スクヴス女学園01

 

 人里離れた山奥。何か、俗世間から完全に切り離されたような、異界とも思えるような、そんな雰囲気を漂わせる…偏狭の地。世間にはあまり知られてなくて、まったく注目されない田舎の秘境に、僕はやっとたどり着いたのだった。

 新幹線から電車を乗り継ぎ、ちょっと歩いてケーブルカーに乗って。どこまでも広がる高地に、その村がある。村といってもかなり広大だ。しかも、そこからさらにバスに乗る。2日に一回、小さいのがやってきて、それに乗るのだ。バスで2時間ほどガタガタ揺られ、広大な森の前が終点だ。

 森は私有地になっていた。そこから道順に歩くこと3時間。辺りはすっかり暗くなっていた。へとへとになってたどり着いた先に、僕のめざしていた場所があった。

 私立『聖スクヴス女学園』。全寮制の学校だった。どこかの教団が運営しているらしい。詳しいことは分からなかった。

 職にあぶれる時代。大学は出たけれど、就職先なんてない。僕もあぶれた一人だ。どこへ行っても希望者が一杯で、三流大の僕なんか、どの会社も相手にしてくれない。これからどうしよう…と途方にくれていた矢先に、ある「つて」からこの話がきたのだった。

 その知り合いは、その教団の信者で、得体の知れない奴だったので普段は敬遠していたのだったが、就職の話がきた時には、神のようにも思えた。あー、でも宗教はカンベンして欲しかったが。幸い、その知り合いは布教めいたことは一切してこなかったし、就職先も教団関係の施設だけど、そこで働く条件として、信者であるかどうかは無関係のようだった。

 それでも、普通なら怪しげな話だろう。教団の信者が教団関係の就職先を斡旋するなんて。

 でも。このご時世にかなり条件がいいのだ。給料もよくて、仕事もそんなにはきつくないとのこと。ただ、人里離れたところにあって、しばらくそこで生活することになる(生活の面倒は就職先でほとんど見てくれるらしい)というデメリットはある。

 そして、その就職先が、なんといっても魅力的だった。女学園なのである。そして、仕事というのは、その学校の用務員の話だったのだ。ピチピチなんである。こんな話、頭ごなしに拒否するわけにも行かないだろう、うんうん。

 そんな経緯で、とりあえず話だけでも聞くということで、僕はこの地にやっとの思いで降り立ったのである。詳しいことはそこで聞いてくれと、その知人に言われていた。

 用務員の仕事ってどういうのかな。全然知らない。掃除とか器具の整理とかなのかな。あるいはガードマンめいたことをするのか。修理作業もあるかも知れない。どっちにしても力仕事だ。やるんだったら気を引き締めないとな。

 こうしてたどり着いてみると、ごく普通の学校だった。日が暮れていたので、校庭にも校舎にも誰もいなかった。門にガードの人がいたので、紹介状を見せて、これからどうしたらいいか訪ねてみることにした。まさかこんな時間に、学校の要人といきなり面会というわけにも行かないだろうし。

 「あの…」「何か?」ぴっちりした警備の制服を着た人が無表情で答えた。若い女の人だった。

 「こちらで用務員を募集していると聞きました。××という人から紹介されまして。ぜひお話を伺いたいのですが、ここにたどり着くまでにこんな時間になってしまいました。あ、コレ紹介状です。」

 彼女は紹介状に目を通し、僕の全身をじろじろ見た。

 「…。分かりました。担当の者にお繋ぎします。」警備員さんは内線をかけ始めた。

 しばらくして。

 「お待たせしました。」遠くから初老の男性がやってきた。「あ、どうも…」いよいよ要人と会うことになったと思い、緊張してしまう。

 「あぁいや。どうぞそう緊張なさらないで下さい。わたくし、理事長の執事でフランシス・マルカネと申します。ささ、どうぞこちらへ。」

 マルカネ氏に連れられ、僕は校舎とは違う方向に案内された。その先には、木々でよく見えなかった豪邸がそびえ立っていた。

 広いお屋敷の客間に案内され、高そうな紅茶を出された。ますます緊張してしまう。

 「お待たせしました。」客間に妖艶な美女が入ってきた。真っ赤なドレスに身を包んだ高貴そうな女性だ。細い体つきなのに、出る所が出ていて、全体から何とも言えない色気を醸し出していた。

 「私が理事長の佐久葉素乃子です。」

 「あっ…そ、その、ぼく…いや私、用務員の…」

 「どうぞお気を楽になさって下さいませ。」「はい、すみません。」

 僕は紹介状を佐久葉理事長に見せ、用務員の仕事の募集について色々聞いてみた。簡単な面接といったところか。

 「まず、この学校が○○教の系列であることはご存知なのですね?」「はい、存じております。」「もちろん、教育は宗教教育も兼ねておりますが、あなた様が入信する必要はございません。ごく普通にお仕事をなさって下さればよいのです。」「はい、それも聞きました。」「ここは人里離れた土地。簡単に来ることも、簡単に外に出ることもできません。必要な物はすべて揃ってはいますが、しばらくここで暮らすことになるのもご存知ですね。」「はい。外へ出ようにも交通がこうも不便ではなかなか外へ出ることもできないでしょうね。あ、これは失礼…」「いいえ、事実ですし、私どもの方針からして、簡単に盛り場には学生たちが行かれない、静かで敬虔な土地に、わざとこの学校を建てたのですから。」「そうですか…」

 「それでも、こちらでお仕事をなさって下さってもよいということですね?」「はい。ただ…。用務員の仕事というのがよく分からないものですので、自分にできる内容ならよいのですが…」「失礼ですが、お年はいくつになられるのですか?」「今年で24になります。」「この仕事は若くて体力があればそれほど難しくはありませんし、つらい力仕事もあまりございません、ご安心下さい。」

 「そうすると、僕の仕事は具体的にどんな内容になるのでしょうか。掃除や器具の取替え、警備といったところですか?」

 「いいえ。清掃は学生にやらせます。電気や窓等の器具取替えは、私どもの系列の業者が行います。警備は、先ほどあなたもご覧になったでしょう、やはり私どもの系列の警備員が付きます。受付等の事務処理も、警備員を通して事務室や秘書室があります。重要事項につきましては執事マルカネや、私が行います。」

 「…。そうすると、私の仕事は…。」

 「そうですね、言うなれば学生の管理一般といったところでしょうか。彼女たちの相談役になったり、午後から学校を見て回って、学生達の様子を調べたり。それだけです。」

 「はあ。相談というと、進路とか人生の悩みとかになるんでしょうか?」

 「いいえ、進路相談には教師が当たりますし、人生相談や宗教上の悩みは教団が受け付けます。そういう大きな悩みではなくて、もっと小さい悩みを聞くだけでよいのです。悩みというのは、解答しなくても、話すだけで、それなりに癒されるものですし、ほとんどはあなたに解決できるでしょう。」

 「はあ…。」よくは分からないが。

 「相談役というのは、なにも悩み相談だけではありません。話し相手になってあげるだけでも十分効果があるものです。私どもには、学生たちが教団関係者や教師にも言えないようなことを、聞いてあげる人材が必要なのです。そして、私どもが目の行き届かないところを見て下さればと期待しております。」

 「…。それで、見回りというのは生徒達の問題行動を見張るってことですか?」

 「教師たちが見ていないところでいじめがないか。喫煙がないか。たしかにそういうところにも気をつけてはいただきたいのですが…。むしろそれは些末なことでしかありません。風紀に関しましても専門家がいますので、あまり気になさらないで下さい。」

 理事長は、去年に前理事長が亡くなったとかで、若い身で理事長職を受け継いだらしい。落ち着いた話し方、物腰、何もかも魅力的だった。

 本来の、用務員としての仕事の多くは、それぞれにスタッフがいるらしい。残された僕の仕事は、学生たちの相談役というわけだ。話し相手になったり、学校を見て回るだけでいい。それでいて住居、水道や電気、食料費等の生活全般まで面倒を見てくれた上、常識では考えられない大変な給料だ。数年勤めるだけでマンションが借金ナシで買えてしまえそう。やっぱり宗教って儲かってるのかなあ…。ある意味やりきれないが。

 仕事内容も驚くべきものだった。まず、仕事は午後一時から。午前八時以降(授業開始時刻)に設定変更してもよい。つまり午前中出勤するかどうかは完全に任意だ。早く出勤した時間×日数分、手当てがたんまり付く。仕事内容は、午後六時まで、学校中を見回ること。壊れている器具などがあれば、チェックして業者に報告。生徒(この学校では学生と呼ぶらしい)の様子をよく見る。ただし、見回りは恒常的に行わなくてもよく、一日一回以上見ればあとは任意だ。つまり、家にいてもいいってことになる。

 時間の仕事といったらそれだけだが、その他の時間帯でも、学生の話し相手になるのも仕事の内だ。僕にあてがわれた家は学校の敷地内にあって、一人で住むには結構広いし、たしかに物はなんでも揃っていて、ほとんど不自由はしない感じだ。

 ちなみに、ここの学校の学生たちは、みな教団の信者だ。信者は義務教育を終えると、必ず三年間、修行としての修道過程を経なくてはならないので、そのあいだ修道施設に入っているので、普通の高校よりも年齢が高い。だから生徒と呼ばずに学生と呼んでいるのだそうだ。

 これだけの条件だし、僕としては何も不都合はなかった。その日のうちに、この仕事をやろうと決めた。決して理事長の色気に惹かれた訳ではない。断じて。いやホントに。信じてくれぇ!

 こうして、無事に僕も就職できたのだった。引越しの必要もなかった。何でも揃っていたからだ。さっそく明日から仕事を始めてくれと言われた。がんばるぞ〜

 次の日。朝7時。ベッドから起きて、顔を洗い歯を磨く。新しい一日が始まる。いやがおうにも気が引き締まる。新鮮な気持ちだ。

 …あ、仕事は午後からだったっけ。

 こん、こん。

 「はーい。」こんな朝っぱらから訪ねてくる人がいた。誰だ?

 「失礼しまーす。」数人の女学生たちが、メイド服を着て入ってきた。

 「えっ!?あ、あのぅ…」僕は何が起こったのか分からずに眼が点になった。

 「申し遅れました、私たち、用務員世話係の者です。毎日交代で、あなた様の身の回りのお世話をさせて頂きます。」

 「ええ?」

 「あれ、聞いていませんでした? 用務員さんの生活全般は、私たちがお世話をするって。」

 あぁ、そういえば、面倒を見るってことだったな。でも、だからって…

 「いや、そこまでしてくれなくてもいいよ。自分でやるから。」

 「ダメですっ!」「これも私達の修行なんです!」「どうぞ全部お任せ下さいませ!」

 「はあ…。」

 みるみるうちに、ベッドの上ノ乱れた布団はきっちり直され、ごみ拾いや掃除が行われ、食事の準備が行われた。うーむ、若い女の子たちに色々やってもらうってのは悪い気はしないが…。いきなり面食らう展開だった。

 テーブルに豪華な朝食が用意された。

 「さあ、どうぞお召し上がり下さい。」「あ、はい。どうもありがとう。いただきます。」「いかがですか?」「あぁ。すごくおいしいよ。」「よかった…」

 たしかに料理は絶品だった。見たこともないような豪華な、それでいて朝から重たいような雰囲気が感じられない、どんどん食べられるのだった。こんなおいしい食事は初めてだ。

 あっという間に平らげてしまった。こういう手間や費用も教団持ちか。なんかすごいな。

 「それでは、後片付けをさせていただきます。」

 女学生たちは食器を下げ、皿洗いを済ませて、僕の前に横一列に並んだ。

 「それでは失礼いたします。」「はぁ。どうもありがとう。ってか、これから毎日こんな感じなの?」「はい。」「うーむ。」「起きた時と寝る前…あ、ていうか夕食ですね、その時にお世話いたします。」「…。」そういう規則ならしょうがないか。やってくれるんならお世話になろう。

 「それではまた夜にお伺いします。」「ごきげんよう。よい一日を。」女学生たちは一礼し、家を出て行った。

 うーむ。特別な教義でもあるんだろう、ここでは、これまでの常識だけで判断すると、ついて行けなくなりそうだ。ある意味で新しい一日だった。

 さて。食事も済んだし、仕事時間まで何してようかな。学校のことをもう少し知っておくのも悪くないな。時間割表とか、校則とか…目を通しておこう。

 「…うげ。」ちょっとだけ教団の恐ろしさを垣間見た気がした。学生たちを含め、教団関係者の規律の厳しいことといったら…。


午前四時    起床
午前四時三十分 礼拝
午前五時三十分 清掃
午前六時    朝食
午前七時    登校
午前七時三十分 朝礼。礼拝歌斉唱。

ここにある“登校”というのは、自分の教室に集合という意味らしい。校内に寮があるからね。そして、特別業務のある者は登校・朝礼等を免除、と書いてある。…さっきのメイドさんたちみたいな状態か。

午前八時から十二時 授業(4時間分)
午後一時まで    昼休み
午後一時から三時  授業(2時間分)
午後三時から四時  ホームルーム。礼拝。
午後四時から六時  部活
午後六時      下校
午後六時から七時  夕食。礼拝。
午後七時から    自由行動。

部活は、全員がどこかに必ず所属しなければならないらしい。これも修行なんだとか。下校というのは、自分の寮に帰るってことか。…自由行動といっても、いっぱい規則があって、ほとんど自由はない。朝が早いから、夜遊びもできないだろうし。なんかかわいそうになってきたが、これも修行なんだろう。僕には絶対できないな。

 でもなあ…。彼女たちの厳しさにくらべて、信者でない僕への甘さはなんだろう。僕ばっかり楽しちゃって、申し訳なくなってくる。

 いろいろ書類に目を通して、僕の午前中は終わった。

 そういえば、メイドさんたちが来るのは一日二回で、昼は自分で自由に食べられるんだったな。仕事前に、軽く何か食べておこう。

 軽食堂がある。そこで食事をすることにした。そこでは、30歳ぐらいの、たくましそうな女性が腕を振るっていた。

 「あの、目玉焼きセットを。」「はいよ!」彼女は元気に飛び回り、あっという間に料理を提供した。

 「アンタが、今日からここで勤める用務員かい?」「はい。」「ふうん。ま、この仕事は体力勝負だ。どんどん精をつけとくんだね。」「…?」「おっと、詳しいことは自分で確かめな。」

 「はあ。ところで、僕は昨日からほとんど男性を見ていないんですが。執事のマルカネさんくらいかな。警備員さんも女性だったし。」

 「そりゃそうさ。ここでは、教団関係者は女性だけ。男性は男性だけの施設がある。許可があれば教団外の人間は男性でも入れるけどね。」

 「そうすると、マルカネさんって…」

 「あぁ。彼は雇われ人さ。あと、ここに入れる男性といったら、教師と用務員ぐらいだろう。警備員も技術者も女性だけで組織されているからね。そういう教義なんだよ。」

 「でも変だな。男女分けて禁欲っていうなら、教師とか用務員も女性を雇えばいいのに。教団外部の人間だって、そういう条件をつけて雇わないのはなぜだろう?」

 「…。アンタには関係のないことさ。」「…そうでしたね。」「時間になる前に食べちゃったら?」「そうします。」食事を済ませ、僕は店を後にした。

 さあ、いよいよ初仕事だ。まずは見回りだな。電気が切れていないかどうかチェックしつつ、女学生たちの様子を見て回る。

 それにしても綺麗な学校だ。ゴミ一つ落ちてない。器具の不備も全然見当たらない。もしかしたら技術者や警備員が先に見つけて直してしまってるのかも知れないなあ。これじゃあ僕の仕事が…

 残るは女学生の様子を見るってわけか。すれ違うたびに、みんな明るく元気よく挨拶してくる。いいなぁ、若いエネルギーって。

 授業中なので教室の中には入れないけど、みんな真面目に授業を受けている。学級崩壊なんて無縁だな。

 教師はほとんど女性みたいだ。やっぱり女の園なんだ。

 それにしても…。

 授業は各50分で、10分が休み時間。休み時間のあいだは普通の学校とほとんど一緒だ。どの教室でもわいわい騒いでいる。天真爛漫、自由奔放。そうそう、ピチピチの姿、この姿を見たかったんだ!

 …いや、業務を忘れちゃイカン!

 気を引き締めてみると、女学生たちの奔放ぶりに、いろいろ問題があるようにも思えてくる。制服なんだろうけど、スカートが極端に短い。それなのに、自由にはしゃぎまわっているから…見えてしまうのだ。ある女学生は机に座り、足を広げておしゃべりしている。当然、中身が丸見えになってしまう。

 次の授業が体育だったりすると、窓を開けっ放しで、僕みたいな男性が歩き回っているのに、彼女たちは堂々と着替えを始めていた。僕はあわてて顔を真っ赤にしてその場を立ち去った。後ろからドッと笑い声が聞こえる。

 この教室は…これから屋内温水プールでの水泳授業なんだろう。みんな水着になっていた。制服としての水着は二種類あるみたいで、紺色でハイレグなスクール水着か、きわどいビキニ(フリルつき)だった。どっちにしてもかなりえぐい。イ、イカン、仕事中に何考えてるんだ僕は。

 制服の上着も問題だ。ちょっとでも背伸びするとおへそが丸見えになってしまう。

 授業を受けている時は静かなのに、解放されたとたんの狂乱ぶり。これは…。用務員として、やっぱり風紀の乱れを指摘した方がいいのかなあ。あるいは直接女学生たちに注意すべきか。注意するといってもどうやればいいんだろう?

 「用務員さーん♪」

 後ろを振り向くと、女学生三人が立っていた。

 「な、何?」そうだ、話し相手になるのも仕事なんだった。

 「これ見てえ!」そう言うと、女学生たちはくるくると回転し始めた。短いスカートがどんどんまくれ上がり、生足(ここの学校はストッキング禁止)と色とりどりのパンツが丸見えになる!

 「はうっ!!」僕はあわてて逃げ出した。もうどうしていいか分からない。逃げる後ろから笑い声が聞こえる。からかわれたんだ。

 午後三時になった。自分の仕事がちゃんとできていなくて、落ち込み始めた。こんな調子で、要請どおりの仕事もできなくて、用務員をやって行けるのだろうか…

 しばらくして、辺りは静かになった。僕でも入ってはいけない礼拝堂に、学生たちが集まったからだ。

 とりあえず誰か相談できる人はいないかな。理事長は忙しそうだし…。

 そうだ、風紀の問題は風紀のスタッフがいるんだ。風紀指導室をたずねる。ここは学生の風紀指導を行う場所だ。

 幸い、スタッフの方が一人、常駐している。僕は思い切ってその人に相談してみることにした。

 「あなたは…用務員さん?」白衣を着た、妙に大人っぽいムンムンの女性が常駐していた。

 「はい。」「そう。お仕事ご苦労様。」「あの…」「どうかしました?」「相談があるんですが…」

 僕は恥ずかしい思いをしながら、見回りが不十分だったこと、休み時間などの女学生たちの奔放さは風紀の乱れではないかってこと、注意するにしても、どうやったらいいか分からないことなどを告白した。

 風紀のおねえさんは微笑んだまま、僕の話を聞いてくれた。そしてすぐに答えてくれた。

 「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても。あなたには別の仕事もあるのですから。」

 「別の仕事?」

 「その…。とにかく学生たちのことは心配なさらないで下さい。スカートや水着はそういう制服なのだし、ほとんど男性がいない中では、肌がさらされることにそんなに注意しないでしょう。また、学生たちは男の人が珍しいんですわ。からかいたくなる気持ちも無理はないと思いますよ。」

 「…。」

 「最低限の風紀の乱れはこちらで管理しますので、あなたはそんなに気を使わなくてもよいのです。注意をしなくても結構です。もっとも、喫煙を見つけたりしたら教えて下さいね。その場合でも注意しなくていいです。」

 「はあ…。」

 「学生たちがあなたをからかっても、笑って許してあげて下さい。それも話し相手になるってことですから。」

 「…そうですか。」

 「だから、あまり堅苦しく考えないことが仕事を全うしたことになるのです。今日のあなたはとてもよく働いて下さっていると思いますわ。」

 「ありがとうございます。なんか元気が出てきました。」

 「さ。そろそろ礼拝も終わって部活の時間になるでしょう。彼女たちの活動の様子も見てやって下さい。文科系のクラブなどで練習の邪魔にならなければ、彼女たちと話をしてもいいですよ? むしろ積極的に話しかけてあげてください。」

 「分かりました。どうもありがとうございました。」「ごきげんよう。」

 風紀指導室をあとにした僕は、元気を取り戻して、また仕事モードに入った。

 校庭に出る。けっこう広い校庭で、ソフトボール、陸上、テニス等々、色んなクラブが使ってもありあまるほどだった。

 …。

 ここの体操着って。まだブルマなのか…。ブルマといっても、普通のじゃなくて、マタのキレも鋭く、露出度が高い。紺色のパンティみたいだ。お尻なんて、みんなはみ出してしまっている。おいおい、いいのかよそれで…

 上着も、小さめで袖なしのぴっちりしたものだった。全員おへそが見えている。綺麗なわきの下も丸出しになっている。小さな生地がやっと体に張り付いているって感じだ。

 彼女たちは、こういう格好をすることに何も抵抗感がないのだろうか。てかそれ以前に寒くないのか?

 陸上部の場合、ユニフォームがあるらしい。上は他と一緒だが、下は短パンの子もいる。開脚運動をしたり、走ったりしていると、内股もわきの下も、惜しげもなくあらわになってしまう。

 はう〜。刺激が強すぎるな。僕は場所を変えて、テニス部のコートに向かった。こんな女の園で…立ってしまうなんて、そんな最悪の事態だけは避けたかった。

 テニスコートでは、素振りをする子、試合をする子など、さまざまだった。テニスウェアもごく普通のものだったけど、それ自体がなかなかエグイ代物なので、やっぱり刺激は強い。

 イカン、何考えてるんだ。僕は用務員だ。女学生たちを見て、興奮していたら、ただの変態犯罪者予備軍じゃあないかッ! 禁欲禁欲!

 テニス部もヤバイ。場所を変えよう。

 「用務員さん。」

 場所を変えようとしたら、テニス部員たちに呼び止められた。うぅ。場所を変えようにも、「話し相手になる」のが仕事である以上は逃げるわけに行かない。

 「もしよかったら、あなたもテニスしてみません?」「え…。」「ぜひやりましょうよ。楽しいですよ。」「そ、そうかい?」「ささ、こちらへ。」

 僕は女学生たちに手を引かれて、テニスコートに入った。男性が珍しいというのは本当らしい。部員たちはみんな手を休めて、僕に注目している。

 「ラケットのグリップって、分かります?」「え…」

 僕は適当にラケットを握ってみた。

 「そうじゃないですよ〜。いいですか、まず腰を落として、足を開いて、そうです、その後、ラケットが縦になるように両手でしっかり握る…。」僕は言われるままにラケットを握った。「そうです。それが基本的なフォーム。じゃ、ちょっとやってみましょうよ。」

 コートの反対側には、すでに二人の女学生がスタンバイしている。網のこちら側にはもう一人いる。ダブルスだ。

 「イキま〜す♪」反対側の子がサーブ。僕の所に黄色いタマがやってきた。みようみまねで打ち返す。

 「あ、結構スジはいいじゃないですかぁ!」

 僕の打ち返したタマはちゃんと相手側に入った。ポーン! またゆっくり跳ね返ってきた。

 それにしても、目の前の三人の女学生は妖艶だった。動くたびに見えるパンツ、わきの下。生足。足の付け根あたりが筋のようにくぼんでいる姿がたまらなくセクシーだ。うぅ…

 「あ…」

 そんな妄想の一瞬で、僕は打ち返すのを忘れてしまった。一点取られる。

 「ふふ。でも初心者にしてはよかったと思いますわよ?」「あ、ああ。ありがとう。」「ちゃんと素振りとかすれば、あなたならどんどん上達できると思います。どうです? これからもやってみては?」「はぁ。」

 「じゃあ、素振りの方法を教えますね。さっきの握り方をやってみて下さい。」言われたとおりにする。

 「それでですね…」「うぅ!?」

 部長らしき女学生が、僕の真後ろにぴったり張り付き、後ろから手を伸ばして、僕の手首をしっかり掴んだ。柔らかくてムニムニした指先が、僕の手首を包み込む。しかも、後ろから女性の柔らかい感触が押し付けられ、足には部長の生足がこすり付けられる!

 ヤバイ、これ以上ここにいたら確実に勃起してしまう! そしたらいい笑いものだ! それどころか、不謹慎ということでクビになってしまうかもしれない!

 「ご、ごめん、僕、他も見て回らないといけないから! 続きはまた今度ね!」

 そう言い残して、僕はほとんど前屈みになって、その場を足早に立ち去った。

 刺激的なシーンばかり見せられて、午後六時になった。部活も時間が決まっていて、時間になったらみんなピタリと練習をやめ、片づけを始めた。みるみるうちに、校庭に人気がなくなった。…これで、僕の今日の仕事も終わりだ。

 家に戻る。なんだか気分が優れない。風紀の方は「気にするな」と言ってくれたけど、やっぱり僕も一人の男性。女学生たちのあられもない姿を見たら興奮してしまう。そこが心配でもあった。

 このままエッチっぽい場面を見せられたり、テニス部部長みたいに張り付いてきたら、そんな毎日だったら、立たないで普通にやり過ごす自信がない。どうしよう…

 こうなったら、慣れるしかない。見ても何とも思わないように訓練しなくちゃ。…って、どうやって?

 はぁ…。どうしよう。

 ドンドン! 勢いよくドアがノックされ、僕はびっくりしてしまった。

 「失礼しまっす!」「夕食の準備にきましたぁ♪」

 あぁ。そうだった。メイドさんが来てくれるんだったな。

 って、なんじゃその格好はぁぁぁ!

 朝はフリフリのメイド服だったが、今入って来た女学生たちは、バニーガール姿だったのだ! しかも校則でストッキング禁止だから、すらりとした生足が露出されている!

 「うわあああ!」

 「あら、言い忘れていたかしら。お世話をする時の格好は自由なのですよ。各グループで好きなユニフォームが着れますの。」

 「だからといって、その格好はないだろ!」

 「いいじゃないですか。こんな時くらいしか、私たちが好きなようにお洋服を着られる機会なんてないのですから。」「それとも、この格好、お気に召しませんか?」

 「気に入るとかの前にだな、その、風紀上問題が…」

 「ささ、細かい事は気になさらずに、お食事を召し上がって下さいな。」

 バニーガールたちは、さっさと掃除やら洗濯やらを済ませ、風呂まで沸かして、食事の用意をしてくれた。

 僕は夕食を済ませ、風呂に入る。その間に女学生たちは帰って行った。はあ…。こんな調子で、先が思いやられるなあ。「お背中流します」がなかっただけでも幸いだったかも。そんなことがあったら、僕は間違いなく、その場で彼女たちに欲情してクビだ。

 これからどうしよう。

 風呂から上がり、一人、…考える。

 やっぱり、日々の仕事の中で慣れていって、ちょっとのことではびくともしない強靭な精神が必要だな。…ある意味修行か。

 でもすぐにそうなるわけじゃない。うーむ。

 やっぱり仕事の前とか後に、自分で抜いておくのが得策かな。あらかじめ出しておけば、簡単には立たないだろう。そんなことしながら、少しずつ若娘たちに慣れて行くしかなさそうだ。はぁ…情けない…

 僕は一日を振り返り、今日あったことを思い出した。女学生たちの短いスカートから伸びる足。パンツ。僕の前で回ってわざとスカートの中を見せた子たち。きわどい体操着。エッチっぽい水着。部活の時間には、女学生に後ろから密着されて手を握られた。夕方は、太ももあらわなバニーガールたちがやってきた。

 あああ、仕事のことよりも、女学生たちの姿ばかり記憶に残ってるぅ! 仕事人失格だ〜!(爆

 でも、僕も男だ。思い出していくうちに、どんどん欲情してくる。もう夜も遅い。窓のカーテンも閉め切って、この家の様子は見えない。それに、女学生たちもみんな寮に帰った。誰も見てない。

 僕はおもむろに自分のペニスをまさぐり始めた。寝巻き代わりのジャージから手を突っ込み、握り締めて、上下させる。女学生たちを思い出しながら。空想だけは自由だ。

 日中、欲情しないように頑張っただけあって、解放されるとあっという間だった。オナニーも終わって、すっきりしたところで、ちり紙を片付けた。このまま放置して明日の朝メイドさんたちに見つからないためだ。

 さて。夜もふけてきたな。ここは閉鎖された山奥の空間。物音がほとんどなく、静かだ。電波が届かないのだろう、テレビもラジオもない。そういう空間で俗世間から離れるから、教団はここに学校を建てたのだ。そこは僕もガマンすることにしよう。新聞だけはきているようだ。

 新聞に目を通す。あれこれの事件をくまなく読む。世間との繋がりは、僕にとってこれだけだからね。しかも、夜の時間、僕にはやることがない。結局これだけになってしまいそうだ。

 先が思いやられる。初日を通じての感想だ。でも、僕も給料もらって仕事しているんだ。あれこれの悩みも当然あるだろう。それを超えてこそ仕事と言えるんだ。そう自分に言い聞かせて、寝ることにした。


###一方、その頃…###


 理事長「どうでしたか、様子は?」
 女学生「その…。今度の用務員さんは…。なんと言うか…。」
 マミー「はっきり言いなさい、理事長様の御前です。」
 女学生「すみません。その、かなりオクテのように思いました。私達の足やスカートをあまり見ようとせず、目を逸らしてしまうみたいでした。」
 テニス部部長「失礼します。」
 理事長「あら、あなたも報告することがあるのね。」
 部長「今度の用務員さん、ちょっと恥ずかしがり屋のようで、私たちの体をあまり見ようとしませんでした。素振りを教えるという名目で後ろから抱きついたら、すぐに逃げてしまいました。」
 マミー「…要するに今度の男は、あまりスケベじゃないってことね。大丈夫かしら。」
 理事長「心配は要らないわ。あの人も男。すぐにちゃんと役目を果たしてくれるようになるわ。」
 マミー「前の男は、初日から嬉しそうに女の体をジロジロ見て、すぐに役に立ちそうって期待が膨らんだものです。そして彼は、その期待どおりでした。今度の男もそうなのかどうか、いささか心配なのです。」
 理事長「私が見立てた男よ。心配は要りません。」
 マミー「…かしこまりました。では、お前たちはもう下がってよい。」
 女学生&部長「失礼いたします。」
 理事長「フフフ。」
 マミー「何を思し召されておられるのですか、理事長、いや、サキュバス王メアリィ様?」
 理事長「…ここでは理事長で通しなさい。」
 マミー「はっ。これはご無礼を。」
 理事長「あの男が簡単には女の誘惑に屈しないことは…一目見て分かったわ。今度はわざとそういう男を選んだのよ。前の男はすぐに性欲をむき出しにしてしまった。精を絞るのは簡単だったけど、魔王様の復活のためにはほとんどエネルギーにならなかったのよ。」
 マミー「…。」
 理事長「だから今度は、オクテで、誘惑されても拒否したり逃げ出そうとする『抵抗者』を選んだのよ。抵抗者を屈服させてから絞った精は、復活のための大きなエネルギーになる。それに…。そういう男を少しずつじわじわと堕としていくのも、楽しいのではなくて? フフフフ…」
 マミー「御意。…それで理事長様、本日はいかがなさいますか? 送り込みますか?」
 理事長「今日はやめておきましょう。毎日少しずつ、誘惑を強めて行った方が楽しいゲームになる。そういえば、今日はあなた、彼に会わなかったわね。明日は自己紹介しなさい。」
 マミー「おおせのとおりに。…クックック。」


###闇の一ページ…###


 次の日。朝8時。ずいぶんよく寝た。仕事が午後からで、実質労働時間が短いのは嬉しいのかなんなのか。

 そういえば、昨日は7時にメイドさんたちが来た。今日は寝過ごした。もう帰っちゃったかな。それならそれで、自分で支度すればいい。本来はそれが普通なんだし。

 こん、こん。「失礼しまーす♪」

 メイドたちが入ってきた。昨日と同じようなメイド服だった。ってか、何で僕が起きた時にタイミングよく現れるんだろう?

 「おはようございまーす! お世話いたします!」「…すごいタイミングいいね。」「私たち、あなたが起きるのを待っていたんですよ。交代で時々様子を見に行ったりしてたんです。」「そういうことか。」「ささ、起きて下さい、ベッドメイクしますから。」

 「ねえ、僕は何時に起きればいい? できれば君たちの都合に合わせるけど?」「いいえ、どうぞご自由になさって下さい。」「相手がいつ起きるか分からない、それに合わせてお世話するのも修行なんですよ。」

 「…そういうもんなのか?」「そういうもんです。」「…。」

 昨日と同じように、上等の朝食。それが終わると、メイドさんたちは帰って行った。なんか楽過ぎて、どんどん生活が堕落しちゃうんじゃないかって、ちょっと不安になってきた。

 新しく届いた新聞に目を通す。新聞も全部きっちり読もうとすると、それなりに時間がかかる。時間を潰すにはちょうどいいかも知れないが。

 昼食はカップラーメンにした。

 そして。午後一時。仕事二日目。

 見回りをする。圧倒的に女性の割合が多い学校で、女の園に足を踏み入れているというだけで、なんだか興奮する。そこはかとなく漂う芳香は、女性特有のフェロモン臭なのかな。

 いやいや、何を考えてるんだ。僕は仕事でここを歩いてるんだ。やましい気持ちじゃないぞ。

 学校中を一回りする。どこにでもありそうな授業風景だ。

 おっと、まだ体育館は見ていなかったな。今日はそこも見てみよう。授業の邪魔にならない程度にね。

 体育館に近づくと、ピッピッという笛の音と、キュッキュッという体育館履きの音が聞こえて来た。体育の授業をしているのかな。

 正面から入れば授業の邪魔になる。裏口からそっと入る。ボールとかマットが置いてある倉庫口だ。

 凄いな。こんな倉庫なのに、ちゃんと掃除も行き届いてる。一体僕は何のために見回りしてるんだろう。

 とりあえず器具の破損とか照明の故障はなさそうだ。

 一応、体育館の中を壇上から見てみることにしよう。上段のところにピアノがある。ピアノは赤いカーテンに覆われていて、校歌斉唱などの裏方役になっている。

 僕は学生たちに見つからないように、グランドピアノの陰に隠れて奥を覗いてみた。一体どんな授業をしてるのかな。

 「!」

 学生たちは女教師と一緒になって、レオタードで歩き方の練習をしていた!

 「ハイそこ!背筋をもっと伸ばす。」「はい!」「きちんとした女性はきちんとしたスマートな歩き方にも出るものよ。まっすぐ、足を交差させるように、背筋を伸ばして、股を大きく開いて。そう。その歩き方をマスターしなさい!」「ハイ!」

 なるほど。モデルさんのようなエレガントな歩き方を訓練しているのか。それはそれで結構きつそうだ。でもなんでレオタードなんだろう。

 それにしてもキレイな歩き方だ。すらりと伸びた足が前後にこすれながら、まっすぐ歩き、キビキビと90度に回転してまた歩き出す。

 ピリリリリ!「はい!今日はそこまでにしましょう。」

 若い女性の体育教師もレオタードだ。こちらからは後ろ向きになっていて顔は良く分かんないけど、きゅっと引き締まったお尻がなんともセクシーだ。

 教師の掛け声で、学生たちが集まってくる。前後左右にきちんと整列して気を付けをする。やっぱり宗教系の学校だから規律も厳しいみたいだ。

 「さて、今日の当番は、マミーさんね。」「はい。」

 マミーと呼ばれた女子学生が前に出て来る。髪の毛を長くたらし、自然にかかったようなエレガントなウェーブがかかっている。その顔立ちは、とても20代になる直前とは思えない色気に満ちていた。

 「では教歌を斉唱します。再整列!」

 教歌、というのは多分、教団のテーマソングみたいなものかな。教師の掛け声で、学生たちは配列を変えた。四角く整列していたのが、合唱団みたいに丸みを帯びた配列に変わる。その動きは軍隊みたいに素早い。

 「!」

 マミーと呼ばれた女子がこちらに歩いて来る! そうか、当番というのは多分ピアノ伴奏だ。まずい、ここにいると見つかる!

 僕は急いでその場を離れようとして、あわてて立ち上がろうとした。頭上にはグランドピアノ。ものすごい音を立てて頭をぶつける。

 「誰かいるのッ!?」体育教師が声を張り上げる。まずい、完全に見つかった!

 もう出て行くしかない。「…すいません、用務員です。見回りをしていました。邪魔してすいません。」

 「あら。用務員さんだったの。それなら結構ですわ。学生の授業の様子も見て下さると助かります。」「はぁ。あ、ご、ごめんなさい、これから歌なのでしたね。すぐ去ります。」

 「いいえ、どうぞ学生の歌を聞いて行って下さい。どうぞこちらにいらして。」「え、でも…」「いいから!」

 厳しい感じの、でもギリシア彫刻のように顔立ちの整った、ショートカットの体育教師が、きりっと唇を締めている。これは立ち去るわけにも行かなくなった。

 「それじゃあ、お言葉に甘えて。」「ではマミーさん。伴奏をお願い。」「はい、先生。」

 マミーはレオタード姿のまま壇上に上った。股上の深いレオタードがすごくセクシーだ。いや、普通レオタードはストッキングが付き物だが、みんなナマ足だったのだ。それが僕の性欲をかき立ててしまい、抑えるのに一苦労する。

 やがてピアノが軽やかに奏でられる。キリスト教系なのだろうか、西洋風のミサのような神々しいメロディだ。

 ♪〜〜〜

 歌が始まり、どぎまぎしてしまう。女性だけの高くて柔らかい合唱の歌声が、僕の耳をくすぐっている。しかも歌っているのはみんな若いレオタード姿の学生たち。僕はどんどん魅了されていく。

 歌が終わるまで、勃起せずに我慢できたのは奇跡的だった。歌が終わったので、我に返ったように僕は単独で拍手を始めた。

 「いや、いいものを聞かせていただきました。」「それは良かったです。またいつでもいらして下さいね。」「はぁ。」「…では今日の体育はここまで! 解散!」

 掛け声とともに、学生たちは体育館の隅に走り、各々のバッグを手に取る。

 「うわっ!」僕は仰天した。学生達は、その場で着替えを始めた。といっても裸になるのではなくて、まず上からシャツとスカートを穿き、体をモゾモゾくねらせて巧みにレオタードを脱いでいる。ある意味そのまま裸になるより、見えそうで見えないきわどい着替えシーンが魅力的だった。僕の視線はそっちに釘付けになる。

 さっさと着替え終わると、セーラー服の学生たちは、どんどん体育館を出て行った。僕に微笑みかける学生や挨拶して行く学生もいた。

 「あ、それでは僕もここで失礼します。」

 僕は逃げるように体育館をあとにした。

 休み時間。校庭に出る。ベンチに座って、学生たちの様子を見る。遠くの方で、ブルマ姿の学生たちが集まってきている。次の授業に備えてるってわけか。

 「よーむいんさん♪」

 いきなり数人の女子学生に囲まれた。みんなスカートの短いセーラー服姿だった。

 「え…えっと、何かな?」昨日みたいにまたからかわれるんだろうか。警戒しつつ期待するという複雑な気持ちだった。

 でも学生たちは笑顔で僕の周りに立っているだけで、それ以上何もしなかった。

 その時だった。いきなり風が吹く。

 ぶわああ…

 学生達のスカートがどんどんめくれ上がって行く。学生たちは笑顔のままだ。パンツが見えそうで見えないところまでスカートがめくれて、それでも手で隠そうとせずに不敵な笑みを浮かべている。彼女たちはそれを待ってたというのか。わざと見せるために?

 僕は赤くなって、無言で逃げるようにその場を立ち去った。後ろから笑い声が聞こえる。

 やっぱり女の園の中に、男が一人混じると、こんな目に遭うのかな。

 そんなこんなで放課後。クラブ活動の時間。

 昨日はひどい目にあった。体育系のクラブ見学はダメだ。今度こそ自分を抑えられるか心配だ。今日は文科系のクラブを見に行こう。

 校舎内を回る。学生たちは各々集まってパソコンに向かったり本を読んだり歌ったりしている。

 やっぱり、性を感じさせないのは古来和風のカタいクラブだな。茶道とか華道とか書道とか。おしとやかな文化部なら、今日みたいにスカートを自然にめくれさせてからかうような子はいないだろう。

 僕はまっすぐ茶室に向かう。ここの一角だけ特殊で、日本風の庭や池がある。

 「あら、用務員さん、ご見学ですか?」

 日本庭園にいた和服の学生が声をかける。流石に本格的で、服装も和服にするのか。

 「あー、ちょっと茶道とか見てみたくて。」「ではぜひお茶を体験なさって行って下さい。型はちゃんとしますけど、それ以外はとても優雅で楽しいものですよ。」「ではご馳走になりましょう。」

 僕は学生に連れられるまま茶室に向かう。入り口が狭い。そういう流儀だと聞いたことがある。中に入ると、ひんやりと涼しい。数人の女子学生が和服で正座していた。

 「では。今日は特別に用務員さんが参加して下さいました。いつも以上に気を引き締めて始めましょう。」「はい。」

 ずっと座りっぱなし。お湯が沸いて、抹茶の粉が大きな湯飲みに入り、お湯が注がれる。なんて名前か知らないがヒゲを剃る時にクリームを塗るみたいなヤツでシャカシャカと泡立てる。

 やがてそれが一人一人に回される。僕の順番は最後みたいだ。静かで優雅なひと時。昼間の喧騒なんてすっかり忘れてしまえるような落ち着いた雰囲気。

 一人一人、抹茶に少し口をつけては礼を言い、次の人に湯飲みを回す。

 僕の番が着た。他の学生がやったようにお茶を飲む。ニガイ。よく考えると若い娘たちと間接キッスしてるんだよなあ。

 「では終了いたします。」さっき僕を案内してくれた部長の声で、学生たちが立ち上がる。僕もそれに合わせて立ち上がるけど…

 ぐらり。

 足が痺れてよろめいてしまった。

 「どうしました。大丈夫ですか?」すかさず数人の学生達に体を支えられる。彼女たちとしっかり密着してしまった。「すいません、あしがしびれて…」「初めてですものね。でもよくできましたわ。さ、みなさん、用務員さんを支えて送り出して下さい。」「はい。」

 こうして柔らかい学生たちの体がムニムニと僕の体を圧迫しながら、茶室から出ることになった。

 外へ出て少し経つと、痺れも収まった。「あ、もう大丈夫です。ありがとう。」「どういたしまして。」

 僕は日本庭園を後にした。茶道部の女子たちの柔らかい感触が余韻を残している。

 近くに小さな小屋があった。その小屋も和風の建物。覗いてみると、女子学生たちが生け花をしていた。華道部の部室みたいだ。

 「あ、用務員さん。」「見学ですか?」気がついた学生たちが声をかけてくる。「あぁ…。」「どうぞ中へ。」「…ありがとう」

 中に入ると、部長と思しき学生がいろいろ説明し始める。「大切なのはアクセントと調和なのです。」「さいですか…」「どうぞ、この子の作品もよく見て下さい。」

 僕は一生懸命生け花をしている、和服を着た女子学生の後ろから、生け花を上から覗き込んだ。たしかに美しい。緑をベースにした中に真っ赤な花が中心から少しずれて生けられている。「中心にあえてしないのがポイントなのです。」「はぁ…」

 「!」

 和服姿の学生のうなじが、目の前であらわになっている。その妖艶な細い首筋が、それだけで一本の花だった。和服というあでやかな基調に、「中心から少しだけずれた」スベスベのうなじ。

 「いかがですかぁ…?」ゆっくりと、女の子が顔を上げる、すると今度は、襟元が膨らみ、奥の暗がりに胸のふくらみがちらりと見える。「あ、ああ、いいね、すごく…」「うふふ。ありがとうございますぅ。」

 いかん、和風というのがこんなにエッチだとは! 体育系みたいな直接の破廉恥なエロはない代わりに、精神の奥底までじわりとしみこんでくるような、しっとりとした魅力が備わっている!

 「じゃ、じゃあぼくはこれで!」急いでヒョコヒョコと華道部を立ち去った。限界でした。

 夕暮れ。一日の仕事が終わった。結局エロいシーンを見ただけで仕事らしい仕事はしなかったな。

 女子学生たちが夕食を用意してくれた。

 その夜。

 コン、コン。小さく用務員室のドアがノックされる。

 入ってきたのは…間近では初めて見る、ものすごい美女だった。

 「私のこと、覚えていらっしゃる?」「ええと確か、今日体育の授業にいた…マミーさん、だったかな。」「嬉しいわ、覚えていて下さって。」

 そう、あのマミーだった。日本人とはとても思えない西洋風の顔立ち。白く透き通ったような綺麗な肌。どこか人間離れしているような美しさを兼ね備えていた。

 「そ、それで、どんな用件…」「いえ、自己紹介をしておきたかったのです。」「はあ。」

 「私、マミーは、ここの学校の現生徒会長です。以後お見知りおきを。」「な、なるほど。分かりました。」

 「私、ハーフですの。母がパリの人です。」「そうだったのか。」それで、西洋風の整った顔立ちなんだな。

 「これからも学生たちがいろいろお世話になると思います、イロイロ。よろしくお願いしますわね。」「ああ、できるだけ協力するよ。」

 マミーの用事はそれだけみたいだった。「じゃ、じゃあ。もう今日は遅いから寮に…」「分かっていますわ。でもその前に。」「えっ…」

 マミーは突然、僕に顔を近づけ、軽く唇を触れ合った。簡単なキスだった。「お別れの挨拶ですわ。」

 「…」僕はそれだけでトローンとなってしまった。同時に昼間のエッチな光景が頭の中によみがえる。

 「では失礼します。」

 マミーは去って行った。柔らかくていい匂いのする小さな唇が、僕の下唇を軽く挟み込み、こするように離した。そのゾクゾクする感触が、僕の言葉を失わせていた。

 しばらくして、僕は我に帰った。夜もそろそろふけてくる。オナニーして寝ようかな…


###一方、その頃。###


 理事長「今日の様子はどうでしたか?」
 体育教師「やっぱりオクテのままです。学生達のレオタード姿をチラチラと横目で見ることはあっても、じっと見据えるまでには行っていません。遠くで着替えをさせたのですが、それはよく見ていました。近いと上がってしまうようです。」
 茶道部長「お茶に催淫剤を混ぜたのですが…あまり効果がなかったようです。自制心の方が強かったのかしら。」
 華道部長「部員のうなじを見せても、見つからないようにちょっと見るだけでした。でも、少しは効果があったと思います。」
 学生「理事長様のお力で風をおこしていただいて、スカートをめくって見せたのですが。すぐに逃げてしまいました。」
 学生「報告いたします。昨日用務員さんは、就寝前に自慰行為をなさっていました。監視カメラに収まっています。」
 マミー「やっぱり思ったとおりだわ。彼、昼間は自制心で極力我慢して、夜に思い出しながら射精しているのね。」
 学生「もったいないと思います。」
 理事長「あせらないでも大丈夫よ。」
 マミー「ですが、手は打っておきました。もう彼は…オナニーでは決して射精できない体になっていますわ。」
 理事長「…使ったのね。淫呪を。」
 マミー「はい。先ほど彼の唇を奪い、呪力のこもった私の唾液を微量、流し込みました。無許可で第三級淫呪を発動させたのは勝手だったかも知れません。お許し下さい。」
 理事長「まあいいわ。第三級ということは…オナニーでいくらがんばってもイクことはできず、女性に抜いてもらわないと射精できない体になったということね。ただし夢精はできる。」
 マミー「おっしゃるとおりです。」
 学生「あの…第三級とかって一体…」
 マミー「いいわ、教えてあげる。第四級は、女の色香に気づきやすく魅了されやすい状態になる淫呪。ここの学校に来る男は自動的にこの状態になるわ。もちろん、この状態なら感度良好、あっという間に射精し、しかも何度イッても疲れない。第三級は、今言ったとおり。自分で抜くことはできない。その代わり、彼の見る夢はみんな淫夢になり、夢の中の女性が抜いてくれる状態。第二級は、夢の中の女性がいくら誘惑してもそれでイクことはできず、現実の女性に抜いてもらわなければ、我慢できなくなる状態。そして第一級が、人間の女性でさえ満足させること叶わず。私たち淫魔が相手をしなければ我慢ができなくなる状態。射精はとめどなく、死ぬまで続くわ。まさに快感地獄ということね。儀式の時は第一級が発動されるけど、危険な呪いでもあるから簡単にはできないのよ。」
 理事長「しばらく第三級で様子を見ることにします。二級を発動させる前に必ず私の許可を取ること。今度は勝手な真似を許しません。」
 マミー「はっ! 御意に!」


###闇の一ページ…###

 

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