部屋には楓と弥勒だけがいた。
かごめたちは気を利かせて外している。
珊瑚はまだ眠っていた。
一通り話を聞き終えた弥勒は複雑な表情を見せていた。
彼にしては珍しく、その苦悩を表に出している。
「話はおわかりですな、法師どの」
「はい……。ですが…」
「方法はこれしかない」
「……」
楓と冥加の出した最後の案は一致した。
冥加が珊瑚の胎内で退治するというのは不可能だ。
ただ奈落の傀儡を始末するというだけのことであれば、珊瑚ごと殺してしまえばいいわけだが、そんなことは論外である。
とにかく、珊瑚に影響を及ぼさず、胎の傀儡だけをやっつけねばならない。
あれもだめ、これもだめという八方詰まりの中、最後の手段が弥勒に託された。
「どうだ。出来ぬか」
「……」
楓たちが示した最終案とはこうである。
珊瑚の胎内に宿る邪悪な傀儡は、奈落の精から生命を受けている。
母胎を傷つけずに外からそれを抹殺することが不可能な以上、内部から攻めるより手段がない。
しかし冥加では無理だし、弥勒たちが小さくなって、というのも現実的ではない。
となれば方法はひとつである。
奈落の邪悪で強靱な精子を打ち破るには、それ以上に強靱でしかも清浄な精子を持って対抗するしかない。
つまり、珊瑚の胎内に聖なる子種を送り込んで邪悪な精子を相殺し、それを持って傀儡を無力化するというものだ。
一言で言えば、珊瑚と性交し膣内で射精しろというのである。
「珊瑚には、わしとかごめでよく説明した。そしてそうされることを納得もした。だがな…」
楓は鋭く弥勒を見た。
「無理には頼まぬ。おぬしがその気にならねば出来ぬことだからな。だが……」
「……」
「誰か代わりを見つけるとして、おぬし、珊瑚が他の男に抱かれるということに耐えられるのか?」
「!」
珊瑚に告白はしたものの、それまで何となく関係を持つことを躊躇してきた弥勒だったが、そうも言っていられないようである。
珊瑚を救う手段がそれしかないということ。
そして今、楓に言われたこと。
言われて初めて気づいたが、珊瑚が他の男のものになるなど耐えられそうになかった。
ならば、何をためらうことがあろうか。
「…わかりました」
「そうか」
良い返事をもらえると信じてはいたが、さすがに安堵のため息が洩れる。
だが、それは一瞬のことで、楓はすぐに緊張を湛えた顔に戻した。
「わかっておるだろうが、その日まで精進せねばならん」
「はい」
具体的には、五穀を絶ち、滝に打たれて身を清め、香を焚いた部屋で座禅を組んで読経する。
眠ることも許されない。
その間、口にすることが出来るのは、身を清めている滝の水のみである。
心身共に清浄にし、法力を高めるのだ。
その頂点でことに及ぶのが理想である。
「しかし今回はあまり時間がない。そうだな、冥加」
「うむ。わしが珊瑚の中で見た限りでは、あと五日もせんうちに表に出てくるくらいに成長するじゃろ」
「……」
「従って、おぬしが修行を重ね、法力を高める時間はぎりぎりで三日とみるべきじゃ。よいな」
「はい」
こうして弥勒は、法力を上げるべく修行に入った。
香の薫りが立ちこめる部屋で、一心不乱に読経を続ける。
そうでない時は滝壺で激しく流れ落ちる水に打たれている。
本当に眠りもせず、食事も一切摂らなかった。
かごめたちに出来ることは、香が切れぬよう補充することくらいだ。
「……」
香を代えようと部屋を覗いてみると、弥勒は瞑目して経を唱えている。
それだけの姿だが、鬼気迫るものがあり、おいそれとは近づけなかった。
一方、珊瑚の方もなるべく食事は控えている。
胎に巣くった傀儡に、なるべく栄養を与えぬためである。
そもそも珊瑚自身にも食欲はなかった。
自分がどうなるのかという不安。
その自分を救うために厳しい修練を積んでいる弥勒に対する気持ち。
そして、理由はどうあれ弥勒と結ばれるのだという緊張感。
食物が喉を通る気がしなかった。
といっても、和合にはそれなりに体力が必要だから、かごめたちは重湯だけでも珊瑚に摂らせるようにしていた。
いよいよその日が来た。
三日間の修行で、どこまで法力が高まったか、弥勒本人にもまるで自信がなかったが、これ以上続けて手遅れになっては意味がない。
かごめたちの前に姿を現した弥勒は、もともと細身だった肉体が一層引き締まり、一種凄絶な雰囲気すら漂わせていた。
ガラリと障子を開け、入ってきた弥勒を見上げ、楓が確認した。
「いいのだな」
「はい」
かごめもたまらず声をかけた。
「弥勒さま」
「……」
「あの……頑張ってください。珊瑚ちゃんのこと……お願いします」
「わかっています。心配しないで」
弥勒がにっこり笑ってかごめに答えた。
他にかごめに出来るのは祈ることだけだった。
次の間には珊瑚が控えている。
日が経つにつれ、緊張はいや増すばかりである。
だいいち、これから行なうことを考えれば、いったいどんな顔で弥勒を迎えればいいのかさっぱりわからなかった。
妖怪相手の戦闘なら一級品の能力を持つ少女だが、こと自分の恋愛となるとまるで不器用だ。
どうして相手の気持ちも自分の心も、飛来骨のように自在に扱うことが出来ないのだろうか。
子猫の姿に戻っている雲母が、そんな主人の気持ちを案じているのか、正座している珊瑚の腿にすり寄って、頭を擦りつけている。
珊瑚は少し気持ちが和んだ。
雲母の頭を優しく撫で、喉をさする。
「大丈夫だよ、雲母……。きっと法師さまがうまくやってくれるよ」
すっと襖が開いた。
薄い湯帷子姿の弥勒が入ってきた。
幾分痩せたようだ。
聞けばこの三日、絶食していたというから無理もない。
弥勒は無言のまま、部屋の真ん中に敷いてあった布団のところまで行き、座った。
珊瑚は再び緊張して固まってしまった。
しばらく互いに黙りこくっていたが、弥勒の方が珊瑚に声をかけた。
「珊瑚、あまり時間がありません。そろそろ……」
「わ、わかってるよ」
雰囲気を察したのか、気を利かせたつもりなのか、雲母がこっそりと部屋を出た。
それを機会に、おずおずと珊瑚が弥勒の隣までやってきて正座した。
弥勒が見やると、少女は少し震えているようだ。
それを見たら、なんだか自分の緊張がほぐれてしまった。
年上の、また男の責任として、こちらが主導権を取り、珊瑚の気持ちを落ち着かせるべきだろう。
「さ」
「あ……」
弥勒は優しく珊瑚の頭を抱き寄せると、その髪にそっと唇を触れさせた。
珊瑚はびくりとしたが、弥勒は構わずそのまま頭に接吻する。
それを徐々に下ろしていき、珊瑚の綺麗なおでこに、そして頬に口づけした。
珊瑚の顔は燃えるように熱かった。
真っ赤になった少女の顔を正面から見据えると、弥勒は口を近づける。
珊瑚は目を閉じて彼を迎えた。
弥勒の唇が自分の唇に触れると、いっそう震えが大きくなった。
若い僧はすぐに唇を離し、今度は珊瑚の身体を優しく抱きしめた。
すると、それまで小さく震えていた珊瑚の身体がウソのように収まった。
弥勒の腕の中は暖かかった。
この身を弥勒に任せれば良いのだと思うと、靄のように漂っていた不安がかき消えるようだった。
緊張で強張っていた少女の身体が少しずつ弛緩してきた。
弥勒の手が動き、珊瑚の着物の襟元にかかる。
「あ……」
思わず珊瑚は声を出し、弥勒の手を押さえた。
弥勒は柔らかい笑顔で「大丈夫。任せて」と言っているように見えた。
珊瑚は弥勒の腕にかけた手をゆっくりと離した。
襟元を引きはだけさせると、その中に指が侵入していく。
ふかっとした感触が指に当たった。
薄い肌襦袢の上から胸のふくらみを軽くまさぐると、珊瑚の口から甘い声が洩れた。
「ああ……」
それを合図に、珊瑚の全身から力が抜けた。
準備完了とみた弥勒は、珊瑚を布団の中に寝かせ、着物の帯を解いていった。
珊瑚は特に抵抗もせず、されるがままになっている。
帯を抜き取り、着物を剥いだ。
そして襦袢を苦労して脱がせると、胸と股間を覆う白い下着のみとなった。
(これがかごめさまにもらった下着というやつか……)
脱がし方がわからなかったので、そのまま上へ抜き取るようにした。
弥勒の苦戦の様子を見て、珊瑚がくすくす笑っている。
笑顔が出るようになれば、もう大丈夫だろう。
法師はその真っ白い肌を見つめると、直に乳房に触れた。
「あっ……はあ……」
ちょんと触っただけだが、珊瑚の口からは甘い吐息が洩れた。
まだ汗をかいていない珊瑚の肌のすべらかさを楽しむと、両手でふたつのふくらみを撫で、下から持ち上げるように
指を食い込ませた。
その心地よさに少し昂奮した弥勒は指に力を入れた。
よく動く細い指が、珊瑚の胸肉を翻弄する。
撫でさすり、柔らかく揉み上げる。
それだけで珊瑚は軽い恍惚感に達していた。
奈落の荒々しいそれとは違い、弥勒の愛撫は宝物を扱うように柔らかく行なっている。
「…ん……あ、あ……は……あ……」
珊瑚の気分が高まってくる。
弥勒は珊瑚の若い乳房を味わうと、今度はふくらみの頂点にある蕾を軽く指で引っ張ってみた。
「ああ! ……あ、ああ……んん……」
綺麗なお椀型の乳房が前に引っ張られる。
自分の乳房が、愛しい男にいいようにされているのを見て、珊瑚の全身に甘い電流が流れた。
再び弥勒が両手で覆うように揉み込んだ。
そして気づく。
珊瑚の胸の鼓動がはっきりとわかる。
緊張しているのか、昂奮しているのか。
ぷっくりと立ってきた乳首を指でつまみ、軽く捻る。
じぃんとした快感が走り抜け、珊瑚は思わず目を閉じ、顔を上げた。
「あっ……あ、ああ……」
見ると、もじもじと腰を動かしている。
弥勒の腕が下半身に伸びる。
「あ……いや……」
珊瑚は慌てて脚を閉じた。
心地よい弾力の太腿に手を挟まれた弥勒は、ゆっくりと珊瑚の脚を開かせにかかった。
下着がすでに濡れてきていることを知られたくなかった。
弥勒はその抵抗を楽しむように掌を潜り込ませていく。
そして薄い静脈が透けて見える内腿をゆっくりと撫で、さすった。
「ああ……ん……」
内腿は珊瑚のもっとも敏感な箇所のひとつである。
そこを責められると、珊瑚の脚から力が抜けてきた。
弥勒はそのまま手を進め、股間の布地にまで達した。
「あ、ああ……」
「濡れていますね」
「いや……恥ずかしい…」
「そんなことはありません。とてもいいですよ、珊瑚」
「法師さま……」
弥勒は珊瑚の首筋に唇をつけ、手はすべすべの腹を撫でて、そのまま下着の中で潜入させた。
そして、しっとりと濡れている割れ目の上に鎮座している肉芽に指を触れさせた。
「あう! ……ああ、そこは……」
「気持ちいいですか」
「……」
答えることが出来ない代わりに、何の抵抗もしなかった。
弥勒はさらに指を進ませ、媚肉の中に挿入し、抉るように愛撫した。
割れ目に侵入され、膣をぐるぐるかき回されると、珊瑚は白い首筋をはっきり見せて軽く仰け反る。
そこに舌を這わせながら、下では指が珊瑚の秘肉をむさぼっている。
珊瑚は消え入りそうな声と吐息が絶えず溢れ、股間からは次々と愛液が漏れ出てきていた。
「あ……んあ……あっ……ん……はぁ……あ、はぁ…」
珊瑚が腰をよじって反応し、尻を持ち上げた時、弥勒は下着を膝まで下ろしてしまった。
珊瑚はそれに気づかぬほど行為に埋没している。
弥勒は中に入れた指を一気に根元まで押し込み、指の腹を使って膣の襞を擦るように愛撫した。
「んん! …あ……んん……んう……あっ……」
弥勒の指が嬲るたび、ぴちゃぴちゃと淫猥な音が響く。
膣から零れ出る蜜は、さらさらしたものからねっとりとした熱いものに変化していた。
法師は、媚肉に分け入らせた指を中指に変え、親指で陰核を弾いた。
そのズキーンとくる刺激に、珊瑚ははっきりと喘ぎ声を上げてしまう。
「ああうっ! ……ああ、あ……ああっ……」
珊瑚はわななき、顔を左右に揺すって反応した。
胸を揉んでいた左手と、媚肉に入れていた右手を抜くと、弥勒は珊瑚の上気した顔を両手で軽く押さえ、震える唇に口づけした。
「んん……ん……んちゅ……ん……」
珊瑚は唇から力を抜き、法師の舌を受け入れた。
弥勒の舌は珊瑚の咥内に入り込み、その柔らかく薄甘い舌をとらえ、絡ませた。
歯茎をなぞるように舌で擦り、珊瑚の舌を吸い上げると、珊瑚も呻いて弥勒の舌を吸い返した。
「ん……うむ……ん…んん……んっ…んちゅ……んんっ…」
珊瑚は身を痙攣させている。
当初とは異なり、緊張のためではない。
弥勒の行為にはっきりと性の反応を示しているのだ。
「ん……んは……」
長い口づけを終え口を離すと、細い糸がふたりの口をつなぐ。
弥勒は帷子を脱ぎ捨てると、改めて珊瑚の身体を抱いた。
それだけで珊瑚は安堵出来た。
こうして弥勒と肌を重ねていると、彼の体温がこっちに移ってくるようだった。
それは弥勒にとっても同じで、珊瑚の細身の身体を抱きしめていると、彼女のすべてを感じ取ることが出来た。
すっかり緊張を解くと、弥勒は珊瑚の上に覆い被さった。
右膝を珊瑚の腿の間に入れた。
法師は自分のものに手を添え、珊瑚の花弁に押し当てる。
熱い肉棒の感触に、珊瑚が声を洩らした。
「いきますよ、珊瑚」
「あっ……」
そのまま割れ目の中心に先端を押し入れると、ぐっと腰を下ろした。
媚肉を割って、太い亀頭部が潜り込むと、珊瑚の膣に押し広げられる苦痛と快美感がわき起こる。
弥勒はきつい締めつけを押し通し、ゆっくりと中に進めた。
「んんっ……くっ……」
大きなものを押し込まれた分、珊瑚の口から吐息が洩れる。
珊瑚の身体に無理がかからぬよう、胸を揉んだり腿を撫でたりして快感を高めさせ、潤滑油となる愛液を導き出させた。
ぐぐっと根元まで沈め込むと、珊瑚の下腹部がぷるるっとわずかに震えた。
「ああ……」
珊瑚が甘い喘ぎ声を出すと同時に、膣がきゅうっと締まって弥勒の男根に震えるような快感を与えた。
「く……」
弥勒はその甘い刺激を必死に堪えた。
まだ出すわけにはいかないのだ。
奈落は、珊瑚の快楽が頂点に達したところで精を放ったはずだ。
ならばこちらは、それ以上に珊瑚を高ぶらせてから射精せねば効果が薄い。
弥勒は両手を立てて踏ん張り、なるべく珊瑚の奥まで挿入した。
亀頭部が珊瑚の子壷に到達し、その入り口を擦り上げると、神経をヤスリで擦られるような凄まじい快感が響き渡り、珊瑚の
裸身を震わせる。
弥勒はずんずんと律動を開始した。
「ああ! …あっ……ああっ…くぅぅ……かはぁ!」
珊瑚は、弥勒に突き込まれるたびに体温が上昇していくように感じていた。
腹の奥が痺れて、脳天にまでじんじんとした痺れが到達している。
高いカリの部分が膣襞を擦ると、びりりっと電気が走った。
珊瑚の首筋や肩に鳥肌が立っている。
愛されている快感と、愛する人に乱れた姿を見られているという羞恥が珊瑚の心を震わせる。
「ああ……ああ、ううんっ……」
必死に声を抑えようと唇を噛みしめる珊瑚を見て、弥勒は律動を続けながら言った。
「珊瑚! あまり我慢しないで……心地よかったらそう言ってください」
「ああっ…で、でも……」
「言うのです」
「あああっ」
珊瑚を性の羞恥から解放し、さらに高見へ導かねばならない。
そこで絶頂まで押し上げるのだ。
法師は珊瑚の腰を少し持ち上げ、すらりと伸びた綺麗な脚を腕で抱え込んだ。
そして根元まで男根を捻り込むと、密着している腰を擦りつけるように刺激を与えた。
肉棒が奥の奥まで届き、子宮口を抉り上げる。
ぐりぐりと膣内部をかき回されると、媚肉の周囲が肉棒の腹で摩擦され、ぴりぴりした快感が子宮に届き、弾けた。
「ああっ…ほ、法師さまっ……ああ、なんか……なんか来ます……」
「何です?」
「ああ、お腹の……ああっ……お腹の…奥から……すごいのが……来る…あああっ…」
どうやら気をやるらしい。
が、まだこれでは不十分だろう。
息継ぐ間もなくもっとも深いところを突かれまくり、珊瑚の発する喘ぎ声も掠れがちになってきた。
弥勒は責める手を緩めず、腰の律動はやや落としたものの、乳房を揉み上げ、敏感な脇腹や腋を撫でさすり、耳や首、そして乳頭に舌を這わせて、さらに珊瑚のよがり声を引き出していく。
そしてふと思いついて、珊瑚のもっとも恥ずかしい箇所に指を送った。
いきなりそこを触られて、珊瑚はすっかり動転した。
「だめっ……あ、そこだめです法師さまっ……ああ、お願い…ああっ……そこ!」
法師が手を伸ばしたのは珊瑚の菊座である。
珊瑚自身、そこを集中的に奈落に責められてよがり狂い、イヤというほどその味を覚え込まされている。
そんな恥ずかしいところで快感を得るなど、おぞましく汚らわしいと思っていただけに、まさか弥勒がそこを責めてくるとは
思いもしなかった。
「ああ、いやあ……お願いです、法師さま…ああうっ……そ、そこは許して……ううんっ……」
だが、弥勒がそこを愛撫し出すと、珊瑚の膣からは溢れるほどに愛液が零れ、またそれが粘っこくなり、女の甘い香りもぐんと高くなっている。
珊瑚はそこでかなり感じているのである。
しかし不浄の門で感じていることに、珊瑚は必要以上に羞恥を覚え、毛嫌いしている。
だからこそ、その反動で感じ方が激しくなっているのかも知れなかった。
先ほどからの愛撫ですっかり柔らかくなった肛門を、法師は指の腹で軽く擦り、めくれかかっている襞を沿うようになぞる。
それだけで背筋に感電したような強い痺れが突き抜け、同時に子宮までも甘くとろけさせた。
さらに指を潜り込ませようとすると、珊瑚の身悶えは一層大きく、激しくなった。
「ああ、そんな……だめっ……あうっ……あ、あ……やああ…」
「珊瑚、ここはそんなにイヤですか」
「ああ……い、いやです……」
「でも感じるんですね?」
「そんな……ち、違う……」
「感じるならそう言ってください。そうじゃないと……」
それを口にさせれば、珊瑚はさらに突き抜けるだろう。
今でも十分に昂奮し高ぶっているはずだが、もう一歩後押ししてやる必要がある。
「さあ!」
弥勒は人差し指の第一関節まで埋め込んで、珊瑚を追い上げた。
「ああっ……」
「恥ずかしければ、うなずくだけでもいいですから…」
「……」
珊瑚は快楽と昂奮に加え、羞恥で顔をさらに赤くしながら、小さくうなずいた。
弥勒はそれを確認すると、指をさらに奥まで入れ、ぐりぐりと抉り込んだ。
乳を舐め、ふくらみを揉む。
腰は緩く、じれったくなるほどの速度で押し込み、引き出した。
あちこちの急所をいっぺんに責められる悦楽に、珊瑚はぐんぐんと高ぶっていく。
「ああっ……ああ、いいっ……くんっ…もっ、いいっ……」
「心地よいのですね」
「はいっ…き、気持ちいい……ああ、法師さま……うんっ、いいっ……」
奥に突き込むだけでなく、上下左右に肉棒を動かし、揺すると、膣の敏感な箇所に当たるたび、珊瑚は仰け反り、喘ぎ、
腰をよじって反応した。
焦らすように浅い挿入のままでいると、珊瑚の方から腰を弥勒に寄せて、奥までの挿入をせがむようになっている。
「いっ……ほ、法師さま……ああ、もっと……もっと深く……」
「いいでしょう」
「あっ、あひっ…」
弥勒はうなずくと、珊瑚の脚を肩に乗せ、ぐいと腰を沈めた。
より深くまで弥勒の肉棒が届き、珊瑚は悲鳴を上げる。
子宮を押し上げるほどに奥深くまで挿入し、その入り口を亀頭部で突きまくった。
これでもか、これでもかと腰を打ち付けると、珊瑚はよがり声を恥ずかしげもなく洩らしていく。
「すっ…すごいっ……ああ、すごいです、法師さま……あううっ…く、深いぃ……ああ、そんな奥まで……」
白い裸身を波打つようにうねらせ、弥勒の動きに合わせて腰を動かした。
法師が突き込んでくれば、より深くまで迎え入れようと腰を突きだしてみせた。
太い胴回りのある肉棒で、奥深くまで抉られる愉悦は女性ならではのものだった。
弥勒の突き込みが強烈な反応となって脳神経に直に響いてきた。
奈落に凌辱された時とは比較にならぬ恍惚感に五感が痺れ切り、性の歓喜に酔い痴れていくのだった。
「あああ……もう、いいっ……あ、あ、あ……あ、もう……もうっ…」
性の喜悦に溺れ、快楽にゆがんだ珊瑚の顔を見ると、弥勒はたまらなくなって顔を寄せ、口づけた。
「んううっ……」
唇が接触すると、珊瑚の方から舌を弥勒の口に送り込んできた。
激しく口を吸い合い、舌を絡ませ、唾液の交換まで終えると、珊瑚の肢体にぶるぶると痙攣が走ってきた。
口を離すと、珊瑚は甘く艶っぽい喘ぎとともに、最終段階に入ったことを告げるのだった。
「ああう、あうっ……だめ、もうっ……くぅぅ……いいっ……あ、もう、い、いく……いっちゃう…」
「もういくんですね、珊瑚っ」
珊瑚はがくがくうなずき、白い首筋も露わに仰け反った。
「ああ、いく……もう……もう、いきそうっ……いいっ……」
ここぞとばかりに若い法師は肉棒を最奥まで沈め込んだ。
そして亀頭部に触れる子宮口を押し開くように、ごりごりと抉り出す。
繊細な神経を持つ臓器に加わった激しい刺激に、喘ぐ美少女は身体を突っ張らせた。
すでに子壷は、たくましい男の精を受けようと、その口を徐々に開いていた。
「いっ、いくっ……あ、あ、あ……ホントにいっちゃいますぅ……あ、もうだめっ」
珊瑚の裸身がひときわ大きく震え、若い美貌は凄絶な色香を放った。
「あああっ、い、いきますっ……!」
一瞬、何もかもわからなくなるほどの凄まじい絶頂に達した珊瑚は、びくんびくんと上に乗った弥勒をはねのけるほどの激しい反応を見せた。
肉棒に絡みつき、優しく包み込んでいた膣の襞がきゅううっと締まり、弥勒はそれを合図にして珊瑚の子宮口に先端部を
押しつけると、腰を震わせて堤防を解放し、思い切り射精した。
「うあああっ、いっくぅ!」
弥勒の熱い愛の証を子宮に浴びると、珊瑚は全身を強張らせ、ぶるるっと痙攣した。
その膣は、弥勒の精液を一滴も逃すものかとばかりに、きゅっ、きゅっと締め上げた。
弥勒はその柔らかい快感に、何度も肉棒を律動させ、あらん限りの精を吐き出した。
びゅっ、びゅっと精を受けるごとに、珊瑚は何度も絶頂に達した。
その頃、珊瑚の子宮内。
激しく流れ込んでくる熱い奔流に、中を不法占拠していた奈落の分身は大いに狼狽えた。
その粘い液体が傀儡の身体に触れると、白い煙を上げて溶けだした。
「ぐあっ……」
トカゲの格好をした奈落の傀儡は苦鳴を上げて、弥勒の精子を避けるように奥へと逃げた。
しかし狭い子宮のこと、すぐに追い詰められてしまった。
子宮口から、びゅうっと何度も入り込んでくる白く濁った液体が傀儡に浴びせられる。
身体のあちこちから白煙を上げ、逃げまどう傀儡にも最後が来た。
子宮底部は弥勒の精で染められ、やつの足はもうほとんど溶けている。
安定を失い、ぐらりと倒れると絶叫を放って生命の火が消えた。
じゅううっと煙を上げて、倒れた傀儡は溶解し、元の黒い細棒に戻った。
そしてそれも、白い液体に浸されて、少しずつ小さくなっていった。
その様子は、珊瑚には手に取るようにわかった。
傀儡が苦悶し、のたうち回り、最後には蒸発したことまで、珊瑚の子宮は脳に伝えてきたのだ。
激しく射精した弥勒の身体は力を使い果たし、どっと布団にもたれ込んだ。
「法師さま……」
珊瑚も激しい気をやって、まだ荒い息をついていた。
なんとか呼吸を整えて、隣に仰向けで寝そべっている愛しい男を呼んだ。
弥勒もまだ呼気が荒く、顔と言わず身体と言わず、全身が水を浴びたような汗を滴らせていた。
「法師さま」
「え? …ああ、何です、珊瑚」
弥勒はようやく気づいて、隣に寝ている少女を見た。
細いが、つくべきところには肉がついている美しい裸身は、弥勒同様汗まみれで、それまでの官能に溺れた姿態を物語っている。
珊瑚は、弥勒とのめくるめくような性愛でとろけていた表情を少し引き締めて訊いてみる。
法師に抱かれると決めた時から、訊こうと思っていたことだった。
「その……。こ、このことでね、もし……」
「……」
「もし、その、法師さまの子が……出来ちゃったら……どうします…?」
「それはもちろん……」
「もちろん…?」
珊瑚は息を飲んで聞いた。
とてもまともに弥勒の顔は見られなかった。
どんな答えが返ってくるのか予想もつかない。
「……」
「……」
「……」
なかなか返事がなかった。
さすがに珊瑚はもじもじして、弥勒の顔を見た。
「法師……さま…?」
「……」
弥勒は、軽い寝息を立てて眠り込んでいた。
「……」
珊瑚は少しムッと来たが、怒り出すようなことはしなかった。
この三日というもの、法師は食も絶ち、睡眠も取らずに法力を高める修行をしてきたのだ。
それも、誰あろう珊瑚のためである。
そう考えれば、無理に起こして返事を強要する気にはならなかった。
無防備に眠りこけている弥勒を見ていると、何だか少しおかしくなりクスリと笑った。
よくわからないが、こうした弥勒を見ていると、とても幸せな気分になる。
珊瑚は笑顔を浮かべると、弥勒の脇に潜り込み、腕を引きずり出して腕枕にする。
頭の下に、心地よい暖かさと弾力を持った弥勒の腕がある。
もうそれだけで安心感に満ちてくるのだった。
「おやすみなさい、法師さま」
弥勒の匂いを胸いっぱいに吸い込み、珊瑚も睡魔に誘われていった。
*
**
*
翌朝。
弥勒の方から、楓と冥加、そしてかごめたちに、すべてうまくいったことを伝えた。
かごめは、実際、涙が出るほど嬉しかったが、珊瑚に気を使って、普段通りに振る舞うことにした。
もとより犬夜叉や七宝は、言われなくてもそうするだろう。
いつも通り、みんなで食卓を囲んだ。
楓が上座に、その両脇に弥勒とかごめ。
弥勒の隣に犬夜叉が座り、その隣が七宝だ。
そしてかごめの隣にはもちろん珊瑚が正座している。
無駄口を叩かず大人しく朝食を摂っていたが、すべて解決した気軽さもあって、かごめは好奇心を抑えきれずに珊瑚にこそこそと訊いた。
「ね、珊瑚ちゃん、どうだったの?」
「ど、どうだったって……」
「だからあ……弥勒さまとのあれよ」
「!」
珊瑚はたちまち顔を真っ赤に染めてしまった。
そんなうぶな少女の様子を微笑ましく見ていたかごめだが、ちょっと意地悪したくなる。
くいくいと肘で珊瑚の腕を押しながら問い詰めた。
「ねえってば。どうだったのよー」
「だっ、だから……どうってこと、なかったよ」
「またまた〜。そんなことないでしょ〜? だって愛しい弥勒さまとさー…」
「や、やめてよ、かごめちゃんてば…。カンベンしてよ……」
「そんな心にもないこと言っちゃって〜」
とか言いながら、かごめは弥勒の方も見てみる。
若い僧は、少なくとも外見上は普段と変わらなかった。
かごめたちの会話も聞こえているかも知れないが、表情を崩すことなく箸を動かしていた。
かごめは、そんなふたりを見て、ちょっと羨ましくなる。
「あーあ、いーなー。あたしも早く……」
と意味深なことを言いながら犬夜叉の方を見やる。
その犬夜叉は、かごめの視線や珊瑚たちの様子など目にも入らぬとばかりに七宝とじゃれあっていた。
「あっ、てめえ、七宝! 人のおかずに手ぇ出すんじゃねぇ!」
「何を言っとる! おまえ、昨日おらの魚を半分食ったじゃろうが。その分じゃ」
「何言ってやがる! あれはおまえが残したやつだろうがよ」
「誰がもう食わんと言うた。おらは残りも食うつもりだったんじゃ。…それになんじゃい、里芋のひとつやふたつで大騒ぎするな」
「なんだと、てめぇ!」
いつもながらのドタバタを呆れたように眺め、かごめが深くため息をついた。
「当分期待できそーにないわね、あれじゃ」
隣で珊瑚がくすっと笑った。
*
**
*
食後、食器洗いの当番のかごめと犬夜叉を残し、珊瑚は弥勒と連れだって散歩に出た。
若い法師は、珊瑚の一歩先をゆっくりと歩いていた。
誰も見ていないし、手くらいつないでくれてもいいのに、と珊瑚は思う。
しかし、いざそうなると、それはそれで不満に思うかも知れなかった。
珊瑚は、今の関係が気に入っている。
必要以上にべたべたしない、さっぱりした関係を望んでいるのである。
一線を越え、関係を持った弥勒が自分に対してどんな態度をとるのか、珊瑚は不安と関心を持って見ていた。
しかし、弥勒は今まで通りのようだった。
馴れ馴れしいようでいて、珊瑚に対しても敬語を使う。
そのくせ隙を見せると身体に触ってくるし、覗きまでやる。
言葉遣いや態度も行動も、何もかも変わらなかった。
珊瑚は、そんな弥勒がちょっとだけ嬉しかった。
それまで無言で前を歩いていた法師が突然珊瑚に話しかけた。
「珊瑚」
「え?」
「私のような、居所の定まらぬ僧を……根無し草のようにふらふらしている坊主を何と言うか知ってますか?」
「……雲水、だっけ…」
「ええ、そうです。まあ、行脚とか、頭陀とか、他の呼び名もありますけどね」
弥勒は歩調を変えず、そのままゆっくりと歩いている。
「雲水というのは、行雲流水という言葉の略でしてね」
「行雲流水?」
「ええ。『空行く雲の如く、川流るる水の如し』ってことですね」
「へえ……」
「なんだか私たちのようだと思いませんか」
「え?」
そう言うと弥勒は珊瑚を振り返った。
ちょっとびっくりした珊瑚はたたらを踏んでようやくぶつからずに済んだ。
優しげな笑みを浮かべると、法師は言葉を続けた。
「空を行く雲のように自由に動き、一方で川の流れに逆らわぬよう流れる水のように」
「……」
「一見、役に立たなそうですが、雲があるおかげで慈雨が降るのです」
「そうね…」
「水がなければ、人も動物も立ちゆきません。川が溢れ、人畜に被害を及ぼすこともありますが、なくてはならぬものですね」
「……」
「役に立たないように見えて、私たちも少しは人のためになっていると、そう思っています」
「……」
「時に他人様に迷惑をかけることがあるかも知れません。が、空の雲や川の水のように、普段はあってもなくても変わらなそうだけど、
いざというときにはないと困る。我々はそういうものなのだと思いませんか」
珊瑚の顔にも暖かい笑顔が広がる。
弥勒の言いたいことがわかるような気がした。
「最初は」
弥勒はくるりと反転して前へ向き直り、地を踏みしめて先を進んだ。
珊瑚もつられるように歩き出す。
「四魂の玉を探すこと。それが砕け散ったと知ってからは、そのかけらを探すために旅をしてまいりました」
「……」
珊瑚は黙って法師の言葉を聞いていた。
弥勒が相槌や返事を欲しているとは思わなかった。
「それは、とりもなおさず自分のためでした」
弥勒の右手にある風穴は、奈落によって穿たれたものだ。
放っておけばどんどん広がり、最後には弥勒自身を飲み込んでしまうという事情は聞いていた。
それから逃れるために奈落を探し、退治する。
そのために、奈落が欲しがっている四魂の玉を探していたのだから。
「その途中で、かごめさまや犬夜叉と一緒になった。ふふ、はじめはかごめさまからどうやってかけらを奪ってやろうかと、
そのことばかりを考えておりました」
「……」
「一度、かごめさまたちと別れていたこともあります。でもですね…」
弥勒は軽く空を見上げた。
足は止めず、歩いている。
「なんだか、かごめさまたちと一緒に旅していると不思議な気持ちになってきて…」
「不思議?」
「はい。本当にそれだけでいいのか、と。己の生を欲するのも物欲も同じ事。これではなんの修行もなっておりません。
まあ私は生臭ですから、そんなことを気にする方がおかしいのかも知れませんが」
弥勒は、照れたような不器用そうな笑顔になった。
「……」
「かごめさまたちと旅するうちに、いろいろなことを経験してまいりました。かごめさまの性格ですから、あれこれ厄介ごとに
巻き込まれます。でも、そのほとんどが人のためなんですね」
「人のため……。他の人を助けること…」
「そうです。面倒に思ったこともございましたが、最近はそれも悪くはないではないか、と」
「……」
「そういう中で、こうして珊瑚とも知り合えたのですしね」
法師の言葉を、ひとつひとつ噛みしめるように聞いていた珊瑚がぴくりと反応し、足を止めた。
「あの……法師さま」
「なんです?」
「……夕べの…」
「しっ!」
弥勒の顔が精悍に変わる。
左腕で珊瑚を後ろに押しやるように庇い、じゃらんと右手の錫杖を振った。
「あれは……」
今度は珊瑚にもわかった。
弥勒の睨みつける空間に歪みが発生している。
徐々に輪郭が現れてくる。
「…奈落!」
それも傀儡ではなく本人らしい。
ぼさついた長髪をなびかせ、切れ長の冷たい目をした若い半妖だ。
「法師か。それに珊瑚もいるな。…まだ無事なのか。ん?」
奈落は珊瑚の腹部に目をやった。
そろそろ仕込んでやった最強・最凶の傀儡が生まれ出る頃だが、珊瑚はまだ生きている。
おまけにその腹は普通で、とても孕んでいるようには見えない。
奈落の視線に気づいた弥勒が、口の端を歪めて言った。
「てめぇの放った木偶人形のことか? 生憎、そんなもんはとっくに片づけた」
「……。そうか、法師、きさまが……」
「そんなこたどうでもいいんだよ、このエテ公! 毎度毎度、卑劣なことばかりやりやがって…」
「ふ、だったらどうする?」
奈落の挑発に、弥勒は錫杖を振るって応える。
「成敗する!」
そう叫ぶと、右脚で地面を蹴って跳び上がった。同じように跳んだ珊瑚に声をかける。
「珊瑚! 気を付けて! 無理するんじゃありませんよ!」
「大丈夫! 法師さまこそ!」
叫び返すと、飛来骨に手をやった。
死んでたまるか。
夕べの、弥勒の言葉の続きを聞くまでは死ねるものか。
瞬時、微笑んだ珊瑚だったが、すぐに顔を引き締め、退治屋の表情になった。
不敵な微笑を浮かべると、弥勒に言った。
「いくよ、法師さま!」
「おう!」
『空行く雲の如く、川流るる水の如し』 第一話「傀儡」 完
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