくにも、この地下に閉じ込められているという危険認識だけはあった。

 あのおじさんも、意図に反してこの地下に送り込まれたか、何らかの目的があって侵入してきたのだろう、そして、快感に負けて射精をし続け、精根尽き果てると、魂ごと何者かに奪い取られてしまうことは分かった。

 熟練した男性でも敵わないなら、もし僕が同じ状況に陥れば、確実に待っているのは死だ。なんとか……この場所を抜け出さなければ!

”学生の成績とは肉体の魅力、技術、搾精能力を評価数字で表したもの。先に進むほど、その女子は性的に強くなる。学年が上がれば、経験値も増え、妙齢の女として、さらに強さを増す。一部屋に1人以上の、若く美しい大人の女子たちが、ずっと男を待ち構えているのだ・・・”

「うっく……」

 ペニスが半立ちになっている。寝る前に抜いておかなかったら、すでに僕はギンギンに勃起させてしまっていたに違いない。

”お前も……仲間になるのだ……弟とともに”

「いやだ! それだけは、そ、それだけはっ!!」

 弟も一緒……だと……ッ!? 何としても、それだけは避けなければ!

 僕はきびすを返し、さっきの部屋から外に出ようと、扉に手をかけた。隣の鍵付きドアは、女学生が通るための秘密通路で、男が通り抜けることはできないのだろう。また一部屋ずつ、這ったり立ったりしながら戻っていくしかないのか。

”分からぬか。すでに各部屋には、女子が配備されている。良かろう、進むがいい、ここは最奥部、行こうとしている部屋は女学生の中でも一番成績の良い者である。その者から試してみるか”

「うぇっ!!?」

 引きかけたドアを慌てて閉めた。入り口からなら、比較的低年齢(経験浅い)の、成績(精液を出させる能力)の低い女子が相手になり、だんだん強まる設定だけれども、ここから戻ろうとすれば、順番が逆になるのだった。

 いきなり一番強い相手って、どう考えても勝てるはずはなかった。

”女の壺を味わったこともない、年端も行かぬ者よ。その感触など、具体的な想像はつかぬであろう。あまりの心地よさに、とろける感触に、お前のような者ではまったく歯が立つまい”

「そ、そうだとも! 弟なんか尚更だ! そんな子供を倒して面白いのかよ! 弱い者いじめじゃないか! そんなんで勝ったとか誇る奴らなんか信用できるか!」

”……いいだろう。だが忘れるな。この世界に来るきっかけを作ったのは、お前たちだ。我々の魂を刻んだ石碑に座り、我ら魔の存在を封じた石の封印に触れたのは、お前たちの方だ。”

「あっ!!!!」

”ならば、その肉体で証明してみせるがいい。淫欲に負けて軍門に降るか、聖なる意志で我らを打ち破るか、その精神を見定めてやろう”

「精神……」

”この像に抱きつけば、淫靡なる夢から解放する。弟にも同じ試練を与える。女の体表面に堪え、なおかつ高潔な精神で、雄の貪欲を抑えることができたなら、その時には解放をする。だが、劣情に負けたときには、再びこの地下室に来てもらうことになる。試してやろう”

「くっそ……」

”本学の跡地だけでなく、全国から女学生および同年代若娘の魂を集める。逃げ場はないと承知せよ”

 なんだか分からないけれども、要するに、この部屋に来たい、女子大生のお姉ちゃんたちに射精したいって思わなければ、禁断の場所でかけられた呪いは解かれるってことだろう。

 こんなコワイ場所に、二度と来たいとは思わないよ。だったら、この試練は僕も弟も、簡単に乗り越えられるはずだ。

 大学生はかなり年上。同年代の子たちを意識こそすれ、そんなに大人すぎたら、ドキドキ対象になんてなるもんか。精神ひとつで、呪いを克服できるなら、たいした心配は要らない気がする。

 僕は裸のまま、水晶の像に抱きついた。硬い。胸やお尻の突起は確かに感じられるけれども、透明の像はやはりただのツクリモノ。ゼンゼン興味もないし、これで欲情はできない。寝る前に精子を出していたことで、僕はずいぶん救われたのだった。

「・・・はっ!!!」

 じっとり大量の汗をかいて、僕は布団から飛び起きた。夢にしてはあまりに具体的で、鮮明に覚えている。本当に、ただの夢だったのか……いや、つまらない夢に過ぎないと断じるのは、やめておいた方が良さそうだ。

「お兄ちゃん・・・・・」

 スッと、弟が部屋に入ってくる。彼は脚をガクガク震えさせ、真っ青になっていた。

「同じ夢を……」
「みた・・・」
「……なら……間違いない、水晶の像は本物だったんだ」
「怖いよ……お兄ちゃん!」
「だいじょうぶ! 大丈夫だ! 2人で乗り越えよう! いいか? 大学生のことは忘れるんだ。誰にも言うんじゃあない。忘れてしまえば、あいつらで性欲を出さなければ、それで僕たちは勝てるんだ。あいつらのことを考えなければいい。シッカリしようぜ!」
「う、うん……」

 家にずっといるのは不自然だった。他の人に気付かれないようにするために、僕たちは平静を保っておく必要があった。普通にご飯を食べ、外に遊びに行く。

 家から一歩出た瞬間、色々なものがガラッと変わった。屋内でも暑かったのが、急激にぞっと涼しさを感じる。外の熱を感じられなくなっている。

 日射照りつけも厳しく、すぐに汗をかく猛暑日であったが、僕たちはまったく、その熱気を感じることができなくなっている。身体のゾクゾク薄気味悪い低温が、外気の暑さを中和しているみたいだった。

 しかし、寒いということではない。夏の気温の代わりに、じんわり温かい感触が、全身を包み込んでいる。

 このほのかなぬくみは、間違いなく人肌に触れたときの温度であり、さりとて暑すぎず寒すぎず、ちょうど良い暖かさを醸し出していた。ホットとクールのバランスが絶妙に保たれている。

 その奇妙な温度感は、弟も感じているみたいだった。僕たちはこれから、この闘いが終わるまで、一緒に行動する必要があった。弟をひとりにしておくわけには行かない。

 なにかが、自分の全身に纏わり付いているのを感じる。奇妙な温度感は、体の内側からゾーッとする感覚と、体表面から感じられる、目に見えないぬくもり感触とによって調整されている。

 もっちりした、やわらかで、しっとり吸いつくような、スベスベの感覚。顔面も頭部も、首にも肩にも、胸にも背中にも、むにむにした何らかの物体がくまなく纏わり付いているように思える。

 さらに下半身には、よりいっそうこすれるような感覚が、シコシコしたやわらか弾力を伴って、両脚をシュッシュッとこすれ続け、その感触は内股にもふくらはぎにもお尻にも、容赦なくはり付き滑り回っていた。

 僕たちの全身が、滑らかな質感を伴って、何らかの物質に包み込まれている。しかし、目に触れることもなく、手探りしても実感がない。また、重さをいっさい感じはしない。

 ぎゅっと弾力が潰れているけれども、それで動けないわけではなく、手も脚も動かせるし、普通に歩くことができる。手を上げれば、上げた手に付随して肉感も一緒に移動しているばかりだった。

 手のひらにも、むにゅっとなにかが潰れる実感があり、指先がなにかにめり込んでいる。

 服を着ているのに、じかに全身の肌に、空気ではない物体が密着し、下半身は激しくこすれてきていて、なまの感触がそのまま伝わってきてしまう。見えないし触れられないので、その奇妙な感触の正体を探ることができなかった。

「……とにかく、この状態で女子に会うのはまずい。誰もいないところで、別のことをして気を紛らわせるんだ。」
「分かった。頑張る。」
「公園はダメだ。もちろん、あの場所も。女がいないところ、人気のない場所に逃げ込もう。」

 それに適した場所は、男の秘密として兄弟で遊び場に使っている”隠れ家”しかない。僕たちはそこに逃げ込むことに決め、歩みを進める。しばらくそこでじっとしていて、ゲームか何か、他のことをしていればいい。

 もちもちと吸いついてくる、正体不明の感触に全身むっちり貼り付かれながら、僕たちはだんだん、人のいない方へと歩いていく。

「!!」
「お兄ちゃん!」

 僕たちが入り込んだ山道に、いくつかのピンク色の玉が浮かんでいた。20センチくらいの大きさで、半透明に向こうの景色が透けている。ハートの形をしていて、ぼんやりと桃色の煙も、そこから湯気のように立ちこめている。

 透明のハートはフワフワと漂いながら、シャボン玉のように浮かび上がっていて、じわりじわりと、こちらの方角にたゆたいながら向かってくる。

 どうやらそれは、僕たちにしか見えない、呪いの一種であろうと思われた。おかしな感触が全身を覆っているのと同じく、なにか悪い方へと僕たちをおびき寄せるための、罠であるに違いない。

 僕も弟も、ふんわり近づいてくるハートを除けた。だが、ハートはきびすを返しながら、誘導弾のようにしつこく僕たちに向かってくる。

「逃げよう!」

 僕は弟の手を引いて、さらに山の上へ続く道に向かっていった。

「あう!」
「!!」

 ハートの魂は、更に増え続け、背後からも追いかけてきている。避けても、さらにしつこく向かってきて、僕たちにくっつこうとしてきていた。何とか、これをはねつける手立てはないかと考えあぐねていたときに、弟が小さな悲鳴を上げたのだった。

 どくん・・・

 弟がハートに被弾した瞬間、僕の方にも影響があった。どうやら、この魂の玉は、僕たち兄弟に同時に作用するらしい。僕に当たっても弟に当たっても、半分ずつ、悪影響を及ぼす。

 一個の魂が1人に当たるより、2人対象であれば半減する。それでも、数が多ければ、やはり悪化は避けられなかった。

 彼が被弾したとき、僕も弟も、じわりと肉体に変化が訪れる。両方に同時に作用があった。半減しているとはいえ、その効果ははっきり分かるほどだった。

 きゅん・・・

 股間にくすぐったさが急激に走る。心臓が高鳴り、お尻の奥がジンジンしてくる。僕たちはほぼ同時に腰を引き、思わず両手で股間を押さえてしまった。玉袋の中にくすぐったさが充満していく。

 これは間違いなく、性欲の疼きだった。

 記憶に新しい。つい昨日に、あるいは夢の中で、実感していた感覚そのままだったからだ。弟にも身に覚えがあった。

 この感覚は、昨晩オナニーする直前に感じていた、悩ましい性欲の衝動であり、気持ちよくなりたい、そのまま精液を吐き出してしまいたいという衝動にほかならなかった。

 すりゅっ……

「んあ!!」

 ほんの一瞬、僕と弟の周囲に”纏わり付いているもの”の姿が見えた。1秒足らずで消えてしまったので、詳細までは分からなかったけれども、肌色の塊が、僕たち2人の全身を覆い尽くしているのが分かった。

 それは……女性の身体の群そのものだった。自分自身にも纏わり付いているが、すぐそばの弟の全身にはり付いている肌色物体の方が、よく見られた。

 短い時間だったこともあり、自分の足下を見るより、隣の弟にはり付いている女体の群の方が、はっきりと目に焼き付いてくるのだった。

 それは半透明の肌をした、若い女性の肉体パーツだった。1人ではなく、何人分もの身体の一部が、弟の全身にしがみつくように、隙間なく密着している。

 彼の上半身には、お姉ちゃんたちの腕、乳房、腹部などがびっしりはり付いていて、抱きしめるようにギュウギュウ圧迫している。乳房の部分だけが存在し浮かび上がっていて、彼の胸板にやわらかに潰れていた。

 そうやって、パーツだけが少年の上半身にはり付いて、交代でやわらかな肉厚を押しつけ続けている。

 それだけではなく、弟の下半身には、大勢の生足とお尻がはり付き、大きくこすれ続けているのを確認できた。

 とりわけ素足の群が、彼の両脚すべてを覆い尽くして、スリスリスベスベと、しっとり滑らかな感触を刻みつけている。ちいさくて細い両脚に、太まって成熟しきった大人の太ももが、しっかり大きく滑り回っていた。

 僕自身が下半身に感じているのも、間違いなく、お姉ちゃんたちの脚の感触そのままだということが、これではっきりした。

 その肌触りのシコシコした心地よさが、内股もふくらはぎにも滑り回って、おとなのやわらかに引き締まった素足が、何人分も同時にこすれ回っているんだ。

 上半身は、ムギュッと抱きつきしがみついたまま動かないが、下半身は大きく強くこすれている。上が固定的なのに対し、下が流動的で、女性の肉の弾力と、すべる肌触りの良さを、上下分けて味わわせる算段なのだ。

 きゅうっとくすぐったい性欲の疼きが、さらに高まっていく。外に出た瞬間から、僕たちにずっとはり付いて、下半身でこすれ回っている、目に見えない奇妙な物体の正体は、誘惑してくる女子大生たちの、なまの肌、膨らみ、大量の脚にほかならなかった。

 弟も僕の姿を一瞬見て、驚愕した様子だった。彼の目には、僕の全身に纏わり付いている女体パーツの群が見えただろうし、僕の両脚をこすれている大人の生足がたくさん見えたことだろう。

 その姿は一瞬見えただけで、すぐに消えてしまった。おそらく、ハート型の魂が、兄弟の片方に当たった瞬間の1秒間だけ、その姿を確認できる仕組みのようだ。だが、滑らかな感触と弾力だけは、見えていないにもかかわらず、ひっきりなしに続いている。

 吸いついてくるのがおっぱいなのかお尻なのか背中なのか、交代し続けているので、ころころ変わってくる。

 だが、彼女たちの肌が離れるときに、ぺりぺりっと吸いつくように、きめ細かい肌細胞が、自分の腕やお腹や背中からしっとり離れていくのが分かり、次の瞬間にはまた、別のパーツがムギュッと押しつけられてしまっている。

 見え続けていたなら、僕たちはとっくに、その誘惑に負けてしまっていただろう。僕は弟に、意識しないよう、考えないよう促すと、さらに秘密の場所まで、山道を歩いていった。

 とにもかくにも、ピンクの魂に当たったらいけない。これを避け続け、落ち着く場所に移動するしかない。

 ハートの塊は、おそらくあの秘密大学の闇勢力が用意した、霊魂的な存在なのだろうと思った。尋常ではなく、人間とは思えない存在の闇深さを感じる。

 そして、僕たちに纏わり付いている、見えざる肉体の群も、そうした色情霊の身体の一部分が寄り集まって、一斉に襲いかかっているのだろう。

 外を出た瞬間から、そうした若娘霊の群が、僕たち幼い兄弟にしがみつき、さらにハート型の魂を当ててきて、いっそう誘惑を強めてくる。

 僕たちは、彼女たちの肉質と肌触りを絶えず身に受けながら、それでもその肢体を思い描くことをせず、性的な意識を持つことなく、まして欲情の勃起など、けっして催してはならないと、心のガードを堅くしていた。

 ただもっちりした違和感が、全身を包んでいるだけだ。滑っているのも、風に吹かれているとでも思っていればいい。目に見えないだけ、僕たちは十分、精神的に抵抗することができた。

 それはひとえに、兄弟とも昨晩オナニーして果て終わり、枯渇とまでは行かなくても、いったん満足して、それ以上を求めなくて済むような肉体状況にあり、何より、僕も弟も、昨晩夢の中で見せつけられた、おぞましい男女の交わりと、敗北した男たちの悲惨な末路を見届け、水晶像と会話したからである。

 その恐怖感が先立って、女子大生たちに包まれている心地よさなど、簡単にはねつけられるようにさえ思えたのだった。

 それと、おそらく弟も、あまりに年の離れた大人の女性に対して、性的な関心や意識が高くないことも、関係していると思う。

 同世代の女子ならまだしも、かけ離れた異性という感覚が先に立ち、自分の身に起こっていることや、さっき一瞬見た乳房やお尻、素足そのものに、絶妙な良い感触は認めても、あっさり劣情を催す対象に入れていないのだ。

 そんな相手がいくら纏わり付いていても、それだけで瞬時にして誘惑に負けることはなかった。僕以上におそらく、弟がその意識を強めたのではないか。

 ピンクの魂が当たったときにドキッと感じたけれども、その効果は弟と半分ずつになり、1回だけでは、それほど劇的に変化があるものではなかった。ということは、僕と弟は一緒くた、完全に一心同体の状態に置かれているということでもある。

 弟が感じなければ僕も感じ入らず、僕が勃起しなければ弟も勃たない。どちらかが正常な精神を保ち続けていられるかぎり、その強い意志はもう1人にも伝わり、それが気をしっかり持つことに繋がっているのだろう。

 だがそれでも、僕たちの周囲には、女子大生の色情霊が、大勢纏わり付いていることも確かだ。何人もの性霊が僕たちの全身を覆い尽くし、さらに、浮遊する霊魂が僕たちの身体に入り込もうと、ふわりふわりと漂いながら近づいてくる。

 いかに大学があったといっても、若娘霊がそれほどいるとは思えない。多分、同年代の1年から4年に相当する女性霊が、外部から一瞬にして、この村に集められてしまったのだろう。

 あるいは、呪われた大学があったがゆえに、その年代の色情霊がもともと集まる村落だった(一般の人には認識されない)のか。

 いずれにしても、大学跡地に近づきさえしなければ、いかに霊魂がわんさか集まっていたとしても、触れることも目にすることもなく、完全に無害だったに違いない。僕たちは、その禁を破ってしまったのだった。

 あと少しで隠れ家だ。コンクリートで覆われた広い敷地で、屋根もなく、何かの設備の跡地で、現在は使われていない、誰も近寄らない場所であった。

 数メートルの広さがあるので、よく道具を持ち込んで、ここで遊んでいたものだ。いまは、その広さがゆえに、魂を避けやすい場所になっているはずだ。こんな細い山道よりも、はるかに簡単に逃げることが可能だ。

「ぅぐ!!」

 しまった……!

 背中にくすぐったい感触が訪れる。僕の背後に近づいていたハートが、身体に当たり、僕の体内に吸い込まれてしまったのだった。気付くことができず、当然避けきれなかった。

 ぎゅん!

「うぐ……んっ……」
「あ! お兄ちゃ……」

 僕も弟もさらに股間に手をやり、前屈みになって、くすぐったい快楽のこみ上げる感触に、必死に抵抗した。間違いなく、ピンクの塊に当たってしまえば、男性としての欲情が、強制的に高められる仕組みになっているのが分かる。

 そしてまた、1秒間だけ、僕たちに群がる女体の群を、じかに目の当たりにしてしまう。その姿はさっきと一緒で、生足のこすれる様子が自分の身にも目にもはっきり分かった。

 ずっとひっきりなしに、女の肌ややわらかな肉の弾力が、僕たちの全身を覆い尽くしているのだ。

 ぐぐっと玉袋にくすぐったい悩ましさが押し寄せた。この感覚は、ずっとオナニーを我慢していて、耐えきれなくなった欲情のサインそのものだった。

 僕も弟も、そうしたサインがあるたびに、昼間だったらなんとか抑えこもうと必死になり、夜であれば精を吐き出してしまおうと、秘密の営みを始める。

 ハートは、確実に僕たちの性欲をかき立ててくる効果があった。玉袋への精子生産が急ピッチで進められているのが分かる。生殖細胞が溜まり、本能によって、これを吐き出したい欲望に駆られていく。

 精通がマダの弟は、溜まりはしなくても、性欲のくすぐったい疼きに、股間を直撃されているようだった。

「が……がんばろう、あと……少しだから……」
「だめっ……も、もう……」
「しっかりするんだ!」

 そう元気づける僕の方も、もう限界に近づいていた。1日オナニー我慢していて、お預けを食らっているかのように、股間がウズウズと性欲にまみれる。そうして、目には見えない肌触りやムギュムギュ潰れる感触が、その欲情を常に後押しし続けてきた。

 ま、負ける、ものか・・・・!

 僕は両脚を踏ん張らせ、ムギュッと圧迫してくる女子大生たちの身体に、意識を集中させないように気をつけながら、さらに山道を上がろうと、ゆっくり一歩一歩、足を進めていった。

 だめだ……もし、真っ昼間から勃起なんてしてしまおうものなら、しかもそれをクラスの女子にでも見られたりしたら……一生の恥だ。ずっと後ろ指を指されかねない羞恥だ。

 こんな失態を犯せば、もう生きてはいけないくらいのショックになる。そのことを強く思い、精神を硬化させて抵抗した。

「あぅ・・・ダメ、だって……うっぐ……」

 弟はモジモジしながら、どうしても股間で両手を塞ぎ、くすぐったく疼く性欲の衝動に、抵抗しきれない。脚をギュッと閉じていても、物体をすり抜けて透きとおる性霊の素足は、容赦なく彼の内股を滑り回っているはずだ。僕がそうであるように。

 ぐぐっ・・・・

「ぅ~~……」

 僕の方も、もう限界だった。

 お姉ちゃんたちの脚の感触が、ぞわっとする肌触りの女らしい心地よさが、どうしても自分の脚をこすれるたびに、ゾクゾク震えてしまう。

 自分の胸板にも背中にも、お姉ちゃんたちのおっぱいやお尻や腕などのやわらかさがじっとりねっとり吸いついていて、離れるたびに、ベリベリッと引っ付いてくるような感触の良さに、だんだん神経を尖らせてしまう。

 きゅん!

「んあ!」
「ひゃあ!!」

 僕と弟に1発ずつ、さらにピンクの魂が入り込んだ!

 急激に股間のくすぐったい疼きが強まる。魂に当たるほど、性欲は高まり、何日も抜いていないのと同じくらいに、強烈な性欲ダメージを喰らってしまう。

 そこまで高められてしまえば、もはや女学生たちの肌の感触を、どうあっても意識せざるを得なくなってしまう。

 すべすべとこすれていく、発達し終わった素足の大群。それがスリュッシュリュッと僕の脚全体を滑っていて、滑らかにこすれ続ける。どうしても僕は、彼女たちのきめ細かい、みずみずしい肌の質感に、神経を尖らせるほかはなくなった。

 そうするとさらに、彼女たちの生足の心地よい感触に、いちいち両脚の肌細胞が、その神経のひとつひとつが、彼女たちの脚肌細胞を事細かに、じっくり味わえるようになってしまう。

 ああっ……女の人の脚って、こんなに心地よい肉質なんだ。やわらかくって、シコシコもっちりしていて、滑るごとにゾクゾクッといい気持ちになり続けてしまう。両脚まんべんなく、膝裏にもふくらはぎにも、彼女たちの素足の感触が、じっくり刻みつけられた。

 そして、背中にもお腹にもぐにゅっとつぶれる女性的な膨らみは、若々しくて溌剌としていて、どこまでもめり込んでしまいそうなくらいに質が良かった。

 その圧迫が、交代しながら常に押し寄せてきていて、男としての劣情をいやがおうにも掻き立てようと、執拗にしがみついてきているように感じた。

 ぐぐぐっ!

 僕も弟も、同時に、ズボンにテントを張った。色情霊たちの誘惑に負け、僕たち兄弟は、小中学生という幼い立場でありながら、高校を出たあとの完成した肉体を誇る若い女子大生たちの、凄艶なる肢体の感触に、肌色の包茎ペニスを隆起させてしまったのだった。

 ピンクの魂によって、「抜くのを長期間我慢させられた」のと同じ状態になって、そこへ異性の感触が全身に纏わり付いているのだから、どうしたってお姉ちゃんたちの肉体に、強いあこがれを抱いてしまわざるを得ない。

 しかしそこで、僕たち兄弟には、恐怖心が残されており、あの地下の部屋で行われ、次々と男たちが精を奪われて力尽きた光景を思い出していた。

 あのあと彼らは、実質的な死を迎えていた。その魂は永久に女子大生の群に囚われることになり、異界から出ることができず、彼女たちと快楽の宴に交わり続けさせられることになる。

 もう後戻りはできなくなる。何としても、自分たちがその状態に陥ることだけは、頑として避けなければならないのだ。

 きゅぅ♥

「あうっ!!」
「あうぅう!」

 急激なくすぐったさが、ペニスを包み込んできた。そして、ズボンの前にある”物体”が、半透明で浮かび上がっているのが見えた。

「なっ、なにこれ……だめぇ!」
「お、にい、ちゃ……手……てが……女の人の手が僕をっ・・・」

 弟の前には、女性の手が一本、まっすぐ股間に突き刺さるように伸びていた。肘から先だけがあり、手首から前は弟のズボンの中にあるのか、半分しか見えない。

 そして、僕の前には、おとなの女性の臀部だけが現れ、しっかりと僕の腰の前にはり付いている。太ももの一部とお尻だけが浮き出ていて、その他は見えない。

 はり付いている他のパーツと同様、透明になっている。肌が見えているのは、ペニス真ん前の一部分だけであった。

 だが、それで何が起こっているのかを、見た目でも、実感でも、十分承知できた。

 弟のペニスは、僕よりはるかに小さく、もちろん亀頭は剥けていない。だが、女学生の手が、ズボンの中で勃起したちいさなペニスを、しっとりとやわらかな手のひらで、ギュッと包んできたのだった。

 身体を通り抜け、ズボン生地も通り越す色情霊の手は、正確にペニスだけを掴み取り、もっちりした手のひらで、やわらかな圧迫を加えている。

 女子大生の手は、ペニスを掴むだけで、揉んだりしごいたりと小刻みな動きはしなかった。ただただ、勃起ペニスを愛おしむように、優しく握りしめているだけであった。

 僕の方も状況はさして変わらない。身体も生地も通り抜けた内股の肉が、じかにペニスを包み込み、ギュッと挟んで締め上げてきている!

 彼女も脚を動かさず、やわらかな弾力だけでペニスを覆い、もっちり引き締めるだけで、それ以上の動きをしてこなかった。ペニスがおとなの脚に挟まれたまま、キュンキュンと内股の感触を刻みつけられる。

 だが、2人とも、その刺激だけで強烈な性的刺激を感じまくり、兄弟揃って腰をくねらせ、悩ましい心地よさに息を荒らげる。

 それまで、上半身も下半身も、彼女たちのパーツで埋めつくされ、脚はしきりにこすれていたのではあるが、大学性霊たちの手も脚も、ペニスには指一本触れられていなかった。

 つまり彼女たちは、ペニスをいきなり刺激してムリにでも勃たせ、精を絞ろうとは考えていなかったことになる。あくまで、僕たちが欲情し、自主的に女子大生たちと交わりたいと強く意識しないかぎり、彼女たちはそれ以上に迫ってくることがなかった。

 全身に抱きつき脚をこすりつけ、さらにピンクの魂で射精欲を高めるまではしたけれども、強い意志ではじき返すとか、劣情に身をやつさない精神力があれば、魂を避けられ、肌触りにも負けず、勃起にも至りはしなかった。

 実際に彼女たちの姿は見えず、感触だけが残っているので、視覚に頼って勃起を促すことさえも、してはこなかった。

 だが、僕たちは人魂と肌質に負け、ペニスの隆起を許してしまった。そこで、女学生の霊魂は、ペニスにも遠慮なく、そのいやらしい手を差し向けることができるようになった。

 最後の試練。

 じかにペニスに襲いかかってくる女手や、太もも内股の感触を味わっても、そこで勃起を抑えつけ、萎えさせることができれば、その先は、色情霊たちも離れていくだろう。僕たちは試練に打ち勝ち、悪魔の大学の手から逃れることさえできる気がする。

 ”試練”とは、僕たちが主体的に、女子大生たちと性行為に及びたいと、強く意図してしまうかどうかにかかっているからだ。その意図を全身で強く拒絶すれば、それ以上に深追いはしてこないだろう。これまでの誘惑の仕方から、そのことが理解できる。

 今こそが、踏ん張りどころだ。

 あいつらがその気になれば、こんな回りくどいことなどせず、いきなり部屋に閉じ込めて、有無を言わさずペニスに触れて無理矢理勃起させ、そのまま精を奪い取ることもできたはず。

 それをしなかったのは、夢の中で言われたように、自分の精神力を示すよう、試練を促されているというわけだ。ここで打ち勝てば、魂も奪われず、全身纏わり付く呪いも、一気に消えてなくなると思う。

「~~~ッ」

 僕も弟も必死で、ペニスへの気持ちよい圧迫感触に抵抗しようとした。腰を強く引き、お尻の穴をきゅっと引き締めて、がんばって股間への誘惑に抗おうとした。

 このまま、女の人の手の中で、また、女の人の生足の間で、ペニスを萎えさせるだけだ。簡単なことだ。

 自分から「彼女たちとしたい」と思わなければ、握るだけ、挟むだけの攻撃で、それ以上に快感を与えてこない刺激なら、死にたくない一心であれば、なんとか雄の本能を、理性で制御可能のはず。

 だが、弟のペニスを掴んだやわらかな手のひらは、隆起したペニスを優しく包み込みながら、しっかりと女手の心地よさを、ずっと送り込み続ける。

 ややもすれば、「そのまま揉んで欲しい、しごいて欲しい」と切望してしまいかねなかった。幼い小学生の弟に、その切望を撥ねのけるだけの、強い意志の力があるだろうか。

 僕とて事情は同じだった。さんざんゾワゾワさせられた素足の感触が、今度はペニスにじかに、ぎゅっと襲いかかってきている!

 自分の脚を滑るたびにそのみずみずしい感触がもっちり吸いついてきたのに、それが一番敏感なペニスを、しかも射精しやすくなっているペニスを、直截包んでしまっている。

 そのえもいわれぬ心地よさが、ずっとペニスにじかにはり付いていて、気持ちいい刺激から逃れられない。

 溜まりに溜まって、すぐにでもイキたい玉袋へと変えられてしまっている中で、じわりと締め上げる手や脚の刺激は、極めて甘美であった。すぐにでも、そのままその刺激だけで、握りしめ、挟み込む感触だけで、ペニスを脈打たせてしまいたいとさえ思えた。

 そしてその気になれば、その女性らしい気持ちいい感触だけで、じわりじわりと高められ、そのまま脈打つまで力を抜いて、快楽に没頭することもできただろう。

 まったく不慣れな2人のペニスは、成長し終わった手にも脚にもまるで敵わない。刺激に弱く、僕の方は、いつでも射精できるほど、溢れる体液を抱えているし、弟に精液は作れなくても、彼は彼で、僕以上に快感に敏感だった。

 女体にもまったく耐性はない。オナニーのオカズといえば、同年代の女子の露出された足や顔を見ながら程度であり、彼女たちに触ってもらうとか、まして彼女たちと本番行為を行って射精するというシチュすら、まるで想像を絶するものだった。

 その程度のネタだけで、ごく短時間で、ペニスを脈打たせることができたし、毎晩そうしてきた。女子の数が多いので、その誰を選んでも差し支えなく、想像する相手には事欠かなかった。

 それが、いまやずっと年上の、はるかに熟したレディたちが、全身に発達しきった肉体を押しつけこすりつけつつ、なまでペニスを掴んだり、素足の間、内股で挟み込んだりしてきている。

 刺激も強すぎるし、その手も内股(お尻まで)も見えるようになってしまっていて、どうしても僕たちはそれを凝視し、全身に感じる肌とムニムニ肉厚を感じながら、ペニスをギンギンにさせて、留まるところを知らなかった。

 じっくりゆっくり……心地よい刺激がやわらかにペニスからお尻の奥、そして全身へと拡がっていく。そしてその性感神経がまた、ペニスへと逆流してきて、きゅうんとくすぐったい快楽になって、股間をさらに勢いづけてくる。

 この状態で意志の力だけで、ペニスを萎えさせることは不可能に思えてきた。

 それどころか、さらにこのまま、精を吐き出したい、イッてしまいたいという心の内の声が、どんどん強まっていくのを感じる。ずっとオナ禁させられた挙句のこの刺激なら、心が動いてしまっても不思議ではなかった。

 そしてそれこそが、女子大生たちの軍門に降るに任せた心持ちであることも、十分理解していた。それなのに、股間がどうしても言うことを聞いてくれないのだった。

 僕も弟も、ぐねぐねと腰を前後させ、手の筒で、そして内股で、ペニスをしごいて強い快感を引き出そうとしてしまった。ほぼ本能的な動きである。

 だが、女の手も脚も、僕たちの腰の動きに合わせて前後するばかりであり、決してしごく動きには至らなかった、ただひたすら、やわらかな感触を刻みつけてくるばかりだった。

 僕たちが心の底から、学生お姉ちゃんたちの身体でイキたいと懇願しなければ、それ以上の刺激には持ち込めないようだった。最後の精神が試されている。だが、その試練は、僕も弟も、まず乗り越えられない誘惑なのであった。

「んああ……びくんびくん……したいよぅ!」

 音を上げたのは弟の方だった。だが、僕もあと数秒で、同じ懇願をしてしまったかも知れない。ごく僅かに、弟の手前だからという意識が働き、くすぐったすぎる性欲の疼きに、ほんの数秒、我慢が長引いたに過ぎなかった。

「!!!」
「ああっ!!」

 次の瞬間、僕たちは別の場所にワープさせられていた。見覚えがある。夢で見た地下の一室だった。移転した瞬間、服は何も身につけていなかった。

 しまった……なんてことだ……僕たちは……負けてしまったのか!?

 だが、もう勝ち負けなど、どうでもよかった。

 ただもうもぅ、精子を吐き出したくてたまらなかった。自分から女子大生のお姉ちゃんたちに触り、その脚でイキたい衝動だけに支配されてしまっていた。我慢の限界だったんだ。

 心が支配された僕たちに待っていたのは、女子霊たちの苛烈な搾精の宴であった。

 夢で見たよりも広い部屋だ。といっても3,4メートル四方の無機質な部屋であることには変わりがなく、人数からしても手狭である圧迫感は同じだった。性感の誘惑に負けてしまったので、夢で見た地下室に、僕たちは閉じ込められてしまったのだろうか。

 彼女たちでイキたいと心から願ってしまったがゆえに、望みどおり、あの淫靡すぎる部屋へと送り込まれ、誘惑されたままに、性的衝動の限りを尽くすべく、禁断の密室へといざなわれたということか。

「くすくす、やっと会えたね・・・」
「あうぅ……」
「こっちも、もうイキそうだよねー。いいよ? お姉ちゃんが、シてあげるね?」

 僕と弟は同じ部屋にいた。そしてそこに、6人の女子大生が、裸で群がってきていた。

「男の子が2人いるから、部屋の広さも人数も倍になってるんだ。でも、いい気持ちなのは一緒だよ?」
「ふゎああ……」

 うつ伏せになっている僕の真下から、女子大生がしがみついている。僕は彼女の真上で、お互いの脚をスリュスリュとこすりあっていた。

 この感触こそ、女子大生の生足、さっきまでずっと自分の両脚を滑っていた、お姉ちゃんの女脚そのものだった。やっと会えた、というのは、透明で見えなかったお姉ちゃんの姿を、僕たちがやっと見られたという意味だった。

「うぐっ! あうぅ、も、もうっ……」
「またイッちゃうんですかー? いいですよー、3回目だけどねー」

 隣から声が聞こえてくる。どうやら隣の部屋で、別の男が、女学生と結合して、連続してイかされているようだった。

 この部屋の天井が高いということは、隣の部屋の天井は低く、何人いるかは知らないけれども、狭い上下だから男は、女子大生と密着して抱き合っているのだろう。そのギュムギュム強く吸いついている心地よさが、彼を限界に追い詰めているようだった。

 さらに反対側の部屋からも、男女の声が漏れ聞こえてくる。オラいけ、さっさと、などと、野太い男の声が聞こえ、それに呼応した若い女子のあえぎ声も響いてきた。

「この部屋は32-Bだよ。」
「!」

 真上にのしかかり、僕の背中に乳房を滑らせているお姉ちゃんが囁くように教えてくれた。さらに玉袋が、もう1人の女学生にスリスリと撫でられている。

「ホントはね、11-Aからスタートして、どんどん次の部屋に進んでいって、最後の水晶像までたどり着くチャレンジだったんだけど、今は変わっててね。」
「そうそう、だんだん相手が強くなっていくという設定なんだけどねー」
「あはっ、それじゃあ、4年生のところなんて誰もたどり着けないじゃん。」
「そゆこと。退屈だから、ランダムに部屋移動できる仕様に変わったの。その代わり、全部の部屋を制覇しないと水晶にたどり着けないようになってるけどね。」
「弱い娘、強い娘とランダムに出てくるんだけど、みぃんな、20歳前後の私たちのカラダには堪えきれなくって、何度か精を吐き出して力尽きる。」
「だから君たち、いきなり3年生相手でがんばってもらうことになってるんだよ~。」
「ふひひ……むりむり! だって、この子たち、もう限界だもん!」

 お姉ちゃんたちの言うとおりだった。

 男たちにとって計算外だったのは、性の成績順で相手をしていって、だんだん年長になっていくとか、進むほど相手が強くなるのではなく、ランダムに女学生たちの群を相手にしなくてはいけないところだった。

 だが、五十歩百歩ではないにしても、若い女学生が何百人も連続して襲いかかってくる中で、男という男が、年齢を問わず、全員をイかせ倒すことなどできるはずもなく、そのまえに精根尽きるまで絞られまくり、魂ごと吸い尽くされてしまうのだった。

 1回の射精で敗北ではなく、何回でも出すことはできるものの、出し過ぎれば体力も尽き、魂の根っこから、快感を出し切って力尽きてしまう。そのあとは、魔界に送られ、永久に出られない。

 僕たちは戦慄した。このまま、快感は続くけれども、戻ることができなくなったと思った。それでも、下のお姉ちゃんの脚で出してしまいたい衝動からは、逃れられないままだった。

「キミたちは特別みたいだね。まだチャンスが残ってるみたいだしぃ。」
「そうね。本気で”ずっとこの迷宮に居続けたい”って思わないかぎり、脱出できるみたい。」
「よかったね~♥ でも、逃がさない、よ?」

 すりっ……すりゅうっ……

「あっふ・・・」

 ペニスはお姉ちゃんの下腹部に擦りつけられている。僕が自分から動いているのと、上から別の学生が蠢いて、僕の腰を突き動かしていることから、リズミカルにペニスが下の女性の肌にこすれてしまっていた。

 そして僕は、必死で女子大生の悩ましい太ももに夢中になり、上下で全身を包み込まれながら、彼女たちの脚の感触を、自分でこすりつけながら愉しんだ。完全に夢中だった。

「あぐ!」
「うゎあ!」

 兄弟が同時に声を上げた。

 精液は、お姉ちゃんの脚の上から腰部分にかけて、大量に吐き出され続けている。その数秒間、これまでのオナニーではまったく味わったことのない、この上ない多幸感に埋めつくされてしまった。

 僕は内股でお姉ちゃんの生足を挟み込み、ペニスと一緒に必死でこすり、女の脚の感触に我を忘れていた。

 そこへ、上下からのペニスこすりつけ攻撃で、すぐにでも出したがっていた股間は爆発、急激に高められた僕は、本能の赴くままに、濃く粘ついた体液を、女性の脚の上で吐き出してしまったのだった。

 弟の方は、しゃがんだお姉さんの片手で小さなペニスをしごかれる。彼の後ろで尻餅をつき、脚を投げ出した別のお姉さんに抱きつかれた状態で、彼も限界を迎えた。

 彼女の手の感触としごく動きに堪えきれず、やわらかな筒の中で、強烈な快楽とともに絶頂を迎えた。

「キミは精通もまだなんだね。でも容赦できないからね?」

 淡々と手を動かしていた女子大生は、ヒクンヒクンとイッているペニスを、さらにしつこくしごき続けた。

 亀頭先端の皮をつまんで揉むだけのオナニーしか知らないような、あまりに稚いペニスは、おとなの女手という強すぎる武器で、剥き出しのしごきにコシュコシュされて、すぐさま絶頂に追いやられてしまったのだった。

 だが、弟の肉体からは精液が出てこない。そこまで熟していないのだ。

 僕の方への攻撃も、まだまだ終わらない。

 出し切ったはずのペニスではあるが、まだイクことはできた。性欲もまだ多少なりとも残っている。

 通常、オナニーも1回終われば、それで眠りにつくので、それ以上に刺激を続けることはあまり考えてこなかった。1回出せば十分満足できたし、次の日にすれば済むことだった。溜まりきってから出すのが普通だと思っていた。

 しかし、今は事情が違っていた。なまの女子大生の裸体に包まれ、欲望は収まりがつかなくなっている。出せるのであれば、まだ彼女たちで出してしまいたい。オスとしての、そうした劣情の方が先に立っていた。

 吐き出したはずの精は蒸発したかのように消え失せ、下の女性はきれいな肢体を保ったままになっている。その肌触りはどこまでも心地よく、まだまだ脚同士をこすり遭わせ続けたい衝動に駆られ続けた。

 それで僕は必死で両脚をスリスリ動かし、上と下のお姉さんの生足を、大きくこすりあい続けた。彼女たちもそれに呼応して、しきりに脚を動かしては、僕の両脚全体を丹念に擦り、素足の滑らかな感触を、これでもかと教え込んでくる。

 まだ生殖細胞の残っている玉袋を、3人目の女性が執拗にくすぐり、撫でさすって、内部をかき回しては早く出させようと蠢いていた。その指先も手の甲も、どこまでもスベスベ吸いつくような、細くきれいな質感だった。

 僕は半立ちしたままのペニスで、女学生たちの脚の感触に酔いしれ、時にはその脚の内股に挟み込んでもらって、もう一度、ペニスから射精してしまいたいと躍起になった。彼女たちもその要望に即座に応えてくれている。どんどん高められていった。

 おとなのはずなのに、首から下の毛が一本もなく、その美しい裸体はツルツルで、光を反射してさえいた。

 風呂上がりのきめ細かな肌質をそのまま具えていた。オンナ表面でペニスをこすり、さらに太ももの上にペニスを滑らせて、お姉ちゃんたちの肉体で射精感を強めていく。

「ね。しってる? この地下の部屋、ほとんど使用されてるんだよ。」
「女子霊は何百人とひしめいてるよ。男の方も満室状態で、子供から大人まで、いろんな事情と年齢の男がいるかな~?」
「1部屋あたり、1~3人の大学生がいるんだ。それだけ、大人数の女の子が集められてるからね。」
「ああっ・・・」

 僕は話半分で、女体に夢中になっている。上半身、顔に押しつけられる大人の乳房が、どこまでもめり込んでやわらかだ。吸いつく腹部も、撫でさする腕や手も、どこまでも感触が良い。

 それが上から下から、3人がかりで押し寄せてきて、一気に精液を奪いにかかっている。1回出したはずなのに、またもや僕は精液を吐き出しそうになっていた。

「キミたちは気楽だよね~。まだ外に出られるチャンスがあるんだから。」
「他の部屋の男たちはそうはいかない。君たち兄弟くらいの子から、60代後半まで、ふとしたはずみで迷い込んだが最後、ここに集まっている全員の女子大生をイかせないと出られないんだから。」
「誰も私たちには耐えきれない。全員、出口に出ることができないで、何回も精を吐き出しても、それでも女の子たちの人数に圧倒され続け、延々と続くセックスの宴に敵わず、さいごは・・・ふふふ」

 女学生たちの動きが変わった。下の女子が脚を開くと、上と背後の女性が僕の腰とペニスを動かし、亀頭先端をオンナ表面にあてがってくる。そして上の女性が、グイッと腰を落として、ペニスをどんどん押し出そうと、下腹部を執拗に沈め始めた。

「ぅあぁ! それっ、それだめだってえ!!」

 弟の状態も悲惨だった。律動が終わった包茎ペニスに、別の女子大生が喰らいついていた。

 すっくと立ち上がった背後の女学生は、軽い少年の全身を持ち上げてしまう。もう1人も彼の体を支え、弟は完全に宙に浮いた状態で、腰だけを突き出した格好で抱き上げられてしまっていた。

 そして、強調された小さなペニスを口に含み、何人もの精を奪ったやわらかな舌で、少年の先端の皮にねじ込み、内部を押し拡げるようにして、ぐにぐに舐め尽くしている。それでいて、小刻みに首を上下させ、猛スピードで、ペニスを唇でしごき立てる!

 ふににぃっとした女の口が、ぷるぷるとふるえながらペニスを絞りたて、ちゅっく、ちゅっくと音を立てて、根元から先端までをやわらかに刺激する。同時に先っぽ部分を、素早く動く舌先でこれでもかとねぶり回し続けた。

 くすぐったさを遥かに超えたばかりでなく、自分で揉むよりも何倍も強いフェラチオ刺激に、弟は生まれて初めて味わう快楽に戸惑い、しかし持ち上げられているので何ら抵抗できず、開脚で浮かんだ状態のまま、ただ快感だけで股間を埋めつくされてしまっていた。

 お尻の奥までゾクゾクッとしてしまう性感刺激をどうすることもできず、それでもなお、お姉さんはしつこく容赦なく、10歳になったばかりのペニスを、芯までしゃぶりつくす気だ。

 そして……僕の方にもピンチが迫っていた。

 ぐぐっと腰を落とされると、どうしてもペニスは前下方向へと押し出されてしまう。そこに待っていたのは・・・さっき生足で射精してしまったお姉ちゃんの、禁断の性器であった。

 ぐにゅう!

 後ろの女性がペニスを掴んで誘導したおかげで、ペニスは簡単に、お姉ちゃんのオンナに根元まで入ってしまった!

 次の瞬間、強烈な締まりとヒダが、ペニス全体、とりわけ先端の敏感な部分に、一気呵成に押し寄せてくる!

 ぬるんと吸い上げられるように奥まで吸引されるような、どこまでも引っ張られるようでいて、潰れてしまうのではないかと思えるくらいに強い圧迫なのに、どこまでもやわらかでいい気持ちにさせる感触だった。

 女性の熱の籠もったオンナの締まりが、急激にペニスすべてを覆い尽くす。

「あひいい!」
「いゃああ!」

 びゅくん! びくびくん!

 ひくくっ……ひくんひくん!

 僕も弟も、同時に絶頂した。大量の精液は、お姉ちゃんのオンナの中でほとばしりながら、ごぼぼっとオンナ表面から溢れかえってしまう。

 僕は彼女の中に入れた瞬間に、あまりにも異質な性感刺激に、何も考えることができず、そのまま放出してしまったのだった。まさに、挿入した時点での瞬殺であった。

 はじめての・・・ホンバン。それが、こんなに気持ちよかったとは、2年生ではまるで知らないのが当たり前だった。しかしその感動も味わえないまま、わけが分からず精が暴発したという形容の方が近い。そのくらいにペニスが弱すぎるんだ。

 こんな……これほど具合がいい膣内なのに、何百人も、男たちは相手にし続け、イかせ倒さなければならないのか。彼らはすでに、何回かはイッている身でありながら、これほど締まる若い膣に、連続して攻撃し続け、耐え続けているというのか。

 僕には……とてもムリな話に思えた。

 弟も一緒だった。フェラチオの新鮮すぎる快感刺激をどうすることもできず、ごくごく短時間で、急激に二回目の絶頂まで、あっという間に持ち込まれてしまったのだった。

 お姉さんの口の中でビクビクと脈動するペニスは、それでも体液が出ず、ただ絶頂の律動だけが続く有様だった。

 ぐったり。

 さすがに2回連続だったので、僕も弟も、完全に脱力した。弟は降ろされ、僕はサンドイッチの体勢から解放された。もう・・・出せる気がしない。

「甘いよ? 他の男たちは、子供も含めて、まだまだツヅキがあって、ずっとずっと、えっちなことをし続けなくちゃいけないんだから」
「出せないところを何回も出し続けて、快感に染まったとき、その男の子の人生も終わる。」
「大丈夫、あの人たちに待っているのは、永久のセックス天国だからね。」
「ね。君たちも、試練なんかやめて、ずっとここにいようよぅ?」

 だめ・・・

 それだけは……なんとしても……

 そう思ったところで、周囲の景色が白く濁っていった。2回で解放されたのは、この地下世界では相当に幸運なことらしい。

「はあっ……はあっ……」

 僕たちは山道に尻餅をついたまま、完全に脱力し、後ろに手をついて息を切らしていた。

 地下では全裸になっていたが、元に戻ると、服を着ている。ワープさせられた瞬間、自動的に裸になってしまうらしい。

 軽い痛みがお尻の奥に走る。目の前がぼんやりし、半分以上、思考が奪われていた。弟も同じだった。これは、身体に過剰な負担がかかっていることを意味している。疲れ切っていた。出すだけ出し切り、イクはずもない状態までイかされてきたツケだった。

 それでも、乳房やお尻、腕や生足の感触は、ずっと透明のまま、僕たちの全身に纏わり付いている。こすれる感触も変わらなかった。

 しかしもう、僕たちはそれを、なんとも思わなくなっていた。むしろ、気持ちが悪い、もう嫌だとさえ思えた。出すだけ出しきってしまっているので、それ以上に女子大生の肌が押しつけられこすりつけられても、いっさい欲情には結びつかなかった。

 僕たちはゆっくりと起き上がる。頭がフラフラする。性欲はゼロになっているので、肌触りを感じ続けても、かえってストレスになるだけだった。

 これなら……いけるかも……

 会話で言っていた。僕たちが本気で、あの迷宮に永遠にいたいと思いさえしなければ、この呪いから脱出できると。他の囚われた男子たちとは違う試練なのだと。

 僕と弟は顔を見合わせ、大きくうなずいた。考えることは同じようだった。

 しっかりとした足取りを取り戻し、僕たちは秘密基地までたどり着いた。ピンクの魂はいくつか浮遊していたが、何回か避けていれば、自然消滅した。

 フワフワ浮かぶピンクのハートは、シャボン玉のようにゆっくりと漂いながら近づくだけなので、狭い道などの不利な条件で不用意な状態にならなければ、余裕で避けることができた。

 あくまで、自分からぶつかってしまうのでなければ、つまり強い意志で避けようとすれば、いくらでも回避可能な魂なのだった。

 誰もいない。肌の質感は残っているが、今日はもう、出したくない。そう思ったら、女のパーツなんて苦痛でしかなかった。さしあたって周囲に魂もなく、僕たちはひととき、ホッと一息つけたのだった。

 ほんとうなら……きっと、出すだけ出し尽くした女性に対して、これほどの嫌悪感をいだくことはないはずなんだ。

 好きな女性と快感を共有して、満足したのであれば、強い安心感、温かい愛情、感謝、安堵できる信頼感でいっぱいになり、なんならそのまま、まどろんで幸せな気分を味わえていたのだろう。

 だが、今は違う。好きでもない相手の、対象外の女体で、おとなの魅力にほだされ、本能的反射的に行動してしまった結果に過ぎない。残るのは後悔だけだった。

 それ以上に執拗にしがみつかれても、嫌悪感しか出てこない。終わったあとの男の反応は、女性によってこんなにも違うものだ。

 僕たちはコンクリートの床に尻餅をつき、脚を投げ出した。固い壁にもたれかかる。

 それでもなお、全身に纏わり付く不快な女体感触は健在で、硬いものに腰を下ろしているのに、どこまでもふにふにやわらかく全身が包まれているし、生足のこすれる感触が、僕たちの両脚にずっと残り続けた。

 出し尽くしてしまった僕たちには、その感触だけでもはや、再勃起することなどないように思えた。ハートも避けられたし、しばらくは休息できるだろう。

 僕たちはほとんど会話しなかった。言うべき言葉も見つかりはしない。ただ単に、恥じた。さっきのいやらしい痴態と快楽に、あっさり敗北してしまった自己を恥ずかしく思った。

 彼女たちの肢体に没頭し、何もかもを忘れて、ペニスの快感だけに全意識を集中させてしまったことは、この上もない失態であるように思えてならなかった。

「……。」

 しばらく考えを巡らせる。自分の全身に纏わり付いている感触は、確実に若い女子たちの心地よい肌触りであり、胸の弾力であり、太もものスベスベしたみずみずしさにほかならない。

 だが、僕も弟も、いまや、精根尽き果ててしまっていて、全身に女体の感触がムギュッとはり付いているという一点だけで、異性に劣情を催すうことなど、万が一にもありはしなかった。

 このことは、異性の肌にじかに触れているというだけで、かんたんに男がペニスを隆起させることはない、ということでもある。視覚や聴覚などのいくつかの情報が組み合わさり、そこに何らかの”意味”を見いだして、その意味に対してオスとしての本能を働かせるということだ。

 そして、その意味を見いだすためには、生殖機能として、精子細胞を吐き出すという、生物機構に関わる肉体的な能力が、絶対的な条件となる。

 見ず知らずの若娘たちに対して、やみくもに精を吐き出すだけの単純な道具ではあり得ない。今の僕たちには、出すだけ出してしまった後であるから、こうした条件が整わないままである。

 条件が整わず、さらに、理性によって、性的快楽への欲望という意味を見いださず、これを上手にコントロールしさえすれば、目の前に全裸の女子大生が現れたところで、あっさりはねつけることだってできるはずだ。

 僕たちは先ほど、そこから敗北してしまっていたのだった。

 だとすると、対応策は、思った以上に単純ではないだろうか。

 生理的な機能として、枯渇した状態を維持するなり、生理的衝動を出さないような身体に持ってくれば、これを維持できるのであれば、条件は整わない。すでに何度も射精してしまっているので、回復するにはずいぶん時間がかかるだろう。

 弟も同様のはずだ。それなら、いくら女体の感触が押し寄せ続けたところで、生殖細胞を生産できない、間に合わない以上、なんら感ずるところなど現れ出る余地がないことになる。

 そして回復したあとは、落ち着いて魂を避け、全身にはり付いている感触を意に介さずに、他のことに意識を集中していれば、感触そのものを無視し、何も意味を見いださず、興奮せず、絶対に勃起しないという、強い意志を示せばいい。

 それができるようになれば、呪いの方から消えてなくなる。僕たちは女子大生たちの誘惑を克服できるんだ。

 あとは、どうやって女体慣れをし、バトルに持ち込まれたときに、快感に打ち勝つかだけど……。正直、そっちはほとんど期待できないのが現実だ。

 あの地下部屋にワープさせられた時点で、すでにこちらは相当に欲情させられてしまっており、精液を吐き出したい欲求で満ちあふれてしまっている。そこへ若くハリのある肉体を誇る大学女子たちが1~3人で押し寄せてきて、一気に何度でも精を奪いにかかるのである。

 切り抜けるには、射精量を抑え、あるいはゼロにしながら、なおかつ美少女たちを次から次へと絶頂させ続けなければならない。攻撃するにせよ、彼女たちをどうやって感じさせイかせていけばいいか、皆目見当もつかない。

 そのくらい、僕も弟も、あまりに未熟すぎた。どう考えても、勝ち目などあるはずがなかった。いったん引き込まれたが最後、精根尽き果てるまで、こちらの精が奪われ続けるのは、火を見るより明らかだ。

 乗り越えるためにはどうしても、この現実世界で、非現実的な纏わり付く肌の感触を撥ねのけ、ピンクの性霊魂を避け続けて、お姉ちゃんたちで出してしまいたい欲動を抑え込むほかに手立てがない。

 幸い、一度解放された僕たちには、その手立てがあった。そしてハートをすべて排除し、逃げ切ることができて、全身への女体の弾力があっても、おいそれとはペニスを反応させないだけ、僕たちはすでにイキ終わっていたのだった。

 現実でそれだけのことが可能なら、そのまま大学霊どもの策略どおり、非現実世界に追い込まれることはないだろう。そのまま逃げ切れれば、呪いの類だって、きっと解けてなくなるんだ。あと少しだけ、がんばりきればいい。僕も弟も、そこまでは重々承知していた。

 ……。

 どっと疲れが湧いて出る。逃げ回り走り回ったせいもあるが、やはり先刻ずいぶん快楽まみれになり、もう出ないくらいに絞り尽くされた後だったことが災いしている。

 急激に強まる眠気。目を閉じればドライアイのようにショボショボして、目頭に熱がこもっているのも分かる。頭が揺れる。視野が狭くなり、ぐったりと体が重たくなった。

 脚一本動かすのさえ、やっともっさりゆっくり移動でき、急に立ち上がるなど、まるでできない。ふらつきが、さらにいっそう強くなっていく。

 ああ……昨晩の夢があまりにもリアルすぎて、ほとんど睡眠らしい睡眠になっていなかったのも、あるのかもしれない。

 そんなことを思いながら、僕は肩に、ふわりと髪が垂れるのを感じた。弟がもたれかかってきて、寝息を立て始めたのだった。僕の方も限界だった。意識が遠のいていく。

 あ、あれ……これって……。急激に心臓が高鳴る。眠っては、いけない、パターン、なの、では・・・・・・?

 魂の奥底が、急激に警鐘を鳴らしているように感じる。だが、頭からいきなり血流が消えてしまったみたいに、僕たちは急すぎる眠気には逆らえず、指一本動かすこともままならないまま、全身の重たい倦怠感に身を任せ、深い深い眠りの世界に堕ちていく。

 いけな、い・・・夢は……非現実世界だ!

 気付いたときにはすでに遅かった。僕は弟にしなだれかかるように、完全に眠りの世界に入ってしまう。



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