ダウンライトの淡いオレンジ色の柔らかな光に映えるダブルベッドの白いシーツの上で、
一対の男女が互いの裸身を絡ませ、貪りあっている。

「あっ、あっ、あああっ・・・ そ、そこは・・・・」

うなじの敏感なスポットに背後からキスの雨を降らされ、張りつめた乳房を揉みしだかれた
佐藤美和子は、しなやかな女体をベッドの上でのけぞらせ、白い蛇のように悶えていた。
高木渉の荒々しい前戯の連続に、美和子の淫唇はすっかり弾け開いて、淫蜜を滲ませて
柔らかく濡れ、「男」を受け入れる態勢は整っていた。

「あああっ、た、高木君、も、もう・・・・ お、お願い・・・・」

感極まった美和子の懇願を聞き、高木は彼女の身体を仰向けに返し、押し開いた。
さらに両脚をもろ手で刈るようにして抱え込んでそのまま美和子に覆いかぶされば、
彼女の身体が「く」の字に曲がった。俗にいう屈曲位(ハードスタイル)だ。

「ああっ、そんな格好は・・・・」

女にとってやや辛い体勢を強いられた美和子が抗議の声を上げた。
しかしその声のトーンには明らかに甘えを、そしてむしろ期待するような響きさえ含まれていた。
高木はそんな美和子のかりそめの抗議に対して

「美和子さん・・・・ 愛してます」

直截的な愛の言葉で囁き返すと腰をぐっと押し進め、熱く滾った己の分身を彼女の中へと
埋めていった。

「あああっ! いっ、いいっ!」

美和子が大きな喘ぎを吹きこぼして、高木の身体全体を咥えこむようにして迎え入れた。
収めきった肉刃を締め付ける熱く蕩けた蜜壺の心地よい感触が、高木を陶酔へといざなう。
しばらく高木はその陶酔に身をゆだねて心ゆくまで楽しんだ後、始めはゆっくりと小刻みに、
そして次第に大きく大胆なグラインドで彼女を刺し貫いていった。

「ああ・・・ すごい・・・・ ああっ、あうっ・・・・ 高木君、高木君、高木君っ!」

首に回された美和子の手の指が爪を立て、うなじに食い込む。
やがて高木の激しいグラインドに、溶けてしまったのではないかとさえ感じられる
腰を淫らにゆすりながら美和子は一気に絶頂に達し、ひときわ高い嬌声を上げると
軽い失神の中に意識を埋め浸していった。


20分以上は密着していた2人の身体がようやく離れ、高木が仰向けになって荒い息を
整えている。
美和子も並んで仰向けになり、首をひねって愛する男の横顔を眺めた。

「(不思議なものね)」

普段の高木渉はどちらかというとやや煮え切らない優柔不断な性格で、逆に美和子が
男勝りの勝気で気丈な性格なことに加えて、仕事上でも先輩ということもあってか、
恋人同士になってからも、2人の日常の関係は彼女が主導権を握る場合が大半だった。
ところがことそれがベッドの中では一変し、美和子は普段の彼からは到底想像できない
ような激しく猛々しいセックスに翻弄されることがしばしばだった。
そんな彼のよく言えば大胆剛毅、悪く言えばかなり乱暴で荒々しいセックスは、
美和子に行為の最中、まるでレイプされているかのような錯覚を覚えさせるほどだ。
最初はそのあまりの落差に戸惑いこそしたが、いくどか肌を重ねてその感覚にも
慣れてくると、逆にその被虐的感覚こそが彼女の官能を淫らに刺激して快感がより一層
高まることを知り、今では嬉々としてその荒々しいセックスを受け入れるようになっていた。
──男にはレイプ願望が、女には被レイプ願望がある
あるベテラン刑事の言葉が脳裏によみがえる。
警察関係、特に古い世代の間ではよく語られる言葉だが、前半はともかく後半について
美和子は全く否定的だった。
どこの世界に好き好んでレイプなどされたがる女がいるというのだ。
これは男にとって都合のいい神話に過ぎない。レイプは人の心を殺す、ある意味殺人より
性質(たち)が悪い憎むべき犯罪なのだ。
だが、こうしてレイプとさえ錯覚させられるような高木とのセックスに溺れていると、
その言葉にも一面の真実があるのかもしれないと思えてしまう。
もちろん高木とのセックスはすべて合意の上だ。求められても美和子が拒めば彼は
決して無理強いしてくることはないし、行為に至っても彼女が生理的に嫌がることは
控えてくれる。
そして何より彼が彼女の身体をどんなに荒々しく扱うことはあっても、そこからは
高木の自分に対する濃密で細やかな愛情の発露を感じとることができた。
そんな彼とのセックスで美和子は女としての悦び、最高のエクスタシーを得ることができ、
十分満足していたし、彼とのセックスの相性も悪くないと感じている。
それでも美和子は時折、自分が拒んだ時にあっさり引き下がる彼に若干の物足りなさを感じ、
たとえ自分が拒んだとしても高木になら本当に力づくで犯されても構わないのではないか、
いや犯してほしいとさえ思っている自分に気づいて驚き愕然とすることがあった。

「レイプ願望か・・・・」

思わず声に出した言葉に高木が振り返った。

「美和子さん、今何か言いましたか?」
「ううん、何でもない」

美和子は慌てて首を振り、自らの言葉を否定した。
こんな自分の感情も、彼に対する愛情のやや歪んだ形の発露にすぎないのだろう。
やはり女の被レイプ願望などというものはまやかしであり、そんなことあるはずがないのだ。
気が付けば、高木がおもむろに身を起こし、再び美和子に覆いかぶさってきた。

「美和子さん、もう一度・・・・ いいですよね」

美和子は小さくうなずくと、乳房に遮二無二むしゃぶりついてきた高木の背中に手を回して
彼の身体にしがみつきながらふと思った。



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