極上のスリル なんだかんだあって一応お付き合いをする流れになり、とりあえず自然にキスまではできるようになった。 しかしその先にはなかなか進まない。年頃の男子高校生らしい悩みだとは思うが、向こうは大人だ。こちらからは言い出しにくいことも理解してリードしてくれるかもしれない、と淡い期待をしてみたが甘かった。舌を使わないキスの後で肩を押されるあの素っ気なさときたら、この先はガキにはまだ早いよと言われているようで悔しい。あんたのその、ズボンの腰の隙間あたりからちらちら現れるきわどい部分に、今まで何度前屈みになったと思ってやがるんだと訴えたい。だったら見るなと切り捨てられそうだが、それでもあのわざと見せているとしか思えない服装をやめる気はないのだろう。 「なあ〜露伴、オレ達そろそろ……ほら、あれだよ、え、え」 「はあ?」 目の前で何かをド忘れして思い出そうとしている年老いた父親の前ではおそらく、自分もそんな表情をしているかもしれない。原稿用紙に走らせていたペンの動きを止め、こちらを向いた露伴は眉間に皺を寄せて明らかに苛立っていた。いや、別に言葉を忘れたわけではなく、単に言い出しにくいだけだ。 なるべく露伴に不快感を与えない、そしてこちらも恥ずかしくない形で……と考えれば考えるほど時間ばかりが過ぎていき、結局露伴の機嫌を損ねる羽目になる。 「はっきりしろよ、ぼくは気の長いほうじゃあないんでね。特にお前に対しては」 「それどういう意味、ってか、ここまで言ってんだから察してくれよな〜!」 椅子から立ち上がった露伴がこちらに1歩踏み出し、それに反応した仗助は思わず1歩下がる。それを繰り返しているうちに、いつの間にか壁に追い詰められた。背中がぴったりと固い壁にくっついて後がない。露伴はそんな仗助を嘲笑うかのように目を細め、自らの身体を仗助に密着させて完全に逃げ場を奪った。 「何が察してくれだ、ガキのくせにこのぼくに命令か? はっ……偉そうに」 更に露伴は、ぐいっと身体を押しつけてくる。普通の男じゃ絶対に着ない、腰や尻の谷間が見え隠れするいやらしい服の露伴から感じる温もりや、スパイシーな香水の匂い。 「そろそろ、ぼくとセックスしたくなったんだろう」 「……っ、う」 「スタンドを使って読むまでもない、分かりやすいよお前。顔赤くして口ごもる割に、ここはガチガチにしてるもんなあ?」 ズボン越しに仗助の股間を撫で上げる露伴の、手の動きがいやらしすぎる。とうとう言い出せなかった、エッチしたいという極限まで純情ぶった言葉はもう今更すぎて空しい。 勃起した性器の形にそって扱かれ、亀頭のあたりを指で押されて、玩具のように扱われるのが腹立たしいのか煽られているのかもはや分からなくなっている。 「そこまでオレをおもちゃにしといて、まさかヤリたくないとか言わないでしょーね……限界なんスよね、あんたのせいで」 息を乱しながら必死で問いかける仗助の耳に、露伴の唇が近づいてくる。 「言わないよ」 囁きの後で耳のふちを軽く噛まれた途端、理性がうっかり飛んでしまった。露伴の肩を突き飛ばし、絨毯の上に転がすとその上に馬乗りになった仗助は、露伴に見せつけるようにズボンの前を開き、反り返った性器を解放する。 視線が重なった露伴の唇からのぞく舌が、やけに卑猥に見えた。 「ちょ、まて……でかっ、あ……」 大雑把に指で慣らしただけの小さな穴に亀頭を埋め、腰を進めると露伴は目を潤ませながら泣きごとを漏らした。仗助の欲望の形に合わせて健気に拡がるそこを見て、大胆になった仗助は露伴の両足を押し上げ、それぞれ肩に乗せる。こうするとますます奥まで入る気がしてたまらない。 深いところまで露伴に自分の匂いを染み込ませたくて、一気に根元まで押し込むと露伴はひと際大きく声を上げて喉を反らす。萎えていた露伴の性器は次第に勃ち上がり、とろりとした雫をこぼし始めた。 「でかくしたのは、あんたでしょうが……責任取ってくれねえと」 「ぼくはっ、悪くない!」 「急に何キレてんの、大人げねえーっスよ? せんせ」 腸壁の締め付けがきつくて、この先にある更なる快感を求めて仗助は予告もなしに腰を前後に振ると、露伴は面白いほど反応して涙を浮かべる。ガキだと馬鹿にしていた相手に好き勝手されるのが面白くないのか、それとも逆に感じてしまっているのか。 「露伴のこれ、どろっどろになってるんスけど気持ちいいの?」 腹につく勢いで反った露伴の性器に触れ、亀頭を撫でるとびくっと震えた。全体が先走りの汁にまみれて、もう少し刺激を与えればこのまま射精しそうだ。何も言わずに、物欲しそうな目の露伴に見つめられて仗助は息を飲んだ。 「扱いてほしい? でも露伴がケツだけでイッちゃうの見てえからやめた」 「こ、この……!」 「あんなにエッチな服着て身体見せつけておいて、ちんこ突っ込まれると急に弱くなっちまうの? なんで?」 露伴が反論する前に、抜ける寸前までゆっくり腰を引いて浅く性器を往復させる。奥まで突いた時とは違う気持ち良さ。穴の入口付近を、えらの張った亀頭でじりじりと攻める。腰を浮かせた今の体勢なら、露伴にも仗助の性器が埋まるのが見えているはずだ。 「あ、ああ……じょ、すけ、もっと、おく」 「奥? 奥までオレのちんこ欲しいの?」 「ほし、い」 「んじゃ、ごほうび」 露伴の足を両肩に乗せたまま身体を倒し、初めての深いキスをする。ぬるぬるした舌を絡ませながら仗助は再び激しく露伴の奥を犯した。上も下も気持ち良すぎて、何も考えられずにひたすら露伴を貪る。 豊富な経験があるわけでもないのに、雰囲気に流されただけでここまで暴走してしまった。 やがて露伴の許しを得る余裕もないまま、ぶるりと腰が震えて腸壁に搾り取られるように中で射精した。遅れて露伴も、仗助よりも少ない量だが精を吐き出す。仗助の希望通り、腸壁を擦られた快感だけで達した露伴は、虚ろな目でぐったりとしていた。 ひび割れ、色褪せた壁に縋りつく露伴は背後から仗助が腰を突き入れるたびに短く何度も喘ぐ。頭上では寿命が近づいているらしい蛍光灯が、時折途切れながらも光を放っている。 夜中の静まり返った公園で見つけたトイレは、決して良い雰囲気とは言えないが急に襲ってきた性欲を発散するには充分な場所だった。男子トイレの奥にある個室にふたりで入り、貪り合うようにキスをして互いの心に完全に火を点けた。 「んっ、あ、じょうすけ……」 すっかり解れた露伴の尻の穴を、仗助の性器が深々と貫いている。少し前までは考えられなかったことが、今は紛れもない現実として行われている。 「あんたの声が外まで漏れて、ムラムラした知らない奴らが入ってきたらどうすんの……AVみてえに、まわされちまうかもな」 「はは、そうなったら面白いな。お前はぼくが犯されてるところを、自慰でもしながら黙って眺めてなよ」 「ああー、やっぱダメだ! オレ以外の野郎に触らせたくねえんだよ。今日だってあんたの匂い嗅いだら、ちんこパンパンになっちまって」 「それは重症だな、そのうちぼくの顔見ただけで勃起するんじゃあないのか」 肩越しにとんでもない予言をされて言葉に詰まった。本当にそうなってしまったら困るが、絶対にないと言い切れない自分が悲しい。 あれから露伴と会うたびに、外でもセックスをするようになった。人目につかない場所を選んでいても、外だといくら気を付けても誰かに見られてしまう可能性がある。そう、もし今この個室のドアが開けられたら町中の噂になるだろう。 露伴の腸壁を性器で擦るたびに上がる、ぬちゃぬちゃという卑猥な音に紛れて仗助はそっと個室のドアの鍵を外した。ごまかしようのない濡れ場に没頭しながら感じるスリルに興奮が高まり、突き出されている露伴の尻に更に激しく腰をぶつけた。 |