Brand new love
Written by 潮崎 とあ 様 [2004.2.8]

  







病院の次に、カガリが足を運んだのは、ラクスの暮らす屋敷だった。
昨日、非公式―プライベートというよりも内々で話がしたいと連絡をもらった。
彼女は、ラクスが今さっき感じた違和感を話すには一番の相手だと、思う。
本当に話すべきなのは、『彼』なのだと、知っていた。
けれども、事を円滑に運ぶには、彼女が必要だと、カガリは感じている。
車が目的の場所に到着したらしい。
ゆっくりと停止して、カガリはSPに待機を命じると車を降りた。
屋敷の門をくぐり、エントランスへと歩を進めると、ラクスが笑顔で出迎えてくれた。

「カガリさん、キラは元気でしたか?」

「ラクス。…まぁ、元気といえば、元気…なんだけど」

聞かれた質問に、困ったように返すと、ラクスは首を傾げた。

「何か?」

「どこか、可笑しい…気がするんだ」

カガリは正直に答える。
彼女は一層首を傾げた。

「可笑しい、ですか?」

「どういったらいいんだろう。…もしかしたら、あいつ、式典に来ないかもしれない」

ラクスの問いに、カガリは先ほどのキラの様子から感じた印象を伝える。

「それは、キラがどこかへいなくなってしまう、ということ、ですか?」

「…あぁ。そんな、気がする」

答えから、カガリの抱えている不安を、ラクスは正確に見抜いた。
自分でも気付かなかった思いを突かれて、自覚して、カガリは頷く。
そうして、彼女は、違和感の招待に気付く。

「だって、あいつ…『ばいばい』って言ったんだ。今までだったら『いってらっしゃい』って」

カガリは言って、どうして気付かなかったのだろうと、悔しそうに顔を歪めた。

「そうですか」

ラクスは一旦顔を伏せて。
でも、すぐに顔を上げて、真っ直ぐにカガリを見つめた。

「実は本日カガリさんをこちらにお呼び立てしたのには訳がありますの」

「わけ?」

戸惑ったが、心のどこか、光を見つけた気がした。
ラクスを見つめ返す。

「はい」

言葉を、続ける。

「私たちはともかく、戦争で傷ついた方々が沢山いらっしゃいます。私はその方々を見てきました」

『戦争で傷ついた方々』…誰を指しているかは、明らかだった。
カガリは頷く。
ラクスは少し表情を和らげた。





「そして、思ったのです。傷ついた皆様には休息が必要だと」





言葉を一旦区切って、微笑む。








「カガリさんもそう、思いませんか?」









続いた言葉に、カガリも笑みを返した。