■domine-domine seil:07 あの の記憶 01

「……?」
 これが、なみだ?
 とか冗談をやってる場合じゃないな。あまり時間がない。寝る前に風呂に入ったからソレはいいとして、考えながら歯を磨いて顔を洗う。
 歩きながら羽織った上着を整えて、もう一度鏡をみる。朝起きて腹が減らないってどういうことだ。無理矢理口に入れたが、この紅茶もいつもよりおいしくない。鏡の向こうの自分が不満げに見返してくる。レーションっぽいアルミパックのビスケットも、見るだけで嫌になる。きっとパサパサしてて甘くてって、甘かったらだいたいなんでもおいしい筈だ。食べられるときに食べるのも仕事だ、と気合を入れるが無理。
 ため息をつきながら、ゼリーのキャップをひねる。こっちのほうがマシか。でもやっぱりおいしくなかった。ただ口あたりだけ少し優しく感じて、幾分か落ちつく。もう一度口にした紅茶が、とても温かかった。何とか食べ終えてほっとする。こんなに寝過ごすなんてショックだと、最初は焦ったが走る程遅れてはないし、このままゆっくり用意しても遅刻はしないだろう。マントを羽織って帽子を被ればおわり。あと武器か。飾りだけど。だからって装備し忘れていい理由にはならない。それからまた鏡をみる。
 問題はこの泣き腫らした目をどうするかだ。


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