神楽の強襲を排除したかごめたちは、珊瑚がいるはずの村へ入っていった。
「……」
一見、何の変哲もない普通の村だった。
それでも警戒して、弥勒と犬夜叉が露払いで村道を進んでいった。
かごめが村人に尋ね、老医師の居場所を聞くと、まっすぐそこへ行った。
臨時の診療所として設けられていた納屋に飛び込むと、そこはもうもぬけの空だった。
ただ、治療に使うらしい道具や、薬草を潰すのに使う乳鉢などはそのまま文机にある。
さっきまでそこに人がいたという生活感はそのまま残っていた。
「犬夜叉！」
部屋の中央に敷かれていた布団に手を当てていたかごめが半妖を呼んだ。
まだ暖かい。
誰か使っていたのだ。
呼ばれた犬夜叉はそこへ駆け寄り、ふんふんと鼻を使って言った。
「……間違いねえ。珊瑚の匂いだ」
「やっぱり……」
となると、予想通り珊瑚はここに訪れていたのだ。
かごめが暗い顔でつぶやくと、弥勒の声がした。
「かごめさま、犬夜叉」
「……？」
「これを……」
弥勒が手にしていたのは飛来骨であった。
珊瑚の主武器であり、今となっては「退治屋」時代の唯一の品だ。
亡父の形見の品であるこれを、珊瑚が捨てていくはずもなかった。
彼女の身に異変が起こったことはもはや疑いようもない。
問題は相手の医者である。
ふたりともいないところを見ると、どこか別の場所に連れ去られたのだろう。
かの老医師が敵であることは否定のしようがなかった。
そこへ、入り口からひょいと男が顔を覗かせて言った。
「あんだ、おめさまたち。ここは……」
「おい、てめえ！！」
農夫らしい男が全部言う前に、犬夜叉が飛びかかるように襟首を掴んでいた。
「な、なにすんだ？」
「ここにいた医者のジジイはどうした！ 珊瑚はどこに行ったんでぃっ！」
「珊瑚？ 珊瑚って誰だ？」
「犬夜叉、手を離して」
かごめが両者を引き離して間に入った。
「すみません、珊瑚ちゃんていうのは私たちの仲間で、今日、ここに来ていたらしいんです。
ご存じないですか？」
「んあ？ 先生に診て貰ってたんかい？ ……んだな、そういや、若ぇ娘っ子が……」
「それです、きっと。どこへ行ったかわかりませんか」
弥勒も寄ってきて聞いた。
興奮している犬夜叉を背中の後ろに隠すようにして男を落ち着かせた。
「診て貰ってたみてえだな。一刻ほどで出ていったぞ」
農夫の話によると、珍しい格好をした若い娘が確かにここへ入っていったという。
黒っぽい、身体に密着するような服だというから、戦闘服を着た珊瑚と見て間違いなかろう。
農夫は、弥勒が手にした飛来骨を見て言った。
「ああ、それ。それを背中に背負ってたな」
そして中に入って一刻ほどで老医師とふたりで出ていったという。
「ふたりで？」
「んだ。娘っ子の方は、最初に入る時はえらい勢いで飛び込んでいったが、出ていくときは
何だかぐったりしてたみてえだなあ」
「……」
「こう、ふらふらしてる感じでな。それを先生が支えてたわ」
ということは、珊瑚も医師を敵方と見なし、戦闘モードで突入したということなのだろう。
しかし、それでいて最後にはフラフラになって肩を並べて出ていく、というのは何だろう？
それも飛来骨を捨てて。
三人の脳裏にはひとりの男の顔が思い浮かんだ。
奈落である。
先ほどの神楽の襲撃を考慮しても、その医者が奈落だったのであろう。
そういえば、神楽も突っかかってきた割りには、あっさり退散している。
今考えれば、あれは時間稼ぎだったのかも知れぬ。
「……」
かごめは最悪の事態を憂いた。
死ぬよりはマシかも知れないが、珊瑚にとっては死んだ方がマシかも知れない。
まず間違いなく奈落に拐かされたのだろう。
奈落が医師に化けて潜んでいたのが、珊瑚を狙ってのことなのかはわからないが、こうして
撤収しているところを見ると目的は達したのだろう。
前回、奈落は珊瑚を拉致監禁して散々辱め、その胎内に傀儡を埋め込むという残虐な行為を
してのけた。
それにより、珊瑚を母胎として、というより依童として強力な物の怪を造ろうとしたのだ。
その奸計は弥勒により失敗している。
すると奈落は、まだ珊瑚をつけねらっていたということか。
「それで、どっちへ行ったんでい！」
犬夜叉が、弥勒の背中から大声で叫ぶ。農夫はのんびりした動作で指差して言った。
「村道を東に向かっていっただな。けんどあっちは山ん中で、なんもないはずだでなあ」
* - * - * - * - * - * - * - *
楓の村から離れること一〇里ほどの場所に、こぢんまりとした平城がある。
人見家の居城で、関東の雄・北条氏の有力家臣だ。
奈落はここの嫡男になりすまし、主である人見氏に人蜘蛛を憑かせた上で殺害した。
その結果、奈落が世継ぎとなって人見家を支配するようになっていた。
彼はここを本拠とし神楽たちを住まわせ、人間の家臣たちに傅かれながら暗躍している。
その城の奥まった広間が奈落の居室となっていた。
廊下には宿直などの護衛がおり、お付きの小姓たちも控えている。
室内からは、先ほどから生臭いほどの女の嬌声が響いていたが、奈落の張った結界のせいで彼ら
の耳にはまったく入っていなかった。
奈落が珊瑚を手に入れたのは偶然の僥倖であった。
医者に化けて、治療に来た人間から半妖をでっち上げようとしていたところに飛び込んできたの
が珊瑚だった。
一瞬ではあるが、このまま殺すかと思ったこともあった。
しかし老医師の姿をした自分の前で、無防備な姿を晒していた珊瑚を見て考えを変えた。
どうにも抑えられない肉の欲望を植え付け、そして弟もちらつかせて精神的に縛ってしまおうと
考え直したのだ。
色責めに関しては、前回に珊瑚を犯した時に、この娘が類稀な性感を持っていることを知った
ため、それを活かそうとしたわけだが、これは少しおかしい。
今までの奈落なら、そんな迂遠なことはしなかったろう。
その場で殺しておけば後々の面倒がない。
手間のかかる調教など彼の趣味ではなかったはずである。
なぜこういうことを思いついたのは、奈落にもよくわかっていなかった。
「ん……ああ……はうっ……いっ……痛っ……あ……」
珊瑚は上半身をぎちぎちに縛られ、窮屈な姿勢で仰向けに寝かされていた。
荒縄が珊瑚の柔らかい肌に食い込み、乳房の上下をきつくくくり上げていた。
そのせいでいつもより張り詰めていた乳房に、彼女は小さな痛みを感じている。
奈落は、そんなところに鍼を打っていたのだ。
乳輪の周囲に沿って、五本ほどの鍼を刺していく。そのツンとした痛みで、彼女の乳首がぷくん
と持ち上がった。
その盛り上がった乳首の先にも、一本プツンと細い針が植えられていた。
刺された時は、そんなところを刺されるという恐怖と、細いとはいえ鍼を打たれた痛みで呻いて
いたのに、今ではそれが熱い吐息になっている。
言うまでもなく、奈落は珊瑚の乳房をより鋭敏にしようと鍼を打ったのである。
ツボということもあるが、縄で縛り上げて弾けるように張った乳房に鍼を打つ。
当然、普通に刺すよりも感覚が鋭くなってしまう。
そして身体を揺するごとに乳房が揺れ、同時に、胸肉に刺さった鍼もゆらゆらと揺らめいた。
その様がひどく被虐的で、珊瑚の肉を燃え立たせていったのだ。
「ああ……」
刺された鍼の根元をさするように指先で撫でていくと、珊瑚の乳首はさらに屹立し見る間に硬く
なっていく。
それは、珊瑚自身が痛いと思うほどに充血していた。
生理で乳首が立った時でも、ブラで擦れて変な気分になってしまうほどに胸が感じる珊瑚は、
もうその刺激だけで気がそぞろになってくる。
奈落もそれを承知で、両手を使い、それぞれの乳房をやわやわと揉みだした。
五本の指を順番に肉の中に埋め込むように、柔らかく揉んでいく。
「んん……あ……んふ……」
すぐに珊瑚の声が甘く切なくなってくる。
そして彼女の視線は、自分の胸を愛撫している奈落の指に注がれていた。
もう胸の狭間や肩口には、うっすらと汗を浮かせていた。
すかさず彼はそこに舌を這わせる。
浮いた汗を舐め取るように、肩や鎖骨のくぼみに舌を押し当てていく。
「くっ……ああ……」
ぞわっとした寒気とも痺れともつかぬ感覚が突き抜け、珊瑚は鳥肌が立った。
優しくゆっくりと揉み続ける指に呼応して、舌は首筋から鎖骨を通り、そして肉球の谷間まで
滑り込んでいった。
思わず珊瑚が背を反らせて胸を奈落に押しつけるようにすると、彼の舌は谷間から進んで、
今度は丸い乳房の外周から頂点へ向けてゆっくりと進み始めた。
「はあ……ああっ……んっ……はっ……あう……」
声を出すのは堪えようとする羞恥は残っているものの、奈落の嬲りを制止したいという気持ちは
消え失せていた。
それより早く続きをして欲しい、その先をやって欲しいという淫らな欲望を噛み殺すのに必死
だった。
奈落は、そんな彼女を焦らし、さらなる羞恥地獄に引き込もうと、じっくり責めていくのだった。
指が何度も何度も柔肉に埋もれ、舌がその乳房のほぼ全域を征服した時には、珊瑚は顔を赤く
上気させ、快楽を我慢するために力を込めた全身が震えていた。
そんな珊瑚を見やり、奈落は刺した鍼を抜いていく。
一本、また一本と抜かれるごとに、珊瑚の紅唇からはあえやかな呻き声が洩れていった。
「あっ……あああっ……」
一転、強い愛撫が珊瑚の乳房を襲った。
それまで、柔らかく繊細に揉まれる快感と、乳房に男の唾液を塗りたくられる屈辱と愉悦を味わ
っていたが、いきなり力を込められて珊瑚は呻いた。
しかしそれも僅かの時間であった。
奈落は両手で珊瑚の乳房を握ると、指の隙間から肉が溢れるほどに力強く揉んだ。
揉むというより、こねくるような激しい行為に、珊瑚は甲高い悲鳴を上げた。
それでいて、もっともっととせがむように、胸を奈落に向けてせり上げていたのだ。
それに応えるように、奈落は指で乳首をきゅうっと摘んでやった。
「あひっ！ ……ん、んあ、痛い……あうう……」
「本当に痛いのか？ そんな色っぽい声で喘いでも信じられんな」
「いや、あうう……ああっ……」
痛がる素振りというよりは、身に走る快感で身体をよじっているようにすら見えた。
奈落は、親指と中指で乳首を挟み、人差し指でピンピンと弾いて珊瑚を喘がせた。
そして今度は、乳首を口に含み、そこに歯を立てた。
咬みきるような刺激だったのに、珊瑚の肉体にはびりびりっとくるような大きな悦楽が絶えず
身体を震えさせていた。
珊瑚の反応に満足した奈落は、乳首を唇でくわえて引っ張ったり、乳輪まで口で含んで思い切り
吸い上げたりした。
「あううっ……あ、ああ……」
珊瑚は口に出せない分、心の中で絶叫した。
（む、胸が……ああ胸がとろけちゃう……。ど、どうしてこんなにいいの……ああっ）
どう我慢しても感じてしまう。
というより、暴力的に感じさせられてしまう。
胸を震わせ、腿をもじもじと擦り合わせて初めて気が付いた。
もう媚肉はじっとりと濡れており、蜜がアヌスにまで滴っているではないか。
胸を嬲られているだけなのに、もう股間を濡らして男を欲しがっている。
それだけは知られたくないと、珊瑚は盛んに腰をよじり、腿で何とか股間を隠そうとした。
しかし、歯先の少しギザついたところで乳首を軽く咬まれ、それをきゅうっと音がするほどに
強く吸われると、他の余計なことが考えられなくなってくる。
「あっ……ああっ……」
珊瑚は胸を中心に、小さく痙攣し始めた。
身体の奥からある感覚がこみ上げてくる。
（ああ……、来る、来ちゃう……。おっぱいだけで……い、いきそうっ……）
奈落はニヤリとした。
珊瑚がその状態になってきたことは、もうその顔を見ればわかるようになっている。
絶頂まであと一押しというところで、珊瑚の胸から刺激が遠のいた。
「あ……」
「なんだその顔は。続けて欲しいのか」
「……」
珊瑚は、恥ずかしさと悔しさで、血が出るほどに唇を噛みしめた。
どうせ犯されれば、恥ずかしげもなく喘いでしまうとわかっているのだが、まだ正気のうちは、
精神が肉体に反発する。
「無駄なことを」と鼻でせせら笑いながら、奈落は珊瑚の膣にペニスを押しつけた。
「い、いや……」
媚肉に感じる男根の熱さと硬さにくらくらしながら、珊瑚は抗って見せた。
しかしそれは口だけで、両脚は奈落を迎えるように少し開いた。
太い亀頭部が徐々に珊瑚の膣を割り、中に埋め込まれていく。
奈落は、ぬるぬるとした熱い膣の感触を愉しみながら、一気に深々と貫いた。
途端に珊瑚はぐうっと仰け反り、絶叫した。
「あああああああっっ！？」
媚肉の襞を押しのけるように突っ込まれ、子宮まで届かされた感触に、珊瑚はたちまち頂点に
まで追いやられてしまった。
珊瑚はぶるぶると震える裸身を他人事のように感じながら呻いていた。
（ま、また……また入れられただけで……）
珊瑚の身体の痙攣に合わせるかのように、膣の襞も煽動していた。
押し入ってきた異物を確かめるようにヒクヒクと収縮している。
どんなにイヤだと思っていても、膣は勝手に熱くなり、奈落の肉棒を食い締めるように包み
込んでいた。
仰向けになっている珊瑚に覆い被さった奈落は、両手で彼女の顔を押さえて正面から見据え
て言った。
「どうだ。俺のものはもうオマンコですっかり覚え込んだだろう」
「……」
「動いて欲しいか？」
「い、いや……ああっ」
奈落は出来るだけゆっくりと腰を引き、珊瑚の媚肉から肉棒を引き抜いていく。
それに珊瑚の膣襞がまとわりつき、引き剥がされるようにめくり出される。
珊瑚の汁でぬらぬらしているペニスを抜ける寸前まで引くと、これもゆっくりと捻り込んだ。
今度は媚肉の襞を巻き込むようにして中にめり込んでいった。
抜く時も入れられる時も、極太の亀頭で膣内をムリヤリ拡げられ、襞をこそげ取られる感覚が
珊瑚を苦悩させる。
入れられると息が詰まるほどの圧迫感なのに、同時に満足感にも近い充実感を得られる。
抜かれると、ようやく落ち着いて呼吸が出来そうになるのに、物足りないようなやるせなさに呻く。
「うあっ……ううっ……ん、はうっ……ああっ……」
奥まで届かされた肉棒に、子宮を押し上げるように突き上げられると、胎内の襞も珊瑚の声も
引きつったようになる。
「ひぃっ……あ、ああ……ぐうっ、深いっ……んああ、深い、あああ……」
何度も味わわされているのに、この深さときつさには頭が朦朧となる。
奈落の方も、何度犯しても新鮮な反応を見せる珊瑚に満足していた。
腰を使うと、粘っこい水音を立てて珊瑚の媚肉が変形する。
よくあんな大きなものを飲み込んでいるというくらい、彼女のそこは男根でめり込まされていた。
「あ、あひっ……あ、あうう、いや……もう、ああ、もうやめっ、ああっ……」
奈落は珊瑚の下半身を担ぎ上げて胸の方に折り曲げ、思うさま膣を抉っていた。
憎むべき男に辱められている苦悩と、淫靡な快楽に浸りたいと思う肉の欲望とか葛藤し、珊瑚の
美貌を苦悶させていた。
そんな珊瑚の表情を見ているだけで、奈落はムラムラと嗜虐感が欲情してくる。
彼は普通の男ではない。
こと性欲に関しては、桔梗に対してしか起こらない。
しかし性欲とは別の、それでいて非常に似通った嗜虐願望というものがあり、このように美女
が悶え苦しむ様子を見ると高まっていくのだ。
だから奈落の責めはいつもきつい。
女がいきそうになっても素直にいかせず、何度も焦らして悶えさせるとか、逆に何度も続けて
絶頂まで押し上げ、快楽地獄に苦しむ表情を見て興奮するのである。
珊瑚は、そんな奈落の性癖に打ってつけだったのだ。
「やっ、もういやあっ……ああっ、も、もう……ああ、もう動かないでっ……ひあっ……」
ずんずんと腰を送りつけながら、奈落は珊瑚の顔を覗き込んで言った。
「ほう、なぜだ？ おまえはこうして欲しかったのではないのか？」
「だ、だって……あっ……こ、これ以上されたら、ああっ……」
「ふふ、もういきそうだということか」
「いやあ……」
珊瑚の懇願など耳にも入らぬと、奈落が奥まで肉棒と貫くと、そのたびに珊瑚の口から悲鳴
とも喘ぎともつかぬ声が漏れ出てしまう。
奈落は、今は珊瑚がセックスのこと以外考えられぬようにしようと、ことさら大きく動いて
膣内で暴れ回った。
押し入ったものの存在感を知らしめるために、グッと押し込んで深々と挿入したり、突っ込んだ
まま腰を回して抉ったりした。
そうされると珊瑚は、口では嫌がりながらもその膣は貪欲ともいえる煽動で奈落のペニスを食い
締めるのだった。
早くも陥落しつつある膣に、奈落はさらなる攻勢をかけた。
ピストンの動きを抑え、珊瑚と腰を密着させる。
そのままの姿勢で、動きこそ小さいが力強くぐいぐいと珊瑚の中に肉棒を打ち込んでいった。
敷き布団が奈落の腰の動きにめくれていき、畳がギシギシと鳴るほどに圧力をかけて抉っていく
と、食いしばっていた珊瑚の唇が緩んできた。
そこから転がってきた声は、甘みととろみのかかった熱い喘ぎであった。
「ん……んん！ ……あ、はあ……あっ……ん、んくっ……はあっ……はうう……あああ……」
そこで奈落は一端腰を上げ、珊瑚から半分ほど抜いて腰の動きを止めた。
すると、こぽりと蜜が零れ、胎内の襞はまだ中にあるペニスを逃がさないと絡みついてくる。
ようやく離れたふたりの腰を、珊瑚の蜜がにちゃりと糸を引いていた。
「あ……」
「どうした、そんな切なそうな顔で」
「……」
「それ、こうして欲しいのだろうが」
「あああっ……」
奈落は口元をゆがめて再び律動を開始する。
もう珊瑚に抗いはなかった。
言葉でもだが、身体からも力が抜けている。
それまでは、責められてもよがらないよう、全身に力を入れていたのだが、今はそれがない。
思った通りこの娘は、どうしても肉の欲望に逆らえない。
精神力はかなりのものだが、それが肉欲を凌駕するところまではいっていないのだろう。
なまじ気が強く、羞恥心も強いだけに、いったん崩れるとあられもない姿で乱れてしまうようだ。
「んあうぅっ……ああ、ああっ……くううっ……いっ……あうう……」
「素直でないな。気持ちがよければそう言うがいい」
「やっ、そんな……ああ、こんなのって……」
奈落は、そう言ってからかいながらも腰使いを続けている。
珊瑚の胎内は分泌された蜜でぬらぬらしていた。
その愛液にまみれた子宮口をコツコツとつついてやると、珊瑚はきわまったように身体を痙攣
させた。
充分に蜜を含んだ襞が、奈落の男根にねっとりと絡みつき、奥へと誘うようなざわめきを見せ
ている。
太いカリの部分を使って、中の蜜を掻い出すように抜き差しすると、珊瑚はもう辛抱たまらない
とばかりに呻いて身悶える。
奈落は珊瑚のすらりとした両脚を両肩に載せ、そのまま彼女を二つ折りにして深々と抉った。
そしてそのまま珊瑚に密着し、両手で彼女の顔を押さえて自分の方に向けさせた。
「いいか、珊瑚。もう貴様は俺の女だ」
「いや、そんなのいやあ……あっ……」
「俺の女なら、いい時は「いい」と言え」
「……」
「そしていく時もちゃんとそう言うんだ。いいな？」
「あひっ！！」
そういうと奈落は、子宮口に密着させていた肉棒をさらに押し上げるように抉った。
珊瑚はたまらず肢体を仰け反らせて悲鳴を上げる。
そこをすかさず、今度は激しい律動で胎内を抉り回した。
「あ、ああっ……そ、そんなに、ああっ、つ、突かないでぇっ……あ、あっ……はげしっ……
あああっ……」
珊瑚は盛んに顔を振って、堪えても堪えても押し寄せてくる快楽の大波を受け流そうとしていた。
その真っ赤に上気した顔を両手で掴むと、奈落はいきなり珊瑚の唇を奪った。
「むむっ！ ……んむむっ……」
突然のことに吃驚した珊瑚は、大きく目を見開いて正面の奈落を見た。
彼は目を閉じず、しっかりと開けて目の前の珊瑚を見つめていた。
何となく珊瑚はその視線を避け、固く目をつむった。
それでも奈落の舌が珊瑚の咥内を蹂躙する。
「むうっ……んんん……むむ……んぱあ！……はあ、はあ、はあ……あむむ……むうっ」
珊瑚は固く口を閉じ舌の侵入を防ごうとしていたが、何度も歯茎を舐められ、頬の裏側まで侵さ
れると、耐えきれず前歯を緩めた。
奈落はそこを逃さず珊瑚の中に乱入し、そのよく動く舌で口の中を荒らし回った。
口づけというよりも、舌による強姦のような激しい接吻に、珊瑚のプロテクトがあっというまに
溶け去った。
「ぷあ……あ、あ……ああっ……」
ようやく奈落の口が離れたのに、今度は縛り上げられた乳房に唇と舌、そして手が襲ってくる。
もにゅもにゅとしつこいほどに揉まれ、乳首がちぎれるほどに強く吸われた。
そして、腰の動きは相変わらずで、無尽蔵なほどのピストン運動が珊瑚の膣を貫き続けた。
珊瑚はぶるぶると腰を震わせながら呻くように言った。
「ああ、もう……た、たまんない……」
「……」
奈落の唾液にまみれた唇から、火が着きそうなくらい熱い吐息が喘ぎ声とともに出てくる。
瞳は潤み、その視線は、自分を犯す奈落に向いていた。
珊瑚が官能の波に飲み込まれたことは明らかだった。
ぐいっと奈落が腰を使うと、珊瑚は首を仰け反らせて喘いだ。
「んはうっっ、ああ、いいっ……」
とうとう快楽を訴えるよがり声をあげると、もう規制はなくなったとばかりに珊瑚の方から
激しく腰を使い出した。
奈落は腰を打ち付けながら、珊瑚の耳元で囁くように言う。
「そんなにいいなら、どこがいいか言うんだ」
「あっ！ ……ああ、あそこ……ああ、いいっ……」
「あそこじゃだめだ」
「お、オマンコですっ……あ、いいっ……ど、どうしてこんな……ああ、オマンコいいっ……」
もう珊瑚は悪循環に陥っている。
強制されて恥ずかしいことを言わされているというのに、その羞恥や屈辱すら快楽のひとつに
すり替わってしまっていた。
恥ずかしい責めをされ、恥ずかしいことを言われると、消え入りそうな羞恥とともに我慢しき
れない愉悦も湧いて出るのだ。
一端そうなってしまうと、堰を切ったように積極的になってしまう。
彼女は賢いから、それでも理性の一部は残っているのだが、それが逆に珊瑚を追い込むことにも
なっている。
心の片隅で、こんなことはいけないと思っているのに、よく発達した珊瑚の裸体は、肉の疼きに
我慢できない。
そのぶつかり合いで、珊瑚はさらなる羞恥と快楽の地獄に誘われるのである。
快楽の泉に浸りきっている珊瑚の痴態を見ているうちに、奈落の方も急速に射精欲が高まって
くる。
我慢しようにも、甘美としかいいようのない珊瑚の締めつけや、男心をとろかさずにはいられ
ない艶っぽい表情に、男根が射精を訴えて止まない。
「あ、ああっ！？ ……い、いやいやいやあっ……」
珊瑚は突然絶叫した。
膣の中で奈落のペニスがぐうっと大きくなった気がしたのだ。
実際は亀頭部が膨れただけだが、ただでさえ大きかったものがいっそう太くなっている。
珊瑚にはわかる。
奈落は射精しようとしているのだ。
何度も出されただけに、その変化がわかるのだ。
奈落はその変化を認めて珊瑚に言った。
「なんだ、どうした突然」
「ああ、いや……な、中はいや……中で出すのはやめて……」
「何をいまさら。もう何度も出してやったろう」
「で、でもいや……」
「妊娠するからか？ 別に孕んでもかまわんぞ」
「そんな、いやあっ……」
珊瑚を貫いてもう半刻近く経過している。
普通の人間なら五分も保たないような名器の中で、である。
奈落も限界だった。
中出しされるのはいやだと暴れ出した珊瑚を押さえ込むと、奈落は猛然と腰を振ってさらに
激しい攻撃を加えた。
子宮口を小突き続けるうちに、珊瑚の肉体も射精を望むようになってきたのか、ぐぐっと子宮
自体が下降してきた。
それが珊瑚にもわかるから、彼女は余計に身体をよじらせて喚くのだが、それでも肉棒の責めに
感じずにはいられない。
「いやあ……あ、ああっ……ん、んあ、深いっ……あうう、いいっ……いや、中はいやあ……
いいっ……すごい、ああっ……」
奈落の肩に担がれた珊瑚の足の指が内側に反り返ってきた。
ふくらはぎにもぶるぶると小さな痙攣が走っている。
もう、いく寸前なのだ。
奈落は、絡みついてくる襞を引き剥がすように抜き差しを繰り返し、自分とともに珊瑚も絶頂に
導こうと突き込んだ。
「い、いや、中はいやあ……ああ、いいっ……く……ああ、い、いきそうっ……いやああ……」
珊瑚の子宮と奈落の男根の先がぴったりとくっつき、子宮口がわずかに開いた時、最後の瞬間が
訪れた。
「んんっ……おおうっ！」
「いっ、いやああああっっ！！」
悲痛な珊瑚の叫びとともに、奈落は欲望の固まりを一気に放出した。
小便の時とは比較にならぬほどの強烈な流れで精液が尿道を突っ走っていく。
その粘液を胎内にぶちまけられ、子宮口と子宮内にも流し込まれて珊瑚は絶叫した。
「ひぃぃっ……いやあ……あ、あ、出て……出てる……ああっ……」
子宮の奥深いところまで熱い精液を注ぎ込まれる感触、珊瑚は身を震わせて喚き、呻いた。
どくどくと流し込まれる子種に、珊瑚は抵抗色が消えていく。
下腹部の中は、もう奈落の汁で穢しつくされた。
それでも放出されてくる精液の感触に、珊瑚はぶるるっと腰を大きく震わせた。
（す、すごい……ああ、まだ出てる……ああ、こんな……だ、出されてるのに、い、いっちゃい
そう……ああ……）
珊瑚の変化を敏感に感じ取り、奈落はまだ射精が続いているのに再び腰を送り始めた。
堪えきれなかった珊瑚は絶息するような声で喘いだ。
「うあ、うああっ……う、うむ、い、いくっ！！」
「……おっ……」
珊瑚が気をやった瞬間、その膣もきゅっと締まり、奈落に呻き声をあげさせた。
彼の男根は珊瑚の媚肉に締め上げられ、尿道に残った精液の残滓まで噴出させてしまった。
奈落はどのままどさりと珊瑚の上にのしかかった。ふたりの男女は身体を重ねたまま、しばらく
動けなかった。
奈落には珍しいことだった。
（この娘……。天性のものか？ これほどとは……）
ようやく絶頂の余韻から抜け、奈落は珊瑚から抜き取った。
肉棒が引き抜かれると、どろりとした蜜と精液の混合液が珊瑚の膣から零れ出た。
その光景、そして激しく気をやった珊瑚の表情、淫らきわまるその姿態を見ているうち、奈落
の下半身にまたしても力が甦ってくる。
「あ……ひいっ……」
奈落は無言で珊瑚をひっくり返してうつぶせにした。
そして、またねとねとしている媚肉にその肉棒を突きつけた。
「いやっ……も、もういやよ、ああっ……ゆ、許してっ、あっ、ううんっ！！」
前のめりのまま這い蹲って逃げようとした珊瑚の腰をがっしりと掴み、ずぶずぶっとそのまま
貫いた。
そして尻から押し潰すようにして腰を押しつけ、肉棒の先端で子宮口を擦りあげるところまで
突き込んだ。
珊瑚は目眩がした。
さっきも深々と入れられたと思ったが、今度の方が一段と結合が深い感じがする。
奈落は、さっき大量に放った精液を膣の襞になすりつけるようにして肉棒を送り込んだ。
膣を抉るようにしてこねくり回し、子宮を押し上げるようにして突き上げると、珊瑚は悲鳴を
あげて背を反らせていった。
都合四度に渡って珊瑚を凌辱し、陰嚢の中が空っぽになるまで射精すると、奈落はようやく満足
し、半ば失神してしまった珊瑚をそのままに部屋を出た。
頭を下げる家臣を無視し、そのまま廊下を渡ると、突き当たりで声を掛けられた。
「おい」
「……」
神楽だった。
一見、着崩したような格好だが、それでいてだらしないという印象は与えない。
まだ二〇を越えてはいまいが、実年齢よりもずっと女っぽい徒っぽさを見せている女だ。
無表情の下に、わずかに冷たい感情を覗かせながら神楽は言った。
「あの女、どうする気なんだよ」
「……」
「こないだもあの女だったじゃないか。あん時ゃ、あの女の胎ん中に傀儡を埋め込むってんで
連れて来たんだろうが、今度はなんだい」
奈落は、詰問する神楽をうるさそうに眺めた。
彼女は、自分の身体の一部から造りだした妖かしで、彼の腹心である。
しかし、このところやたら反抗的で扱いが難しくなっていた。
無論、神楽の心臓は奈落の手元にあるのだから、それを締め上げれば、最終的には彼の指示に
従うのだが、あれこれ口を挟み、反発するのは治らなかった。
神楽は下から睨め上げるような目で主に言った。
「……まさか、あの娘を引き込むつもりじゃないんだろうね？」
「……だったらどうだと言うんだ？」
前回は、単に「丈夫な器」として珊瑚を使っただけである。
今回は別にこれといった目的などないのに、いきなり攫ってきたらしい。
一体全体どういうことなのだろう。
「本気かい、あんた。あたしも神無も納得しやしないよ」
神楽は少したじろいだ。
奈落のやつ、本当に珊瑚を仲間に引き入れるつもりなのか。
しかし、そういえば琥珀もこっちに連れ込んでいる。
姉弟そろって利用しようということか。
だが、それにしても……。
「……もしやあんた、あの娘に惚れたかい？」
「……」
「あっははは、ならおかしいね。あんたにもそんな人間らしいところが残ってたのかい」
「……」
徐々に青ざめていく奈落の顔色に気づかないのか、神楽はバカにしたように嗤って言った。
「それにしたって、そんならあの女はどうすんだい。桔梗とかいう」
「！」
「そっちは捨てるわけかい？ それとも両手に花ってとこ、あぐぅっっ！！」
神楽が全部言う前に、奈落の腕が唸った。
風を切る音がしたと思ったら、凄まじい衝撃が彼女の右頬を襲った。
奈落が殴ったのだ。
それも平手ではなく裏拳で。
神楽は呻き、頬を青く内出血させ、唇の端を切って倒れ込んだ。
「なにすんだい！」
「……二度とそういうくだらんことを口にするな」
「……」
「勘違いするなよ、俺にとってきさまなど必要不可欠ではない。……何なら、今、この場で
殺してやろうか」
奈落はそう冷たく言い放つと妖女に向き直った。
「ぐあっ！」
思い切り神楽の顔を足の裏で蹴り飛ばすと、少しだけ足音を荒立てて去っていった。
戻る 作品トップへ 珊瑚艶情曼陀羅・前編 第五話へ 第二話へ