戦意喪失プログラム 8
仮エピローグつき
「2分経過。」全身がほんのりくすぐったい。股間の奥が疼く。
ビジュアル担当たちは腰をくねらせたり、乳房を揉んだりして、視覚的な誘惑を強め始めた。
「3分経過。」汗がにじみ出てくる。全身を包み込む心地よい感触と、目の前の女体の美しさに、僕は負けそうになる。必死で欲情を抑え、半立ちのペニスをこれ以上立たせないよう踏ん張った。
抑えても抑えても、全身の神経はだんだん敏感になってくる。女の子たちの体の感触が、ますますはっきりと僕の体に叩き込まれ続けていた。ペニスを包み込む二人の体も、太もものシコシコした感触や、乳房のふくらみでさえ、ペニスの各部位で感じ取ることができた。
「4分経過。」「がんばれー!」目の前の3人が、それぞれ自分のオンナを両手でまさぐり、オナニーを始めた。しっとりした視線で僕を見つめ、僕の体を求めている。彼女たちの小さな手の間から大量の愛液がこぼれ落ち続けていた。
「ああっ…」コロポックルたちの一人遊びを目の当たりにして、僕は彼女たちに性的な興奮を覚えた。だめだ、押さえつけないと…
「にゃはは、大きくなってきたよー♪」「もうすこしだねっ☆」ペニスを包む二人がうれしそうな歓声を上げた。ペニスは少しずつ大きくなり、亀頭が勝手に彼女たちの体を滑っていく。するとペニスには、コロポックルの肢体の感触がこすれ、その弾力に刺激されてしまう。
「ううっ、だめだ、立っちゃだめ…くっそ…」僕は必死で踏ん張った。だがそれでも、海綿体への充血を止めることができず、勃起していく小さな脈打ちは徐々に早くなっていく。亀頭はすでに、二人のコロポックルたちの乳房の上まで達していた。僕はぎゅっと目を閉じて、全身に力を込め、欲情に抗った。
そのとたん、股間にくすぐったい感触が走った。ペニスを包み込む二人が、スクワットの要領で、半立ちのペニスを全身でこすりあげてきたのだ! 半立ちのペニスが最後の仕上げといわんばかりに刺激され、ムリヤリにでも刺激されて立たされていく!
「ひゃああ! だめ! ずるいよそんな…!」「何言ってんのよ。目をつぶったら動くって言ったじゃない。」「…あ。」
ついに亀頭は、コロポックルたちの目の前まで隆起し、硬くそそり立ってしまった。
「ほい。4分46秒。ご苦労様。」「立っちゃったんだからしょうがないよねー。」「ボクたちとエッチなことしたいって思ったから勃起したんでしょ。」「その望み、全員で叶えてあげるねっ☆」
ほかの妖精たちも動き始めた。全員が、肉体を、オンナを、僕の体に押しつけこすりつけ始める。「うああっ!」想像以上の気持ちよさだった。ぴったり張りついているだけでも、吸いつくようなきめの細かい肌触りだっただけに、それがうごめき僕にこすりつけられると、全身がスベスベのムニムニでこすりあげられ、快感が急激に高まってしまう。
乳房が、お腹が、腕が、生足が、お尻が、性器が、全身のあちこちでこすられている。どこもかしこもやわらかくツルツルで、心地よい弾力を備えていた。
ペニスを包む二人も勢いを増していた。上半身をいやらしくくねらせながら、なまめかしく上下運動を繰り返している。いやらしいおっぱいがカリの敏感なところに張りつき、執拗にこすりあげている。生足は根本から中間をぎゅっと挟み込み、執拗にしごいてくる。亀頭を撫でる4本の小さな手は、尿道口まで含めてくすぐったい刺激を執拗に送り込んできた。
徐々にスピードが上がり、セクシーな動きで強く女体が押しつけられている。玉袋に抱きついたコロポックルは全身を丸めて、手足であちこちをくすぐりながら揉んでくれている。アナルにも両手が張りつき、くすぐったいところを見つけ出してはコショコショしていた。
僕の腕にも、脇の下にも、わき腹にも、背中にもお腹にも、両足にも、足の裏にさえ、びっしりと妖精たちが大勢張りついている。彼女たちが思い思いに全身をうごめかせ、毛の生えていないぬるぬるの性器をこすりつけている。一気に全身のすべての性感神経が刺激された。
「えへへ。」一人のコロポックルが亀頭の上に乗り、あぐらをかいて座った。いやらしい秘貝が、ちょうど尿道口のところに張りつき、押しつけられる。そして彼女は、両手でカリヒダをまさぐると、一気にぐりぐりと力強く手のひらで刺激を加えてきた。「んあ!」ピンポイントでのくすぐったい刺激に、僕は耐えきれるはずがなかった。
ごぼぼ! 精液が尿道口から一気にあふれかえった。だが、その入り口はすでに小さなワレメにふさがれている。尿道口の大きさと、妖精の性器の大きさが同じだった。ぴったり密着し、融合しているみたいに離れないので、体液は一度彼女の膣と子宮を通ってから、わずかな隙間を縫うように、彼女の両足付け根からこぼれ落ちるのだ。
出し終わるまで、妖精のいたずらな手は動きを止めなかった。もちろん、ほかの妖精たちもなまめかしい動きを続けたままだ。
快感で頭の中が真っ白になった。一気に出し尽くし、出し終わるとぐったりしてしまう。
それでも、妖精たちは動きを止めなかった。交代でペニスに張りつき、二人が棒をしごく担当、一人が亀頭に乗っかって両足で先端を包み込みつつ、両手でペニスの敏感なヒダを力強くまさぐる担当、合計3人がかりで、ペニスを包み込んでしごき、締め付け、心地よい刺激を送り込んできた。もちろん尿道口には、妖精のワレメがしっかりあてがわれている。
ペニスは無理にでも立たされ、刺激されている。玉袋も会陰もアナルも、全身くまなく小さな女体の餌食になった。さっきと同じ刺激で、僕は再び高められた。
ぴゅる。同じように精液が妖精の体を通ってしみ出していった。するとコロポックルたちは股間に集まり、一滴残らず精液を舐めとって、きれいにしてしまうのだった。
連続で二回抜かれたためか、わずかに冷静さが戻ってきた。じっくりと小さな女性たちの動きを見ることもできた。
よく見ると、ところどころで妖精たちが交代しているのが分かる。顔を上気させ、いやらしい叫びを上げたかと思うと、ぐったりしてしまう美少女妖精。この子は、僕の体に女性器をしきりに押しつけこすりつけて、表面の刺激に耐えきれず、絶頂を迎えたのだ。そうすると周囲のコロポックルたちが協力して彼女を抱きかかえ、ベッドからおろしていく。そして再び、別の妖精がその場所に張りついて僕の体に全身を押しつけこすりあげるのだ。
何が行われているか、ようやく分かった。彼女たちは同時に3つのことをしているのだ。
ひとつは僕を勃起させては精液を奪い、僕をゲームオーバーに導く行為。このまま行けば僕は確実に、精根尽き果ててしまい、完全に淫魔の虜となって、二度と元の世界には帰れなくなる。彼女たちはプログラム通り、僕に快感を送り込んで射精させようとしているのである。
ふたつ目は、文字通り交尾である。亀頭にはりつくコロポックルは、どうやら選ばれた娘のようだ。ほかの妖精がとんがり帽子なのに対して、亀頭に座って尿道口にオンナ表面をあてがう女は、小さなティアラを頭に乗せていた。身分が高いのか、選ばれたものの証なのかは分からなかったが、僕が射精すると一度は彼女たちの体内を通って、それから外に体液が押し出される。そのうちの一部の精子が、彼女たちの子宮に着床する仕組みなのだろう。
これはおそらく、戦意喪失プログラムが発動する前の、コロポックルたちの習性である。この状況になってしまっては、まともな妊娠は難しいはずであるが、この妖精たちは、こうやって旅人を捕まえては集団で犯し、代表者たちを受胎させ、子孫を存続させていたに違いない。その習性通り、僕が射精すると必ず代表者の中を通るようになっていた。また、そうやって亀頭にはりつく生足やオンナ表面や両手の動きがことさらに気持ちいいのだ。
体の大きさが違うために、実際の挿入は難しくても、このやり方なら、精子を体内に取り込むことができるというわけだ。もちろん、男を射精させるために、コロポックルたちの体は異様にやわらかくできており、胸もお尻もお腹もどこまでもめり込んでしまうもち肌を具えていた。それだからこそ、全身にはりつき、ペニスを包み込む彼女たちの全身コキが、僕を何度でも射精させる力を有しているのである。
そうこうしているうちに、3度目の射精が訪れた。一時的に、心地よさに我を忘れたが、連続射精のためか、ますます冷静になっていく。今度は、コロポックルたちの肉体といえども、半立ちのペニスを急に勃起させることが難しく、執拗に全身をこすりつけ続けている。くすぐったさだけが残っているものの、そう簡単には精子を絞り出すことができなくなっていた。
そして、3つめの行為。それこそが、僕に希望を与えた。それは、彼女たち自身の性的な満足である。コロポックルたちは、執拗に胸や脚やオンナを僕の体にこすりつけているが、それは単純に僕を犯してイかせようとする行為ばかりにとどまらなかった。この行為は同時に、彼女たち自身の性的な快感を伴っている。オンナをこすりつければ、当然彼女たちも気持ちいいというわけだ。
受胎者に選ばれなかった大勢のコロポックルたちは、自分の体を僕にこすりつけることで、いわば自慰行為にふけり、積極的に快感を求めていくのである。僕の体を使った集団オナニーと言ったところか。彼女たちは自分で自分を慰めても決してイクことはない。ウイルスの仕業でそういう体になってしまっている。だが、僕の体を使っていれば、しっかり快感を得て満足することができるのである。
そして、この世界では、女性の絶頂はすなわち敗北である。彼女たちは性的に満足すると一時的に性欲から解放され、そこから離れることになる。彼女たちは勝手に体をこすりつけ、勝手にイッてくれるわけだ。
それなら、僕としては、じっと快感をこらえ続け、射精回数・量を極力減らして、敵の集団がどんどん自滅するのを待てばいいことになる。手足を縛られていたとしても、コロポックル集団はイクのをガマンしている風はなく、むしろ積極的に僕の肉体のあちこちを愉しんでいるのだ。そしてちょうど良いことに、これまでの射精頻度からして、明らかに今、性欲が減退しつつある。ウイルスの影響で、僕もまた性欲の回復が強くなっていて、連続して何度でもイクことができる体になっているけれども、精神的に、自分をある程度抑えることができるようになっている。
最初の頃に比べて、呪いの影響で肉体的なレベルは下がったけれども、精神的なレベルはむしろ上がったように感じる。森に入ってからというもの、いろいろな経験を積んで、体が敏感になったにもかかわらず、セックスがしたい、快感を求めたいという願望が薄れている。戦わなければという義務感がそうさせているのか、あるいはたんに飽きたのかは分からない。いずれにしても、下腹に意識を集中してグッとこらえ、連続射精のあとの回復には時間がかかる状態を作り上げることができた。
コロポックルたちに精を提供したあと、4度目の射精までには時間がかかった。一度目は5分以内に、どんなにこらえてもあっさり勃起してしまったペニスは、いまや「出し過ぎてなかなか立たない状態」を作り出すことができている。彼女たちがどんなに体を押しつけこすりつけても、なかなかペニスは反応せず、やっと立たせられても、今度は射精まで時間がかかった。その間にも、コロポックルたちは次から次へと絶頂を果たし、どんどん交代していく。
このまま行けば、いつかきっと、彼女たち全員を満足させることができるだろう。そうすれば、きっと肉体も元に戻り、解放されるに違いない。もしかしたら、肉体が元に戻るとともに、失われていたレベルも格段に上がって、肉体的にも精神的にも、ずっと強くなっているかもしれない。そうなれば、当初の目的であった「強い自分を手に入れる」ことも、形は違っても、夢でなく実現することになる。今のがんばり次第だ。
僕はさらにグッと下腹に力を入れ、勃起や射精を遅らせた。さすがにウイルスの影響で、精子生産が止まることもなければ疲れて萎えきることもないけれども、性的興奮を抑え、勃起を遅らせ、射精をこらえることができている。
しばらく時間が経っても、なかなか5回目の射精には至らない。連続で4回イッたあと、再び立たせられはしたものの、もはやそこまでであった。
「…なかなかイかなくなっちゃったね。」「チョウシン水はもうないの?」「ないよぉ!」「じゃあ、アレを持ってきて。」「あー、あをぢるがあったね☆」数人のコロポックルがベッドから降り、どこかから小瓶を抱えてきた。
僕は顔面を固定され、無理矢理口を開けさせられると、どろりとした緑色の液体を飲まされた。「んぐあー! まずいー!」「もう1杯?」もう、イッパイイッパイだ・・・「あをぢる」と呼ばれた液体は恐ろしく苦く、青臭く、舌がしびれるようであった。「これはコロポックル秘伝の草の液を濃縮して作った回春薬だよ。」「一時的に鈍った男の性感神経を一気に回復させる秘薬だよ。」
「…うぐっ!?」突然体が熱くなってきた。それと同時に、張り詰めていた筋肉が勝手にゆるんでいく。力を入れようとしても、どうしてもぐったりしてしまい、力が入らない!
すると、精神力で抑えていた性感神経が、急激に緩んで過敏になった。全身にはりついている妖精たちの肌触りを敏感に感じ取り、股間のくすぐったさが格段に上がった。初めのはりつかれたときのように、いやそれ以上に、心地よい感触が全身でうごめいている。
ペニスはあっという間にいきり立った。そこから数秒以内に、白濁液がほとばしっていく。あっという間の出来事であった。再び宴が始まったのだ。
コロポックルたちのもちもちした肌が、さらににゅるにゅるになっていることに気がついた。彼女たちから滲み出る体液が、何十人分も、僕の体に垂れ流され、こすりつけられ、すでに全身愛液まみれになってしまっていたのだ。妖精のそれは香りが甘く、ぬるぬるしていて、それが彼女たちの全身にも移って、ローションのように全身の攻撃力を高めているのだった。
精神統一が果たされ、全身の神経を鈍らせて快感を感じないようにしていたときには気づかなかった。いや、厳密には気づいてはいた。が、認識しないようにして、敵の自滅を待っているばかりであった。実際、ヘンなあをぢるを飲まされなければ、僕は勃起も射精も極端に鈍らせ続けることで、やがてはコロポックルたち全員を自滅させることができるはずであった。
だが、その目論見がいかに甘いものであったのかを、はっきりと思い知らされた。何度でも射精できる体であることに変わりはない。いつでも精子は急ピッチで生産され、それにともなって性欲もすぐに回復する。精神的に落ち着いたおかげで、簡単に性欲に負けることがなくなったものの、それとて、精神がかき乱されればいつでも崩れ落ちてしまうのである。肉体が敏感になったとたん、僕は再び快楽の園へと投げ出されたのである。
それにいかんせん数が多すぎだ。たしかに相手は、一度に数人ずつ、あちこちで次々と絶頂を迎え、戦線を離脱していた。だが、次から次へと現れるコロポックルたちは、僕の体をびっしり覆うばかりでなくベッドまで埋め尽くし、さらには床にもすし詰め状態で、数百体は集まってきていたのだった。これでは、たとえ薬の効果がなかったとしても、体が持ったかどうかも分からないではないか。
その上、相手はいたずらと奸知の達人たる妖精コロポックルだ。さっきもチョウシン水の一件で、見事にだまされたではないか。不思議な薬を使い、全身を使って男を射精させ続ける恐ろしい妖精だ。僕の元いた世界での伝説とはまるで違う、あまりにも悪辣でかわいらしくいらずら好きで淫乱な、女の怪物どもであった。
だから、僕が精神的な成長を果たし、性的な刺激を意識しないようにする技術を習得したと分かるやいなや、性感神経を過敏にさせる薬を無理矢理持ってきたのだった。
勝てる算段どころか、脱出の成算すら、かけらさえもないのだった…初めから!
僕の全身で妖精たちが激しくうごめき続けている。気持ちいい感覚しか肉体には残っていない。首から下はすべて、小さな女体のにゅるにゅる滑るもちもちした感触に埋め尽くされ、くすぐられ、こすられ、性的な刺激以外を感じさせなくしていた。女体の海に投げ出されている感じだ。
亀頭の交代が間に合わないくらい、僕は連続して射精し続けてしまっている。ペニスにはすでに、二人一組ではなく、数人で棒全体を取り囲んで、奪い合うように執拗にしごきたてている。
目の前がだんだん暗くなってきた。肉体はもはや、快楽のるつぼにたたき落とされ、脱力したまま抜け出せないでいる。
自分が「終わる」のを実感し始めた。このまま、精魂出し尽くして、死んでしまうのか、それとも異世界に飛ばされてしまうのかは分からなかったが、いずれにしても、この先に待っているのはさらなる快楽地獄であることに間違いはなさそうだった。
だから、僕は安心してイクことができる。コロポックル軍団に包まれながら、ぼんやりそんなことを考えていた。
体が急に浮き上がって軽くなったような感覚に陥った。と同時に、あらゆる思考と感覚が一瞬にして途切れ、何もかもが消え去ってしまった。気絶をはるかに超えた消滅感覚が起こったかと思うと、僕の意識は完全に消えてなくなってしまった。
エピローグ
「…ふ。」巨大な球体の前で、軽いため息がつかれる。
レオタード姿に着替えた、異世界の美しき魔物の姿が、そこにはあった。
水晶のように透明な球体は、不思議な力で宙に浮かんでおり、なおかつその内部には、小さな大陸が虚空に浮かんでいるのだ。
はるか昔の地球人たちが考えていたように、大陸には果てがあって、その先は巨大な滝になっている、そしてそこから先が存在しない、平坦な大地で構成された世界。
その世界こそ、「戦意喪失プログラム」がばらまかれた、あの少年が閉じ込められた、不思議な世界の全体なのであった。世界は、彼女の手で作られ、ミニチュアのように透明なる球体の中にすっぽり収まり、球体の中で宙に浮かんでいるのだった。
直径1メートルくらいの大きな球の前でため息をついた女こそ、少年を異世界にいざなった張本人、作久葉そのひとであった。
すでにこの球体の中に、数え切れない男たちを放り込んできた。
ある者は夢の中から精神を引きずり出し、永遠に覚めない悪夢として、快楽に浸らせる。
ある者はゲームなどとだまして精神を球体の中に転送させ、快楽地獄を味わわせる。
色々な方法で送り込まれた男たちは、世界の構造を知り、ある者は自分のいた元の世界に帰りたい一心で、ある者は本気でこの嘘の世界を救いたいと念じて、はたまたある者は純粋に快楽に浸りたい欲望から、戦意喪失プログラムに毒された世界をさまよって、夜昼かまわずに広大な大地のあちこちで女たちと交わってきた。
心の底から快楽に溺れ、射精を重ねすぎて心も体も衰弱しきった男たちは、たいてい、悲惨な末路ばかりをたどることになる。
ほとんどの男は、初期の村周辺で快楽に溺れ、セックスの虜となって、心も精も女たちに提供し続ける。その結果すぐに衰弱し、全エネルギーを吸いつくされてしまう。
彼らのエネルギーは、世界と球体との維持に使われる。世界の構造を維持するのに、男一人から採取できる全エネルギーでも十分事足りる。それが定期的に行われれば、もはや世界の構造が崩れることはありえないというわけだ。
球体の維持に必要な、男たちの精神エネルギー以上が、日々採集されるため、余剰のエネルギーが発生することになる。それはほぼ全て、作久葉の魔力として蓄積されていくのである。
作久葉は、時折男たちに近づいて、だましたり契約したりなどの策を用いて、男の同意を得た上で球体に引き込むことを仕事としている。あとは球体の世界内部で、勝手に射精してくれるというわけだ。
そして、球体が維持されているかぎり、作久葉の魔力は自動的に蓄積され、彼女のパワーがどんどん高まっていくことになる。
このシステムを考案した彼女は、いまや魔界の中でも一目置かれるような、上級淫魔となっていた。黙っていても、勝手に自分の魔力が蓄積され、強化されているのである。蓄積された魔力はもはや、相当なものになっていた。
さらに狡猾な作久葉は、ただ自分の魔力を蓄積するだけでなく、さらに出世し、魔王の称号を得る近道を編み出していた。
球体に閉じ込められた男たちのうち、ごくまれに、強い正義感と、聖なるパワーと、そして魔族にとって濃厚なる滋養となる、特殊な精を持っている、そんな徳目の高い者が現れることがある。
そんな男たちは、度重なる大陸の甘い誘惑にめげることなく、快楽に溺れることもなく、世界を救うという強い意志でもって、大地を突き進んでいく。
初めのうちは、それでも快感に負けて射精を続けるが、次第に強い意志の力でこれを克服し、いわゆる“レベル”を上げて、強くなっていくのである。
聖人君子のような慈愛の心と、快楽に負けまいとする鉄の心と、そのために必要となる技術や身体能力。レベルが上がっていくにつれて、これらのパワーも高まっていく。
すると、魔族にとっては、高いエネルギーを持つ精を放出できるような男が精錬されることになるのである。
古来より、修行中の者、禁欲的な者、正しい者、博愛の者、宗教に関係なく悟りを開き自己を高めるべく鍛錬する聖者たちに対しては、数多くの悪魔たちが、淫靡な誘惑攻撃を仕掛けてきた。
瞬時にして快楽の虜となり、欲望の赴くままに快感に我を忘れるような、薄っぺらい男の精は、魔族にとっても薄いのだ。ろくな滋養にならぬ。だが、禁欲をする正しく真面目な男の精は、魔族にとって、高い滋養となる美味なる精にほかならない。
そのような男を堕落させ、精をたくさん奪うことができれば、その淫魔は、一晩で上級淫魔になることができ、これを3回もくり返せば魔王クラスにまで自分を高めることができる。
だからこそ、修行をする山、修道所、教会施設、寺院のたぐいは、淫魔たちが“狩り”をするに一番適したところであり、彼女たちは日夜、禁欲的に修行する聖者たちを誘惑し、堕落させようとするのである。
ただし、これらの場所や聖者たちの精が高い滋養となるだけではなく、彼らに近づくことが、彼女たち魔族にとってはきわめて危険なことでもあることを忘れてはならない。
聖者たちの高いパワーは、快楽に負けて精液という形になるかぎりにおいて、性感にもだえる心のエネルギーとなるかぎりにおいて、魔族のパワーを高める滋養になりうる。しかし、それ以外の場合、彼らの聖なるエネルギーは、逆に魔族のパワーを削り取る凶器でもあるのだ。
聖者たちが、淫魔の誘惑に屈せず、強い意志で魔族をはねのけようと、その聖なるパワーをぶつけてくれば、ザコ淫魔程度ではそれだけで消滅してしまうほど、強力なダメージを負うことになってしまう。
そして、そうした聖者たちは、淫魔の誘惑のこともよく知らされていて、退魔の法も心得ているため、淫魔にとっては迂闊に近づくことさえ危険なことなのである。
仏の聖者を堕落させようと近づいた、魔王クラスの大淫魔「マーラ」は、誘惑に失敗してブッダの逆襲に遭い、大量の魔力を削り取られて瀕死の重傷を負ったことがある。
そのエピソードを魔族たちも知っており、聖者の領域はまさに「虎穴」そのものであることを知っているのであった。
作久葉は、高いパワーを持つ危険な聖者がいるところにわざわざ足を踏み入れることなく、別の方法でパワーだけいただく方法を見いだしたのであった。
それは、球体の世界の中で、意志の強い、いわゆる聖者の資格のある心を持った男を選別する方法であった。
女体の誘惑に屈せず、強い意志で先に進もうとする男を見つけ出すのである。これによって、初期ステージの周辺で精を出しつくしてしまう男たちではなく、快楽にあくまで抗おうとする男が、まれにではあるが出現するのである。
作久葉は、そんな男たちのことを“勇者”と呼んでいた。山や修道施設で修行する聖者たちと同じように、性欲や肉欲の虜となることなく、快楽を退けて禁欲の修行をする男だからである。さらに、快楽に負けないようにするために、ガマンするだけでなく、相手の女をイかせて倒す必要もあることから、セックスのテクニックも身体能力も高まっていくからである。
こうして、心は聖者、体はセックスの戦士となる、真の勇者が、この世界の中で“育て上げられて”行くことになる。
初めのうちはだらしなく精を放出していた勇者も、徐々に力をつけ、簡単には誘惑に屈しないようになる。そこで先のステージに進ませ、もっと強い女たちに襲わせていくことで、勇者を鍛え上げていくのである。かなりのレベルになった勇者は、もはや聖人君子並の徳の高い精を持つことになる。
球体世界の中であれば、聖者のエネルギーが魔族に危険を及ぼすことがない。マーラのように逆襲に遭うこともない。
鍛え上げられた、危険のない聖者の精液が、作久葉のものとなるのである。
作久葉はこうして、山や寺院に足を踏み入れるという危険を冒すことなく、数万人に一人の逸材たちを育て上げてきた。
この高い滋養、3人分も吸収すれば立派な魔王である。
だが作久葉は、狡猾にもあえて、自分でそのエネルギーを吸収することをせずに、ただの精エネルギーを吸うにとどめておいた。
彼女は、こうして育て上げた精を、魔界に送り込み、魔界に売り込むことによって、売名行為をしたのである。作久葉の世界で育て上げられた勇者は、いつのまにか淫魔界をさまようことになり、そこでは“本物”が襲いかかってくるので、もはやレベル上げさえかなわずに、徹底的に魔族たちに吸われ続けることになってしまう。
なにしろ聖人の濃い精液である。しかも魔界において永遠の生命を強制的に与えられ、いくらでも何回でもイクことのできる体に改造されてしまう。そんな男たちは、きわめて高値で売れるのである。対価である魔力も相当に提供される。作久葉の名前は瞬く間に魔界において有名となった。
これによりさまざまなコネクションができ、作久葉は魔界でかなり自由に行動できるようになっている。融通の利く立場となり、先輩魔王たちにも重宝された。これにより、単純に敵を作りやすい、たたき上げの魔王資格より、ずっと有利に身を置くことができるのである。
これをくり返しておけば、いざ自分が魔王となった時にも、おかしな競争に巻き込まれることなく、悠々自適に過ごすことができる。魔界での地位もどんどん高まり、ただの魔王である以上の価値を作久葉は手にすることができるのである。
作久葉は、少年の動きにある期待をかけていた。簡単に女の体に溺れることなく、冒険して先に進もうとしていたからである。
だがいかんせんコドモだ。快楽への耐性がほとんどついていなかった。コロポックルの森に迷い込んだが最後、あっさりと精を出しつくしてしまったのだった。
レベルが上がる前に吸いつくされてしまった格好だ。
このまま少年のエネルギーを作久葉のものにしてしまうのはたやすかった。
だが、ちょっともったいない気もするのだ。
もう少し鍛え上げれば、もしかしたら勇者になったかも知れない。少なくとも、その素質はあった。
とはいうものの、このままでは、結局どこかで肉体がついていかずに、精を出しつくしていただろう。魔界に送り込んだとしても、強い意志や徳目は高いかも知れないが、体が弱すぎて、使い物にならないかも知れない。
もともと、この少年は現実に飽き飽きしていた節もある。
期待が裏目に出れば、他の男たちと同じような薄っぺらい精子しか精錬できないだろう。
もっと心を鍛え、体も強くして、快感に負けないようにじっくり育てれば、この少年はモノになる可能性がある。
だが、素質はあっても、失敗した時の損失も大きいだろう。
「損失…」
これまで、さまざまな男たちをこの世界に閉じ込めてきた。青年も中年も老人も送り込んだ。もちろん、子供であっても、容赦なく送り込んできた。そのほとんどは、現実に対して強く失望し、半ば自暴自棄になっているような、幸薄い男たちであった。
この少年も、そんなたぐいであって、どこか精神的にひねくれていたところがあった。だから球体世界に引き込むのもたやすかった。
もともと、初期の段階で肉欲に溺れる、ただの薄い男程度にしか見ていなかった。
ところが、少年は果敢に世界と戦ったのである。
鍛え方次第では、大きく化ける可能性があるのは否めなかった。
とはいえ、これまで勇者となったのは、屈強な青年であり、子供が勇者となったためしはなかった。
今は心が堅くても、肉体が快感の耐性をつけられない可能性が高い。世界の中では年を取らないため、鍛錬だけではどうしようもない、未成熟の肉体が、どうしても制約になってしまうのである。レベルが上がっても、実力の付き方はひじょうに鈍いだろう。
そうなると、いつかどこかで、心が折れてしまう可能性がある。聖者並の濃い精を作れるようになる前に堕落してしまえば、それまでの努力も水の泡だ。
かといって、快楽をあまり与えないようにすれば、修行にならないし精も吸うことができない。やはりコロポックルの森のように、容赦ないセックス攻撃を少年に与え続ける必要がある。
少年を育てるために、余計なエネルギーが費やされることは間違いなかった。
「その分は、幾人かの男を呼び寄せれば、何とかなりそうだ。」作久葉はにやりと笑った。彼女の中で結論が出たのである。
少年の魂は、魔力に変換されることなく、再び彼の肉体に戻されることになった。前例のないことだが、彼を勇者に育ててみることにしたのである。
めったに勇者も現れないこともあり、これにかけてみることにした。そのために余分なエネルギーを費やすことになるが、数人の男たちを数日以内に送り込めば、何とかなりそうだった。
作久葉は再びスーツ姿になった。男たちを探しに行くためである。
現代は、現実にひしがれた男はたくさんいる。世界に送り込めそうな輩に困ることはなかった。
異世界の一室に浮かぶ球体から、作久葉の姿が消えた。
誰もいなくなった球体世界の中で、少年が目を覚ますのは、一週間後である。外の世界と球体世界では時間の流れ方がまったく違う。時間軸そのものが違うので、早送りも停止もランダムであり、リアルタイムで進んでいるわけではない。従って、外側からの干渉をしても、世界内部に反映されるのは一週間から10日は最低でもかかるのである。
少年は目覚め、自分が助かったことを知り、体勢を立て直して再び冒険の旅に出る。そうして数年かけて、強く生まれ変わっていくことになる。確実に勇者の道を歩んでいくことになる。それが作久葉の手のひらでのダンスに過ぎないことなど知るよしもない。
しかし、強く生まれ変わった少年の運命に、徐々に変化が訪れていた。それは、その世界の神である作久葉自身の思惑をも越えた方向性を有していた。運命のいたずらによって、事態は思わぬ方向へと進み始める。
球体世界は、少しずつ、作久葉にさえ気づかれないくらいにゆっくりと、しかし着実に、少年によって、少年の背負う運命によって、崩壊し始めていたのである。
魔の者の思惑と、希望を取り戻し始めた人間の思惑。そのぶつかり合いが、いよいよ運命の歯車を勢いよく回していくことになるのだ。
少年は、作久葉のいう勇者ではない、本当の意味での勇者として、世界の救済、すなわち嘘の世界の崩壊と、囚われた者の脱出を実現していくことになる。
しかし、その冒険の顛末は、またまた別のお話♪
###戦意喪失プログラム ひとまず完結###