Brand new love
Written by 潮崎 とあ 様 [2004.2.8]

  







12月25日、終戦記念式典が執り行われる日。

「今までお世話になりました」

キラは、病院を退院した。
持っている荷物は最低限。
もともと荷物など無い身に等しかったから、これでも増えた。
最後に担当医から式典会場への地図をもらった。
けれど、キラは一瞥しただけで、それをすぐにゴミ箱へと投げ捨てた。




式典へは元々行く気などなかった。




カガリやラクス…そして『彼』には伝えなかったけれど。
12月25日、この日を退院日に選んだのは、キラだった。
式典日当日は、『彼』らに逢うことなく、行動を実行に移せるから。


キラのこれから。


これからなど、あるのだろうかと、キラは内心で苦笑いを浮かべた。




…ただ、消えるだけ。
もとより存在すること自体が許されない。




思って、キラは視線を下げた。
目の前の景色は、今の彼にとってはいたたまれないようだった。
もとよりクリスマス。
そして、終戦記念式典の日。
祝われない、なんてこと…ないのだ。
今、キラの目の前には大きなクリスマスツリーがあって。
街は色とりどりのイルミネーションで飾り付けられている。

溢れる人。

誰もが輪の中にいて。
そうして、幸せを手にしているよう。

キラは深く息を吐き出して、のろのろと視線をあげた。
そして、立ち去ろうと…足を踏み出した…瞬間。











「キラ」












呼ぶ声が聞こえた。