戦意喪失プログラム 1

 


 「…つまり、この装置が例の新しいRPGなんだね。」「そういうこと。」

 僕の目の前には、大がかりな実験装置が置かれてあった。中心にカプセルが置いてあり、周囲には、よく分からない機械類が並んでいる。どう見てもゲーム機には見えず、SFに出てくるみたいな物質転送装置のような感じだった。

 佐久葉さんとは、つい最近知り合いになった。友達もおらず、学校から帰っても家族はけんかばっかりで、ろくなことがないし、一人ぽつんと公園のベンチに座っていたとき、このお姉さんが声をかけてきたのだった。

 佐久葉さんは親身に相談に乗ってくれた。学校も楽しくない、家にいても楽しくない、親は勉強しろの一点張りだし、そのくせ勉強しようとすれば、夫婦げんかの連日だ。うるさいし、いつとばっちりがきてもおかしくない。そんな僕の唯一の楽しみは、ひっそり隠れてRPGをやることだった。

 RPGはいい。現実のしがらみはないし、努力しさえすれば、よほどでないかぎりクリアできるから。高度な操作技術を要求しなければクリアできないRPGはクソゲーである。コツコツ敵を倒して、お金を貯めて、レベルを上げて、強い武器防具を買って、簡単な謎を解けばクリアできる、そういうのが一番いい。

 少なくともRPGは、現実世界みたいに、努力しても、成功しそうになって、いざ刈り取りの段階で運悪く外的な事情が邪魔してきて、全てが台無しになる、なんてことがない。がんばればがんばった分だけのことがある。理不尽も、裏切りも、偶然の不運もない。どいつもこいつも勝手なことばっかり言って僕を困らせることがない。あとから文句だけを言ってきてあらかじめは何もしないような、敵ばかりの状況の下で、いつのまにか僕一人だけが悪者になるなんてこともない。RPGはシンプルだからこそ、自分を裏切らないからこそ、すばらしいのだ! …現実世界もこんなだったらなあ。

 熱中していたゲームも、つい昨日、クリアしてしまった。もうやることがなくて、公園にいたのだった。

 佐久葉さんは、問題を抱えた小学生を救うために、相談に乗ったりいろいろな機関に掛け合ってくれたりする組織の仕事をしているのだそうで、ランドセルを背負って、夕方うす暗い中で公園にいた僕に、妖艶な笑顔で話しかけてきたのだった。

 最近、そういう小学生が増えているんだとか。佐久葉さんによれば、僕みたいなRPG好きの孤独な5年生にうってつけの、新作ゲームがあるのだという。僕は強い興味を抱き、翌日さっそく佐久葉さんと待ち合わせをして、彼女のオフィスについていったのだった。そこで案内された部屋に、この大がかりな装置があったというわけだ。

 「うふふ…これはね。”ヴァーチャルリアリティ”という技術を応用させて作った、科学の最先端を行く実体験ゲームなの。テレビ画面ではなくて、実際に自分自身が冒険しているような感覚を味わえる優れものよ。」「へええ! すっげえ!」「痛みと疲労だけは感じないから、ダメージは現実にはならないけど、魔法も自分の手で出せるから、臨場感は相当なものよ。」佐久葉さんは得意げにそう言った。どうやら彼女がシステムを開発したらしい。

 「ヴァーチャルリアリティの応用だけれども、この装置は実際に脳に作用して、夢と同じ状態でプレイヤーにゲームを実体験できるようになっているわ。だからこれだけ大がかりな装置になってしまったけれどもね。」「ふうん。」「安全性は保証済み。もう何人もの小学生男子がこの装置のプレイヤーになっているわ。」「じゃあ、大丈夫だね。」

 「ええ。ただし、このゲームは一度始めたら、途中では抜けられないわよ。一定期間を過ぎれば、夢から覚めたのと同じように自然に覚醒するけど、それまではゲームの世界から元には戻れないようになっているの。脳に作用するシステムだから、途中で強制終了なんてやれば、どんな悪影響が出るか分からないからね。」「うん。わかった!」

 「じゃあ、さっそく。」佐久葉さんは転送装置のような巨大なガラスのカプセルを開いた。「この装置は電波の関係で、全裸で入らないといけないの。」「う゛…」「まだそこは改善し切れていないから、ガマンして。」「わ、わかったよ…」恥ずかしかったけれど、信頼できる佐久葉さんの言うことだし、僕は導かれるままに服を脱ぎ、カプセルに入っていった。

 「いいかしら? このカプセルを閉じたら、何もかも外部からはシャットアウトされる。音も聞こえないし、周囲も見えなくなる。内部で特殊な電波が放出され、中の人は一瞬で眠りにつくわ。その先は夢と同じ感覚で、RPGの舞台に立っているでしょう。ゲームオーバーはなく、敗北しても無条件で復活するから、クリアするのも難しくはないはず。…つまり、これから君はまるで別世界に行って、そこで別の自分となって冒険してくるの。現実なんて忘れて、別人になりきって、楽しんでくるといいわ。」

 ひととおり注意事項を聞いた僕は、佐久葉さんに手を振り、笑顔で見送ってくれる彼女を見つめながら、新しいゲームに期待を膨らませた。

 カプセルが閉じると、本当に何も聞こえなくなった。外の騒音も機械の音も聞こえない。カプセルが完全な防音装置になっているんだ。

 ぷしゅー…

 霧のようなものがカプセルの中に充満していく。甘いいい香りだ。この中に佐久葉さんの言っていた特殊電波が出ているんだろうな。

 ブゥ…ウン! 「!」

 周囲の景色が変わり、真っ暗闇になった。振動はないが、まるで異空間を移動しているみたいだ。上に行っているのか、横に滑っているのか、よく分からなかったが、何となく動いているような感じがする。

 もちろん、実際に動いているんじゃなくて、僕が眠りに落ちて夢の中に入っているということなのだろう。そういえば眠る時って自覚はないけど、もし覚醒しながら脳が睡眠状態に入る時って、こんな感じなのかなあ。

 ぱあっ!! 突然目の前が明るくなった。一瞬混乱したが、次の瞬間、自分の立ち位置が分かった。

 僕はどこかの町の中に立っている。RPGに普通に出てくるような、田舎の町だ。むしろ村といったところか。ここがスタート地点で、魔王を倒すことが目標だな。

 所持金はゼロ。武器も防具もない…「あっ!」

 僕は思わず物陰に身を潜めた。何も装備していないどころか、全裸じゃあないか。「ひええ…どうしよう…」そうだ、防具の一番弱いやつに《ぬののふく》というのがあり、それすらも装備もしていないってことは、当然裸だってことにならないか。リアリティを追求するとなると、そんなところまで裸から再現されるのか。どうしよう、このまま外に出るのは恥ずかしいし、なにより絶対捕まる!

 「…むぅ…」まずは防具屋に行って、シャツとパンツとズボンだけでも揃えたいけど…そもそも僕は一文無しだ。これでどうしろっていうんだ。

 「…あれ?」周囲をよく見てみると、若者もオジサンも老人も、服を着ている人はそんなに多くないな。商人風の男や屈強な男性の中には服を着ている人もあるが、靴以外全裸という人も珍しくはない。どういうわけか僕はスニーカーと靴下だけははいているから、歩くのに不便はない。

 つまり、この世界では人前で裸になるのは珍しくないという設定か。こんな時は、セーブをしてから、思い切って飛び出すのが1番だ。けれども、どうもこのゲームにはセーブ機能がないみたいだ。セーブ機能があれば、間違った選択をして失敗した時にすぐにリセットができるんだけどなあ。

 あ、そもそも途中でリセットとか抜けるとかはできないんだっけ。しょうがない、仕様に合わせるしかない。

 僕は思いきって物陰から全裸のまま飛び出して歩いてみた。近くに座っていた男の子も裸だ。誰も僕を気にとめる様子はない。裸だからといって悪いとかそういう感覚はないらしい。それなら、その世界観に合わせて堂々としていればいいか。まずは最初の問題はクリアだな。

 それなら。「…まずは村の人に話を聞くか。」はじめにしなければならないことは目標設定だ。ゲームによっては自動的に目標が与えられることがあるが、自分で目標を探す必要がある場合もある。いきなり村の中に投げ出された格好なので、まずは《最終目標》と《当面の目標》を探そう。

 魔王の名前、どんな世界でどんな歴史があるのか。職業などがあるのか、お金の単位は。そういうことを情報として集めて、何をすればクリアなのかを確かめておく。もちろん仲間がいるのかどうか、どこにいるのかなども重要なことだ。

 その上で、目先の目標を探すんだ。隣の森にいるプチボスを倒すだとか、北の洞窟にある宝箱の石版を読むなど、その都度の目標を与えられ、敵を倒してレベルを上げながら小さな目標を達成していく。そのくり返しのうちに、ラスボスまで到達する道が用意されているわけだ。

 とにかく情報収集だ。その上で町の周囲の敵を倒してお金を稼がないとね。武器と防具を手に入れて自分を強化するんだ。

 僕は武器屋に入った。まずはお金の単位と、この村での武器の種類、値段を確かめる。その後に防具屋と道具屋に行って値段のチェックをする予定だ。それらの情報が、お金の「当面の目標数値」になる。

 「…。」「…。」店員は無愛想だ。ってか、こちらから話しかけないといけないんだっけ。元の世界みたいに店に入ったとたんにいらっしゃいませとか言われるわけじゃあない。こういうところにも慣れないとな。

 「こんにちわ。」「…何か用か、ボウズ。」うっわ、店のオヤジは話しかけても無愛想だった。「武器を見せて欲しいんだけど。」「なんで!」「いや、だって…、外のモンスターと戦わないと。」「はあ? 何言ってんだガキ! いいか、ここはもう店じまいしちまってるんだよ。」「えっ…」「当たり前だろうが。分かったら帰れ!」僕はけんもほろろに追い出されてしまった。なんなんだ。

 仕方ない、先に防具屋に行こう。僕は隣の防具屋に行って、青年に話しかけた。「あの、服とか鎧とか見せて欲しいんですけど。」「いらっしゃい。残念ながら鎧なんて高級品、ウチにはないよ。服も品薄でね。ま、最初はゴムから始めたらどうだ?」「…ごむ?」

 話しかけると自動的にお品書きが出てくる。僕は着られる服を探した。
 

 薄いブリーフ…15000ゴールド
 厚いブリーフ…20000ゴールド
 ビキニパンツ…25000ゴールド
 半ズボン…品切れ
 

 な、なんだこりゃ! 高い! 高すぎる! 風すら語りかけて来ねぇ!

 「…君、いきなり服は無理だろう。こっちを見なさい。」
 

 オブラートのコンドーム…35ゴールド
 紙のコンドーム…65ゴールド
 0.05ミリ厚コンドーム…100ゴールド
 0.1ミリ厚コンドーム…品切れ
 

 僕はさらに詳細を開いてみた。

 オブラート→一回使うと溶けてなくなる。防御力1ポイントアップ。
 紙→数回使うと破けてしまう。防御力2ポイントアップ。
 0.05ミリ厚→最先端の技術で作られた最薄のコンドーム。親切にも段締め構造。そのため価格は安い。永続。防御力2ポイントアップ。

 「…。あ、あの、こんどーむってなんですか?」「…はあ? バカにしにきたのか?」「いえ、そういうわけじゃ…」それにしても、こっちも結構高いな。「君ねえ、文句も言いたくなる気持ちも分かるけど、今はゴムや金属がとにかく品薄でね。素材の量が少ない0.05ミリの方が、0.1ミリや0.3ミリに比べて安いんだよ。3ミリなんてほとんど手に入らないから、結構な値段がつくよ。」「???」

 「あ、あの、ごめんなさい、実は僕違う世界からきたので、よく分からないんです。でも僕が魔王を倒したいんです。」「まおう? …君、本当に違う世界の住人みたいだな。何も知らないのか。」「はい。」

 防具屋の青年はため息をついた。「よし、私が大まかに話してやろう。いいか、魔王はもういない。」「…えっ!?」「今から数年前まで、ガーラグという魔王がいて、世界を恐怖に陥れていたが、勇者トロスの活躍で魔王は倒され、平和な世界になったんだ。」「そんな!」僕はこのゲームの魔王を倒しにきたのに、いきなり別の誰かがクリアしちゃってるじゃないか。クリア後の世界にきてしまったというのか。

 「悪いのはそれからだ。ガーラグは、トロスが自分の陣地の近くまでレベルを上げて迫ってきていることを知ると、側近に命じてあるプログラムを作っていたんだ。強力な薬剤とウイルスを混ぜ合わせ、そこに魔力を注入したやっかいなナノテクノロジーさ。名付けて、《戦意喪失プログラム》!!」「戦意喪失?」

 「世界中にばらまかれた戦意喪失プログラムはそれは恐ろしいものだった。微小な粉末がウイルスのように空気中を漂い、全世界を覆っている。その微小なプログラムは自己増殖しながら空気感染し、人間や魔物を根本から変えていったんだ。変化には何年かかかったから、その間にトロスが魔王を倒した。だが、ガーラグが残していった負の遺産は、確実にこの世界を蝕んでいったんだ。」…まだよく話がつかめない。

 「まず、このプログラムはモンスターたちの体内に入り込み、やつらを美しい女の怪物に変えていった。DNAに作用して、肉体の造りまで変えてしまったんだ。そしてその作用によって、ガーラグが倒されたのにモンスターが消えることがなく、今も世界中を徘徊している。プログラムはモンスターたちの体内で自己増殖を続け、彼らから吐き出されて空気感染を広めていった。もちろん、世界中の人間にも感染している。」「えっ!!」ってことは、インフルエンザみたいに僕にも感染しているってことかな?

 「幸い、男性には、感染だけでは何の効果もない。しかし、女性がこのプログラムを吸い込むと、体内で増殖し、感染・発病する。一定年齢以上の女性は若返った。そして…全員が極端に好色な性格になってしまったんだ。」「?」

 「ガーラグが作り出したナノテクノロジーは、もともと、自分に反抗し、自分を倒そうと挑んでくる人間の男たちを骨抜きにし、文字通り戦意を喪失させるために開発されたものだ。剣や暴力でモンスターを倒そうとする屈強な男たちでも、人間の女や美しいモンスターたちの色香を前にして戦意を喪失し、快楽にふけってしまうというわけさ。」「ああ…」何となく分かってきた。

 「このプログラムに冒されたモンスターや人間の女たちは、積極的に冒険者に《女の武器》を見せつける。その誘惑に負けて女を抱いてしまえば、極上の快楽で射精し続けることになる。そして、このプログラムは男性の体内にも入り込んでいるから、感染者とのセックスによって肉体に悪影響が出る。射精すればするほど、体力と気力が衰え、衰弱していく。そして、肉体の全てのエネルギーを精子に代えてしまった時、その男は消滅してしまう。一説では異世界に飛ばされるらしい。」「…。」

 「初めのうちは、あまたの戦士たちや、勇者トロスがこの悪魔のウイルスに挑み、剣や魔法で対抗していった。だが、人間の娘やモンスターレディたちの甘い誘惑に勝つことができず、次々と肉体関係におぼれていった。剣で斬りつければ人間やモンスターを傷つけることができ、倒すこともできる。が、どんなに暴力をふるっても、敵は反撃してこない。その代わり男性の性欲に訴え、しつこくセックスを迫るのだ。」ごくり…僕は生唾を飲んだ。

 「結局、あまたの戦士たちは戦意を喪失した。倒しても倒しても女の数はどんどん増えるばかり。どうやら別世界から人間の娘たちがやってきて、プログラムに感染していっているらしい。夜はもっと強いモンスターの女が相手になる。ついに耐えきれなくなり、戦士たちは剣を捨て、鎧を脱ぎ、女たちと快楽をむさぼった。化け物にのめり込みすぎて全てを射精しつくし、消えていった者もたくさんいる。」「そんな…」

 「勇者トロスの行方も分からなくなった。魔王がいた城まで乗り込むことができたという噂は流れたが、それから先の消息はつかめていない。もしかしたらもう…」青年は残念そうに下を向いた。

 RPGで、女性型モンスターが色香を使って冒険者を混乱させるケースは結構ある。通常は、《混乱》ステータスとなって、味方を攻撃し続けるなどの効果がある。しかし…今度の場合はそうではない。全ての敵が誘惑攻撃をメインで仕掛けてくるんだ。そして快楽におぼれたら、生命エネルギーを消耗して死んでしまう。

 ちょっと待って。それってかなりアダルトな設定じゃあないか。僕は5年生だぞ。絶対ふさわしくないじゃあないか! どうなってるんだ。

 だが、このゲームは途中でやめることができない。仕方ない、一定時間を待つしかないか。でも、一定時間って、一体どのくらいなんだろう。

 「今では、魔王がいた城には淫魔の世界からきた女王が棲みついているらしい。そして、戦意を喪失した男ばかりになった世界は、もはや魔の者に逆らおうとはしなくなり、現在に至るというわけだ。だから武器屋はほとんどが廃業。ただ、男たちも自衛しなければならないから、全ての町から女性を追い出し、特殊な魔法防壁をはって、男性しか入れないようにしてあるんだ。」…そう言えば、あたりを見渡しても男性しかいないな。男の子、青年、老人等々、男ばかりだ。

 「町の中にいれば、とりあえずは安心だ。しかし、町の外側、防壁から一歩でも出れば、いつどこで女に襲われるかは分からない。どうしても外に出なければならない場合もある。物流が必要だからね。そんなときは、しっかり防御の準備をして、覚悟して外に出なければならない。そのための防具のひとつが、コンドームだ。これは性感ダメージを軽減してくれるから、女と交わっても射精の頻度が少なくて済むし、運良く逃げることも、果敢に誘惑をはねのけることもできる。そうして目的の町までたどり着いて魔法防壁に入ってしまえば再び安全になる。ただ…」「ただ?」

 「考えてもみなさい。人間世界は所詮男と女。協力し合い、愛し合ってこそ成り立つ。しかし今は、魔のプログラムのせいで、性的に対立している。そんな状況じゃあ、まともに経済が成り立つわけがない。物資は極端に不足し、とりわけ女たちとの性的な戦いなどに必要な物資は不足し、極端に値上がりした。10年前までは誰もが当然のように身につけていた衣服も、女たちにはぎ取られ、男性用の生地も品薄になり、遠く旅をする必要のある商人や、金に糸目をつけない金持ちくらいしか、上下フルで衣服を着られる人はいなくなった。あとは私みたいにパンツ一丁の者や、君のように全裸の者ばかりになったというわけさ。」…これで、町中を裸で歩いても許される理由が分かった。

 「唯一手に入りやすい防具がコンドームで、これは君のペニスを覆って快楽から身を守るものなのだが、もともとは妊娠の調節をしたり性病を防いだりする大切な道具だったのだよ。今やただの防具に成り下がっている。それとて、特にゴムや金属は品薄になり、コンドームは値上がりした。遠くの町には鉄のコンドームなども売られているらしいが、目の玉が飛び出るほどの値段だ。」「コンドームってそういうものだったのか。」

 それにしても、そんな世界観では、僕なんかが冒険をしていいわけがない。仕方ない、一定時間が過ぎるのを町の中で待っていようか。あ…でも、泊まるのにも金が要るな。「ここではお金ってどう稼ぐんですか?」

 「正直、まともな仕事は望めないよ。食料は何とか間に合うが、食料については組合ががっちりしていて、まず新規参入はできない。武器屋は廃業だらけ。防具屋や道具屋はなりたい男が多く、競争が激しい。アルバイトで雇われることもないだろう。ほとんどの場合が、町から町を渡り歩いて仕入れをしながら売って歩く独り身タイプだ。私のように店舗を構える方が珍しい。もちろん、私も誰かを雇うほどの余裕はない。だから、結局は冒険をするしかないね。」「冒険?」

 「お金は人間の女が持っている。武器がない以上、性的な戦いをして、相手を満足させればゴールドがもらえる。もちろん、殺しても金品を奪うことができる。好きな方を選べるが、まぁ前者の方が絶対いいだろうね。」「でも、僕、小学せ…10歳ですよ? コドモなんで、そういうことは…」「そこは大丈夫だ。女たちは子供だろうが年寄りだろうが、男でありさえすれば容赦ない。プログラムのせいで、0歳でも100歳でも射精はできるからね。」「そんな…」

 正直、性のことは多少の興味はある。クラスメートのミニスカートや生足が気になったり、パンツが見えたら顔が真っ赤になってしまう。でも、結局何がどうなっているのか、まったく分からないんだ。そんな状態で、一体どうやってこの世界を乗り切っていけるんだろう。

 「村の北の方に宿屋がある。宿泊は4ゴールドだったはずだ。少し外に出て2,3人の娘を倒せばそのくらいは稼げるだろう。見たところ君は1ゴールドも持っていないみたいだから、稼ぐんなら早く出発した方がいいだろう。他の人の話も聞いておかないといけないだろう?」「そう、ですね…」

 「言っておくが、夜は絶対に外に出るなよ? 昼間は人間の娘が徘徊して、外にいる男を襲うが、夜になったら敵が変わる。人間たちは寝静まり―どこかにねぐらがあるらしい―、その代わりに昼間眠っていたモンスターたちが徘徊することになる。モンスターたちは人間よりも強力だ。パワーも、誘惑力も、性的な力もだ。」「そんな…」確かに昼か夜かで敵が変わるゲームもあるけど…防具屋の青年の言うとおり、お金は日没前に宿泊代だけでも稼いでおく必要がありそうだ。

 僕は防具屋に別れを告げ、町の真ん中にある教会に出向いていった。防具屋の青年が、周囲の敵の状況を知るのには教会が1番だと教えてくれたからだ。もしかしたらセーブもそこでできるかもしれないしね。

 「ようこそ…」神父さんは暗い顔で僕を見つめた。「嗚呼、こんな時代、神に仕える者が淫らな行為に目を向けなければならないとは、何という試練でしょう。いずれこの暗黒が晴れますよう、今日も祈ります。…して、何のご用ですかな?」メニューが出る。
 

 毒の治療…10ゴールド→催淫毒を解毒します
 呪いを解く…50ゴールド→淫呪を解きます
 おつげをきく→次のレベルまでを確認
 お祈りをする→つぎの区切り時間を確認
 周辺情報…20ゴールド→周囲の女敵の情報を得る

 

 げっ。周辺情報は有料か。「ってゆーか、セーブはないんですか?」「西部? 西にはコロポックルの森がありますが?」「???」

 どうやら本当にセーブ機能はないらしい。とりあえず無一文なので、お告げと祈りはしておくか。

 「お告げですね。…次のレベルになるまで、あと10ポイントの経験値が必要ですが何か?」「なるほど。」次に祈りだ。「お祈りですね。次の区切り時間まで、あと9億9999万9999年364日と23時間30分ですが何か?」「えーーーっ!」

 佐久葉さんは一定時間が経過するまで途中でやめることができないと言っていた。その一定時間というのは、10億年なのか。ゲームが始まって30分が経過しているから、たしかに残りは10億年−30分だ…。

 ゲームなので設定は別として何時間プレイしても年は取らない。たぶん時間の流れ方も違うから、こっちで10億年と言っても、リアルではまるで時間が経っていないのだろう。そうでなければこの設定はおかしい。人間なんて生きて100年だからね。

 いやいや、それでも、この別世界でも、10億年はないだろう!? ほぼ無限じゃあないか。一体どうなっているんだ!!?

 わけが分からないが、それでも、結局今の世界からはどうあっても抜け出せないみたいだ。

 まだ、どうなっているのか混乱が続いており、目の前の状況を受け入れられないでいる。しかし、とにもかくにも、目の前には《宿屋に泊まる》という課題がある。とにかく4ゴールド稼いで、宿屋に着いたらそこでゆっくり考えよう。自分の状況、これからどうすればいいのか、を。

 日没まで、あとどれくらいだろう。こういう、昼→夜の変化は、突然起こるからな。とにかくすぐに外に出て、堅実に戦闘してゴールドを稼がないと。考えるのはその後だ。

 僕は町の外に出た。始まった時間帯はどうやら午後4時くらいといったところだ。日が相当傾き始めている。寒くはない。痛みや疲労といった苦痛感覚は生み出されないんだった。

 そろりそろりと歩く。町の周辺を歩いて、危なくなったらすぐに逃げ込めるようにしておく。レベルが上がり、お金を稼ぎ、自信がつけば、目標を定めて次のポイントまで進めばいい。今は地道に戦うのみだ。戦い方は、@通常攻撃(剣や魔法などで物理攻撃によって殺害または気絶させれば勝ち)A性的戦闘(相手の女を性的に満足させれば勝ち…満足させるってどういうことだろう?)B戦意喪失(女の誘惑をかたくなに拒み、相手をあきらめさせる)、以上3パターンがある。

 いずれで戦っても自由だが、実質@はない。武器を持っていないし、子供では女であっても大人には敵わないからだ。それに、屈強な戦士たちでも、@に頼って戦いを進めた結果、ゆくゆくは立ちゆかなくなって、結局誘惑に負けて自滅していったじゃないか。可能な方法ではあるが、これに頼るのは得策ではなさそうだ。ってことは、AかBで敵を倒していかなければならない。

 でも、Aは、どうやって戦うのか全然分からない。ほとんどピンと来ないんだ。やっていくうちに分かるのかもしれないが、危険でもある。やはり、Bの方法で、かたくなに無視すればそれだけで勝てるんだったら、それが1番楽そうだし、初めのうちはこの方法で堅実に勝ち進めていった方が良さそうだ。

 「ねえ、ぼうや。」歩いていると、そばで女性の声がした。立ち止まってみると、草むらの陰で腰を下ろしている全裸の女性がいた。20代後半といったところで、お母さんより少し若いくらいかな。

 「ちょっとあたしと遊んでいかない?」…これが戦闘、なのか? いまいちピンと来ないな。

 女性は草むらの上に尻餅をつき、両足を開いて、自分の股間をまさぐっている。見ると、彼女の股間にはペニスはなく、その代わりに貝のカキのようなピンク色のぐちゃぐちゃしたものがそこにはあった。

 「ほら…よく見てよ。すごいでしょう?」「えっ…」何がすごいのか、全然分からない。むしろ、僕の肌色の小さなペニスに比べて、とても恐ろしい感じがした。周囲にたくさん毛が生えており、なんだかごわごわしている。女の人の股間は初めて見たけど、何も感じないどころか…「なんか、気持ち悪い…」「なっ、なんですって!」

 女性は立ち上がった。「私の裸を見ても何も感じないの!? 何でソコが反応しないのよ!」「さっ、触るな!」僕は女性の手を払いのけた。彼女が僕の股間に手を伸ばしてきたからだ。

 「胸だって自信あるのよ?」女性は自分の胸を両手で抱きかかえて強調した。でも、しょっちゅうお母さんとお風呂に入っていて、オッパイは見慣れている。別に何も感じなかった。

 「くっ…」女性は顔を真っ赤にしている。自分の魅力が通用しないことに相当いらだっているみたいだ。戦いって、この程度?

 「じゃあ、これならどおよ!?」突然女性は僕に抱きついてきた。ぐにゅっとオッパイが僕の顔でつぶれる。けれども、それだけでは「だから何?」って感じだったし、この世界では敵が抱きついてくるということが恐怖であったため、すぐに突き放した。

 「あっ、そう。アンタ、セックスを何も知らないのね。いい? そのおちんちんを私のココに入れて気持ちよくなるの!」「えー…やだよそんなの。」「そ、そんなの!?」女性はわなわなと震えている。

 「もういい! もっとちゃんと勉強してから来なさいよ! そしたらかわいがってあげるから! …これだから無知なガキは…ったく」ぶつぶつ言いながら女性は去っていった。彼女が座っていた足下には小さなコインが一枚輝いている。金色で、数字の1が書いてある。僕は1ポイントの経験値を獲得、1ゴールドを手に入れた。今のは、「見せ女」という弱い敵らしい。

 よし、この調子で誘惑をはねのけよう。どうもよく分からないけれども、要は見ても何にも思わず、拒否すれば向こうもあきらめてくれるみたいだし。

 「ねえ、キミ、これを見て。」道ばたに立ち、両足を広げて性器を見せつける全裸の女性がまた現れた。「やっぱり気持ち悪い。」僕はそう言って冷たくあしらった。そして、絶対に体を触らせないよう、抱きつかれないように気をつけながら、女性の体を見続けた。何がいいのかよく分からない。そのうち彼女も怒って立ち去ってしまった。

 これで2ゴールド。あと半分、しっかり稼がないと。

 「ちょっと、ボク!」僕の目の前に立ちはだかり、やっぱり気持ちの悪い性器を押し広げて陰毛混じりのヒダを見せる女性が現れた。背の高い彼女が腰を突き出すと、異臭のする股間が目の前に迫ってきた。

 「おえっ、汚いし臭い!」「なっ、てめえ、ずいぶんな言いぐさじゃないか! 覚えてろよ!」この女性も半泣きで走り去っていった。…もしかして僕、今かなりひどいコトしてる?

 小さな罪悪感を抱えたまま、貯金は3ゴールドになった。よし、あと一人だ。

 「あの…」後ろから声をかけられた。ふり返ると、僕と同じくらいの女の子が立っていた。「こ、こんにちは…」「えっ、あ、こんにちわ…」彼女はおとなしく挨拶してきたので、僕も思わず頭を下げた。

 僕と同じくらいの年頃で、学校のクラスのどこにでもいそうな女の子だった。「村の小娘」と呼ばれる、性の知識が僕と同じくらい乏しい子供だ。かわいらしいクリーム色のワンピースのロングスカート姿で、髪の毛を三つ編みにしている。とびきり美人というわけではないが、素朴な感じのするおとなしい娘だ。

 これもさっきのと同じように、戦うべき敵なのか。そうだとすると、気を引き締めないといけないとも思うし、素朴な女の子のかわいさにも気を引かれてしまう。さっきみたいな気持ち悪い大人じゃないだけに、どうしても意識してしまうのだ。

 「あの、もしよかったら、私に触っていただけませんか?」「えっ…」「ここを…」女の子は恥じらいながら、スカートをゆっくりとまくり上げていった。細い足がだんだん膝から上へとあらわになっていく。「だっ、だめ…」僕は後ずさった。しかし、自分からまくり上げる彼女のきれいな足に釘付けになった。

 生足がどんどんあらわになり、その先の白い生地まで見え始めた。小さなパンティを穿いており、それを真ん中まで見せて、ワンピースをつまむ指先は彼女の肩あたりまで来ている。恥じらいながらときおり僕の目とペニスを見つめるうつむき加減の表情がいじらしかった。「お願いです、触ってください。」「うぅ…」

 同じくらいの年の女の子に露骨に誘惑される。その興奮が僕をかき立てた。そして、この戦いの本当の熾烈さを身をもって思い知ることとなった。さっきまではあまりにもずるい戦い方であった。

 ペニスが反応し始める。股間の奥が少しくすぐったくなると、ペニスが半立ちになった。すると女の子はさらにワンピースのスカートをまくり上げ、かわいらしいおへそまで見せてきた。そこへ来てペニスはピクピクと小さくはねながら、完全に勃起してしまった。

 ブゥン! 「なっ!」突然僕の周囲の空間がゆがんだ。まるでガラス張りの世界の中にいるみたいに、水槽の中にいるみたいに、周囲の風景が屈折して見える。僕は確かめようとしたが、透明の壁のようなものに阻まれ、進むことができない。

 「さあ、さわって。」「!」僕のすぐ後ろまで女の子が迫ってきていた。僕のすぐ近くで、目をじっと見つめながら、手で触られるのを今か今かと期待している。僕は後ずさろうとしたが、水槽の中にいて、透明の壁に阻まれてこれ以上後ろに下がれない。前方目の前には女の子が迫っている。「あら。ご存じないみたいなので言いますけど、戦闘中に勃起したら、もう逃げられないんですよ、私を満足させるか、あなたが力尽きるか、どっちかですよ。さ、いっぱい触ってくださいね。」

 そうだったのか。これまでは大人のグロテスクな性器を見ただけで勃起しなかったため、すぐに敵はいなくなったし、その気になれば逃げることもできた(追われて捕まったり回り込まれたりしない限り)。しかし、勃起してしまうということは、その女敵に欲情したということであり、もはや逃げることができなくなる。相手を満足させるか、ペニスを萎えさせるかしない限り、周囲に壁ができてしまう。そうなれば、敵を満足させるなどしなければならないわけだ。

 つまり、Bの方法は通用しないということだ。こちらが勃起しているのに敵があきらめることはないからだ。立っている限り敵にはチャンスと映るだろう。

 そうなれば、もうAで戦うしかない。でもどうやって? …とりあえず、相手の要求どおり触っていくしかなさそうだ。

 僕は片手で女の子の生足をさすり始めた。「おお…」スベスベした女の子の足はシコシコした肌触りを僕の手のひらに伝えてくる。前方も内側も後ろがわも、女の子の太ももはとてもやわらかかった。細い足がぶるっと震える。「あっ…もっと…お願いします。」女の子も顔を赤らめながら興奮している。僕の勃起もますます強くなった。

 触っていると、彼女の足の感触が何とも心地よい。しかし同時に、彼女の方も触られると心地よく感じているみたいだ。

 しょっちゅうではないが、親に内緒で自分のペニスをいじったことはある。ゾクゾクする心地よさに包まれ、さらにそれをしばらく続けていると、急に体の奥がくすぐったくなり、ペニスが強く脈打つことがある。その直後とても幸せな気分になれることを思い出した。

 きっと、彼女の場合も、これと同じように、心地よさを与え続けているとある時突然強い幸せに包まれるのだろう。「満足させろ」と防具屋が言っていた。満足とはきっとそのことを指すに違いない。

 よし。もっとどんどんさすってあげよう。僕は両手で彼女の両足を、特に内側をなで続けた。「あ、…くすぐったい、です。いいきもち…もっとさすって。」僕は言われるまま彼女の足を愛撫し続けた。ペニスははち切れんばかりに膨張し、苦しがっている。

 「あの、手、だけじゃなくて、その、ソコを、私の足にこすりつけてもいいんですよ? このままじゃ苦しいでしょう?」彼女の言うとおりだ。くすぐったい疼きがペニスの奥で憤っている。

 僕は思わず彼女に抱きついた。そしてその右足を、僕の両足で挟み込んだ。シコシコした感触がダイレクトに僕の内股に広がる。「ああっ!」僕は思わず彼女の足を強く挟み込み、ゆっくり上下に動かしながらペニスを彼女の太ももにすりつけ始めた。

 そのとたん、強いくすぐったさが股間に広がっていくのを感じる。女の子は簿奥にぴったり密着し、背中に手を回して、右足を突き出し、僕の動きに身を任せてくれた。僕も彼女を強く抱き、いとおしい小さな体から受ける快感に酔いしれていた。

 「あっ、あっ、なんか来るっ!」以前自分のペニスをさすっていたのと同じ強いくすぐったさが訪れた。僕は彼女を強く抱きしめたまま、快楽に身を任せた。

 ぴゅるっ!

 ペニスから白い液体がほとばしり、彼女の足に振りかけられた。初めて見るものだった。

 「えっ、なにこれっ!」「くすくす…これが精液ですよ。男の人はみんな気持ちよくなったら出すんです。」「これが…射精…」精液を出したのは初めてだった。「この状態をイクと言うらしいですよ。この世界では誰でも男であれば射精できますからね。気持ちよかったでしょう?」「…うん…」「くすくす…」

 ペニスは萎えることなく、射精がなかったかのように勃起し続けている。例の魔のウイルスプログラムという奴で、イク快感を味わってもずっと萎えることなく、何度でもイクことができるらしい。

 「さあ、もっとこすり合いましょう。」そういうと彼女は道ばたに仰向けに寝た。床部分も透明のガラスのようなものが張り巡らされており、土や砂に直接触れることがなく、寝ても痛くなかった。

 女の子はワンピースを脱ぎ捨て、仰向けで僕を誘った。「今度は、私のおなかでこすってください。」ぺったんこの胸、スベスベのおなか…呼吸のたびにふくらんでいる。

 僕は彼女のおなか部分にまたがり、彼女の頭の両側に手をつくと、全身をゆり動かした。するとペニスは女の子のおなかにこすりつけられる。やわらかくてスベスベした肌触りが直接ペニスにこすれていく。

 女の子は僕のお尻をくすぐったくさすり、潤んだ瞳で僕を見つめている。そのいじらしい表情にほだされ、女の子の体の感触に感極まって、あっという間に射精してしまった。僕は彼女がいとおしくてたまらなくなった。

 いつの間にか彼女はパンツを脱いでおり、ツルツルの性器をあらわにしていた。好きな女の子の性器は、どうなっているんだろう。さっきの大人たちみたいなのだろうか。ちょっとだけ心配になった。

 しかし、彼女の股間はえもいわれぬ美しさだった。きれいな割れ目、毛の生えていない表面、ピンク色のヒダ、どれをとっても僕を興奮させる。

 「私、よく知らないんですけど、大人になるとちょっと変わるみたいです。でも、きらいにならないでください。」「嫌いになんてなるもんか。」

 僕は思わず彼女に抱きついてしまった。両足が激しく絡み合う。僕は彼女の性器にペニスをこすりつけるようにしながら、性器の割れ目、腰、おなかにいたるまで、ずりずりと全身を彼女にこすりつけた。「ああっ、もっと、もっとこすってくださいっ!」女の子は全身をのけぞらせたり小刻みに震えたりしながら気持ちよくなっているみたいだった。

 そうだ、この戦いでは相手を気持ちよくしなければならないのであって、自分が気持ちよくなってしまっては負けなのだった。気を引き締めて、しっかり彼女を心地よくしなければ。

 しかし、女の子特有のやわらかさや、スベスベの肌触り、性器表面の絡みつくような感触は、僕の理性を奪い続けていた。僕の体は強く彼女に押しつけられこすりつけられ、ペニスは相変わらず女体を滑っている。

 「あっ、ああっ! そこがすごいですぅ!」ペニスが女性器のある部分をこすれると、特に彼女は強く感じてくれた。腰の動きを調節して、その場所に肉棒が強くこすれるようにしてあげた。性器表面に小さな突起があり、そこにペニスが触れ、強くこすられると、女の子はひときわ強く悦ぶようだった。僕はその部位をしっかりこするように調節し、動きを小さくしてその部位だけを責めるように腰を動かした。

 「ああっ、もう、私も、イキますぅ!」「僕もっ!」びゅくっ! 射精の方が早かった。ぬるぬるした自分の体液がペニスをしめらせる。僕は射精してもかまわずに腰を前後にこすりつけ続け、女性器表面の小さな突起をひたすらこすり続けた。

 「あっ、イクっ、イクっっ! くうう!」女の子は大きく体をのけぞらせると、ビクっと震え、そして脱力した。

 「はあっ、はあっ…よかったです。気持ちよかった。ありがとうございます。」「え…あ…」僕は女の子から離れ、彼女のそばに尻餅をついた。「私たちは、魔王の戦意喪失プログラムに冒されていることを知っています。このウイルスが体内で増殖すると、体が男の人との快楽をほしがってたまらなくなるのです。ガマンができなくなるのです。だから、どうしても、耐えきれずに、男の人に、恥ずかしいけど、いけないことをお願いし、誘惑し、快楽を分かち合うのです。」「…。」

 「そして、私たちは一回イクと、少しの間、ウイルスによる性欲の呪縛から解放されるんです。疼いて男の人を求めなくても済み、とても楽になります…精神的にも肉体的にも。だからこそますます強く男の人をほしがります。」「そう、だったのか…」「残念ながら、ウイルスに冒された女性は、自分で慰めたり、女同士で慰め合っても、決してイクことはありません。かえって性欲の疼きが強くなり苦しくなるだけです。」「それで…」

 「はい。それで、どうしようもなくなって、通りすがりの男性に、誰であっても、必死で性を求めるのです。」なんてことだ、彼女たちも相当に苦しんでいるのだった。「中には、この性欲を楽しむ女性もいるみたいですけど、多くの人は、本心は苦しいのです。だから、お願いです、この世界の女の人を嫌わないでください。私たちを、助けてください!」「…!」

 「ウイルスは自己増殖し、世界中に蔓延しています。しかし、そのプログラム情報を書き換えるような別のプログラムをぶつければ、戦意喪失プログラムを中和することができます。」「何だって!?」「この情報はウイルスに冒された女性が自動的に認識するものです。だから女性たちはみんなこのことを知っています。」「じゃあ、その新しいプログラムを作れば、この状況を何とかできるんだね?」

 「そう簡単ではありません。元のウイルスは人体にもモンスターにも作用を及ぼさないものですが、そこに強烈な薬剤が加わり、作用を増幅させ、人間の性欲を支配しています。その上で、魔王の魔力が込められ、ガードされています。だから、ウイルスに付け加えられているプログラム情報をきちんと書き換えるためには、まずは中和するための正確なプログラムを入手し、その上でコーティングされている魔力を引きはがし、直接ナノ情報に中和プログラムをぶつけなければなりません。」「そんな…」人間にそこまではできない。

 「その方法、つまりちゃんとした中和プログラムを作る方法は、元魔王の城の中に隠されています。そこは淫魔の世界から来た恐ろしい女の怪物たちが大勢張り込み、守られています。その包囲を解かなければなりません。…私たち感染者は、そこまでの情報を自動的に知っています。が、具体的にどうしたらいいかまでは分からないのです。そしてもどかしいまま、性欲に支配され、あくせくと男性を求めるしかないのです。」「なんてことだ…」

 「お願いです、私たちを、人間を、助けてください。おねがいです…」「…分かった。幸い時間は10億年と、たっぷりある。どんなことがあっても、魔王の城に乗り込み、中和プログラムを手に入れてみせる。それまで苦しいだろうけど、がんばって欲しい。」「ありがとうございます、お願いします…。」

 女の子は立ち上がり、パンツとワンピースを着た。「私はあと数時間は性欲から解放されるでしょう。その間、少し休みます。性欲に支配されていても夜には眠くなりますが、寝れば寝たで、一晩中淫夢に悩まされるのですから。」僕はわなわなと震えた。戦意喪失プログラムという、悪魔のナノ兵器が、この世界の全ての女性と、その女性に襲われる男性を、これほどまでに苦しめていることを知ったのだ。

 絶対レベルを上げ、謎を解いて、中和プログラムを手に入れよう。そう心に強く誓った。

 「では、私は失礼します。またどこかでお会いできたら、そのときはまた触ってくださいね。」「…。」「そうそう、戦わず勃起せずに女の人を遠ざけることもできますが、もらえる経験値は半分になります。しっかりとイかせたら経験値もフルでもらえます。ゴールドはどちらでも変わりません。レベルが上がって、弱い敵を遠ざけるなら、勃起せずに撃退すればいいでしょう。そうでないなら、私たちのために、しっかり戦ってくださいね。」「ああ。分かった。」「では。」女の子は一礼をして去っていった。2ポイントの経験値、1ゴールドを手に入れた。

 これではっきりした。さっきまでの「見せ女」の本来の経験値は2から3ポイントだ。それよりも弱い「村の小娘」は経験値2ポイント。ゴールドはそれぞれ1ずつ。ちゃんとレベルを上げるなら、しっかり敵の女を満足させる方法しかない。そのために僕の方も、性的なことを勉強しないといけないな。

 戦いは始まったばかりだ。もっともっと知らなければいけないことがあるし、考えなければならないこともある。今日はもう日が沈むから、宿屋に泊まって、しっかり情報を整理しよう。ちょうど4ゴールドたまったしね。

 僕は町に戻り、宿屋に向かった。途中ですっかり夜モードになる。ここで外出したらたいへんなことになるのだった。とにかく宿屋に泊まり、そこでじっくり考えることにしよう。

 

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