註:佐藤美和子刑事について

   原作には佐藤刑事の年齢に関する記述がないようです。ただ、同僚の高木刑事に
  関しては26歳という説があると聞きました。そして佐藤刑事は高木刑事より2歳
  年長だということもわかっているようです。これらの説から推測しますと28歳と
  いうことになります。これは彼女の年齢に対するもうひとつのヒントになる警部補
  という階級からもある程度納得できますので(それにしてもギリギリですが)、本
  作では佐藤美和子28歳説を採用しています。従って、作中の美和子の昇進状況も
  すべて推測です。
   もうひとつ、作中で佐藤刑事が発砲するシーンがありますが、この際彼女が使用
  している拳銃を原作と変えています。原作漫画でも発砲シーンがありますが、この
  時はリボルバーを撃っています。現実では、それまでの警察官用拳銃のスタンダー
  ドであったニューナンブM60は既に主流ではなくなっているようです。同じリボ
  ルバーのS&Wエアウェイトに改編しつつあります。原作漫画でも、彼女がリボル
  バーを使っている描写があるのですが、絵が小さく、銃種の判断は困難でした。
  そこで私は敢えてオートマチックのSIG−P230JPを使わせました。この銃
  も、ニューナンブに代わって配備されつつある銃です。主にSPや私服警官用とい
  うこともありますし、何より小型でスマートなピストルで、佐藤刑事によく似合う
  と判断したためです。

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 毛利蘭の誘拐が明るみになったのは攫われた当日だった。
午後3時には戻ると言っていたのに4時を過ぎても帰宅しなかった。
滅多にないことだったので、コナンは今朝の新聞記事と結びつけ、厭な予感がした。

小五郎にもそう言ったのだが、呑気な父親は顧みなかった。
蘭とて年頃の娘なのだから、たまには遊んで帰ることもあるだろうということだ。

コナンもそう思いたかったが、念のため学校に連絡を入れてみた。
応対に出た教師は、空手部の練習は2時過ぎには終わり、もう武道館には誰もいない、
と言った。
もう既に夕方6時になっており、こうなると小五郎もさすがに心配になってくる。
熊のようにウロウロするだけの蘭の父親にコナンが言う。

「落ち着きなよ、おっちゃん。まだ結論出すのは早いよ」
「お、おう、そうだな……」
「……そうだ、園子おねえちゃんだ。一緒に帰ってるかも知れないよ」

それもそうだと、小五郎が園子に連絡を取った。

園子は、蘭がまだ帰ってこないことを聞くと大層驚いて、すぐに小五郎の事務所まで
飛んできた。
蘭を最後に見たのは彼女であり、その話を聞いて大体のことはわかった。

なんだかんだ言っても、蘭に取材を勧めたのは園子であり、彼女はそのことに対し
過剰に責任を感じている。
最後には泣きながら小五郎とコナンに謝ったが、別に園子の責任ではないだろう。
何とか宥めて、あまり気にしないように言い聞かせて早々に家に帰した。

園子の話を信じるならば、これは誘拐の疑いが極めて強い。

「……」

小五郎は無言で電話を取り、警視庁に連絡した。

ほどなく駆けつけてきたのは目暮警部と佐藤美和子刑事である。
ふたりともかなりショックを受けていた。
ほとんど身内と言ってもいい小五郎たちにあの件が絡んでくるとは思いもしなかった。

小五郎は、コナンのフォローをほとんど必要としないほど理路整然と状況を説明した。
普段にない締まった顔つきだ。
娘が拐かされたということもあるのだろう。

「……」

一通り話を聞き終えた警察のふたりは言葉がなかった。

まず誘拐に間違いあるまい。
それも、かなり手際が良い。
大がかりな組織的なもので、とても単独犯とは思えなかった。

そういくつも組織的な誘拐団があるとも思えない。
となれば、やはり例のパレット絡みなのだろうか。

「すると、蘭ちゃんを名指ししてきたのね?」
「そうらしい」
「ということは、蘭ちゃんを狙った計画的なものってことかしら……」

形の良い顎に指を当てて考える美和子を見ながら、上司の目暮が言う。

「そうだな。しかし、午後2時過ぎに誘拐されて、もう午後8時近い。なのに…」
「身代金の要求も何もない」

つまり営利誘拐ではないということなのか。
それならパレットの犯罪だという可能性がますます高くなる。

「ねぇ、もしかして新聞とかに出てる連続誘拐なの?」
「!」

目暮も美和子もハッとしてコナンを見た。
美和子は、子どもとはいえコナンの推理能力を高く評価している。
が、これだけの情報でいきなりパレットに結びつけたのを見て、改めてコナンを見直
した。

察したのか、目暮が答えた。

「まだはっきりとはわからんよ。可能性はある、という程度だな」
「そうよ、コナン君。それに、まだ完全に誘拐と決まったわけではないのだしね」
「……」

そうは言ったが、恐らくパレットで間違いあるまい。

誘拐事件というのは、加害者側の目的は概ねふたつが考えられる。
ひとつは金銭目的や要求を通すための人質という意味合いである。
これが最も多い。

だがその場合、攫ったら時間を置かずに被害者の関係者に連絡をしてくるのが普通だ。
そうしなければ誘拐した意味がないのだから。
しかし今回はそれがない。

ということは、必然的にもうひとつの方ということになる。
攫った相手そのものに目的がある、ということだ。
それは殺すためであったり、本人から金銭等の要求を通すこともある。

だが、カネでも殺害目的でもなければ。
パレットの目的と合致してしまう。

しかし、これはまだ警視庁内部での極秘事項であり、いかに元捜査一課刑事とはいえ、
今は民間人の小五郎には言えなかった。

「毛利さんに怨みのある者の犯行とも考えられます。その点の心当たりは?」

美和子はわざとハズした問いをした。
放っておけば小五郎やコナンは自分たちで動こうとするだろう。
だが、今までの犯罪者たちと違い、今回の相手は「黒の組織」に匹敵するような大が
かりなものだ。
ミイラ取りがミイラになる危険性が極めて高い。
まして、コナンなどが動けば、彼自身が誘拐され売り飛ばされかねないのだ。

「こういう仕事だ、まったくないとは言わん。だが……、そういうことなのか?」
「……」

小五郎が不審そうに美和子と目暮を見るが、彼らは視線を外してしまう。
小五郎がコナンを見ると、彼もどうやらそうではないと踏んでいるように見えた。

「いずれにせよ、捜索願は受理します。ですから、警察に任せてください。今回は…
…今回だけは勝手な行動はとらないよう願います」
「……」

目暮が固い表情のまま、固い口調でそう言った。
小五郎との間に視線が絡まったが、双方何も言わなかった。

その時、コナンが気づいて声を上げた。

「あ……」
「なに? どうしたの?」
「これ」

園子から預かった名刺である。
現場で、誘拐犯と思しき男から受け取ったものらしい。
そう言うと、ふたりの刑事の顔に喜色が灯った。
初めての証拠らしい証拠なのだ。

美和子が礼を言ってそれを受け取り、ふたりは事務所を辞去した。
目暮と美和子を見送った小五郎が、ぽつりとコナンに言った。

「どうもタダごとじゃないようだな」
「うん……」
「なんでやつらが来たと思う?」
「うん、僕も変だと思ってた」

こういう場合、まず最初に来るのは所轄の警察署である。
いきなり本庁の刑事がやってくることなど、まずあり得ない。
なのに美和子たちが来た。
それも班長の目暮警部を伴って、である。
つまりこれは広域事件だということになる。

「俺は俺で動く。だが……」
「……」
「コナン、おまえはやめとけ。少年探偵団もなしだ」

* - * - * - * - * - * - *

通常、刑事の捜査活動は二名一組で動く。
フィクションでよくあるような単独行動はあり得ないし、3人、4人と連んで動く
ことも、またない。

小五郎の事務所を訪れた翌々日、美和子は米花町から遠く離れた港に来ている。
匿名の通報−つまりタレコミがあり、そこの某倉庫で、2〜3人の縛られた女性を
見たという情報が寄せられたからだ。

かなり胡散臭い内容であり、どこまで信用できるかわからなかったが、取り敢えず
調べてみることになった。
何しろ、ほとんど物的証拠がない事件ばかりなのだ。

もう辺りはすっかり暗く、夕方というよりは夜になっている。
街灯も少なく、人通りもない。
この不況で仕事がないのか、この港も活気がなかった。

美和子は相棒から2メートル近く離れて歩き、相手を見もしなかった。
それもそのはずで、相方に組まされたのが一柳警視だったからだ。
一柳の方は、眼鏡の下からいやらしそうな視線をちらちらと美和子に送っている。

通常、事件が発生すれば、管轄内の所轄署が捜査にあたる。
その捜査状況に進展がなければ、概ね3ヶ月から半年くらいで本庁が介入して捜査
本部を創設するのである。

今回は所轄署の手に負える事件ではないし、そもそも所轄署にはこの件に関しての
情報すら下ろしていない。
従って警視庁が担当することになった。

しかし、なにぶんにも日本にとっては急に持ち上がった話だし、今回のような急展開
で、組織的に対応しきれていなかった。
そこで、パレット事件対策捜査本部を結成し、専従捜査班を創設するまでは、臨時で
捜査一課、二課、四課で現在事件を担当していない者がかき集められ、対応すること
になったわけである。

その際、捜査課の刑事たちは、外事課の連中などと組まされることになったのだが、
なぜか美和子は警察庁の一柳と組まされた。
通常、所轄と警視庁の刑事が組むのが普通だから、この場合、美和子の方が所轄扱い
ということだろう。

それもあってか、美和子は不機嫌である。
一課同士だから高木と組むのはムリとしても、よりによってという感じだ。
ちらっと視線をやると、一柳は相変わらずこっちを見ている。
胸が悪くなった。
美和子と組んでいるのも、こいつが自分の地位を利用してそうしたのではないかと
すら思っている。

「美和子さん、例の名刺はどうでした?」
「……」

馴れ馴れしく「美和子さん」などと呼んで欲しくなかった。
美和子は固い声で答える。

「その雑誌の編集部へ行って本物の名刺を貰って確認しましたが、偽物でした。
デザインはまったく同じに作ってありましたけど」

本物の名刺を入手し、スキャナで取り込んでパソコン出力したらしい。
プリンタがあまり上等ではなかったらしく、滲んでいたり色ズレもあったから、
見破るのは簡単だった。

「そうですか。しようがないな……」
「は?」
「いえ」

一柳は軽く首を振って話題を変えた。

「失礼ですけど美和子さん、28歳なんですって?」
「え?」

急に話が変わって、美和子も戸惑う。
しかし、いきなり女性の年齢を聞くのも非礼だと思った。
それをセクハラだ何だと騒ぐ気はないが、少なくともこの男とそういう話はしたく
ない。
だから黙っていた。

「……」

美和子の表情が厳しくなり、口が閉じられたので、さすがに一柳も察したのか、
喉を鳴らして「くくく」と笑って言った。

「いや失敬。そのお歳で警部補と聞いたから、これは優秀な人だなと思いまして」

美和子は四年制大学を出て、22歳で警視庁採用試験に合格している。
当然、巡査からスタートだ。
そして25歳の年に巡査部長に昇進し、27歳で警部補になった。
実はこれ、異例なほどの出世速度なのである。

ノンキャリアである美和子たち普通の警察官は、巡査部長の昇進試験を受けるため
には一年以上の実務経験がなければならない(高卒の場合、四年以上)。
とはいえ、有資格者だからと言って、受験すれば簡単に合格するというわけではない。
それぞれの階級内で人員枠は決まっているから、どんなに良い成績を取っても合格
昇進するとは限らないのだ。
上での昇進や退職、異動等で空きが出来て初めてなれるわけだ。

従って、警視庁などの大組織ではかなり難しいものとなる。
40名枠で受験者が5000名なんてことも珍しくなく、競争率は100倍、20
0倍が当たり前なのだ。
だから試験で満点を取っても、他に満点者が多数いれば合格できない可能性も大い
にある。

おまけにこの試験がかなり難しい。
教科書や参考書の丸暗記ではどうにもならないのである。
それだけに、相当気合を入れて勉強に取り組まないと高得点はおぼつかないらしい。

しかも、それを現場実務と並行して行わなければならないのだ。
勉強オンリーなんてことになれば現場で浮いてしまうし、実務に身を入れれば勉強が
疎かになる。

そんな中、美和子は実務もしっかりこなして、わずか2年で合格してしまったのだ。
巡査部長になれるのは30歳前後というのが通説だから、25歳でパスした美和子は
かなり早いのである。

警部補への道も同じだ。
巡査部長として実務経験一年以上が必要だが、実際は二年以上かかる。
これは、巡査部長に合格したら、巡査部長任用講習を警察学校で受講しなければなら
ないからだ。
これが6ヶ月ある。

27歳で警部補に昇格した美和子は、ストレートで合格しているということになる
のだ。
極めて優秀と言えよう。

「キャリアほどじゃありませんわ」

美和子は顔を背け気味でそう答えた。

一柳や、一課の白鳥警部たちのような「キャリア」というのは、一般警察官とは
まるで違う。
これは警視庁を含む各地方警察採用の地方公務員ではなく、警察庁が直接採用した
国家公務員ということだからである。
彼らは、年間で20名いるかいないかという合格者しか出ない超エリートだ。
だから警官というよりは警察官僚と言った方が正しいだろう。

一方、警視庁などは年に6回も警官採用試験がある。
雲泥の差なのだ。

キャリアの方の昇進は、ノンキャリアとはまるで異なる。
何しろ昇進に試験などというものは一切ないのだ。
なにせ22歳で採用された時点でいきなり警部補になってしまう。
それ以下の階級になることはないのである。

一年で警部になり、そこから二〜三年で警視になる。
つまり、この時点で、もう所轄署の署長になったり、各県警本部の課長くらいに
なってしまう。
まだ20代半ばから後半である。
一柳はこのあたりだ。

まさにエスカレータ式だが、これ以上はその人物による。
35歳くらいで警視正になれるが、通常このあたりまで。
あとは枠もあるから全員とは行かない。
適当に民間へ天下るというわけである。

「そうですけどね。でも美和子さんほどの実力なら、試験だけじゃなく実務でも昇進
できそうですね」

警察の昇進は、キャリアを除けば基本的に試験である。
ここが軍隊と大きく違うところだ。
軍も昇進試験はあるが、手柄を立てれば昇進可能である(もっとも、自衛隊は実戦の
ない軍隊だから、この限りではないのだが)。
警察にはこれがないのだ。

稀に、全国的な大事件で大手柄を立てて警視総監賞を受賞し、昇進したという例もな
いではないが、極めて珍しい。
中には、ただの一度も昇進試験を受けず現場実務一本、大手柄に大手柄を重ねて、
巡査から警視にまで昇ったという伝説的な刑事もいたが、滅多にない奇跡的なことだ
からこそ伝説になったのである。
こんなことはほとんどあり得ないだろう。

こんな話につきあう気はなかったので、美和子は話を切り替えた。

「それで、その倉庫というのはどこですか」
「じきですよ」
「そのタレコミ、アテになるのですか」
「ガセかも知れませんけどね、無視もできないと思って」
「……」

ここでふっつり会話が途切れた。
倉庫群の一角で、突っ立っていたふたりの男が、こちらに気づいて慌てて倉庫に駆け
込むのが見えた。
シャッターの上に「No.3」というプレートが見える。

「美和子さん!」

さすがに一柳も反応し、厳しい声をかけた。
美和子は男たちが逃げ去った倉庫に走る。
重い鉄製の扉の隙間がわずかに開いている。

「……」

美和子はそこに手を掛けて一柳の方を見た。いけ好かない相手ではあるが、同じ警察
官である。
任務は遂行せねばならないし、協力しなければならない。
こういうことに私情は挟まないのが美和子のいいところだ。

美和子の視線を受けて、一柳も軽くうなずいた。
手はスーツの裏に行っている。
銃を握っているのだろう。

美和子も自分の銃を抜き、スライドを引いて初弾を送り込んだ。
そして一気に扉を開けると、一回転して中に転がり込んだ。
タイトスカートを身につけていたが、気にする余裕はなかった。

「……」

内部は静まりかえっている。
誰もいないように見えた。
美和子は慎重に歩を進めた。
一柳は美和子の右側から壁沿いに進んでいる。

倉庫の中程まで進むと、重く軋む音が響いて鉄扉が閉じた。

「!」

美和子は思わず振り返ったが、間髪入れずに、今度は前方から破裂音が響く。

ドンッ!
ドン!

密閉された倉庫内ということもあって、重く腹に響くような炸裂音が二回轟いた。
銃声である。

美和子は慌ててドラム缶の脇に身を潜めた。
弾着は遠かったようで近くで跳弾している様子はなかった。

実務経験が圧倒的に不足しているだろう一柳は、もちろん実戦経験もないだろう。
気にはなったが、今は現状把握と自分の身を守ることで精一杯だ。

美和子にしたところで、発砲したことはあるが、こうして撃ち合いになったことは
数えるほどしかないのである。

ドン、ドン!

またしても銃声がした。今度は発火光を確認できた。
よく見ると、そこで微かに動く影がある。
美和子は、無駄だとは思ったが念のため警告してみる。

「銃を捨てなさい! 警視庁捜査一課よ!」

ドンッ!

返答は銃声だった。
美和子は、警告射撃は無意味だと判断し、発火点目がけてトリガーを引いた。

バンッ!

小型の銃が鳴った。
相手の銃声より軽い。
敵の重い銃声からすると、9ミリ口径以上の実銃である可能性が高い。
中国軍横流しのコピー・トカレフやロシア流れのマカロフあたりではないという
ことだろう。
ヤクザなどではないらしい。

男がひとり、一柳の方へ向かって走ろうとしているのが見え、美和子は迷わず引き
金を二度絞った。

「ぐっ!!」

美和子の銃が吠えると同時に、黒い影が膝を抱えて転げた。

敵方に動揺が走った。
取るに足らないと思っていた女刑事の思わぬ反撃に怯んだのかも知れない。

立て続けに敵の拳銃が唸った。
数人いるらしい。
敵方の銃声とは異なる銃声が響く。
一柳も撃っているようだ。

美和子はポケットから携帯電話を取って見たが圏外になっている。
倉庫内が電波封鎖されているらしい。

「ち……」

美和子は舌打ちする。
こんなことなら、役立たずの一柳に応援を呼ばせ、倉庫突入は自分だけですれば
よかった。
その時、暗闇の中から男の声がした。

「そこまでだ刑事さん」

ハッとして前を見ると、5人ほどの男のシルエットが浮かんでいる。
パッと明かりが灯った。

「!」

一柳のバカが捕まっている。
4人に囲まれて頭を銃で小突かれていた。
グロック17のようだった。
一見、玩具っぽい形状のプラスティック製だと銃器対策課の連中から聞いたことが
ある。
そのグロックをくるくる回しながら、ひとりが言った。

「お仲間を助けたけりゃ銃をこっちへ放りな」
「……」

やむを得ない。
美和子は名残惜しそうに自分の銃を眺めると、屈んで相手に向かって滑らせた。
それを靴で抑え、拾い上げた男が「ほう」と感心したように言った。

「シグか。ジャポンの警官はリボルバーだと思っていたが認識不足だったようだな」
「……」

外国人のようだった。
かなりの長身で、やや尖った頭頂部は禿げ上がっている。
ブルー・アイで、若い頃はかなり鍛えたらしい体つきだ。
年齢は五十歳前後だろうか。

「ザウアーのP230か。スイス……いやドイツ製か。それにしてもマイナーな銃
だな。そういえば、この国の軍も確かシグのピストルを使っているんだったな。
相変わらず日本人はドイツが好きなのかね? ん?このJPというのは日本仕様と
いう意味か」

銃に興味があるのか、美和子の小型拳銃をぶつぶつ言いながら眺め回している。

「女の警官にしてはいいウデだと思ったが、7.65ミリ弾だからか。9ミリより
は狙いやすいからな」

そう言うと、美和子にふくらはぎを撃たれた部下を冷ややかな目で見て言った。

「まあ、それにしても悪くない腕前だ。この薄暗い中、移動目標に命中させている。
しかも、ちゃんと急所は外す。日本の警官は滅多に射撃練習しないそうだしな、
その割にはなかなかだ」
「それはどうも。あなたどこの国の人?」

背中に銃を押し当てられ、両手を頭の後ろに組まされて、彼の前に引き出された
美和子が訊いた。

「詳しい話はあとで彼にでも訊きたまえ」
「あっ……」

銃を突きつけられ、両手を上げていた一柳がいつのまにか腕組みして美和子の後ろ
にいた。
その手には自分のレディスミスが握られ、ニヤニヤと彼女を見ていた。

「あ、あなた、一柳さん……」
「申し訳ありませんね、美和子さん。実はこういうことでして」
「そんな……」

呆然とする美和子を差し置いて、外国人が言った。

「イチヤナギ、もうこういうことは困る」
「わかってますよ、ミシェルさん」

ミシェルと呼ばれた外国人は、自分の銃を収めると一柳を諌めるように言う。

「請け負った仕事以外の監禁・調教は余計なリスクを背負うことになる」
「これっきりですよ」
「今までの君の実績を考慮して、今回だけはこういうことになったがね。私利
私欲で動いてもらっては困るのだ」

そう言い捨てると、ミシェルとその部下らしい男たちは倉庫の奥へ立ち去った。
彼らに代わって彼女に銃を突きつけている一柳に向かって、美和子が叫ぶ。

「あなた、まさかやつらと……」
「その辺はあとでゆっくりと。ふたりっきりになった時にでもね」

「くくく」といやらしく笑った一柳は、これからたっぷり見られるであろう美和子
の痴態を思い浮かべ、ほくそ笑むのだった。

* - * - * - * - * - * - *

 牧田は軽く欠伸をしながら、指示された部屋に向かった。

毛利蘭の調教から三日目になる。
この二日の仕込みで、かの美少女の肉体がよくわかってきた。
極上もので、嬲りがいがある。

さてこれから、という時に、新しい獲物が入ったという知らせが来た。
今までヒマを持て余していたし、精力絶倫の彼にとってはふたりくらい並行して犯す
くらいがちょうどよい。
双方の女体が、双方に対する気分展開になるくらいだ。

それだけに、次の獲物は蘭とは異なった美人であって欲しいと思っている。
似たタイプでは息抜きにならない。

部屋の戸を開けた牧田は、願いが叶ったことを知った。
椅子に座らされ、後ろ手に縛られている妙齢の女は、蘭とは違いおとなの色気を漂わ
せていた。
入ってきた牧田を見て一瞬驚いたような顔を見せた後、気の強そうな表情を引き締め
て彼を睨みつけている。

こいつはいたぶり甲斐がある……牧田はそう思いながら上着とシャツを脱ぎ始めた。

「……」

美和子は、牧田の背中に華麗な龍の彫り物を見て一瞬驚いたような顔をした。
本庁で受けたブリーフィングでは国際的組織だと聞いていたし、先ほどの銃撃戦の
時に出てきた男も白人だった。

目の前の男は、白いスーツに白いスラックス。
おまけに白のエナメル靴だ。
角刈りやパーマではないものの、目つきも悪くこめかみのあたりに傷がある。
おまけに背中には昇り竜の入れ墨だ。
どう見たってメイドインジャパンのヤクザに見える。
しかし、日本の最大暴力団を持ってしても、警察官僚を抱き込んでの大規模国際犯罪
を行なう力量はないだろう。

するとこの男は何なのか。
パレットが日本の暴力団を配下に置いているということなのだろうか。

「おまえさん、女のデカなんだってな」
「……」
「いい女じゃねえか、ポリなんかやってんのもったいねえぜ」
「大きなお世話よ。それより、あんたこそ何なの。やつらパレットなんでしょう? 
なんであんたみたいなヤクザが絡んでるの」
「どうでもいいことは気にしなさんな」

牧田は上着とシャツを無造作にサイドボードに置いた。

殺風景な部屋だった。
十畳ほどの広さの室内で、カーテンの引かれた大きな窓がある。
その隣に大きめの換気扇がついている。
小さな収納庫と、これも小型の冷蔵庫がぽつんと置いてあった。
外部連絡用と思われるインターフォンが壁に掛かっている。
あとは美和子が縛られている椅子と三人がけくらいのソファがひとつ、そしてやけに
脚の長いダブルサイズのベッドがひとつある。
そして、なぜか床はリノリウム張りになっていた。

「……」

美和子の視線はどうしても大きなベッドに行ってしまう。
パレットに拉致された女がどうなるのか、いやでも想像がつく。

「一応、引導渡しといてやるとな」

牧田が話し掛ける。

「おまえさん、あの生っちろいインテリに目ぇつけられたんだよ」
「……一柳警視…」
「そんな名前だったな。本来、予定外なんだけどな、やつがボスに泣いて頼み込んだ
らしいんだよ。で、組織でおまえさんのこと調べたらしいんだけど、その上でいい女
だってことがわかったもんで、こうなったってこった」
「……」
「ま、こうなっちゃ仕方あるまいさ。想像はついてるだろうが、これからあんたは
イヤというほど犯されることになる。だが、それだけじゃない」
「……」
「いやらしい変態行為もめいっぱいされて泣き喚くことになるだろうよ」
「……」
「その上で、どっか外国の金持ちだか王様だかに売り飛ばされるって寸法だ。もう
ここまで来たらどうにもならねえよ。諦めるなり覚悟決めるなりするんだな」

このまま大人しくしていればそうなるだろうということくらい美和子にもわかって
いる。
しかし、もちろん彼女にそんな気はない。
犯されるのは避けられないとしても、何とか長引かせ、組織を内偵し、救出を待つ
のだ。

美和子とて処女ではないから、蘭ほどのショックはない。
いざとなったら、肉体を武器にすることも出来るだろう。
いずれにせよ、むざむざと身体を自由にさせるつもりはなかった。

この男はどう出るだろう。
いきなりむしゃぶりついてくるのか、それともねちねちと言葉で責めてくるの
だろうか。

「ま、人道的な変態もいないわけではないらしいからな。そういうのに売られる
よう祈ってな。少なくとも、そこらのギャングだのマフィアだのに売り飛ばすって
ことはないらしいぜ」

牧田は何の慰めにもならぬことを嘯きながら、美和子の予想外の行動をとった。
なんと縛り付けてある手首を解きだしたのである。

部屋の鍵は外からしか掛からないようだから、この場で男を殴り倒しても脱出は
出来そうにない。
男がインターフォンで誰かを呼ばない限り、出ることはかなわないのだろう。

となると、こいつをぶちのめしても意味はなさそうだ。
そうなら、牧田に抱かれて満足させ、油断させた上でやつが部屋を出る時に勝負を
賭けるしかない。

美和子がそんなことを考えていると、牧田は縛ったロープを放り投げ、彼女を立た
せた。

「じゃ、脱いでもらおうか」

なるほど、自分から脱がせて羞恥を煽ろうと言うことか。
洒落臭い、と美和子は思った。
牧田に抱かれねばチャンスは訪れないから最終的にはそうなるが、むざむざと犯さ
れるつもりもなかった。
まして、こんな風に小馬鹿にされてたまるものか。

「冗談じゃないわ」

美和子はきっぱりと言った。

「そんな安っぽい女だと思ってもらいたくないわね」

それを聞いた牧田はニヤニヤして言った。

「そう、その意気だよ、刑事さん。すんなり犯られてもらったんじゃ愉しみがない。
それじゃ前の嬢ちゃんと変わらんからな」
「前の……嬢ちゃん?」
「ああ」

牧田はサイドテーブルの上に置いてあったテレビのリモコンらしいものを手に取った。
親指でちょちょいと操作すると、壁際のカーテンがするすると開いていく。
中から出てきたのは窓ではなく大画面のプラズマモニタのようだった。
牧田が電源を入れると、ブンと音がして画面が光った。

「あっ……」

そこに映し出されたのは美和子も周知の少女だった。

毛利蘭。

拐かされたと聞いて、父親の事務所まで駆けつけたのは一昨日のことだ。
やはりパレットの毒牙にかかっていたのか。

「ら、蘭ちゃん……」

ヤクザは少し目を見開いて「うん?」と唸った。

「なんだ、おめえら知り合いかよ」

蘭やコナンたちと美和子の関係など、当然、牧田やパレットの知るところではない。
だが、知り合いならかえって好都合だ。
攫った少女の哀れな姿を見せて、言うことを聞かねば少女をいたぶると言えば、警察
の女なら従わざるを得ないと思っていたのだ。
それが知り合いなら、言うことはない。

「あ、あなたたち……あの子にひどいことしたの!?」
「ああしたさ。もう手遅れだよ」
「きさまっ!!」
「おおっと」

殴りかかってきた美和子を牧田は手で止めた。

「おかしなマネするなよ。逆らえばどうなるかわかってんだろうが」
「……く…」

美和子は右手の拳を握りしめてわなわなと震えた。
蘭を踏みにじった上で、彼女を人質にして美和子を凌辱しようというのだ。

美和子の背後に怒りのオーラが立ち上ったように見えて、牧田も少したじろいだ。
それでも虚勢を張り、美和子の前に立ちふさがる。

「わかったな。少なくとも、あんたが俺に抱かれてる間は、あの娘は無事だ。あの
娘に手を出されたくなけりゃ、あんたがそのうまそうな身体を捧げるっきゃねえん
だよ」
「……」

美和子はモニタに目をやる。
蘭は全裸で縛られていた。

どんな恥ずかしいことをされたのか。
どれほど恐い思いをしたのか。
どのくらい口惜し涙を流したのか。

それを思いやると胸が張り裂けそうになる。
いたたまれぬように蘭から視線を外し、美和子は観念したように肩の力を抜いた。

「よしよし、それでいいんだ」

美和子が逆上しないかとヒヤヒヤしていた牧田も、そんな彼女の様子を見て、ホッ
としたように椅子に掛けた。
そして脚を組み、改めて美和子に服を脱ぐよう命じた。

抵抗は無意味と見たのか、美和子は黙って服に手を掛けた。
ブルーのスーツを脱ぎ捨て、スカートのホックを外す。
同色のタイトスカートも床にわだかまった。
ショルダーのホルスターも外した。
銃自体は取り上げられていた。
そして両手をクロスさせてシャツの下を掴むと、一気に上へ脱ぎ上げる。

「……」

美和子はボディ・スーツを着用していた。
ブラとショーツとガードルが一体になっているアンダーウェアだ。

牧田は、美和子自身に脱がせたことが正解だと思った。
何しろ、この下着の脱がせにくさときたら半端ではない。
破り捨てるにしても、ブラやパンティのようにはいかないのだ。

牧田は顎をしゃくって続きを求めた。
美和子はキッと牧田を睨んだが、それでも従った。
薄いブラウンのストッキングを脱ぐと、それはそれは見事な白さの長い脚が露出する。
続けて美和子は、さして躊躇もせずボディ・スーツを脱ぎ去った。

女を見慣れている牧田も思わず息を飲む素晴らしい肉体だった。
肉感的なのにほっそりとしている、一見、相反するような要素が同居する理想的な
体型である。

スーツを着けている時はかなり痩せているのかと思ったが、着痩せするタイプのよう
で、どうしてどうして出るところは出ていた。
牧田自身はスレンダー美人が好きなのだが、かと言って無意味なダイエットを重ねた
ような痩せぎすの女は大嫌いなのだ。
鶏ガラ女を抱くくらいならオナニーしていた方がいいと思っている。

バストも、乳首がツンと上を向いている綺麗な形状で大きさも充分以上だったし、
何より気に入ったのは腰に肉がたっぷりと乗っていたことだ。
太腿も脂が乗りきっていて、まさに熟れ頃で女の魅力に溢れている。

髪はショートボブで、うなじが隠れるかどうかのカットだ。
蘭のようなたっぷりとした豊かな長い黒髪も良いが、この髪型は美和子にとても似合
っていると思った。

文句のつけようがなかった。
最初は、予定外の仕事だったので気が進まなかったが、これほどの女ならプライベ
ートでも飽きるまで抱いているだろう。

「で? 私をどうしようっての?」

美和子は肌を隠しもせず、腕組みをして牧田を睨んでいる。
変に恥ずかしがったり、身体を隠そうとすれば、この男を悦ばせるだけだと知って
いるのだ。
逆に、堂々としていれば良い。
犯されても動ぜず、人形のように無反応でいればいいのである。

「そうだな、まずは縛らせてもらうか」
「その必要はないわ」
「俺がそうしたいんだよ」
「……」

美和子の裸体を上から下までジーッと眺めて牧田が言った。
美和子は唇を噛んで「卑怯者」とつぶやいたが、黙って後ろを向き、両手を後ろに
回した。
牧田はその両手だけロープで縛った。
美和子も警官だから格闘技はやっているだろうが、蘭を使って脅せば言うなりになる
はずだ。
取り敢えず腕だけ縛っておけばいい。
あまりがんじがらめに縛るのは好みでない。

「あっ……」

後ろ手で縛ると、牧田は美和子をベッドに突き転がした。
美和子がベッドに弾む様子を見ながら、牧田は下も取った。
美和子の魅力的な肢体を見ているうちに昂奮したのか、もうその男根は臨戦態勢
だった。

「!……」

目に入ってしまった牧田のペニスを見て、美和子は怯えた。
すっかり大きくなったそれは、90度どころか100度以上の角度でそそり立って
いる。
女の淫液を吸い続けたせいか、先端に行くほど赤黒かった。
カリのでっぱりも大きく、竿も根元が太かった。
見るからに硬そうでたくましい。

あんなもので犯されたら壊れてしまうのではないかと思った。
思わず首を曲げ、目を逸らしてしまう美和子だが、牧田はそんな彼女をいっそう
愛おしく思い、ペニスをさらに硬くするのだった。

「いや……」

牧田がベッドに乗り、迫ってくると、美和子は無意識に後じさる。
牧田は出来るだけ冷酷な目でこう言った。

「いやなのか?」
「……」

いやとは言えない美和子だった。
唇を噛み、目を閉じて動きを止めた。
牧田はそのまま美和子に覆い被さり、その白い裸身を抱きしめた。

「ああ……」

見知らぬヤクザ者に抱かれるおぞましさで全身に鳥肌が立つ。
男の脚の毛臑が美和子の柔らかい脚に触れ、その気味悪さにびくりとなる。
牧田は続けて、勃起した肉棒で美和子の柔肉の花弁をめくるように擦り上げてきた。

「い、いや……」

いやでいやでたまらない。
牧田を突き飛ばして逃げ去りたい誘惑にかられる。
しかし蘭を見捨てることは出来ない。

それは警察官として民間人をというよりも、あの蘭ちゃんを助けたいという気持ち
の方が強かった。
それだけに、美和子には耐えるしか道がなかった。

「あっ」

牧田は美和子の顔を押さえ、舐め始めた。
目を固く閉じて耐えている美和子にはそれがわからなかった。
慌てて目を開けると、牧田が舌を長く伸ばし、美和子の美顔を愛おしそうに舐め回
していた。

「や、やめて、汚い!」

綺麗な形の額の生え際から耳たぶ、そして耳孔。
顔の輪郭に沿うように舌を這わせ、顎の線まで降りてゆく。
そして熱い舌は白い首筋からなめらかな肩を這い続け、それが鎖骨に届いた時、
美和子はずきんと来る快感に呻いた。

「あ、あう……む……」

牧田は美和子の顔を舐めている間中、ずっと男根で媚肉を愛撫し続けている。
腰を微妙に動かし、亀頭部で割れ目の間を上下に擦った。

「あっ……く」

牧田の尖らせた舌先が耳孔にそろそろと入ってくると、その異様な感触に身をよじら
せた。
初めて味わわされる愛撫に、美和子の性感が戸惑っている。
その成熟した身体に応じた敏感な性感は、隠されていたポイントを探り当てられて
悲鳴を上げている。

媚肉もいつしかすっかりほぐれていた。
男のペニスで性器をいびられていると思うだけで、美和子は屈辱と羞恥で懊悩し、
膣はじくじくと淫らな液を漏らしてくるのだった。

男性経験はあるが、もう何年も前の話だ。
それに、当然だがこんなシチュエーションなど初めてである。
覚悟はしたものの、女として感じてしまう嫌悪感と羞恥、屈辱、それらの感情がない
交ぜになった混乱は如何ともし難かった。

肩から上を舌で愛撫され、女の割れ目はずっと肉棒に擦りつけられていると、その
花弁はすっかりめくり上がってしまう。
その頂点にある敏感な突起は充血し、包皮から顔を覗かせていた。それを男の熱く
硬い分身に押さえつけられ、しごかれると、噛みしめた唇を割って呻き声が出た。

「んむっ……んん、んんっ……あっ、く……」

もう美和子の秘肉はすっかり濡れそぼち、陰核も媚肉そのものも、それまでよりも
ずっと感じやすくなっている。
牧田のペニスや舌が美和子の官能ポイントに触れるたびに、彼女は抑え切れぬ小さな
叫びを上げ、いやいやするようにしなやかな肢体をうねらせた。
牧田が腰を左右に揺らし、肉棒でクリトリスを弾くと美和子はその鋭い快感に思わず
背を反らせ、胸を張って堪える。

ぐっと胸を突き出す形になった美和子のバストを牧田は両手で捉えた。
豊かに張った胸肉の下をつかみ、寄せて持ち上げるようにしてじんわりと揉んだ。
丸い乳房がゆっくりと形を変えていくたびに、ジンジンと胸の奥から快美感が押し
寄せて美和子を懊悩させた。

「ああ……や、は……はう……んんっ……あ……」

男は、左の乳房を右手で揉み込み、右の胸には唇で吸い付いた。
左の乳房は、指で乳輪をなぞりながら頂点まで届かせ、徐々に締まったように硬く
なる乳首をころころと転がす。
右は乳輪ごと口に含み、舌先を尖らせて乳首を押しつぶすように愛撫した。
そして、指の腹で乳首を挟み、つぶすようにコリコリと擦り合わせ、唇で愛撫して
いる方は思い切り吸い上げてやる。

「ああ! だ、だめっ……うっっ…あ、ああっ……」

肉の疼きがわき起こり、胎内にまで届いていく。
責められているのは胸だというのに、膣の奥からじゅっと淫らな蜜が零れてくるのを
止めようがなかった。
もっとも、胸を揉まれ、舐められている間もずっと股間は肉棒に虐められている。
その花弁はすっかりほころび、あわいめがはっきりと見えるほどだった。

「あ……ああ……」

すっと男の身体が美和子から離れた。ホッとする間もなく、今度はうつぶせにひっ
くり返された。

「あっ……な、なにを……」
「なに、女の性感帯ってのは表だけじゃないってことを教えてやろうと思ってな」

そう言うなり、牧田は美和子の美しい背中線に舌を這わせた。

「あう!」

こそばゆいような異様な感覚に、美和子は身をよじる。
たっぷりの唾液を乗せ、牧田はすべらかな白い背を舌で愉しんだ。
背中のくぼみ、肩胛骨の輪郭、脇腹、そしてうなじ。
裏に隠れている性感スポットを探るべく、男の舌が縦横無尽に駆けめぐった。

「あ、んんう……や、やめなさ、ああっ……くんっ……あふ……」

舌だけでなく、手指も活躍する。脇腹をくすぐるようにさすり、腰骨を撫でる。
自分でも気づかなかった性感帯を教えられ、美和子はその感触に悩乱した。
うなじを舐められ、ぞくぞくするような妖しい快感に堪えていた美和子は、牧田の舌が
腋の下に入り込んでくると悲鳴を上げた。

「きゃあ! ああ、そんなとこっ……くっ、くすぐった……あああっ」

綺麗に処理してある腋に舌を入れ、挿入するかのように出し入れさせた。
こそばゆいだけだったなのに、唾液がローションの役目を果たしているのか、その滑ら
かな動きと熱い舌の感触が与えてくる感覚に美和子は震えた。
こんなところで感じている自分がおかしくなったのではないかとすら思った。

「あ、なにするの! そ、そこ、いやあ!」

美和子が絶叫した。
牧田は彼女の腰をやや持ち上げ、尻たぶをペニスで割って、その幹を押しつけたのだ。
亀頭ではなく竿を寝かせて押し当てられたのだが、
その分、肉茎の太さや硬さ、熱さを肛門で感じさせられることになった。

恥ずかしい箇所に男の性器をくっつけられているという羞恥に、美和子は堪らず頭を
振りたくり悲鳴を上げる。
牧田はさらに胸に手を伸ばし、今度は鷲掴みで強く揉み込んだ。

「あ、痛っ……やめ、あ、ああ……うっ、うんっ……は……は、あっ……」

強く揉むだけでなく、下乳を優しく揉みさすったり、根元から絞るように上へと揉み
上げる。
ピンクから茜色に染まり、硬くなった乳首を指で弾いたり揉みつぶしたりすると、
後ろ手に縛られた美和子の両手が、思わず握りしめたり開いたりを繰り返すのだった。

美和子の顔はすっかり上気し、額には汗が浮いている。
自分の手管に下りつつあると思った牧田は、もう一段練り上げようと、うつぶせの
まま彼女を膝立ちにした。
上半身は顔で支えているだけである。

膝を開かせたので、美和子の女の部分は牧田の目の前に晒されている。
ぽたり、ぽたりと蜜を垂らす媚肉も、ひくひくと痙攣しているクリトリスも、そし
て尻の谷間に秘められたアヌスも、すべて見られている。
隠しておきたい女の秘密をいやというほど見られ、美和子の心は引き裂かれたような
痛みを感じていた。

「あああ、あ……さ、さわんない…で……ああっ!」

牧田の手指が、舌が、美和子の柔らかそうな内腿や膝の裏、真っ白いふくらはぎ、
尻の谷間にまで侵入し、浸蝕していく。
ぞくっとした寒気のような、ぞわぞわとこそばゆいような、じわじわとこみ上げて
くるような、そしてビーンと突き抜けるような、様々な快感と愉悦に侵され、美和
子の身体がうねくり、身悶える。
蛇のように自由自在にうごめく男の舌が、内腿から、その張った筋を舐め上げ、
とうとう腿の付け根にまで及んだとき、美和子はもうほとんど軽い絶頂にまで達し
かけていた。

「くあ! う、うああっ……いいいいい……あ、むぅっっ…」

牧田の舌がうねり、媚肉をねじ込むように舐められ、肉芽を音がするほどに吸わ
れると、美和子はその強烈な官能の高ぶりに喘がずにはいられなかった。
その喘ぎ声に甘さが加わり、よがり声に変化するまで、そう時間は掛からなかった。

牧田が、花弁全部を征服せんが如く、舌全体を使ってべろべろと舐め上げると、
美和子は腰を持ち上げるようにして呻いた。
懸命に耐えようとしているのだが、性の神経が集中している箇所を絶え間なく責め
立てられ、美和子は全身に脂汗を浮かべて裸身を悶えさせている。
そして、唇でクリットを挟んで舐め上げ、膣に指をグッと挿入すると、美和子は
たまらず背を仰け反らせてしまった。

「ううっ、ああああっ、あ、う、うむ!」

その瞬間、ぶるるっと腰を震わせ、くたりと脱力した。

美和子は自分の身体の成り行きに呆然としていた。
最後に男と床を共にしたのはいつだったか憶えてもいない。
まして彼女には自慰の習慣がなかった。

何年ぶりに味わう性の絶頂を味わい、絶望感が心を蝕む。
愛する男ではなく、こんな得体の知れぬヤクザ者に嬲られて気をやった恥辱に胸が
灼けるようだ。

しかし彼女に、そんな感傷に浸ることは許されなかった。
すぐに、今のオルガスムスなど余技に過ぎなかったと思い知らされたのである。

「……あ……」

仰向けにされた美和子は、ぐいと股間を拡げられた。
嬲られ、いびられ、汚らしい舌に荒らされて、心ならずも濡れ切ってしまった媚肉
を覗かれている。
膝を閉じようとしたが、思ったように力が入らなかった。

男は遠慮なく美和子の腿の間に入り込んだ。
慌てて膝を閉じたが、牧田を挟み込んだだけだった。

ここまで牧田は言葉で美和子を責めることはしなかった。
彼女を肉の疼きだけで追い込もうとしたというよりは、牧田自身が美和子の素晴ら
しい肉体に溺れて、いつもの余裕もなくむしゃぶりついてしまったというのが正しい。
ここで基本に戻り、彼は言葉でもこの女刑事を責め立てようと思った。

「そんなによかったかい、え、佐藤美和子さんよ」
「う、うるさいっ」
「ずいぶんと悩ましい声を上げてたぜ。「あああ…」なんてよ」
「やめてっ!」

美和子は髪を振り乱して激しく頭を振った。
手が自由なら両耳を押さえて、牧田の声から逃れようとしただろう。

「いい身体してるじゃねえか。感じやすいしよ、色っぽい声でよがりやがって」
「……」

牧田は右手で自分の男根をつかみ、ぶらぶら揺すった。

「今度はこいつをぶち込んでやるぜ、刑事さんよ」
「!」

そうだ、自分は刑事、警察官ではないか。
それが、こんな屈辱を味わい、あまつさえ感じさせられているという事実に、美和子
は気が狂いそうになる。

男は顔を背けている美和子を見つめながら腰を落とした。
火のように熱い肉棒が美和子の内腿に接触する。

「いっ、いやあっ」

その熱さに思わず正面を見てしまう美和子。
そこには、彼女の中に入りたがってびくびくしているペニスが鎌首をもたげていた。

なんというたくましさだろう。
これほど「男」だとか「牡」をイメージさせるものはなかった。
この肉の凶器で女を刺し殺し、突き殺すまで男はやめないのだろう。

ペニスの亀頭部が、濡れている媚肉にくちゅりという音を立てて触れると、女刑事は
心底恐怖した。

「ああ、やめて……た、助けて……」
「助けてやるともさ。オマンコの奥が疼いてしょうがねえんだろ? ぶすぶすと
中途半端に燃えてるんだろうが。こいつで一気に燃え上がらせてやるよ」

牧田はぐっと腰を落とす。
先端が美和子の中に入り込んだ。
そのまま、ずっ、ずっと上下に動かすと、美和子の割れ目はたちまちめくれあがり、
受け入れ可能状態になってしまう。

「ほれほれ、入れてやるからな」

愛液でずるずるになっている膣に、硬直した男のものが入ってくる。
ぐっ、ぐぐっと膣口をムリヤリ押し開いていった。

(ああ……は、入ってくる……こ、こんな……こんなのって……ああ、高木くん!)

凌辱される悔しさと、高木に対する申し訳なさで、美和子の目尻に涙が滲む。

「んんうっ……う、うむ……」

熱くて太いものを押し入れられる圧迫感に、美和子は胸を張りつめさせて耐えた。
牧田はゆっくりと、だが確実に奥へ奥へとペニスを挿入してきた。
エラの張ったカリが、美和子の狭い膣道を伐採しながら侵入していく。

牧田が根元まで埋め込んだ時、その先端は美和子の子壷入り口にまで達していた。
そのズーンとした痺れるような感覚に、美和子の頭の中で何かが弾け飛んだ。
刑事としての矜持、女としての誇り。
そして高木渉への想い。
そんなものは、長大な男根の威力の前にはひとたまりもなかった。

「ああ……」

最奥まで飲み込まされると、美和子の膣襞が待ちかねたように牧田の肉棒に絡みつ
いてきた。
ムリヤリ穢されたという絶望と屈辱の他に、性の炎でぐらぐらと煮え立った身体が、
不安と妖しい肉欲を感じ取り、女刑事の精神がおののく。
心でどんなに拒んでも、美和子の熟した肉体が、媚肉が、男のペニスを受け入れて
しまうのを防げない。

じっとして美和子の肉の締め付けを味わっていた牧田が、美和子の髪を掴んで正面
を向かせ、言った。

「どうだ、俺のものは」
「……」
「おまえ、処女みたいにきつくて狭いな。ひさしぶりだったのか、男は?」

牧田に見透かされ、彼女は首をねじって視線を避けた。
「思った通りだな」と言うと、牧田はねじ込んだまま腰を捻り、狭い膣を擦ってやった。

「んむ! あ……か、はあっ……く、きつ……」

犯される女刑事は、その太さに膣が裂けるのではないかと思った。
確かに牧田のものも立派だったが、美和子の膣が狭くて締まりが良いということも
大きかった。
いずれにせよ、はち切れそうな圧迫と充実感は、苦痛や恥辱以外の感情をわき上が
らせ、美和子を当惑させる。

無意識に腰が上がり、牧田の腰に密着しようとしている。
じくじくと女のあわい目から透明な愛液を滴らせ、シーツに女の匂いのする染みを
いくつも作っていた。
膣内の襞も膣の入り口も、共同して牧田の肉棒を締め上げている。
もっと刺激が欲しいと美和子の肉体が訴えている。

「あ、ああ……」

彼女自身にも、その身体の裏切りがわかっている。
わかっているが、どうしようもないのだ。

両手さえ自由だったら牧田を突き飛ばしているのに、と思うのだが、その一方、
もしかしたら、突き飛ばすどころか抱きしめてしまうのではないかという恐怖も
あった。
それほど、28歳の成熟した肉体にこみ上げる疼きは激しいものだった。
あさましい、おぞましいと思う気持ちに、ドロドロした淫らな欲望がへばりついて
くる。

牧田は、美和子のねっとりとした媚肉の締めつけを充分に感じ取ると、まとわり
ついて離れない内部の襞をかきわけるように律動を開始した。
めいっぱいくわえさせられた太いものが、膣孔をこそぐような摩擦を与えつつ出入
りし始めると、美和子はたまらないように裸身を身悶えさせる。

「あっ……う、動かないで! …ああ……いっ……んうっ……くっ……んあ!」

言葉は拒絶しているものの、声は甘くとろけ出し、喘ぎ声が洩れるのをどうしても
我慢できない。
一度、絶頂を極めているだけに、美和子の熟した肉体は脆かった。

牧田は、熱く柔らかくうねくり悶える女体を、さらに燃え立たせるべく大きなスラ
イドで抜き差しする。
それだけでなく、腰を自在に操り、上下左右にかき回した。
その最中にGスポットなどの快感中枢に触れられると、ぎくりと身体を反らせる
美和子だった。

「…んくっ……うああっ……くっ、だめっ……よ、よして……あ、ああっ……」

真っ赤に上気させた顔をよじり、振りたくり、髪を乱して、迫り来る快楽に堪える。
快感を少しでも逃そうとしてうごめいているのか、より多くの快感を受け入れよう
として身悶えているのか、判別がつかなくなっていた。

時間にして10分ほども大きなグラインドでピストンを繰り返し、美和子から甘い
呻き声を絞り出した牧田は、そこでいったん腰の動きを止めて彼女を見る。
はぁはぁと荒く息をつき、首筋と言わず顔と言わず汗が浮いている。
しかし少しも汗くさくなく、甘やかな女の香りしか漂っていなかった。

「いやらしいんだな、刑事さんよ。あんた、ヤクザに犯されて、感じて悶えてるん
だぜ」
「……」
「あの嬢ちゃんを助けるためだなんて口実なんだろ? おまえさん、でかいチンポ
で思う存分犯してくれる相手なら誰にだって股を開くスケベな牝ポリなんだよ」
「バっ、バカにしないで! 誰がそんな……」
「じゃあなんでこんなにオマンコ濡らしてんだよ」
「それ……は……」
「俺に身体中いじられて、オマンコ舐められていっちまったじゃねえか。挙げ句、
こうしてチンポ突っ込まれて感じまくっててよ」
「うるさいっ、さ、さっさとどきなさい! い、いつまで、ああっ」

美和子に全部言わせず、牧田はまたピストンを再開した。
ズンと奥まで突いて彼女の言葉を奪い、その後は浅くて速い律動に切り替えた。
子宮に届かされる恐怖と奥まで抉られる快美感からは逃れたが、今度は膣襞を速い
速度で摩擦され続けることになった。

「ああ! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、いっ、んんっ、あっ、あふっ、ああっ」

美和子に短い悲鳴と喘ぎをあげさせ続け、今度は豊かに張ったバストに手を伸ばす。
突かれるたびにリズミカルに揺れていた胸肉を、牧田はこねくるように揉んだ。
膣からペニスによって送り込まれる愉悦に加え、乳房を揉みしだかれる快感に、
美和子は背をブリッジに反らせて応えた。

「ああ、む、胸はぁっ…あ、ああう……うくっ…あ…ああっ…あっ、あっ、あっ、
ああう……」

乳首が勃起しきって感じやすくなっている乳房をまともに揉み込まれると、牧田の
指から皮膚を通して乳房内部に入ってきた快楽が、胸の奥で弾けて再び乳首に向か
って暴走しているように感じた。
ピンク色に充血して張りつめ、やや硬い弾力感を持っていた美和子の乳房は、牧田
の手のひらにつぶされ、指で揉まれて様々な形に変わっている。

「あ、あんんっ…あう、あううっ……う、うんっ……あ、あはっ……」
「佐藤刑事さんよ、あんた、おっぱいも相当敏感なんだな。揉まれ出したらオマンコ
の締めつけがまた強くなってきたぜ」

それだけではなかった。
淫靡な蜜の噴出もいっそう多くなり、胸を揉まれながら膣を突かれると、じゅぶぶっ
と音がしてペニスと膣の隙間から噴出してくるのだ。

何年も男とご無沙汰だった身体。
それでいて熟れきった肉体。
おまけに感じやすいのだから、美和子とて性の疼きを持て余していたはずなのに、
今まではそれがなかった。

仕事一辺倒だったこともあるし、恋愛対象の男がいなかったこともある。
同僚で後輩の高木渉刑事が急浮上してきたのはごく最近のことだ。
その高木との間柄にしても、ままごとのようなデートをこっそりと重ねるくらいで、
肉体関係どころかキスすらまだしたことはない。

微笑ましいと言えば微笑ましい、バカバカしいと言えばバカバカしい、いい歳をして
何をしてるのかと言われるくらい純情なカップルだったのだ。
若い高木が美和子に気を使いすぎ、遠慮しすぎの感があり、美和子自身、そのことを
微笑ましいような、ちょっと物足りないような思いで接している。
それでも、漠然とではあるが、このまま高木と先へ進むのが自分らしいのではないか
と最近やっと思い始めたところだ。

なのに、自分の心に背く肉体のもろさは何だろう。
快楽に押し流されそうになると、必死に高木の笑顔を思い出して何とか乗り切ろうと
するのに、牧田の律動が加えられると、たちまち性の奔流に飲み込まれてしまう。
匂うような女の色気を沈めた肢体に怒張を埋め込まれ、ありとあらゆる愛撫を全身に
浴び続けていたのだ。
成熟しきった女体がそれに反応しないわけがない。
崩れるのも理の当然だったろう。

暴力団関係者に凌辱されるという屈辱と恥辱。
濃厚な愛撫を受ける久々のセックス。
縛られながら犯されるという被虐感。
それでいて否応なく感じてしまっている羞恥。
それらすべてが混じり合い、混乱した美和子の肉体に生まれてきた得も言われぬ快楽。
全身が痺れ切るような圧倒的な快感。

蘭を救出するとか、彼女のために犠牲になるという気持ちが忘れ去られている。
今、こうして犯されているのは、蘭を助けるためではなく、自分がこの悦楽に浸り
たいからなのではないか。
そんな思考すら浮かび、美和子の精神はショートしそうだった。

「んっ、ああっ……あ、い……う、うん! …ああ、だめっ……あっ……いっ、い…」
「そんなにいいのか、刑事さんよ」
「ちっ、違……ああっ」

牧田はぐいと肉棒を引き抜き、思い切り奥まで突き込んだ。

「んはあっ」

猛烈な勢いで貫かれ、子宮口を小突かれて美和子は絶叫した。
牧田は面白がってこれを何度も何度もしてやった。
そのたびに美和子は、文字通り最奥まで串刺しにされる恐怖と快さを同時に味わい、
気死しそうになる。

「くっ、くはぁっ」

美和子の、精神のヒューズが飛んだ。

「だ、だめ、いい!」
「ほれみろ、気持ちいいんだろうが」
「ううっ……あ、あ、い、いいっ」
「もっと言え」
「あうう……す、すごいっ……こ、こんなの……ああう、いい……いいっ…」

乳首を思い切り捻られ、乳房に指の跡が残るほどに強く揉み込まれる。
その苦痛や刺激すら、今の美和子には法悦に達するために儀式になっていた。
膣の方は、浅浅深の三拍子で突き込まれ続け、美和子の唇から嬌声を絞り出している。
ヤクザの執拗な責めといきり立った剛直で、美和子の性の本能が剥き出しになる。

「あっ、あああっ」

責め続けられる美和子が、突然ギクリと大きく痙攣した。
膣の締めつけが強まり、襞がひくひくと牧田のペニスを絞るような動きを見せている。
牧田は、美和子の肉体の状態がすぐにわかった。

「なんだ、いきたいのかい刑事さん」
「……」
「黙ってちゃわかんねえだろ」

ヤクザはそう言うと、腰を奥まで押し込んだまま、ぐいぐいと真下から抉るように
して子宮口を擦った。
びりびりっと子宮が痺れ、そのうねりが膣を通って背に届き、頭に達して白く炸裂
する。

「ああ、それっ……あ、いいっ……ううんっ…」
「いきたいんだな」

美和子は、口には出さなかったが、その問いに抗うことも出来ず、大きく何度も
うなずいて肯定した。

「まあいいか、じゃいかせてやる」
「ああっ」

牧田に腰を掴まれ、腰骨が砕けるほどに激しいピストンを受け、汗にまみれた乳房
は口で吸われている。
絶頂のためのスイッチのような二カ所の快感中枢を強く刺激されると、美和子は
普段の彼女からは想像もつかないような淫らさで喘ぎ、よがった。

ここまでの快感をかつて味わったことはなかった。
それをムリヤリ味わわされ、もう何も考えることも出来ずに敏腕の女刑事はベッド
でのたうち回っている。
牧田がとどめを刺すように、ずぶりと最奥まで貫き、そのまま子宮を胃まで押し上
げるように抉ると、美和子はたちまち絶頂まで達した。

「あっく……あ、あ、ああう……あっ、もっ……くぅぅ……い、いい!」

その瞬間、きゅううっと締めつける美和子の蜜壷の甘美な圧力に、牧田も我慢せず
一気に射精した。

どびゅびゅうっ。
びゅっ。
びゅるるっ。
びゅるっ。

「あ! ああうっ!」

その膣の奥と、子宮の入り口に粘った熱い汁を浴びせかけられると、美和子はぶるる
っと痙攣して、続けて気をやった。
牧田はそのままの姿勢で、すべて射精し終わるまでじっとしていた。
美和子の膣は、その間、押し込まれた怒張を絞り続け、中にはもう精液が残っていな
い状態になるまで襞が痙攣していた。

「んああ……」

まだまだ硬い状態のペニスを引き抜かれると、美和子は呻いてクタリとなった。
男根が抜かれた媚肉は、まだ物足りぬとでも言うように割れ目の襞が蠢いている。

牧田はこんなもので満足するような男ではない。
連続凌辱だとばかりに美和子の腿を割って開いた時、あることに気づく。

「いけねえ、忘れてた」

牧田は、いかにもうっかりしたという顔をして部屋の隅に歩いていく。
収納庫からビール瓶のような色の薬瓶をゴトゴトと取り出した。
同じく、今度は透明なガラス製の筒を無造作にバケツへ突っ込む。

そして冷蔵庫を開けると、アンプルを3〜4本取り出した。
それらを美和子の転がっているベッドまで持っていき、何やら準備を始めている。
がちゃがちゃ、カチャカチャと耳障りな音が響き、朦朧な意識の美和子も気づいた。

「……」

あまりにも激しい肉悦で、忘我の状態になるまで追い込まれ、生まれて初めての凄ま
じい絶頂を与えられた。
今の美和子は、その絶頂の余韻でぐったりしているだけだ。

牧田がそんな哀れな美女に仕掛けようとしていたのは浣腸だった。
もはや抵抗するとも思えなかったが、それでも牧田は念を入れて縛ることにする。
女だてらに警視庁捜査一課の花形刑事であり、28歳で警部補を務める腕利きだ。
今は官能の渦に飲み込まれ、呆然としているが、浣腸されるというショックで正気
を取り戻すかも知れないのだ。

既に両手は後ろに緊縛してあったので、今度は脚を固定する。
まだ、だらりと力の抜けている美和子の裸体を仰向けにし、両ひざを持ち上げる。
脚を組ませ、足首同士を縛った。さらに腿とふくらはぎを密着させるようにまとめ
てぐるぐる巻きにする。
ちょうどあぐらをかいた状態で固定されてしまったようなものである。
見た目通り、胡座縛りとか座禅縛りなどと呼ばれている緊縛だ。

「あ……あ…」

その窮屈さに、美和子は呻いた。
まだ意識がぼうっとしている。

牧田は、その美しい女体をぐるりとひっくり返し、うつぶせにする。
顔と両ひざの三点で身体を支える格好だ。
当然、尻を剥き出しにして牧田の方に向けることになる。
ぱっくりと股を開かされ、尻の谷間も割られて、恥ずかしい場所をすべて晒していた。

膣からは、先ほど注ぎ込んだ精液が逆流し、ぽたりぽたりと垂れていた。
秘所はまだ襞がもぞもぞしており、男を待っているかのようだ。
突き出した尻が時折うねうねと動く。
それらのすべてがそそられる動作であり、牧田の怒張の硬さはいや増すばかりだった。
このまま美和子の尻にしがみついて犯したいところだが、命令には従わねばならない。

実のところ、牧田には浣腸の趣味はない。
アナルセックスをする時、掃除する意味で行うことはあるが、特に好きでもなかった。
もちろんスカトロ趣味もない。

しかしボスの指示で、犯す前には必ず3回から4回ほど浣腸することになっていた。
理由は聞いたが、よく覚えていない。
今回、ついうっかりそれを忘れていたため、事後ではあったが義務を果たすことに
したわけだ。

よくわからないのは、先日まで凌辱していた毛利蘭という少女にはする必要はないと
言われていることだ。
なぜそうなのかはわからない。
聞いたところで教えてくれないだろうし、牧田も気にはしていなかった。

牧田の指が肛門の粘膜に触れると、美和子は活が入ったようにビクンとした。

「ああっ、ど、どこに触ってるの!」
「どこって、肛門だよ。ケツの穴」
「なんで、そんなとこ……」
「いじりたいからさ。決まってるだろ」
「ああっ」

牧田の親指と中指が美和子のアヌスを揉みほぐしにかかる。
今し方までの凌辱による汗と、粘膜の湿り気で、肛門の襞が指に吸い付くようだ。

ゆっくりねちねちと揉んでやると、ぴくり、ぴくりと尻たぶが震え、菊座が閉じよう
とする。
それでも、肛門の皺を拡げられるように指でなぞられたり、尻の割れ目に沿ってこす
られたり、アヌスをとんとんと指で叩かれていると、キュンと締めつけるような、
それでいてとろけるような快美がわき起こり、美和子を倒錯の世界へと誘う。

「触らないで……そんなとこ、触っちゃだめっ……あ、ああっ」

嫌がってうねる尻の動きがいじらしい。
牧田は人差し指の先をグイと肛門に押し込んだ。

「あっ、何してるのっ……だめぇっ…」

牧田はじっくりと指を沈めていく。
美和子が、異物を押し出そうとしていきんでいるが、かえって男の指を締めつけて
悦ばせるだけだった。
指を通して、美和子の肛門の中の熱が牧田に伝えられる。
締めつけられる指からも、この美女の肛門の良さがわかってきた。

「だめ、やめて! …い、痛いのよっ……ああ、あ……」
「痛けりゃ緩めな」

緩めたら、牧田はどこまでも指を入れるだろう。
美和子は力を抜くことは出来ない。

押しては引き、引いては突っ込むの繰り返しで、とうとう男の指は根元まで美和子
のアヌスに埋没した。
美和子は諦めたようにがくりと力が抜けた。
牧田は、指を二本、三本に増やしたい欲望にかられたが、まずは浣腸が先だ。

「あう……」

ぬぽっと音を立てて指が抜かれると、美和子は呻きとも喘ぎともつかぬ声を洩らし
て突っ伏した。
牧田はポリバケツにグリセリンをドボドボと入れ、それを適当に水で割った。
概ね5:5といったところか。
冷蔵庫に入っていたアンプルの口を切り、中身をバケツに注ぐ。
その混合液をたっぷりと浣腸器に吸い上げて、牧田は美和子に宣言した。

「さあお待ちかね、浣腸タイムだぜ」
「い、いや……」

美和子はなよなよと頭を振ったが、条件反射でそうしているだけのようにも見えた。
想像を絶するような快楽セックスの後、今度は思いも掛けないアヌスへの責め。
身体も心もクタクタだったのだ。

「あっく……冷た……」

指でいびられ、熱っぽくなっていた肛門に突然冷たいものが入り込んできた。
慌てて締めたが、その細くて硬いものはあっさりと菊座を貫いていた。
それが浣腸器の嘴管であることに気づくと、美和子は弾かれるように叫んだ。

「いっ、いやあっ……か、浣腸なんていやよっ……やめて、すぐやめて!」
「いやがれよ。その方がおもしれえからな」

牧田は冷たくそう言うと、浣腸器のシリンダーをぐっと押し込んだ。
冷えた溶液が腸内に侵入してきた。

「ああっ、だめ、いや! ああっ……こ、こんなこと……」

いくら拒もうとして肛門を締めても無意味、腰をよじって逃げようにもあぐら縛りで
膝立ちさせられていては、それも思うようにはならなかった。

「いやああ……い、入れないでぇ……あああ……こんなことって……」

あの美和子が半泣きになって浣腸の恥辱に耐えている。
次々に注ぎ込まれる溶液が直腸の襞に染み込み、それがカァッと燃え上がるようだ。
浣腸されている自分を思うと、屈辱と羞恥で死にたくなる。
そして、この恥ずかしい姿を見られているのだ。
気が変になりそうだった。

「どうだ警部補さんよ、腹ん中に入っていくのがよくわかるだろうが」
「うっ、ううんっ……も、もう入れちゃ……いやあ……」
「ウソつけ、そんな色っぽい顔しやがって。もっと入れて欲しいんだろう」

最初ということで300ccほどにおさめたが、それでも初めての浣腸で50%溶液を
300も入れられたら相当苦しいはずである。
牧田は浣腸器を引き抜くと、固くすぼめていた美和子の肛門を念入りに揉んでやった。
自分がされた行為が信じられない美和子は、虚ろな瞳ではぁはぁと息をしていたが、
すぐに重苦しい感覚が腹の底から持ち上がってきた。

「あ……」

生まれて初めて施された浣腸の威力は強烈だった。
じわじわとこみ上げてくるそれが便意によるものだと気づくと、たちまち荒々しい
腹痛に苛まれる。
腸がググッとはしたない音を立ててきた。

「うっ……」

美和子は眉間に皺を寄せ、押し寄せる便意に耐えた。
浣腸のいやらしさを堪えていた時に流れた脂汗がすっと引き、代わって冷たい汗が
ふつふつと全身から噴き出してくる。

「んん……んんっ……あ、苦し……苦しい……」

牧田は、便意に耐えかねて震えだした美和子の下腹をマッサージし始めた。
美女の柔らかい腹をさすり、揉みほぐす。
じっとしていても高まってくる便意がいっそう高まり、美和子は悲鳴を上げた。

「やっ、やめてぇっ……ああ、さ、さわんないで……ううんっ……」

腹からはひっきりなしにグルグルと排便を促す悲鳴が洩れ、美和子はその美貌を青
ざめさせていた。
牧田はぷるぷる震えている尻を撫で、腹のマッサージも続けた。
美和子の便意は、もう辛抱たまらないところまで迫ってきている。
美貌の女刑事は唇を震わせて、屈辱の言葉を吐く。

「お、お願い……」
「……」
「ああ、お願い……」
「どうしたい」
「く……お、おトイレに……」
「まだ早いよ」
「そ、そんな……」

牧田は意地悪くそう言うと、美和子のアヌスに息を吹きかけた。
その感触に美和子が悲鳴を出すと、続けて腹を揉み、尻を揉んだ。
女刑事のアヌスは、もう今にも噴火しそうなくらいに熱を持ち、ふっくらと膨れあ
がり、慌てたようにすぼまる動きを繰り返していた。
限界が近いのだ。

「く、るしい……ああ、もう、お腹が……おトイレに……んんん……」

便通を必死に堪え、血の気の引いた凄絶な顔で美和子が訴える。
その悩ましい美貌に、牧田も我を忘れそうになる。
だが、ボスの指示でなるべく我慢させてから排泄させろと言われているので、我慢
して悶える美女を見守っている。

それでも、もう美和子の破局は目の前のようだった。
ぶるっとひときわ大きく震えたかと思うと、今度は細かく痙攣し出して止まらなく
なった。
美和子の悲鳴も、「あっ、あっ」と甲高く短くなってきている。足の指もかがまり、
どうにも堪えようがなくなっているように見えた。

牧田はおもむろに部屋の隅へ行き、スイッチを操作した。
すると部屋の四隅から水が流れ出し、床を水浸しにした。
常に水が流れ、排水溝に流れ込んでいく。

「どうだ、だいぶまいったかい、刑事さんよ」
「うう……」
「させてやろうか」

美和子はハッとして牧田を見、そして顔を背けて小さくうなずいた。
こんな屈辱はないが、もうどうにもならないところまで追い込まれていた。

「じゃあ、していいぜ」
「は、早く解いて……」
「解くことはないさ。ここでしな」
「えっ……」

美和子は、青くなった美貌からさらに血が引く思いだった。
垂れ流せというのか。
トイレに行かせてくれるのではないのか。

「こ、ここで……」
「そうだ。ここはそういう部屋なんだよ。水が流れっぱなしにしてあるから平気
だよ。換気扇もあるしな」
「そんな……いやよ……」
「いやならさせねえ。どうする?」

美和子の弱々しい抵抗も、時間を追うごとに激しくなる便意に押し流されてしまう。
ここまで来ると、もう美和子にはトイレ以外で垂れ流すとか、排便を見られると
いう羞恥は消し飛んでいる。
地獄のような便意から解放されるなら何でもいいという気持ちである。

「ああ、もう我慢できないっっ」
「だからしていいって」
「あ……あ、出る……出てしまう……」

いざ出るとなると、やくざに排泄を見られる屈辱と恥辱が甦り、美女は喚いた。

「あ、ああっ……だめ、出る! …み、見ないで……見ちゃいやああっっ」



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