珊瑚と源八郎の稽古は、その日を境にぷっつりと途絶えた。
大まかな事情を聞いたかごめが、珊瑚を宥め賺してなんとか稽古場所へ行かせようとするのだが、
珊瑚は頑として言うことを聞かなかった。
かごめは小さくため息をついた。
聞けば、雨宿りをしてそのまま泊まったあの時、源八郎が珊瑚の身体を触ったらしい。
それも、珊瑚が我慢しているのをいいことに、執拗にその身体をいじったようだ。
彼女は複雑な心境になった。
どっちの気持ちもわかるからである。
あのくらいの年齢の男の子であれば、女性に興味を持ちはじめていて不思議ではない。
もちろん源八郎の行為を肯定するつもりはないものの、憧れの女性である珊瑚にそういう気持ちを
抱くのも、男性なら特別おかしなことではないのだろう。
まして珊瑚は、同性のかごめの目から見ても美少女である。
特別な感情を持っていなくとも、珊瑚を前にしたらもやもやとした気持ちになるのかも知れない。
一方、珊瑚が怒る気持ちももっともだと思う。
あれだけ目を掛けていた少年の、裏切りに近い行為。
源八郎の方は恋慕だったろうが、珊瑚は彼に弟を感じていたのである。
その源八郎に不埒な振る舞いをされた。
しかも堂々とではなく、隣に友人が寝ているという縛られた状況で、である。
珊瑚は、こうしたこそこそとした行為や姑息なやり口を何より嫌う。
許せないと思うのも当然だ。
かごめは漠然と、自分の弟の草太に痴漢されることを想像してみたが、そう思うことすら
おぞましかった。
珊瑚はこの気持ちを感じているのだろう。
とはいえ、まだ数日のつき合いではあるが、源八郎は悪い子ではない。
武家の子息だというのに威張ったところがなく、真面目で素直だった。
それは珊瑚にもわかっているはずである。
かごめとしては、何としても、ふたりに復縁してもらいたかった。
だからこそ、ここ二日ほど、稽古を続けるよう珊瑚を説得しているのだが、退治屋の娘も
なかなかに頑固で首を縦に振らない。
仕方なく、かごめひとりで稽古場の原っぱへ出かけてもみたが、源八郎が来ていた様子も
なかった。
人の好いかごめは、こういう状況を放っておけるほど人間が出来ていない。
思い余って弥勒にも相談してみたのだが、若い破戒僧は、
「しばらくそのままにしておけばよろしいでしょう」
と、微笑むのみであった。
その日の夕餉の時である。
七宝とケンカしながら、がふがふと意地汚く飯を食っている犬夜叉とは対照的に、珊瑚の食は
進まないようだった。
「……」
食べるでもなく、煮物を箸で弄んでいる珊瑚に、かごめが声を掛けた。
「……珊瑚ちゃん、食欲ないの?」
「え? ……ああ、うん……」
「少しは食べないと……」
あれから二日、珊瑚の食はめっきり細くなっている。
怒りを口にし、少年を罵ってはいたが、あれ以来、姿を現さない源八郎を気にしているのは
明白だった。
すべてを見透かしたような顔で楓が言った。
「放っておけ、かごめ。自分の身体は自分がいちばんよくわかっておるだろうて」
「……」
そんな声も耳に入っていないかのように、珊瑚はうつむいたままだった。
弥勒が帰ってきたのはそんな時である。
「遅くなりまして」
そう言って法師は部屋に上がってきた。
隣村で人死にが出て、通夜に行っていたのである。
明日もまた朝から葬儀に出るらしい。
生臭ではあるが坊主は坊主であるし、この村には寺がなく、僧侶は彼しかいない。
おまけに隣村でも住職が亡くなって以来、替わりが入ってくることもないため、結局、弥勒が
頼られている。
この若い僧は、これでなかなか忙しいのである。
「ご苦労だったな、弥勒どの。それ、夕餉の支度は出来ておる」
「これは助かります」
弥勒はそう言って、手を合わせてから食事に箸を付けた。
ちらりと珊瑚の方を見やったが、彼女は心ここにあらずと言った感じでまったく気づいて
いないようである。
「ところで……」
弥勒はかごめに話し掛けるように言った。
「例の戦、どうも明日のようですよ」
「え……」
「!」
珊瑚はすごい勢いで顔を上げた。
真っ直ぐ弥勒を見ている。
かごめも驚いて先を尋ねた。
「それって……、あの、原嶋さんとこが戦うっていう、あれ?」
「ええ」
「原嶋さんとこ」という表現が、いかにも現代娘のかごめらしい。
「さっきの通夜で村の衆に聞いたんですがね」
法師は思わせぶりに言葉を続けた。
上目遣いに珊瑚を覗き見ると、彼女の方は慌てて視線を落とした。
「松田家が、国境(くにざかい)まで出張ってきている長尾勢を追い返すつもりのようですな。
総勢一〇〇〇ちょっとくらいだそうですから、そう大きな合戦ではないようですが」
「それで源八郎くんとこは!?」
「そう慌てずとも順を追って話しますよ。原嶋家では、当主・氏定どのの病篤く、嫡男の源八郎
定康どのが大将として出陣なさるようで」
勢い込んで訊くかごめを手で制して、弥勒は冷静に話した。
珊瑚は小さく喉を鳴らして弥勒の話に聞き入っている。
黙ってはいるが、その顔は「早く先を話せ」と言っている。
「源八郎どのはこたびが初陣のようですな。通常、原嶋家くらいの武将の嫡男の初陣とも
なれば、傅役や重臣たちがお側についていて、その雰囲気を味わうくらいで済ませるらしい
ですな。しかし、今回はちょっと事情が違う」
「どういうこと?」
「これが主家の北条さまの戦なら、松田家のみならず他の有力家臣たちも参戦する。従って、
兵力も膨大なものとなりましょう。なにも原嶋家三〇〇人の手勢など、さほど期待せずとも
よいわけです」
弥勒はそこで区切り、漬け物を口に放り込んでから続けた。
「ところが今回は北条家から指示を受けた松田家の戦です。総勢で一〇〇〇から一五〇〇ほど
でしょう。こうなると話は変わってきます。一〇〇〇〇の中の三〇〇ならどうということは
ないが、一〇〇〇の中の三〇〇はかなり大きい」
「そうだよね」
「従って、原嶋家も松田の主力として戦わざるを得ないでしょう。となると、具足始めだの
手慣らしだのと言ってはおれません。もちろん源八郎どのの周囲には馬廻り衆はいましょうが、
彼自身も積極的に攻め込まねばなりませんでしょうね」
「じゃあ……」
「はい。ただ本陣に居座って采配を振るうマネをしていればいい、ということではなくなって
きます。自分が嫡男で、原嶋の跡取りだということを家臣たちに見せつけねばなりません。
松田の殿様に対しても、その実力を示しておく必要もありましょうしね」
普通なら戦場の遠くから眺めていれば済むだろうに、今回は先頭に立って戦って見せなければ
ならないらしい。
つまり、仮に負けでもすれば戦死の可能性が飛躍的に高くなってくるということなのだ。
「……」
珊瑚の様子が次第に落ち着かなくなってきていた。
箸を持ったり置いたりを繰り返したり、立ち上がろうとしてまた腰を下ろしたり。
弥勒とかごめは、その様子を見守っていた。
事情がわかってない犬夜叉は、胡散臭そうな目で珊瑚を睨め付けている。
そこで弥勒がダメ押しとも言える情報を開示した。
「これも聞いた話なのですが、その源八郎どのがケガしたらしいですよ」
「えっ、ケガ!?」
「!!」
珊瑚もだが、かごめも驚いて目を見開いた。
「一体どうして……」
「なんでも、落馬したらしいです」
「落馬?」
「はあ。今日のことらしいですが、外出から戻ってくる折りに。幸い、お付きの者どもがいた
らしく、大事にはなっていないと思いますが……」
「……」
「なにやら考え事をしていたようで、馬が小川を飛び越える時に振り落とされたそうで」
「ケガの様子はどうなの?」
「ですから、家来が側にいましたから大怪我にはなっていないと思います。ただ、城中で腕や
脚に白帯を巻いていた若様を見たという村の衆がいましたな」
珊瑚はすっくと立ち上がっていた。
かごめが見上げる。
「珊瑚ちゃん……」
「かごめちゃん、あたし……」
「行っておいでよ、珊瑚ちゃん。明日が源八郎くんの本番なんだよ」
「……」
飯茶碗を持ったまま法師も言った。
「かごめさまのおっしゃる通りです。お行きなさい、珊瑚。このままでは互いに悔いが残り
ましょう」
「……わかった」
もう迷いはなかった。
自分は源八郎に会うのだ。
目的は……。
目的は、源八郎に会うことだ。
会うこと自体が目的なのだ。
それでいい。
珊瑚は上がりかまちで草履を履くと、かごめたちを振り返って言った。
「じゃ、行ってくる……。ありがとう、かごめちゃん、法師さま」
* - * - * - * - * - * - * - * - * - * - *
珊瑚は走った。
村から半刻ほどで原嶋家の館、源八郎の家までやってきた。
もうすっかり日が暮れている。
息が弾んでいるが、気にしている余裕はなかった。
門には当然のように番兵がいる。
堂々と正面から入るわけには行かない。
珊瑚が源八郎に教えていることは、原嶋家では誰も知らない。
知っていたところで追い返されるだけだろう。
単なる村娘を、合戦を明日に控えた大事な跡取りに会わせる理由などないのである。
だから珊瑚は忍び込んだ。
塀を乗り越え、音もなく着地する。
恐れていた番犬はいないようだ。
たまに六尺棒を持った警備の者が通るが、植え込みに隠れた珊瑚に気づく様子もなかった。
「……」
少女は少し考える。
源八郎の部屋を見つけて忍び込むことは、さほど難しくないだろう。
珊瑚は忍びではないが、忍者の真似事らしいことは一通り出来る。
すべて退治屋の里で仕込まれたものだ。
着ているのも暗い焦げ茶の戦闘服で、闇に馴染みやすい。
しかし、源八郎の部屋に入った後、どうするのか。
部屋には少年しかいないかも知れないが、当然、屋敷内には家族や家来などが多数いるだろう。
気づかれずに話をしてくることが可能だろうか。
だが、ここまで来た以上、帰るわけにも行かない。
これが源八郎に会える最後のチャンスかも知れないのだ。
意を決した少女は、猫のように素早く屋敷に入り込んでいった。
* - * - * - * - * - * - * - * - * - * - *
源八郎は、包帯のように白布で巻かれた腕をさすっていた。
ひどいケガではないが、少し疼くように痛む。
その痛みこそが、己の未熟さの証であると感じており、少年は少し落ち込んだ。
その時、カラリと乾いた音がして障子戸が開いた。
源八郎がふと顔を上げると、思いもしなかった人物がそこにいた。
「珊瑚……」
「……」
少年の顔に驚愕の色が浮かぶ。
入ってきた少女は、少しぎこちない笑みを浮かべて所在なげに立っていた。
それを見て、源八郎が少し慌てて膝立ちになり、珊瑚に言った。
「どうしてここへ……」
「……ごめん、突然……」
「い、いや、そうではなくて……。あ、す、座ってくれ」
珊瑚が辺りを気にしながら腰を下ろした。
その様子で、少年も気が付いた。
「ちょっと待っててくれ」と言い残し、源八郎は廊下に出ていった。
そして隣の宿直部屋へ顔を出した。
「これは若、何事で?」
中には三人ほどの若侍がいた。
彼らは三交代でこの屋敷内で源八郎を護る警護の者である。
宿直と書いて「とのい」と呼ばれている。
主君が眠っている時やくつろいでいる時、刺客から守護する役割で、文字通りの宿直である。
ひとりが部屋を出て少年に聞く。
「何事か」と言われても、部屋に女を呼んでいるから外してくれとは言いにくかった。
源八郎が困ったようにもじもじしているのを不得要領な顔をして見ていたが、彼の部屋の
障子に人影が映っているのに気づいた。
そのシルエットから察するに、どうも若い女のようである。
若侍は「なるほど」と思った。
「そういうことですか。若もなかなかやりますな」
「……」
宿直がどういう勘違いをしているのか源八郎にも理解出来たが、あながち外れてもいないので
黙っていた。
警護の侍は、軽く少年の肩を叩いて言った。
「わかりました、若。我々は少し外しましょう」
「そ、そうか、すまん」
「なに、よろしいのですよ。お屋形さまには内密にしておきます故」
「……」
源八郎は、初陣を明日に控え、想い人を呼び寄せたのであろう。
ここまで来たということは門番も了承済みのはずだ。
ならば怪しい者ではあるまい。
この若さまは父親に似て、少し実直に過ぎる。
少しはハメを外した方が見聞も広まろうというものだ。
若侍は、そう思っていた。
宿直部屋から他の仲間も呼び出すと、静かに部屋を後にした。
少年が自分の部屋に戻ると、少女は正座していた。
それまでは胡座をかいていた源八郎だが、珊瑚に合わせてやはり正座した。
そのことに気づき、珊瑚は少し微笑ましくなった。
やはりこの少年は生真面目で不器用なのだ。
少しリラックス出来て、珊瑚は言った。
「ケガ……、大丈夫?」
「あ、ああ。こんなものどうということはない。それにケガをしたのは自分の不注意だ、
情けない」
「痛くないの?」
「少しな。だが、受け身を教わっていたから軽く済んだ。珊瑚のお陰だ」
「そう……」
少年は、落馬した時、咄嗟に身体を丸め、腕で守るようにして落ちた。
肘をうまくバネに使って、身体への衝撃はだいぶ減ったようだった。
腕に巻いた白布は地面に着いた時に擦りむいた傷のせいである。
左脚の腿にも薬を塗ったサラシを巻いていたが、これは落ちた場所に運悪く石っころが
あったため、少し痣になったのだ。
走る馬から落馬したにしては、総じて軽く済んだ方であろう。
「明日……なんだってね」
「……合戦のことか。そうだ」
「……」
「そのことで来てくれたのか? 俺のことを心配してくれて……」
「う、うん……」
突然、源八郎は姿勢を正し、珊瑚に対して土下座した。
「すまなかった」
「ちょ……、どうしたのよ」
「あの時は本当に……、すまなんだ。この通りだ」
「……」
例の痴漢行為について謝罪しているのだろう。
少年にしても、恥ずかしいやら気まずいやらで、口にしづらかったろうに、彼は男らしく
謝った。
珊瑚は顔を軽く振って言った。
「ううん、いいの、もう……。あの時はあたしも怒っちゃったし。ちょっと悲しかったけど
……」
「すまん……」
「あ、いいの、だから頭を上げて。ね?」
「……」
「それに、あたしも源八郎にひどいこと言っちゃったし……」
少年も勇を奮って言葉にしたのだ。
珊瑚も、ここで言わなくちゃと思った。
「あのね……、源八郎のこと大嫌いなんてウソだから……」
「珊瑚……」
ちょっと雰囲気が危ない方向に行きそうだったので、珊瑚は話題を変えた。
「どう? 戦を明日に控えて。やっぱりまだ怖い?」
「そうだな……、正直言って怖い」
「正直だね、あんた……。でも、それでいいんだよ。あたしだって戦闘の時は怖いしさ。
誰だって死ぬのは怖いんだよ」
「あ、いや、そうではないのだ」
「?」
少年は手を振って言った。
「死ぬことはそう怖くはないのだ。いや、これは強がりではなくてな。『武士道とは死ぬこと
と見つけたり』ではないがな、武士の家に生まれた以上、戦で死ぬことはむしろ武門の誉れだ」
「……」
「病や事故で命を落とす方がよほど怖いくらいだ。合戦で、主家の大殿の前で屍を晒し、赤心
をお見せすることこそ原嶋の家のためなのだ」
「それじゃ何が……」
「……。他人を死に追いやることが怖いのだ……」
思いも寄らぬ発言に、珊瑚は少年をまじまじと見つめた。
「俺は生まれながらに武将の子だった。雑兵であれば、己の命ひとつを張って戦に臨むことも
出来よう。だが、俺には家来どもがいる」
「家来……」
「俺が足軽だったなら、俺がヘマをしても死ぬのは俺だけだ。どうということはない。だが、
俺は武将なのだ。俺がまずい采配を振るえば、家来どもを殺すことになってしまう。俺は
それが怖い」
そうか、この少年は自分の命を失うことよりも、自分のせいで家来たちが死ぬことの方がよほど
恐ろしいのだ。
源八郎は武将の父を持ち、そのお陰で、この戦国の世の中で人並み以上の暮らしが出来ている。
だがその反面、その小さな肩には支え切れぬほどの重責も背負っているのである。
まだ十三歳の少年が、だ。
「家来ひとりが死ねば、その一族郎党ども全員が悲しもう。そういう家来が俺には三〇〇人も
いるのだ。その責任を考えると俺は……」
「源八郎……」
思わず声を掛けようとした珊瑚だったが、少年がまた話し出したので口をつぐんだ。
「……実は俺には許嫁がいる」
「え……」
初耳だった。
「こたびの戦を無事終えた後、松田の殿の孫娘を娶ることになっておるのだ」
政略結婚らしい。
この時代、武士の婚姻というものは、この手の結婚が多かった。
主君と家臣は、その娘を嫁に出し、息子に嫁がせ、関係を強化していくのが普通だ。
大名同士の場合もある。
そうして血縁関係を作り、同盟を結んで後顧の憂いを絶つのである。
今回の源八郎と松田家の婚儀も、松田側が有力家臣の原嶋家との結びつきを強める目的で
持ちかけてきたものらしい。
聞き終えて珊瑚が訊いた。
「じゃあ源八郎は、この結婚がイヤなの? ……あ、ごめん、言いにくいよね、こんなこと」
「いや構わん。それに、どうしても厭なわけではないのだ。我ら武士の間では、こういうことは
日常茶飯事だからな」
「そうなんだ……」
「俺の元に来ることになっている娘とは、先日いちど会ったのだ。気立ては良さそうだったし、
悪い女ではないと思う。もっとも、まだ九歳だそうだがな」
源八郎はそう言って笑った。
ママゴトのような結婚だが、ひどいのになると男女ともに一〇歳以下というケースもあったから
ものすごい。
こうなると結婚というよりは遊び相手に近く、親の方も子供の意志など無関係に話を進めるのが
普通だ。
まあ放っておいても、殿様クラスになれば、正室(正妻)の他に側室(妾)を複数持つのが
当たり前だから、大きな問題にはならないのだろう。
こうして、言わば多妻になるのは子供を多く作るためである。
男子なら養子に出し、もちろん世継ぎにもなる。
女子なら政略のため他家に差し出す。
子供はいくらいても足りないくらいなのだ。
「そもそも、俺の両親も元々はその手の婚姻だったと聞いている。父が十五歳、母が十一歳
だったそうだ。それでも父母は仲睦まじいしな」
「そっか……」
少し固かった珊瑚と源八郎だが、話が進んでいくうちにだんだんとほぐれてきた。
源八郎も、明日はどうなるかわからないという気持ちがあるからか、それまで溜まっていた
思いを次々に口にして言った。
「婚儀のこととか、戦のこととか、いろいろ頭を駆けめぐってな、居ても立ってもいられぬ
ようになったんだな」
「……」
「こう、頭がもやもやっとしてな。大声で叫びたいような、思い切り身体を動かしたいような」
相当なプレッシャーがあったということなのであろう。
気持ちはわかると珊瑚は思った。
「そんな時だった、珊瑚を見たのは……」
「え……」
「川で珊瑚が洗濯していたのだ。初めて見たとき、なんと美しいおなごだと思うた」
「……」
「胸がどきんとしたな、今でもはっきり覚えておる。すらりとしたそなたの姿や涼やかな声に
ぼうっとなってしまった」
「……」
「その時以来、ずっと思っておったのだ。こんなおなごが俺の嫁であれば、と」
「源八郎……」
珊瑚はうつむき、少し顔を染めた。
そうだろうとは思っていたが、源八郎のような少年にそう思われるのは嬉しかった。
もちろん、その気持ちを受けるわけにはいかなかったが。
「だが、今考えてみると、俺は珊瑚に甘えたかったのだろうな」
「甘えたい……?」
「うむ。もやもやした気持ちや、押し潰されそうな心を珊瑚のような女に慰めて欲しかった
のかも知れん」
「……」
(この子……)
珊瑚は黙って少年を見つめた。
その瞳に何とも言えない色が浮かんでいた。
(本当に生真面目で、正直で、それでいて生きるのが不器用で……。痛いくらいにまっすぐな
心根なんだ……)
珊瑚は、どうすればこの子を救ってあげられるか考えた。
いや、考えている振りをしていたのかも知れない。
なぜなら、どうすればいいのか、もう珊瑚にはわかっていたからだ。
ただ、本当にそうしていいのかどうか、彼女にはわからなかっただけだ。
しかし、もう迷わない。
少し、ほんの少し後ろめたい気持ちがした。
珊瑚は心の中で愛しい男に謝った。
(ごめんなさい、法師さま……。今夜だけ……)
美しい少女は、膝で少年にすり寄って行った。
少しうつむき加減だった少年は、近寄ってきた珊瑚に気づき、少し慌てたような顔をした。
珊瑚は微かに微笑んで、何も言うなという風に源八郎の唇に人差し指を当てた。
* - * - * - * - * - * - * - * - * - * - *
部屋の中央に布団を敷き、珊瑚は横たわっていた。
緊張した面もちの源八郎が、震える指で珊瑚の戦闘服を脱がせていく。
露わになった胸元に見慣れぬ下着がついていたが、濃い色の戦闘服と対象的に、目に染みる
ような真っ白な肌が少年の目に映った。
珊瑚は少し赤くした顔を背けて言った。
「お願い、灯りを消して……」
源八郎はいったん珊瑚をそのままにして、部屋に隅にあった行灯を吹き消した。
再び少年は、横になっている珊瑚の傍らに座った。
ごくりと生唾を飲み込んで、また珊瑚の服に手を掛ける。
しかし、その手は気の毒なくらいに震えていた。
憧れ続けてきた美少女と閨を共にすることが出来そうなのだ。
緊張するなという方が無理だろう。
なにしろ源八郎はまだ童貞だったのである。
なかなか先に進まない少年の様子をちらりと見た珊瑚は、なんだか少し可笑しくなってきた。
そうか、男の子も初めて女の子を抱く時には緊張するものなんだ。
そう思うと、それまで張り詰めていた緊張感がほぐれてくる。
男女のまぐわいは男の側が主導権を取るものだと珊瑚は思っているが、こういう場合は
別だろう。
年上であり経験もある珊瑚が源八郎をリードするべきだ。
暗がりの中、少女は半身を起こした。
それを見て少年が慌てて言う。
「すっ、すまん……。な、慣れてなくて、その……」
「いいの」
珊瑚は優しく微笑んだ。
そして自分で着衣を脱いでいく。
少年は、見てはいけないと思っているのか、心持ち顔を逸らしているようだ。
そんなところにも彼らしさが出ている気がして、少女は好感を抱く。
「源八郎も脱いで」
「あ、ああ」
少年は全裸となり、珊瑚の前に正座した。
珊瑚も生まれたままの姿となり、横座りしていた。
左腕で胸を隠し、右手でさりげなく股間を覆っている。
いっそう固くなった感のある少年に、少女が訊いた。
「源八郎、初めてなんでしょ?」
「……」
「恥ずかしがることないわ。誰だって初めての時はあるもの」
「うん……」
「でも、あたしは経験あるの。どう、失望した?」
「そんなことない!」
強い口調で少年が言った。
「そ、そんなことで珊瑚の美しさは少しも損なわれてはおらん」
「……ありがとう」
珊瑚は「いらっしゃい」とでも言うように、手を差し出した。
誘われるようににじり寄った源八郎は、美少女の肌がはっきりと見えてくると、たまらない
ようにむしゃぶりついていった。
「あん……、慌てないで、大丈夫だから」
「珊瑚……」
少年はものも言わず、珊瑚のふくよかな胸に顔をうずめた。
といって、胸肉に舌を這わせるとか、乳首を口に含むといった愛撫をするわけでもない。
そんな余裕もないだろうし、そもそもそういうことは知らないのかも知れぬ。
少女は源八郎の両肩を優しく掴み、その顔を正面に向けさせた。
「源八郎……」
「あっ……む……」
珊瑚は、少年にまとまった一言を言わせずにその口を自らの唇で塞いだ。
「んっ……んむう……ん、ぷあっ……」
源八郎は、あまりのことに驚き、珊瑚の肩を押しのけて口を離した。
珊瑚はクスリと笑う。
「……どうしたの? あたしと口づけするの、いや?」
「いっ、いや、そうではなくて……。その、驚いてしまって……」
「そう。じゃ、改めて」
「むむっ……」
少年は再度、美少女の唇を受けた。
なんと柔らかく、そして暖かいのだろうか。
それに、こうして口づけを交わしていると、そこはかとなく甘い香りも漂ってくる。
「ん……んん……っ……」
まだ唇を重ね合わせるだけの接吻だが、それすら初めてだった少年には充分すぎるほどの
刺激だった。
今度は珊瑚の方からゆっくりと唇を離した。
源八郎は陶然としたような顔をしている。
よく見ると、胸のあたりがピクピク動いている。
軽いキスだったが、それだけでも動悸が上がるほどの興奮だったのだろう。
(可愛い……)
珊瑚は、この少年がより愛おしくなってくる。
それでいて、どこかに醒めたところもあるのだ。
自分が身を焦がすような恋愛ではない。
自分のためでなく、あくまで少年のためだという気持ちがある。
まだぼぉっとしている少年を立たせると、珊瑚はその前に跪いた。
彼女の目の前には、まだ少年の幼さの残った性器があった。
薄い桃色で、まだ使っていないことがひとめでわかる。
亀頭部は完全には露出していなかったが、充分に大きくなっていた。
珊瑚がそれに手を出すと、源八郎は少し慌てたように腰を引いた。
少女は少し悪戯っぽい顔で言う。
「緊張しないでいいわ。あたしに任せて」
「……」
珊瑚は左手でその付け根を押さえ、右手で先の方から根元へ軽くしごいた。
すでにぬるぬるした汁を垂らし始めていた亀頭は、それですっかり顔を出した。
青臭い、思ったより強い性臭が珊瑚の鼻腔に侵入してくる。
「立派だわ、源八郎……。男らしいわ」
少女はそう言って、彼に自信を植え付けようとした。
とはいえ、珊瑚はまるっきりの虚構を口にしたわけではない。
巨根というほどではないにしろ、この年齢であれば、なかなかの逸物と言えるだろう。
珊瑚が男根を優しくしごいていると、少年は顔を真っ赤にして呻き出した。
さすがに源八郎も自慰くらいはしたことがあろうが、惚れた女にしてもらうのとでは雲泥の差
なのだろう。
そんな少年の仕草を可愛らしく思った珊瑚は、もうすっかり硬くなったものの先端に唇をつけた。
「あっ……く……」
それだけで、源八郎の背筋をビリビリと電流が走った。
続いて来た刺激は、竿の部分にねっとりと濡れた熱いものが這う感触だ。
見ると、珊瑚が舌を伸ばして源八郎の肉棒をねぶっていた。
「んふっ……んん……む……」
珊瑚の熱い息づかいが竿に当たるたび、源八郎は言いようのない快感に襲われた。
充血した男根はますます猛り立っていく。
早くもぶるぶる震えてきた肉棒を見て、珊瑚はためらうことなく、その先端を口に含んだ。
「うあっ……」
己のものを女が口に含むという行為に、源八郎は頭がカッと熱くなる。
憧れ続けてきた美少女が、己の性器を口にしている。
それだけで少年の性感は一気に頂点へと駆け込んでいく。
珊瑚は、それを口一杯に頬張った。
やっぱりそこそこ長い。
先端は喉に届くようだ。
少女はゆっくりと源八郎の肉棒を、その柔らかい唇でしごいていった。
顔を前後に動かし、唇でピストンさせ竿を刺激する。
これで亀頭部を刺激しようものなら、もう先走り汁が零れて痙攣しているそこは一気に放出
してしまうだろう。
珊瑚が口でスロートし始めると、そのこそばゆいような痺れるような悦楽に、少年は思わず
腰がガクガクと震える。
珊瑚は一度それを口から出して、少年を見つめた。
赤い顔をしてはぁはぁと息をしている源八郎に、珊瑚が訊いた。
「ね、気持ちいい?」
「うっ、うん。どうにかなってしまいそうだ」
「ふふ。出したくなったらいいのよ、出しても」
珊瑚はそう言うと、再び源八郎のものをくわえた。
先端のくびれを、唇できゅっと締めつける。
「ひっ」
少年は甲高い、情けないような悲鳴を上げた。
構わず、珊瑚はその先端部を舌先で軽く撫でて擦るように刺激した。
時折、舌先を硬くして、尿道口を突ついてやる。
「くあっ、さ、珊瑚っ……」
想像を絶する心地よさに、頭の中が漂白されるようだ。
初めて知るおとなの女性の性技に、少年は若々しい裸身をくねらせて切ない声で呻いた。
珊瑚の舌や咥内の粘膜が加えてくる熱く優しい愛撫に、源八郎の肉棒は限界寸前にまで膨れ
あがっている。
このままされ続けたら、男根がとろけてしまうのではないかと思った。
「あ、ああ……」
源八郎は、ほとんど無意識に珊瑚の髪を掴み、腰をがくがくと振っていた。
男の本能なのか、そうしてピストンしているのだ。
ぬめついた先走りはとろとろと流れ続け、亀頭部だけでなく竿の部分にまで細かい痙攣が
起こり始めた。
射精が近いと珊瑚は覚ったが、そのまま口に出されても構わないと思った。
真面目な源八郎のことだ、自分の汚液で珊瑚の身体を汚したところを目の当たりにしたら、
彼女に済まないという思いが先に立ってしまうかも知れない。
ならば少年の精液を口にしてあげようと彼女は思った。
源八郎は激しく腰を振り出した。
時々、肉棒の先端が珊瑚の喉を突き、苦しくなることがある。
しかし少年はそのことに気を回すほどのゆとりはまるでないようだった。
これ以上、やんわり責めても少年がつらくなるだけかも知れないと思った少女は、一度出させて
楽にしてあげようと思った。
やわやわと頬の内側でねぶっていた男根を、今度は一気に喉の奥まで飲み込んだ。
唇の締め付けと蠢く舌の感触に、源八郎は完全に追い込まれた。
「さっ、珊瑚っ……だ、だめだ、もうっ……」
「んんっ……んちゅっ……むむ……んうっ……」
「はっ、離してくれ、さもないと……ああっ……」
押しのけようとする源八郎の腰にしがみつき、珊瑚は攻勢を加えた。
喉の動きに亀頭部が振り回され、細かく激しい舌の動きに、いよいよ少年は達しようとしていた。
少女は頭を前後に揺すり、唇と咥内で少年の男根全部をねぶるように刺激した。
さらに男根の付け根を指で締めつけ、先の方へしごきあげた。
「くうっ、珊瑚っ……」
珊瑚にかけてはならぬと押しのけようとしていたのに、いつしか源八郎は彼女の頭をしっかりと
抱え、思い切り腰を突き出していた。
そして頂点を迎え、その欲望の濁液を思い切り珊瑚の口中に放出した。
「んっ……んぐっ……んく……ごく……んくっ……」
珊瑚は源八郎の射精の発作に合わせるようにして喉を動かした。
少年が射精した精液を最後まで飲み下す。
「ぷあ……けっ、けほっ……」
あまりにも濃い精液が、珊瑚の喉に絡んだ。
量も多かった。
いくら飲み込んでも、後から後から射精されてくる感じがした。
源八郎は信じられない思いで美少女を見つめていた。
性器を口にしてくれただけでなく、射精したものまで飲み込んでくれた。
唇の端を白い精液で汚した美少女を見て、少年の心はさらに高鳴る。
それを見越したのか、唇を拭った珊瑚が源八郎に言った。
「すごいいっぱい出たわね……」
「……」
「今度は、あんたがあたしを愛して。ね?」
少女の、甘い妖しい誘いの言葉を聞くと、少年は跪いた珊瑚にのしかかるように襲いかかって
いった。
テクニックとは無縁だが、情熱だけは溢れるほどある少年を、少女は優しく手ほどきしていく。
「ほら」
「あ……」
珊瑚は源八郎の手を取り、自分の胸に導いていった。
指にふにっとした感触が伝わり、思わず手を引っ込めそうになるが、珊瑚がそれを許さない。
戸惑った少年は助けを求めるように珊瑚に訊いた。
「どっ、どうすれば……」
「いいのよ、源八郎が好きなようにして」
「好きなように……」
「うん」
少年は息を飲んで美少女の肢体を見つめた。
けぶるような白さを持った、バランスの良い見事な裸体である。
飛びつきそうになるのを必死に堪えて、震える手を伸ばした。
そして少女の豊かなふくらみをそっと手にすると、下の方からすくい上げるように揉み
上げてみる。
「んっ……、そう……それでいいわ……あっ……」
源八郎は夢見心地だった。
珊瑚の乳房は信じられないほどに柔らかく、少年の手の中でとろけてしまいそうだ。
それを手いっぱいに拡げてゆっくりと揉み込んでいくと、少女はときおり眉間に皺を寄せて、
唇から甘い喘ぎ声を洩らすのだった。
「つ、次は……あっ……その先の方を……」
「先……?」
「ち、乳首を……ああ……」
言われるままに、少年は珊瑚の乳首を指で摘んだ。
指がどこまでもめり込んでしまいそうなほどに柔らかかった乳房と異なり、そこだけは少し
固く盛り上がっている。
「おっぱいを、ああ……も、揉みながら……そこ、乳首も可愛がって……」
源八郎は少し力を入れて胸肉を揉み込み、指先で乳頭を弾くようにいびった。
すると珊瑚は、抜けるような高い声を遠慮がちに上げ、唇を噛んで恥ずかしい声が洩れるのを
我慢している。
しかし少年が人差し指で左右に擦るように乳首をいびっていくと、そこが見る見るうちに硬く
尖っていくのがわかり、腰の奥から熱いものが滲んでくるのがはっきりとわかった。
「あっ、ああっ……」
強烈な刺激に、珊瑚は思わずのけぞった。
張り詰めた乳首を源八郎が口で吸い上げたのだ。
胸の奥深いところから快感が引き出されるような刺激に、美少女は少年の頭を抱きかかえた。
少年も少女を抱きしめ、なおも乳首を吸い、乳房の柔らかい肉を舐めている。
忘我になりつつも、珊瑚は源八郎に言った。
「ああ……、おっぱいだけじゃなくって……、ここも……」
珊瑚は少年の手を引き、自らの股間へ持ってこさせる。
「ああっ」
少年は驚きの声を上げた。
そこで感じられたのは淡い繁みの感触と、珊瑚の体温だった。
何より驚いたのは、そこがしっとりと濡れていたことである。
女性が性的に興奮すると、そこから分泌液が湧き、濡れてくるという知識もないのだろう。
珊瑚は目をつむって源八郎の耳元につぶやいた。
「んんっ、そ、そこよ……で、でも優しくして……」
少年はどうしていいのかわからなかったが、本能の赴くままにすることにした。
指先に珊瑚の体液がまぶされ、まさぐっていくとそこにぽってりとした襞というか割れ目らしい
ものがある。
媚肉だが、源八郎は初めて見るものだし、どういうものかもわからない。
しかし、そこを指でなぞっていると、珊瑚がうっとりとした表情になるので、これでいいの
だろうと判断した。
さらにそこを指で割り、僅かに開いた隙間に中指を潜り込ませると、少女は身体をぶるっと
震わせた。
「すっ、すまん、痛かったのか?」
「ち、違うの……」
「い、いいのか?」
少女は恥ずかしそうに頷いた。
そして言う。
「そうしたら、その上にある……その、お豆みたいなのを、ゆっくり優しくさすって……」
顔を真っ赤にして珊瑚はようやくそれだけ言った。
こんなことを自分から要求して口にするなどというのは彼女にとっても初めてである。
恥ずかしくて仕方がなかったが、反対にそれが彼女自身の官能の扉をこじ開けているのも確か
だったようで、少女の裸身はいっそう熱くなっていくのだった。
「あ、ああ……あっ……あ、い……」
源八郎もだんだんと要領がわかってきた。
胸だけや股間だけでなく、双方を同時愛撫してやると、珊瑚の反応が一段と良くなっていく
のがわかる。
少年は、乳房を揉み、乳首を口でねぶり、媚肉を撫で上げて珊瑚の口から控えめな喘ぎ声を
引き出していく。
そして、珊瑚に言われたように、媚肉の頂点に鎮座している肉芽を指でゆっくりで撫で上げ
ていくと、少女の身体は電気が走ったかのようにビンっと突っ張った。
「はあっ……く……そこっ……あ、ああ、源八郎……あっ……」
つまみ上げられる乳首は濃く色づき、痛々しいほどに勃起している。
媚肉はと言えば、責める少年の指が愛液まみれになるほどに濡れ切っていた。
「あっ……くううっ……そ、それでいいわ……あっ……つ、続けて……」
リードしていたはずの珊瑚の声が、甘えたような艶めいたものに変わっていく。
少年もだんだんと自信を持ってくる。
珊瑚は、この俺の指で感じている。
それが何にも増して嬉しかった。
もっともっとこの少女を感じさせたい。
源八郎は、媚肉の中に侵入させた指を動かし、膣孔を発見する。
その中に潜り込ませ、不慣れながら心を込めて愛撫し出した。
「あっ……う……んんっ……」
源八郎の指の動きに応じて珊瑚の唇から甘い声が響き、その肢体が僅かに震える。
少年は、蜜に濡れた指先で珊瑚の膣内の襞を擦りつけるように抉っていく。
しかし決して力は入れない。
欲望に溺れることなく、優しく、大事な壊れ物を扱うかのように。
少女の声が少しずつ高ぶっていく。
「あ、そう……それでいい……あっ……」
そこで突然、少年は乳房と媚肉から指をのけた。
珊瑚は少し潤んだような瞳で少年を捉え、訊いた。
「どうしたの……?」
「その、口で……」
「?」
「さっき珊瑚がしてくれたように、俺も口で、その、珊瑚の……」
珊瑚は何も言わず、微笑んで仰向けになった。
肘で身体を支え、半身を起こして軽く腿を開いた。
少年は興奮して凝視するように珊瑚の股間を覗き込んでいる。
珊瑚は顔を紅潮させて叱った。
「そんなにじっくり見ちゃ恥ずかしいわ……」
「わ、わかった」
源八郎はゆっくりとそこに顔を寄せた。
珊瑚の甘い体臭がふわっと少年の顔を覆う。
目をつむって彼はそこに口を当てた。
どうすればいいのか、なんとなくわかる気がする。
花弁の周辺にゆっくりと舌を這わせた。
技術的なことは出来ないが、珊瑚を感じさせようと懸命に舌を動かした。
媚肉の縁を舐め上げるようにすると、珊瑚はぶるっと腰を振るわせた。
「あっ……あっ、く……そ、そう……そんな感じ……あっ……」
舌先を尖らせて抉るとか、細かく震わせて刺激するとか、そういう知識はない。
ただひたすら、犬か猫のように舐め上げるだけだ。
それでも、舌いっぱいに使って舐め込んでいくと、媚肉の襞を擦ったり、膣口を撫でたりして、
ところどころ珊瑚の官能を煽っていった。
「ああ……んっ……んん……は……」
じわじわと弱火で炙られるような、鈍いが念入りな快感に珊瑚は喘いだ。
弱点を責められる快楽とは異なったものだが、焦らされるようなその刺激に彼女も高まっていく。
しかし、少年の舌が偶然クリトリスに触れると、ぐんっと背が仰け反った。
「ああっ!」
突然上がった珊瑚の甲高い悲鳴に少年は驚いて顔を離したが、それが悲鳴ではないことが
わかった。
珊瑚はよがっていたのだ。
喘いでいたのである。
つまりそこが気持ちいいのだろう。
そういえば、その豆のようなところをいじってくれと言っていた。
なら、指でなく舌でなぶったらもっといいのかも知れない。
そう思った源八郎は、また顔をつけて今度は集中的に肉芽を責めた。
「んああっ、そこっ……や、だめ、そこばっか……あぁっ……」
少年の舌がクリトリスをねぶるたび、珊瑚は黒髪を振って喘ぎ続ける。
押し寄せる快楽を逃がそうと頭を振るのだが、次々と新たな快感が注ぎ込まれてくる。
源八郎は飽きることなくそこを舐め上げた。
すると、それまで包皮をかぶっていたクリトリスがすっかり姿を現してきていた。
そこを少年は唇で挟み込んで引っ張り上げるようにしてねぶる。
そのまま舌でつついたりすると、珊瑚はたまらずに源八郎の頭を押さえ込んで堪える。
だが、源八郎がそこをくわえたまま思い切り吸い上げると、絶息するような声で喘いだ。
「うああっ……くっ、いいっ……やあ、だめ源八郎っ……あっ、吸わないで……ああっ……」
少年は無言で責め続けた。
口では止めるように言っているが、珊瑚のそこは洪水のようだ。
吸い上げると、それに合わせて噴き上げるように蜜がしぶいてくる。
珊瑚が気持ちいいのだと思うと、少年の行為にも熱が入る。
「だっ、だめっ……お願い源八郎……ああ、ちょ、ちょっと待って……あっ」
そうまで言われて、ようやく少年は口を離した。
彼の口の回りは珊瑚の蜜でまみれている。
珊瑚は息を整えるとようやく落ち着いた。
危うくいかされるところだったのだ。
珊瑚がよくなるのではなく、少年のためにしているのだから、彼を満足させねばならない。
そこでようやく珊瑚は気づいた。
少年の股間は完全に勃起しているではないか。
珊瑚の身体にすっかり興奮しているのだ。
少女は微笑ましくなってクスッと笑った。
「源八郎、さっきあんなに出したのに、もうおっきくなってるわ」
「あっ……、こ、これは、その……」
少年はたちまち赤くなって、両手で股間を押さえた。
珊瑚は軽く首を振って言った。
「いいのよ、恥ずかしいことじゃないわ。……男の子だもんね」
「……」
少女にあさましい欲望を指摘されたようで、少年はいたたまれなくなる。
珊瑚は恥ずかしそうにうつむいた少年を見る。
若者らしい瑞々しい身体だった。
鍛錬を怠らない源八郎らしく、引き締まった肉体だ。
それでいて筋肉隆々というイメージはない。
まだ子供らしさもそこはかとなく残していた。
少女の視線が少年の股間で止まった。
珊瑚が口で綺麗にしたはずなのに、そこはまたしても透明なぬるぬるしたもので汚れていた。
怒ったように真っ赤に充血しており、見るからに硬そうに屹立していた。
珊瑚は軽く頭を振った。
自分が溺れては仕方ないのだ。
彼女は言った。
「ねえ、今度は源八郎が横になって」
「え……」
「いいから」
少年は言われるままに横たわった。
男根が天に向かってそそり立っている。
それを見て自分の性器が恥ずかしいほどに勃起していたことを知り、慌てて手を隠した。
珊瑚は薄く笑ってそれを遮った。
「あっ……」
少女の柔和な手がそこに触れ、源八郎は思わず声が出る。
そして彼女の手を払おうとするが、それも珊瑚に止められた。
「いいの、源八郎は何もしなくて……」
「……」
「あたしが……してあげるから……」
珊瑚も恥ずかしそうに顔を赤らめながら言った。
まったく、こんな積極的なことを口にするのは初めてなのだ。
相手が弥勒だったら、恥ずかしくてとても言えない。
源八郎がうぶで無垢な少年であり、それを導くのが自分だと思っているからこそ出来ることだ。
珊瑚は痛々しいほどの硬く張り詰めている少年の男根を握った。
「熱いわ、源八郎……」
「そっ、そうか……。珊瑚の手は柔らかくて気持ちいい」
「ありがと。でも、ホントにカチカチなのね……。痛くないの?」
「少し痛いこともある……。自分でもどうしてここまで硬くなるのかよくわからん」
「いやらしいこと考えるとこうなるんでしょ?」
「そっ、それは……」
顔色や表情がころころ変わる少年を見て、珊瑚はくすくす笑っていた。
これでいい。
お互いに随分とリラックス出来ている。
珊瑚はおもむろに、仰向けに寝転がった源八郎の上に跨った。
「な、なにを……」
少年は驚いて起き上がろうとしたが、珊瑚が両手でその胸を押した。
「任せてって言ったでしょ?」
「……」
少年にしては立派な持ち物に指をあてがい、自分の濡れた媚肉に導いていく。
その熱い先端が触れた時、珊瑚は少し目を閉じた。
源八郎と珊瑚の蜜が混じり合う感触に、少女はその腰が熱くなっていくのを感じている。
少年はなぜか目を固く閉じ、顔を背けていた。
「んんっ……」
珊瑚はゆっくりと腰を沈め込んだ。
珊瑚の花弁はすでに熱く濡れており、源八郎の男根は何の障害もなくずぶずぶと内部に入り
込んでいった。
その刺激に微かに眉をしかめながら、珊瑚はさらに腰を落としていく。
源八郎は全神経を自分の分身に集中していた。
自分は、あの珊瑚と和合している。
夢のような出来事だが、それが現実であることを自分の性器が実感している。
初めて味わう女陰は、信じられないほどに熱く柔らかくぬるぬるしていた。
狭い膣管を肉棒で押し広げていく感覚は、自分が男であることを強く認識させた。
少年はたまらず目を開けてその光景を見た。
「ああ、珊瑚の中に俺が……」
そう源八郎が呻いた時、珊瑚は彼の腰の上に尻たぶを乗せていた。
少年の男根が膣の奥深いところまで達した感覚に珊瑚は酔った。
そうしたいと思ったわけではないのに、勝手に腰がうねり出す。
膣に締めつけられ緩められるのを繰り返されると、源八郎は肉棒がさらに硬くなっていくのを
実感する。
上に乗った少女が腰を振ると、膣の襞に男根が擦られてたまらない快楽を少年に伝えてくる。
「うっ……あ、源八郎の、あっ……ま、また硬くなった、みたい……あっ……」
肉棒の中の芯がどんどんと太く硬くなる感触に、珊瑚も陶然とする。
硬い心棒を包み込んだ弾力のある部分が狭くなり、代わりに中の硬い部分がずっと大きくなった
感じだ。
珊瑚は源八郎の胸に両手を突き、僅かに身体を持ち上げると、またすぐに座り込んだ。
そのたびに、ぬっ、ぬっ、と湿った卑猥な音が響く。
「うっ、あっ……」
少女が始めた上下運動に、少年は上擦った声を上げた。
珊瑚が腰を揺するたびに、ぬめった襞が男根を包み込んでくる。
その熱さと快感に源八郎は我を忘れそうになる。
その悦楽に耐えながら珊瑚を見上げると、彼女は上気した顔を仰け反らせながら小さく喘いでいた。
身体を揺するとそれに合わせて見事な形状の乳房がゆさゆさと揺れる。
その動きに欲情した少年は思わず手を伸ばし、上下している胸のふくらみを握り、揉み込んだ。
「ああっ」
突如、胸から襲ってきた甘美な響きに、珊瑚ががくんと首を仰け反らせて喘いだ。
途端にきゅうっと膣が締まり、すでに限界寸前だった少年のペニスが炸裂した。
「うあっ……」
「……え?」
じわっと胎内に広がった熱い感触に、珊瑚は動きを止めて少年を見下ろした。
目をパチクリしている。
源八郎は居たたまれなさそうに顔を背け、小声で謝った。
「すまん……、その……」
少女は優しく顔を振り、少年に言った。
「無理ないわ、初めてだもの。それに、こんなに早く出しちゃうのは、源八郎があたしのことを
好きだからなんだもん。違う?」
「珊瑚……」
初体験が憧れの女性、しかもそれが珊瑚ほどの名器の持ち主であれば、僅か数度の律動での
射精も致し方のないところだろう。
少年はむくりと起き上がって美少女を抱きしめた。
珊瑚も少年の頭を抱えるように抱いてやる。
珊瑚のふくよかな胸に顔を押しつけているうちに、源八郎の男根はまたしてもむくむくと膨れ
あがっていく。
その圧迫感を感じた少女が耳元で囁いた。
「すごい……、源八郎の、またおっきくなってるね……」
「うっ、うん……、珊瑚が、ああ……締めつけてくるから……」
三度目の勃起を果たしたそれが珊瑚の子宮近くまで届いている。
じわじわ包み込むような膣襞の刺激で、また達してしまいそうになるのを、少年は歯を食い
しばって我慢する。
「そんなこと言ったって……くっ……、源八郎のがどんどんおっきくなるんだもの……んんっ
……、あ、あたしが、苦しくなるくらいにっ……う、うんっ……」
すっかり元通りになった少年の性器は、珊瑚の子宮口にまで到達した。
亀頭がそこを撫でるように擦ると、少女は身を震わせ、口を噛みしめる。
その快感に耐えながら、珊瑚は源八郎に言った。
「ね、ねえ……」
「なっ、なんじゃ」
「今度は……源八郎が動いてみる……?」
「え……」
「あんたが好きにしていいわ……、あたしを」
少女はいちど少年から離れた。
少年のを抜く時、年齢の割りに張ったカリの部分が媚肉の襞を擦り上げ、珊瑚はまた蜜を
滲ませてしまう。
それを少年に気づかれないように手で覆い、仰向けになって彼に言った。
「いいわ。来て、源八郎……」
「珊瑚っ」
少年は一声そう叫ぶと、倒れ込むように珊瑚に覆い被さっていく。
無意識に少女の唇を貪ると、珊瑚は口を開けて受け入れた。
源八郎は初めて舌の交換をした。
荒々しく飛び込んだ源八郎の舌を珊瑚は優しく受け止め、舌を絡ませていく。
そして逆に自分の舌を少年の咥内に入れて行った。
源八郎は、珊瑚の咥内の甘い味に陶然となる。
そして絡んでくる舌の柔らかさといったら何に例えたらいいのだろう。
とろけてしまいそうな感覚なのに、縦横に動き回り、少年の咥内と舌を丁寧に愛撫した。
顔を寄せ合い、唇を吸い合っていると、珊瑚の胸が少年の胸に接触する。
その充実した大きさと頼りないような柔らかさを併せ持つ官能的なふくらみに、源八郎の肉棒
は限界を超えて屹立していく。
ゆっくりと口を離すと、珊瑚は少年の猛り狂った男根を細い指でつまみ、そのまま花蜜にまみ
れた秘肉に導いた。
ぬるっとあっさり挿入されたが、その重量感と存在感はさっき以上だった。
「んんっ、入って……くる……、ホントすごいね……またおっきくなったよ……」
珊瑚はうっとりとそう言うと、源八郎の腰に手を回した。
少年はそれに押されるように、ぐいっと腰を押しやり、根元まで珊瑚の中に埋め込んだ。
すると先端が珊瑚の子壷を突き上げるようになり、びりびりと痺れるような快感が肉棒の先から
流れ込んでくる。
「んっ、あ……、ど、どう、源八郎?……」
「ううっ、い、いい……、珊瑚の中、気持ちいい……」
「そう、よかった……くっ……」
しかし少年は、そのまま珊瑚に沈めたまま動かない。
珊瑚が怪訝そうに訊いた。
「どうしたの、源八郎?」
「あ、なんでもない……」
根元を締め上げる珊瑚の媚肉が気持ち良すぎて何も考えられなかったのだ。
珊瑚は少し自分から腰を揺すって言った。
「どうする? やっぱり、あたしが動く?」
「いっ、いや、いい。俺が動きたい」
「そう。なら、ああっ……」
言うが早いか、源八郎は劣情に流されるように腰を使い出した。
少年は両手で珊瑚の腿を拡げるように押しつけ、ぐいっと腰を沈めていく。
少し持ち上がり、美しい薄桃色をした珊瑚の媚肉が、源八郎の猛々しいばかりの肉棒に抉ら
れていく。
媚肉の襞をめくれ込み、太いものが珊瑚の奥深くまで埋め込まれる。
「うっ、ああっ……」
奥底まで貫かれる快感に、珊瑚は背筋が痺れるほどの官能に酔う。
自分を愛してくれている少年が心を込めて刺し貫いてくる。
嬉しさと微笑ましさ、そして少々の気恥ずかしさに包まれ、少女は高ぶっていく。
源八郎は奥深くまで到達させると、我慢できないように腰を律動させ始めた。
ずるっ、じゅぶぶっ、ずぶうっ。
吸い付かれるというか、絡みつかれるというか、何とも言えない快い刺激を肉棒に感じながら、
少年は何度も何度も珊瑚を貫いた。
出し入れするごとに、珊瑚の胎内からは無尽蔵のように恥ずかしい蜜があふれ出してきていた。
「あはっ……あっ……んんっ……あう……ああっ……」
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
「そ、そうよ、源八郎……あっ……そ、そんな感じっ……ああっ……も、もっと強くしていいわ
……くうっ……」
珊瑚に励まされ、いかにも不慣れにぎこちなく動かしていた腰にリズム感が出てくる。
調子がわかってきたのだ。
律動の感覚、どこを抉れば珊瑚がより感じてくれるのか、それらが徐々に理解できるように
なってきた。
源八郎はただ前後運動するだけでなく、腰を軽く回したり、深浅のリズムを自然に修得して
いった。
源八郎に余裕が出てくるのと反比例して、珊瑚の方が追い込まれつつあった。
少年の責め口が波に乗ってくると、それに対応するかのように珊瑚の喘ぎ声に甘さと艶が
混じってくる。
「んっ……んあっ……あ、す、すごいよ、源八郎っ……ああっ……」
「な、何がだ、珊瑚っ……」
「く、あうっ……お、おっきくて……ああっ、太いのっ……」
「そうかっ、それっ、それっ」
「うああっ……あああっ……か、硬い、熱いっ……な、なんでこんなに……んんっ……」
もう珊瑚には恥ずかしいことを口走っているという感覚はない。
源八郎に自信をつけさせようということでもない。
珊瑚の女の性が、素直な感想を叫ばせているのだ。
「ううっ……」
珊瑚が高まるにつれ、当然のように膣の締まりがよくなる。
その収縮に、源八郎は歯ががちがち鳴るほどに力を込めて耐えていた。
口淫と最初の性交の時のように、あっさりと射精したくなかった。
それでも珊瑚の締め付けは素晴らしく、三度目でなければ源八郎も放出してしまっていただろう。
それを紛らわすため、また珊瑚を先に追い込むために、少年は少女の両腿を抱え上げて、
さらに腰を突き出した。
そして律動ではなく、奥に押し込んだまま激しく珊瑚の腰を揺さぶってやった。
源八郎はもちろん知らなかったが、珊瑚はそうされるのが極めて弱い。
腰を密着させて奥の奥まで挿入され、その状態で乱暴に揺すられる。
そうされると、男の腰がクリトリスを擦り、先端は子宮口を激しく擦り上げてくるのだ。
「あああっ、だめ、それっ……そ、それは、ああっ……くああ、いいっ……」
「よ、よいのか、珊瑚」
「いいっ……だめ、良すぎて、ああっ……もっ、もう……」
珊瑚は絶頂まで駆け抜けようとする意識を必死につなぎ止めた。
自分が肉欲に狂ってはいけない。
少年の前で痴態を晒す羞恥は耐えられないし、何より源八郎をすっきりさせるためにして
いるのに、自分が先にいっては困る。
そう思った珊瑚は、力を振り絞って少年をその腿で締めつけた。
珊瑚のすべすべした、それでいたふにふにと柔らかい腿の感触を腰に受け、源八郎の攻撃が怯む。
そこを珊瑚が彼の腰に腿を巻き付けた。
密着はするが、これでは腰は揺すれない。
「……」
少年が動こうともがく間、珊瑚は少し休息が取れた。
だが、それも僅かな時間だった。
少年が再攻勢をかけてきたのだ。
「え、あ? ……きゃあっ」
源八郎は珊瑚の腿をムリヤリ解くと、その左脚を抱えて肩の方に押し倒したのだ。
珊瑚は仰向けのまま前後に大きく開脚される格好になり、その間に源八郎を迎え入れていた。
柔軟な少女の肢体は、少年に抱え上げられた脚がすらりと伸びている。
腿には乳房が接触し、肩のあたりには膝が届いている。
そのままの姿勢で少女は犯された。
「はああっ……んくっ……あっ……やめ、源八郎っ、あっ……」
珊瑚の抗いも、少年の律動に打ち消されていく。
怒り狂った肉棒が、その竿を珊瑚の膣深くまで入り込ませると、女肉の花弁はずるっと内側
にめくれ込んでいく。
先が子宮に届いたかと思うと、すぐに引き戻され、今度は花弁がめくり返される。
その運動が何度も何度も飽きることなく繰り返された。
そのたびに、熱い蜜が珊瑚の胎内から掻い出され、彼女と源八郎の腰を、そして敷かれた布団を
汚していった。
「だめだめ、源八郎っ……あ、ああっ、そんな激しくっ……ああっ……」
少年の常軌を逸したような責め口に、珊瑚は自分が壊されるのではないかとすら思った。
一瞬、脅えたような表情を見せたが、すぐにそれは色欲に濁らされていく。
もちろん少年も珊瑚の哀願など耳に入らぬとばかりに、いっそうの激しさを加えていった。
ずんずんと突き上げると、それに合わせてぶるん、ぶるんと豊かに張った乳房が激しく揺れる。
源八郎は、その蠱惑の肉塊を空いた手で包み込み、揉みしだいた。
少年が愛撫する以前からすっかり赤く腫れ上がって硬くなっていた乳首は、敏感な乳房が
ぐにぐに、もにゅもにゅと揉み込まれていくと、痛いほどの充血ぶりを見せた。
その変化に女体の不思議さと魅力を同時に感じ取り、源八郎は媚肉の突き上げに負けぬほど
激しく乳房を揉み抜いた。
荒々しく鷲掴みされ、力任せに揉み込まれているというのに、珊瑚は乳房が苦痛よりもずっと
大きな快感で痺れ切っているのを感じ、さらに膣から蜜を零れさす。
「やあっ……ああ、いいっ……ん、んああっ、源八郎っ、いいっ……」
「強く揉まれるのがいいのか、珊瑚っ」
「そ、そうっ……ああっ、つ、強く揉んでっ……ああっ、痛っ……くうう、いいっ……」
その間にも男女の腰が激しくぶつかり合い、肉の弾ける音が室内に響く。
女の胎内を出入りする肉棒の動きが速まり、飛沫出る愛液も辺りに飛び散っていた。
少年が突き込むだけではない。
いつしか珊瑚も、少年に押さえつけられて不自由な腰を動かし、彼の律動に合わせて蠢いて
いた。
源八郎が突き込むと、珊瑚も腰を持ち上げて、より深い挿入を求め、少年が腰と引くと、
少女も腰を下ろし、その速度を上げさせて摩擦感を高めていった。
「んあ、んああっ……あはあっ……」
甘い疼きが激しく大きくなり、珊瑚は豊かな黒髪を振りたくって、よがり喘ぎ続けた。
珊瑚の胎内で暴れ回っていた源八郎の肉棒の動きがぎこちなく、細かく、無秩序なものになって
きていた。
狭い膣道を押し広げている亀頭部がびくびく震えているのが珊瑚にもわかる。
激しいばかりの甘い愉悦に朦朧としながらも、珊瑚はぼんやりと考える。
(ああ、この子、また出したいんだ……)
そう思った瞬間、珊瑚の膣襞が勝手に蠢きだした。
細かい動きで出入りを続けている少年の男根を締めつける圧力が高まっている。
襞の動きもざわざわと激しくなり、その肉棒にさらに大きな快感を与えていた。
珊瑚の膣が射精を欲しているのである。
「うっ、ああっ、珊瑚、これは……」
責めていたはずの源八郎が急に苦しそうな表情になる。
あまりの快楽に心も男根も我慢の限界に達しつつあったのだ。
「い、いきそうなの? 源八郎っ……」
「あ、ああ……う、もう我慢が……」
「あ、あたしもっ……ああっ、もう、ああ、もう、いく……い、いっちゃいそうよっ……」
「く、くうう……」
「あああ、いいっ……あっ、いいいいいっ……あ、いく、いきそうっ……」
源八郎の律動からリズム感が崩れ、闇雲の突き上げになってきた。
またそれが珊瑚に新鮮な快感を与え、責め上げていく。
乱暴に子宮口を小突き回され、膣内を傍若無人に抉り回される。
もともと被虐の気がある珊瑚は、弟のような少年に凌辱され、いきそうになっているのだと
いう錯覚にすら囚われた。
少年の男根の根元から、射精欲の発作がぐーんと高まってくる。
源八郎が切羽詰まった声を上げた。
源八郎はこれで最後とばかりに、脚を抱え上げたまま珊瑚を強く抱きしめ、猛烈な勢いで
腰を突き上げた。
珊瑚もそれを拒まず、そのしなやかな腕で少年の背中をぎゅっと抱きしめていた。
源八郎の若い肉棒に虐め抜かれた子宮が口を開けかけている。
快楽と羞恥に喘ぎ、苦悶の表情を浮かべる少女の美貌を少年が目にした瞬間、最後が来た。
「だっ、だめだ、珊瑚っ……もう、で、出るっ……」
「ああ、いいっ……いいわ、源八郎っ、そっ、そのまま中にっ……」
「あ、ああ、出るっ」
「いくっ……ああ、あたしもいくうぅっ……出して、中にぃっ……」
少年の背中がぶるるっと震え、強烈な放出感が股間を襲った。
あっと思う間もなく、源八郎は珊瑚の中に思いの丈を注ぎ込んでいた。
どびゅるるっ。
どびゅっ。
びゅるるっ。
びゅるっ。
どくっ。
どく、どくっ。
「んっはああっ……いく! いっちゃうっ……!」
射精の間、源八郎は珊瑚の背中を抱きしめ、腰を密着させ、出来るだけ奥深いところまで
届くようにして精液を放っていた。
精嚢が空っぽになるまで射精した源八郎は、安堵と癒しを感じ、珊瑚に口づけした。
少女もごく自然にそれを受け、ふたりは舌を絡ませ合った。
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そのまま源八郎に添い寝していた珊瑚は、夜が明ける前に目を覚ました。
「……」
少年は珊瑚の胸に顔を埋めるような格好で眠っている。
その仕草や表情に、珊瑚は無性に愛おしさを感じていた。
それが性愛ではなく、しかして恋愛とも異なることを珊瑚は知っている。
恐らく夕べの行為で、少年もそれを覚ってくれたのではないかと少女は期待した。
少女は優しく源八郎の頭を撫で、万感の思いを込めて口づけすると、少年を起こさぬように
立ち上がった。
音も立てずに着衣すると、一度だけ少年を振り返り、そのまま屋敷を後にした。
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珊瑚は夜明け前に村へ戻ってきた。
そっと戸口を開け、かごめとの寝室に入っていく。
そっとその顔を覗き込むと、ぐっすり寝ているようである。
起こしては悪いと思ったが、珊瑚は小声でささやくように声を掛けた。
「かごめちゃん……」
「ん……、あ、珊瑚……ちゃん?」
「ごめん、起こしちゃって」
「あ、いいの。……もう朝?」
かごめは眠い中、目を擦りながら言った。
「ううん、まだ。あと一刻もすれば日が昇るけど……。あのさ、『しゃんぷー』と『ぼでぃ
そーぷ』、どこだっけ?」
「え? ああ、あそこ。巾着の中……。リンスとコンディショナーもあるよ、使い方わかるよね?」
「あ、うん……」
かごめが指差した先に黄色い巾着袋があった。
それを取りに行く珊瑚を見ながら、かごめは訊いた。
「どしたの? お風呂入るの?」
「うん……。でも沸かすの大変だから、川で洗ってくる」
「ふーん……。……あ」
「え、なに?」
かごめは腹這いになったまま、珊瑚の方は見ないで訊いた。
「珊瑚ちゃん、源八郎くんのとこに行ってたんでしょ?」
「……」
「……そっか。珊瑚ちゃん、源八郎くんと……」
「ちっ、違うよ、かごめちゃん……」
珊瑚は慌てたように否定した。
しかしながら声は上擦り、かごめの方を見ようともしない。
あまりウソがつける少女ではないのである。
「いいじゃない」
「え……?」
「いいと思うよ、あたし」
「……」
かごめも腹這いのまま頬杖して珊瑚の方は見ずに言った。
「別に珊瑚ちゃんがふしだらだとか、そんな風には思わないよ」
「……」
「もしあたしが珊瑚ちゃんの立場だったら、きっと珊瑚ちゃんと同じことしたと思う……」
「かごめちゃん……」
そこで初めてかごめは珊瑚の方に顔を向けた。
そしてウィンクして見せた。
「だから気にしないでいいと思うの」
「ごめん……」
「珊瑚ちゃんが謝ることないわよ。だいじょぶ、あたし口が堅いんだから。でもね……」
「でも?」
「弥勒さまがこのこと知っても怒ったりしないと思うんだ。珊瑚ちゃんもそう思わない?」
「そう……。そうだね……」
珊瑚が顔を上げると、かごめの笑顔が見えた。
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その日の朝。
村道を武者行列が進んでいった。
松田家の武士たちであった。
家紋の入った旗指物や武将の馬印、長大な幟旗などが風に揺れなびいている。
長槍を持った雑兵たちが、この日ばかりはお揃いの武具を身につけ、整然と行進していく。
その後には鉄砲足軽、弓衆たちが続いた。
ぞろぞろと徒歩武者たちが通り過ぎると、今度は騎馬武者たちが歩を進めてくる。
「そろそろだよ」
「そうですか」
それを楓の家の戸口に隠れるように見送っていたのは、かごめと弥勒である。
表に出て見物しても咎められはしないが、いちいちお辞儀しなくてはならないらしい。
それも面倒なので、こうして隠れて見ているのである。
足軽たちの安っぽい陣笠と違い、騎乗の武士たちは立派な鎧兜姿である。
背中に大きな母衣をつけた母衣武者が過ぎると、すぐに目当ての武将が来た。
「来た! あれ源八郎くんだよ」
かごめがそっと指差して弥勒に教えた。
法師は右手で日を翳すようにしてそっちを見る。
「ほう、これはなかなか立派な武者ぶりですな」
「うん、珊瑚ちゃんに鍛えられてた源八郎くんとは思えないね」
「ですな」
少年−原嶋源八郎定康は、まっすぐ前を見据え、小柄ながら堂々と行進していた。
その前後左右には、彼を守り立てる馬回り、小姓衆が取り囲んでいる。
その中でも源八郎の存在はひときわ輝いている。
「凛々しくなられましたな」
「ほんと。でも、珊瑚ちゃん、どうしたのかな?」
「……」
「せっかくの、源八郎くんの晴れ姿なのに……」
そこには珊瑚の姿はなかった。
身体を洗ってくると行って川へ行ったまま、家には戻らなかったのである。
心配そうなかごめに、弥勒が微笑んで言った。
「大丈夫。きっと、どこかで見守っていますよ」
「そうね……。そうだよね、きっと」
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楓の村を見下ろす小高い丘稜にひとりの少女が立っている。
風になびく黒い髪の持ち主は珊瑚であった。
その鍛えられた目の中に、遠く武士たちの行列が見える。
村道はまっすぐこちらに続いている。
徐々に彼らはその丘の下に近づいてきた。
「!」
珊瑚の目に、目標の少年が捉えられた。
龍の飾りがついた大きな兜をかぶった少年は、その役割を果たそうと気を張り詰めさせている
のが、ここからでもわかった。
少年−源八郎の顔が識別出来るようになると、珊瑚は控えめに右手を挙げて振ってみた。
気づいてくれずともよい。
陰ながらでも彼を見守ってあげたかった。
「?」
その時、珊瑚はふと気づいた。
源八郎を凝視していると、どうも彼の手が動いているようだ。
よく見ると、右手に持った軍配を胸の辺りにまで上げてゆっくり振っているのだ。
目を細めて顔を見てみると、微笑んでいるように見える。
彼も珊瑚に気づいているのである。
珊瑚の頬に暖かい笑みが浮かんでいく。
彼女の手が自然に高く上がり、大きく振られていった。
『空行く雲の如く、川流るる水の如し』 第三話「小さな恋の物語」 完
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