高校に入って間もなくの頃。
「愁(しゅう)、オレさ、リンとつき合うことになった」
これまで、誰のものでもなかった隣に住む幼なじみは、目の前で照れくさそうにはにかんだこの男と交際することになったらしい。
「・・・・・・ふぅん」
オレは、生まれて初めてポーカーフェイスというもので平静を装い、どうということもないように、その場を取り繕った。
けれど、動揺と失望と、嫉妬、あらゆる感情が胸の中で渦巻き、煮えたぎるような心の中は焼けついて。
それから間もなく、
リンの雰囲気が少しだけ変わった。
あまりにも微少な変化に他の誰が気付くだろう。
彼女を見続けてきたオレだから些細な変化までが手に取るように分かる。
だから、その理由に気づくまでさほど時間はかからなかった。
リンは、双子の弟、智(とも)の腕の中で女になったのだ。
最初にあの子に触れたのはもう1人の自分。
あの子を汚したのはもう1人の自分。
オレがなっていたかもしれないもう1人の自分。
せめてアイツじゃなければ、
同じ顔のアイツじゃなければ、
産まれる前から誰よりも一番近かったアイツじゃなければ・・・
ずっとずっと見つめてきた。
だから、せめてあの子だけはオレのものにしたい。
そう思うのはとても自然なことだろう?
智の隣で笑うリンを見て、
智の隣に寄り添い、腕にしがみつくリンを見て、
あれから、二年
オレはもう、とっくに限界をこえてる・・・・・・・・・
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