神楽と五平−琥珀は並んで歩いている。
珊瑚の調教部屋に向かっているのだ。
昨日の肛門責めは酸鼻を極めたが、だからと言って休ませるほどこのふたりは甘く
ない。
むしろ、身体がほぐれている今こそ好機と思っている節すらある。

ガラッと襖を開けると、生け贄の美少女は哀れにも昨日の状態で縛られたまま放
って置かれていた。
眠るにはかなり無理な姿勢であるが、それでも珊瑚は何とか順応して眠っていた。
というより、あまりの激しい責めで身体がまいってしまい、否も応なく意識を失っ
てしまったというのが正しいだろう。

過労で軽くいびきすらかいて熟睡していた少女を、蹴飛ばして起こしたのは神楽で
ある。

「……あっ」
「よく寝てたねぇ。もう朝だよ」

確かに朝ではあったが、珊瑚は昨夜遅くまで責め抜かれていたのだ。
睡眠時間は二刻半といったところである。
もちろん琥珀とて同じだが、責める側と責められる側では疲労の度合いは段違いだ。

「さっさと起きなよ、姉者」
「あっ」

五平−琥珀は言うが早いか、いきなり縄で縛り始めた。
まだ肉体的にも精神的にも疲れが取れず、ろくに抗えない珊瑚に縄をかけ、ひしひし
と巻き上げていく。

あっという間に後ろ手縛りされ、胸のふくらみの上下にも縄をかけられる。
括り出された乳房は張りつめ、乳輪に埋め込まれるようだった乳首も顔を出していた。
その縄尻は天井で吊られている。

さらに下半身は片足吊りにされている。
これは右脚(左脚でも良いが)の膝に縄を巻かれ、思い切り上へ持ち上げられる縛技だ。
珊瑚の右脚は、腿が胸につくほどに吊られ、左脚一本で何とかバランスを取っている。
その左脚の踵は完全に宙に浮いており、微妙な平衡感覚を取るのが難しい状態だ。

姿勢の不安定さに怯え、珊瑚が呻く。

「ああ……」

そんな珊瑚を見、琥珀はにやにやして言った。

「怖がらなくていいよ。俺が支えてやるからさ」
「……」

五平−琥珀の手際の良さに見とれていた神楽は、ぺたりと腰を下ろすと彼に声を掛けた。

「じゃあ」
「おう」

神楽はそこで見物しているということだろうか。

琥珀は貝殻の薬入れを開けると、塗り媚薬を指に取り、珊瑚の股間に塗布し始めた。

「いや……」

珊瑚は哀しげに顔を振って抗うが、最初の頃のような弾けんばかりの暴れっぷりは
見られない。
もうすっかり諦めてしまったのか、それとも責めを身体が欲しているのか。
珊瑚にも自信がなくなってきていた。

琥珀は念入りに女の部分に塗り込んだ。
あれほど責められたのが嘘のように、ぴったりと閉じていた割れ目を強引に押し
開き、その襞や膣口にたっぷりと塗る。
秘肉の頂点にある肉芽にも塗ってやった。
意識して乳房や肛門には塗らなかった。

塗り終えていくらもしないうちに、珊瑚がもじもじし始める。
顔を赤らめ、美しい額には汗が浮いていた。

「あ……」

珊瑚は口を割った。
神楽の特製媚薬は即効性だ。
媚肉はもうすっかり濡れそぼち、内腿を伝って垂れてきている。
割れ目の襞はざわざわと蠢き、盛んに何かをくわえたがっていた。

「姉者、欲しいだろ?」

琥珀がそう言って、自分の股間を露わにした。

「!……」

琥珀が誇示しているそれは、腹にくっつきそうなくらいに勃起し、その先端からは
先走り汁が零れている。
珊瑚は顔を背けて目をつむった。
目をつむったのだが、閉じた瞼の裏に琥珀のたくましい男根が映っている。
隆々とそびえ立ち、どきどきと脈打ってさえいる。
太い血管が浮き出ている様は力強さを感じた。

「……」

珊瑚は自分でも気づかぬうちに目を開け、顔を琥珀の肉棒に向けている。
ハッと気づいて、また固く目を閉じるのだが、いつのまにかそれを凝視してしまう。
いつしか珊瑚は、琥珀の晒している肉の凶器から視線を外せなくなっていた。
神楽がそれを見て嗤っている。

「あははは。珊瑚、あんたも本物の淫乱になったんだねぇ。そんな物欲しそうな目で
弟のチンポを見るなんてさ」
「……」
「しかしあんたも波瀾万丈だねぇ。女のあたしに可愛がられ、猩の半妖に嬲られ、
蛇の妖怪に責められて、終いには人間の男、それも弟に犯されてさ。これで今度は
獣に犯られれば、一通り経験することになるんだねぇ」

神楽の、珊瑚の恥部や心傷を抉るような嘲笑に対し、珊瑚は気力を振り絞って神楽を
睨みつけてやるが、長続きしない。
どうしても琥珀へと目が流れてしまう。

塗られた媚薬が効果を発揮し、膣周辺は燃えるような熱を持ち、むず痒く、何かで
思い切り擦り、抉ってもらわねばどうにかなってしまいそうだ。

「欲しいならそう言いな。琥珀が優しく犯してくれるさ」
「そうだよ、姉者。遠慮することはない。姉弟じゃないか」
「……」

五平−琥珀は、ことさら血のつながりを強調して珊瑚の恥辱を煽る。
それでも珊瑚は、そのあさましい欲望に耐えきれなかった。

「……お願い…」

消え入るような小さな声で珊瑚が言った。
神楽が、縛られてゆらゆら揺れている珊瑚を見上げて訊いた。

「ん? 何だって?」
「だ、抱いて……」
「はっきり大きな声で言いなよ」
「抱いて……」
「気取るんじゃないよ、淫乱娘が。何が「抱いて」だ。はっきり「犯して」と言う
んだよ」
「……」

琥珀は追い打ちをかけるように、自分の肉棒をぶるんぶるんと揺すって見せた。
珊瑚は、琥珀がもっと幼かった頃、おしっこをさせてやったこともある。
あの頃は、まさに「おちんちん」という愛称にふさわしく、可愛らしいものだった。
それとは比較にならぬ、禍々しいほどの凶器が目の前にあった。
太い竿と大きな亀頭部が目に入り、珊瑚はツバを飲み込んだ。

「……お…犯して……」
「なに?」
「お、犯して…ください……」
「実の弟に犯されたいってのかい」
「……」
「どうなんだい!」
「ああ……。そう…そうよ……もう……もう我慢できないの……犯して……好きに
して…」

神楽は琥珀の方を見てうなずいた。

「だってさ、琥珀。やってやんな」
「よぉし」

五平−琥珀は相好を崩して珊瑚にまとわりついた。
吊り上げられた女らしい太腿を左手で抱え、右手で珊瑚の腰を抱き寄せた。
太い肉棒が珊瑚の華奢な媚肉に添えられる。
珊瑚は、その熱さに目眩さえ覚えた。

「ああ…」

ぐっと押し込まれると、精一杯という風に膣が拡げられ亀頭部が入り込んだ。
そのめり込むような感覚に、珊瑚はぶるるっと軽く震えた。
琥珀はそのまま腰を押すと、ずるっと奥まで侵入する。
珊瑚は目をつむり、唇を噛みしめて耐えるが、かえって神経が媚肉に集中してしまう。

「あらあ、見事に入ったねぇ、あんなに太いのが」
「言わないで……」

琥珀は腰を捻って、ねじ込むように根元まで刺し貫いた。
その威力に珊瑚は思わず仰け反る。

「へぇぇ、根元まで入ったよ。奥まで開発されたんだねぇ、あんた。おやおや、
あんなに助平汁が出て…」
「いや、言わないで!」
「恥ずかしいのかい」
「……」
「だったら自分で言うんだね」
「え……」
「だから、あたしに言われるのが厭なら自分で言いなってことさ」

五平−琥珀もさすがに苦笑する。
この女−神楽の趣味の悪さは天下一品だ。
無理矢理犯されている女に、自分がされていることを口にさせようというのか。

まあいい、それも余興としては面白いかも知れないと琥珀は思った。

「さ」
「……」
「今はどんなだい?」
「どんなって……」
「どんな感じか言うんだよ。自分の身体がどうなってるのかも言いな」
「……」
「言わないならあたしが……」
「言う……言う…わ……」

自分の淫らな様子を、神楽にいやらしく言われるのはたまらない。
それなら……と珊瑚は諦めた。

自分で言わなくてはならない状態よりは、他人に言われる方が気が楽なように思え
るが、珊瑚にとって神楽に揶揄されることだけは我慢がならなかったのであろう。

「……」

神楽の目は冷たく、「早く言え」と言っている。
琥珀の方は、珊瑚の膣へ挿送を始めていた。

「ああっ……」

もどかしい刺激から逃れ、やっと入れてもらったという充実感。
痒みを鎮めてもらった心地よさに浸る暇もなく、今度は腹の底に響くような愉悦が
襲ってくる。

感じる。
どんなに厭だと思っても感じてしまう。

「ほれ」

神楽が促しても、珊瑚は何をどう言えばいいのかわからない。
仕方がないのという顔をして、神楽は誘導してやることにした。

「あんたのオマンコは今どうなってんだい?」
「ああ……すごく…すごい……濡れてて…」
「どんな風に?」
「ぐ…ぐちょぐちょに……」

神楽はけらけらと嗤い出した。
ひとしきり嗤って、ようやく笑いを収めた。

「ああ……ああ、おかしい。ああ、ごめんよ笑ったりしてさ。でも、あんたが
ねぇ…」

そう言うとまた嗤う。
そしてまた珊瑚を煽った。

「じゃあねぇ、琥珀のチンポはどうだい?」

珊瑚はそれこそ顔を真っ赤に染めたが、顔を伏せて言葉を発した。

「……ふ、太くて……熱い…わ……か、硬くて、どうにかなりそう……」

琥珀はずんずんと力強い攻撃を加えた。
腰に回した手を思い切り引き寄せ、奥を先っぽで擦りつける。

「ああう……あう……」

膝を抱えている左手で、揺れる乳房を掴み、揉み込んだ。
そこからも、きゅーんとした快感が走り抜ける。
珊瑚は、神楽に促されることなく己の痴態を表現し続けた。

「長くて……ああっ……奥まで、届いてる……すごい、おっきい……く、苦しい
くらいに……」
「その大きいので抉られるとどうなるんだい?」
「あうう……た、たまんないの……」
「どこが」
「あ、あそこ……」
「あそこじゃわかんないだろ。オマンコって言いな」
「…お、オマンコ…が…たまんない……すごく、じんじんしてる……ああっ…」

もはや淫語垂れ流し状態になる。

「あ……くはあっ……あ、いい……オマンコ、いいっ……」

「うんっ……ふ、深くて……子壷に当たってるっ……こ、琥珀のおちんちんが当た
ってるぅ…」

「お、おっぱいもすごいっ……痺れるみたいに…気持ちいいっ……ああ、乳首が…
乳首が……」

「き、気持ちいい……気持ちいいっ……ああう、変になる……どうにかなっちゃう
うう……」

「琥珀のおっきいので抉られると……ああ、オマンコ熱くなるぅ……ああ、奥に
当たる、擦れるぅ…」

琥珀の長大な肉棒が珊瑚の膣を抉り、出入りすると愛液が飛沫出る。
珊瑚も自ら腰を使い、琥珀の腰に合わせて動かしている。

琥珀は、いつになく乱れている珊瑚にすっかり昂奮し、乳首に歯を立てたり、首筋
に跡がつくほどにきつい接吻をした。
珊瑚はもう全身の神経が逆立ち、ぐらぐらと沸き立っている悦楽に飲み込まれていった。
ふたりの結合部からわき出る淫液は、粘っこく濁ったものになっている。
いよいよ珊瑚の最後が迫ってきているのだ。

「あっ……あああっ…」

珊瑚の身体に緊縮が走る。
微細だった膣襞と肛門の蠢きが、きゅっきゅっと締め付けるものになっていく。
珊瑚の今際の際を察知した琥珀も、一層激しい突き入れを開始した。

「あっ、すごっ……琥珀、すごいぃぃ……ああ、だめっ……うんっ…うんっ…んあっ
…ああっ…」

琥珀は、悶え狂う珊瑚の頭を掴むと、ぐいと顔を寄せ、思い切り口を吸った。

「んむむっ」

唇を割り、歯をこじ開けると、奥で縮こまっていた舌を無理矢理引き出し、これを
吸い上げた。
ぶるっと珊瑚が震え、軽く達してしまう。

それでも琥珀は許さず、珊瑚の舌を捉えると自分の舌に絡みつける。
歯茎を擦り上げる頃になると、珊瑚の方が舌を絡ませてきた。
口を離すと糸を引くような強烈な口づけを終えると、いよいよ珊瑚は切羽詰まって
来た。

「ああう…あううっ……あ、だめ……くる! きちゃう……あ、いい……いいっ…
オマンコぉ……」
「いくのかい、珊瑚」

神楽のいやらしい問いかけにもあっさり答え、がくがくと頷いた。

「いく……いっちゃう……ああ、気持ち…気持ちいいっ……だめ、いく……あ、
いくう…」

神楽の言葉責めと、それを受け入れ自ら発した淫靡な言葉に酔った珊瑚は、いつも
よりさらに高見に昇り詰めた。

「こ、琥珀……いく! …あたし、いっちゃう……だめ……あ、いっく……いくう!」

一段と強い締め付けが加わると、琥珀も堪らず射精した。
びゅびゅっと激しい勢いで放出された精液で膣を汚されると、珊瑚は続けざまに気
をやった。

「うああっ、またいくっ…」

縄がぎしぎしいうほどに身体を捻り、突っ張らせた珊瑚は、激しく絶頂に達した。
琥珀はそのまま離れず、最後まで射精を続けている。

「あうう……熱いの……出てるぅ……ああ、いっぱい出てる……」

全身がとろけきり、心もどろどろになりつつある珊瑚の頭にぼんやり浮かぶものが
ある。
快楽の地獄にたたき落とされながらも、まだ拠り所はあった。
仲間たちだった。

(ああ……法師さま……かごめちゃん……犬夜叉……。助けて……このままじゃ、
あたし……ホントにおかしくなっちゃう……。神楽の…言いなりになっちゃう……)

──────────────────────

 森をふたつの疾風が駆け抜けていた。
ひとつはかごめを背負った犬夜叉。
もうひとつは雲母に乗った弥勒だった。

「犬夜叉! 本当にこっちで間違いないのか!」
「うるせぇ! 黙ってついて来やがれ!」

弥勒が怒鳴ると犬夜叉が怒鳴り返す。

「もし珊瑚に何かあったらどうする気だ!」

弥勒がさらに言い返すと、犬夜叉もカッとして叫ぶ。

「カッカしてんじゃねぇ! 珊瑚が心配なのはおまえだけじゃねぇんだ!」
「……」

かごめがたまらず口を挟む。

「そうよ弥勒さま! あたしだって犬夜叉だって、弥勒さまと同じく珊瑚ちゃんを
助けたい気持ちに変わりはないのよ! …だから少し、落ち着いて……」

弥勒の表情から怒気が引いたのを確認すると、かごめも犬夜叉に訊いた。

「でも犬夜叉…。どんどん森が深くなってるわよ、ホントにこれでいいの?」
「てめぇまで疑うのかよ! 大丈夫だ、珊瑚の匂いはだんだんと強くなってらあ。
信用しろ!」

匂いが強まっているということは、だんだんと珊瑚が通った時間が近くなっていると
いうことだ。

「うん、わかった。信じてるから」
「……」

犬夜叉はちらりと背を見ると、かごめがこちらを見ていた。
その瞳に何だか照れてしまい、紛らわすように言い放った。

「珊瑚がこっちに行ったことは間違いねぇ! 雲母、遅れんなよ!」

半妖と人間、妖怪のチームは、一段と速度を上げて目的地に向かった。

──────────────────────

 片足吊りの緊縛から解かれると、珊瑚はその場に崩れ落ちた。
荒い呼吸と薄紅色に上気した肢体は、先ほどまでの息苦しいほどの媚態を物語って
いる。
すべすべだった絹肌は汗にまみれ、夥しいほどに出された精液は割れ目から逆流して
いた。

琥珀は、くたりとした珊瑚を引きずるように布団の上まで連れていき、そこに横た
わらせた。
力無く仰向けに倒れている珊瑚を、琥珀は改めて見つめた。

しなやかで、どんな無理な体勢にでも耐えられる身体。
胸のふくらみは、若さ故かやや硬さも残るが、この数日の苛烈な責めですっかりまろ
やかになり、大きくさえなっているような気がした。
そして長大な肉棒で何度も何度も貫かれ、抜き刺しされた媚肉。
そのせいかやや腫れぼったいが、型くずれもせず綺麗な形状を保っていた。
そこから溢れ出る、琥珀の放った精と珊瑚自身の愛液が、その下に慎ましく窄まって
いる肛門にまで垂れていた。

琥珀はごくりと生唾を飲む。
何度見ても欲情させられる裸身だ。
見る見るうちに己の陰茎に芯が入ってくるのがわかった。

琥珀はそのまま珊瑚の隣に寝転がった。
同じように仰向けである。
その様子に気づいた珊瑚が靄のかかったような虚ろな瞳を向けてきた。

「……」

琥珀はぞくりとした。
その目は「まだ欲しい」と言っているような妖しい色を湛えている。
珊瑚にそんなつもりはないのかも知れないが、どんな男でもそう思ってしまうような
色香を全身から放っていた。

「姉者」
「あ……はい…」

最初に比べると、珊瑚は随分と従順になっていた。
あまりの色責め、極楽だか地獄だか判然としないような強烈な快楽の連続で、意志や
理性が駆逐されつつあったのだ。

「まだしたいんだろ?」
「……」

珊瑚は顔を伏せた。
まともに弟の顔を見られなかった。

事もあろうに、血の繋がった肉親に何度も犯され、中出しされ、あまつさえ幾度と
なく官能の頂点まで導かれてしまった。
珊瑚の心はそんな鬼畜の行為を激しく否定するのだが、如何せん身体が言うことを
聞かず、琥珀の責めに順応してしまうのだった。

「さあ」
「……」

五平−琥珀の声に、珊瑚はのろのろと上半身を起こした。
琥珀はもう勃起している肉棒を掴み、ぶらぶらと揺すっている。
珊瑚にはわかる。
この肉欲の塊のような弟は、このまま跨って自分から繋がれと言っているのだ。

少女は諦めたように立ち上がり、弟の身体を跨いだ。
視線は自分の股間の真下にある隆々とした肉棒に行ってしまう。
あのたくましいものが自分を官能の極致に追い込むのだと思うと、恐怖と期待が珊瑚
の胸を白く灼いた。

「……」

珊瑚は中腰になり、琥珀の肉棒を手で掴んだ。
女らしい細い指が震えている。
顔を背け、目も固く閉じている。

「早く」

琥珀の声にびくっとなったが、珊瑚はその声に促されるように手にした肉棒を自分の
秘裂にあてがった。
火傷しようなくらいに熱く、そして硬かった。

(どうして……どうしてこの子のは…。あ…あんなにしたのに、もうこんなにすごく
なってるの…)

そのたくましさに目が眩む思いだったが、覚悟を決めて少しずつ腰を下ろした。

「んんっ」

珊瑚は唇を噛みしめた。
太い亀頭部が、むりむりと自分の媚肉を割ってきている。
呆れるほどゆっくりとした動作だったが、珊瑚にしてみれば、張り裂けるくらいの
きつさを感じていたのである。

「いっ」

珊瑚はふくらはぎに突然鋭い痛みを感じた。
目を開くと、琥珀がつねっていたのである。
弟の目が「さっさとやれ」と言っている。
珊瑚は懇願するような視線をやったが、琥珀をそれを弾き飛ばす強い瞳で続行を命じ
ている。
珊瑚は哀しそうな顔に振り、諦めたように指示に従おうとした。

それでも、琥珀の太いものを埋め込むのは骨だった。
何とか気力を振り絞って頑張ったものの、三分の一ほど飲み込んだのが精一杯だった。
琥珀のものが長大であることと、自ら弟と繋がるなどというあさましいことは出来
ないという、珊瑚最後の理性のせいだった。

「仕方ないな」

琥珀は大きく舌打ちすると、上半身を起こして珊瑚のうねる腰を両手で掴んだ。
そしてそのまま、ぐいっと自分に引き寄せた。
たまらず珊瑚の足腰は力を失い、琥珀の腰の上にぺたりと座り込んでしまった。

「あああっ」

珊瑚は、いきなり深々と突き刺さった肉棒の感触に、大きく仰け反って呻いた。

「く……やあ……だめ…」
「いや? だめ? そんなわけないだろ、姉者」

琥珀は苦悶する姉にそう言うと、珊瑚のなめらかな背中を抱き寄せた。
爪で軽く背筋を撫でてやると、珊瑚はぞくぞくとした快感が走り、抑え込もうとして
いた肉欲が疼き出す。
舌は白い首筋と鎖骨を舐め、手はふくよかな胸の膨らみを揉む。

上半身を愛撫され、珊瑚の下半身もたちまち反応してきた。
みっちりとくわえ込んだ媚肉の隙間からじくじくと蜜が分泌され、膣襞が琥珀の肉棒
を優しく締めてきたのである。

琥珀が突き込むと、珊瑚は面白いように跳ね、うねり、仰け反った。
大きな亀頭が珊瑚の膣の最奥を抉り、竿が出入りするごとに襞を削り落とすくらいの
摩擦を加えてくる。

「ああっ……だめ、琥珀…ああ、そんなにされたら……」
「どうなるの」
「ああっ……んんっ……あっ…あっ…ああう……ああ…」

ずんずんと突きながら五平−琥珀は答えを要求する。

「どうなるんだよ」
「あ……だめ、おかしく……また、おかしくなっちゃう……」

珊瑚はまた達しようとしている。
あっという間だった。
何度も絶頂が訪れるというより、冷めやらぬうちに再び責められ、押し上げられると
いうことなのだろう。

琥珀は、乳を揉み込んでいた手を珊瑚の尻に回した。
そして思い切り自分に抱き寄せた。

「あああっ」

珊瑚が気のいきそうな声を出す。
腰を抱き寄せられたことにより、一層深く膣の奥までねじ込まれたのだ。

「うあ……うああっ……ん…んあああ……深いぃ……こんな、深いの…」
「深いのがいいんだろ、姉者」
「く……かはっ……あ、すご……おっきい……」
「どこまで入ってるんだ」
「あ……ああ……お、奥の方まで……おっきいのが……すごい…」
「子壷に届いてるか?」

珊瑚はガクガクうなずく。

「すご……すごい……ああ……ふ、太いのが……子、子壷に当たって…こ、擦れて
るぅ……」
「もういきたい、姉者?」
「ああ……」
「いきたいならそう言って。いつでもいかせてあげる」

五平−琥珀はそう言って、対面座位で喘いでいる姉に腰を打ち付けた。
ふたりの腰がぶち当たると、そのたびに珊瑚の愛液が飛沫飛んだ。
弟の腰使いに圧倒された姉は、たまらず屈服してしまう。

「あ、あ……もう……もうっ」
「いきたい?」

もう抵抗する素振りも見せず、珊瑚はうなずいた。
琥珀は腰を抉るように抜き刺しし、手に余るくらいの乳房を揉み込みながら珊瑚に
言った。

「なら、中に出すよ」

珊瑚はびくりとして大きな瞳を見開いた。

「だめ! ああ琥珀…それだけはだめっ」
「いまさら何言ってんの。あれだけ何度も出されたくせに」
「で、でも……」

琥珀は、腰を上下運動だけでなく左右にも動かし始めた。
膣を拡げられるかのような動きに、珊瑚は息が詰まるほどの悦楽を感じている。

「ああ、すごいっ……くっ、それ、すごい……ああ、いいっ……い、いいっ」
「いきたいでしょ? 中に出されてさ」
「ああ、だめ……それだけは……あっ……あうう、いい……」

このまま出すのでは芸がないと思っている琥珀は、何とかこの美しい姉から中出しを
望ませてみたかった。
そこでぴたりと腰の動きを止めてしまう。
手は、やわやわと緩い愛撫を胸に加え、快楽がとろ火で続く状態にしている。

「あ……な、なんで…」

もう少しでいきそうだったのになぜやめるのか。
珊瑚は唇をわなわな震わせて、その一言を飲み込んだ。

「中に出させてくれればいかせてあげるのに」
「……」

琥珀はニヤニヤ笑って、そう嘯く。
珊瑚は悔しげに顔を逸らし、目をつむる。
そして、いつのまにか自分から腰を揺すって快楽の続きを求めていた。
もう少しだなと思った琥珀は、再度、姉を責め込んだ。

「ああっ」

琥珀は腰を動かし、淫液光りした陰茎でずぶずぶと珊瑚の膣を責め上げる。
そして手で尻たぶを割り、中の肛門をいびり出した。

「あ、いやあっ…そこ、やあっ……あう、あううっ……くぅぅっ、気が、気が変に
なるっ…」

突然加えられた菊門への責めですっかり珊瑚は動揺した。
五平−琥珀の指が菊座をねじるように中へと侵入してくると、珊瑚の悩乱は頂点に
まで突き動かされた。
可憐な唇は、生々しい喘ぎ声とよがり声で溢れている。

「あああっ……あ、いいっ……あ、もう、いく……いっちゃいそうっ…」
「いきたい? でもいかせない」
「そんな……やあ、いきたい……琥珀、いきたいのっ……あ、いく…」
「いきたいなら……わかってるでしょ」
「……」

口ごもる珊瑚に対し、琥珀はさらに肛門を責めた。
右手の指で菊門周囲を撫でるように愛撫し、左手の中指を思い切り深く中に埋め込
んだのだ。

「ひぃぃ……」

珊瑚は大きく仰け反り、喘いだ。
媚肉からは、垂れるどころか噴き出すように淫液が流れ出ている。
息も満足に出来ないほどの悦楽で、その美貌は苦悶と快楽で大きく歪んでいた。

「あ……ああ…」
「なに?」
「だ、出して……」
「…どこへ?」
「んああ……あ、な、中に……中に出しても…いいから……だ、だから早く…」
「早くいかせて欲しいんだね。中にたっぷり出されて」

珊瑚は細い首をかくんと折ってうなずく。
もうどうなってもいい。
だから早く埒をあけて欲しかった。
そうしてもらわないと本当に狂ってしまいそうだ。

「ああ……お願い、琥珀……もう、い、いきたい……早、早く…」

汗を飛び散らせて無言で責める琥珀に、珊瑚の口からは淫靡な言葉が次々とまろび
出た。

「い、いく……いっちゃいそう……出して…中にいっぱい出してっ……あ、いきそ
……いくぅ…」

琥珀も追い込まれていた。
暴発寸前の肉棒でずんずんと子宮口を突き上げ、亀頭部で擦り、指を二本にして
肛門を捻り込んだ。

「うはあっ……うんっ…あ……いく…もう、いく……あ、いっくぅ!」

珊瑚が、腹から唸るような声でその時を告げると、琥珀もきゅきゅっと締まる収縮に
たまらず放出した。

「あああっ、いっく!」

迸る射精の勢いで子宮に痺れるほどの快感を感じ、続けざまに珊瑚が気をやった。

「……ああ…ま、また……いっちゃった……」

ぶるぶる震えている裸身が止まらない。
特に腰は、琥珀の射精がびゅっ、びゅっと続くたび、それに応えるように痙攣していた。

「ああ……ま、まだ出てる……熱いの……琥珀の子が…出来ちゃう……あ、まだ…」

琥珀は精嚢が空になるほどすべての精を注ぎ込んでやった。
量が多くて、まだ肉棒が嵌っている膣の隙間から、珊瑚の愛液とともに流れ出ている。
琥珀は、びくびく痙攣している姉の腰を掴むと、再びがくがくと動かし始めた。

「あっ……やっ、やだ! …また、そんな……」

突然再開された攻撃に珊瑚は戸惑う。
今また激しい絶頂に到達したばかりだというのに、続けて責められる。
五平−琥珀の方は、あれだけの量を射精したというのに、膣に埋め込んだ肉棒は十分
以上の硬度と大きさを保っていた。
官能美あふれる尻たぶを掴まれ、盛んに腰を擦りつけられた珊瑚は、琥珀を跨いだ
太腿を狂おしくうねらせている。
女の秘部にある粘膜を巨根で楔のように深々と貫かれると、ズキズキとわき起こる
甘美な痺れで、絶息するような呻きを洩らす。

「くはっ……あううっ……だめ、いいっ……あっ……んううっ…」

珊瑚はいつしか上半身を起こし、尻を揺さぶりながら琥珀の動きに合わせて単調な
反復運動を始めた。
責める琥珀の調子にすっかり合わせているのだ。

積極的になってきた珊瑚に気を良くした五平−琥珀は、上下だけでなく円を描くよう
に腰を動かす。
またも太い男根で引っかき回されることになった珊瑚の膣は、一層多くの花蜜をドロ
ドロと吐き出している。

「く……だめ! ……いいっ……また…ああ、また!」

珊瑚の脳裏から仲間たちが消えつつある。
快楽に染まった彼女の頭には貪欲に肉体の愉悦を味わうことしかなくなってきた。
いつしか珊瑚は、自らの手で豊かな乳房を揉み始めていた。

「いいっ……あううっ、すごいい……気持ちいいっ…」

目の前で演じられる痴態に昂奮してきた神楽は、着物に手を掛けた。
そして、手にした張り型を自分の膣に挿入した。

「んっ」

一糸まとわぬ姿になった妖女は、股間に木製男根をぶら下げたまま、悶える美少女の
後ろに回った。
そして、その後ろに重なるように琥珀を跨いで腰を下ろすと、しなやかな手で珊瑚の
胸を覆った。

「ほら、自分でやらなくてもあたしが揉んでやろうじゃないか」

ぞくりとするような艶っぽい声で神楽がささやく。
色香に濡れた声色に促され、珊瑚は神楽に身を任せた。

神楽は、自分の肩にもたれかかっている少女の顔に真っ赤な唇を寄せた。
唇を重ねられた珊瑚は、呻いただけで神楽の凌辱を受け入れた。
舌を吸われ、咥内を蹂躙されると、珊瑚はうっとりとした表情で、自分の舌を神楽の
それに絡ませてくる。

その間にも、神楽の両手で珊瑚の胸のふくらみは揉みくちゃにされている。
美少女の舌と乳房をたっぷり味わった神楽は、下から責め上げている琥珀に視線を
やった。
五平−琥珀は、神楽が何を望んでいるのか察知し、にやりと笑って珊瑚に指示した。

「姉者」
「あ、ああ……」

しつこいほどの責めに朦朧としている珊瑚だが、琥珀の声はわかる。

「姉者、俺の上に倒れて」
「……」

珊瑚は素直に従って、琥珀に跨ったまま折り重なるようにうつぶせになる。

「手でお尻を拡げて」
「……」
「拡げて」
「……はい…」

珊瑚はほとんど無意識で、両手を後ろに回すと自分の尻たぶを割り開いた。
谷間の底には、傍若無人に責められたのが嘘のように、密やかな菊座が鎮座している。

神楽は、自分の膣に入っている張り型を掴むと、珊瑚の肛門にあてがった。

「あ……」

珊瑚は何をされるのかわかった。
だが、それを拒絶しようとか抗おうという気にはならなかった。
理由は自分でもよくわからない。

「ん……んんっ」

神楽が腰を進めると、媚肉から飛び散った愛液で濡れていた珊瑚の菊門は案外あっ
さりと張り型を飲み込んだ。
珊瑚は覚悟したほどの痛みを感じなかった。
その代わり、ピリピリと肛門から感じた痛みが子宮を通って快美になっていくのが
わかった。
下半身の血が逆流するように腰骨あたりがジーンと痺れ、珊瑚はたまらず生々しい
声を張り上げた。

「んあああぅっ……おっ、お尻ぃっ……あ、あうう……」

膣に陰茎を挿入される快感。
乳房を揉み抜かれる快感。

正常な性行為だけではない。
荒々しく緊縛され、身体を締め付けられる快感。
浣腸され、排泄する快感。
それを見られる快感。

子宮の中に精を出される快感。
口を犯される快感。
そして肛交の快感。

すべての倒錯した性の恍惚を、その若い身体に覚え込まされた。
珊瑚は、琥珀と神楽に前後の熱い粘膜の奥深くにまで突っ込まれ、執拗にこねくり
回された。
琥珀の生の肉棒と神楽の疑似肉棒が、間の薄い肉を隔てて擦れ合うと、珊瑚は大きく
うなじを反らせ、優美な二本の脚を痙攣させて喜悦の悲鳴を上げるのだった。

「ああっ、いいっ……くぅぅ、いいのっ……」

珊瑚を責める男女は、申し合わせたように肉棒を彼女の胎内で擦り合わせる。

こしゅこしゅこしゅっ。
「うああ、それっ……だめっ…」

こしゅこしゅこしゅっ。
「だめ、いく! …ああ、すごっ」

こしゅこしゅこしゅっ。
「うああっ…あ、いっく…」

こしゅこしゅこしゅっ。
「また! あ、また、いきそうっ」

こしゅこしゅこしゅっ。
「あうっ……お尻が…お尻がぁ…」

珊瑚は口の締まりもなくなり、あちこちによだれを飛ばしてよがり狂っている。
一端、腰の動きを止めた神楽が、粘っこい愛撫で珊瑚の乳を揉みながら、匂ってき
そうなほどの色気のある媚声で訊く。

「ふふ、お尻がどうしたんだい、珊瑚?」
「…ああ……」
「言いな」

そう言うと、また腰を突き込んだ。

「ああううっ……お、お尻……いいっ」
「そう。お尻がそんなに気持ちいいんだね、珊瑚は」
「あう……いい…お尻、気持ちいい……」

今度は下から五平−琥珀が珊瑚に訊いた。

「姉者、オマンコの方はどうだい?」
「あう……」

上に乗った珊瑚が持ち上がるほどの大きな動きで膣を責められると、腰がとろける
ような甘美で切ない快感を知覚する。

「い……いい……お、オマンコも……気持ち、いいっ……ああ…」

粘っこい珊瑚の喘ぎ声を合図に、少女の前後の穴を抉るふたりは一斉に律動を開始
する。
琥珀が突き上げると、神楽は引く。
神楽が深くまで抉ると、琥珀は抜けそうになるくらいまで引き抜いた。
かと思うと、今度は両者が同時に突き込み、共に引く。

神楽も琥珀も単純に突くばかりではない。
琥珀は肉棒を中心にぐるぐると円を描いて周囲の襞を摩擦させ、琥珀は左右に張り
型を動かして、珊瑚の尻穴をさらに拡げようとする。

「うはあっ」

珊瑚はふたりの動きに耐えられず、苦悶で顔を歪ませる。

琥珀は、このままの姿勢では重いし動きにくいので、神楽に合図してごろりと横向き
に寝ころんだ。
その動きがまた珊瑚の襞を刺激する。

「ひぃぃぃ……」

珊瑚はあふれてくる唾液を飲み込みきれず、口から零れてさせている。
そして腰は両者に合わせて貪欲に動いていた。琥珀が突けば琥珀側に腰を出し、神楽
が突けば神楽側に腰を押しつけて、より深い挿入を求めた。
珊瑚の膣と肛門からは、粘り気の強い愛液と腸液がじくじくと漏れ、布団をじっとり
と濡らしていた。

珊瑚はもう訳も分からず、目の前にある琥珀の口に吸い付き、両手を弟の背中に回し
て抱きしめた。
脚も琥珀の脚に絡ませ、絶対に離すまいとばかりに絡みつけている。

神楽は珊瑚の美しいうなじや首筋に唇を這わせ、やさしく激しく乳房を揉み込んだ。
燃え上がっていた珊瑚の官能は、爆発しそうなくらい一気に燃焼した。

「あああっ……だめ、ああ、だめっ……くああ……あ、いきそう……また、いきそう
っ…」

──────────────────────

 駆けに駆けているかごめたちの目の前が一気に開けた。

「抜けた……」

かごめが犬夜叉から降りて屋敷に向かおうとすると、犬夜叉がセーラー服の襟を掴んで
引き倒した。

「あぶねぇ!」
「きゃっ」

神無だった。
文字通り気配がなく、犬夜叉も弥勒も気づくのが遅れた。
それは神無も同じだったようで、びっくりしたような顔で、かごめたちに鏡を向けて
いた。

「…あなたたち……やっぱり来たのね」
「神無……おまえがいると言うことは…」

弥勒が呻く。

「ここは奈落の城……つまり、珊瑚がいるってことだな!」

犬夜叉がそれを受けて喚いた。

「珊瑚ちゃんはどこ!」

かごめの叫びを聞き流し、神無が鏡を向ける。

「人のことより自分の心配したら?」

自分の前を周回させるように鏡を動かす神無に、三人はまともに近づけない。
鏡に正対すれば、その場で魂を奪われてしまう。

「ちくしょう…」
「これじゃ近づけませんね」

植え込みや井戸の陰に潜み、鏡を向けられると動き回って逃げる犬夜叉と弥勒が奥歯を
噛みしめる。
そこに、こそこそとかごめが駆け寄って来た。

「馬鹿、かごめ、おまえはどっか隠れてろ!」
「犬夜叉の言う通りです。さもないと…」
「ちょっと待ってよ」

かごめがひそひそつぶやく。
そこにまた鏡が向けられたので、三人は駆け出し、今度は築山の裏に回り込んだ。

「忘れたの? あたし、大丈夫だってば。あたしの魂って大きいから神無の鏡に入り
きらなかったじゃない」
「……」

そうだった。

「しかし、かごめさま、それは以前のことでしょう。前より力を増しているかも知れ
ません。ならば…」
「でも、そんなこと言ってたら手遅れになっちゃうかも知れないよ」
「……」

弥勒の心配をかごめは強引にねじ伏せた。

「それに」

かごめは言葉を続けた。

「神無のやり口、おかしいわよ」
「どういうことだ」
「だって…」

もし弥勒の言う通り、魂吸鏡の威力が増しているのであれば、あんなまどろっこしい
やり方をするだろうか。
自分の周囲を払うように鏡を振り回しているのは、こちらが神無や屋敷に近づけない
ようにしているということではないのだろうか。
どう見ても守勢である。

もし攻撃するつもりであれば、かごめだろうが弥勒だろうが、誰にでも向けて魂を吸い
取ってしまえばよいだけだ。
かごめからは逃げるように動き、弥勒や犬夜叉を近づけぬようにしているということ
は、やはりかごめに鏡を使うのは都合が悪いから、ということにならないだろうか。

その上で時間を稼ぎ、応援……つまり神楽なり奈落なりを待っているとしたら…。
時間をおけばおくほどに不利になる。

「……」

それなりに説得力のある答えに弥勒も考え込む。
犬夜叉はふたりを見て言った。

「めんどくせぇ! 要するにかごめにゃヤツの鏡も通用しねえってことだろうが」

そう言ってかごめを振り返った。
犬夜叉の取り柄は切り替えが早いことだ。

「で、どうすんだ?」
「だからね……」

かごめは弥勒と犬夜叉に顔を寄せ、策を授けた。

 「……」

神無は、動きのなくなった敵を不審に思っていた。
ふと鏡を逸らして見ると、案の定、犬夜叉が突進してきた。
神無は内心呆れている。
いかに半妖とはいえ、この猪突猛進しかない男は何なのだろう。

躊躇なく鏡を向けると、犬夜叉は心得たように脇へ飛んだ。

「!?」

その真後ろにはかごめがいたのである。

「!」

神無には珍しく取り乱した表情を見せた。
慌てて鏡を反らせ、逃げようと踵を返した。
その前に立ちつくしていたのが弥勒だった。

数珠を振るい、右手をかざした。

「風穴!」

神無もすぐに鏡を弥勒に向けた。
何でも吸い取り異空間に転送する風穴と、見た者すべての魂を吸い取る鏡。
弥勒の魂が吸われるのが早いか、風穴に神無と鏡が吸い込まれるのが早いか。

「く……!」

弥勒は、身体の中から何か大きなものが吸い取られそうな意識に囚われる。

「……」

神無も唇を噛みしめて耐えている。
その小さな身体が、ずっずっと弥勒の風穴に引き寄せられていく。

「あ……」

ぴしっ。
鏡の端に割れ目が走った。
かごめの魂を吸い損ねた時の補修が完全ではなかったらしい。

(まずい……)

神無の顔に焦りと恐怖が浮かぶ。

その時、頭上の空間が割れた。

──────────────────────

 五平−琥珀と神楽は、珊瑚に対して激しい律動を繰り返していた。
珊瑚の腰もそれに伴って、より深い快楽を貪ろうと揺さぶっていた。

「あう……あう……あううっ…」

紙を近づければ燃え上がりそうな熱い息で悶え、よがり声を張り上げる珊瑚は、
もう何度目になるのか数も知れない絶頂に向かって、よろよろと走っていた。

「もう…いいっ……あ、あ、いっちゃう……いきそうっ……」
「いきなよ珊瑚」
「あ、いく……いく!」

神楽と琥珀が、珊瑚の股間に擦りつけるほど腰を寄せ、肛門と膣のもっとも深い
ところまで肉棒を押し込んだ。

「!」

突然、琥珀の目が裏返り、少年は意識を失った。
それは一瞬のことで、すぐに瞳に色が戻った。

しかし、さっきまでの琥珀とは違っていた。
少年は事態がわからず動揺していた。

この、腰に疼くようにわき起こる、むず痒いような、それでいて圧倒的な心地よさは
何だろうか。
驚いたような目で正面を見ると、姉が苦しそうな顔をして喘いでいた。

「姉上……」

その時、頂点に達した珊瑚の締め付けがきゅうっと加わり、自分の性器が破裂せん
ばかりの快感が襲ってくると、とてもたまらずに琥珀は呻いて射精した。

「あ、姉上っ」
「ああ、琥珀っ……いく!」

火傷しそうなほどの熱い精液が子宮を灼くと、珊瑚はつづけざまにいった。

「いく……また、いっちゃう……ああ…出てる……琥珀のが…また出てる……」

膣で何度も締め付けられ、琥珀は射精の発作を何度も繰り返した。

さすがに全身から脱力し、ぴくりとも動かなくなった珊瑚を見て、神楽は満足げに
少女の身体から離れた。
目を剥き、口から泡でも噴きそうなほどに快楽を味わった珊瑚を見下ろして神楽は
つぶやいた。

「ふふ、さすがにまいったようだねぇ、このお転婆娘も。無理もない、実の弟にまで
いやというほど犯されたんだから」

まさに身も心もぼろぼろといった状態だろう。
これで、あとは焦らすように責めて、神楽の命令を聞けば褒美の快楽を与える躾を
施せば、もう実地段階になるはずだ。

「……」

琥珀は黙って珊瑚から離れた。
ぐったりしている姉をいたわるようにさすっている。

「どうしたい、あんた。もうひといきだよ、仕上げようじゃないか」
「……」

琥珀は神楽の言葉など耳に入らぬ風に姉の肩を揺すっていた。

「姉上……姉上! しっかりして」
「……」

なんだか様子がおかしい。
琥珀が珊瑚を気遣うような素振りをしている。
情でも移ったか。

「今さらなんだい。妙な仏心なんか出したってしょうがないだろ」

ずかずかと神楽はふたりに近づくと、珊瑚の腕を引っ張った。

「あっ…」

腕が抜けるかという痛みで、珊瑚が呻く。

「や、やめろ!」

琥珀が神楽の腕を引き離した。

「なにすんだい!」
「おまえこそなんだ。姉上に何するんだ」
「のきな。あたしが仕上げる」
「やあ……」

珊瑚が朧な意識のままむせび泣く。
これ以上淫らなことをされたら心が保たない。

「やめろっ!」

どかっ。

「ぐっ……!」

神楽は背中に強烈な打撃を受けてよろめいた。
すぐに熱い疼痛が背に響く。
その美しい背中線の真ん中に鎌が突き刺さっていたのだ。
鮮血が噴き出した。

「き、きさま……どういうつもりだい」
「やめろ……姉上に触るな!」

琥珀は、じゃらじゃらと鎖鎌を操りながら全裸の姉を後ろに庇い、声を掛ける。

「姉上……」
「…ん……」

弟の呼びかけで、ようやく珊瑚は覚醒した。
ぼやける視界で弟の顔を見ると、涙すら浮かべて見守っている。

「おまえ……琥珀…」
「姉上……だいじょうぶ?」
「ホントに…琥珀?」
「平気かい、姉上。それに……」

うぶな弟は、姉から視線を反らして顔を赤く染めた。

「は、裸だよ、姉上……」
「琥珀……!」

珊瑚は琥珀を抱きしめた。
今度こそ、本物の弟だ。

「……」

そういうことかい。
神楽はようやく理解した。

どこにいるのか知らないが、神無がやられたらしい。
鏡に何かあって、琥珀の魂が戻ってきたということなのだろう。

あの役立たずが、と内心で姉を罵ると、背中の痛みも忘れ仁王立ちになる。
琥珀はその迫力に押され、鎖を振るって鎌を手元に呼び戻した。

「!……」

今度は凶器が抜け去る激痛が走ったが、神楽は声を出さずに耐え、自らの武器を手に
する。

「こうなりゃ仕方ない。姉弟仲良く葬ってやるさ!」

そう叫ぶと、右手に持った扇子を振るおうとしたが、それを察知した琥珀が再び鎖鎌
を唸らせた。

「ぎゃあああっ」

耳をふさぎたくなるような絶叫を残し、神楽の右腕は肩口の根元から切り落とされた。

「ぐああああああ……」

激痛に顔を歪め、血が溢れる傷口を左手で押さえてもがく神楽。
こんなミスをするような女ではないが、珊瑚を責めた際の疲れは少なからずあったし、
背中に深手を負っていたマイナスもある。

激痛と屈辱でがくがくと痙攣し、片膝立ちしていた妖女は、それでも目の前の退治屋
姉弟を睨み殺すほどの視線を湛えていた。

「も、もう許さぬ…。きさまら、楽に死ねると思うなよ」

瞳を血の色に染め、均整の取れた裸身すら血染めになった神楽は、残った左手で扇子を
取り、大きく振りかぶった。

──────────────────────

 割れた空から宿敵が現れた。

「奈落……!」

奈落と呼ばれた男は、ぐいと右手を弥勒に突き出した。

「うわあっ!」

物理的な圧力を受けたように法師が吹っ飛ぶ。

「弥勒さま!」

かごめが駆け寄った。
犬夜叉は奈落と対峙している。

「てめぇ、奈落! 今度こそ逃がしゃしねぇぞ!」
「ふん」

犬夜叉は鉄砕牙を抜くと、いきなり風の傷を食らわせた。
が、それが届く前に、神無を抱えたまま消え去った。
残影目がけてかごめの叫びが響く。

「あ、待ちなさい、あんた! 珊瑚ちゃんはどこなの!」

──────────────────────

 「うぐぅああああ……」

武器を手に、容赦なく姉弟を切り刻もうとした妖女の口から凄まじい絶叫が迸った。
先ほど琥珀から傷を受けた際とは根本的に異なるような苦鳴だった。

「……」

いつの間にか、室内に童女を抱えた男が立っていた。

「な、奈落……」
「……」

珊瑚の声に、まるで石でも見るような目で自分の名を呼んだ少女を見据えた奈落は、
すぐに視線を苦しむ風使いに移した。
よく見ると、右手にどくどくと蠢く気味の悪いものを握っていた。
珊瑚は知らなかったが、言うまでもなく神楽の心臓である。

「き……きさま、奈落……なんの、つもり、だ…」

苦しい息の下、なんとか神楽は毒づいた。
奈落は、これも冷たい視線で神楽を捉えている。

「なんのつもり、とはこっちの台詞だ。どういうことだこれは」
「なに……?」
「琥珀を使うとは聞いていなかったがな」
「……」
「しかも、終いには殺すというのか」
「…い、いいだろ! どっちみち最後にゃこいつだって…ぐああっ!」

奈落はさりげなく右手に浮き出た神楽の心臓を握りつぶす。

「勝手なことをするんじゃない。あまり思い上がるな、まだ長生きしたければな」
「……」

珊瑚と琥珀の姉弟は、あまりのことに呆然とふたりのやりとりを見ている。

「引くぞ」
「なにを馬鹿な! せめてこの女だけでも始末を…」
「その傷でか」
「……」
「表には犬夜叉たちも来ている。今のザマではとても太刀打ちできまい」
「…く……」

奈落は震えている琥珀に目をやった。

「琥珀」

瞬間、琥珀の目が真っ白になったように珊瑚には見えた。

「……」
「琥珀…!」

黙って奈落のもとへ歩き出した弟を、姉は血の出るような叫びで呼び戻そうとする。
奈落は珊瑚を見やると言い捨てた。

「弟はまだ預かる。使い勝手もいいのでな。だが心配するな、殺しはせん。すぐにはな」

一方、神楽は燃え盛るような視線で珊瑚に叫んだ。

「珊瑚! 覚えておおき、この借りはでかいよ!」

そう言うと、付け根から切り落とされた右腕を口でくわえ、奈落の側に寄った。

「琥珀……待って、琥珀!」

珊瑚の呼び声も虚しく、奈落たちはすぅっと煙のように消え失せた。

「琥……珀…」

珊瑚は再び意識を失った。

──────────────────────

 「珊瑚!」

「珊瑚、どこです!」

「珊瑚ちゃん!」

犬夜叉が喚き、弥勒が叫び、かごめが呼びかける。

奈落の屋敷を片っ端から探し回るかごめたち。

西の襖を蹴破り、東の障子を開け、北の戸板を外した。

珊瑚がガラッと開けたその襖の部屋に、長い髪の少女が倒れていた。

「珊瑚ちゃん!」

かごめは、それこそ脱兎の如く駆け寄った。
全裸で汗まみれのしどけきった肢体。
その汚された股間に気づいたかごめは、思わず目を反らした。

女なればこそ、珊瑚がどのような目に遭ったのかひとめで分かった。

「…こんな……ひどい…」

かごめは、珊瑚のその苦難を思い、目に涙を浮かべて抱きしめた。

「可哀相に……珊瑚ちゃん…」
「……ん」

はっと、かごめは珊瑚の顔を見た。

「か……ごめ…ちゃん…?」
「…珊瑚…珊瑚ちゃん!」
「来て……来てくれたんだね……」
「ごめん! ごめんね、遅くなって…」

それだけ言うと、かごめは珊瑚をかき抱いたまま泣き出してしまった。

「きっと……きっと…来てくれるって……思って…」

珊瑚の瞳からも透明な涙が溢れ出てきた。

これが「仲間」なんだ。
だからあたしは仲間が何より大事なんだ。

「みんな……みんないるよ…犬夜叉も、弥勒さまも…助けにきたから…」

「法師さま……も…」

どたどたと大きな足音が響いてきた。
遅蒔きながら、犬夜叉と弥勒がここまで駆けつけたようである。

空け開いた襖の奥にかごめがいる。
抱きかかえられているのは珊瑚だろう。

「かごめさま! 珊瑚は無事ですか!」
「弥勒さま、入っちゃだめ!」
「えっ!?」

かごめの気迫に圧倒され、弥勒は全力疾走に急制動を掛けた。

「かごめっ、珊瑚はそこかあっ!」
「犬夜叉、おすわりっっ!」

ぐしゃ。

「かごめさま、これはいったい……」
「てめぇ…かごめ! いきなり何しやがる!」
「いいから! 誰もまだ入っちゃだめだったら!」

かごめはそう叫ぶと、ぴしゃんと襖を閉めてしまった。

「でも……」

珊瑚は哀しげに目を伏せた。

神楽たちが自分の身体にどんな淫らな行為を施したのか。
また、その淫靡な責めで自分の身体がどう反応したのか。
それを思うと、固く閉じた瞼から次々と涙が溢れる。
こんな汚された身体で……。

「法師さまに……顔向け出来ない…」
「だいじょうぶ」

かごめはそれだけ言って、珊瑚をやさしく抱きしめた。

「心配しないで。そんなこと弥勒さまは気にしないわ。だからだいじょうぶ」

珊瑚は潤んだ瞳を、年下の少女に向けている。

「少しずつ……少しずつでいいから…」

かごめは抱きしめる力を加えた。
細かく震えていた珊瑚の身体が落ち着いてくる。

「今まで通りでがんばろ」

かごめはそこで身体を離し、珊瑚の顔を正面から見た。
珊瑚も、優しく自分を抱いているかごめを見つめた。
目の端に涙の跡があるが、笑顔を浮かべている。

「それが仲間だもん」
「……」

珊瑚はかごめの胸に顔を埋め、声もなく泣いた。
先ほどの悲哀の涙とは違った、暖かい体温を持った涙だった。

                                  完

参考図書 「真月下美人」(すたじお実験室)



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