パラレルワールド・性霊の棲家編

 

 「パラレルワールド」というものを御存知だろうか。

 実際のこの世界と同時に、同次元で、同じ座標軸上に、まったく別の世界が、それも無数に存在する、という仮説である。われわれの世界の”裏側”、しかも無限に存在する裏側があって、そこでは、この世界とはまったく違う現実が進行しているというのである。われわれの宇宙は、単にそれら無限の裏側のうちのひとつであって、ひとつの可能性の結実にすぎない。

 もし、この現実の裏側のうちのひとつに自由に行き来できるとすれば、そこにはきっと、今よりもずっと成功した自分がいるであろうし、また逆に今よりもずっと悲惨な自分が暮らす世界もあるだろう。あるいは、自分がいない世界も無数にあることだろう。宇宙の構造そのものがまったく正反対の世界もあるだろう。

 時間が進行すれば、パラレルワールドとして考えられる世界も無限に増殖するに違いない。財布を落とした日があれば、その日財布を落とさなかった世界も出現する。もしタイムマシンができるのなら、目的の過去を起点とした・分岐するパラレルワールドのうちのひとつに旅立つことができるだろう。


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 さて。

 これからあなたを御案内するのは、魔界を基点とした、分岐するパラレルワールドの数々である。時間を越え、空間を越え、宇宙さえも超越し、すべての異世界を超絶することの可能な、あらゆる”可能性”を一堂に会した鏡の装置。あなたはいま、その鏡の前に立っている…

 さあ、今宵御案内するのは、どの”可能性”であろう。鏡のひとつが光る………。そこに見えてきた光が、すでに過ぎ去った物語の”別の姿”である。


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●性霊の棲家

『もし、主人公が性霊バスターズに出会わなかったら…』


 主人公は、家で、学校で、大勢の女の幽霊に取りつかれ、あちこちで性の饗宴に駆り出されていた。そこへ、性霊を専門に退治する集団、性霊バスターズが接触し、主人公を救うのだった。これが、われわれが”本来の世界”と考えているひとつの結果である。しかし、もし、ここで性霊バスターズが重大なミスをし、学園の性霊を見過ごしていたとしたら…。

 さあ、魔界の鏡が開いた。今宵、パラレルワールドの扉が開かれる…

 舞台は、大学のトイレ。「性霊の棲家6」で、授業中に性霊女学生たちに抜かれ、トイレに逃げ込むシーンから始まる。


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 トイレに入った。トイレに入るなり内側からドアの鍵を閉めた。男子学生が少ないから許されるだろう。これで誰も入ってこれまい。ゆっくり用が足せるというものだ。

 が、その思惑は甘かった。というよりちゃんと確認していない僕のツメが甘かった。

 「待ってたのよ。」鍵を閉める僕の後ろから声がした。振り返ると個室から次々と女子学生が出てくる。しまった、待ち伏せされていた? とっさにトイレを出ようとしたが、今しがた自分で鍵を閉めてしまったので抜け出す前に女の子たちに捕まってしまった。

 「やめろ!」僕は抵抗した。が、次の瞬間なにやらスプレーのようなものを顔に吹き付けられた。催涙ガスか? 一瞬怯んでしまう。だが催涙ガスではなかった。この香りは覚えがある。そうだ、以前もさっきの授業中でも教室に漂っていたあの香りだ。

 「ふふ。どう? 催淫ガスの効果は。さっきはあたしたちの体についていたのを間接的に嗅ぐだけだったから、大したことないけど、今度は直接浴びちゃったからねえ。すぐにやりたくなる筈よ。」「催淫…ガス…だとぉ?」「そう。男が浴びると、やりたくてたまらなくなるガスだよ。ほらほら、もうあなたの半ズボンちゃんはもっこりのビッショリじゃない。」

 言われるとおり僕のペニスは情けなくも完全に勃起していた。我慢汁も一杯出ていて、あと少しでも刺激されたら射精してしまいそうだった。僕は思わず自分の股間に手を伸ばした。そしてズボン越しに自分で股間をさすり始めた。

 「あ…が…はうっ!」あっという間に女の子たちの見ている前でイッてしまった。恥ずかしさに顔が真っ赤になったが、ペニスは衰えを見せない。かすかに空気の漏れる音…、いや、催淫ガスが漏れている音だ。女子の一人がボンベに小さな穴を開け、少しずつガスが漏れるようにしているのだった。どんどんトイレはエッチな匂いで一杯になっていく。

 「いいの? 自分でやっちゃって。そんなに早撃ちしてると後が持たないわよ。」「じゃあ、まず誰とやりたい? 好きな子としていいよ。」僕はまわりを見回した。女の子は7人いる。それぞれいろんな外見をしているが、みんなかわいい。「どんな子が好み? ロング? ショートカット? 巨乳? 細め?」

 たしかに「何でも揃ってる」という感じだった。僕は7人の中で一番背の低い、小柄な子に向かって行った。性欲が自分ではもう止められなかった。

 「やった☆ 最初はあたしね。」かわいい声をしている小柄な彼女は、150センチもなく、茶色い髪の毛を両側でゴム止めをしていた。大きな目、小さい鼻、かわいらしいえくぼ。整った顔立ちをしていた。

 のろのろと彼女に近づいて行く。ついに彼女に抱きついた。やりたい。性欲をとにかく満たしたい。もう止められない! 彼女にキスをし、ほおずりをした。ガスのせいで性感も極度に高まっていた。彼女に触れているだけで僕は感じまくっている。あっという間にまた我慢汁が噴き出してきた。

 「もうズボン脱いじゃえ。」後ろと両側から女の子が寄ってきて僕の服を剥ぎ取り始めた。もう僕はされるがままになっていた。その間に目の前の小柄な子も服を脱いでいた。体は細く胸はほとんどないが、キメの細かい綺麗な肌をしている。

 僕達は裸で抱き合った。僕のペニスが彼女のおなかにこすれる。「うああ…。」それだけの刺激で、また射精してしまった。

 「やん♪ まだ何もしてないよぉ。」そう言うと彼女は、僕の肩に手を回し、よいしょ、と飛び乗ってきた。後ろから誰かが僕の背中を支えた。細くて軽い体を、僕が立ったまま抱きかかえる格好になった。

 「きゃうん!」一番小柄な子が僕のペニスを受け入れた。彼女の後ろで二人の女が彼女を支え、持ち上げ、僕に縦にしがみつくようにして乗ってきたのだった。もちろん小柄とはいえ一人の女が全体重をかけてくるのだから重い。人としては軽い方、恐らく40数キロ程度だろうけど、それでも僕一人で支えきれるものではない。それで後ろの女二人が彼女を支えて重さをカバーし、同時に僕の後ろに回りこんだ一番大きな女が僕をバックアップして、立ったままセックスができるようになっていた。

 一番小さな彼女は、その背の低さとは裏腹に大人っぽい顔立ちをしていた。彼女は僕に抱きつき、両足を僕の脇の下を通って投げ出す。彼女の両腕は僕の首を包み込んでいる。おっぱいも腹も僕に密着させている。そのスベスベした痩せた頬が僕の頬をスリスリとこする。そして何よりも、彼女のオンナがむっちりと僕を捕らえて離さない!

 僕の後ろに投げ出された彼女のふくらはぎは、僕の後ろにいる大女の両腕に抱きかかえられている。そして大女の体が僕の背中を包み込んでいる。小柄な女の後ろにいる二人が、それぞれ彼女のお尻とふとももを持ち上げている。

 そんな体勢で僕は数秒と持たなかった。催淫剤のせいで僕は簡単に感じまくってしまう。そのまま無言で彼女のオンナに精液を放出してしまった。さらに部屋に充満する薬が、僕と女たちを高め、性欲の尽きるところを知らない。

 「まだまだ離さないわよ。このまま動いてあげる。」そう言うと彼女は上下に動くべく体を動かし始めた。その動きに合わせて後ろの女二人が彼女を持ち上げたりする。上下する度に僕のペニスは敏感に反応した。背中に押しつけられる後ろの女のおっぱいの感触も、小女のおっぱいや腕、頬の感触も、僕をどんどん高めてゆく。

 「ああ、また出ちゃう…」僕はほとんど我慢できずに、また彼女のオンナに出してしまった。でも女たちの動きは止まらない。グチッグチッ…、ヌチュッグチョッ…、チュッ……

 何度か連続射精して僕も疲れてきたせいか、だんだん持久力が出てきた。今度はなかなかイかず、その分彼女を感じさせることができた。

 「あ! イイ! 気持ちいい! ダメ、イッちゃうよぅ!」小さな女の子との駅弁ファックの動きが早くなっていくにしたがって、女体の動きも早くなってゆく。彼女の精力も限界に達していた。ついに、ブルブルっっと震えて背の低い女の子は絶頂を迎えた。

 「やった〜〜!!」「気持ちよかった?」「うん、すごくよかった…。」「じゃ、次はあたしの番ね」「えーずるーい! 次私がいい!」「アンタは最後ね。」「そんなー!」僕のことなどお構いなしに女の子たちの会話が弾んで行く…。僕は何か理不尽さを感じた。しかしそれでも、やっと一人イかせたに過ぎない。順番を待つ美少女たちの大胆な行動はいっさい変わらなかった。彼女たちに促されて僕はそのまま座り込んでしまった。

 「今だ! 押し倒しちゃえ!」誰かが合図すると、女たちは一斉に僕を押し倒した! もうトイレの床が汚いとか何とかいう思いはなくなってしまった。抵抗できずに、なすがままにされる僕。

 「じゃ、みんなで彼を天国に送ってあげましょう。私たちの舌で…。」「さんせーい!」「フェラフェラ〜!」「トリプルフェラって聞いたことあるけど、今はどんなフェラになるのかな〜?」

 女たちは一斉に僕に群がり、僕のペニスを舐め始めた。顔と顔をくっつけあい、全方向から僕のペニスを舐めしゃぶる! …といっても、360度から舐めようとしても、せいぜい5人で舐めるのが限度だった。一人あたり72度分のスペースで、舌を伸ばし、ペニスを上から下までチロチロッと刺激する。亀頭の先を6人目が指先で撫でる。他の二人は僕の乳首を指先でカリカリと刺激し、一人が僕の顔に跨ってきた! 残りは傍観しながら「出しちゃえ出しちゃえ」などと歓声を浴びせる。舐めている女のうちの誰かが僕の玉袋を揉みしだいている! 今までにない強烈な攻撃だ。

 「むぐっ…うぐぐぅ…!」声なき声を出しながら、僕はどんどん高められてゆく! そして僕の精液が誰かの指先と5人の髪の毛を濡らした。でも女たちのフェラ責めは終わらなかった。交代しながら、同じように僕を感じさせてくる。舌使いにも個性があった。いちいちが新たな刺激となり、このスタンスで二度目の発射をさせられてしまう!

 いつの間にか女の子たちも増えている。始めは7人だったのに、今ではもう何人だか数えられないくらいに増えている。脱退したり新しく入ったりしてゴチャゴチャした娘たちだが、結局人数は増えている。どうなっているんだ?

 「まだまだよ!あなたが私たちの虜になるまで、やめてあげないんだから…。」

 ああ…本当に彼女たちの虜にさせられてしまうのか。このままだと、やり過ぎて死んでしまうんじゃないか。快感の中で恐怖がよぎった。体力も限界なのに、彼女たちの責めは終わらないし、僕も感じ続けている。


###パラレルワールド###


 僕は何回も何回も、ペニスの周囲をぐるりと囲む女たちの頭の間から白濁液を噴水のように噴き出させていた。彼女たちは交代でペニスに群がっては全方向から丹念に舐めあげてくれている。玉袋や会陰、お尻の穴にも女子学生が顔をねじ込んでしつこく責め立て、無理矢理にでも射精に導いていた。

 僕が疲れ果てると、例の催淫スプレーが吹きかけられる。すると性欲がぶり返し、ペニスが元気を取り戻すのだった。枯渇していた精子が一瞬のうちに生産され、ふたたび射精欲に支配されてしまう。そうして、何人いるか分からない大勢の舌の甘い蠢きの前に、せっかく作られた精子がどんどん外へと吸い出されてしまうのだ。

 生産されては連続で脈打つ動きに押されてそのまま外へ押し出される精液。もう射精の快楽は休むことなく続き、脈打ちがまったく止まらなくなっていた。女たちの舌がいっそうなまめかしくなり、ペニス全体を包み込むほどに伸びきってしまっていた。これはただごとではない、と警鐘が心の奥底で鳴りながらも、ひっきりなしに送り込まれる快楽に押されて僕はなすすべもなく、彼女たちに身を任せるしかなかった。

 「さあ、はやく私たちの虜になるのよ!」「と、とりこって…」気の遠くなるような快感の中で僕はどうしたらいいのか分からないでいた。「簡単よ。この快感を受け入れなさい。抵抗をしないで、私たちにすべてを任せればいいの。」「ああ…っ!」

 僕は過去の記憶を鮮明に思い出した。似たようなことを言われたことがある。つい先日、自分のアパートで、風呂に入ったときに美女たちにいわれたことに似ていた。「不思議がらないで。あたしたちを受け入れるのよ。ほら、快感に身を任せて…。そうしたら、あなたは天国をもっと味わうことができるわ。」そうだ、あのとき、風呂に出てきた女の幽霊はたしかにそう言った。「…そう。残念ね。でも、これからもずっと気持ちよくしてあげる。恐くなくなるまで、ね?」「疑いが晴れるまでまだ時間が掛かりそうだね。」そう言うと二人の女はすうっと消えて行ったんだっけ…。

 つまり、この狭い空間にぎっしりひしめいている若い娘たちは、生身ではなく、エッチな幽霊だったんだ。男の精を吸い取る色情霊。快感に身を任せ、彼女たちとの悦楽を受け入れろと、彼女たちはそう言ってるんだ。

 だめ、だ。もし受け入れてしまい、彼女たちとのセックスを求めるようになってしまったら、一体僕はどうなってしまうんだ。それが怖かった。混浴の亡霊は「怖くなくなるまで」襲ってくる。それが今回の夢のような快楽地獄だった。

 周囲を取り囲む幽霊たちは責める手をどんどん強める。スプレーではなく、彼女たち自身からどんどん醸し出される淫気が、僕を衰えさせなかった。何度射精しても次の瞬間にはもとの発情した肉体に戻り、それでいて疲れない。

 つぷっ。誰かの舌が僕の尿道を塞ぐと、脈打ちの速度が速くなり、僕は何も考えられなくなった。恐怖感を押しつぶしてしまう性霊たちの快感を前に、僕はなすすべがなかった。

 現実にはありえないことだ。こんな若い娘たちが寄ってたかって僕を気持ちよくしてくれるなんて、幽霊でもなければ起こりえなかった。理不尽な事情によってのみ翻弄され続け、先がなく後がない道をずっと歩かされ、やっと先が見えたと思ったらクソみたいな現実―そしてあっという間にふたたび暗黒の状況、先も後もない事態に引き戻されてしまうのだ―。そんなものに比べて、ああ、僕の全身をくまなく快感にいざない続ける幽霊たちのなんと甘美なことか!

 性霊たちの快楽を受け入れ、この身を、精を、彼女たちに提供する意思さえ固まれば、それでそれだけで僕は幸福の切符を手に入れられる。あとはこの恐怖感だけ取り去ってしまえば、僕はきっと、快楽に満ち溢れた”共同生活”を楽しむことができるのに。生命が危機にさらされる本能的な恐怖。それが快楽地獄の中で僕を現実に引き止める唯一の頼みの綱だった。

 だが、お尻の穴に入れられた細い指先が、そんな僕の恐怖感を、ついに消し飛ばしてしまった。前立腺への刺激と、ペニスにまとわりついてオンナのようにしごき上げるいやらしい女の舌が、僕の最後の堤防を容赦なく決壊させるのだった。

 「ああっ、受け入れます! この身をみんなに差し上げます! 精を提供してあなたたちにすべてを任せます! だっ、だから、もっと、もっと気持ちよくしてえっ!」自分の声とは思えないような敗北の叫びがトイレにこだました。同時に大量の精液がペニスから吹き零れた。僕の生への渇望はここで終わりを告げたのだった。

 「くすっ。よく言えましたぁ〜☆」「大丈夫よ。殺したりなんかしないから。ずっとずっと、いつまでも気持ちよくなれるだけなのよ。安心してね。」「あうぅ…」僕は何がなんだか分からなくなり、もうすでにフェラ地獄から開放されてとっくに誰にも触れられていない状態なのに、じわりと疼く全身の心地よい快感に酔いしれていた。そしてそのまま、目の前が暗くなっていった。彼女たちを受け入れたあかつきに、きっと次に目を開けたら天国だ。

 安心感が僕を包み込んだ…まるで母胎のように。


…。


……。


………。


 どのくらい時間が経ったのだろう。あるいは、時間そのものを超越していたのかもしれない。僕は夢を見ずに眠っているような感覚に身を任せていた。意識せず、考えず、ただ心地よい自分の寝息の音を聞くだけの、甘ったるくけだるい闇。永遠に続くであろう心地よい世界。このまま消えてもいいかな…でももっと幽霊と交わってもいい…どっちに転んでも満足だ。

 が、まどろみは急に打ち破られた。悠久の時を刻む眠りの世界は突然終わりを告げる。きっと、いつ目覚めても、それ以前の時間が流れていないのだから、いつであっても突然打ち破られるものなのだろう。

 僕は目を覚ます。見慣れた天井が見えた。ここは…そう、自分のアパートだ。いつのまに帰っていたのだろう。僕は畳のうえに大の字に寝転んだまま眠ってしまっていた。

 起き上がってみる。疲労感もまったくなく、全身エネルギーがみなぎっている感じである一方、なんだか頭がぼんやりしていて、ここに自分がいる実感を今ひとつ持てないような、ふわふわした感じであった。僕は自分の置かれた状況を整理してみた。気がつく前、学校のトイレでくり広げられた妖しい饗宴…あれは夢だったのだろうか…それとも…。

 夢だとしても、一体いつから、僕はここに寝転んでいたのだろう。部屋中が、いやアパート中が、寒い地方であるにもかかわらずガンガン暖房を効かせたみたいに暖かい。全館暖房などという施設はもちろんない。熱があるような、ぼんやりした情景であるのに、体の不調はなくむしろ元気いっぱいだ。

 あるいは…今このアパートそのもののほうが夢なのかもしれないな。なんだかわけがわからない。

 とにかくここでぼんやりしているわけにはいかないな。用でも足したら出かけよう。僕は部屋を出た。

 「…あれっ!?」いつもの廊下の奥が真っ暗だ。台所に行くための、およそ2メートルの申し訳程度の廊下の奥が見えなくなっている。おかしいなあ。目の前にはいつもの壁があるはずなのに。廊下は数メートル以上伸び、その奥は暗くなっていてどうなっているのかわからなくなっていた。廊下だけがずっと長く伸びている。僕はどうしてもその廊下に興味を引かれる。

 いつものカベの向こうは…そう、気になるジャージのあの子が住んでいるはずの部屋だ。こんなに廊下が伸びていたら隣にまでつながってしまう。あまりに不自然だった。気持ちが高鳴る。この先は一体どうなっているのだろう。

 その時、僕は急にさっきのでき事を思い出した。そうだ、学校のトイレで僕は、性霊たちの虜になったのだ。受け入れることを彼女たちの前で誓ったのだった。それできっと、この廊下が伸びたのだろう。この先にはきっと…目くるめく悦楽の世界が待っているんだ。僕の足は自然にそちらに向いていた。そこで自分がノーパンで半ズボン、上半身裸であることに気づいた。いや、気づいたというより、気になりだしたといったほうが正確だ。

 それでも僕はかまわずに長い廊下を歩き始めた。ぶっちゃけ裸でもいいんだ。現実と戦うことも放棄し、また現実を楽しもうともせずにこれを拒否し、死の恐怖もなくなり、性霊に身を差し出すと決めてしまっては、なにもかも、しがらみも、懸念もいっさいない。この廊下を歩いていけば、いい。

 廊下の奥を歩いていくと、青白い薄暗い電灯がぽつぽつとあたりを照らすだけになった。振り返って見ると、光に満ちていたアパートの部屋の方が逆に闇に包まれている。これでいいんだ。僕はまた歩き始めた。

 どのくらい歩いただろう。100メートルや200メートルではない。まっすぐに伸びる、異界の廊下を、僕はむしろわくわくしながら歩き続けた。足取りは軽く、元気に満ち溢れている。股間がやさしく疼いた。

 ぼわ…。周囲が突然淡く光った。白い柔らかな光があたりを包み込む。その光が、ゴールを示していた。目の前には古ぼけた扉がある。ドアの向こうは見知らぬ外の世界なのだろう。外に出るにあたって丁度よい靴もそばにある。僕は靴を履いてドアを開け、外に出てみた。

 ぶわっ! 薄暗いところから突然明るいところに出たため、僕は数秒間外界を見られなかった。が、すぐに目が慣れてくる。未知の世界への恐怖はなく、むしろ期待感だけで周りを見回しているのだった。

 「…あれ?」目の前に広がっていたのは、ごく普通の、都会風の町並みだった。もっと変わった世界で、見るもの聞くものみんな初めてのものばかり並んでいると思っていた僕は、いささか拍子抜けだった。目の前にはアスファルトが広がり、駅があり、地下鉄の入口があり、家屋や喫茶店やビルディングが立ち並んでいる。

 山の中にいたので、こういう都会の風景は懐かしくもあったが、しかしやっぱり拍子抜けだった。ごくありふれた、何の変哲もない町だったからだ。正直少しがっかりした。

 だが、この町の異常さに気づくのにわずかしか時間がかからなかった。都会といえばすぐにでも聞こえてくるやかましい喧騒。自動車が走りクラクションが響く。駅のスピーカーからひっきりなしにくだらない放送が流れ、店からは大音量でBGMや広告が流れる。駅のアナウンスは一秒たりとも放送をやめることなく、ひとつ終われば別のガイダンスなどが矢継ぎ早に流れるものだ。人の歩く音、工事の音、携帯電話の音、あれこれが絶え間なく響き渡るのが都会の雰囲気というものだ。

 しかし、自分の目の前に広がっている町では、物音一つしないのだ。実にしずかだ。機械が稼動している雰囲気さえない。一番奇妙なのは、アスファルトの綺麗に舗装された道に、まったく自動車が走っていないことだった。車そのものはまばらに止めてはあるものの、だれも運転をしておらず、エンジン音がまるで聞こえないのである。いや、そもそも―この町には人がひとりもいないのだ!

 僕は街を歩いてみることにした。静かすぎてゴーストタウンとなった感じだ。自分の足音だけが響く。誰もいない都会って、こんなにさびしいものなのか。まだ山の中のほうが寂しくない。生の息吹を感じられるからね。

 じわり…突然股間が激しく疼きだした。まるで何日も抜いていないみたいに、性欲が急激に高まる。半ズボンははちきれんばかりに膨張し、僕の股間を締めつけて痛くなった。僕は思わず半ズボンのボタンを取った。するとぴょこんとペニスが飛び出し、半ズボンは大きく押し開かれてしまった。楽になったペニスは今度は別の要求を立てる。

 あふ…これはかなりキツイぞ…僕は歩くこともできなくなり、その場に立ち尽くしたままペニスをしごいてしまった。その一方で警戒し、周りを見回す。ここは異世界なのだという思いが片隅にあり、恥も外聞もなく町の真ん中でいやらしい自慰行為にふけるのだった。それでも万一誰かに見られたらと思うとやはり恥ずかしい。僕は周囲を警戒しながら自分を慰める。

 しかし、いくら刺激してもまるで気持ちよくなく、もちろんイクことはできない。それどころか、ペニスに触れると余計に性欲が疼き、お尻の奥がキュ〜ンとせつなく反応した。僕は周りを見回すのをやめて一心不乱にしごいたが、まったく事態は解決せず、ますます性欲が激しくなる一方だった。

 その時僕は思い出した。僕がこの世界に来たのは、エッチな女の幽霊たちに身を預けて快楽を得るためだった。ということは、この都会のどこかに性霊がいるはず…でもいくら歩いても人間どころか幽霊さえいなかったのだ。

 「ああっ…だれか…僕を静めて…射精させて…」思わずうめいた。この世界では自分で抜くことはできず、性霊に抜いてもらう以外この疼きを鎮める方法はない、直感的にそう悟っていた。だれでもいい、裸の美女に手で抜いてもらいたい、この熱いたぎりを鎮めて欲しかった。

 すると突然、ホログラフィーがブゥンと目の前にあらわれる。それは裸の若い女に形成され、やがて実体化した。僕が思い描いたとおりの背の高いお姉さんだった。僕は何も考えられずに彼女にペニスを差し出す。するとお姉さんは優しく微笑みながら右手でペニスを掴み、ゆっくりさするようにしごき始めてくれた。

 「あうっ!」出したくてどうしようもなくなっていたところへ、女のスベスベやわらかい手が数コスリしたのだからひとたまりもなかった。僕は感極まってガマンにガマンを強いられた白濁液を彼女の手で爆発させた。精液はアスファルトの上に無残にばら撒かれた。「ああ…」出しつくした悦びで、膝が笑い始めた。体がずうんと重くなり、立っているのがやっとだった。

 「くすくす…我慢なんかしてないで、したくなったらいつでも、ね?」お姉さんはやさしく微笑むと消えていった。

 この一件で、この世界のことがなんとなく分かり始めてきた。誰もいないのではなく、この世界にはたしかに性霊がいる。生身の人間は僕しかいないが、ここはたしかに、性霊の棲家、性霊の住む町だ。天国はすでに始まっているのだ。

 僕はしっかりした足取りで道路を歩いていく。あいかわらず車の音は聞こえない。しばらく歩くと、また体が疼き始めた。今度は服を着たお姉さん二人に手で抜いて欲しいな。ふとそんな風に考えた。

 「呼んでくれてありがと。」目の前に私服姿のお姉さんが二人あらわれた。彼女たちは二人がかりでペニスをしごき上げる。精子が急ピッチで生産され続けているから、射精までにほとんど時間がかからない。あっという間に高められる。女のやわらかい手が棒や玉袋を丹念にかわいがると、僕は彼女たちめがけて射精した。

 今度は数を数えながら歩く。近くに駅が見えてきたところでまた疼いた。多分5分毎に体が疼き、5分も抜いていないと我慢しきれなくなるくらい体を苛む…その代わり射精したらまた五分静まってくれる。そういう世界なのだろう。まるで麻薬のように、禁断症状のように僕は射精を求め、性霊たちがそれに応えてくれる。ただ、クスリと違うのは、体が疲れたり死んだりすることはなく、それどころかますます元気にエネルギッシュになっていく点だろう。場合によっては一瞬で果ててしまうのではなく、しばらくマグワイを楽しんでから抜いてもらうことも可能だろう。

 そして分かったことはもうひとつ。こちらが性霊を求めるまでは、決して彼女たちは姿を現さないことだ。体が5分毎に疼き、女が欲しくなったらその場に性霊があらわれて抜いていくしくみなんだ。それ以外はゴーストタウンのように静まり返っている。僕はこの世界で永遠に若く元気なまま生き続ける。そして望みどおりの性霊が、望みどおりの方法で僕を悦ばせ、指名された性霊は僕の精を受けて快楽となる、ギブ&テイクの構造だ。5分ごとに精を提供する時間がくる以外は、ごく普通のありふれた町並みというわけだな。

 とにかく。今はこの熱いたぎりを鎮めてもらうことだ。慣れてくれば長時間のセックスを楽しめるようになるだろう。今度はブルマだけの女の子にふとももで抜いて欲しいな。「こんにちわー☆」ブルマをはいた女の子があらわれた。望みどおり上は何も着けておらず、イメージどおり貧乳だった。もちろんブルマの下は何もはいていないで、オンナのワレメがくっきりと浮かんでいる。僕は後ろを向いた彼女の足の間にペニスをねじ込んだ。すると女の子は足をスリスリさせながら前後に動いてくれた。「あー…気持ちいい…」「んふふっ、私もよ♪」僕は女の子のぷにっとした乳房を揉んで腰を振りながら快楽だけを求めた。やがてペニスから快楽のしるしがこぼれ、女の子の足の間からいやらしい汁が飛び出すのだった。ブルマ娘は消えていった。

 駅に着くとおあつらえ向きに一両編成の電車が来た。無人で自動運転らしい。乗客はもちろん僕一人。電車が出発すると、しばらくしてまた体が疼き始めた。僕はこの世界で自由に振舞い、生き続けることができる代わりに、性霊たちに精を提供することが仕事だ。僕は女車掌を望んだ。たどたどしいアナウンスが萌えな女の子だ。

 すると車掌のドアから上半身は制服で下半身が裸の、望みどおりの女車掌が出てきて、こちらに向かって歩いてくる。彼女は座っている僕に跨り、望みどおり椅子を使った座位で僕の精を抜き取ってくれた。柔らかい制服に僕を抱き寄せながら、腰だけをくねくねと揺り動かすなまめかしい動きに、ペニスは一瞬にしてノックアウトしてしまったのだった。

 電車が止まった。降りてみると、さっきと同じ駅だった。駅はひとつだけで、ここからここまでぐるっと回ってくるんだな。ほとんど意味のない電車だが、快楽の世界ならこれで十分というわけか。

 僕はふたたび町を歩き出す。ビルのひとつが目に止まったのでそこに入ってみる。もちろん誰もいない。が、そこで体が疼く。僕はOL姿の美女を呼び出し、その細い体を犯して果てた。紺色のスカートを捲り上げると生のお尻が露出され、そこからバックで挿入、一心不乱に腰を振ってあげると、彼女もしっかり締め付けながら腰を左右にくねらせてきた。性欲の塊になっている僕はどんどん込み上げ、ついにそのまま中出しである。

 僕がセックスの、いや性霊のとりこになり、絶えず女を求めていながらも、自分を見失ったり理性をなくしたりはしなかった。現実世界と同じように、性欲が込み上げたら射精する、それだけだ。ただ、疼く期間がおよそ5分と格段に短いのと、現実世界では自分で抜くのにたいしてここでは無数の性霊たちがかわいがってくれる、という違いがある。

 あとは何をしても自由だった。腹が減ればお店で自由に食べられる。お金も必要ない。眠りたければホテルの好きな部屋でいつまででも寝ることができた(疼くのは起きている間だけ)。労働も苦役もなく、現実のしがらみもない。ただ、5分に一度のペースで快楽に埋もれなければらないだけで、しかもその義務も嫌なものではなく、むしろ自然で積極的に追い求めたいたぐいのものだった。

 もちろん店でもレストランでもホテルでも、体が疼けば好きなだけ性霊たちを呼び寄せることができ、思ったとおりのプレイで楽しむことができた。まさに天国であった。ああ、なんでもっと早くここに来なかったのだろう。

 性霊たちの甘美な肌やオンナ、思いもかけぬ高度なテクニック、どれをとっても一級品で、女性に飽きることが決してなかった。それどころか、交われば交わるほど、もっともっとと、彼女たちの肉体ややさしい抱擁を求めてしまうのだ。

 この世界には公園も自然豊かな森林もあって、都会に疲れたら開放的なセックスを愉しむこともできた。人数も自分の好きなだけ呼ぶことができたが、せいぜい3人で十分だった。一人相手でもあっという間にイかされてしまうからだ。

 学校に行けばセーラー服の女学生たちが相手になってくれたし、病院に行けば女医や看護婦、患者まで幅広く付き合うことができた。

 僕は町のあちこちを探索しながら、頻繁に性霊たちと交わった。体が疼けば、その場で処理できる。それが僕の仕事であるし、望みでもあった。

 プールを見つけたので行ってみる。綺麗な水が張られている。裸のまま入ってみるとほのかに暖かく、心地よい温度だった。僕一人だけのプール。ゆったりと泳いでいると、体がまた疼き始めた。ちょうどいい、水着の女の子たちがいいな。

 僕の周りに5、6人の水着姿の美少女たちがあらわれた。スクール水着の子、フリルの娘、ビキニのお姉さん、ひも水着の女の子、競泳用の水着など、さまざまな美少女たちが僕を取り囲む。

 彼女たちはいっせいに僕の体に群がり、スベスベの生足を水の中でこすりつけてきた。ペニスをシコシコ肌触りがこすれていく。僕は彼女たちに抱きつきながら、女体の快楽に溺れていった。女の子たちは手を一切使わず、足の動きだけで僕を悦ばせた。それもふとももでペニスを挟み込むことをせず、その肌触りだけで僕を快感に晒すのだ。

 僕はビキニの娘に抱きついて腰を一心不乱に前後させた。ペニスが彼女の足にこすりつけられる。まわりの女の子たちも僕のお尻や内股、外足にすべすべと足をこすっている。やがて僕はビキニの女性の股を自分の足に強く挟み込んだまま、その足の感触だけでイッてしまった。

 プールから上がって、僕はまた町を歩き始めた。デパートでは化粧品売り場で妙に色っぽい販売員さんたちが相手になった。集団フェラでくすぐったい舌がペニスを高め、お尻の穴に捻じ込まれた舌の動きで発射してしまった。

 地下鉄への入口を見つけたので入ってみる。僕が降りると丁度よく電車がきた。なかなかカッコイイ。乗ってみると、かなりのスピードで長時間移動した。まわりは殺風景な壁なので代わり映えしないが、ゴオオオという地下鉄ならではの音がかえって新鮮だった。

 地下鉄に乗っている間は、不思議と体が疼かなかった。性霊を思念しても出てきてくれない。ここだけは何か特殊な構造なのか。40分くらいずっと電車に揺られ、その間も90から100キロくらいのスピードで電車が走りつづける。だんだん不安になってきた。たった一人、いったいどこに連れて行かれるのだろう…?

 1時間以上電車に揺られ、やっと電車が止まった。下りた地下鉄駅はさっきと同じようなホームだ。もちろん誰もいない。一体なんだったんだろう。

 「あ…あう…」異変はすぐに分かった。周囲10数メートルは何も変わったところは見えないのだが、そのさらに奥はほのかなピンク色に空気が染まっている。そして邪魔にならない程度の、かすかな芳香が漂っていた。この香りは覚えがある。あの催淫スプレーの香りだ。これが空気中に満遍なく漂っているんだ。

 相当うすいピンク色の空気は、遠くの風景を桃色に霞めはするものの、生活に支障はない程度の薄いものだった。視界は良好。が、この香りは男を絶えずセックスに駆りたて、休むことなく疼かせる魔性の芳香だった。これが空気中に漂っているということは、5分といわずずっと体が疼き続けているということだ。

 ペニスがそそり立っている。性霊由来の淫気が僕の体を蝕み始めているんだ。地下鉄でしばらく揺られていて、僕はさっきとはまったく違う世界に降ろされたのだった。だめだ、体が疼く。僕は女性を求めた。が、やはり地下鉄では性霊はあらわれない。彼女たちはこの上にいるのだ。

 僕は階段を駆け上がった。「う、うわあっ!」外に出てみると、世界が一変していた。町並みは変わらず、さっきと同じ都会の風景だ。が、決定的に違う点が一つだけあった。

 プァ〜ン! ブウウウン! パパーッ! ゴオオオオ! 「マモナク1バンセンニ…ゴチュウイクダサイ!」耳をつんざく騒音。町は多くの自動車が走り、ひっきりなしに電車が行き来し、アナウンスが流れ、そして…道を大勢の人間が行き来していた!

 人だ! 人がいる! 耳慣れた、見慣れた都会の風景だ! その喧騒のなかに、素っ裸の僕が投げ出された格好だった。

 もちろん、体を隠す必要はない。元の世界に戻れたわけではない。空を見ると濃いピンクに覆われている。上空まで淫気に満ち溢れているんだ。それに、道行く人々はすべて、千差万別の若い女性だけだった。

 さっきの世界は閑散としていて、僕が呼び出さないと性霊が出てこなかった。それはそれで静かでよく、必要なだけ抜いて性霊側も僕のほうも満足だった。欲を言えば時々さびしくなることはあったが。

 こっちの世界は、その寂しさを補って余りあるものだった。本来あるべき性霊たちが、この都会で普通に過ごしているんだ。会話し、働き、移動し、食べ、寝ている。生きている女性と寸分たがわず、ここでひしめき合っていた。

 前の世界でも同じように彼女たちは生きてはいたが、幽霊らしくひっそりとしていた。ここでは我が物顔に、生きているときと同じように生活を謳歌している。そんな感じがした。

 目の前を大勢の女たちが通り過ぎていく。一瞬、あまりの世界の変貌ぶりに我を忘れたが、すぐに淫気に毒された肉体が悲鳴をあげた。「あう…」僕は近くの女性を捕まえ、説得も何もなく抱き締めた。

 短パンにキャミソールだけという軽装の性霊はすぐさま僕を受け入れ、全身で抱き締めてくれた。僕の首に巻きつく二の腕のスベスベの感触が、何度も味わったものであるのに妙に懐かしい感じだった。僕は彼女の短パンを剥ぎ取り、ひざまで下ろすと、オンナめがけてペニスをつきたてた。彼女の股とオンナ表面の隙間にペニスを押し込むと、ぬりゅぬりゅと前後にこすり続けた。彼女も足を閉じてペニスを挟み込み、スベスベの肌で僕を包み込んでくれる。程なくして僕は彼女の股で果てた。

 性霊は消えない。ペニスを挟み込み、僕を抱き締めたまま、耳もとで囁いた。「…ようこそ、第二世界へ。」「えっ?」「ここは第一世界みたいに生易しくはないわよ。いっぱい愉しんでね♪」女性は僕から離れると短パンをはき直して歩いて行った。

 薄い淫気の中で、女の性霊たちが歩き回り、町の生活を謳歌している。そんななかに男一人、裸で投げ出された格好だった。射精してからというもの、女の子たちは歩きながら、仕事をしながら、僕を好色そうな目で見つめている。

 さっきの世界では5分おきに自動で性欲がぶり返したが、こっちではそんな機械的な反応がない代わりに、吸い込まれる淫気によってひっきりなしに精子が生産され、一定量溜まれば体が疼く構造になっている。もちろんさっきより頻度は高いだろう。

 出したばかりだというのに、もうペニスは反応し、体が疼き始めている。1分と経っていないのに。これも、淫気が絶えず体のなかに入り込んで精子の生産を格段に早め、大勢の町ゆく好色そうな娘たちの姿を見せつけられているためだろう。

 ペニスが勃起したとたん、近くを歩く女の子たちが足を止めた。彼女たちが僕に近づくと、いきなりひざまづいてペニスを口に含んできた。三人がかりで亀頭が舐め上げられ、セーラー服を着た別の娘が僕の後ろから全身を撫でさすってきた。

 「クスクスクス…覚えておいてね。この第二世界では、男が立ったら自由に襲っていい決まりになってるのよ。勃起しないうちは性交してはならない。また、意図的にちんちんに触って立たせるのも反則。不可抗力を除いて触ってはいけないのよ。でも、相手の視覚や聴覚を刺激して誘惑するのはOK。ほら、まわりを見てごらん。みんなあなたとしたくてウズウズしてるわ。だからあんな笑顔でみんなであなたを見てるのよ。さあ、ここで抜いたら、彼女たちの誘惑がすぐに始まるわ。楽しみにしててね…その前に私たちの口を愉しんで♪」

 女学生の説明を聞きながら、極上の唇に次々亀頭を包まれ、僕は耐え切れずに精液を勢いよく放出した。「そうそう、この淫気は性霊の体臭みたいなもの。じきに慣れるわ。それまではすぐの勃起も仕方ないわね。ふふふ…」

 娘たちが去っていくと、周囲の女性たちの目の色が変わった。何とかして僕から精子を奪おうと思っているイタズラっぽい目つきだ。それでいて群がってこないのは、この世界ならではの厳格なルールがあるからなのだろう。

 まだまだ淫気に慣れることはない。多分数日は掛かるだろう。ペニスはすぐに勃起した。チャンスを掴んだのは、婦人警官だった。彼女は妖しい笑みを浮かべながらスカートを捲り上げると、そのまま立位でペニスを飲み込んでしまった。

 黒い制服が僕の体をこする。それでいて艶かしい腰つきが警棒ならぬ肉棒を自在に操り、僕を快楽のふちに落とすのだった。「あふ…お姉さ…」僕はきりっと引き締まった美女のオンナに精液を放出した。

 僕は地下鉄の出口で、日が暮れるまで何度もその場で勃起しつづけ、通行人の女たちにそのたびに精を抜き取られた。何度出しても疲れも弱りもせず、元気とエネルギーが満ち溢れた。

 眠くなってきた僕は近くのホテルに入った。生身の男は無料ですべての施設・商品を利用できる。食事もタダで性霊が運んできてくれた。ウェイトレスのミニスカと淫気にまたまた勃起した僕は、上の食事の前に下の食事を楽しむことになった。「…ありがとうございました。あの…近くに大浴場があるのですが、お休みの前にそこでおくつろぎになっては如何でしょう?」ウェイトレスは近くにあるという温泉施設を紹介してくれた。そうだな、寝る前に入浴しておくか。

 浴場はすぐに見つかった。入ってみると男湯はなく、僕は女湯に行かなければならなくなった。いや、こうなることは分かっていたし、混浴娘たちと裸の付き合いをすることになるのは覚悟の上だった。

 広い湯船にたくさんの美女たちが入り、歩き回っている。僕の姿を見つめるとみんな一斉に僕を見た。その視線に感じてしまい、湯船に浸かる前にペニスは半立ち状態だった。全裸の女性たちと同じ浴場にいるというだけで興奮材料だった。

 洗い場で巨乳のお姉さんがパイズリしてくれた。湯気に含まれた淫気がことさらに僕をかきたて、そのたぎりを女の象徴たる乳房がかわいがりながら鎮めてくれるのだった。パイズリで谷間に粘ついた液を放出したにもかかわらず、大勢の全裸の女性の視線を前に、ペニスは収まらなかった。

 別の女の人が僕を横に寝かせ、石鹸を全身に塗りたくってからアワおどりを披露してくれた。そのにゅるにゅるした肢体が僕の全身を丹念に洗い上げる。他の娘たちも手に石鹸を塗っては僕の全身の細かい所をさすりながらきれいにしてくれた。結局体のなかに溜まった汚いものも抜き取ってくれるのだった。

 浴槽に浸かってくつろぐも、動き回り自慢の乳房を見せつける女たちに欲情せざるをえなかった。湯船の中でスタイルバツグンのお姉さんと座位で結合。ゆっくり絞るような色っぽい動きに翻弄され、僕は彼女に身を預けたまま精液を提供した。

 その後も潜望鏡や手コキでひっきりなしに抜かれた僕は、十分満足してホテルに戻ったのだった。さすがに大勢の全裸の美女に囲まれて何度も性交した後では、ウェイトレスのミニスカに靡かなかった。なるほど、そうやって自分の精神を鍛え、淫気に慣らしていって、やりすぎないで丁度よく愉しむ自分を作り上げていくというわけか。悪くないな。

 僕はふかふかのベッドで深い眠りに落ちて行った。夢のなかに性霊が浸食することはなかった。

 次の日から、性霊たちの誘惑は露骨になって行った。ウェイトレスの服装はぐっと大胆になり、スカートは少し動いただけで下の毛が見えるほどだったし(ノーパンなのは言うまでもない)、わきの下を存分に露出させる軽い服装だった。朝だったからどうしてもペニスは勃起している。僕は朝のコーヒーを飲みながらウェイトレスの膣にミルクを注ぎ込んだ。

 町を歩く女たちは僕の姿を認めると、遠くからでもスカートをめくってパンティやオンナを見せつけたり、上半身をはだけさせて形のいい乳房を見せてくれたりした。思ったよりも淫気に慣れるのは早く、空気を吸っているだけで体が反応することはほとんどなくなった。それよりも、妖しい笑顔で体を強調する女たちの姿に打たれることのほうが多かった。

 彼女たちは何とか僕を立たせようと、触ることなくあの手この手で誘惑してきた。わきの下やおっぱい、お尻、おへそ、足、下着やオンナにいたるまで、女の魅力を醸し出すところならどこでも遠慮なく見せつけてきた。自分のオンナや乳房をまさぐってペニスを反応させてこようとすることはなかったが、これも規則で決まっているのか。露出はOKでも、公衆の面前での自慰行為は倫理的に許されない…そのくせ男との性交は許されるとは、変わった秩序だ。

 この世界でうまくやっていくには、性欲に任せてやりまくるのではなく、程よいペースで精を提供し続けることだ。性霊の世界だからといってやりまくってしまえば、いくら体がエネルギッシュで元気に溢れていても、一気に精を放出しきってしまえばやはりやせ衰えてしまう可能性があるし、何より精神的に崩壊してしまいかねない。うまくバランスを取らないと。

 そのためには、性霊たちの誘惑には簡単に屈してはいけない。ほどほどに鍛えて、勃起しないようになるんだ。頑として拒否する必要まではないにしても、ここでうまくやっていくために僕のほうも変わらないとね。

 僕は勃起しないように気を張って町の中を歩いた。目に飛び込んでくるのは女、女、また女。美しいプロポーションと白い肌がまぶしく僕を誘い続けている。襲ってはいけないという秩序があるのも、やりすぎて折角の男を壊してしまわないようにという世界の配慮なのだろう。

 「ファイットーファイットーファイットー…」「ぶっ!!」向こうから、ブルマ一丁で上半身裸の女学生の一団が、朝錬なのか列を組んで走ってきた! この攻撃にはひとたまりもなく、ペニスが一瞬にして反り返った。

 女学生たちは僕に群がり、僕を立たせることに成功したのを喜んだ。中腰の僕の顔面は数人の貧乳に囲まれ包まれた。集団で僕の頭部を抱き締めた結果だ。ペニスはブルマッ娘のナマ足に挟み込まれ、もう一人がその娘の股に指をねじ込んで僕の亀頭を探し当て、ぐりぐり刺激してきている。その体勢のまま僕は少女の足の中で快感の汁を噴き出させた。性交に及んでしまうとあっという間に果ててしまうのは、僕の修行がまだまだ足りない証拠だ。長続きさせるためにも、まずは勃起を抑える精神力を養わないとな。それに、慣れてくれば一回一回のセックスをもっと長く楽しめるはずだ。

 僕は近くのビルに駆け込む。すると受付嬢たちが立ち上がって、ぴっちりミニスカを捲り上げた。上品な制服にすらりとしたナマ足がたまらなかった。ペニスがぴくんと反応し体が疼くが、僕は目をぎゅっと閉じて勃起を堪えた。OLたちも思い思いに肌を見せて僕を誘ってくる。中には下を完全に脱ぎ捨てて上だけ制服の一団もあった。

 どうにか勃起を堪えて外に出る。あのまま中にいたら抑えきれなかっただろう。が、外でもさほど状況は変わらないのだった。なぜか水着姿で歩く少女の一団に悩殺される。近くで動くスベスベの足やおなかの肌がいやらしかった。僕はその場を振り切るようにして走り去った。

 だがもちろん、女の色情霊しかいないこの世界に逃げ場はなかった。別の建物に逃げ込むとそこは運悪くレスリングジムで、レスリング着を着た女性が取っ組み合っている。僕が入ってきたのを見ても彼女たちは練習を止めない。むしろその練習の姿そのものが僕を魅了するのだった。躍動する女体、股に浮かんだオンナの形が、力強い肢体が、立ちかけていたペニスを完全なものにした。

 そこで女性は練習を止め、僕を中央に連れてくる。そして二人がかりで僕を挟み込み、上下サンドイッチで男女エロエロレスリングが始まったのだった。僕は彼女たちに力づくで仰向けに固定され、薄いレスリング着で全身をさすられた。ガタイがいいのにスベスベの柔らかい肌触りが全身をくすぐる。僕はできるだけ長く快感を楽しむために、あっさりイッてしまわないようにふんばった。が、上下で僕の体を全身を使ってこすり上げる二人の体に太刀打ちできるはずもなく、ほどなくして僕はサンドイッチされたまま執拗な手コキで射精してしまう。

 ジムを後にすると容赦ない女体の雨あられ。しばらく歩くとまた半立ちに近くなり、危機に陥る。それでまたあちこち逃げ回るハメに陥るのだ。

 逃げ込んだ先がまた運が悪かった。今度は新体操の練習場。レオタードの白い妖精たちが柔軟な体を駆使して足を上げ、僕を完全にノックアウトした。6人の美少女が次々といきり立ったペニスを細い足で挟み込んでくれた。

 そのうちの一人が足を高く上げ、その体勢で股をずらして挿入。僕の肩に細く引き締まった片足が乗せられる。別の新体操選手が僕の腰を揺り動かして快感を高めた。僕は我慢して射精までの時間を長引かせようとしたが、常人の数倍の攻撃力を持つ色情霊のオンナの感触はあまりにも甘美で切なく、締め付けながら妖しくうねる凄艶な膣にあっさり精を漏らしてしまう。

 次のデパートでエレベーターに乗ったのがまずかった。エレベーターガールを含め満杯になった狭い個室の真中に、僕は追いやられた。思い思いの私服の美女たちが僕の体に女体を押しつける。ルールでは積極的に触ってはいけないのだが、”不可抗力”はその限りではないのだ。柔らかいお尻や胸の感触を押しつけられて、ペニスが黙っているはずがなかった。僕は上下するエレベーターの中で、誰のとも分からない柔らかい大勢の手に集中攻撃され、女の渦の中で精液を放出した。

 随分遠くまで歩いてきてしまった。そろそろホテルの近くまで戻るか。僕は近くに駅があることを知り、電車に乗ることにした。こっちは人が生活しているために電車もまともに機能し、別の駅がある。僕が来ると電車も丁度よく止まった。周囲には人がいない。これなら満員女性専用車両でおしくらまんじゅうされずに済むな。

 「当駅で五分ほど停車いたします。そのままご乗車になってお待ちくださいませ。」たどたどしい女車掌のアナウンスが流れる。電車にはすでに何人かの女性が乗っていて、椅子に座ることはできなかった。空いているには空いているのだが、どこに座っても両側にセクシーな美女を抱えることになる。勃起を抑えなければいけない中であえて椅子に座るのは危険すぎる。立っていることにした。

 「間もなく発射ですー」…発車だろ。ったく。とにかくアナウンスどおり、電車は閉まり、ゆっくりと駅を出発した。目的の駅は二つ先だ。次の駅は2分ほどで着く予定で、その次が3分ほど。駅の間隔は短めだ。

 やがて電車が減速し、次の駅に着いた。「げっ…!」駅で待ち受けていたのは、大勢の女性だった。ホームにぎっしりと、制服の娘やOL、私服の女性が待っていた。ナース服の天使までいる。しまった、始発駅で空いていても、ここで満員になるのか。しくじった。

 ドアが開いた。「うわわっ!?」女性たちの制服や私服は上半身だけで、下半身はパンツすら身につけていなかった。靴以外すっぽんぽんだ。看護婦さんも上半身だけ清楚な白衣で、下は何もはいていない。しかも…全員毛を剃っているのか生来なのか、パイパンでオンナが丸見えになっていた!

 逃げる間もなく女性たちが一気に電車に乗り込んでくる。僕は反対のドアのほうに逃れて密着の度合いを下げようとしたが、女性たちは巧みに僕を真中に押しやって逃がさなかった。

 いきなり満員電車になった。しかも僕は裸で、女性たちは全員パイパンで下半身丸出し。全身が密着し、しかも下はオンナやお尻やふとももがダイレクトに僕の肌に密着している。「〜〜っ!」僕はどうにか勃起しないように堪えていたが、ペニスにも不可抗力で横尻の肉があたっており、耐え切れそうになかった。むくっ、むくっとペニスが大きくなり始める。

 いや、ここを耐え切ってこそ”慣れた”と言えるだろう。頑張りどころなんだ。僕は腰を引いて誘惑に絶えた。腰を引くと後ろの女学生(セーラー服の上だけで下は丸出し)の臀部に自分の臀部が押しつけられたが、最大限に気張って寸でのところで勃起を抑えた。次の駅まで3分だ。これを持ち堪えられれば…

 電車がゆれる。僕は波打つような女体下半身の渦に翻弄され、何度も半立ちになったが、精神力で耐え抜いた。美少女たちは思い思いに体を揺らし、スベスベの肌を押しつけこすりつけてきた。も、もう限界だ…まだ着かないのか。

 と、突然電車が止まった。「お知らせいたしますー☆ただいま信号トラブルで運転を見合わせているですー。お客様にはご迷惑をおかけして大変申し訳ないです。…あう…ごめんなさいです…くすん、くすん…」萌えな声で女車掌のアナウンスが漏れた。

 駅は目と鼻の先にある。もし順調にたどり着ければ僕の勝ちだった。だが、そんな簡単に性霊たちが解放してくれるはずはなかった。ギリギリのところで勃起を押さえていた僕は絶望に包まれた。周囲の密着美女たちがスリスリとナマの肌を僕の下半身にこすりつけた。もうだめだ…

 ペニスは大きく膨張し、目の前の白衣の天使の足の上で反り返った。不可抗力をいいように利用して、ナースさまは自分のふとももを僕の内股に滑り込ませていたのだった。彼女は僕に密着し、立ったままペニスを挿入してしまった。おしくらまんじゅう状態で回りの美女たちがうごめき、僕たちの動きをサポートしてくれた。女たちの肉の中で包まれながら本番に持ち込まれたからには、ものの数秒で射精してしまうのは致し方なかった。

 電車は止まったままだ。一度出して萎えたペニスに再び試練が襲い掛かる。まだまだ女の子たちの密着誘惑が続く。僕の足はふとももやツルツルのオンナ、お尻やふくらはぎに翻弄される。僕の腰周りも彼女たちの腰やお尻やおなかがこすりつけられている。ペニスはひっきりなしに交代で誰かの足やお尻やオンナ表面が押しつけられ、滑っていき、柔らかくめり込ませるのだった。

 ペニスに萌え制服の女学生がお尻を押し付けてきた。その臀部の柔らかさを押し返すようにペニスが硬くなった。「ん…」女の子はぐりぐり臀部を揺り動かし、めり込んだペニスに快感を与えた。周囲の女性たちも手を伸ばして僕の下半身をかわいがり続ける。ほどなくして満員電車女性専用車両で二発目の精を提供する。

 萎えたペニスを再び勃起させることに、彼女たちは余念がなかった。またもやスベスベの肌をうごめかせ、不可抗力を悪用して僕の下半身に女の良さを刻みつけると、ペニスは耐え切れなくなって膨張した。

 こうしてペニスは、止まった電車の中で、手や足、お尻、ふともも、オンナ、果てはお尻の穴で、何度でも刺激され発射させられ、萎えてはしつこく妖艶な女体を押しつけこすりつけて無理やり立たせるのだった。性霊たちは交代で僕の周りに密着し、勃起させては抜くことを繰り返した。

 電車が動き出したのはそれから1時間も経ってからだった。

 ホテルにたどり着いた頃には、さすがに疲れが出てきた。「一晩寝ればだいじょうぶですよー」ウェイトレスが精のつく食事を運んできてくれた。さすがにかわいそうに思ったのか、彼女は誘惑してこなかった。食事のあと、僕はスイートルームで深い寝息を立てるのだった。

 次の日も視覚攻撃との戦いだった。昨日とは別の方向に歩いて、誘惑に耐え、しばらく勝っては時折負けて射精する。昨日に比べればたしかに頻度は少なくなっていた。昨日の満員電車攻撃で、だいぶ誘惑に強くなったのだろう。勃起してしまってからも、挿入に耐えられる時間が延びていた。もはや薄く漂う淫気は平気になっていた。

 と、地下鉄の入口を見つけた。僕がこの世界に来た場所のようだった。どうやら地下鉄は、世界を結ぶ特殊空間らしい。最初の閑散とした世界からここにきたのも、この地下鉄電車だった。ここから地下鉄に乗れば、元の静かな都市に戻ることができるのか。喧騒に飽きたら戻るのも悪くはないな。

 「…やめたほうがいいわよ。」突然後ろから声を掛けられる。振り返るとあの婦警さんだった。「この世界に留まったほうがいいわ。度を越した快楽はかえって地獄。どうしても行きたいなら、もっとこの世界で修行を積んで、退屈なまでになってからでも遅くないでしょ。」「…?」

 「何よ。分からないの? よく見てごらんよ、その看板を。」婦警さんに促されて、看板を見ると、「上り専用―下りは反対側の道を1.5キロメートルです」と書いてある。今目の前にあるのは、この第二世界からさらに奥へ行く上り電車で、その反対側をまっすぐ歩いて行くとあるのが、元の静かな世界に戻る「下り」電車なんだ。つまりこの階段から出てきはしたが、再びここを降りても一方通行、奥の世界にしか行かれない。戻るなら別の場所にある下り専用地下鉄に乗る必要がある。

 それにしても、ここで終わりじゃなくて、さらに奥があるとは驚きだな。

 「どうしても行くというなら止めはしないけどね。きっと後悔するわよ。レベルが低いうちに強敵ばかり出てくるステージに行ったら最悪でしょ。それと同じことよ。しばらくここにいなさいよ。そのほうが身のためよ。」「…。」

 「この地下鉄がどこまで続いているかは、実は誰にも分からないわ。30あるとも2000あるとも言われているの。深入りは禁物。奥に行けば行くほど、性霊たちは強くなり、またルールもなくなっていく。この世界は視覚誘惑で勃起したら犯してよいという厳格な決まりがあるわ。でも、次の第三世界に行ったら、そんな法律はなく、男を発見次第犯してよいことになってるの。しかも、奥の性霊は業と色欲のいっそう強い女たち。奥へ行けば行くほど、性霊は強力になる。もちろん淫気も数倍の濃さになるわ。満員電車のなかで勃起してしまう程度で、第三世界の容赦ない集団逆レイプの饗宴に耐え切れるはずがないじゃない。ここと同じくらい大勢の女たちが次の世界にもひしめいているわ。そんな中に今のあなたが行くのはあまりにも危険よ。それに、…これはウワサだけど、深く潜れば潜るほど、性霊たちも強化され、肉体の一部を改造したり、明らかに霊力とは違う力を身につけたりしている。第6、第7段階あたりからは、いわゆる女モンスターが目立ち始めるらしいの。魔性の快楽では人間の男はたちまち精根尽き果てるほど吸い取られてしまうわ。」

 「…。」僕のひざが笑っている。「分かった? 安易に上りの地下鉄に乗っちゃだめよ。しかも次は急行が来るわ。どこへ飛ばされるか分からない。階段も下りないほうがいいわ。奥の世界からの罠が張られていないとは言い切れないでしょ。一度行ってしまったら戻る前に吸い尽くされるのが関の山よ。」「わ、分かった。もうしばらくは近付かないようにするよ。忠告ありがとう。」僕は後ずさりしながらその場を立ち去って行った。性霊に身を預けるとはいっても、過度の快楽はたしかに危険すぎる。期待以上に恐怖が勝っていた。

 この第二世界では相変わらず性霊たちが視覚攻撃を仕掛けてくる。もっとセックスに慣れ、十分な段階になったら、楽しむために次の世界を考えよう。それまではこの世界で努力あるのみ。そう心に誓って、喧騒の中をふたたび飛び込んでいくのだった。


###パラレルワールド###



※ 「彼」が性霊界で永遠に生き続けることになったが故に、現実世界での性霊の問題は解決しないことになる。そして、ニシザワキョウコの怨霊はますます増加し、ここ一帯を性霊地帯に変えていくのだった。…でもそれはまた別の物語、ということになる。

 

 


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