朱色の杯に注がれた酒を、一気に煽る。
今度は彼女に。に杯を渡し、酒を注ぐと、彼女も躊躇いなく口をつけた。
咄嗟に用意させた『 仮初 』の『 婚儀 』だったが、無いより良いと思った。
「 ・・・後悔はねぇのか 」
これからは、奪うことばかりだ。
この世界に落ちて、養女となったから。彼女の掌に在るものは、数少ないと解っているのに。
それに・・・誰かの妻になるのが、こんなに早急で良いわけじゃない。
調度品を整えて、雪に濡れた着物ではなく、美しい花嫁衣裳を纏って婚儀を待ちたいと思っているはずだ。
つい尋ねてしまうのは、男らしくねえな・・・と思っているが、彼女の気持ちを思えばこそ・・・。
そんな小十郎に、優しく微笑んで見せる。
「 小十郎さんもご存知の通り、私が小十郎さんにあげられるものは、とても少ないです 」
「 ・・・・・・・・・ 」
「 確かなものといえば、この身と、心ぐらいです・・・それでも、 」
小十郎さんは、私のこと・・・お嫁さんにしてくれますか?
全てを言葉にする前に、小十郎に抱きすくめられる。
は、彼の胸の中で瞳を閉じる。自分に優しい義兄の・・・綱元の顔が、浮かんだ。
( 鬼庭の家に逆らうことになったとしても・・・私は、この人と生きたい )
降って来た唇に答えて、太い首に腕を絡ませた。
体勢を落とした彼に、そのまま・・・導かれるようにして。
褥へと横たわらせると・・・小十郎の黒い瞳の中に、自分を見つけた。
稀に見る、彼の柔らかい笑みに、はどきりと心臓を高鳴らせる。
「 それこそ、俺の一番欲しいものだ 」
そう言って、そっと頭を撫でてくれた。
くすぐったそうに身をよがると、小十郎が口付けてくる。髪へ、額へ、頬へ、唇へ・・・そして。
「 ・・・・・・は、 」
耳朶から鎖骨へと舌を這わされ、彼の手が胸に触れる。
無意識に、背筋が伸びた。着物の上からだというのに、そこに彼の掌があるのがわかった。
その熱だけで、頭がおかしくなりそう・・・と、ぎゅ、と瞳を瞑る。
「 ・・・・・・っ 」
いつもより荒い吐息を混ぜて、小十郎が名を呼ぶ。
その声に応えたくても、彼女は『 今 』に精一杯だった。
帯を解かれて、身体を覆っていたものを取り払われて。襦袢の間から、掌が直に肌を滑る。
「 ・・・んぁ、は、ァッ! 」
上がった声に自分自身、驚いたのは、ほんの一瞬。
その声に興奮したように、小十郎が帯紐を一気に解いた。
「 ・・・・・・綺麗だ 」
手が止まったのに気づいて、薄目を開けば・・・彼が見下ろしていた。
気づいて、素肌を隠そうとした腕を絡め取られる。の力ではぴくりとも動かすことは出来ない。
羞恥に首をぶんぶんと横に振ると、小十郎は眉間の皺を揺るめて、吹き出す。
は、恥ずかしいから、見ないで下さい!と言えば、美しいものを愛でて、何が悪いと返された。
好きな女の身体だ・・・ずっと見ていたいに、決まっているだろうが。
「 ・・・、好きだ・・・ 」
「 あ・・・ぁ、んんぁ、ひゃ、ああっ!! 」
胸に顔を埋めるようにして、舌が鎖骨から突起へと移動した。
優しく吸い付く。何度も口付けを繰り返して、赤い実を音を立てて、嘗め回した。
「 ふあああ、やンッ!あ、はぁん、ぁああっ 」
実が逃げないように歯の裏に閉じ込めて、わざと立てた舌でコリコリとつついてやる。
快感に身体が跳ねれば、歯に当たって、また身体が震える。
その度にが嬌声が上がり、小十郎を煽っていく。真っ赤になっているのは、だけではない。
( ・・・自分の中が、どんどん『 興奮 』で満ちていくのが、わかる・・・ )
戦とはまた違った、欲の昂りに悪ぃ気はしねえ・・・とそっと頬を吊り上げる。
はらりと落ちてくる前髪も払わず、小十郎の唇は、胸から腹へと下っていった。
ぴくり、との理性が動いた。しかし、それを察した彼の動きの方が早かった。
は、舌が辿りつくのを拒もうと待っていたのだろう。が、その前に指を一本突き立てた。
「 あぁんッッ!!は、くふぅ、あぁうん、んく、ぅっ、ふぁあ・・・あぁ、 」
秘部に入れた指を押し出そうと、ぎゅうっと締め付ける。
小十郎の背筋が、ぞくぞくと震えた。出し入れすると、卑猥な水音が上がる。
掻き出すように指を立て、挿れられるところまで突っ込んだ。
指先に当たる部分を、かり、と撫でれば、の腰がふわりと浮いた。
初めての経験で、もう喘ぎ声以外発せられない彼女の快感を察し、執拗に攻め立てる。
人差し指は入れたまま、親指で隠れた芽を押し上げた。
触るか、触らないか・・・敏感な芽は、小十郎の親指に翻弄されて。
「 こ、じゅろ、さぁ、やぁあ、だッ!や、やああぁん!は、い、やぁ・・・あ、あああぁんんっ!! 」
小十郎の指を膣に咥えたまま、あっけなくが達する。
感度の良さと、伝わる締め付けに、思わず下唇を舐めた。ぶるりと下半身が蠢くのが解る。
声をなくした彼女の身体が、褥に落ちた。額に浮かんだ汗を、膣に入れていた反対の手で拭う。
蕩けそうな瞳をしたの唇に、彼はそっと口付けた。
「 ・・・こ、じゅうろ・・・さ、ん・・・ 」
「 ・・・俺は今、お前を抱けて、幸せだ。ずっとずっと、こうして肌を重ねたいと思ってた 」
彼女が好きだ、と自覚してから、どのくらいの時間が過ぎただろう。
無垢な笑顔。小十郎さん、と俺を呼ぶ声。華奢な身体。常に強さと優しさを兼ね備えた心。
どれも、愛してやまない。一緒に過ごす時間が増えるたびに、愛しさは増した。
「 誰のものでもなく、俺の・・・片倉小十郎の、妻になってくれ 」
彼女の瞳が潤み、静かに頷く。
ありがとう・・・と小十郎は微笑み返したが、次の瞬間、二人の眉間に大きく皺が寄った。
「 んんん、っっ・・・あッ、い、いっっいい、たァっ・・・! 」
「 ・・・くッ・・・もう少し、だ 」
指なんかとは比べ物にならない圧力に、は喉を逸らして堪える。
悲鳴を上げたら、彼は止めるかもしれない・・・でも・・・止めないで、欲しいと思った。
( どうか、私を・・・小十郎さんのものにしてください )
( 兄様の、誰の手も届かないところへと連れ去って欲しい )
この世界に堕ちたのは・・・貴方に逢う為だったのだと、信じたい・・・。
ぐ、ぅ・・・と吐息が漏れて、押し進めていた腰の動きが止まる。
痛みに身体を震わせながら、恐る恐る目を開く。溢れるようにして、涙が零れた。
その涙を拭う彼は、今まで以上に、余裕のない表情をしている。
「 はぁ、は・・・大丈夫か、・・・ 」
「 ・・・は、い・・・ 」
「 そうか・・・辛いかもしれねえが・・・痛みごと・・・受け入れて、くれ 」
ず、と小十郎の腰が動いた。の目が一度大きく開かれたが、そのまま、また閉じた。
「 はぁん、あッやあ、うう、ぁああっ! 」
深夜だということも忘れて、悲鳴じみた嬌声が上がる。
小十郎の楔が打ち込まれるたびに聞こえる、肌と肌のぶつかりあう音。
繋がりを主張するようなじゅぶじゅぶ、という水音。
薄く開いた視界に、振動より一呼吸遅れて自分の胸が揺れているのが映った。
どれもこれも、には恥ずかしくて堪らないものばかりだが、羞恥より勝るものがあった。
「 く、・・・好き、だ!はァ、愛、し、てる・・・ッ!! 」
「 こじゅ・・・ろ・・・さ、ァ、んっ、はう、ん 」
小十郎の、苦渋と快感に満ちた顔を見て、胸の奥がきゅうと締まる。
汗の匂いが満ちたこの空間で、自分は愛されている。
そして、彼のことも満たしているのだ・・・という想いが、痛みを快感に変えた。
一度達してしまった身体は、あっさりと二度目の絶頂を迎えようとしている。
痙攣し始めた彼女の片足を担ぐと、さらに深く、激しく、小十郎の男根が差し込まれた。
「 んはァっ、ら、らっめぇえ、ッ・・・んんぁあああ、ひあッ、あああああっ・・・!! 」
「 ・・・は、あぁ、あ、くうう・・・ッッ、・・・っ!!! 」
の意識が、快感の波に飲み込まれる。
浮いた腰を捕まえて、小十郎の身体がガクガクと数度揺れた。
普段なら、絶対に私の負担にならないようにって、こんなことしないのに・・・と。
自分の身体に倒れこんだ小十郎の重さに、は、ふ、と唇を緩めた。
「 それで・・・お前はいいんだな 」
綱元、と政宗がその背に呼びかける。
上げた顔には、まだ全て納得したわけじゃない、と書いてあった。
成実の隣に座っていた彼は、重い溜め息を吐くと、はい、と渋々頷いた。
「 妹が可愛いからこそ、あの子には好いた相手と一緒になって欲しいと想うのです 」
例えそれが・・・自分と、あまり仲の良くない輩だとしても。
わざと噂を流して、2人を先導していたのが、実の兄だとは・・・気づいていまい。
見事に罠にはまったと知っても、感謝されはしても、怒りはしないだろう。
むすっとしたままの綱元を見て、成実が吹き出す。
政宗も、くつくつと笑うと、人を呼んだ。
「 Hey,小十郎の屋敷に使いを出せ・・・三日が過ぎるまでは、出仕しなくてもいいと、な 」
雀の声が聞こえた。そういえば、障子の向こうが少し明るくなったような気がする・・・。
小十郎が身体を少し起こすと、腕の中にいたがたじろぐ。
寒くないように、と剥き出しの肩に布団を被せてやれば、小十郎さん・・・と小さな声がした。
「 悪ぃ・・・起こしたか 」
「 いいえ、大丈夫です・・・もうすぐ朝、ですか? 」
「 そうだな。随分雪が降っていたから、すっかり積もっているだろうな 」
身体を伸ばして、ほんの少しだけ襖を開く。
降雪は終わったようだ。朝陽を浴びて、降り積もった雪がキラキラと光っている。
感激したように、がわぁ・・・と声を上げる。襖に伸ばしていた指を、彼女の髪に絡ませる。
「 ・・・小十郎、さん・・・? 」
「 ・・・言ってなかったと、思ってな・・・ 」
首を傾げた彼女に・・・落ちた前髪をかきあげながら、小十郎は静かな声で呟いた。
「 一生を懸けて、お前を、必ず幸せにする 」
その言葉に、の瞳が大きく見開き・・・嬉しそうな笑顔に、変わった。
「 私も・・・私の一生を懸けて、小十郎さんをいっぱいいっぱい、幸せにすると約束します 」
髪に絡めていた指に、彼女の指先が触れた。
この掌に感じている温もり・・・それを、閉じ込めるように。
小十郎との指先が、ゆっくり、ゆっくりと・・・重なり合った・・・。
いとしさはその指先に
( これからはずっと・・・貴方のためだけに、生きられるんですね、私・・・幸せです )
title:Shirley Heights
<<< もーちゃんに催促されていた(笑)こじゅのR18ですwネタに協力してもらいました、ありがとうございました!
綱元義妹設定は、もーちゃんの長編設定をお借りしました。素敵な長編なので、皆さんも興味があったら是非!
→『彩虹−SAIKOU−』