浮気 02/阿井視点


 俺のも触って、と奈賀に求められ、俺はおずおずと手を伸ばした。奈賀の下腹部を探る。目では見ない。なんだか怖くてたまらなかったから。
 熱を孕んだ塊は、簡単に見つかった。俺は奈賀とすごく感じるキスを交わしながら、それをゆるく包みこんだ。張りつめた表面を掌で擦ってあげると、奈賀の呼吸が乱れる。胸を喘がせ、ひきつった息を吐く。
「あ……」
 同時に小さな声が漏れた。快楽の滲んだ、ちいさな溜息。それが俺の最後の理性を引きちぎった。
 興奮したのだ。
 ものすごく。
「んっ、ん……んっ」
 唇と舌で粘膜を愛撫しあい、俺たちは互いを煽った。我慢できなくなって、俺は膝に力を入れる。更なる快楽を求め奈賀の手にアレを擦りつける。奈賀がくすりと笑い、片手で俺を握ったまま、もう片方の手を背後に滑らせた。臀部の肉を揉まれ、俺は仰け反った。
「あ……っ」
「ふふ」
 指が。
 入り口に触れる。
 軽く擽って、焦らしている。
 ぞくぞくっと何かが俺の膝の辺りから頭のてっぺんまで走り抜けた。
 はやく。
 お願い、早く。
 速い呼吸を繰り返し、俺は目で奈賀を急かす。奈賀は意地悪く笑う。
「可愛いなあ、阿井は。ココに、欲しい?」
 いやらしい事を聞く奈賀を、俺は無言で睨んだ。
 そんなの欲しいに決まっている。
 でも、奈賀の望む通りにねだってなんかやらない。
 手の中にある奈賀自身の先端をくじくように刺激してやる。途端に奈賀の躯が魚のように跳ねた。
「うわっ!」
 奈賀の喉がくんと反る。俺の尻を掴んでいる手に力が入った。眉を寄せ、思いがけない快楽と苦痛を堪えている。その表情がひどくなまめかしくて、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
 奈賀にメロメロな桑原さんの気持ちがちょっと分かる。いつも怜悧な雰囲気を漂わせている奈賀に、こんな顔を見せられたらたまらない。
「奈賀、可愛い」
 仕返しも兼ね教えてやると、奈賀は嫌そうに顔をしかめた。
「変な事ばっか覚えやがって。おまえ清純派じゃなかったのかよ」
「なんだよ、それ」
「なんかもー、だまされた気分。阿井にこんなイヤらしいことされるなんてっ」
「俺だって男だもん。それよりさあ、奈賀」
 俺はもじもじと腰を揺らした。湯の中でいきりたったペニスがゆらゆら揺れる。尻に置かれたままの手に手を重ねると、奈賀が眉を上げた。
「んー?」
 入り口の上にある、奈賀の中指を強く押す。でも勿論そんな事をしても、入らない。きちんと指を立てて、襞を掻き分けるようにして入れねば入る訳がない。なかなか欲しいモノを与えられないもどかしさが俺を苛む。
「奈賀……」
 欲しい。

2006.9/18



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