弥勒の失踪が知れたのは、彼が神楽に導かれて人見城へ連れて行かれた翌日である。
もっとも弥勒の場合、かごめたちに内緒で村を出ることは珍しくはない。
言うまでもなく夜這いをかけに行くなど、今で言う「ナンパ」をしに行っているわけだ。
従って、彼が一日二日見あたらないとしても、気にするのは珊瑚くらいのもので、犬夜叉など
は歯牙にも引っ掛けない。
ただ今回は事情が異なる。
怪しげな医者に攫われて行方不明になった珊瑚を捜索中に消えたのだ。
当然、その手がかりを掴んで敵陣へ乗り込んだか、あるいは……

「……弥勒さまも……」
「心配すんな。あの破戒坊主、ちょっとやそっとで死ぬような奴じゃねえよ」
「でも珊瑚ちゃんも……」
「……」

居ても立っても居られず、かごめがすっくと立ち上がった。
犬夜叉がそれを見上げている。

「行こ、犬夜叉」
「行くってどこへ」
「どこって……と、とにかく探しに行かないと!」
「だからどこへだよ」
「……」

かごめは少し驚いている。
こういう場合、真っ先に鉄砲玉のように飛び出していくのが犬夜叉だったはずだ。
それを諌めるのがかごめや弥勒の役割だったのだ。
妙に冷静な犬夜叉に違和感を覚えながらも、かごめも腰を下ろした。

「おめえ、これが誰の仕業かわかるよな?」
「そりゃ……証拠はないけど、多分、奈落、かな……」

犬夜叉はうなずいて答えた。

「まず間違いねえだろ。今度は何を狙ってやがるか知らねえが、またぞろ汚ねえことを考えてる
に決まってんだ」
「うん……」
「だったら動くな」
「だ、だってそんな! こうしてる間にも珊瑚ちゃんたちが……」
「俺が何とかする。だからおまえは楓ばばあとここにいろ。いいな?」
「……」

犬夜叉なりに、今回のことを重大視しているのであろう。
弥勒や珊瑚という、突っかかる仲間のいないことがかえって彼を冷静にさせているのである。
ここでいつものように闇雲に突っ込んだところで自滅だ。
特にかごめは危険である。
危地に於いては神懸かり的な能力を発揮する娘ではあるが、通常はただの人間である。
身を守るすべも相手を倒す術もない。もっとも狙われやすいのだ。

「犬夜叉は……?」
「俺はまたあの村へ行ってみる」
「……」
「取り敢えず、あそこしか手がかりはねえんだ」
「そう……」
「ばばあ、かごめを頼むぜ」
「む」

犬夜叉はそう言い捨てると、風のように駆けて行った。
かごめには彼を見送ることしか出来なかった。
犬夜叉の言っていることは理解できる。
最初に珊瑚、次に弥勒と順番に拐かしたとすれば、敵は各個撃破を狙っているに違いない。
残った犬夜叉とかごめを比較するなら、どう考えても次はかごめであろう。
もしかすると、こうして犬夜叉とかごめを離す策かも知れないが、珊瑚らの捜索を止めるわけ
にも行かない。

「珊瑚ちゃん……弥勒さま……」

かごめは夜空を見上げてふたりを思った。

* - * - * - * - * - *- * - *

実情は、かごめらの予想とはだいぶ違っていた。
そもそも奈落が珊瑚を攫ったのも偶然なら、弥勒を神楽に誘惑させたのも珊瑚を堕とすためで
ある。
各個撃破などどいう戦術ではなく、すべては珊瑚から発しているのだ。

その珊瑚は再び奈落の部屋に引っ張り込まれていた。
前夜、弥勒の前で犯され、絶頂まで押し上げられていた。
同時に、その様子を見ていた弥勒が射精させられるところまで見せられたのだ。
珊瑚は泣き喚いて弥勒に詫びたが、弥勒の方はガックリと項垂れ、言葉もなかった。
部屋に連れ去ったあとも珊瑚は泣き続け、ロクに奈落の言うことを聞かないほどだった。
奈落は、あるいは「逆効果だったか」と思ったが、逆に効果がありすぎたのかも知れない。
それならそれでまだ策はある。
奈落は、全裸のまま伏せって泣いている珊瑚の黒髪を掴み、顔を上げさせた。

「あ……ああ……」
「どうだ珊瑚。もうあきらめがついたろう」
「やあ……」
「泣きながら、何度も俺の女になると誓ったろう。もう忘れたか?」

奈落は珊瑚を凌辱し、気をやらせるごとに従属を誓わせていた。
もっとも、そんなものは、珊瑚がいきたくて我慢できず、何を言っているかわからないような
状態で口にしたのであり、本当にそう思って言ったわけではない。
奈落もそれはわかっていたが、何度も何度も言わせることで、珊瑚を心的に半ば暗示をかける
つもりだったのである。

時間をかけてそうするつもりでいたら、弥勒が引っかかってきた。
これを利用しない手はない。
弥勒の前で珊瑚を犯すことにより、双方に諦めさせようとしたわけだ。
ところが、弥勒の方はいざ知らず、珊瑚の方は余計に想いが募ったようで効果が出ていない。
貶められはしたろうが、仲間を思う気持ちは存外に強いようだ。

「まだ諦め切れんなら……」

奈落の目が光る。

「弥勒を殺せ」
「な……」

珊瑚が、これ以上できないというほどに目を見開いた。

「おまえの、その手で殺せ」
「そ、そんなこと出来るわけが……」
「犬夜叉も、かごめという娘も殺せ。そうでもしなければ、おまえは本当に俺のものにはならん
だろう」
「出来ないっ……」

珊瑚は激しく顔を横に振って叫んだ。

「そんなこと、出来るわけないわっ。法師さまやかごめちゃんを殺すなんて……犬夜叉だって」
「そうか、出来んか」

悪辣な半妖は邪悪そうな笑みを洩らした。

「ならば致し方あるまい。俺が直々に、この手で殺してやろう」
「え……」
「おまえが殺せぬというのであれば、この俺が殺すと言っているのだ。ちょうど良い、弥勒は
我が手にある。これから行って殺して進ぜよう」
「だめっ……」

珊瑚は奈落にしがみつくように言った。

「だめ、絶対だめっ……。法師さまも、みんなも殺しちゃいやよ!」
「やつらを始末しない限り、埒があかぬ。それとも珊瑚、おまえ、法師たちを捨てるか?」
「……」
「出来ぬか。で、あれば……」
「わ、わかった!」
「……」

珊瑚は顔を背け、目を固く閉じながら言った。

「わ、私は……」
「俺のものだな?」
「そ、そうよ……」
「そうか。ならば……」

奈落は珊瑚の耳元に口を近づけた。

* - * - * - * - * - *- * - *

「くっ……やめろ! い、いつまでこのような……」
「無理をおしでないよ。あんただって満更でもないだろうが。ほら、ここがもうこんなに硬く
……」
「うるさい、触るなっ。こ、この阿婆擦れがあっ」

弥勒はまだ昨夜のまま縛られており、今も神楽にいたぶられていた。
下半身はすべて脱がされ、剥き出しになっている。
晒された男根を神楽に握られ、擦られていた。
神楽にペニスを支配された法師が緊縛された身体をよじらせていると、スッと音もなく襖が開
いた。
俯いた珊瑚と、その後ろに奈落の貌が見える。

「珊瑚……、くっ、てめえ神楽! いい加減にしろ!」
「ふふ、なんだい今さら。夕べは珊瑚がいかされるのを見て、ここをおっ立ててたくせに」
「黙れ黙れっ! きさまら、また……」
「察しがいいね。そうさ、またおまえは珊瑚が犯されて悶えるところを見せつけられるって
わけさ」
「く……、珊瑚、必ず助けます! だから、あぐぅっ……」

全部言う前に、神楽が鳩尾に拳をくれた。

「……たく、うるさい坊主だこと。黙って見てなよ、自分の女が他の男に犯されるとこなんざ、
そうそう見られるもんじゃないよ」
「……」

後ろから肩を突かれて、つんのめるように部屋に入った珊瑚は、もう身には何も着けていなかった。
透き通るような純白の絹肌が、陽光を受けて輝くようだ。
スラリとした少女らしい肢体に、そろそろ脂肪が薄くまとわりつき始め、女性として熟しつつ
ある裸体だった。
昨夜さんざん責められた名残なのか、顔は一層青白いのが痛々しい。
心持ち顔を上げた珊瑚は、虚ろな瞳で弥勒を見ていた。
その目には、もはや感情は浮かんでおらず、弥勒の股間に醜く勃起した陰茎を見ても表情ひとつ
変えなかった。

「あっ」

奈落が無造作に突き転がした時だけ、珊瑚は小さく声を出した。
弥勒はすぐに反応し、膝を擦るように恋人に近づいた。

「何をする、奈落! 珊瑚、だいじょうぶですかっ」
「……」

その時、珊瑚の目に激情が浮いたように見えたが、一瞬のことだった。
奈落はそんな珊瑚に構わず、彼女の前に立ちはだかった。
間に珊瑚を挟んで、ちょうど弥勒と正対する位置に仁王立ちになっている。
珊瑚はちらと弥勒の方を悲しげに見ると、諦めたように奈落に向き直る。
そして、震える手で奈落の着物の裾をはだけさせた。
弥勒は驚いた。

「珊瑚、なにを……」
「……」

少女は目を伏せ、中から出てきたものをその華奢な手で持った。
陰茎であった。
奈落のそこは、まだ勃起してはおらず、半分ほど頭をもたげているという程度だ。
珊瑚はその逸物を手で握った。
珊瑚は顔を背けていたが、奈落が「ちゃんと見ろ」とでも言うように、顔を正面に向かせた。
そして、おずおずと手を動かし始める。

「……」

情けなくて涙が出そうだった。
このような娼婦のようなマネはしたことがない。
奈落には何度もくわえさせられたし、弥勒のものも口にすることはあったが、こうして手淫して
やるのは初めてだった。
しかも弥勒の前で、である。
脅されてなければ、死んでも出来なかった。
珊瑚は、部屋に来る前の情景を思い出していた。

* - * - * - * - * - *- * - *

「いっ、いやよ、絶対にいやっ!」

珊瑚は激しく首を振って拒絶した。

「なぜだ。夕べもやったろう」
「言わないで! あんなこと……あんなこともういやっ」
「何度も言わせるな」
「あっ」

奈落は珊瑚の髪を掴み、ぐいぐいと引き寄せて顔をくっつけるようにして言った。

「きさまは俺のものだろう」
「痛い……痛いわ、離して!」
「よく聞け」

珊瑚の髪を振りほどくように手を離した。

「いいか。今度は俺が仕掛けるのではなく、おまえの方から来い」
「……」
「おまえが俺にしなだれかかって抱かれるのだ。弥勒の前でな」
「なんですって!?」

珊瑚は目を剥いた。
一方的に強姦されるのだって、イヤでイヤでたまらないのに、弥勒の前で自分から奈落を求める
など、出来ようはずもない。

「そんなこと出来るわけないじゃない! いやよ絶対に! も、もしそんなことさせるのなら
……」
「どうするというのだ」
「わ、私は舌を噛んで死んでやるから」
「ほう」

奈落は面白そうに珊瑚を見ていた。
無駄な抵抗を、と思っている。

「そうか。どうしても死ぬというのであれば止めはせん」
「……」
「ついでだ、あの法師にも後を追わせてやろう」
「な……」
「もちろん犬夜叉たちもだ。みんな揃ってあの世とやらに行けば、三途の川を渡るのも心強か
ろう」
「やめてっ」

珊瑚は奈落にすがって懇願した。

「あ、あんた、私が言うことを聞けば法師さまたちには手を出さないって言ったじゃないか!」
「そうだな。が、おまえはこうして俺の言うことに逆らっている」
「で、でも……」
「でも、ではない。おまえが素直になれば弥勒も助かる。だが、そうして反抗するなら、とも
に殺してやろうと言うだけのことだ」
「ひ、卑怯者……」

珊瑚は正座した膝の上に置いた手を握りしめていた。
ぷるぷる震えたその手の痙攣が止まると、思い詰めた表情で奈落を見つめた。

「わ……わかったわ」
「どうわかったのだ」
「わ、私は……」

そこで一端言葉を止め、息を飲んだ。

「私は……な、奈落さまの女……です」
「それで? 弥勒の前で抱かれるのだな?」
「は、はい……」

* - * - * - * - * - *- * - *

弥勒は信じられない思いで、珊瑚の手が奈落の肉棒の亀頭から根元までしごいているのを見つ
めていた。
奈落の方を向いているため、珊瑚の表情はわからない。
だが、しごいている手には徐々に熱が籠もり、それに伴って、擦られている奈落の肉棒がぐん
ぐんと大きく膨らんでいた。
恋人の目前で、その女をいたぶるというシチュエーションに奈落も興奮するのか、いつもより
さらに早く充血していく。

「ひ……」

自分の手で大きくしたにも関わらず、珊瑚はそのそそり合ったものを見て腰を引いた。
腹につきそうなほどに反り返り、脈打っているのもわかるほどだ。
先走りの匂いが奈落の濃厚なセックスを思い起こさせ、珊瑚は生唾が湧いてくるのがわかる。
悲しみとあきらめの表情を浮かべながら、珊瑚はそれを口に含んでいった。

「んん……んふ……ん、んむ……」

唾液をまぶすように、舌で肉棒をねぶっていく。
唇を引き締めるようにしてペニスをしごき、顔を前後に動かす。
珊瑚の小さな口からはみ出てくる巨大なものは、唾液で艶々と光っていた。

「は、はむっ……ん、んんっ……じゅっ……んむ、んむ、うむっ……」

顔を振り、両頬の粘膜で肉棒の敏感な部分−亀頭部を擦りつけて刺激を与える。
カリの部分を唇でくわえ、強く吸い取るようなこともした。
先に溜まったカウパーを吸い上げ、それを飲み込むと、珊瑚はその男臭さで頭がくらくらして
くる。
同時にその行為は、奈落にも強い快感を与えており、あの我慢強い男が、喉の奥で唸っていた。

「んっ……おっ……く……」

珊瑚も、奇妙な感覚に囚われていた。
後ろで弥勒が見ているという羞恥と背徳感、自分から口唇奉仕しなければならぬという屈辱。
そして、いつもは奈落に責められる一方なのに、今度は自分が主導権を握って、口で奈落を責め
ているという倒錯感。
しかも、珊瑚の責めによって奈落が快感で呻いているのだ。
少女は、攻守逆転して奈落を追い込んでいるという優越感すら得ていた。

奈落も負けてはいない。自失しそうになるところをすんでの所で堪え、一転、攻勢に出た。
腰を突きだし、果敢に珊瑚の口を責め始めたのだ。

「んぐうっ!? ……むっ……んむうっ……むむ……」

珊瑚の表情が歪む。
奈落の肉棒が咥内で暴れ始めたのだ。
肉棒が、珊瑚の上顎の粘膜部分を擦るように責め上げた。
ここは珊瑚の弱点のひとつであり、口づけでも、ここを舌で強く擦られると、それだけで頭が
痺れてくるほどだ。
それを知り尽くしている奈落は、意識的にカリでそこを抉ってくる。
それだけでなく、一気に腰を送って、先端を喉奥まで突っ込ませた。
吐き気を伴った不快感とともに、奈落の好きにされているという被虐感も甦り、珊瑚を再び
受け身にさせていった。
一層高まる精臭に誘われ、咥内のペニスを一度外に出し、改めて眺めた。

(す、すごい……こんなにおっきいの……)

奈落が催促するように頭を押さえると、言われるまでもなく口に含んだ。
珊瑚の視界から弥勒は消えた。
今はもう、奈落の男根しか見えなかった。

熱い舌でねっとりとねぶり、全体を包み込むように愛撫していく。
喉の奥まで入れられても、もう顔もしかめず受け入れていた。
深く入れられることで「犯されている」という実感を得ているのだ。
珊瑚の行為に熱が入り出すと、奈落も余裕がなくなってくる。
珊瑚の舌が這い回る感触や、喉深くまで挿入された亀頭部が粘膜に圧迫される感触がたまらず、
腰がぐいぐい動いてしまう。
そして珊瑚の白い喉が、とろとろと零れるカウパーを盛んに飲み下して蠢く様は、妖艶さすら
漂っていた。

「さ、珊瑚、もう……」

奈落にとっては思いも寄らぬことだったが、早くも射精感がこみ上げてきた。
それを知ってか知らずか、珊瑚はカリ裏を舌で擦り、男の敏感な性感を煽っていた。

「んん、んんっ、んぐ、ぐうっ……むっ……じゅじゅっ……じゅっ……むうっ……」

珊瑚の口の動きが忙しくなってきた。
盛んに唇を狭めて奈落のものを締め上げ、素早い上下運動でさらなる快楽を送り込む。
そして、先っちょの尿道口を舌で割るように抉り、亀頭全体を舌で覆い込むようにねぶると、
奈落が泣きそうな声になった。

「く……珊瑚っ」

珊瑚の舌先に、また変わった味が感じられた。
もし咥内に目があれば、奈落のものの先から零れるカウパー液に、白く濁った粘い汁が混じって
きたのがわかっただろう。

奈落はガクガクと腰を使ってきた。
珊瑚の口いっぱいに頬張られている男根は、ビクビクと痙攣し、亀頭がいちだんと膨れあが
っていた。
珊瑚にはわかる。
奈落はもう出したがっているのだ。

口に出され、飲まされることを覚悟して、少女は憑かれたようにペニスをしゃぶった。
男根の硬度、熱、そして奈落の我慢の臨界点が突破された。

「くぉっ!」

奈落の悲鳴とともに、咥内射精に備えていた珊瑚は目を閉じた。
しかし次の瞬間、奈落は珊瑚の顔を腰から引き離したのだ。
驚く珊瑚の美貌に、奈落は思い切り射精してのけた。

「ぷあっ……あ、ああ……」

汚液は両目の間付近に直撃し、どろどろした粘液が小鼻の両脇を通って、形の良い顎にまで
伝わっていった。
粘度が高かったが、ぼとりぼとりと顎から畳に精液が滴る。
呆然としている珊瑚の後頭部に手を回し、奈落は男根をその美貌に押しつけていた。先から
まだドクドクと噴き出す精液を、珊瑚の顔に直接塗りつけていたのだ。
そうすることによって、珊瑚を汚したということを弥勒に誇示しているのである。

「こんな……ひどい、顔にかけるなんて……ああ……」
「なんだ、いつものように飲まされたかったのか?」
「……」

奈落は「いつものように」を強調して珊瑚を言葉で責めた。
ふと弥勒の方へ目をやると、両肩をぶるぶる震わせて奈落を睨み殺さんばかりの表情で見ていた。
奈落は、まだ液の滴る男根をブラブラさせたまま法師に言った。

「どうした、その顔は。うらやましいのか? おまえも珊瑚にくわえさせたいか」
「……」
「そら、この珊瑚の顔を見てみろ。俺の精で汚されてザマはない」
「きっさまあ……」
「いきがるんじゃないよ。またぞろここが元気になってるじゃないか」

普段はいがみ合ってばかりいる奈落と神楽だが、こういう時は絶妙のタイミングでふたりを責め
ていた。
神楽の細腕は、またしても弥勒の肉棒をさすりだしている。

「よせっ! やめろ、このズベ公! 離せ!」

神楽に嬲られる弥勒を横目にしながら、奈落は珊瑚を四つん這いにさせた。
今度は弥勒に対し、横向きになっている。
その尻を高く掲げさせ、奈落は手を忍ばせた。

「ああ……」

珊瑚は尻の間に半妖の熱い手を感じ、呻いた。
今度は弥勒の前で尻責めをされるのだ。
叫び出したいくらいイヤだし、死んでもいいから突き飛ばして逃げたいくらいだが、それを
やったら、弥勒は神楽に殺される。
ただそのことのみで、珊瑚は発狂しそうな恥辱に耐えていた。

食い入るような目で珊瑚を見ざるを得ない弥勒、そしてその前で嬲られ、いかされる運命の珊瑚。
両者の地獄を愉しむように、奈落は少女の瑞々しい裸身に手を這わせる。
犬の姿勢で高く尻を上げさせ、揺れる重そうな乳房を両手で揉み込んだ。
すくい上げるように揉み絞ると、既に乳首は硬くなっている。

「なんだ、もう乳首が硬いぞ。口で感じていたのか?」
「そんな、違う……あっ……」

柔らかい胸肉が充実したしこりが出てくるまで揉みほぐすと、奈落は尻に目をやった。
見事に張った尻たぶに、ペタンと手をつけ撫で回す。
そしておもむろに尻たぶを掴むと、いきなり大きく割った。
咄嗟に珊瑚は叫ぶ。

「ああ、だめっ……」
「だめ?」
「あ……だ、だめじゃありません……」

「だめ」とは言えないのだ。
珊瑚の方が積極的に奈落を受け入れねば、弥勒だけでなく仲間を鏖殺しにされる。
奈落は口の端で嘲笑しながら言った。

「なんだ、もうオマンコもすっかり濡れているな」
「いや!」
「くく、尻の穴も俺を欲しがってるみたいにヒクついてるぞ」
「違うの、言わないで!」

黙れ、とでも言うように、奈落の指がアヌスへ走る。
くすぐるように指で肛門を軽く擦ると、珊瑚の尻がビクッと持ち上がった。
指が離れると、恥ずかしそうに下へ下がる。
また指が肛門をいじると、ピクッと痙攣してまた持ち上がる。
それを数回繰り返すと、今度は中指をアナルに侵入させた。

「あううっ……や、は、入る、指が! ああ……」

奈落は指を深くまで挿入するだけでなく、鉤状に曲げて腸襞をさすったり、クルクルと回転させ
て肛門粘膜を捲り上げたりして、珊瑚の悲鳴と呻きを誘った。

「んくっ……はっ……あうっ……はああっ……」

奈落の指の動きに合わせ、珊瑚の尻が面白いように動いた。
指先が腸の襞を擦るごとに、白い背を仰け反らせて珊瑚は呻き、膣からは恥ずかしい汁を零し
続けた。

「あう……」

ぬっぽん、とユーモラスな音を立てて指が抜かれると、珊瑚はビクンと腰を揺すって顔をうつ
ぶせた。
汗にまみれた尻を奈落の手が撫で回し、その肉を掴むと谷間がなくなるほどに割り開いた。
蜜に濡れた媚肉も、腸液が滲んでいる肛門もすべて剥き出しになった。
奈落は躊躇いなく、そこに灼熱の肉棒を押し当てた。

「ああっ!?」

弥勒が見ているというのに、恥ずかしいところを犯される。脅迫されていたことも忘れ、珊瑚は
必死に尻を振って喚いた。

「だめ、絶対だめっ……ああ、そんなやめて……す、するなら前でして!」

奈落は何も言わず、珊瑚の耳元に口を近づけた。
何事か囁かれると、少女は「そんな……」とつぶやき、一瞬だけ弥勒を見た。
彼は神楽にペニスを弄ばされ、顔を伏せていた。
股間にはすっかり硬くなった肉棒がビクビクと痙攣していた。
珊瑚は血を吐く思いで小さく言った。

「あ……ああ、お願いです……」
「なんだ、言ってみろ」

奈落が肉棒の先で珊瑚のアヌスをこねながら聞いた。

「わ、私の……お尻……」
「……」
「私のお尻の……穴を、犯して、く、ください……」
「珊瑚……」

それを耳にした弥勒が仰天した。
そして、陰部を愛撫してくる神楽を無視して恋人に呼びかけた。

「珊瑚、珊瑚! し、しっかりしなさい!」
「ほ、法師さま……」
「気を強く持つのです! こんなことに負けてはなりません!」

奈落はまた少女の耳元で囁いた。
目を固くつむって聞いていた珊瑚は弥勒から顔を背け、また言った。

「どうぞ、あなたの……大きい、ち、チンポで……お尻の、ああ……お尻の穴を、犯して……」
「そんなに俺に犯して欲しいか」
「は、はい……奈落さまの大きいのが、いいんです……」
「そうか。おまえに尻を犯されることを教えてくれたのは誰だ?」
「な、奈落さまです……」

珊瑚は肩を震わせながら喋っていた。
伏せている顔は涙で濡れているに違いない。
弥勒は縛られた縄を引きちぎろうと両手に力を込めたが、手首に擦り傷を作っただけだった。

「奈落、きさまっ! こ、殺してやる、絶対に殺してやるぞ、奈落!!」
「そう「殺す殺す」と喚くな法師。そのうち珊瑚が、あんまり気持ちがよくて「死ぬ」とか
「殺してっ」とか言うようになる」
「クソ野郎! 八つ裂きにしてくれるぞ!!」

弥勒の絶叫を聞きながら、奈落は珊瑚の肛門に肉棒を押し込んでいった。
何度も太いものを挿入されていたそこは、驚くほどすんなりとペニスを飲み込み、直腸の中へ
埋め込まれていった。

「ああっ、入って、くる! あ、あ、だめ……んくうう……あ、あう、太い……」
「そら根元まで入ったぞ。奥まで入れられるのが好きなんだろう、珊瑚は」
「そんな、あうう……」

とうとう弥勒の前で肛門まで犯されてしまったというショックは大きかったが、意志とは無関係
に肛門は飲み込んだものを締め上げていた。
括約筋の絞りを心地よく感じながら、奈落はゆっくりと突き上げてきた。

「やぁっ……うんっ……はうっ……あっ……んああっ……」

奈落は珊瑚の締まった腰を両手でしっかり掴むと、大きく揺さぶって奥深くまで貫き、ペニス
の長さをいっぱいに使って律動した。
肛門性交に慣らされたアヌスは、奈落が突き込んでくると緩み、引き抜くと締め上げるリズム
を自然と身につけていた。
根元を締めつける収縮を受けながら腰を密着させ、グリグリとアヌスを抉ると、珊瑚は腰を揺さ
ぶって応えてきた。
背中に覆い被さって腰を押しつけ、両手を伸ばして乳を揉んでいると、珊瑚の呻きは早くも喘ぎ
に代わり、どうしようもなくこみ上げてくる快楽にとろけ出しているようだった。

「ああっ……き、きつ……ああ……くはっ……」
「きつい? こんなに勢いよく動けるのにきついはずないだろう」
「で、でも、きつくて、ああっ……ん、んん、あ、ああっ……」

ぴったりと肉棒に絡みついている腸粘膜を引きずり出し、そのめくれた襞をまた押し戻すよう
にねじ込んでいく。
そろそろ珊瑚の方も、アナルを犯される快感に囚われてきたらしく、奈落のピストンに合わせて
尻を突きだし、また引いていく。
にちゃにちゃと淫らに腸液を鳴らしながら太いものが抜き差しされると、そのたびに粘液が掻き
出されてきた。

「あ、ああ……こ、こんな……あっ……」

珊瑚の恥辱や羞恥が、見られる快楽や虐められる悦楽に浸り始める。
その変化に戸惑う暇もなく、紅を引いていない健康的な唇はこみ上げる喘ぎを噛み殺していた。
尻たぶが押し潰れるほどに強く突かれると、珊瑚の黒髪がおどろに乱れる。
奥まで突き入れられると息が止まり、抜かれると吐息が出る。
呼吸まで奈落の責めに合わされていた。

「ああ……ああっ……」

奈落は珊瑚の変化を読み取る。
腸襞が盛んにペニスを締めつける蠢動を始めている。
絞りだそうとしているのだろう。

「いきたいか。かまわん、いくがいい」
「やあ……法師さまの前で、あっ……そんなあっ……」
「……」

恋人と敵が繰り広げる痴態を、弥勒は声もなく見つめていた。
珊瑚の表情が苦悶に歪んでいるのは、尻を突き刺される苦痛のせいではないだろう。
突き込まれると飛び散る玉のような汗や、とろけてしまいそうな熱い喘ぎ声を聞けば、疼く
ような快感のためだということは彼にもわかった。
肉棒をくわえた肛門はキュンキュンと締まり、尻はぶるぶると震えが止まらない。
珊瑚がたまりかねたように叫んだ。

「も、もうだめぇ……あ、あ、ど、どうしよう……い、いきそう……」
「よし、いけ」
「あああっ……ああ、あっ、い、いく……いっくっ……!!」

けだもののような声を上げ、少女は激しく絶頂に達した。
それに合わせて、奈落も腸の奥深くに精液を放っていた。

「んあああっ……あ、出て……る……ああ……」

奈落がビュクビュクと射精すると、それに合わせて珊瑚のアヌスが締まる。
発作が収まるまで腰を突き上げていた奈落は、全部出し切るとようやく珊瑚から離れた。
まだ硬く勃起したままのペニスを抜かれると、まるで芯棒を抜かれたかのように珊瑚は崩折れた。
まだ奈落の肉棒の太さのまま口を開けている肛門は、精液と腸液の混じった淫液をコポコポと
吐き出していた。
奈落は珊瑚の顎を掴み、その呆けた表情をわざと弥勒に向けた。

「どうした、そんなによかったのか」
「……」
「いつもよりずっといくのが早かったな。弥勒に見られて犯られるのがよかったのだな」
「言わないで……」

「くくく」と喉で嗤い、奈落は珊瑚にその股間を晒した。
まだギンギンに立っている。
珊瑚は息を飲んだ。

「ま、まだするの……」
「そうだ。珊瑚もオマンコにされたいだろう」
「……はい、されたいです……」

もう弥勒の顔を見ることも出来なかった。
奈落の言いなりになっていた。
奈落に尻を叩かれると四つん這いになった。
その様子を見ていた弥勒は打ちのめされた。
すっかり珊瑚は奈落に仕込まれているように見えた。

奈落が脇腹のあたりを平手で叩くと方向を変え、頭を弥勒の方へ向けた。
まともに見られないと思っているのか、顔を横向きに伏せ、項垂れている。
長い髪が表情を隠していた。
男が覆い被さってきた。
奈落のたくましい胸板と腹筋が背中に触れると、もうそれだけで珊瑚はゾクゾクするような期待
感があった。
もう弥勒との関係はどうにもならないだろうという自虐的な思いと絶望感が、彼女を倒錯的な
セックスへの逃避に向けさせていた。
いつもの、乳房を握りつぶすようなきつい愛撫が加えられると、珊瑚は上気した顔で甘い喘ぎ
声を洩らし始めていた。

「あ、うん……あっ……っ……ああ……」

珊瑚のよがり声に促されるように、奈落は硬度を保ったままのペニスを媚肉に挿入した。
アヌスに入れられた時とはまた違う圧迫感と充実感に、珊瑚は腰を揺すって喘いだ。

「あ、んんっ……あうう、奥まで……あっ……奥に当たるっ……」

待ちかねていたかのように、珊瑚のそこは奈落のものを飲み込んだ。
最奥まで貫かれると、少女は全身を突っ張らせるようにして、その快楽を受け止めた。
奈落は肉棒の先で珊瑚の子宮を確認すると、一度引き戻し、また深くまで押し込んでやった。
アヌスほどではないが、充分に狭くてきつい珊瑚の膣は、挿入しただけで得も言われぬ快感を
男に与える。
それでいて蜜は充分だから、突き込むとぬるぬるした刺激でたちまち射精したくなるほどだ。

「ふああっ……あ、あう……あううっ……」
「どうだ、やっぱりオマンコがいいのだろう。もっと深くまで入れて欲しいか?」
「う、動かないで! ああ、そんなに深く入れたら……ああ、激しいっ……」
「その激しいのが好きなんだろう、珊瑚は。オマンコがめくれるくらい強くされたいと言って
いたろうが」
「うそっ! ああ、そんなのウソよ……ああ、もういやあ……法師さま、法師さまっ……」

珊瑚は泣きながら叫んだが弥勒の声はなかった。
珊瑚の方も、奈落に打ち込まれるごとに頭がぼやけてきた。
凄惨な凌辱を受け続けた珊瑚は、忌まわしいことに身体が奈落のセックスを求めるようになって
しまっていた。
腰が砕け、骨が軋むほどの激しい行為や、気死しそうになるくらいの恥ずかしい責めが少女の
肉体を蝕んでいたのである。
奈落の期待以上に、珊瑚の身体は淫らな肉傀儡になっていた。

奈落に引っ掛けられた精液がまだ乾き切らぬ美貌は、見る間に快楽で苦悶していく。
奈落の腰の動きは激しかった。
零れる蜜で濡れそぼっている媚肉は、奈落が打ち込んでくると、愛液と汗の水音が果てること
なく響いていた。
奥まで入れて先で子宮口を擦ってやると、たまらないと言わんばかりに尻を振ってきた。
珊瑚の強い収縮に我を忘れそうになりながら、奈落は弥勒に聞こえるように言った。

「珊瑚どうだ。深いのがいいだろう」

珊瑚に拒否権はない。
なるべく弥勒の顔を見ないようにして答えた。

「は、はい……ああっ」
「俺のものはどうだ。奥まで届いているだろう?」
「ああ、はいっ……い、いちばん奥まで、ああっ……と、届いてる……くああ……お、おっき
いのが奥まで……」
「弥勒と比べてどうだ? どっちが大きい?」
「!!」

珊瑚の裸身がピクンと震え、それまで悩ましげにうねっていた肢体の動きが止まった。
せっつくように奈落が腰を突き上げると、「ひっ」と呻いて唇を噛んだ。

「言え」
「あ、あ……あ、あなたの方が……」
「……」
「奈落さまの方が……ああ、大きいです……」
「もっと言え」
「な、奈落さまの方が……法師さまのよりふ、太くて長い、です……ああっ、か、硬くてすごく
いい……」

満足げにうなずくと、奈落は攻撃を再開した。
珊瑚の尻を掴むと、ぐいぐいと挿入を続けた。
奥までぶちこむと肉棒を半分ほど引き抜き、まだ押し込んで子宮を小突いてやる。
珊瑚はペニスに操られ、奈落が打ち込むと腰を突きだし、抜くと腰を引いて挿入感をより深く
味わっていた。
いきり立った肉棒で思う存分媚肉を蹂躙されていると、珊瑚の性感はジャッキで引き上げら
れるように、少しずつ上昇していく。

「あ、ああ……あはあっ……」

珊瑚の声色がはっきりと変わった。

「ああ、もうだめっ……」

奈落の前後運動の速度が上がると、珊瑚の声が裏返った。

「あ、ああ、いいっ……」
「そんなにいいのか。なら、もっとよくしてやろう」
「いいっ……ああ、いいの……あう、深い、いいっ……」

深くまで突き上げて子宮をいびり、子宮をたっぷり擦り上げてから引き戻す。
戻される時には、カリが思い切り襞を抉っていって、それもまた珊瑚に突き抜けるほどの悦楽を
流し込んだ。
奈落は珊瑚のことなど考えず、無慈悲なまでに膣を引っかき回しているのだが、それすら彼女に
は至上の愉悦となってよがり続けた。

突き上げられると珊瑚の腰は跳ね上がり、出入りしている肉棒からはまとわりついた蜜が撒き
散らされている。
大きく突かれると、乳房が取れそうなくらいに揺れ動く。
奈落は腰をがっちり固定して突き上げているため、胸への愛撫がない。
それが不満なのか、珊瑚はとうとう自分の手で豊かな乳房を揉みしだき始めていた。
快楽に喘ぎながらも、珊瑚には奈落の逸物の変化がわかった。
ぐぐっと一回り大きくなり、ビクビクと不規則に痙攣している。
射精が近いのだ。
珊瑚は、まるで射精を促すかのように腰を大きくうねらせ、膣の締めつけも強くしていた。
そうすることが、自分の絶頂への近道であることを知っていた。

「珊瑚の具合がいいもんだから、もう出てしまいそうだぞ」
「ひっ……」

珊瑚は喉を鳴らして振り向いた。

「だめ……な、中は堪忍して……ああ、中だけは……あ」

少女は、冷たく光る奈落の視線に気づき、ガクリと肩を落とした。
そして、震える声で言い直した。

「中に……だ、出してください……」
「ほう、いいのか? 珊瑚の子壷に出しても」
「出して……」

そこでまた奈落は珊瑚に小声で何事か言った。
少女は「ああ……」と悲しげな声を洩らす。
弥勒もぼんやりとした目でそれを見ていた。
珊瑚が何事か強要されて言わされているのは明白だったが、それすらどうでもいいような顔つき
だった。

「奈落さまの……熱いのが欲しい、です……」
「……」
「ああ……お、オマンコの、うんと深いところに……たっぷり出して欲しい……奈落さまの濃い
精が欲しい……です……」
「ふふ、そんなに出したら孕んでしまうぞ。それでいいのか」
「ああ、はい……。は、孕んでもいい……妊娠してもいいから、たくさん出して……」

(法師さま、ごめんなさい……。で、でも、こうしないと法師さまやかごめちゃんが……)

その間にも、奈落の肉棒は珊瑚の媚肉を激しく犯している。
珊瑚もより積極的に腰を動かし、奈落の性器を貪っていた。

「ああ、もうっ……いいっ……あ、あはあっ……あ、あうう、も、いく……ま、また、いっちゃ
うぅぅ……」

珊瑚の瞳には、いつもの落ち着いた色はなく、淫らにとろけきり恍惚とした色に染まっていた。
爛れるほどに貫かれている媚肉からは止めどなく愛液が漏れ、ぼたぼたと零れたそれは畳が吸い
きれず、とろりとした小さな水たまりを作っていた。
室内はむせかえるほど濃厚な女淫臭が漂い、異様な雰囲気になっている。
珊瑚の裸身からは、薄甘い少女の香りが消え、濃厚な牝香が漂っていた。

「くああ……い、いきそう……いっ、いやあ!」

弥勒の虚ろな目が珊瑚を凝視していた。
それに気づいた少女は泣き叫んで首を振りたくった。
恋人の前で犯され、膣に射精され、挙げ句に激しくいかされる。
それだけはいやだと気力を振り絞ろうとするのだが、奈落の責めがそれを許さなかった。

「あ、もうホントにだめっ……い、いく……いかせて、お願いっ……」

本当にもう限界らしく、珊瑚は身を揉んで泣き悶えた。
断続的に締め上げてくる膣の収縮もきつくなる一方だ。
そこを狙い澄ましたように奈落の一撃が子宮まで届くと、珊瑚は大きく仰け反った。
声を嗄らすほどに嬌声を上げていた珊瑚の裸身がぶるるっと大きく震えた。

「いひぃぃっ……い、いく……法師さま、ゆ、許して……う、うん……いく!!」

絶頂に達した瞬間、少女は裸身を突っ張らせてビクビクと痙攣した。
激しいほどのいきっぷりを確認してから、奈落はぐぐっと腰を珊瑚にくっつけた。
亀頭が、小さく開いた子宮口を確かめると、淫猥な欲望の白濁液を直接その中に吐き出した。

「うあああっ……ううんっ、で、出てる……い、いくっ」

何度も奈落に膣へ射精され、胎内射精による快感を覚え込んでしまった珊瑚は、熱い精液が膣の
襞に染み込むと、続けざまに気をやった。
奈落が、射精のたびに腰を送って、奥に精液を送り込むと、珊瑚もそのたびに身を突っ張らせて
いかされた。

「あ、あう……こんなにいっぱい……」

奈落は最後の一滴まで精液を注ぎ込むと、ようやく珊瑚の肢体から離れた。
何度となく気をやらされた珊瑚はそのまま倒れ込み、背中を激しく上下させて荒い呼吸を繰り
返していた。
いかに若いとはいえ、屈辱的な変態セックスを何度も挑まれ、精液を浴び続けた身体は疲れ切
っていた。
腰はまだ小さく痙攣し、手足の指を動かすのも億劫なほどだった。

「……珊瑚」
「あう……」

奈落は珊瑚の髪を掴んで引き起こした。
押し寄せる津波のような快楽と激しいセックスで疲労困憊している珊瑚だったが、彼は容赦な
かった。

「弥勒に……『前の男』に言いたいことがあるのだろう。言え」
「……」

その時、やっと珊瑚は弥勒を見た。
若い僧はすっかりうなだれ、うつむいていた。
正面からその顔を見られないと思っていた珊瑚だったが、もう一度だけでいいから彼の顔が
見たかった。

「ほ、法師……さま……」
「……」

弥勒は顔を畳に向けたまま一言も発しなかった。

「ごめんなさい……私、こんなに情けない女になってしまったの……」
「……」
「もう……法師さまやかごめちゃんと……一緒にいられるような女じゃないの」

うなだれていた弥勒は、その言葉を聞いた時だけピクリと肩を震わせた。
しかし、すぐにまた動かなくなった。

「だから……私のことは……忘れてください……」
「珊瑚……」

初めて弥勒が喋った。
消え入りそうな声だった。
その顔を間近に見た珊瑚の目の縁に、見る見る涙の大粒が膨らんでくる。

「私、もう帰れない……かごめちゃんにもそう言って……今まで、ありがとうって」

そこまで口にすると、珊瑚は突っ伏して泣いた。
神楽にさすられていたはずの弥勒の逸物は、力なく萎れていた。

* - * - * - * - * - *- * - *

約束通り、弥勒はその日のうちに解放されたらしい。
もちろん、だからと言って、これからも弥勒や犬夜叉たちが襲われないとは限らない。
だが、珊瑚の力が及ぶのはここまでだったし、もう珊瑚の手は彼らには届かない。
あとは彼らの才覚に期待し、無事を祈ることしか出来なかった。

翌日、虚ろなまま日を送っていた珊瑚のもとに、小さな来訪者があった。
音もなく障子を開けたそこに、小さな女の子が立っていた。

「……あなた……確か、神無……」
「……」

肌から着物、そして髪まで、全身白ずくめの幼女は部屋に入ると、外に顔を出して辺りを窺った。
周囲に人の気配がないことを確かめると、後ろ手で障子戸を閉める。

珍しいことである。
珊瑚の部屋に神無が訪れたのは初めてだ。
というより、珊瑚はまだこの子とまともに言葉を交わしたことすらないのだ。
ここに来るのは、奈落を除けば神楽だけである。
奈落は珊瑚を凌辱するために来るのだし、神楽は奈落の指令を伝えるためと、珊瑚を苛めるため
にやってきた。

何の用だろうと思っていると、神無は顔を背けたまま口早に言った。

「あなた、ここから逃げたくないの?」
「……え?」

言っていることがよくわからなかった。

「ここにいるということは、奈落に使われるということよ。あなた、それでいいの?」
「……」

よくはないが、今のところどうにもならないだけだ。

「それとも……」

幼女の目が刺すように光った。

「あなたホントに奈落に……」
「違うわ、やめて」

奈落の虜となり、籠絡され、傅く性奴になったのか、と聞いているのだろう。
犯されている時はともかく、普段はそんなことを考えるだけでおぞましかった。

「じゃあ逃げる気はあるのね?」
「……逃げたいけど、でも……」
「それならお逃げ」
「え……」
「奈落は出かけているわ。結界も外しておいた。今なら逃げられる」
「……」

今まで神無はここに来なかった。
珊瑚は、神無が自分に関心を持っていないのだろうと判断していた。
それがどうした心境の変化だろうか。

珊瑚は知らなかったが、神無は珊瑚に対してかなり複雑な心情を持っている。
神楽に、珊瑚が奈落の閨に引き込まれていると聞かされて以来、居ても立ってもいられないのだ。
珊瑚が目障りだった。
この子は、珊瑚を殺すこと自体は何とも思っていない。
奈落が何も言わなければ、この場で殺しているだろう。
ただ、そんなことをすればどうなるか、ということもよくわかっていた。
それは神楽も同様だろう。

だから逃がすことにした。
正確には、「逃げたのに気づかなかった」とするのである。

「早く」
「……」

珊瑚は、よくわからないまま部屋を出た。
珊瑚が出ていくと、入れ替わりに神楽が入ってきた。

「神楽……」
「逃がしたのかい?」
「……奈落に言いつけるつもり?」
「いや」

珊瑚が消えることは、神楽にとっても願ったり叶ったりである。
彼女が逃げ帰るということは、犬夜叉たちを潰すのに時間と手間がかかるということだ。
神楽は奈落を信用していない。
犬夜叉どもが片づけば、「用なし」として神楽らを粛清しかねないと思っているのだ。
野に獲物を残すことにより、野犬は生き延びることが出来るというわけだ。
神楽は神無を見、そして逃げた珊瑚の方を見ながら「ふん」と鼻を鳴らした。

珊瑚は、何度も「罠」ではないかと思って警戒したが、まったく何事もなく城を出られた。
後ろを振り返りつつ、周囲に刺客が隠れていないか気を配りながら、城下を抜けていった。
そして人見城が視界から見えなくなるところまで逃げ、ようやく一息ついた。
小高い峠へ出て、少し大きめの石に腰を下ろすと、ぽつんとつぶやいた。

「どうすればいいの……」

逃げては来たが、これからどうすればいいのかわからなかった。
あの時、弥勒の前で言わされた台詞は、無論、奈落に強要されたものではあったが、もう二度
とかごめたちの元へは戻れないというのは事実だった。
かごめや犬夜叉、そして弥勒にどんな顔をすればいいのか。
今まであれだけ弥勒のふしだらさを糾弾していた珊瑚が、その弥勒の前で犯され、淫らに反応
し、気をやるところをイヤと言うほど晒してしまったのだ。
元の関係に戻るはずがなかった。
珊瑚は立ち上がり、お尻の埃を払うと、小さくため息をついた。

「……帰れるわけないじゃない」

そして、かごめたちの待つ村とは反対の方角へ踵を返して行った。




    『空行く雲の如く、川流るる水の如し』 第五話「珊瑚艶情曼陀羅・後編」 完



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