■愚蕪の贈り物

「おーい、ティカ、もう上がってもいいぞ」
「え? いいんすか」
「おーおつ」
 まあ、客と言ってもコイツ一人だし、今日はそこそこ売れたのでもう閉めようかと考える。
 小さな簡易テーブルには、冴えない人影。知り合いたくもなかった知り合いというか友というか、まあ、シケたツレってトコか。ユイは相変わらずな気の抜けた目で、暮れた景色を眺めていた。もそもそたこ焼きを運ぶ箸は、反対の手。
 晩飯代わりに屋台に立ち寄る侘しい一人暮らしの勤め人と、自分だって似たりよったりかと、エドガーは苦笑した。
 エプロンを外して、帰り支度を始める後輩だって、まあ、同じようなもんだろう。
 一皿持たせてやろうかな、などと思案していると、今週の新譜をアレンジした、着信音が耳に入った。
「あーもしもし、オマエね、シゴト中に電話してくんなって」
 とか言って、微妙に嬉しそうなのは多分、気のせいじゃない。
 エドガーは、一瞬前までの同士が、急速に遠ざかっていくのを感じた。
「ダイジョウブだって、覚えてるって、じゃあな、また後でな」
 しょうがねえなあ、もう、と苦笑するティカを見る、表現しがたい目玉が4個。
「うわ、どうしたんスか、何かヒトダマ浮いてますけど」
「何もねえよ」
 ナイですけどねナイデスヨ。
 と、心でだくだく涙を流しつつも、好奇心は満たそうとするエドガー。
「ねえけど……お前もしかして」
 視線が携帯にあることに気が付いて、ティカは嬉しげに笑った。
「そうなんす! ついに、彼女持ちになりました」


 ──これも、エドガーさんたちに鍛えてもらったおかげっす!!
 と、頭を下げられても、素直に喜べない先輩であった。


「ナニー!? こ、これがお前の彼女!?」
「女子高生……ていうかマジ可愛い」
 待ち受け画面には、制服姿の娘。シュシュでまとめた緩い巻き髪が、華やかで上品な雰囲気だ。
 アングルから、腕を組んだ姿勢で携帯を持ち、セルフで撮影したものだと分かる。
「いやーそれがね、何かカンチガイしてるガキどもシメたら礼言われちゃって」
 と、次の言葉も出ない二人から、携帯を取り戻し、二つに折りつつ照れるティカ。
「そんで何度か顔合わせて話してるうちにくっついちゃったっていうか」
 守ってくれてありがとう、なんて、恥ずかしいっていうか、マジ照れちゃいますよね。
「助けたってか! そんなイイ話、俺ぁゼンゼンねえ〜」
「そりゃアレっすよ。エドガーさんの暴れ方、ハンパないっすからね……」
 多分助けられた方も引いちゃうっていうか……?
 まあ、自分達はそこにシビれるアコガレル、てなもんだが、いたいけな女の子から見れば、ちと遠慮したいものがあるかもしれない。
 でもまあ、この人にふさわしいのは、そんな普通の女の子じゃイカンと、少年は思うのだ。
「そんじゃオレ、今日も約束あるんで、これで失礼します!」
 お疲れっス! と去っていくティカ。幸せそうな影が遠ざかる。


「あー……」
 残されたものどもは、対岸を眺めてため息をつく。
「つーか、俺よか手前の方がまだチャンスとかあるだろがよ、出逢いのよ」
 若干の間。
「俺はそういう幸せな期待はかけないことにしとるんだ」
 ユイは殊更に乾いた目で呟いた。


 確かに、ある意味人助けが仕事って言えばそうなる。とはいえ。


 そうだ、そんなイイハナシそうそうにあってたまるか!
 思い出しただけでムカついてきた……。
「もう一皿! いやもう二皿」
「一皿で十分だろ! イヤ、ていうかナニいきなりイッキ食いしてんだお前」
 くそー! 何で俺だけこんな目に……! ムカつく〜!
「チキショー! こんなもんこうしてやる!」
 がつがつ。
「あっ手前、食うなら味わって食えや!」
「やかまし! 手前に俺の気持ちが分かってたまるかー!」
「なんだよ良いハナシねえっつたの俺だろーがよ。何で手前が逆ギレしてんだ」
「うるさいうるさいうるさい! お前みたいな男にはわからんのだ……!」
 う〜が〜……!
「つーか! ワケわかんねえ〜」


 ──愛してるんだッ!
 ──僕はキミをッ!!
 ぬるりとした気合いがこもって沈黙、2秒して晴れやかな顔が上がった。
 しかしあまりさわやかではない。スッキリした様子なのにじめっとした雰囲気のまま、彼は傍らのゴミ箱に物体を突っ込んだ。丸めたティッシュ、中身は新鮮。この前までは大切に採取していたが、今はその要もない。十分な量集めたし、もう完成したからだ。
 このミクロ世界の千億の分身は、自分の愛の証だ。
 彼は夢をみるように、満足げに微笑んだ。
 触れようなんて、身の程知らずなドリームだ。直接的に愛するなんて、腐ってなくても早すぎる。
 ゆっくりでいい。
 まずは大好きな甘いものから、砂糖の優しいフォローを介して、
 ──味わって欲しい。
 アンニュイな瞳を向けて、ほんの少しの恥じらいをみせて、キミがお礼の言葉を告げる。そこからでいい。


「ああ……可愛いなあ」
 彼は恍惚と呟いた。
 愛は尽きない。いっそもう一瓶。
 たちまち得ることが出来るだろう。こんなにラブなんだから。
 可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
 可愛いッ!
「スキだユイたん……」
 ハァハァ、彼は今日何度目かも思い出せない製造元を握り締めた。


 ──僕の愛を、受け取ってッ!


 忙しない朝だった。まあ、いつもだけど。ぼんやりしてみられてるけれど、ユイは決して朝が弱い方じゃない。
 おこられる度に5ドル貰っていれば今頃大金持ちだ。しかし遅刻とはほぼ無縁。
 もうちょっと早く起きろよ、と焦った様子の流れをみる。
 急ぐのはいいけど、子供とかを突き飛ばしそうなのはどうかと思う。おにぎり屋のネーチャンにイライラ乗るバスの時間を告げるのはどうなんだ。諦めるという選択肢は無いのか。
 美人もアレをみたら好感度1ランクダウンだ、チョッピリ呆れてため息をつく。横断歩道を渡り終えて、押していた自転車に乗ろうとしたユイは手を止めた。
「あっあのあの」
 おどおどと自分をみる若い男がいる。あまりというか、良くなくて、マズい外見だが犯罪じゃない。見せてはいけないものを出しているでなし、血の匂いもしない。そもそも見下せる程自分もイケてないし。
「あっ……あの〜」
「何か」
 ユイは光に乏しい瞳を向けた。
「あの、お礼をね」
「??」
 お礼参りされるような心あたりはあり過ぎるけど、どうみてもチンピラの類いじゃない。
「覚えてませんかッ?」
 男は暑くもないのにやたら火照った顔で、食い入るように見つめてくる。あまり気持ちのいい光景じゃないけど、風呂には入っているようだし。粗雑に扱うべきじゃないだろう。とりあえず、言い分は聞こう。
「ないです」
 ユイの記憶に無いことに多少はガッカリしながらも、男はぬめりとした笑みを消さなかった。そういう顔だから仕方ないんだろうけど、これ以上近いのは困る。
「えとですね、先日ですね、DQNどもから」
 ハアハア、と息継ぎをしつつ過去の光景をみる。
「可れイヤ華麗に救っていただきましたお礼です」
「はあ」
 そんなこともあったか。どっちにしてもありすぎて細かく覚えていない。仕事ですから、とでも言っておくべきか。ていうかそうなんだけど。
「やっぱり……憐だ……」
 聞き取り辛い話し方だ。聞き返さなくてはならんような用件でなし。スルーする。呆けたそぶりで呟く姿はどうにも不審だ。何もしてなくてもセクハラ呼ばわりされる気の毒な例があるが、そんな目に遭ったことあるかも。ユイは失礼な感想を抱いた。
「私服も似合うね」
「……」
 何だよ、と言いそうになるのを堪える。変な褒め言葉だ。
「いやッ、まあ、その」
 男はもじもじと俯くと、ポケットに手を入れた。
 出てきたのは、予想どおり殺傷力のない物体。小さな箱だ。ラッピングがしてある。
「これはねえ……僕の気持ちです」


 気持ちって、チョット気持ち悪いが。
 人付き合いが不得手な連中には悪気なく挙動があやしいヤツもいる。
 そういう繊細な人生はしらないが、彼らなりに懸命に生きていることとかは理解しているつもりだ。
 意外と器用だな、と思いつつ箱を仕舞う。意外でもないかと思い直したり。ああいう男ってやたらチマチマした事が得意だ。
 良い意味で手作り感に溢れるセンスだし。悪意ナシなら喜ぶべき。
 まあ、くれるんなら貰っておこう。タダだし。
 ユイはセコい人間だった。


「あー……」
 やっと戻って来た自分の机に突っ伏すユイ。もしかして今日自転車以外で腰下ろしたの初めてじゃないか、とか思う。ちらりと目をやった腕には頃合を完全に外した時刻を指す時計。
「おーユイお前また食いそびれてんの?」
 バカだねー、と相棒が涼しい顔で紙コップを傾ける。
「ハラ減った……」
「いいけどよ食うなら早く食わねーとまた何か用事言われんぜ」


 ロクでもない用事をよ、と思うが顔には出さない。そういう耳も目も、Kは持たないことにしている。モチロン口も。
 やたらあちこち動き回っていたりいなかったり、そんなオーバーワークな姿を相棒である自分が涼しい顔して眺めていてもコレと言ってこぼしてこないのも、暇さえあれば課長に小言喰らってるその要領の悪さがさせてるコトだ。多分、そういうことにしておくトコロだ。


 実際微妙に食堂でとかどっかでそば食うとか、出来そうな時間はない。コンビニなら、ダッシュで行けば間に合うか。
 こうくたびれていると何か走るのも面倒に感じる。とりあえず、飴とか、せんべいとか、この際ガムでもいいので何かないかと机を漁ってみる。残念ながら買い置きのカップラーメンも尽きているし、放り込んでおいた茶菓子もそういえば夕べ食った。仕方ないこのまま行きますかと席を立って思い出す。
 カバンに放り込んだ箱。ちょっぴりでも足しになればありがたいかも。


 確か食い物だって言ってたな。ま、まあこの際男に貰ったものでも良いか……。
 早めにたべてね、などと書かれた署名つきのカードをみても、ナゼ自分の名前をしっているのか、そんなこともユイはあまり考えなかった。食い意地のなせる業。ホンモノの女の子[ロリータ]なら、丁寧に解く包装を、一気に剥がす。ご丁寧に白いリボンのついたスプーンまでセットだ。
 なかな気の利いたヤツだ。チョット見直した気になって、少女趣味な瓶を眺める。パンナコッタかブラマンジェ。それかフロマージュ・ブラン? ──ないか、イヤあるかもそういうのも手作りしかねない。どれも好きじゃないけど、まあ食えるならナシじゃない。手書きのラベルが貼ってある。細かいな、と感心する。


 殺そう。


 ユイは震える手で物体を箱に戻し、脇に立てかけた得物を掴んだ。
 途中ですれ違ったKが肩をすくめる。忙しいヤツだ。おバカな相棒が、アレでナニを斬るのか、ソレは考えないトコロ。
 しかし今回は、聡い彼にも本当が見えない。多分。


「ぷりんぷりん♪ みるくぷりん♪」
 結局、その後の脳内1人会談の結果、愛は多い方が良いと結論付けられた。
 きっと気に入ってくれたハズ。だからもう一瓶、なんなら永遠に捧げ続けても。
 涸れ果ててもいい。彼の為なら。イヤ、あのコを思うからこそ、この愛は製造され続けるのだ。ヒーローであり、お姫様。1人で2回オイシイあの可愛い子が、愛を含んだアレを。可愛い唇が、凛々しい制服の下のスレンダーで愛らしい身体が、飲み下して受け入れる。この熱い気持ちが溶ける、カラダの中で、種が殻を割って根を張るように。
「種が……! 種ッ……ハァハァ」
 そうだ、愛情を植える行為だ。
「ユイたん……ユイたんが僕のアレを……ハァハァハァハァハァ……愛の種をハァハァ種付け種付けハァハァハァ」
 キミがもっと慣れたら、イロイロ。たっぷり、教え込んであげるよ。
 彼の不器用な恋心は、真っ直ぐユイに向けられている。但し、かなり歪な樹だ。歪んだ蔓だが、激しく絡みつくように、日々成長を遂げてきた。あの日下賎なものどもから、男を守った時からだ。一目惚れ、人形みたいなあの身体で、クソ袋以外の機能を持たない有象無象→脳のないチンパンの群れを圧倒する。完膚なきまでに叩き潰すことも、きっと可能だろう。精一杯潜って調べても、データベースから引き出せたのは少し変わった仕事をしているのか、それともぼんやりしているだけなのか、そんなことくらいしか。名前とウソかもしれない肩書きその他。トモリ=ユイ。FOREST刑事部所属の巡査部長。見えないけどお酒も飲めるしタバコも吸える、だけどタバコはやらない。お酒だって嗜む程度。嗜好品は甘いもの。そこだけは、あの守ってあげたいような外見どおりだ。結構な免許だってあるけれど、車は持ってなくてMTBがお供。朝勤なら朝、夕勤なら夕方、決まった時間に、あの交差点でたそがれてる。猫みたいにぽやんとしてるけど、遅刻はしない質だ。それが、男の知ってるあのコのすべて。
 好きになるのに必要なものは、そう多くない。
 深すぎる情の泥の中で、彼は子猫の夢をみる。
 猫のようにつれなくてガラスのように透明なお人形さん。
 激しく好みだった。運命の出逢いだった。
「ユイたん、ユイたん」
 ああ、キミを愛してる。
 足音が聞こえる。僕の胸に飛び込むのを躊躇って、キミは今日は触れてこない。僕は鷹揚にそんなキミを見守る。慈しむ。
 ゆっくり育てればいい。
 僕の愛はキミのお腹の中にある。
 キミの足音は軽い。僕の鈍重なソレとは違う音が階段を駆け上がる。痛々しい程の白い手袋の手が、ドアをノック──現実のドアは、ちょうつがいごと吹き飛んだ。


「すごい……サイバーウェア。今の左足で一撃だよね」
 みせて触らせて。黙って見下ろすユイに、嬉しそうににじり寄る。
「両手には、ブレードが入ってるんだよね」
 夢をみるように、ユイの手を握ろうとする。ソレはすかしてかわす。殺気がなくても握らせたくない手だってある。
「それでどうやって悪者を退けるのか、みたい。可憐な手からむくつけき刃を生やす、ある意味エロスです。萌えです」
 熱い視線が絡みつく。
「僕の中では年齢高めのロリータv 儚げクール無表情、いつかワラウトイイヨみたいな少しずつ心を開く過程が肝ッ……! 無骨な装備に華奢な肢体、愛らしさに秘めたる影をもち──これでご飯3杯はイケますよ!」
「言いたいことはそれだけか」


 見つめるだけの淡い想いから、飛躍的な進歩。一時的接触。但し靴底とか。ああグーはやめて。
 でも好きなんだ。
 やっぱり、制服姿が最高だ。可愛いあの子に酔いしれる。でもやっぱり痛いのはイヤだ。


「どうだった? ぼ、僕のプレゼントのお味は」
「食うわけないだろーが!」
 怪訝な顔に変わった男に言ってやる。
「ふざけたラベル貼りやがって、あんなもん食えるか!」
「え……☆」
 こうなると細かいリアクションまで腹立たしい。ユイは今すぐにでも袈裟懸けに振り下ろしたいソレを懸命に堪えた。
「何ムカつく驚き方してるんだ」
「キミ……」
 つまらぬものを斬りたくはない。しかし鯉口を切らずにいられない。
「早く言え」
「は、はひッ」
 いちいちもったいぶる物腰に、イライラと威嚇してしまう。
「アレに、何が入ってるか……わかるの?」
「わからいでか」
「そ、そんな……純粋で汚れを知らないキミのような天使が」
 そのままうつむいてぷるぷると震え始める。
「……ッッ」
「ダイジョウブか?」
 めんどくさいヤツだが、病気なら半殺しは後回しだ。
「せ」
「……」
 病気なのは間違いないが、死にはしないな、と思いつく。
「……せッ、せ、せッ、……せせッせせせせせせせ」
 実に名状しがたいが、多分コイツなりの恥じらいだ。
「せいせいせいせいせい」
 途中でユイの顔を死ぬ寸前みたいな顔で見つめ、更にテンパり始める。
「精液ぐらい知っとるわ! 俺を何だと思ってるんだ!」
「ぎゃふん」
 今のは顔面に靴底がめり込んだ悲鳴だと思っておこう。
 殺し足りないが、軟弱そうなガタイだから仕方ない。ユイはそう思ったが、2秒で男は復活した。割れた眼鏡を無理に押し上げて不敵に微笑む。
「僕ぁビッチ萌えも守備範囲ですから!! エロい子バンザイ!!」
 後は手が勝手に動いて、男のみぞおちに刀の鞘がめり込むのをユイは黙って観察するのみだった。
 しかし、やはりというか、男は数秒で復活する。
「人形かと見紛う可憐さ、清楚でありながら淫らで甘く、儚げでありながら強く鋭くハァハァ、まさに薄氷のごとく折れそうな刃……堪りません」
 所々耳が痛いが、コイツに言われたくはない。半殺しで済むか、全殺しだ。この変態をどうしてやろうかと思案する。
「ユイたん、ユイたんもうもうもう」
「ちょ」
 襲い掛かってくるのかと思わず引きかけたユイだが、男の行動は更に斜め上だった。
「チョット待ってね☆」
 警戒しつつも固まるユイの前で、男は静かにうつむいた。
 衣擦れと安価な金属音だけが狭い玄関に響く。あとは男の熱い吐息。
「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」
「こらー!」
 公然わいせつ罪。
 ココまで堂々とやる奴は……そう珍しくもない──腹の立つ事に、自分の前でこういうコトやりたがる──か。よくいるからって流せと言われる道理はない。
 ユイは黙って鞘を振り上げた。


「どういう神経しとるんじゃお前! 生産ラインごと叩き斬ってやろうか!」
「そ、それだけはご容赦を」


 この場合、悪意があった方が遥かにマシだ。
 ──手作りミルクプリン→2週間掛かって集めた愛のエキスです。キミへの熱い思いをこめて僕の分身を絞りました! そのまま(照れっ/// だとキミにはまだ難しいだろうから(いつかは……ねv) 大好きな甘いものからどうぞ☆チュ(^・^*)
 愛してるで総てが片付けば警察はいらない。


「ででッ、でもですね」
「この期に及んで何だ」
「滅菌は完膚なきまでに済」
 2気圧121℃20分で、と無駄に誇らしい。
「繊細なキミのお口に入るものだから……ハァハァ、調理器具は新品の上こうして無菌状態にしてるんだから食中毒の心配もないよ」
 箱も確かにお安くない保冷機能が付いていた。
「だからせめて一口……ねッv
「ね(はぁと)じゃネーヨ! ソレ以前のモンダイだろうがしばくぞ」
「ひーい」
 拳を振り上げるユイに、怯えた目を向ける。が、微妙にキラキラしているのは何だろう。夢にうわついた瞳のまま、ドタマは庇いつつ、男はこう言い放った。
「だ、だけどこうやってワザワザ僕の家まで訪ねてくれるなんて、キミにもそれなりの覚悟ってものがあるとかないとか」
「覚悟が必要なのはお前だ」
 ユイは真っ直ぐに立てた刀に重ねて白手袋の手を置いた。
「ご丁寧に住所氏名まで書きやがって……目をつぶって歯を食いしばれ」
「あああ〜」
 これは断末魔だ。殺してないけど。何気に嬉しそうに聞こえるとかは、考えないトコロだ。
 いつものようにイカれた犯罪者をしばき倒したユイの脳みそに、いつぞやみたいに再犯≠フ二文字がちらつく。
 だから考えるトコロじゃないんだって、とニューロンの海に無理矢理沈めてやった。
 こんな撃墜マークはそうめんの代わりに金魚に喰わせよう。
 ユイは飼ってもいないペットの夢でもみて、ムナしい現実をスルーした。つもりになったワケだ。

 (1stup→091106fri) clap∬


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